• 検索結果がありません。

2003July-August Vol

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "2003July-August Vol"

Copied!
112
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

東大寺大仏殿(日本/奈良) 提供●世界文化フォト

V

o

l.4

   2003 July-August 社 団 法 人   不 動 産 証 券 化 協 会 「パワーをもらう」「パワ ーをいただく」というフレ ーズをよく耳にする。巨樹 に手を当ててそういわれる と、いかにも巨樹のパワー が手をつたわって身体に入 ってくるように思われる。 東洋的宇宙感覚とでもいう のであろうか。少なくとも 近代西洋風の自然観ではな いし、合理的に説明のつく ことではない。けれども、 あるとき気づいたことがあ る。私がときどき空想のな かで奈良・東大寺の大仏殿 におまいりするのも、それ に近いことかもしれないの だと。夢のなかの東大寺、 夢のなかの大仏まいり。こ れはいったいなんだ。特段に信仰心の強いわけでもない私が、ときどき大仏殿を眼 前に思い浮かべているのはなぜか。その言葉にしにくい気分をあれこれ分析してみ ると、どうやら私は大仏さまと大仏殿という建造物から「パワーをいただく」ため にそうしているようだ。そう思ってみると、なるほど私は気分の落ち込んでいると きに、空想の大仏殿まいりをしている。そこに安置されている盧舎那仏の功徳につ いては仏教者にゆずるとして、私にとって大事なことは大仏殿という建造物の発し ているパワーであり功徳である。別の言い方をすれば、宗教的建造物の持っている 独特の力というもので、その力は異教徒にも及ぶということだ。近代日本の留学生 たちがヨーロッパの大聖堂に驚ろき、お雇い外国人たちが奈良や京都の仏閣に驚ろ いたのもそのパワーだったはずである。私がときどき空想の大仏殿まいりをして、 あの堂宇のただなかに身を置き、その柱の太さに感嘆し、それをさすり、これを創 建した人々の気概の大きさを想像しているとき、私はあきらかに彼らによって励ま されている。まずは巨樹を探し、それを切り出し、ここに立ち上げる光景を想像す るだけで、私はもう感動を禁じえなくなるのである。棟梁と関係者の脳裡にはすで に燦然と輝く大仏殿が浮かんでいる。だが、落慶法養までの道のりは遠く、その遠 さがわれわれを激励しているのである。 (井尻 千男:拓殖大学教授)

Vol.

4

2003・July-August

THE ASSOCIATION FOR REAL ESTATE SECURITIZATION

エイリス

不動産証券化を共に推進する情報誌

正会員(全60社) 株式会社アーバンコーポレイション 伊藤忠商事株式会社 株式会社大林組 オリックス株式会社 鹿島建設株式会社 近鉄不動産株式会社 株式会社クリード 株式会社ケン・コーポレーション 興和不動産株式会社 株式会社ゴールドクレスト 株式会社ザイマックス 株式会社サンケイビル 清水建設株式会社 株式会社ジョイント・コーポレーション 株式会社新生銀行 株式会社新日鉄都市開発 住友商事株式会社 住友信託銀行株式会社 住友不動産株式会社 住友不動産販売株式会社 西武不動産販売株式会社 大成建設株式会社 ダイビル株式会社 大和証券SMBC株式会社 中央三井信託銀行株式会社 東急不動産株式会社 東急リバブル株式会社 東京建物株式会社 東京美装興業株式会社 株式会社東京三菱銀行 東洋不動産株式会社 藤和不動産株式会社 日興シティグループ証券会社 日本ジーエムエーシー・インベストメント・ アドバイザーズ株式会社 日本土地建物株式会社 野村證券株式会社 野村不動産株式会社 パーク24株式会社 株式会社長谷工コーポレーション 阪急電鉄株式会社 阪急不動産株式会社 株式会社フジタ 平和不動産株式会社 丸紅不動産株式会社 みずほ証券株式会社 株式会社三井住友銀行 三井不動産株式会社 三井不動産販売株式会社 三菱地所株式会社 三菱地所投資顧問株式会社 三菱商事株式会社 三菱信託銀行株式会社 森トラスト株式会社 森ビル株式会社 株式会社モリモト 安田不動産株式会社 山万株式会社 有楽土地株式会社 UFJ信託銀行株式会社 株式会社リクルートコスモス 賛助会員(全80社) 株式会社アイ・エヌ情報センター 株式会社あおぞら銀行 青山リアルティー・アドバイザーズ 株式会社 朝日監査法人 アセット・マネージャーズ株式会社 株式会社アドパーク アットホーム株式会社 穴吹興産株式会社 アンダーソン・毛利法律事務所 飯野海運株式会社 株式会社生駒データサービスシステム 株式会社井智 伊藤忠都市開発株式会社 株式会社インターリスク総研 牛島総合法律事務所 A I G グ ロ ー バ ル ・ リ ア ル エ ス テ イ ト ・ インベストメント・ジャパン・コーポレーション 株式会社緒方不動産鑑定事務所 沖信・石原・清法律事務所 オリックス・アセットマネジメント 株式会社 株式会社価値総合研究所 関電産業株式会社 株式会社協同エージェンシー グローバル・アライアンス・リアルティ 株式会社 宏陽ホーム株式会社 株式会社財団評価研究所 株式会社さくら綜合事務所 三幸エステート株式会社 株式会社三友システムアプレイザル シティグループ・プライベートバンク ジャパンリアルエステイトアセット マネジメント株式会社 ジャパン・リート・アドバイザーズ 株式会社 新光証券株式会社 新日本アーンストアンドヤング税理士法人 新日本監査法人 株式会社住信基礎研究所 株式会社住友生命総合研究所 税理士法人平川会計パートナーズ 株式会社全国不動産鑑定士ネットワーク 株式会社総研 株式会社総合不動産鑑定コンサルタント 株式会社だいこう証券ビジネス 大和不動産鑑定株式会社 株式会社ダヴィンチ・アドバイザーズ 株式会社谷澤総合鑑定所 株式会社地域経済研究所 中央青山監査法人 株式会社中央不動産鑑定所 株式会社千代田ビルマネジメント 東急リアル・エステート・インベストメント・ マネジメント株式会社 東急リロケーション株式会社 株式会社東京リアルティ・インベストメント・ マネジメント 東誠不動産株式会社 株式会社都市開発不動産鑑定所 長島・大野・常松法律事務所 株式会社ニッセイ基礎研究所 財団法人日本開発構想研究所 株式会社日本格付研究所 株式会社日本クリエイト 日本総合ファンド株式会社 日本ビルファンドマネジメント株式会社 財団法人日本不動産研究所 株式会社日本プロパティ・ソリューションズ パウロニア司法・調査士法人 ―相馬司法事務所― 株式会社ヒューネット 不動産鑑定士評価システム協同組合 プライスウォーターハウス・クーパース 税理士法人中央青山 プライスウォーターハウス・クーパース・ フィナンシャル・アドバイザリー・サービス 株式会社 プレミア・リート・アドバイザーズ株式会社 マークス株式会社 三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社 三宅坂総合法律事務所 株式会社ミヤビエステックス 有限会社三輪不動産研究所 株式会社明和住販流通センター メリルリンチ日本証券株式会社 森藤税務会計事務所 株式会社モルガン・スタンレー・ プロパティーズ・ジャパン 株式会社ユーマック 株式会社立地評価研究所 レンド・リース・ジャパン債権回収 株式会社 (平成15年7月16日現在)

◆会員一覧

(社名五十音順)

ARESに出向し4カ月が経ちました。実物不動産、しかも住宅関係しか知らな かった私にとっては、新しい情報や言葉の雨・嵐のなかで、正直なところアレ ルギー症状に陥りました。とりあえず新参者の特権と勝手に決め込んで、誰彼 構わず聞きまくり、関連図書も理解不十分のまま読み飛ばし、ようやく落ち着 いてきました。初心者の目で「オープンでわかりやすい」をモットーにこれか らも取り組んでいきますので、ARESの応援よろしくお願いいたします。(綿貫) 会報「ARES」第4号 平成15年7月30日発行 編集発行 社団法人不動産証券化協会 〒107-0052 東京都港区赤坂 1-9-20 第16興和ビル南館4階 TEL:03-3505-8001 FAX:03-3505-8007 URL:http://www.ares.or.jp

(2)

3 5 9 17 23 31 40 表紙文 井尻 千男●いじり・かずお 拓殖大学教授/日本文化研究所所長/元日本経済新聞編集局文化部編集委員 1938年山梨県生まれ。立教大学卒業後、日本経済新聞社入社。編集委員として文化論を中心に広く社会論評を手 がける。97年 4 月より拓殖大学教授。『消費文化の幻想』『劇的なる精神 福田恆存』『言葉を玩んで国を喪う』 『自画像としての都市』『保守を忘れた自民政治』など著書多数。

Vol.

4

2003・July-August

瑠璃色(るりいろ/ラピスラズリー) 瑠璃(るり)は天然ウルトラマリンの原鉱石であるラピスラズリ(lapislazuli) を言い、古来より七宝のひとつとして珍重された。その色から来た色名である。 SPECIAL ●ARES SYMPOSIUM 2003 「J-REIT:投資家から信頼を勝ち取る 創意工夫と戦略」 ■講演 J-REIT市場の健全な発展に向けて 三沢 真氏(国土交通省 総合政策局長/現・国土 交通審議官) 日米豪の不動産投資信託 沖野 登史彦氏(UBS証券会社 株式調査部 シニア アナリスト) ボストンプロパティーズ社の成長戦略 Mortimer B. Zuckerman氏(Chairman of Boston Properties,Inc) オーストラリアLPT:発展の要因 V i c t o r P H o o g A n t i n k 氏 ( W e s t f i e l d Holdings Limited 資産運用ディレクター) ■特別講演 ファイナンス手法を用いたREIT商品特性分析 大橋 和彦氏(一橋大学大学院 国際企業戦略研究科  助教授) ■パネルディスカッション 日本経済の現状と不動産市場の行方 コーディネーター 沖野 登史彦氏(UBS証券会社 株式調査部 シニアアナリスト) パネリスト 大村 敬一(早稲田大学商学部 教授) 小林 憲司(新日本アーンストアンドヤング株式 会社 取締役) 深尾 光洋(慶應義塾大学商学部 教授/日本経 済研究センター 主任研究員) 山内 正教(グローバル・アライアンス・リアル ティ株式会社 代表取締役社長) ●第1回 通常総会・懇親会を開催 NEWS ●平成16年度「不動産証券化に関する税制改正要望」 について ●「平成16年度 制度改善要望」の概要 ●会員の自主行動基準策定 ●オーストラリアLPTの情報開示について (調査報告)前編 国土交通省総合政策局不動産業課不動産投資市場 整備室 ●追悼  山 昌一先生 ●平成15年度 組織図および委員一覧 REPORT ●開発型証券化のマクロ経済的意味 矢口 和宏氏(東北文化学園大学 総合政策学部) ●分譲マンション開発型証券化案件の格付けについて 辻野 美穂子氏((株)日本格付研究所ストラクチャー ド・ファイナンス部 アナリスト) ●J-REITは株なのか、それとも投信なのか 井出 保夫氏(井出不動産金融研究所 不動産金融 アナリスト) ●J-REITがMSCIに採用されたことについて ●教育プログラムへのマイルストーン 第1回 INFORMATION 55 60 62 80 86 93 101 66 70 74 78 82 104

(3)

J-REIT:投資家から信頼を勝ち取る

創意工夫と戦略

昨年10月、経済財政諮問会議において改革加速のための総合対応策が取りまとめら れ、J-REITの普及は重要な政策課題として位置付けられた。また、上場2周年を迎え、 J-REIT市場は今後のさらなる飛躍が期待されている。 社団法人不動産証券化協会としては初めてとなる今回のシンポジウムでは、「J-REIT:投資家から信頼を勝ち取る創意工夫と戦略」と題し、J-REITがさらなる普及と 発展を遂げるために不可欠な、投資家からの信頼を勝ち取るための戦略について、さま ざまな立場の専門家の皆様に講演していただいた。 日 時 平成15年6月10日(火) 午後1時∼午後5時30分 場 所 経団連ホール 主 催 社団法人 不動産証券化協会 後 援 金融庁、国土交通省、東京証券取引 所、投資信託協会、日本証券アナリ スト協会、日本証券業協会、日本フ ァイナンシャル・プランナーズ協 会、不動産協会 (五十音順)

ARES SPECIAL

ARES SYMPOSIUM 2003

ARES SYMPOSIUM 2003

(4)

本シンポジウムは、不動産シンジケーション 協議会の時代から数えますと第11回を数えま す。とくに今年は、昨年10月に政府が決定い たしました改革加速のための総合対応策、その なかに設けられておりますJ-REIT普及促進キャ ンペーンの一環として企画されているものでご ざいます。金融庁、国土交通省、東京証券取引 所、投資信託協会、日本証券アナリスト協会、 日本証券業協会、日本ファイナンシャル・プラ ンナーズ協会、不動産協会にはご後援をいただ いております。 このような位置付けのなかで本シンポジウム を開催できますのも、本日お集まりの関係各位 のご指導ご支援の賜であり、心から御礼申し上 げたいと存じます。 おかげさまでこの秋に上場 2 周年を迎えるJ-REIT市場は、法税制の整備を含めまして、関 係各位のご尽力によ りまして着実に成長 を遂げてまいりました。しかしながら、その規 模はまだオーストラリアLPT市場の 7 分の 1 で あり、アメリカのREIT市場と比較いたします と、わずか30分の 1 以下にすぎません。わが 国国民総生産の規模が、オーストラリアの約 10倍、アメリカの約 2 分の 1 であることを考 えますと、今後、J-REIT市場の規模をできるだ け早期に拡大・発展させることが望まれます。 経済と金融が地球規模でボーダレス化してい くなかで、法税制の仕組みや市場ルールなど、 J-REIT市場を支えるインフラストラクチャーも またグローバルなものにならなければなりませ ん。J-REITを国際的に評価されるものにするた めにも、関係各方面のいっそうのご理解とご支 援をお願い申し上げたいと思います。

開会あいさつ

■開会挨拶  岩沙 弘道(社団法人不動産証券化協会       理事長) ■講 演  1.「J-REIT市場の健全な発展に向けて」   三沢 真氏(国土交通省 総合政策局長)  2.「日米豪の不動産投資信託」   沖野 登史彦氏(UBS証券会社 株式調査       部シニアアナリスト)  3.「ボストンプロパティーズ社の成長戦略」   (ビデオスピーチ) M.Zuckerman 氏   (Chairman of Boston Properties,Inc.)  4.「オーストラリアLPT:発展の要因」   (ビデオスピーチ) Victor P Hoog Antink (Director Funds Management,Westfield    Holdings Limited) ■特別講演  「ファイナンス手法を用いたREIT商品特性分析」   大橋 和彦氏(一橋大学大学院 国際企業          戦略研究科 助教授) ■パネルディスカッション   「日本経済の現状と不動産市場の行方」 コーディネーター  沖野 登史彦氏(UBS証券会社 株式調査          部シニアアナリスト) パネリスト(五十音順)  大村 敬一氏(早稲田大学商学部 教授)  小林 憲司氏(新日本アーンストアンドヤング         株式会社 取締役)  深尾 光洋氏(慶應義塾大学商学部 教授)  山内 正教氏(グローバル・アライアンス・リア       ルティ株式会社 代表取締役社長)

PROGRAM プログラム

PROGRAM プログラム

PROGRAM プログラム

社団法人不動産証券化協会 理事長

岩沙 弘道

(5)

本日、このシンポジウムの場でお時間を 頂戴し、「J-REIT市場の健全な発展に向け て」と題してお話しさせていただけること をたいへん喜んでおります。私ども行政を 担当する立場から、J-REITについてどのよ うな評価をし、政策的な意義付けをしてい るか、また今後の課題といった点について ご説明をさせていただきます。 国土交通省は、昨年秋からJ-REITを重要 な政策課題であると位置付け、関係方面に さまざまな働きかけをしてきております。 とくに扇国土交通大臣は非常に熱心で、政 策面でのいろいろな進展があったわけです が、これは扇大臣のイニシアティブに負う ところが非常に大きいと思っております。 昨年10月、経済財政諮問会議での今後の 経済活性化方策の議論の際に、国土交通省 の施策メニューのなかで、扇大臣はこのJ-REITを中心的に取り上げられまして、小泉 総理をはじめとする諮問会議のメンバーの 前で、熱心に説明をいたしました。今のデ フレ状況下で1,400兆円といわれるお金が行 き場所を失っており、そういうお金を実物 投資に向けていくための手段として、J-REITは非常に重要であるということを強く 主張したわけです。その結果として、ご承 知のとおり昨年10月30日に、改革加速のた めの総合対応策が取りまとめられましたが、 このなかにJ-REITが重要な柱として位置付 けられ、このことが年末の税制改正につな がったと考えております。 扇大臣は、たとえば主婦が買い物の帰り にJ-REITを買えるような、そういう投資環 境を整えるようにしないといけない。また、 その配当でハンドバッグのひとつくらいも 買えるように持っていくことが、これから のJ-REITの発展のために必要ではないかと いうことを再三申しております。 これは、非常に大事なポイントかと思い

講 演

J-REIT市場の健全な発展に向けて

国土交通省 総合政策局長 (現在・国土交通審議官)

三沢 真

氏 みさわ・まこと●1970年東京大学法学部卒業後、建設省入省。86年建設省 大臣官房人事課企画官、87年国土庁長官官房総務課広報室長、89年建設省 大臣官房地方厚生課長、90年自治省税務局市町村税課長、92年住宅・都市 整備公団企画調整部長、94年建設省都市局都市総務課長、99年建設省大臣 官房審議官、2001年国土交通省住宅局長を経て、02年総合政策局長。 J-REITに熱心な扇大臣 経済財政諮問会議でも力説

(6)

ます。1,400兆円の個人金融資産を市場に呼 び込もうという時に、どちらかというと従 来の不動産証券化商品は、機関投資家や投 資にかなり慣れている個人富裕層、いわば プロに近い方々を中心にして設計されてい る商品が多かったのではないでしょうか。 これに対してJ-REITは、市場が整備され たことで株と同様に取り引きができ、1 口 当たりの値段も一般の個人投資家が買える ような値段です。これがまさにJ-REIT商品 の特徴であり、この点に着目してさらに普 及を図っていかなければいけないというこ とです。 このようなことを前提に、今後のJ-REIT の意義付けを整理してみます。 一つは不動産の流動化という点で大事な 意味を持っていると考えます。一昨年の 9 月から約 2 年経ちまして、6 つの投資法人で 約113万口、約6,000億円の証券が流通してい るのが現状です。一昨年の 9 月10日に上場 市場がスタートしましたが、その翌日に 9.11テロが起き、直後は市場の混乱が見ら れましたが、現状においてまずは順調に発 展しているのではないでしょうか。 この投資法人で取得された不動産は、昨 年度末で約9,000億円に達しており、まさに 投資法人が不動産の強力な買い手として登 場し、活躍しているという状況といえるか と思います。昨年末には、投資法人の取得不 動産は約7,000億円だったのが、それから半 年も経たない年度末には、さらに2,000億円 もの不動産が買い増しされているわけです。 要するにJ-REITの意義というのは、単に 証券市場で紙が動くだけではなく、結果と して実際の不動産が買われ、不動産の流動 化が促進される。それによってさらにまた 不動産投資の活性化につながっていくとい うことです。実物経済、実物投資に非常に 関わりが深いということが、第一点として 申し上げられると思います。 二点目は投資の多様化、すなわち今の証 券市場のなかで、投資の厚みをもたらす商 品としての役割を担っているのではないか ということです。現状で利回りは 4 %から 6 %程度で、比較的堅調に配当利回りが確 保されているという状況であり、価格面で もおおむね堅調に推移しているといえると 思います。そういう状況を踏まえると、や はりこの商品は、多くの人にとって新しい 魅力ある投資対象になっているのではない でしょうか。ミドルリスク・ミドルリター ンの新しい金融商品として、投資家サイド の需要に応えるものになりつつあり、これ からさらに発展していくだろうと考えます。 株式との比較で申しますと、個人投資家 が株を買うといっても、会社の経営を本当 に目に見える形で分析するのは難しいわけ ですが、不動産の場合は、現実に見えるも のから上がってくる収益が配当として還元 されていきますので、ある程度対象も限定 され、還元される利益の見通しも比較的つ きやすいということがいえると思います。 とくにJ-REITは、個々の不動産について の情報開示が相当なされており、投資判断 もしやすいのではないでしょうか。また、 このようなJ-REITの情報公開が、不動産市 場全体の情報の公開性、透明性を高めるき っかけとなり、不動産市場全体の構造改革 につながっていくのではないかと期待をし 不動産の流動化、投資の多様化、 開発事業の促進に寄与

(7)

ているわけです。 当然、J-REITは投資商品ですので、絶対 に儲かることを保証するものではありませ んが、情報公開を進めて、また各REITの運 用会社で適切な運用を進めていただければ、 個人投資家からの信頼をますます勝ち得る ような商品になっていくだろうと思います。 三点目は、開発事業の促進につながる可 能性のある商品であろうということです。 現在のところは、純粋に開発型証券化とし てのJ-REITはまだありませんが、不動産市 場全体を見ますと、物件の完成後、J-REIT に売却するということを前提にして開発が 行われる案件も少しずつ出てきています。 開発型証券化というのは、今までは難し いといわれてきましたが、昨今の状況を見 ますと、SPCを活用して開発型の証券化が 図られるという実例が増えてきているよう です。政策サイドで申し上げても、昨年度 の補正予算のなかで都市再生ファンドの創 設が認められ、都市再生のプロジェクトに 対してファンドが一定の支援を行っていく というスキームもできあがっております。 現在、私どもは実務で使えるような開発 型証券化のマニュアルの作成について、不 動産証券化協会とともに検討を進めており ます。これについてもできるだけ早くアウ トプットを出したいと考えております。 将来的にJ-REITの規模が拡大すれば、リ スク管理という観点から、そのなかで開発 型の商品もうまく飲み込むことも可能では ないかと考えています。その点については、 岩沙理事長も同様に認識されているようで すので、J-REITの発展形の一つとして、開 発型は当然予想されるものと考え、準備を 進めていく必要があると思います。 では、今後、どのような課題があるでし ょうか。これについても、昨年10月の経済 財政諮問会議のなかで、扇国土交通大臣か ら、市場が拡大していくためには三つの課 題があるというご指摘がありました。 まず、やはり相当にJ-REITの普及・啓発 の必要があるということです。 二点目は、先ほどの情報公開とも関係し ますが、個人の方が安心して投資できるよ うな情報が少ないという問題です。J-REIT のインデックスのようなものをもっと整備 する必要があるのではないでしょうか。 三点目は配当課税の問題です。その商品に 投資したくなるような魅力ある税の形にす るための税制改正が必要だということです。 以上の三点について、その後の進捗を申 し上げます。まず、一点目のJ-REITの普 及・啓発ですが、社団法人不動産証券化協 会が昨年12月に設立許可されたことにより、 協会が今後の普及・啓発のために重要な役 割を果たすと考えております。前身の不動 産シンジケーション協議会にも、さまざま な形で不動産の証券化に取り組んでいただ きましたが、不動産証券化についての制度 設計や業界内部の自主ルールといった、供 給サイドの取り組みが中心であったかと思 います。もちろんそれらも大事なことです が、社団法人不動産証券化協会となり、ま た不動産会社に加えて銀行、証券会社とい う複数の業界の方々にメンバーに加わって いただいたことで、これからは供給サイド だけではなく、投資家サイドにも積極的に 働きかけていただくことが重要なポイント 知名度アップのための 普及・啓発活動が重要 講 演 J-REIT市場の健全な発展に向けて

(8)

です。 すでに不動産証券化協会では、今年の 6 月までをJ-REIT普及促進キャンペーン期間 と位置付け、各種キャンペーンを展開して おられます。本日のシンポジウムもその一 環であり、これからもその役割に期待する ところが非常に大きいと考えております。 二点目の情報関係ですが、J-REITのイン デックスについては、J-REITを他の金融資 産と商品比較できることが重要です。この 点についてはご承知のとおり、今年 4 月よ り東京証券取引所から東証REIT指数が公表 されることになりました。これもまた非常 に大きな進展だと思っております。 さらに不動産証券化協会でも、4 月からJ-REITに関する情報について一覧性のあるサ イトである「J-REIT View」を立ち上げてい ます。投資家の参考になる情報を有効に市 場に提供することに、ますますご尽力をお 願いしたいと考えております。 三点目の課税の関係ですが、これもご承 知のとおり、前の制度では、確定申告不要 額が、1銘柄10万円(年間)が上限になって おりました。仮に、1 口50万円程度で利回 り 5 %程度としますと、4 口以上買うと確定 申告が必要となり、それでは積極的に投資 しようという環境になりません。そこで昨 年の税制改正のなかで申告不要限度額を撤 廃し、かつ税率についても軽減することに なりました。これについても不動産証券化 協会をはじめ関係者の皆様方のご尽力のも とに実現をしたわけでございます。 そういう意味では、昨年の10月以降、非 常に大きな進展が多々あったわけです。こ ういった成果を踏まえて、さらなる努力が 必要であると考えております。 とくに、普及・啓発の面で申しますと、 知名度が徐々に高まってきたとはいいなが らも、やはりまだ低く、一般の主婦の方が J-REITといってすぐわかるかというと、そ ういう状況にはなっていません。知名度・ 理解度の向上については、さらなる取り組 みが必要と考えております。 本日のシンポジウムが「投資家から信頼 を勝ち取る創意工夫と戦略」というテーマ のもとに開催されることで、この後のご講 演ではいろいろな事例を聞かせていただけ ます。また、一橋大学の大橋先生には「J-REITの商品特性分析」に関する研究成果も ご発表いただけるということでございます。 パネルディスカッションでは、各界の権威 の方々に高い見地に立ったご議論をしてい ただけるということですので、これは今後 のJ-REITの発展にとって参考になる有意義 なお話がいただけるのではないかと期待を しております。 最後になりますが、私どももJ-REITの普 及・啓発に積極的に取り組んでいきたいと 考えております。一例を申し上げますと、 政府広報の中心である内閣府の政府広報室 に国政モニター制度というのがあります。 その国政モニターで、J-REITの認知度であ るとか、投資判断のためにどういう情報が 必要か等々についてアンケート調査を進め ることにしておりまして、そういう結果も 活用しながら、私どももいろいろと検討し てまいりたいと考えております。 J-REITの発展は、一重にここにいらっし ゃる関係者の方々の今後のご尽力にかかっ ているといっても過言ではありません。皆様 方の今後のさらなるご尽力をお願い申し上 げまして、私のお話とさせていただきます。

(9)

まず、図表 1 をご覧下さい。日本のREIT 市場の規模は現在まだ約6,000億円に過ぎま せん。これに対してアメリカは20兆円、オ ーストラリアのLPT市場は4兆2,000億円で、 世界のREIT市場ではやはりアメリカとオー ストラリアの市場規模が非常に大きいこと がわかります。REIT市場の株式市場におけ るシェアという切り口で見ると、オースト ラリアで 8 %、アメリカは1.2%、日本は 0.2%です。アメリカではREITはすでに40年 以上の歴史を持っており、2001年には代表 的な株価インデックスのS&P500にも含まれ ました。オーストラリアでも現在 3 番目に 大きいLPTであるGeneral Property Trust (GPT)の前身のFirst National Buildings Trustは1959年に創立されており、相当長い 歴史を持っています。 REITは株式であり、日々証券取引所でト

講 演

日米豪の不動産投資信託

― 個人投資家税制とディスクロージャーの視点から ―

UBS証券会社 株式調査部 シニアアナリスト

沖野 登史彦

氏 おきの・としひこ●東京大学経済学部卒業。経営コンサルタント会社勤 務、不動産会社勤務を経て、1993年スミス・ニュース・コート証券会 社入社、証券アナリストとして勤務。その後、ドレスナー・クラインオ ート・ベンソン証券会社、シュローダー証券会社を経て、98年10月 UBS証券会社入社。 日米豪のREIT市場規模とそれぞれの特徴 プレミア 5% 図表1 日米豪のREITの市場規模 Others 86% 米国REIT:171銘柄 時価総額 US$1,682億     = 20兆663億円 Simon Property Group 4% Equity Residential Properties 4% Equity Office Properties 6% Others 62% 豪州LPT:30銘柄 時価総額  AU$544億     = US$355億     = 4兆2,395億円 WESTFIELD TRUST 14% WESTFIELD AMERICA 13% GENERAL PR.TST. 11% 日本ビル ファンド 31% ジャパンリアル エステイト24% 日本プライム リアルテイ 13% 日本リテール ファンド 16% J-REIT:6銘柄 時価総額 5,953億円 オリックス 不動産 11% オリックス 不動産 不動産 11% オリックス 不動産 11% (5月30日時点)出所 : データストリーム、ブルームバーグ、NAREIT

(10)

レードされます。とはいえREITは個人投資 家を中心にインカムゲインを目的に取り引 きされる傾向が強いので、回転売買される ものではなく、したがって出来高はどこの国 でも比較的低い。そのなかでも日本のREIT はボリュームが低いといわれてきました。 しかし最近J-REITの出来高は増えてきて おります。参考までに申しますと、REIT市 場の拡大は最近の世界の流れでありまして、 シンガポール、韓国、フランスでREITをつ くる動きが出ています。経済が成熟化して いくなかで、個人資産が蓄積される。それ に対して運用対象が多様化していくのは世 の流れで、今後もREIT型の商品が各国で出 てくると思われます。 ■日米豪のREITの不動産タイプ別構成比 次に、図表 2 をご覧下さい。J-REITの現 状はオフィスが半分以上を占めており、商 業施設は15%程度、残りが混合型となって います。これに対してアメリカのREITは、 混合型が少なくなっています。アメリカの 国民性とか投資環境を反映していると思い ますが、特定の資産タイプに専門化した REITが多いのが特徴です。オーストラリア のLPT市場では混合型が非常に多く、また 商業施設が多いのが特徴です。 ■日米豪のREITの法的根拠と規制体系 日本は投信法によって規制されており、 REIT商品は投資信託と規定されています。 一方、アメリカのREITは税法(Internal Revenue Code)によって規定されています。 オーストラリアの場合は会社法を一部改正 したManaged Investments Actによって規 定されています。またいずれの国にも証券 取引所による規制がありますが、とくに東 京証券取引所ではJ-REITに固有の規制があ ります。アメリカの証券取引所ではREIT固 有の規制はなく、SECのルールによって規 制されています。オーストラリアの証券取 引所ではLPTに関する特別規定があります。 このように各国の異なった法体系、規制体 系でREITは運用されています。 ■運用面での比較 日本のREITの運用は比較的オーストラリ アと似ているといえます。アメリカは日本 やオーストラリアのREITと比べて異なる部 分が多く、いちばん大きな違いとして内部 オフィス (Office) 55.5% 混合型 (Diversified) 28.9% 商業施設 (Retail) 15.6% 図表2 日米豪のREITの不動産タイプ別構成比 J-REIT 2003年5月末時点 出所:UBS, NAREIT 注:構成比は時価総額ベースで算出している Retail 25.0% Residential 17.4% 米国REIT Industrial/ Office 27.9% Diversified Diversified 7.6% Diversified 7.6% Hotels 3.8% Storage 3.2% Specialty 3.3% Mortgage 7.0% Health care 4.8% 豪州LPT Industrial 8.2% Hotel 0.5% Diversified 33.1% Retail 39.7% Office 18.5%

(11)

講 演 日米豪の不動産投資信託 運用をあげることができます。すなわちア メリカのREITは、経営陣やスタッフを自分 で抱えて運用しております。ご存知のよう に1986年まではアメリカも外部運用でした が、税法の改正により内部運用が可能にな ったわけです。またアメリカのREITには、 UPREITによる譲渡益課税の繰り延べの仕 組みがあります。 ■主要指数への採用と鑑定評価 アメリカのREITは、2001年に代表的な株 価指数であるS&P500に含まれることになり ました。オーストラリアのLPTは1978年以 降代表的な株価指数であるAll Ordinariesに 含まれており、S&P/ASX100にも含まれて います。J-REITはまだ日本の代表的な株価 指数であるTOPIXには含まれておりませ ん。一方、鑑定評価については、オースト ラリアと日本の場合、鑑定評価による再評 価が義務付けられていますが、アメリカの 場合、不動産の再評価の開示は求められな いし一般的でもないという特徴があります。 税制を比較する場合、大きく分けて 2 つ の視点が必要だと思います。一つは配当金 に対する課税、それからもう一つは投資口 の譲渡益に対する課税です。まず配当金に 関してはいくつかのパートに分かれます。 ①不動産の賃貸収入からの利益に対する 課税 ②不動産の売却益に対する課税 ③出資の戻しに対する課税 配当金のうち利益を超過して配当す る部分、つまり減価償却相当部分に対 する課税です。この部分をオーストラ リアやアメリカでは配当しており、そ の分の課税は一般的な賃貸収入からの 利益に対する課税とは違う扱いになり ます。 ④不動産の賃貸以外の事業からの利益に 対する課税 仲介事業やプロパティマネジメント 業務から出てくる収益からの配当に対 する課税です。 ■不動産の賃貸収入からの利益に対する課税 日本の場合には、03年度の税制改正によ り10%の源泉分離課税になりました。税率 は従来の20%から下がりました。不動産の 賃貸収入からの利益を配当する限りにおい ては、J-REITの個人投資家に対する課税は これで完結することになります。アメリカ のREITの場合、個人投資家は申告をしたう えで所得税がかかります。最近の配当課税 については、最高税率38.6%から15%に引き 下げる軽減措置が導入されましたが、原則 としてREITには適用されません。REITの 場合、原則として減税後の所得税の最高税 率の35.0%です。ただしREITが、賃貸収入 ではなく他の事業から得られる収入を配当 する場合には、15%の軽減税率が適用され ます。オーストラリアの所得税は最高税率 48.5%です。 ■不動産の売却益に対する課税 J-REITは10%の源泉分離課税になります。 アメリカはキャピタルゲイン課税は、従来 20%だったものが、最近の減税により15% 日米豪のREITの個人投資家に対する 税制の比較

(12)

に引き下げられました。オーストラリアで は最高税率は48.5%です。 ■出資の戻しに対する課税 一般的にアメリカのREITは減価償却を配 当しています。減価償却に相当する部分の 配当は、投資家のREITの取得原価から差し 引かれます。その結果、投資家がREITを売 却した時の株価が、この減価償却分=出資 の戻し分を差し引いたネットの取得原価を 上回っていれば、キャピタルゲイン課税が かかります。ただしキャピタルゲイン課税 は最高税率15%で、不動産の賃貸収入から の配当に対する税率より低くなります。 一方、オーストラリアのLPTは会計上減 価償却をいたしませんが、減価償却相当分 を出資の戻し分として扱ってキャピタルゲ イン課税をするやり方は、アメリカと同じ です。日本の場合は二段階になっており、 みなし配当と認められる場合は10%の源泉 分離課税でよいのですが、みなし配当以外 の出資の戻し部分につきましては、10%の 申告分離課税が適用されます。すなわち制 度上は減価償却の一部を配当してもよいの ですが、税法上申告分離課税が適用される ため、投資家は確定申告をしなければなら ない。それでは個人に対して商品性が失わ れる。よってJ-REITは現在のところは利益 の配当しかしないということになっていま す。アメリカやオーストラリアと比較した場 合、減価償却費の配分をめぐる税制につい ては、今後議論をする必要がありそうです。 ■不動産の賃貸以外の事業からの利益に対 する課税 アメリカのREITの場合、不動産の賃貸以 外の事業は、REITの子会社(TRS=Tax-able REIT Subsidiary)が行います。この TRSの利益には、いったん法人課税が課せ られます。課せられたうえで、親会社の REITに対して配当金として支払われます。 REITが投資家に支払う配当金のうち、TRS からの配当に相当する部分は軽減税率の 15%が適用されます。J-REITの場合は、J-REIT自体が従業員を雇用して他の事業をす ることはできないのですが、PM事業などを 行う企業の株式を保有することで間接的に 携わることが理論的には可能です。その利 益を配当した場合は、今の制度では10%の 源泉分離課税ということになります。最後 にオーストラリアですが、そのような利益 は発生しません。つまりLPTが賃貸以外の 事業に携わった場合は通常の法人課税が課 せられるので、不動産賃貸以外の事業を行 うLPTは基本的には存在しないのです。 ■株式の譲渡益に対する課税 J-REITの場合は税率10%の申告分離課税、 アメリカでは最高税率15%のキャピタルゲ イン課税で、豪州では最高税率48.5%の半 分、すなわち24.25%の最高税率のキャピタ ルゲイン課税がされます。 図表 3 をご覧下さい。「情報開示義務」は、 それぞれの国の根拠法によって基準が設け られています。ただし現実には各国のREIT は規制を上回る自主的な情報開示をやって おり、情報開示の量と質で他のREITと差別 日米豪のREITの情報開示の比較

(13)

講 演 日米豪の不動産投資信託 化を図る傾向もあります。したがって規則 に書いてあるような情報開示しかREITがや っていないというわけではありません。情 報開示の伝達に用いる主な情報媒体に各国 の大きな違いはないのですが、アメリカの REITは10Q(四半期決算)と、10K(年度決 算)を行います。アメリカではアナリスト 説明会は一般的に電話コンファレンスで行 います。オーストラリアのLPTの場合、い ちばんの特徴はリリースの多さです。何か 大きな取り引きがあったり契約が発生した 場合、そのような情報を実にこまめに開示 します。定期的に 1 カ月に 1 回というよう なスタイルではありませんが、それをはる かに上回るペースでタイムリーディスクロー ジャーが行われているのが大きな特徴です。 ■REITのIPO時の主な情報開示 図表 4 をご覧下さい。新規上場時の情報 開示ですが、丸印がついている項目は、そ の国の多くのREITが開示している項目を示 しています。日本とオーストラリアでは資 産の鑑定評価の情報が充実していますが、 アメリカでは一般的ではありません。 一方、アメリカとオーストラリアではテ ナントに関する情報が充実していますが、 日本の場合は比較的少ないのが対照的です。 また、アメリカとオーストラリアでは、上 場後の予想財務諸表が出ていますが、日本 の場合、それがないので上場後どういうよ うなB/S、P/Lになるのかが読みにくくな ります。また、アメリカのREITでは、主要 テナントからの賃料収入を開示していたり、 実額は書いていないが全体の賃貸収入に占 める比率が書いてある例があります。また、 今後契約が満了する賃貸スペースの面積と 賃料を年度別に開示している例(アメリカ の場合は5年、10年、15年程度の長期の契約 が多いので、どの時点でどれくらいのボリ ュームの賃貸面積の契約が終了するかがわ かる)や、終了する賃貸契約の本数を年毎 に開示している例もあります。 一方、オーストラリアのLPTには、ショ ッピングセンターなどの資産を保有する商 業REITが多いという特徴があります。商業 REITの場合には、テナントである店舗の売 り上げで賃料収入が左右されることになり ます。そこで年間の店舗の売り上げを開示 図表3 規制によって定められた情報開示義務 J-REIT 米国REIT 豪州LPT  情報開示については他の上場会社と同様、 財務諸表の開示など、証券取引法に定められ た開示義務を負う。その他に、投資法人(J-REIT)に特有の開示義務が「投資信託及び投 資法人に関する法律」、「特定有価証券の内容 等の開示に関する内閣府令」ならびに投資信 託協会の「不動産投資信託及び不動産投資法 人に関する規則」によって定められている。な かでもJ-REITにとって特徴的な項目として以 下のような規定がある (抜粋): ●決算期末(6カ月毎)の物件毎のテナント総  数、稼働率、賃料収入、鑑定評価額などの時価 ●総賃貸面積の10%以上を使用するテナン  トの年間賃料、賃貸面積、契約満了日、等  情報開示については他の上場会社と同様、 財務諸表の開示など、US Securities Actな らびにUS Securities Exchange Actに定 め ら れ た 開 示 義 務 を 負 う 。ま た U S SecuritiesActは、証券を発行する際の REIT特有の開示項目として以下のような項 目を定めている (抜粋): ●主な不動産の場所・特徴 ●今後の改築・改修・開発計画 ●最近5年間の入居率主要な賃貸借契約条項 ●最近5年間の平均的な賃料単価 ●賃貸契約の終了期限一覧表  情報開示については他の上場会社と同様、 オーストラリア証券取引所の上場規則によっ て、財務諸表のほか、株価に影響のあると思 われる重要情報を開示する義務が課せられて おり、LPT特有の開示規定はない 。ただし LPTの設立時に、資産運用会社はASIC(Aus-tralian Securities & Investment Com-mission)に対して、常時どのような情報を公 表するかを届け出なければならない。LPTの 設立以降は、この届出の内容に従って情報の 公開を行わなければならず、届出の内容を変 更するには投資主の承諾が必要とされる。 出所:UBS

(14)

し、店舗の売り上げに占める家賃の比率も 開示してある。その他、取得不動産の鑑定 評価額の算定根拠を、ターミナルイールド、 ディスカウントレート(割引率)を示すこと により開示しています。 ■REITの資産取得時の情報開示 図表 5 をご覧下さい。エクイティファイ ナンスを伴わずにREITが資産を取得する場 合、内部資金やデットで資金調達すること になります。アメリカとオーストラリアの 場合、エクイティファイナンスを伴う場合 には詳しく情報開示をしますが、エクイテ ィファイナンスを伴わずに資産を取得する 場合の情報量はかなり少ない。日本の場合 は、エクイティファイナンスを伴わない場 合も資産を取得する場合の情報量は比較的 充実しています。 また、オーストラリアのやり方で面白い のは、当該資産を取得する時の意義とリス クの両方を具体的に明記する点です。どう いう理由でその資産を買ったかを具体的に 述べるわけです。一方で、その資産を取得 することによるリスク、もしくは否定的な 見方も開示しています。日本のJ-REITは、 目論見書にはリスクが書いてありますが、 その内容は相当抽象的なことが多い。オー 図表4 REITのIPO時の主な開示情報 ■日本と豪州では資産の鑑定評価に関する情報が充実しているが、 米国では一般的に開示はない ■米国と豪州ではテナントに関する情報が充実している点が日本と は対照的 ■米国と豪州では上場後の予想財務諸表が開示されるが、日本で はそれがない 財務諸表 地域別の賃貸面積 用途別の賃貸面積 物件毎の築年数 物件毎の取得価格 主要テナントの使用面積 地域別の賃料収入 物件毎の稼働率 物件毎の賃料収入 主要テナントからの契約満了日 物件毎の鑑定評価額 鑑定評価算出に適用された キャップレート 鑑定評価算出に適用された 割引率 鑑定評価算出に適用された タ−ミナルキャップレート 第三者による市場レポート 主要テナントの賃料収入 年度別の満了契約面積 年度別の満了契約賃料収入 IPO後の予想バランスシート IPO後の予想損益計算書 IPO後の予想配当金 J-REIT ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × × 米国REIT ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × ○ ○ ○ ○ ○ ○ 豪州LPT ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○ ○ 注:これらの開示情報の多くは、規制によって定められているものもあるが、多 くは各々のREITの判断により開示しているものである。表の中で○がつい ている項目はわれわれが複数のREITで実際に確認したものであるが、必ず しもその国の全てのREITが開示していることを保証するものではない 出所:UBS 図表5 資産取得時の開示情報    (エクティ・ファイナンスを伴わない場合) ■米国・豪州での開示情報は、エクティ・ファイナンスによる資産取 得と比べて少ない ■日本では取得資産からの収益情報が充実している 取得資産の築年数 取得資産の設備/グレード 取得資産の主要テナント 取得資産のNOI利回り 取得資産の直近の稼働率・想定 稼働率 取得資産のテナントとの賃貸借 契約の概要 取得資産からの想定収益 地震によるPML 取得資産の鑑定評価額 鑑定評価の前提: キャップレート 鑑定評価の前提: 割引率 鑑定評価の前提: タ−ミナルキャップ 店舗売上(商業施設の場合) J-REIT ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 米国REIT ○ ○ ○ × ○ ○ × × × × × × ○ 豪州LPT ○ ○ ○ ○ × × × × × × × × ○ 注:これらの開示情報の多くは、規制によって定められているものもあるが、多 くは各々のREITの判断により開示しているものである。表の中で○がつい ている項目はわれわれが複数のREITで実際に確認したものであるが、必ず しもその国の全てのREITが開示していることを保証するものではない 出所:UBS

(15)

講 演 日米豪の不動産投資信託 ストラリアの場合には、個別の不動産にま つわるリスクが具体的に書いてある例があ るということです。 ■REITの決算期末時の情報開示 図 6 をご覧下さい。アメリカとオースト ラリアでは、テナントの賃料に関する情報 が充実していることがわかります。ただし オーストラリアの場合、そのファンドの次 期の収益予想を開示しないし、アメリカの 場合には予想レンジで開示しています。他 方、日本の場合は次期のEPSもしくは一口 あたり配当を開示しており、この点ではJ-REITの方が進んでいます。 アメリカでは、 テナントに関する情報は非常に多く、たと えばトップ 25のテナントがそれぞれどのく らいの賃料を払っているか、といった情報 を開示しています。これはテナントとの合 意がないと必ずしも簡単にできることでは ありませんが、そういうことを行なってい る実例があります。また不動産ポートフォ リオの地域別の賃料収入、賃料単価も開示 しています。テナントごとの賃料の開示が よいかどうかという議論はありましょうが、 不動産ポートフォリオ全体で見て、地域別 や不動産のタイプ別に賃料収入や単価を開 示していくことは、今後J-REITもサイズが 大きくなってくれば、ディスクロージャー の方法として工夫することが重要になるで しょう。 以上のように、日本、アメリカ、オース トラリアのそれぞれのREITを比較したうえ で、簡単なまとめを申し上げます。まず個 人投資家税制では、今後課題になるのは 「出資の戻し分」、いわゆる利益を上回る部 分の配当に対する課税方法を見直すことが、 一つの論点となります。 次に情報開示の考え方です。日本では、 情報開示=ディスクロージャーはやればや るほど何となく良いという考え方がありま すが、欧米では必ずしもそうではない。デ ィスクロージャーというのは、いわばリス クの移転です。運用会社=マネージャーに 情報が集中するのは当然であるが、その一 部が投資家にディスクローズされることで、 リスクが投資家に移転するわけです。それ は一種のマネージャーの免責になるわけで J-REITの今後の課題 図表6 REITの決算期末時の主な開示情報 ■米国と豪州ではテナントの支払う賃料に関する情報が比較的充 実している ■豪州は次期の収益予想を開示しない。米国は予想レンジのみを 開示。日本では詳細な予想損益計算書を開示しているJ-REITも ある ポートフォリオ全体の稼働率 個別不動産毎の期末稼働率 個別不動産毎の期中平均稼働率 個別不動産毎の予想稼働率 主要テナントの賃貸面積 テナントの売上高 (商業施設やホテルの場合) 主要テナントからの賃料収入 個別不動産毎の賃料収入 年度毎の契約満了面積ならび 賃料単価 賃料改訂情報(満了した契約の 平均賃料、新規の契約の平均賃料) 個別不動産毎の当期末鑑定 評価額 次期予想の損益計算書 次期予想のバランスシート 負債の詳細 次期予想の配当金 J-REIT ○ ○ ○ ○ ○ × × ○ × × ○ ○ ○ ○ ○ 米国REIT ○ ○ × × × ○ ○ × ○ ○ × × × ○ 予想レンジを公表 豪州LPT ○ ○ × × ○ ○ × ○ ○ × ○ × × ○ × 注:これらの開示情報の多くは、規制によって定められているものもあるが、多 くは各々のREITの判断により開示しているものである。表の中で○がつい ている項目はわれわれが複数のREITで実際に確認したものであるが、必ず しもその国の全てのREITが開示していることを保証するものではない 出所:UBS

(16)

す。一方、日本では投資家責任という考え 方が確立されているとは考えにくい。ディ スクローズしようがしまいが、結局、結果 責任は負わされる。どうせ免責されないな ら、ディスクローズしない方がよいという 考え方も当然成り立ちます。 しかし、長い目で見ると、必ずしもそう いうわけではないともいえます。確かに個 人の場合、いろいろな情報を開示されても わからないことも多い。そこで、アメリカ とオーストラリアでは、個人が直接REITに 投資もしますが、REITに特化したミューチ ュアルファンドがかなりポピュラーになっ ているという事情があります。オーストラ リアのREITの場合、全体の約50%が個人投 資家で占められていますが、そのうち35% が直接投資している個人投資家、残りの 15%がLPTに特化したミューチュアルファ ンドを通じて投資している個人投資家で す。そういうミューチュアルファンドは、 プロフェッショナルなファンドマネジャー やアナリストがREITを分析しているわけで す。結局こういうプロフェッショナルに対 して情報開示をきちんとしないと、間接的 に個人からも信頼されないという事情があ ります。 J-REITのディスクロージャーは、アメリ カやオーストラリアに較べて、よいところ も多いと思いますが、テナントに関する情 報などは、もう少し充実してもよいのでは ないかと思います。マネージャーの側から 見れば、テナントのことをディスクローズ すると、そのテナントとのビジネスリレー ションを壊してしまうリスクが大きいと考 えがちです。そのリスクはもちろん無視で きませんが、一方で投資家から信頼を失う リスクも考えて、今後ともディスクロージ ャーの質と量を充実させていくことが大事 だと思います。

(17)

私の名前はモーティマー・ザッカーマン です。ボストン・プロパティーズというアメ リカでも有数の不動産投資信託の創立者で 現在、会長を務めております。ボストン・プ ロパティーズの延床面積は現在、4,000万フ ィート以上ですが、ほぼ全部がオフィス用 スペースです。その多くは、商業中心地区に 集中していますが、その一部、およそ25%は、 アメリカ各地域の主要都市の郊外に位置し ています。たとえばワシントン郊外のバー ジニア州レストンなどです。 私たちの不動産のすべては限られた地域 に集中しています。すなわち、大ボストン都 市圏、ニューヨーク、ワシントン、サンフラ ンシスコ、ニュージャージー州プリンスト ンなどです。その理由は、これら市場すべて に新規供給に対する参入障壁があり、新た な供給をもたらすのが難しいからです。こ れは、投資利益率を最大化するためには非 常に重要です。新たな供給に対して参入障 壁があると、需要の急増あるいは増加があ る場合、新たな供給を受けやすい市場と比 べ、はるかに価格の上昇幅が大きいのです。 新たな供給を受けやすい市場で起こること は、需要が増えると、新たな供給が大量に発 生するのです。これはとくに郊外型市場の 多くに当てはまりますが、都市型市場の一 部にもいえることです。サンフランシスコ

講 演

ボストンプロパティーズ社の成長戦略

Chairman of Boston Properties,Inc.

Mortimer B. Zuckerman

「参入障壁のある市場」に 集中する理由

モーティマー B. ザッカーマン●U.S. News & World Report 会長兼編集長、 New York Daily News 発行者、ボストン・プロパティーズ・インク 創設者 兼会長。マギル大学およびマギル大学ロースクール、ウォートン大学経営学部 大学院、ハーバード大学ロースクール卒業。3つの名誉学位を取得。 J.P.モルガン国内諮問委員会、外交問題委員会、アスペン研究所、ワシント ン中近東研究所、国際戦略研究協会でメンバーを務める。また、スローン・ケ タリング記念がんセンターおよびニューヨーク大学理事、主要アメリカ・ユダ ヤ人機構理事長会議議長を務める。ハーバード大学設計学部大学院の都市・地 域計画助教授、エール大学の都市・地域計画講師も務めた。

(18)

やワシントン、ニューヨーク、ボストン、ケ ンブリッジでは、新たな供給をもたらすこ とはたいへん難しいので、需要が急増する と価格が大幅に上昇します。これが、私たち がこれら市場に集中する理由の一つであり ます。 もう一つの理由は、不動産市場は地域市 場であり、地域事業であると考えるからで す。どの道が最良か、どの曲がり角が最良か、 道のどちら側が最良か理解しなければなら ないのですが、私たちは、不動産開発や不動 産買収のあらゆる側面に対処できるような 地域市場の知識を持つ完全な経営陣を持っ ているのです。 次のポイントですが、私たちは単に不動 産買収の能力だけでなく、不動産開発の能 力を持つ非常に優れたグループなのです。 開発投資の利益率は、買収投資の利益率よ りはるかに高いため ― このことはとても 重要です ― 、市場が強含んでおり、開発に 多額の資金を投入することができれば、非 常に高い利益を得るのです。当社が、競合他 社に比べ、最も成功しているわけではない としても、有数の成功している企業である といえるのは、このような経営技術の結集 によるのです。 指摘したいことがもう一つあります。米 国の不動産市場の性質ですが、私がこの仕 事を始めて以来 ― 今も続いており、約50年 間にわたりますが ―、およそ10年ごとに 2 ∼ 3 年は市場が低迷するという循環型の市 場なのです。10年のうち 6 ∼ 7 年は市場が好 調になり、2∼3年は市場が低迷します。現 在は低迷段階です。 私たちが守ってきたこと、私たちの戦略 にも影響していることは、私たちがA級の物 件に集中しており、米国のなかでも最良の 物件を開発し、買収してきたことです。な ぜか? これら物件は市場が上向いている 時は好調になり、市場が下向いている時は さらに好調になることを、私たちが知って いるからです。たとえば私たちの現在のポ ートフォリオでは、総合的な空室率は 5 ∼ 6 %で推移しています。しかし、国全体では、 空室率は12%に達します。市況が良くても 悪くても、A級の建物はB級の建物よりも稼 働率が良いため、私たちの稼働率は一般市 場よりはるかに高いのです。例えていえば、 五番街とパーク・アベニューの住宅用不動 産は、市況が良くても悪くても好調なので す。同様に、都市部で最良の立地条件を持つ A級の不動産は常に、市況が良くても悪くて も好調です。とても単純な理由です。 私たちはこの理由から、パーク・アベニュ ーからパーク・アベニュー399番地全ブロッ クを取得しました。ここにはシティコープ の本社があります。私たちは、ニューヨー クのシティグループ・センターも所有して います。レキシントン599番地とパーク・ア ベニュー280番地も保有しており、タイム ズ・スクエアには、アーンスト&ヤングの本 社ビルがあります。また現在ではタイム ズ・スクエアで別のビルを建設中です。 ボ ストンではプルデンシャル・センターを、ケ ンブリッジではケンブリッジ・センターを、 サンフランシスコではエンバーカデロ・セ ンターを保有しています。その他資産は、主 要都市の物件ほどではありませんが、それ 不動産の低迷期にも好調なA級物件

(19)

講 演 ボストンプロパティーズ社の成長戦略 ぞれのマーケットでは同様に著名である質、 建築、設計などに優れた不動産を保有して います。 今日の事務所市場は、典型的な循環の下 降局面にあります。私たちが設立した企業 は上場企業として、あるいは非上場企業と してこの局面を利用するという方法があり ます。つまり、私たちは財務面の強固な土台 を元に、資金調達をいつも精選して行うこ とができるのです。現在は、恐らく過去40年 来最低の長期レートになっているため、多 くの資金調達を行っています。今週末まで に調達を終える予定で、過去 4 カ月で15億 米ドルの長期資金を調達しました。私たち がすでに完了したプロジェクトの多くを開 始した時点、あるいは現在保有しているプ ロジェクトの多くを購入した時点よりも良 いレートでの調達です。このため、賃料が下 がったとしても、純利益と資金調達の利ざ やは魅力的です。このように、私たちは不動 産ビジネスの循環サイクルのなかで将来の 見通しをもとに運用を行っております。 最終的に問題となるのは、質の高い商用オ フィスの需要がどうなるかということです。 私たちは、商用オフィスの開発と、商用オフ ィスビルの買収だけを行ってきました。そ の需要はもちろん、雇用に左右されます。も し雇用が増えれば、事務所スペースの需要 が拡大します。このため、雇用を拡大してい る企業を誘致できるのはどのような地域か を考えました。ここで、アメリカ人の生活の 基本的な部分が出てきます。アメリカでは、 今日の若者は新しい技術環境を反映した教 育と視野を持つため、アメリカの企業にと って若者を魅力ある存在にしています。そ して、問題はこの人材がどこに行くか、企業 がどこでこの人材を魅了することができる か、ということです。マルクス理論では、金 融資本こそがあらゆる人を金融資本の持ち 主に追随させる偉大な資産でしたが、現代 では、これは知的資本、つまり教育になって いるのです。最もうまく行く企業は、最も有 能な経営陣、とくに新しい技術を理解する 経営グループを持っている企業となるでし ょう。 人々の結婚が遅くなっていますが、人生 の遅い段階で結婚すると人生の遅い段階で 子供をもうけることになります。このため、 独身の人々も若い夫婦も、明確な理由によ り都市部に住むことを好みます。つまり、彼 らは非常に活動的で(文化的、娯楽という 点で)、都市部では彼らが望む生活を送るこ とができるからです。このため、企業にとっ て、採用したいタイプの人々が喜んで働き に行きたいと思うような地域に立地するこ とが魅力的なのです。これは、主要な都市部 の商業中心地区にほぼ集中しています。小 規模な都市もありますが、そうではなく、と くにサンフランシスコや、ワシントン、ニュ ーヨーク、ボストンなど主要な都市部です。 これは、私たちがこのような市場に集中し、 買収の焦点を商業中心地区に変更したもう 一つの理由です。 ここに、重要な根本原理があります。私た 買収の焦点は都市部の 商業中心地区 循環型ビジネスであることを 意識する

(20)

ちは 6 年前の1996年に上場しましたが、そ の理由は以下のとおりです。不動産を買収 し開発する能力は、株主資本を大量に持つ 能力、公募市場から資金調達する能力に通 じるものがあります。私たちは上場以来 5 ∼ 6 年で、株式市場からさまざまな手段で 約40億米ドルを調達しましたが、不動産の 個々の物件にファイナンスするよりむしろ、 コーポレートファイナンス、とくに社債発 行により資金を調達してきました。これに よって私たちは優位に立ち、選択すると同 時に資金調達できる能力、大量の株主資本 を手にする能力を手に入れたと感じます。 私たちの株主資本は今日、少なくとも資産 の50%を占めています。私たちが非上場企 業だった時、債務部分は50%ではなく、恐ら く75%程度でした。今よりも株式は少なか ったのです。市場が景気後退時にあっても、 資金繰りに対する不安を当業界に対して持 たれないように、当社は資本を増強し、それ を維持しているのです。10年に 2 ∼ 3 年は後 退局面に入るという可能性(実際には確率 であり、不可抗力ですが)を考慮して資金調 達やリース事業に集中してきました。私た ちがリース事業で守ってきたことは、常に 長期リースを契約してきたことです。私た ちは10年間あるいはそれ以上の、どのよう な下降局面がいつ訪れても私たちを守って くれるであろうあらゆる物件を契約してき ました。この理由から、私たちのリース期間 の平均が業界のどのリース契約と比べても 長くなっており、恐らく他のどの企業より も契約が満了するスペースの回転率が低く なっています(私はすべての企業に通じて いるわけではありませんが、主要企業につ いては確実に知っています)。 私たちは常に、不動産事業が循環型ビジ ネスだということ、また長期ビジネスであ ることを認識しています。私たちはビルを 建設し、長期的に管理を行い、スペースの質、 建設の質、ビル管理の質を維持し、魅力ある ものにしています。このことが長期的に違 いを生むのです。 私たちは、所得のうち一定の割合を配当 として支払います。これら支払いは企業レ ベル、グループレベルでは課税されず、個人 レベルでのみ課税されます。ですから、私た ちは非常に高い配当利回りを達成していま す。私たちの現在の配当金は約2.53米ドルで す。これによって 6 %を超える、とても魅力 的な利益が得られるほか、この配当金は毎 年、その時点の株価を元に上昇してきまし た。これは、短期国債利回りが 2 %を下回っ た時、5 年物国債利回りが 4 %を下回った時、 10年もの国債利回りが 4 %を下回った時の ことを考えると、魅力的だといえます。これ ら国債のかなり低い金利水準に比べ、このビ ークルがキャピタルゲインを含めて非常に 良い投資ツールになることを意味します。こ のため、当社の株価は比較的堅調ですし、業 界も比較的うまく行っていると思いますが、 私たちが下降局面にあることは事実です。 当社の経験からは、不動産投資がアクテ ィブな運用の対象としてますます魅力的な アセットクラスになってきたことが感じ取 られます。1990年代の投資界においては、き わめて新しいものでありました。私は、これ は下降局面を経てきたという点で重要だと 所得の一定割合を配当として 支払う

表 知識体系の領域別・レベル別整理のイメージ(知識体系構築のための便宜的整理)  (1)  投資分析と  ファイナンス  の基礎  (2)  不動産の基礎  (3) 不動産ファイナンス  (4)  法律  (5)  会計  ①確実性下での資産選択と評価 ②ポートフォリオ理論 ③アセット・プライシング ④債券投資分析 ⑤株式投資分析 ⑥デリバティブ理論  ⑦資金調達決定に関わるコーポレート・ファイナンス ⑧統計分析と統計学の基礎 ⑨経済学の基礎 ①不動産経済学(不動産市場分析、不動産の統計と情報)  ②不動産

参照

関連したドキュメント

三洋電機株式会社 住友電気工業株式会社 ソニー株式会社 株式会社東芝 日本電気株式会社 パナソニック株式会社 株式会社日立製作所

訂正前

世界レベルでプラスチック廃棄物が問題となっている。世界におけるプラスチック生 産量の増加に従い、一次プラスチック廃棄物の発生量も 1950 年から

当法人は、40 年以上の任意団体での活動を経て 2019 年に NPO 法人となりました。島根県大田市大 森町に所在しており、この町は

東京電力パワーグリッド株式会社 東京都千代田区 東電タウンプランニング株式会社 東京都港区 東京電設サービス株式会社

東電不動産株式会社 東京都台東区 株式会社テプコシステムズ 東京都江東区 東京パワーテクノロジー株式会社 東京都江東区

東京電力パワーグリッド株式会社 東京都千代田区 東電タウンプランニング株式会社 東京都港区 東京電設サービス株式会社

東電不動産株式会社 東京都台東区 株式会社テプコシステムズ 東京都江東区 東京パワーテクノロジー株式会社 東京都江東区