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パネルディスカッション

ドキュメント内 2003July-August Vol (ページ 40-55)

 

 

沖野:本日のパネルディスカッションのテ ーマは「日本経済の現状と不動産市場の行 方」です。

まず最初に深尾先生から、今の日本経済 の抱える大きな問題であるデフレについて、

お話しをいただきたいと思います。

深尾:ご指名ですので、日本経済の抱える マクロ的な現状についてお話ししたいと思 います。

デフレの深刻さですが、図表 1 をご覧下 さい。日本経済全体の物価指数であるGDP デフレーターは、ピークの1994年から約 10 %低落しています。今年の1-3月には前年 比 3.5 %低下しており、少しならしてみても 2.5 %前後のペースで下落が続いている厳し

い状況です。この現象の最大の要因は「デ フレギャップ」にあります。

次に図表 2 をご覧ください。実線がGDP デフレーターのデフレ率です。94年にマイ ナスになってから、最近は 2 %強で物価が 下がり続けています。日本経済全体の稼働 率にあたる指標が「GDPギャップ」ですが、

92年以降デフレギャップが続いています。

デフレギャップは人や生産設備が余ってい る状況です。人が余ると失業率が増加し、

職探しをあきらめたりする人が多くなり、

賃金は下がることになります。設備の稼働 率が低いと商業用不動産ではテナントに入 らない。ホテルには人が泊まらない。飛行 機では席が空いている、工場では生産設備 が余っているということが起こります。こ のような状況では、平均的に見ると賃金と 物価が下がることになります。

1981  85  105 

100 

95 

90 

85 

80 

75 

90  95  2000 

図表1 GDPデフレーターで見た物価水準 

(指数) 

GDPデフレーターの  原数値 

消費税の影響除去後の  GDPデフレーター  デフレを止められるのか?

1985  -6.0  -4.0  -2.0  0.0  2.0  4.0 

90  95  2000 

図表2 GDPギャップとデフレ 

(%) 

GDPデフレーターデフレ率 

(3期移動平均後前期比年率) 

GDPギャップ 

このGDPギャップの大きさは 5 〜 6 %程度 となっており、金額にして30兆円近いと思 われます。デフレが進行すると、企業の売 り上げが減少していくため、不良債権問題 も徐々に悪化します。

ある大手電機会社の方から、内部の各部 門の収益管理のための金利に、どのような 数字を使ったらよいのかと聞かれたことが あります。その会社では、社内の管理上の 金利として、会社全体の平均借入金利を賦 課していると話されました。たぶん1.5〜

2 %程度の金利だと思われます。この金利 を払ったうえで、各部門の会計上の収益が トントンだったとしましょう。この場合で も、売上単価が年率 4 %程度で低下してい るため、売上金額は減少しています。この ため、会計上の収益がトントンでも、売り 上げに対比した

借入負担は上昇 し、会社の財務 体質は脆弱にな っ て い き ま す 。 言 い 換 え れ ば 、 会計上の収益が ゼロでも、この 会社の格付けは 下がっていくこ とになります。

表面上収益ゼ ロでも会社の財 務体質が悪化す る の で あ れ ば 、 実質赤字という ことです。この ように考えます と、売上単価の

下落ペースに合わせて借金を返していって、

初めて格付けが維持できることになる。

つまり一言で言うと、「実質金利を見ない と収益は見えない」ということです。見か けの金利だけで、内部の利益計算をしてい れば、自分自身の収益を見誤ることになり ます。デフレで売上単価が下がっていく状 況では、企業の信用状態は悪化し、貸し倒 れで銀行の収益は赤字傾向が続きます。最 近の決算発表でも、大手行では兆単位の赤 字というのはご存知のとおりです。これは 最近始まったわけでもない。

図表 3 をご覧下さい。日本の全国銀行の 利益について、全銀協の発表している財務 諸表の収益部分をわかりやすく組み替えた 表です。2001年の資金運用差益(A)の 9. 8 兆 円というのが、受取利息配当から支払利息

図表3 全国銀行の収益構造 

資金運用差益(A)   その他差益(B)  営業経費(C)

うち人件費  粗利益(D)= 

(A)+(B)-(C)  償却額(E) 業務損益(F)= 

(D)-(E)  資産処分差益(G)  最終損益(F)+(G)

総資産末残 

(1)93年以降ずっと実質赤字       

(2)利鞘の改善には金利引き上げが必要 

(3)金利を引き上げると、貸出先がもたない。 

7.5  2.5  6.6  3.5  3.3  1.4  1.9  2.8  4.7 

943.6 927.6 914.4 859.5 849.8 845.0 848.2 856.0 848.0 759.7 737.2 804.3 772.0 

7.1 

2.6  7.1  3.7  2.6  0.8  1.8  2.0  3.8 

8.9  2.2  7.5  3.9  3.5  1.0  2.5  0.7  3.3 

9.8  2.5  7.7  4.0  4.5  2.0  2.5  0.0  2.5 

9.2  2.8  7.7  4.0  4.3  4.6  -0.4  2.0  1.7 

9.7  2.1  7.8  4.0  4.0  6.2  -2.2  3.2  1.0 

10.8  3.3  7.8  4.0  6.3  13.3  -7.0  4.4  -2.6 

10.7  3.7  8.0  4.0  6.4  7.3  -1.0  1.2  0.2 

10.0  3.6  8.0  4.0  5.6  13.5  -7.9  3.6  -4.2 

9.6  3.1  7.5  3.6  5.2  13.5  -8.3  1.4  -6.9 

9.7  2.5  7.3  3.5  4.9  6.3  -1.4  3.8  2.3 

9.4  3.0  7.1  3.4  5.3  6.6  -1.3  1.4  0.1 

9.8  3.1  7.0  3.2  5.9  9.4  -3.5  -2.4  -5.9 

89  90  91  92  93  94  95  96  97  98  99  00  01  年 度   

(兆円) 

を引いたものです。それに その他差益3.1兆円(手数料、

債権や為替のデーリングの 儲け等)を合計しますと13 兆円の収入がある。そこか ら経費を除くと粗利益 5.9 兆円。これはほぼ業務純益 にあたります。

問題はその下の不良債権 償却額9.4兆円。粗利益と償 却額を比較していただくと 93年度以降、業務損益はず

っと赤字です。銀行は10年間、毎年赤字を 続けています。業務純益は何兆円も上げて いるが、不良債権の処理損の方がもっと大 きい。実質赤字の下で巨額の繰延税金資産 を計上して、見せかけの資本を維持してい るというのが実態です。

りそな銀行に 2 兆円の資本注入が行われ ますが、これはむしろ「補助金」と名前を付 けるべきです。現状では、銀行に巨額の資 本注入をしても、不良債権処理による赤字 のため数年で食いつぶしてしまうのが実情 です。銀行部門全体に対して、年間 3 〜 4 兆円くらいの補助金を与え続ければ現状の デフレでもやっていけるでしょう。言い換 えれば、現状のデフレでは不良債権の処理 損が大きすぎて、業務純益ではカバーでき ないのです。

銀行部門が自らの足で立つためには、貸 出金利を平均で 1 %上げる必要がある。利 ざやを拡大して 5 兆円くらい業務純益を増 やせば、不良債権の処理が毎年ちゃんとで きる状態になる。こうなれば不良債権処理 をしても利益が計上できるため、株価が上 がって増資できることになります。

しかし、貸出先はデフレで売り上げが減 っている状況では、その実現は困難です。

大企業向けの貸出金利は上げることはでき ません。貸出金利を上げれば、資本市場に 逃げてしまうからです。中小中堅企業向け の貸出金利を1.5 〜 2 %引き上げて、5 兆円 の利益を中小企業から銀行部門へ移してや れば銀行はやっていけるのですが、現状で はその実現は無理です。銀行部門の不良債 権を全部なくし、資本を注入し直して、銀 行をピカピカにしても現状の貸出金利では やっていけない。不良債権問題の元凶であ る「デフレ」を止めないことにはどうしよう もない。

では、どうやったら「デフレ」を止められ るか。現在の状況では、日銀が物価上昇率 のターゲットを設けて、TOPIX連動の上場 投資信託やREITを大量に買い取ることが考 えられる。しかし、これでもデフレは止ま らない可能性がある。一般物価が下がり続 ければ、日銀が一時的に株式を買い支えし ても企業収益が改善しなければ株価は下が るからです。

このように考えますと、最後の手段とし

て金融資産の残高に課税して、実質的にマ イナス金利を生み出すことが必要ではない かと思います。

現在の状況は、国民が不動産、株式を売 って、現金・預金・国債を買う資産シフト が行われています。国債金利が10年債で 0.5%、30年債で 1 %というのは国債バブル です。若干のプラスのインフレになれば長 期金利が 4 %台になるのは当然ですから、

そうなりますと10年国債が 4 割くらい値下 がります。その値下がりリスクがありなが ら、金利がわずか0.5%でも買う人がいると いうのは国債バブルです。バブルがあまり に大きくなる前にバブルをつぶす必要があ ります。

政府が保証するすべての金融資産にデフ レ率+αで課税する。これで実質的なマイ ナス金利を達成して、景気刺激を行う必要 があると思います。

沖野:続いて大村先生から、現在の景気の サイクルおよびマクロ経済の現状について おうかがいしたいと思います。

大村:今のマクロの状態ですが、実質GDP の1-3月期は 0 %成長と横ばい状態です。中 身は内需と外需が拮抗しています。これま で、日本は外需にひっぱられていました。

輸出が好調で、いろいろと言いつつも結局 はアメリカ頼みでしたが、その一方で、消 費がよく耐えてきたといえます。

しかし、イラク戦争も一つの原因ですが、

最近は米国向け輸出が伸び悩んでいます。

世界的なデフレ傾向があって、ヨーロッパ も輸出相手として小さくなっている状況で す。そのなかで、アジア向け輸出に急速に シフトしながら、生産が持ち直している構 図になってきました。それによって、外需 頼みで生産が持ち直す一方、国内では企業 が財務リストラをして利益を上げ、設備投 資にギアがかかるのを待つというシナリオ でした。

また、デフレについてもいつかは収まる と考えていたわけです。だから、政府はデ フレスパイラルを認めていなかったし、デ フレスパイラルとは口が裂けてもいえなか ったわけです。

しかし、最近は外需が弱くなってきてい るのに対して、今回の 3 月期決算では消費 が底堅い傾向が出ている。消費性向も上が っている。ただ、これは雇用者所得が下が っていることが効いています。消費につい ては、高級ブランドは売れているが、もう 一方は売れていないという二極化が起こっ ていると思われます。デバートでもデパ地 下は売れているがそれ以外は売れていない。

売れる場所や商品が限定されています。

しかし、消費の好調は、あくまで統計上 のことに過ぎない可能性があります。基礎 となっている「家計調査」はサンプルが少な 沖野 登史彦

マクロ経済の現状

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