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辻野 美穂子

ドキュメント内 2003July-August Vol (ページ 70-74)

アナリスト

総額として評価された額をベースに、格付 けと発行可能額を決定する。

■■3.格付けの視点

(1)想定されるリスク

<土地取得(社債発行前)>

a. 土壌汚染

開発予定地に土壌汚染が認められた場合、

当該予定地にかかるプロジェクト自体が長 期化し、また、最悪の場合にはプロジェク トを中止せざるを得ないケースもあり得る。

さらに分譲販売に与える影響も少なからず 発生する。社債等の返済原資を得るために は定められた期間内に建物を建築し、販売 しなければならない分譲マンション開発型 証券化案件においては、このような土地は 対象物件としては好ましくない。SPCが開 発事業地を取得するに際しては、当該土地 にかかる環境調査を実施し、仮に土壌汚染 が認められた場合には、汚染の程度や分譲 販売に与える影響等から汚染除去の要否や 証券化対象物件とすべきか否かの判断を行 う必要がある。アドバンス・プラチナ案件 では、地歴調査により、白金台PJについて クリーニングで使用する溶剤を起因とする 土壌汚染が存在する可能性があることが報 告され、当該土壌汚染は前所有者であるセ ラーの負担により法令に従って適切に掘 削・除去が行われている。

b. 建設にかかる許認可

開発型証券化は、クロージング時点にお いてまだ存在していないマンションの販売 代金総額(不動産価値)を裏付けとして資金

の調達を行うものであるから、予定建物が 建築可能であること、つまり、建築確認が 下りていることが必要となる。また、建築 確認が下りていることにより、建物規模等 が確定し、当該事業から得られるであろう 将来キャッシュフローの算定が可能となっ てくる。

c. 近隣問題

近隣問題が発生した場合、工期・販売活 動・期中費用(近隣対策費)に影響を与える。

土地の取得に際しては近隣説明および近隣 対策が終了し、近隣問題にかかる影響がない と判断できる状況にあることが必要である。

d. その他

開発予定地に埋蔵文化財が内在する(ま たはその可能性がある)場合、着工までに 長期間を要したり、調査費用の負担が発生 するリスクがある。

<着工〜竣工>

分譲マンション開発型証券化案件は、予 定建物が完成し、販売および引き渡しが行 われることにより社債等の償還原資を調達 することが可能となるため、建物の建設に かかるリスク(完工リスク等)を極小化しな ければならない。

a. 完工リスク

①建設会社の信用力・施工能力

建設会社の選定に際しては、現状、第一 に目標格付け以上の格付けを有する建設会 社またはJVとすることを依頼しており、当 該プロジェクトにおいて格付けを付保する ために一定の水準の信用力があるか否か

(建設会社の財務内容、施工実績、プロジェ クト規模等)について案件ごとに検討を行 っている。また、当該建設会社による工事 の続行が困難になった場合の建設会社の交 代に伴う工事代金の増加に備えて、保険会 社による履行保証または履行保証保険を付 保する等の手当てを求めるケースもある。

アドバンス・プラチナ案件では、下関PJに かかる建設会社の請負債務に関し、SPCを 被保険者としてニッセイ同和損害保険株式 会社(ダブルA格相当)の履行保証保険が付 保されている。

②不可抗力に伴う契約解除の可能性

民間(旧四会)連合協定の工事請負契約約 款によれば、不可抗力により建設会社が施 工できず、かつ、相当の期間を定めて催告 しても解消されない時は、建設会社は工事 を中止することができ、また、不可抗力に よる工事の遅延または中止期間が一定期間 を経過した時は、建設会社は請負契約を解 除することができるとされている。一方で、

分譲マンション開発型証券化案件は、マン ション販売代金を社債等の償還原資として 予定しており、また、後述のとおり不可抗 力に備えた社債の償還期限の延長が設定さ れる。したがって、工事を再開する環境が 整った段階で速やかに工事が再開、続行さ れることが重要であり、工事の中止期間の 経過に伴う請負契約解除のリスクを低減さ せる措置を講ずる必要がある。

b. 工期延長リスク

信用悪化に伴う建設会社の交代や不可抗 力等により、当初予定されていた工期が大 幅に遅延する場合がある。格付けに際して は、どの程度余裕を持った償還期日が設定

されているか、不可抗力に備えてどのよう な措置が取られているか(エクステンダブ ル債の発行等)を検証するとともに、請負 契約において、工事を再開する環境が整っ た場合には建設会社は不可抗力により損害 を受けた工事目的物を除去、修補して速や かに工事を再開、続行する旨規定すること を求めている。

c. 請負代金追加発生リスク

信用悪化に伴う建設会社の交代や不可抗 力等により、当初予定されていた請負代金 に追加費用が発生する場合がある。追加請 負代金の支払順位の劣後化、不可抗力に備 えた保険の付保や現金準備金の積立、建設 会社の交代に伴う請負代金の追加発生に備 えた履行保証保険の付保等を講じる必要が ある。

d. 開発受託業者の信用悪化

開発受託業者の信用悪化により、マンシ ョン開発の業務遂行が滞るおそれがある。

バックアップディベロッパーや資産管理会 社の設置が求められる。

<販売>

a. 販売リスク

①分譲マンションマーケットの販売動向 格付けに際しては、対象プロジェクトに 関するマーケティングレポートをセラーお よび販売代理人のみならず、独立した第三 者調査機関からも取り寄せ、証券化期間中 に回収可能な販売代金総額の算定を行う。

販売代金総額の算定にあたっては、販売開 始時期等も考慮する。

②販売代理人による販売活動

対象プロジェクトの販売動向は、当該プ ロジェクトの所在する地域・圏域における 販売代理人の販売力に少なからず影響を受 けると考えられ、当該地域・圏域における 販売代理人の販売実績や顧客基盤に関する 調査・分析および販売代理人へのインタビ ューを実施する。また、販売代理手数料は、

販売代理人に対するインセンティブフィー としての機能が働く方が好ましい。

b. 販売代理人の信用悪化

販売開始前または販売開始後に販売代理 人の信用悪化が発生し、マンション販売業 務が滞ったり、販売速度が低下するおそれ がある。販売代理人の信用悪化時に販売代 理業務を引き継ぐバックアップの設置が求 められる。バックアップサービサーについ ても、販売代理人と同様に、対象プロジェ クトの所在する地域における販売実績や顧 客基盤が重要視される。また、コミングルリ スク回避の観点から、マンション購入者か らの販売代金の振込方法にも留意する必要 がある。

c. マンション購入者に対する瑕疵担保責任 販売活動に支障が出ないように、瑕疵担 保責任の負担(販売代理人、バックアップ ディベロッパー、建設会社、公的機関また は民間企業等)を決めておくことが必要で ある。アドバンス・プラチナ案件では、バ ックアップサービサーによる瑕疵担保責任

の負担がないため、これに対する措置とし て財団法人住宅保証機構が提供する住宅性 能保証制度を利用することにより、マンシ ョン購入者に対する瑕疵担保責任を補完し ている。

(2)販売代金総額の評価

販売代金総額の評価にあたっては、販売 代理人の販売戦略および活動方針に関して インタビューを実施するとともに、以下の 項目について検討を行い、販売代金総額の 算定を行う。

・立地:分譲マンションとして適した立地 であるか否か

・商品コンセプト:立地・建物規模に応じ た商品コンセプトが採られている か否か

・マーケット状況:販売単価や契約率(初 月、竣工時)の傾向、在庫戸数の 状況

・販売代理人の販売実績:対象物件の存す る地域、圏域における販売代理人 の販売実績および顧客基盤

アドバンス・プラチナ案件の特徴として 地方物件が含まれることがあげられるが、

首都圏と地方とでは販売状況(初月契約率、

竣工時契約率、販売完了までに要する期間 等)が異なっており、販売代金総額の算定 にあたっては、地域ごとのマーケット状況 の調査・分析が重要となる。

<参 考>

分譲マンション開発型証券化案件にかかる日本格付研究所(JCR)の格付け事例については、JCRウェブ サイト(http://www.jcra.co.jp/)において平成14年 2 月15日付「株式会社ディーシースカーラ・ワン」およ び平成15年 3 月10日付「アドバンス・プラチナ特定目的会社」のニュースリリースをご覧ください。

ドキュメント内 2003July-August Vol (ページ 70-74)