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各大学や第三者機関による大学の国際化に関する評価に係る調査研究報告書

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各大学や第三者機関による大学の国際化に関する評

価に係る調査研究報告書

著者

米澤 彰純

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平成 19 年度

文部科学省「先導的大学改革推進委託」

東 北 大 学

代表 総長 井上明久

実施担当者 高等教育開発推進センター・准教授 米澤彰純

各大学や第三者機関による

大学の国際化に関する評価に係る調査研究

報 告 書

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平成19 年度 文部科学省「先導的大学改革推進委託」 各大学や第三者機関による大学の国際化に関する評価に係る調査研究 報告書 東北大学 代表 総長 井上明久 実施担当者 高等教育開発推進センター・准教授 米澤彰純

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はしがき

本報告書は、「大学の国際化に関する評価」という政策課題に対して、現状を調査し、そ れに基づいてビジョン形成に対しての材料を提供しようという試みである。 高等教育の国際化については、Knight らにより、グローバルな知識基盤社会の出現・進 行に対しての高等教育による対応策という理解が一般化してきた。しかしながら、それぞ れの国や地域がおかれた社会・経済その他の文脈によって、実際の国際化へのアプローチ の仕方は大きく異なる。また、米国や日本のように高等教育システムそのものが大規模で 多様化している場合には、そのシステム内の個々の高等教育機関によっても、なにを国際 化ととらえ、どのようにそれを推進していくべきなのか、また、それをどのように評価す べきなのかが違って当然だからである。 このような考えにたち、今回我々がとった手法は、国際化の評価についての一律的な基 準の提案を行うのではなく、その評価のあり方についての様々なアプローチの存在と可能 性を示し、そのことによって、よりよい国際化の評価に対してのアイディアを喚起すると いうものである。 第 1 部では、大学、第三者機関それぞれが、それぞれどのような形で大学の国際化を評 価しようとしているかを、大学については全大学を対象とした質問紙調査、第三者機関に ついては、それぞれのケースごとの検討を通じて示した。また、第 2 部では、世界の様々 な国々や地域のアプローチ、そして、高等教育の国際化に詳しい専門家の意見を採録した。 本プロジェクトは、半年という非常に短い間に行われたこともあり、情報についてはそ の期間のなかでできるものとしてはかなり多く集めることができたと自負しているが、分 析については、今後より深めなければならない部分も多い。しかし、日本の大学の国際化 をいかに政府あるいは社会として支援していくかを考えることは、緊急の政策課題である ことから、まずは生情報に近い形で、いろいろな考えをめぐらすためのアイディア集とし ての提示を優先させることにした。 本調査には、東北大学のスタッフの他、国内外の多くの研究者や専門家の協力・参加を いただいた。また、多くの打ち合わせや会合には、インターネット会議システムを用いて 米国をはじめとする海外からもご参加いただいた。また、当然ながら、快く質問紙調査に ご協力いただいた全国の大学、そして、訪問調査等を受け入れていただいた第三者評価機 関の方々のご協力がなければ、本報告書はできなかった。 評価は、大学に関する情報の創出であり、その文脈を豊かにしうる道具である。すべて のご協力・ご参加いただいた方々に心から感謝を申し上げると同時に、その労にみあうよ うな、日本や各大学の文脈に適した国際化の評価の発展に貢献できれば、望外の喜びであ る。また、特に、このようなプロジェクトで勉強の機会を与えていただき、様々なサジェ スチョンや議論をさせていただいた田渕エルガ氏をはじめとする文部科学省高等教育局高

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等教育企画課の皆様、本プロジェクトの進行を暖かく見守っていただいた東北大学井上明 久総長や荒井克弘副学長・高等教育開発推進センター長を始めとする関係者の方々、そし て、執筆や発表等で貢献いただいた方々、さらに、本プロジェクトに対して暖かいアドバ イスや協力をいただいた、Jane Knight 氏および Urlich Teichler 氏、黄福涛氏、堀江未来 氏、大場淳氏、白鳥義彦氏を始めとする皆様、最後に、私と共にとりまとめの労をとって いただいた、秋庭裕子氏、廣内大輔氏、芦沢真五氏、太田浩氏、米澤由香子氏に心より感 謝申し上げます。 2008 年 3 月 プロジェクト実施担当者 米澤彰純

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執筆者一覧

(2008 年 3 月現在 アルファベット順 翻訳者含む)

秋庭裕子 (ミネソタ大学大学院・博士課程) アロナ (東北大学・経済学研究科・研究支援員) 芦沢真吾 (慶應義塾ニューヨーク学院・事務長) Uwe Brandenburg (CHE 高等教育開発センター)

Hans de Wit (アムステルダム大学・国際シニア・アドバイザー) Gero Federkeil (CHE 高等教育開発センター)

後藤愛 (ハーバード大学大学院・修士課程/国際交流基金) 廣内大輔 (広島大学大学院・博士課程)

Angela, Yung-Chi Hou (高等教育評鑑中心基金会・主任研究員) 金美蘭 (教育開発院) 黒木朋興 (上智大学・文学部・非常勤講師) Shengbing Li/李盛宾 (華南師範大学・国際文化学院長) 村澤昌崇 (広島大学・高等教育研究開発センター・准教授) 長澤誠 (ニューヨーク州立大学大学院・博士課程/慶応義塾ニューヨーク学院) 野田文香 (ジョージワシントン大学大学院・博士課程) 大佐古紀雄 (育英短期大学・専任講師) 太田浩 (一橋大学・国際戦略本部・准教授) リヒター・アクセル (東北大学・経済学研究科・研究支援員) 佐藤亜希子 (日本学術振興会) 末松和子 (東北大学・経済学研究科・専任講師) 高森智嗣 (広島大学大学院・博士課程) 米澤彰純 (東北大学・高等教育開発推進センター・准教授)

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目次

はしがき 第1部 日本の大学・第三者機関による高等教育の国際化の評価:現状と課題 1 第1 章 調査のねらい・対象・方法 3 第2 章 日本の大学における国際化への取り組みとその現状 7 第3 章 大学国際化への支援と評価 25 第4 章 第三者機関による大学国際化に関する評価 43 第5 章 大学の戦略的な国際展開及び組織的な国際化に関する考察 65 第2 部 高等教育の国際化評価をめぐる国際動向 83 第1 章 高等教育の国際化評価の文脈 85 第2 章 アメリカ(1) 国際化に係る政策課題と評価 91 第3 章 アメリカ(2) 米国教育協議会(ACE)による国際化評価活動 111 第4 章 アメリカ(3) 学習成果分析の役割 125 第5 章 アメリカ(4) 米国における大学国際化評価の担い手 135 第6 章 ヨーロッパ(1) 欧州における大学質保証機関 Register 制度 149 第7 章 ヨーロッパ(2) 欧州高等教育圏形成における“Stocktaking”の役割 155 第8 章 ヨーロッパ(3) EBI による欧州ベンチマーキング 167

第9 章 Internationalization of Higher Education in Japan: Interview with Prof. Hans de Wit 171

第10 章 予算組織法 LOLF の指標群から見たフランスの大学の国際化 201

第11 章 ドイツ CHE による高等教育国際化評価指標案(抄訳) 229

第12 章 中国の大学の国際化評価とグッド・プラクティス 249

第13 章 Evaluation Indicator System of University Internationalization: A China Experience 261

第14 章 韓国における大学国際化の現況と評価 273

第15 章 2007 Performance Ranking of Scientific Papers for World Universities and its impacts on Taiwan Higher Education 317

第16 章 IAU による大学の国際化調査 321

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巻末資料 369

z 大学調査票 371

z 大学調査票(英訳) 383

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1 章 調査のねらい・対象・方法

米澤彰純

1. 調査の背景とねらい

日本の高等教育の国際化は、現在、教育政策や科学技術政策の枠を大きく越え、グロー バル化する知識基盤社会のなかで開かれた国づくりを進める日本のなかでの主要政策のひ とつとなっている。政策の重要事項であり、また、そのための予算措置も進んでいること を考えれば、これらの施策に対してのアカウンタビリティを示すための評価はなされて当 然である。また、現状を正確に把握した上でより効果的で戦略的な方向性を示していく上 でも、高等教育の国際化の評価を進めていく意義は大きい。 他方で、しかしながら、高等教育の国際化が何を意味するのかについては、必ずしも関 係者間にコンセンサスがあるわけではない(Goodman 2007)。なお、このことは、別に日本 だけの問題ではなく、国際大学協会(International Association of Universities: IAU 2006) がKnight をリーダーとして進めている世界規模の大学と大学協会を対象とした調査におい ても、高等教育の国際化に込められた多様な意図や意味づけを整理した上での操作的な定 義作りに大きなエネルギーが割かれており、その定義を巡ってもまた、今日に至るまで様々 な議論がくり広げられている(de Wit ed. 2008)。

国家レベルの高等教育の国際化の評価にかんしては、例えば本報告書第2 部第 14 章で金 が紹介している韓国の教育開発院の事例のように、全大学を対象として国際化の進捗度を 統一された質問紙で調査し、分析するようなあり方も現れている。また、日本でも、過去、 大学評価・学位授与機構がテーマ別評価として「国際的な連携及び交流活動」(2002 年度着 手)という評価を実施し、全国立大学と大学共同利用機関が参加し、その評価結果が公表さ れている。国立大学に関しては、2004 年の国立大学法人化に伴って 6 年を周期とする中期 目標・中期計画が策定され、公表されているが、このなかにも、各大学が「国際交流等に 関する目標」を定めることが多い。このようなかたちで、国立大学に関しては、どのよう な国際化に関する目標・計画を立てているかがすでに明示されており、近々その評価結果 が公表されることになるだろう。しかしながら、大学評価・学位授与機構のテーマ別評価、 国立大学の中期目標・中期計画による評価はそれぞれ、各大学のミッションの多様性を前 提とし、そのミッションに沿った形での国際化への取り組みの多様性を尊重したものとな

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4 っている。 第 2 部第 3 章(野田)で動向を示しているアメリカ教育協会(American Council of Education: ACE)などの国際化評価に関する指針や、第 2 部第 17 章に再録されている古城 を研究代表者とする大阪大学(芦沢)の研究成果などから示されているのは、国際化に関 しての操作的な定義を各大学にゆだね、各大学が自らのミッションを明確にし、自己評価 による正確な現状把握を経て戦略的に国際化を進める手助けとしての評価が有効であると いう考えである。日本全体としての高等教育の国際化の評価も、このような各大学のミッ ションや戦略の多様性を尊重した上で、初めて有効なものとなるだろう。 本プロジェクトでは、以上のような考え方に立ち、高等教育の国際化についての一元的 な定義を行って各大学の進捗状況を評価するという形ではなく、各大学や、あるいは第三 者機関などが、それぞれどのような環境の中におかれ、そのなかで高等教育の国際化をど のようなものとしてとらえ、そのうえで、どのような形で評価を自ら実施したり、あるい はすでに存在する評価の機会を活用しているのか、さらに、今後の展望としてどのような 評価のあり方が望ましいと考えているのかを、調査することとした。

2. 調査の対象

本プロジェクトでは、日本における高等教育の国際化に関する評価の現状と課題を把握 する観点から、以下のような調査を行った。 まず、調査対象であるが、高等教育機関における国際化とその評価の取り組みについて は、全国の国公私立大学、また、第三者機関による評価の取り組みについては、機関・専 門職大学院それぞれを対象とした認証評価機関とした。 日本には、高等教育機関として、学校教育法第 1 条に定められた大学、短期大学、高等 専門学校の他、防衛大学校のような省庁所管学校があり、また、現在は、専修学校専門課 程についても、高等教育機関の一類型としての認識が広がってきている。このなかで、特 に大学を取り上げた理由は、大学が、研究・教育・社会貢献その他という複合的なミッシ ョンを担う存在であり、また、それぞれの機関のミッションや位置づけが多様であること から、高等教育の国際化とその評価に関する文脈の把握が、より総合的で包括的な観点か ら行えるとの考えによる。 また、特に大規模な総合大学では、学部や学科ごとにおかれている国際化の文脈が異な ることがしばしばであることも事実ではあるが、今回は、近年学長のリーダーシップの強 化や大学の諸活動に対しての組織的な取り組みが奨励されていること、問題が過度に複雑 化し、全体的な把握が難しくなることから、機関としての調査に限定した。

3. 調査の方法と内容(大学調査)

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5 大学を対象とした調査方法としては、郵送法による質問紙による悉皆調査とし、全国の 国公私立大学756 校(国立 86 校、公立 86 校、私立 584 校)の学長宛に送付し、各大学の 国際関係担当責任者に、記名式で回答を依頼した。発送は、2007 年 12 月 28 日に実施し、 1 月末を締め切りとし、1 月下旬に未回収分について督促はがきを発送、さらに、2 月中旬 に未回収分につき電話での督促をおこなった。また、調査にあたっては、回答者むけのウ ェブサイトを開設し、質問紙をワード形式、rtf 形式の他、エクセル方式でもダウンロード し、着払いによる郵送の他、電子メール・ファックスでの回答も受け付けた。その結果、 2008 年 3 月までに、624 校(国立 77 校、公立 70 校、私立 477 校)の回答を得た。回収率 は、82.5%である。 使用した調査用紙は、本報告書の付録に掲載したとおりである。この質問紙で聞いた主 な調査項目は、大学の運営方針における国際的な取り組みの位置づけ・体制・要因、大学 の諸活動における目標設定における国際的位置づけ・文脈についての意識、国際化と財政 との関連、国際化に関する評価活動や目標設定、評価のための指標やデータの整備と活用、 日本の大学の国際化とその評価についての意見などである。また、各大学に対しては、国 際化の取り組みや評価に関連する資料についても提供を依頼した。

4. 調査の方法と内容(第三者機関)

第三者機関における調査は、先述の通り、機関および専門職大学院の認証評価を行う認 証評価機関5 団体とした。調査方法は、半構造化法によるヒアリング調査とし、2008 年 2 月下旬から 3 月上旬にかけて、各機関にコンタクトを取った上で、各機関が指名する担当 責任者を訪問して行った。主な調査内容は、第三者評価機関としての国際的取り組みの概 要、各大学の国際化の評価の実践例、国際化関連の評価の実施・概要、評価基準等におけ る国際化関連事項、国内評価の国際的通用性にむけた努力、収集資料・情報における国際 化関連指標、大学の国際化の評価に関する意見などである。 なお、このほかの取り組みとして、日本技術者認定機構(JABEE)の取り組みについてウ ェブサイト等の情報をもとに参照した。また、日本学術振興会による大学国際戦略本部強 化事業を取り上げ、太田・佐藤がその取り組みについての分析と紹介を行った。

5. 構成

次章以下の構成は、以下の通りである。 第2 章・第 3 章は、大学調査の分析である。第 2 章では、日本の大学における国際化へ の取り組みとその現状について、また、第 3 章は、大学国際化に関する評価と支援の現状 と課題について、質問紙調査の分析結果を示した。そこで示されたのは、各大学の間で国 際化についての目標や活動のあり方に大きな違いがあり、特に、研究面と教育面それぞれ

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6 の重点の置き方に設置者間などでの違いが見られること、国際化の推進は現時点でも直接 的な経済的効果は得られておらず、政府の一層の支援が期待されていること、評価のため のデータの整備や指標の活用については、まだ改善の余地が十分にあることなどがわかっ た。第 4 章は、認証評価機関に対するヒアリング調査の分析であり、日本技術者認定機構 の取り組みについても参照している。ここでは、第三者による大学評価活動の歴史自体が 新しいことから、国外や国際ネットワークとの連携・交換が盛んなこと、それぞれが対象 とする機関や専門分野の特質によって、国際化に関する評価のあり方が多様であること、 国際化の評価の進展にはまだ大きな余地が残されており、国際化をテーマとした評価を行 う時機が熟していると考えられることなどの知見が得られた。第 5 章は、日本学術振興会 の大学国際戦略本部強化事業の事例の検討である。ここでは、国際化や国際的な諸活動が 相互に関連し、ダイナミックな相乗効果を生むことで、大学の国際交流を総合的に発展さ せ、大学全体のパフォーマンスを向上させるメカニズムの存在が明らかになった。

おわりに

もともと多様な高等教育機関をもち、国際化への文脈も複雑で多岐にわたる日本のよう な高等教育システムの国際化とその評価のあり方が、全体像として把握されたという意味 では、今回の調査は大きな意味を持つ。また、全体として、日本の大学の国際化を進める 必要性は関係者から強く出されており、大学・政府・評価機関等が相互に協力をして、こ の問題にどう取り組んでいけるかが、日本の高等教育の将来を左右しかねない課題として 改めて浮かび上がったといえよう。

参考文献

De Wit, Hans. Ed. 2008. The Dynamics of International Student Circulation in a Global Context, Sense Publishers.

Goodman, Roger. 2007. ‘The concept of Kokusaika and Japanese educational reform’,

Globalisation, Societies and Education, Volume 5 Issue 1, 71-87.

IAU. 2006. Internationalization of Higher Education: New Direction, New Challenges, Paris. IAU.

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2 章 日本の大学における国際化への取り組みとその現状

米澤彰純・廣内大輔・村澤昌崇

はじめに

本章では、大学調査に基づき、日本の大学における国際化への取り組みとその現状につ いて概観する。まず、大学の運営方針における国際的な取り組みのなかで、国際化が与え られている位置づけについて分析を行う。次に、それぞれの大学が自学や日本の高等教育 全体の国際化の現状についてどのように評価しているかについて検討する。最後に、今後 日本の大学がどのように国際化を進めていくべきであるかについての指針や展望について の大学の自己評価と意見についての分析を示す。

1. 国際化の位置づけと目標設定

国際化の位置づけ まず、各大学は、大学運営・経営方針のなかで、国際化をどの程度重視しているのだ ろうか。問1では、各大学が、それぞれの運営・経営方針のなかで、大学の国際的な取り 組みを行うことに対して、どの程度重視しているかを、「他の項目に優先する最重要項目」 「重要項目のひとつ」「項目のひとつ」「少し触れられている」「触れられていない」「その 他」の中から最も当てはまるものを1つ選ぶ形でたずねた。 図 1 はその結果を示したものだが、「最重要項目」との回答は、有効回答中13.1%(国立 7.8%、公立 1.4%、私立 2.5%)にとどまったが、「重要項目のひとつ」との回答は57.0%(国 立81.8%、公立 63.8%、私立 52.0%)あり、併せて 6 割程度、また、国立では 9 割近い大 学が、国際的な取り組みを重視していることがわかった。 1 以下、回答における割合は、特に断りがない限り、不明・無回答・非該当を除外した有効 回答中の%とする。なお、設置者別の集計結果については、巻末に付録として示した。

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8 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 国立 公立 私立 他の項目に優先する最重要項目 重要項目のひとつ 項目のひとつ 経営方針に少し触れられている 経営方針に触れられていない その他 図1 大学の経営・運営方針における国際化の取り組みの重要度(百分率) 計画・目標・戦略の設定 また、問 2 では、国際関連業務の組織運営体制として、どのような形で各大学の国際関 連の具体的な計画・目標・戦略などを定めているかを聞いている。図 2 に示したように、 まず、「大学としての国際戦略、計画・目標などを独立して定めている」大学は、全体とし ては14. 2%にとどまるが、国立では 49.4%と約半数に達し、公立 13.0%、私立 8.6%と比較 して格段に高い。そして、「大学の全般的な計画・方針等の一部として、国際関係の項目が 入っている」大学は、53.5%(国立 70.1%、公立 68.1%、私立 48.6%)にのぼり、これも国 立で比率が高く、私立で比率がやや低い傾向がみられた。他方、「全学共通の国際関係の組 織(留学生センターなど)で、その活動に関する計画・目標を定めている」のは、37.2%(国 立32.5%、公立 17.4%、私立 40.8%)であった。また、「各学部・研究科・専攻などで定め ている例はある」との回答は、11.6%(国立 14.3%、公立 5.8%、私立 12.0%)にとどまっ た。

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9 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 国立 公立 私立 大学として独立して定めている 計画等の一部として入っている 全学共通の組織で目標を定めている 各学部等で定めている例はある 定めていない その他 図2 組織運営体制における国際関連業務の位置づけ(設置者別) すなわち、国公私立とも、少なくとも半数程度の大学では、大学として、あるいは大学 の全般的な経営・方針の一部として機関としての計画や目標、戦略が定められていること になり、すでに学部や学科を越えて、機関として国際化に取り組む行動様式が、多くの大 学で一般化していることがわかる。なお、各学部・研究科・専攻などを含めてまったく「定 めていない」と答えた大学も、14.7%あり、設置者別では国立が 1.3%とほとんどないのに 対し、公立は10.1%、私立は 17.5%もあった。 なお、「大学としての国際戦略、計画・目標などを独立して定めている」大学に対しては、 定めた年についても聞いている。図3は、その結果を大学の実数で設置者別に示したもの である。これをみると、公立・私立では回答がばらつく傾向があり、特に私立は早いもの では1980 年代前半から設定されている大学があるのに対し、国立は 2004 年から 2006 年 に回答が集中しており、国立大学法人化を機に、国際化の取り組みについて、機関として の戦略や計画・目標の策定が進んだと考えられる。

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10 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 国立 公立 私立 図3 大学としての国際戦略、計画・目標などを定めた年

2. 国際的に目指す水準

どのような水準を目指しているか 問4 では、各大学の様々な活動やあり方について、どのような目標設定をしているかを、 「世界トップレベル」「国際的に通用する水準」「国内での高い水準」「地元での高い水準」 「特に意識していない」のうちひとつを選択する形でたずねた。図4 は、そのうち、「世界 トップレベル」、図5 は「世界トップレベル+国際的に通用する水準」それぞれの百分率を 各項目ごとに示したものである。これをみると、特に国立において、「世界トップレベル」 ないし「国際的に通用する水準」以上を回答が、公立・私立よりも圧倒的に多いことがわ かった。なお、国立大学に関して「国際水準以上」としての回答では、国公私立とも、「大 学の名声・威信」の他、「研究成果の水準」「研究活動の活発さ」「教員の質・選抜度」「自 大学の教員・研究者の海外派遣」「外国人教員・研究者の受け入れ」など、研究・教員に関 する項目の目標設定が高く、ついで「社会貢献活動」となっており、「学生の質・選抜度」 「教育内容・カリキュラムの国際性」「自大学の学生の海外派遣」「教育内容・カリキュラ ムの質・水準」「外国人学生の受け入れ」など、学生や教育に関する項目の目標設定は相対 的に少なかったが、私立に関しては、「教育内容・カリキュラム」「学生の質・選抜度」な

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11 どについても相対的に高かった。 他方、国立大学の「世界トップレベル」への目標設定に関しては、「教育内容・カリキュ ラム」「学生の質・選抜度」についても相対的には高く、他方で、「自大学の学生の海外派 遣」「その他の学生の国際交流の機会」については、積極的な回答がとても少なかった。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 全体 国立 公立 私立 図4 世界トップを目標とする大学の割合(百分率)

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12 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 全体 国立 公立 私立 図5 国際的水準(世界トップを含む)を目標とする大学の割合(百分率) 日本の大学は国際水準に達しているか 問16では、日本の大学全体について、研究面、教育面、社会貢献面で、それぞれ国際水 準に達しているかについて、「達していない」という意見について、「そう思う」「ある程度 そう思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」の4段階で聞いた。図6は、その結果を 百分率でしめしたものである。すなわち、研究面については、「国際水準に達している(そ う思わない+あまりそう思わない)」との回答が、52.7%(国立64.9%、公立56.5%、私立 50.2%)と、私立で半数、国立では約3分の2に達した。他方、教育面については、「達して いる(そう思わない+あまりそう思わない)」との回答が、39.3%(国立35.1%、公立47.1%、 私立38.9%)にとどまっている。すなわち、研究に比較して教育については国際的な水準に 達しているとの認識が弱く、過半数の大学が「達していない」と考えていることがわかっ た。最後に、社会貢献面については、「達している」との意見は、32.4%(国立31.5%、公 立49.3%、私立30.0%)と、公立は約半数と多かったが、全体としては約3分の1にとどま った。なお、教育・研究・社会貢献のいずれにおいても我が国の大学が国際水準に「達し ている」との認識を抱いている大学は123校で有効回答の20.3%(国立15.0%、公立32.4%、 私立19.4%)であり、反対に、いずれにおいても「達していない」との認識を示した大学は 219校で36.1%(国立26.0%、公立26.5%、私立39.2%)あった。

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13 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 国立 公立 私立 全体 国立 公立 私立 全体 国立 公立 私立 達している ある程度達している あまり達していない 達していない ? 研究 ? 教育 ? 社会貢献 図6 日本の研究・教育・社会貢献は国際水準に達しているかの意識(百分率) なお、図7は、「達していない」との意見に対しての回答を、「そう思う」を0、「ある程度 そう思う」を1、「あまりそう思わない」を2、「そう思わない」を3とスコア化し、平均点を 示した者である。これをみると、研究については、国立が有意に達しているとの回答傾向 が高く、社会貢献では公立大学が高いが、教育に関しては、設置者間に有意な差は認めら れなかった。

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14 0.00  0.20  0.40  0.60  0.80  1.00  1.20  1.40  1.60  1.80  2.00  研究 *** 教育 社会貢献 *** 国立 公立 私立 図7 日本の研究・教育・社会貢献は国際水準に達しているかの意識(スコア) ※ ***は 1%、**は 5%、*は 10%水準で有意。 どのような大学ランキングを参考にしているか 問11 では、大学運営上参考にしている大学ランキングについて、たずねた。図 8 はその 結果を設置者別に百分率で表したものである。すなわち、最も「参考にしている」との回 答が多かったのが、「国内のメディアによる各種ランキング」の79.9%(国立 85.7%、公立 73.7%、私立 79.8%)である。次いで「国内の偏差値などの入学者選抜のランキング」が 72.9%(国立 60.0%、公立 89.5%、私立 72.8%)であり、国内のランキングが広く浸透し、 また、必ずしもその内容は偏差値に限られなくなってきていることが確かめられた。これ に対して、「世界(国際)大学ランキング」は、全体としては14.4%にとどまったが、国立 は47.1%と約半数が「参考にしている」と回答し、公立 15.8%、私立 8.7%と大きな違いが 認められた。なお、世界(国際)ランキングを参考にしている大学78 校のうち、上海交通

大 学(2007)のランキングに記載されている大学は 29 校、Times Higher Education Supplement(2007)に掲載されているのは 11 校、両方に記載されているのは 11 校となっ ており、実際に世界大学ランキングに掲載されている大学の倍以上の数の大学が、何らか の経営上の関心をよせていることがわかる。

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15 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  80.0  90.0  100.0  世界(国際)大学ランキング 偏差値等による入学者選抜ランキング 国内メディアによる各種ランキング 全体 国立 公立 私立 図8 大学運営上参考にしているランキング(百分率) 威信・序列に関する国内外でのギャップ 問16 では、「大学の国際的な威信や序列は、大学の国内の威信・序列とだいたい同じだ」 という考えについて、「そう思う」「ある程度そう思う」「あまりそう思わない」「そう思わ ない」との4 段階で回答を求めた。これに対しては、図 9 に示したとおり「そう思わない」 「あまりそう思わない」の合計値が、全体で59.7%(国立 56.8%、公立 50.0%、私立 61.5%) と半数を超えており、多くの大学が、国内外で大学の威信・序列に関するギャップが存在 していると考えていることがわかった。

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16 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 国立 公立 私立 だいたい同じ ある程度同じ あまり同じでない 同じでない 図9 国際的威信・序列と国内の威信・序列(百分率) なお、図 10 は、先述の問16(セ)で聞いた国内外の名声・威信のギャップについて、 ギャップがあるとの意見に近いほど大きく3 から 0 までのスコアを与え、目指す水準別に 平均の差の検定をおこなったものである。これをみると「大学の名声・威信」「外国人学生 の受け入れ」「自大学の学生の海外派遣」「その他の学生の国際交流の機会」「外国人教員・ 研究者の受け入れ」「自大学の教員・研究者の海外派遣」「その他教員・研究者の国際交流 の機会」「教育内容・カリキュラムの国際性」「研究内容の活発さ」などを中心に、世界ト ップレベルをめざしている大学においてはギャップが少ないとの回答が多かった。このこ とは、少なくとも世界トップレベルをめざしている大学群においては、多くの教育や研究 を中心とする大学の諸活動のありかたについて、国内外を特に意識せずに目標設定をして いる大学が比較的多いことを意味しているものと考えられる。

(28)

17 0.00  0.20  0.40  0.60  0.80  1.00  1.20  1.40  1.60  1.80  2.00  大学の名声・威信 * 学生の質・選抜度 教員の質・選抜度 外国人学生の受け入れ * 自大学の学生の海外派遣 *** その他の学生の国際交流の機会 *** 外国人教員・研究者の受け入れ *** 自大学の教員・研究者の海外派遣 ** その他教員・研究者の国際交流の機会 ** 教育内容・カリキュラムの質・水準 教育内容・カリキュラムの国際性 ** 研究活動の活発さ * 研究成果の質・水準 社会貢献活動 世界トップレベル 国際的に通用する水準 国内での高い水準 地元での高い水準 特に意識していない 図10 目指す水準と日本の大学の国内外の名声・威信のギャップ(スコア) 以上より、日本の大学の国際化の現状については、国立大学と私立大学とで、かなり認 識が異なることが理解できる。日本の大学全体については、研究面については一定程度国 際水準に達しているとの認識が共有されているが、教育面、社会貢献面ではそうではない。 また、国内の大学ランキングが広く浸透しているのに対し、世界(国際)大学ランキング は国立は半数近くが参考にしているが全体としては参考にしていない大学が圧倒的である。 さらに、外国語の授業も国立では大学院、私立では学部である程度普及がみられたが、全 体としては 10%未満の大学が圧倒的に多いことなど、現状として日本の大学全体として国 際化や国際的取り組みが十分に進んでいるとは言いがたい傾向がよみとれた。

3. 国際化をどのように進めるか

国際化への取り組みを進める要因 問 3 では、各大学の運営・経営方針の中で、国際化への取り組みを進める上でどのよう な目標が重視されているかについて聞いた。図11 に示したように最重要項目を1つ選択し てもらったところ、「国際的な取り組みを通じて、大学の教育・カリキュラム面での充実を 図る」が27.6%、「国際的な取り組みを通じて、学術・研究・知識の水準・生産性を高める」 が26.7%、「大学の活動を通じて,国際協力や社会貢献を行う」が 24.9%となり、この3つ

(29)

18 の回答がほぼ同じような割合で並んだ。同時に、設置者別には回答傾向に違いが見られ、 国立が多かったのは、「国際的な取り組みを通じて、学術・研究・知識の水準・生産性を高 める」というもので、国立では 44.4%に達したのに対し、公立は 40.9%、私立は 20.9%に とどまった。他方、「国際的な取り組みを通じて、大学の教育・カリキュラム面での充実を 図る」というものは、国立は 15.9%、公立は 20.5%なのに対し、私立は 31.1%と若干多か った。なお、「大学の活動を通じて、国際協力や社会貢献を行う」は、国立25.4%、公立 22.7%、 私立25.2%と、大きな違いは認められなかった。 また、「国際的な大学としての特質を備え、社会から国際的な大学であると認知される」 は9.5%(国立 9.5%、公立 4.5%、私立 10.6%)、そして、「外国の大学との連携によって、 カリキュラム提供の幅を広げる」は9.3%(国立 1.6%、公立 11.4%、私立 10.6%)にとどま った。 0.0  5.0  10.0  15.0  20.0  25.0  30.0  35.0  40.0  45.0  50.0  全体 国立 公立 私立 図11 国際化を進める上で重視する目標(最重要項目・百分率) 教員・研究者、学生、職員に関しての国際化の目的 問5・問 6・問 7 では、それぞれ教員・研究者、学生、職員に関しての国際化の目的につ いてたずねた。 まず、教員・研究者について図12 で最重要視する項目についてみていくと、国立の回答 割合が高かったのは、「国際的な志向をもつ教員・研究者を増やす」30.9% (国立 48.7%、公 立40.9%、私立 26.4%)、「世界的に優秀な教員・研究者を獲得する」7.9%(国立 18.4%、

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19 公立7.6%、私立 6.1%)である。これに対して、私立が高かったのは「国際社会・異文化に 対する知識・理解を向上させる」34.7%(国立 15.8%、公立 16.7%、私立 40.7%)、公立が 高かったのは「国際交流の機会を増やす」26.5%(国立 17.1%、公立 34.8%、私立 26.8%) であった。 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  全体 国立 公立 私立 図12 教員・研究者に関する国際化の目的(百分率) 次に、学生について図13 で最重要視する項目についてみていくと、まず、国立が私立よ りも明確に回答割合が高かったのは、「国際的な志向をもつ学生を増やす」21.0%(国立 34.7%、公立 21.5%、私立 18.6%)、「世界的に優秀な学生を獲得する」3.1%(国立 16.0%、 公立1.5%、私立 1.1%)である。これに対し、私立が高かったのが、「国際社会・異文化に 対する知識・理解を向上させる」53.9%(国立 29.3%、公立 46.2%、私立 59.2%)であり、 公立が高かったのが「国際交流の機会を増やす」22.0%(国立 20.0%、公立 30.8%、私立 21.1%)であった。

(31)

20 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  全体 国立 公立 私立 図13 学生に関する国際化の目的(百分率) 最後に、職員についても図14 で同じく最重要視する項目について検討すると、設置者を 問わず最も多かったのは「国際社会・異文化に対する知識・理解を向上させる」63.4%(国 立47.3%、公立 68.2%、私立 66.1%)であった。そして、次に多かったのは、「国際的な志 向をもつ職員を増やす」18.8%(国立 35.1%、公立、23.3%、私立 15.5%)であり、特に国 立大学で多い。他方、「国際交流の機会を増やす」17.1%(国立 14.9%、公立 13.3%、私立 18.0%)は、私立のほうが若干割合が高かった。また、「世界的に優秀な職員を獲得する」 は0.7%(国立 2.7%、公立 0.0%、私立 0.5%)とほとんどなかった。

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21 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  全体 国立 公立 私立 図14 職員に関する国際化の目的(百分率) 英語など外国語による授業の割合 問18 では、外国語による授業のコマ数が全コマ数に占める割合をたずね、図 15 のよう な回答傾向が見られた。すなわち、学部では、0%との回答は、29.1%(国立 16.7%、公立 27.0%、私立 31.6%)にとどまったが、修士(博士前期)課程では 58.1%(国立 23.3%、公立 50.0%、私立 67.8%)、博士(後期)課程では 66.5%(国立 25.9%、公立 70.3%、私立 76.3%) と、学部よりも大学院の方が、外国語による授業が全く設定されていない大学が多く、ま た、国立よりも私立においてその割合が高いことがわかった。 他方、10%以上との回答は、学部では 18.5%(国立 8.3%、公立 22.2%、私立 19.8%)、 修士(博士前期)課程では9.5%(国立 23.3%、公立 6.0%、私立 6.8%)、博士(後期)課程 10.3%(国立 25.9%、公立 5.4%、私立 7.1%)となっている。すなわち、国立では大学院の 方が割合が多く、約4 分の 1 が 10%を超えているのに対し、私立では、学部の方が大学院 より多くなっている。これらの結果は、学部段階での外国語の授業が、主に日本人を対象 として、英語での学習訓練の意味合いを持っていると推察される例が多いのに対し、大学 院段階では、留学生が多いなど教授上の必要性から外国語での授業が開講されるパターン が多いことを反映した結果だと考えられる。 なお、この回答については、「外国語による授業」の定義や理解のしかたについて、特に 割合が多く答えた回答の中に、回答者の間に大きなばらつきがあったのではないかと思わ れるようなものが相当数みられた。本分析のように、10%以上かそれ未満かという水準で

(33)

22 の分析では、実態との大きなずれはないと思われるが、今後このような授業を政策として 推進する場合には、明確な定義付けを行った上でのデータの収集や評価が必要になると思 われる。 図15 外国語による授業の実施状況

まとめ

以下は、得られた調査結果のまとめである。 1. 日本の大学の多くは大学の国際的取り組みを重視しており、特に国立大学では 9 割近 くに達するが、最重要項目としている大学は少数である。 2. 機関としての国際化の戦略や目標・計画を定めるあり方は、国立大学においては 2004 年の法人化以降に急速に広がり、現在ではほとんどの大学が機関レベルの目標や計画 を持つに至っている。これに対し、私立では、早くから戦略や目標・計画を立ててい る大学が存在する一方で、機関としての戦略・目標・計画を持つ大学は、半数程度に とどまる。 3. 3 割前後の大学は、多様な活動に対してそれぞれ国際的に通用する水準を目指しており、 特に国立大学の研究活動やその成果などにおいては「世界トップレベル」が約4 割、「国 際的に通用する水準」では約 8 割に達する。他方で、学生の質・選抜度については、

(34)

23 国際的な水準としての認識がその他の項目に比較して少ない。 4. 日本の大学全体への認識としても、国立を中心に研究面で国際水準に達しているとの 認識が特に高く、公立大学では社会貢献について国際水準に達していると考えている。 5. 世界(国際)大学ランキングを経営上参考にしている大学は、全体としては 1 割強に とどまるが、国立大学では半数近い。また、4 割前後の大学は、国内外の威信・序列に ギャップを感じているが、世界トップレベルを目指している大学の間ではその差は比 較的少ない。 6. 各大学が国際化を進める上で目標として重視しているのは、国公立では学術交流や社 会貢献などであるのに対し、私立大学では教育・カリキュラム等の充実が中心となる。 7. 教員・研究者、学生、職員それぞれについて、国立大学では国際的な志向を持つもの を増やすことが目標とされているが、公私立大学では、国際社会に対する知識・理解 の向上を目標とする傾向がある。 8. 外国語による授業の実施については、学士課程段階については公立・私立で実施率が 高く、大学院段階では国立大学で実施率が高いが、全体として、1 割以上の授業が外国 語で実施されている場合は少ない。 以上より、日本の大学の国際化についての目標設定や活動には、各大学でかなりの多様 性があり、国立大学では研究活動、私立大学では教育活動を中心に、国際化への目標設定 や活動が進められていることが確認できた。また、その上で、かならずしも全ての大学が 国際水準を目指しているわけではなく、また、世界(国際)ランキングを経営上意識して いる大学も少数にとどまるが、国立大学では全体に研究面を中心に、世界のトップ水準や 国際的に通用する水準を目指して活動する大学の比率が比較的高い。これに対して、私立 大学は全体としては教育面での国際化をめざし、活動する傾向が認められる。これらのこ とから、国際化の評価の議論をする上では、このような各大学のミッションの違いに基づ く目標設定の多様性を尊重することが、大前提となるだろう。また、同時に、全体として は、特に教育面、社会貢献面での日本の大学の国際的通用力を高めることが、引き続き大 きな課題として認識されていることが明らかになった。

(35)
(36)

25

3 章 大学国際化への支援と評価

米澤彰純・廣内大輔・村澤昌崇

はじめに

本章では、大学調査に基づき、日本の大学における大学国際化への支援とその評価につ いて概観する。まず、各大学の国際的な取り組みと財政との関連について分析を行う。次 に、大学国際化の評価について検討する。最後に、日本の大学の国際化とその評価につい ての大学からの意見を検討する。

1. 国際的な取り組みと財政との関連

問8 では、各大学の国際的な取り組みと財政との関連についてたずね、図 1 のような結 果を得た。すなわち、最も回答が多かったのは、「国際的な取り組みは、大学のイメージア ップなど非金銭的な効果も考慮して行う」45.3%(国立 53.9%、公立 28.4%、私立 46.4%) で、国立・私立が多かった。次いで回答が多かったのが「国際的な取り組み自体に意義が あり、財政面などでの効果は期待していない」32.0%(国立 34.2%、公立 50.7%、私立 29.0%) であり、これは公立が多かった。「国際的な取り組みは、財政的に負担にならなければ行う」 18.1%(国立 10.4%、公立 18.6%、私立 19.3%)は、公私立の方が回答割合が高く、「国際 的な取り組みは、財政的にプラスであれば行う」2.6%(国立 1.3%、公立 0.0%、私立 3.1%) との回答は、各設置者ともごく少数であった。

(37)

26 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  財政的にプラスであれば行う 財政的に負担にならなければ行う 非金銭的な効果も考慮して行う 財政面での効果は期待していない 全体 国立 公立 私立 図1 国際的な取り組みと財政の関係(百分率) 他方、以上の前提を踏まえた上で、国際化によって、何らかの収入を確保しようと考え る大学は少なくない。問9 では、国際化に関係する収入確保の可能性として、「外国人学生 からの学費」「外国人学生受け入れに関する各種の補助金収入」「外国政府や国際機関など からの研究資金」「国際協力・研究などについての外部組織からの事業資金」についてそれ ぞれ「意識しているか」を多重回答で聞いた。その結果は図 2 に示したが、国公立大学に おいて肯定的回答が多かったのが、「国際協力・研究などについての外部組織からの事業資 金」(全体55.3%、国立 91.9%、公立は 80.4%、私立 45.3%)、国立大学で多かったのが「外 国政府や国際機関などからの研究資金」(全体23.1%、国立 50.0%、公立は 23.2%、私立は 18.2%)であり、いずれも研究や社会貢献を中心とした活動・事業からの収入を意識したも のと言える。これに対して、私立大学において肯定的回答が多かったのは、「外国人学生受 け入れに関する各種の補助金収入」(全体 44.0%、国立 32.4%、公立 7.1%、私立 51.1%)、 ついで「外国人学生からの学費」(全体32.4%、国立 17.6%、公立 5.4%、私立 31.6%)と、 いずれも教育面、すなわち、外国人学生の受け入れに関する項目であるが、直接的な授業 料収入よりも、補助金収入を意識するという回答の方が高い点は、特徴的といえる。

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27 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  80.0  90.0  100.0  留学生が納める学費で大学の収入を増やす 留学生受入に関する補助金収入を得る 国際機関から研究資金を得る 事業資金を外部組織より得る 全体 国立 公立 私立 図2 国際化に関係する収入確保の可能性(百分率)

2. 大学国際化の評価

問10 では、国際関連の事項についてどのような評価活動を行っているかを多重回答で聞 いた。このうち、回答が多かったのは、「大学独自で自己点検評価を実施し、その一部分と して国際関連事項の評価を実施」(全体74.2%、国立 78.9%、公立 81.8%、私立 72.1%)、「第 三者評価(認証評価・国立大学法人評価など)の一部分として国際関連事項の評価を実施」 (全体60.3%、国立 85.5%、公立 57.6%、私立 56.1%)であり、自己点検・評価、第三者 評価の定着が、半数以上の大学で何らかの国際化に対する評価の実施が行われている状況 を支えていることがわかった。他方、「大学の国際関連事項(国際化・国際戦略など)に対 して、独立した評価体制を設けている」大学は全体では3.8%にとどまり、国立大学が 15.8% と一定程度の割合であった他は、公立6.1%、私立 1.2%とごく少数であった。また、「外国 の大学やコンソーシアム・学会等と共同で、ベンチマーキング(様々な指標等による比較) を実施」(全体 3.1%,国立 2.6%,公立 0%,私立 3.6%)「国外の団体のアクレディテーシ ョン(ビジネススクール対象のAACSB など)を受けている」(全体 1.6%,国立 1.3%,公 立0%,私立 1.9%)との回答も、ごく少数であった。

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28 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  80.0  90.0  第三者評価の一部として実施 国外の団体のアクレディテーション 自己点検評価の一部として実施 独立した評価体制を設けている 学会等と共同でベンチマーキングを実施 全体 国立 公立 私立 図3 国際関連の事項について,行っている評価活動(百分率) 国際化において参照される大学、先進的・意欲的な大学 問12 では、「国際化を進める上で参考にしている大学」、問 13 では、「国際化が進んでい るあるいは意欲的であると思われる大学」を、それぞれ 3 校まで大学名で回答を求めた。 なお、大学は、国内外を問わないとしたが、「参考にしている大学」「進んでいる・意欲的 な大学」とも、日本の大学が大部分を占めた。また、回答傾向として、国公立は国公立大 学を、私立は私立大学を挙げる傾向がみられた。

(40)

29 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  国立大学 公立大学 私立大学 外国の大学 合計 国立 公立 私立 図4 国際化を進める上で参考にしている大学 (回答された大学名を設置者別に集計・百分率) 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  国立大学 公立大学 私立大学 外国の大学 全体 国立 公立 私立 図5 国際化が進んでいる・意欲的である大学 (回答された大学名を設置者別に集計・百分率)

(41)

30 国際的な活動と評価 問14 では、大学の国際化に関わる諸活動の実施の有無と、その評価の実施の有無を聞い た。まず、実施している諸活動について図 6 に示したが、全体として国立大学が私立大学 よりも活動の実施割合が高く、また、教育・研究・社会貢献など幅広い分野をカバーして いるのに対し、私立大学で広く普及している活動は、学生と教員の交換や外国からの受け 入れに集中する傾向がみられた。また、図 7 に示した評価の実施の有無も、同様の傾向が 確認された。 0.0  20.0  40.0  60.0  80.0  100.0  学生の海外留学・研修 外国人の教員・研究者の雇用 教員・研究者の海外派遣・研修 学生の英語力の強化 外国人学生への奨学制度・学費免除 研究面での国際協力・連携 外国人学生の積極的な受け入れ 外国人の客員教員・研究員の招聘 国際関連の学科・専攻・課程の設置 国際・異文化コミュニティとの連携 職員の海外派遣・研修 英語での授業・教育課程の整備 国際ネットワーク・コンソーシアム等への参加 海外での教育プログラムの提供 海外との教育連携プログラム の実施 途上国への援助プロジェクトの実施 競争力がある分野に対する重点支援 一定の英語力を進級・卒業要件 海外事務所の設置 教員・研究者の英語力の強化 職員の英語力の強化 海外を含めた遠隔地・通信教育 英語以外の外国語による授業・教 … 海外キャンパスの設置 全体 国立 公立 私立 図6 国際的な活動の実施(百分率)

(42)

31 0.0  20.0  40.0  60.0  80.0  100.0  学生の海外留学・研修 学生の英語力の強化 外国人の教員・研究者の雇用 外国人学生への奨学制度・学費免除 教員・研究者の海外派遣・研修 外国人学生の積極的な受け入れ 研究面での国際協力・連携 国際関連の学科・専攻・課程の設置 外国人の客員教員・研究員の招聘 英語での授業・教育課程の整備 海外での教育プログラムの提供 国際・異文化コミュニティとの連携 職員の海外派遣・研修 競争力がある分野に対する重点支援 海外との教育連携プログラムの実施 途上国への援助プロジェクトの実施 一定の英語力を進級・卒業要件 国際ネットワーク・コンソーシアム等への参加 英語以外の外国語による授業・教育 … 海外事務所の設置 海外を含めた遠隔地・通信教育 教員・研究者の英語力の強化 職員の英語力の強化 海外キャンパスの設置 全体 国立 公立 私立 図7 国際的な活動に関する評価の実施(百分率) データの整備・数値目標の設定 問17 では、大学の国際化に関連するデータの整備状況と、数値目標を設けているかどう かを聞いた。図 8 は、そのうち、全学で整備しているとの回答があった比率を示したもの である。全体的に、国立大学の整備割合は私立大学より高く、私立大学が主に学生や教員 の交換・受け入れにデータ整備の中心があるのに対し、国立大学では、研究関係のデータ も整備が進んでいる。なお、英語で教育ができる教員や、対応できる職員についてのデー

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32 タを整備している大学は、各設置者とも極めて少数にとどまっており、実際にサービスと してどのような人材が活用可能かについて組織的に把握するよりも、個々の構成員の自主 的な活動を期待する傾向が強いと考えられる。 他方、数値目標の設定については、全体的に割合は少ないが、国立よりも私立大学の方 が、積極的に数値目標を定めていることがわかった。しかし、私立大学が、主に学生や教 員の交換についての指標設定に重点があるのに対し、国立大学は、研究での設定目標を立 てる傾向が確認できた。また、国立、私立とも3 割程度の大学が、「学生のTOEFL、IELTS、 TOEIC などの点数」について数値目標をさだめている。すなわち、データ整備は国立を中 心にかなり進んできてはいるものの、全体としてはまだ十分ではなく、また、数値目標な どの形で戦略的にこれらのデータが使われている割合は低いなど、今後この領域での一層 の整備・有効活用を進めていく余地はある。 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  80.0  90.0  100.0  外国人学生数・比率 外国人教員・研究者の数・比率 教員の海外派遣者数・比率 学生の海外派遣者数・比率 国際協定数・コンソーシアムへの参加 職員の海外派遣者数・比率 国際学会での発表 英語等での授業数・比率 国際学会等の国際的な賞の受賞 国際学術雑誌への掲載等 学生のTOEIC等の点数 国際協力・開発援助の実施 引用度高い学術雑誌への掲載数 英語で教育できる教員数・比率 英語で対応できる職員数・比率 卒業生(修了生)の国際的活躍 全体 国立 公立 私立 図8 国際化に関連するデータ整備(全学レベル・百分率)

(44)

33 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 外国人学生数・比率 外国人教員・研究者の数・比率 学生の海外派遣者数・比率 教員の海外派遣者数・比率 国際学会での発表 国際協定数・コンソーシアムへの参加 学生のTOEIC等の点数 英語等での授業数・比率 国際学術雑誌への掲載等 国際学会等の国際的な賞の受賞 職員の海外派遣者数・比率 国際協力・開発援助の実施 引用度高い学術雑誌への掲載数 英語で教育できる教員数・比率 英語で対応できる職員数・比率 卒業生(修了生)の国際的活躍 全体 国立 公立 私立 図9 国際化に関連するデータ整備(一部整備を含む・百分率)

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34 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  80.0  90.0  100.0  学生のTOEIC等の点数 外国人学生数・比率 学生の海外派遣者数・比率 教員の海外派遣者数・比率 英語等での授業数・比率 国際協定数・コンソーシアムへの参加 英語で教育できる教員数・比率 職員の海外派遣者数・比率 国際学術雑誌への掲載等 外国人教員・研究者の数・比率 引用度高い学術雑誌への掲載数 国際協力・開発援助の実施 国際学会での発表 国際学会等の国際的な賞の受賞 英語で対応できる職員数・比率 卒業生(修了生)の国際的活躍 全体 国立 公立 私立 図10 国際化に関連する数値目標の設定(百分率)

3. 大学の国際化とその評価についての意見

日本にとっての大学国際化の意義 問15 では、日本にとって、大学の国際化を今後さらに進めることの意義をたずねた。こ のうち、回答割合が比較的高かったのは、「日本の人材・人的資源の能力向上」(全体88.1%、 国立97.4%、公立 95.5%、私立 85.6%)「日本による国際的な学術連携・協力の推進」(全 体79.8%、国立 93.4%、公立 81.8%、私立 77.2%)「世界での日本文化・社会への認知・理 解を深める」(全体 77.8%、国立 82.9%、公立 63.6%、私立 78.8%)「日本の科学・技術・ 経済における国際競争力の向上」(全体 76.5%、国立 89.5%、公立 74.2%、私立 74.6%)であ った。これに対し、「日本の大学教育を輸出産業として強化する」(全体12.9%、国立 14.5%、 公立 9.1%、私立 13.1%)「政治・文化・学術・貿易などにおける外国との戦略的同盟関係 の発展」(全体31.2%、国立 35.5%、公立 27.3%、私立 31.1%)は比較的回答が少なく、「日 本の周辺地域(アジア・環太平洋など)の優先事項や統合に貢献する」(全体 43.2%、国立 55.3%、公立 43.9%、私立 41.1%)は半数近くが肯定的な回答だった。なお、この質問に関 しては、設置者間の大きな回答傾向の違いはみとめられなかった。

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35 0.0  10.0  20.0  30.0  40.0  50.0  60.0  70.0  80.0  90.0  100.0  全体 国立 公立 私立 図11 大学の国際化をさらに進めることの意義 国際競争力と国際協力 問16 では、日本の大学が国際競争力・国際協力それぞれについて、さらに強化すべき かどうかについてたずねたが、いずれもほとんどの大学が肯定的な回答をよせ、私立より も国立の方が、より強く肯定する回答の割合が多かった。すなわち、「そう思う」「ややそ う思う」の合計割合は、「国際競争力強化」が全体96.6%、国立 100%、公立 98.5%、私立 95.8%であり、「国際協力」は全体 96.3%、国立 100%、公立 95.7%、私立 95.8%にもなっ た。

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36 図12 日本の大学は国際競争力強化・国際協力を進めるべきか(百分率) 外国人教員・研究者の雇用 また、外国人教員・研究者を「もっと雇用すべき」かどうかをたずねたところ、「そう思 う」「ある程度そう思う」の合計が、82.5%(国立 97.3%、公立 84.1%、私立 80.0%)がそ の促進に肯定的な回答をよせた。ただし、特に、公立大学、私立大学では、「そう思う」と いう全面的な肯定意見よりも、「ある程度そう思う」という部分的な肯定意見の方が多く、 外国人教員・研究者の雇用の促進に関しては、何らかの環境整備が求められているとも考 えられる。

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37 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 国立 公立 私立 そう思う ある程度そう思う あまりそう思わない そう思わない 図13 外国人教員・研究者の雇用についての意見(百分率) 大学の国際化・国際競争力強化・国際協力への支援 さらに、大学の「国際化」「国際競争力強化」「国際協力」それぞれへの支援を政府が進 めるべきかについてたずねたところ、図14 に示したとおり、ほとんど全ての大学が肯定的 な回答をよせた。すなわち、それぞれについて「政府が支援すべき」という質問への「そ う思う」「ある程度そう思う」の総計は、「国際化」が 93.3%(国立 97.3%、公立 92.8%、 私立92.8%)、「国際競争力強化」が 92.8%(国立 97.3%、公立 94.1%、私立 91.9%)、「国 際協力」が92.8%(国立 97.3%、公立 94.1%、私立 91.9%)となり、いずれも 9 割を超え た。

(49)

38 図14 政府による国際化・国際競争力強化・国際協力の支援への意見(百分率) 大学の国際化に関する評価 大学の国際化の評価を、「政府」「第三者機関」「大学自身」それぞれが実施すべきかにつ いてたずねた。その結果は、図15 に示したとおりであるが、いずれも肯定的な回答が多く、 設置者別では国立がやや肯定的な回答が多い傾向が示された。すなわち、それぞれについ ての「そう思う」「ややそう思う」の合計割合は、それぞれの評価主体別に、「政府」は70.3% (国立78.7%、公立 66.7%、私立 69.4%)、「第三者機関」は65.5%(国立 73.3%、公立 65.2%、 私立64.3%)、「大学自身」は、75.7%(国立 83.8%、公立 81.2%、私立 73.6%)と、いずれ も肯定的な回答の方が多いが、「大学自身」が最も割合が多く、「第三者機関」が最も割合 が少なかった。

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39 図15 各主体による大学評価実施の是非(百分率) また、「大学の国際化の評価と、財政配分とをリンクさせるべき」かどうかについては図 16 に示したが、肯定的な回答が 50.4%(国立 48.6%、公立 46.4%、私立 51.3%)とほぼ半 数となり、意見がわかれた。 なお、いずれの質問に対しても、設置者間で大きな回答傾向の違いはみとめられなかっ た。

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40 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 国立 公立 私立 そう思う ある程度そう思う あまりそう思わない そう思わない 図16 大学国際化の評価と財政配分をリンクさせるべきか(百分率)

まとめ

以下は、得られた調査結果のまとめである。 1. 多くの大学は、国際的な取り組みから直接的な財政面の効果を期待していない。その 上で、国立大学については研究活動や事業に関わる外部資金の獲得、私立大学につい ては外国人学生の受け入れに関わる資金の獲得を目指す傾向がある。ただし、私立大 学は、外国人学生について、学費よりも補助金を期待する傾向が強い。 2. 国際関連の事項についての評価は、自己点検評価または第三者評価の一部として半数 以上の大学が実施している。 3. 国際化を進めるうえでは、国立大学は国立大学を、私立大学は私立大学を参考にする 傾向が見られる。 4. 国際的な活動の実施と評価については、国立大学が教育・研究・社会貢献など広い範 囲の活動を実施し、また、評価している割合が高いのに対し、公私立大学では、学生 や教員の交換・受け入れ、学生の英語力の強化などに活動・評価の焦点があてられる 傾向がある。 5. 評価のためのデータの整備は、国立大学の整備状況が高く、また、カバーしている範 囲も広い。なお、英語で教育ができる教員や、対応できる職員についてのデータを整 備している大学は極めて少数である。

(52)

41 6. 国際化に関連する数値目標の設定については、全体的に取り組みが進んでおらず、学 生の英語力に関するテストの点数など、一部の指標に限られている。また、国立より も私立の方が、外国人学生数・比率や学生・教員の海外派遣などについて数値目標を 積極的に活用している。 7. 日本の大学の国際化の意義としては、人材、学術、文化などを含めた日本の国際的認 知・競争力の向上が強く意識されている。その上で、ほとんどの大学が、日本の大学 の国際的競争力の強化・国際競争を進めるべきだと考えている。 8. 外国人教員・研究者の雇用については、大多数の大学が、積極的に進めるべきだと考 えている。 9. ほとんどの大学が、大学の国際化・国際競争力強化・国際協力についての政府の支援 を期待している。 10. 多くの大学が、大学自身、政府、第三者機関それぞれによる国際化の評価の実施を推 進すべきだと考えている。 11. 大学国際化の評価と財政とのリンクについては、肯定的意見と否定的意見とに二分さ れており、今後さらに議論を重ねていく必要がある。 以上より、少なくとも現時点では、日本の大学の国際化が、設置者を問わず、特に財政 的な側面において政府や社会の強力な支援を必要としており、その上で、政府や第三者機 関を含めた大学国際化の評価の実施や充実が期待されていることが明らかになった。他方 で、評価と財政配分とのリンクについては意見が分かれており、この点については今後議 論を深めていく必要があるだろう。 また、大学自身による国際化の評価やデータ整備は、国立大学において広範な項目をカ バーする形で進んでいるが、例えば大学教育などより焦点を絞った項目に対して数値目標 を設けるなどの活用をしている大学は、むしろ私立大学の中に多くみられた。 評価の目的として、政府や社会が大学の国際化のあり方を理解し、支援していく上での 説明責任(アカウンタビリティ)を示すという意味での期待と意識は、大学間に広く受け 入れられているようである。しかし、評価をそれぞれの大学のミッションや戦略にもとづ いて自己改善に有効に活用しているかについては、私立大学では一部積極的に進められて いる大学がみられるものの、全体としては、まだ大きな改善の余地があるように思われる。

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参照

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