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教育プログラムへの マイルストーン

ドキュメント内 2003July-August Vol (ページ 82-86)

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■■1.知識体系の必要性

実務に関する教育プログラムの策定にお いては、まず「習得すべき専門知識」を示さ なければならない。これがガイドとなる

「知識体系」である。具体的には、不動産証 券化商品に関するプロフェッショナルとし て最低限習得すべき知識を重複や欠落なく リストアップし体系化したものである。構 築された「知識体系」をベースとして科目ご との学習時間の配分、教材、学習方法など いわゆる「カリキュラム」が作られる。「知 識体系」は教育(学習)すべき内容であり、

「カリキュラム」は教育(学習の)方法であ り、この二つのコンセプトは異なるが、有 機的に関連する。

「知識体系」は証券アナリストの教育プロ グラムにおいて永年の歴史を有する。アメ リカ(AIMR)の証券アナリスト(CFA)の

プログラムではBOK(Body of Knowledge)、 日本およびアジア・ヨーロッパ・南米の証券 アナリスト協会が参加する国際公認投資ア ナリスト(CIIA)のプログラムではCKB

(Common Knowledge Base)と呼ばれる「知 識体系」が構築されており、カリキュラム のベンチマークとなっている。

「知識体系」は不動産証券化商品のさまざ まな実務に携わる(携わろうとする)者が 各々の業務内容に関わらず共通して習得す べき知識の体系である。これらの人材は、

さまざまな応用力や創造力が求められる不 動産証券化商品の実務の場で、その応用・

創造の土台として、さらに、専門領域を深 めかつ市場全体にも精通したプロフェッシ ョナルとなる土台として、断片的な知識で はなく、体系化された専門知識をしっかり と習得しておかねばならない。一方、この

教育プログラムへの

ような「知識体系」によらないカリキュラム は、教える(学習する)内容が不動産証券化 商品の実務におけるニーズを過不足なく反 映しているかどうかの評価ができないため、

必ずしも十分とはいえない。逆に、「知識体 系」に基づいたカリキュラムは、一定水準 の専門知識を共有する人材の育成、ひいて は不動産証券化商品市場における知識の標 準化、投資家の信頼につながる。したがって

「知識体系」の構築は、カリキュラムを提供 していくうえで不可欠なプロセスといえる。

■■2.知識体系構築の方法

①多岐にわたる専門知識を重要性や特質に 応じていくつかの領域(大科目)に分類す る。各々の領域はそのまま独立した科目 になる場合といくつかの領域が一つの科 目に統合される場合とがある。各々の領 域をさらに中科目、小科目というように 細分化する。

②各科目ごとに基礎レベルと応用レベルに 分類する。

③国を問わず共通する知識(Common)と日 本に独自の知識(Local)に分類する。

④具体的なカリキュラムの対象とする科目 を定める。知識体系の内容を、受講者が あらかじめ習得しておくべき知識、カリ キュラムの対象となる知識、称号取得後 に引き続き習得すべき高度な知識に分類 する。知識体系の基礎レベルと応用レベ ルの一部が具体的なカリキュラムの対象 となる(証券アナリストのプログラムで は、知識体系全体をPre-Candidate  CKB、

Candidate  CKB、Post-Candidate  CKBに 分類)。

■■3.知識体系の領域

不動産証券化商品はファイナンスと不動 産の分野が融合した商品であり、プロフェ ッショナルとして習得すべき専門知識は多 岐にわたる。研究会では、多岐にわたる専 門知識について以下のような領域(大科目)

分類を試みた。別表は、知識体系の領域別、

レベル別整理のイメージであり報告書に掲 載されている。各々の領域の必要性は以下 のようにまとめられる。

①投資分析とファイナンスの基礎

従来の不動産ビジネスでは、不動産価 格の上昇が続いたため証券投資の実務で グローバルスタンダードとなっている投 資やファイナンスの理論が応用される素 地はできにくかった。しかし、不動産証 券化商品は投資財としての認知を高めつ つあり、投資のカテゴリーの一つとして の地位を確立するために、投資やファイ ナンス理論、さらに前提として統計や経 済学に関する基礎的知識が不可欠である。

②不動産の基礎

不動産証券化商品では、投資家が受け 取る分配金は実物不動産からのキャッシ ュフローを裏付けとする。証券化の対象 不動産のキャッシュフローとリスクを予 測・分析し、投資の意志決定を行ううえ で投資財としての実物不動産を多角的に 分析・評価するための知識―不動産経済 学、デューデリジェンス、時価評価の知 識を含めて―が不可欠である。

③不動産ファイナンス

不動産に対するエクイティ・デットの

表 知識体系の領域別・レベル別整理のイメージ(知識体系構築のための便宜的整理) 

(1) 

投資分析と  ファイナンス  の基礎 

(2) 

不動産の基礎 

(3) 不動産ファイナンス 

(4) 

法律 

(5) 

会計 

①確実性下での資産選択と評価 

②ポートフォリオ理論 

③アセット・プライシング 

④債券投資分析 

⑤株式投資分析 

⑥デリバティブ理論 

⑦資金調達決定に関わるコーポレート・ファ イナンス 

⑧統計分析と統計学の基礎 

⑨経済学の基礎 

①不動産経済学(不動産市場分析、不動産の 統計と情報)  

②不動産のデューデリジェンス 

 (不動産状況調査、環境調査、法的調査、経 済的調査) 

③不動産の評価 

④不動産開発・企画 

⑤不動産取引・流通 

⑥不動産経営・管理 

①不動産法の基礎 

 (民法、借地借家法、土地利用と建築に関す る法規制、宅地建物取引業法) 

②金融法の基礎(証券取引法、金融商品販売 法、銀行法) 

③関連法(商法、信託法、株式会社法、有限 会社法、破産法他) 

④不動産証券化商品の仕組みに関する法律   (投信法、資産流動化法、不動産特定共同事

業法、ケイマン法) 

⑤その他関連法制 

 (債権譲渡特例法、サービサー法、保険業法) 

 

①不動産のフェアバリュー 

②不動産のリスク管理 

③不動産価値最大化 

④不動産エクイティ・ファイナンス 

⑤不動産デット・ファイナンス 

⑥CMBS 

⑦REIT 

⑧RMBS 

⑨不動産デリバティブス 

⑩不動産収益率 

⑪アセットミックスとしての不動産 

⑫不動産金融工学(不動産ファイナンスの より実証的分野) 

 (不動産リスク分析、不動産ポートフォリ オ分析、不動産経営戦略、不動産ファン ドの評価、商業用不動産担保ローンと CMBS等) 

⑥法的論点 

①財務会計の基礎 

②財務諸表分析の基礎 

③不動産の証券化に関わる会計の基礎   (連結財務諸表、金融商品会計、リース会計、

信託の会計、匿名組合の会計) 

④不動産の証券化に関わる会計原則・会計 処理 

 (不動産の譲渡人の会計処理、ビークルの 会計処理、投資家の会計処理、金融商品 会計におけるオフバランス化、連結の範 囲、関連分野) 

⑤ビークルの財務分析とパフォーマンス予測    (SPC、投資信託・投資法人) 

(6) 

税務 

①所得税・法人税の概要 

②不動産関連税の概要   

③ビークル段階の課税 

④投資家段階の課税 

⑤国際課税における留意点 

⑥否認の可能性 

⑦各国における課税の概要 

⑧課税の事前予測と事後的紛争の解決 

⑨事例に即した論点 

(7) 

職業倫理 

(8) 

統合分野 

①投資関連法令等  ②不動産証券化商品に関わるプレイヤーの 職業倫理・行為基準 

①不動産証券化商品の種類と市場構造 

②不動産証券化商品の仕組みと法規制 

③資産流動化型商品(CMBS)の組成の実務 

④資産運用型商品(不動産ファンド)の運 用の実務 

⑤不動産証券化における諸問題 

基 礎 分 野   応 用 分 野  

(社)不動産証券化協会作成 

投資、投資後のアセット・マネジメント、

不動産ポートフォリオの運用、不動産を 原資産とする証券化商品の組成や証券化 商品の投資分析・評価等はファイナンス と不動産の知識を融合した不動産ファイ ナンスの領域であり、必須の知識といえる。

④法務

不動産証券化商品の組成ではビークル に関する法律はもとより、不動産法、金融 法等さまざまな法律が関係する。供給さ れた商品を分析・評価するうえで、法的 仕組みを十分理解しなければならないと いう点でも、関連する法律の基礎および 実務上の論点に関する知識が必要となる。

⑤会計

会計の知識は不動産を証券化する過程 に伴うオリジネーター、ビークル、投資 家の会計処理、ファンドやSPC等のビー クルの財務分析など多岐にわたる分野で 必要とされる。

財務諸表は全体が連動するため、不動 産を証券化関連の会計原則、会計処理は 企業会計に関する基礎的知識をベースに 習得すべきである。

⑥税務

税は投資家にとり投資パフォーマンス を下げるコストである。投資家の究極的 な目的は税引き後キャッシュフローの割 引現在価値の最大化である、という視点 に立ち、原資産である不動産の取り引き、

ビークル段階、投資家段階の課税に関し て知識を習得すべきである。

⑦職業倫理

投資家の信頼を得るためには、投資商 品を取り扱うプロフェッショナルとして の高い職業倫理―法令等の遵守にとどま らず、自己規律としてもつべき道徳規範、

倫理まで含むもの―を兼ね備えることも 不可欠である。

⑧統合分野

個別の知識がどのように統合され、実 務で生かされているかを理解するうえで、

不動産証券化商品の市場動向に関する知 識や、商品の組成・投資分析実務を事例 に即して習得する統合的な領域も必要で ある。

当協会では、より詳細な知識体系の構築 に着手し始めたところであるが、最も重要 なことは、日々進化し続ける不動産証券化 商品の実務で必要とされる知識やスキルを いかに過不足なく盛り込み、体系化するか である。すでに確立している理論や制度に 加え、新たに出てきた理論や制度、論点、

実務が先行している分野についても知識体 系に盛り込むことが必要であり、そのため には第一線で商品に関わる実務家の声を十 分反映させることが必須となる。さらに知 識の体系化という点で、教育の専門家であ る学識経験者の協力も欠かせない。知識体 系の構築は文字どおり、産学協同のプロジ ェクトといえる。

(事務局:松井 陽子)

ドキュメント内 2003July-August Vol (ページ 82-86)