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Kyushu University Institutional Repository
レーザ生成プラズマ方式極端紫外線光源の高出力化 と長寿命化に関する研究
菅沼, 崇
https://doi.org/10.15017/1441272
出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
レーザ生成プラズマ方式極端紫外線光源の 高出力化と長寿命化に関する研究
菅沼 崇
i
目次
第
1章 序論
11.1 本研究の背景 1
1.2 光リソグラフィ技術 2
1.3 次世代リソグラフィ技術 EUV
光源への期待 4
1.4 リソグラフィ用EUV
光源への要求 7
1.5 本研究の目的と論文構成 9
第
2章
EUVプラズマ生成用高出力レーザシステムの開発 12
2-1. 緒言 12
2-2. Nd:YAG
レーザシステムの開発 12
2-2-1. はじめに 12
2-2-2. 高出力Nd:YAG
レーザシステムの構成および性能 13
2-3. デフォーマブルミラーによるビーム制御 16
2-4. 結論 18
第
3章 高出力
CO2レーザシステムの開発 19
3-1. はじめに 19
3-2. CO2
レーザ開発指針 19
3-3. CO2
レーザシステムの構成と動作特性 22
3-3-1. EUV
光源用高出力
CO2レーザ構成 22
3-3-2. 高速軸流方式増幅システムの特性評価 24
3-3-3. スラブ方式増幅システムの特性評価 33
3-4. 結論 36
第
4章
EUV光源用光学素子長寿命化技術の開発 37
4-1. 光学素子長寿命化の課題 37
4-1-1.EUV
光源からのデブリ
374-1-2. デブリによる光学素子への影響 38
4-2. 磁場による長寿命化技術 42
4-3. ECR
条件を用いた中性粒子イオン化 43
4-3-1. ECR
条件を用いたイオン化技術
434-3-2. デブリ評価技術 46
4-3-3. ECR
条件を用いたイオン化実験構成 49
4-3-4. ECR
条件を用いたイオン化実験結果 51
ii
4-4. 結論 59
第
5章
EUV光源評価技術 60
5-1. EUV
光源への要求仕様 60
5-2. EUV
光源システム構成 62
5-2-1. 高出力CO2
レーザシステム 63
5-2-2. EUV
光集光ミラー 65
5-3. EUV
光源評価方法および評価結果 66
5-3-1. EUV inband
エネルギー評価方法と結果 66
5-3-2. EUV inband
プロファイル評価方法と結果 71
5-3-3. スペクトル評価方法と結果 73
5-3-4. Out-of-band
光評価方法と結果 77
5-4. 結論 78
第
6章 結論 79
6-1. 本研究の結論 79
6-2. 今後の課題 81
参考文献
821
1.
序論
1-1.本研究の背景
半導体集積回路の微細加工技術を成す光リソグラフィ技術において、EUV リソグラフィ が、将来の露光技術として実用化が期待されている。EUV リソグラフィは、13.5nm の極 端紫外光を露光波長として用いる光リソグラフィ技術であり
1,2)、32nm ノード以細におけ る量産露光技術の有力候補とされている
3)。この
EUVリソグラフィに用いる波長
13.5nmを発生する
EUV光源の実現が産業界より要求されており、実用化を目指した研究開発が進 められている。 量産時の
EUV光源には、 出力115W 以上といった高出力が要求されており、
実用化には、本出力を実現することが課題となる。また、高出力化に伴い、プラズマ近傍 に配置される
EUV集光ミラーの環境は厳しいものとなり、長寿命化も重要な課題である。
さらに、波長
13.5nm、115W以上の高出力の光源をどのように評価するかも重要な課題で ある。
本論文は、リソグラフィ用
EUV光源の課題である高出力化、集光ミラーの長寿命化、評 価技術に関して述べたものである。レーザ生成プラズマで高出力
EUV光源を開発するため に、最適なレーザシステムのための実験を行い、有効なレーザシステム構成を提案、検証 した。また、集光ミラーの長寿命化として、レーザ生成プラズマから発生する高速イオン の磁場を用いた制御技術の検証ならびに、ECR 条件を用いて中性粒子をイオン化すること によりさらなる長寿命化の有効性を検証した。さらに、高出力レーザシステムと集光ミラ ーを用い、EUV 光源の評価技術を確立し、測定を実施した。
本章では、
EUVリソグラフィ技術の現状と
EUV光源に対する要求仕様と課題について、
説明し、最後に本論文の構成について説明する。
2
1-2.
光リソグラフィ技術
現在、我々の身の回りの生活環境は、以前と比較して大きく変化している。デジタル情 報機器と呼ばれるテレビ、パソコン、携帯電話、ゲーム端末、デジタルカメラ、デジタル ビデオ、DVD、カーナビといったものがあふれ、いつでも、どこでも誰もが大量の情報を 受信、発信できるようになっている。この発展により、様々な生活分野への情報処理機器 の進出が起こっている。
上記、情報機器は、半導体技術の発展によって支えられている。半導体素子の大きさを 小さくし、同サイズの基板にどれだけ多くの素子を載せられるかで、基板の性能が決まっ てくる。そのため、1基板に多くの素子を載せられるほど、処理性能が向上し、また同時 に素子寸法が小さいほど、処理速度も早くなる。
この高集積化は、半導体素子の微細化によって、成し遂げられてきた。記憶素子である メモリ、情報処理素子であるマイクロプロセッサ(MPU)を中心に微細化、高集積化が進 められている。これらの微細化、高集積化のための技術が、情報処理回路や素子パターン を
Si基板上に作り出す、リソグラフィ技術である。
リソグラフィの語源は、石版画のリトグラフから由来する。現代のリソグラフィ技術は、
設計された回路パターンでマスクを作り、これを
Si基板上に転写するシステム技術である。
また、現在のシステムとしては、図
1-1-1に示されるような縮小投影露光システムが使われ ている。縮小投影露光システムは、光源、コンデンサレンズ、マスク、縮小投影レンズ、
ウェハ、レーザ干渉計、制御ステージで構成されている。本露光システムでは、Si 基板と 比較して小さい狭い領域を一度に露光し、これを繰り返し繋いでいくことで、Si 基板全面 を露光する。
投影光学系はマスク上にあるパターンを
Si基板に結像転写する機能をもっている。その ときの結像性能は、Rayleigh の式と呼ばれる評価量があり、結像線幅
RPと焦点深度
DOFは、開口数
NA(Numerical Aperture)と露光波長λ、k1、k2を比例定数として、次の式 で表される。
2 2 1
NA DOF k
NA RP k
したがって、NA を大きく、λを小さくすることで、より微細化が可能となる。波長λの変
更は、露光装置の開発といった大きな負荷となる。そのため、同一波長での高
NA化が常
に図られている。高
NA化により、微細化が図られている。
3
図
1-1-1 縮小投影露光システム4
1-3. 次世代リソグラフィ技術 EUV
光源への期待
光リソグラフィ技術としては、現在のところ、ArF 液浸が主流となり、MPU、メモリの 製 作 が 行 わ れ て い る 。 ま た 、
ITRS(
The International Technology Roadmap forSemiconductors)では、今後の微細化ロードマップ3)
を図
1-2-1のように示している。これ
によると、
EUV光源が、線幅
32 nm以降の微細加工の有力候補となっており、現在の
ArF液浸露光システムでは、行えない領域となってくる。微細化には、高
NA化、短波長化が 考えられるが、高
NA化は、常に図られており、短波長化の道が正論である。よって、
13.5nmの波長をもつ、EUV 光源が期待されている。EUV 露光技術は、13.5nm の波長を用いた縮 小投影露光技術である。したがって、光リソグラフィ技術を延長し、露光波長をこれまで の
1/10以下にした技術といえる。
図
1-2-2の
EUV露光技術の概要を示す。
EUV露光では、波長が
13.5nmと非常に短く、
装置を真空中に置くことが必要となる。また、透過する材料がないため、ミラー投影光学 系が使用される。ミラーとして使用できるものは、
Mo/Siといった多層膜を用いた反射鏡の みである。
Mo/Si多層膜ミラーは、反射率を
13.5nm近傍にしかもたない、また、反射率は、
最大
70%であるため、露光光学系での損失が大きい。そのことが、波長を 13.5nmに規定
する要因である。さらに、波長が短くなったことに伴い、光学素子の加工、計測にも精度
向上が必要である。
5
図
1-2-1. ITRSロードマップ
3)6
図
1-2-2. EUV露光技術概要
4)7
1-4. リソグラフィ用EUV
光源への要求
リソグラフィ用
EUV光源には、露光装置としての処理速度、すなわちスループットを確 保するために非常に強力な光源が要求される。シンクロトロン放射光は、安定で、デブリ と呼ばれる光源からの飛散物の発生が無い、最もきれいな光源であるとともに、可視光か ら
X線領域まで、連続スペクトルが得られる理想的な光源である。しかし、
EUV露光には、
輝度が足りないため、光学素子の評価等といった実験にて使用されるのみである。現在の ところ、
EUV光源として期待されている方式としては、レーザ生成型プラズマ方式(Laser
Produced Plasma)5,6,7,8,9,10)、放電生成型プラズマ方式(Discharge Produced Plasma)
11,12)が挙げられる。
レーザ生成型プラズマ光源の模式図を図
1-4-1に示す。レーザ生成型プラズマ光源とは、
高出力、高繰り返しのレーザをターゲット物質に照射し、プラズマ化することで発生する
13.5nm
光を利用するものである。以前は、Xe をターゲットに用い、Nd:YAG レーザを照
射する光源が開発されていたが
13)、現在では、レーザ光から
EUV光への変換効率の観点か ら、Sn をターゲットとし、CO
2レーザを照射する光源が実用化光源として期待されている
14)
。
放電生成型プラズマ光源の模式図を図
1-4-2に示す。放電生成型プラズマ光源とは、電極 に高電圧を印加することで、電極間にプラズマを生成することで発生する
13.5nm光を利用 するものである
15)。 レーザ生成型が電気エネルギーをいったんレーザに変換し、 さらに
EUV光に変換する
2段階であるのに対し、放電生成型は、電気エネルギーを直接、EUV 光に変 換するため、総合的な変換効率が高いこと、高出力レーザを必要としないため、コンパク ト化の可能性がある。しかし、放電生成型では、プラズマ周囲に電極が配置され、電極か らのデブリ発生や電極が影になるため、
EUV光の利用効率が低減するといった問題がある。
我々は、プラズマ周囲に放電生成型と異なり、電極等が存在せず、フレキシビリティが あり、レーザ出力、繰り返しにより、高繰り返し、スケーラビリティの用意なレーザ生成 型プラズマ光源の開発を進めている。また、レーザ生成型プラズマ光源は、光源サイズ、
強度分布に優位性が見られ、放電生成型と比較し、EUV 光源としての要求を満たす唯一の 光源方式であると考えられる。
現在、リソグラフィ用
EUV光源に要求されている仕様を表
1-4-116)に示す。
波長は、露光装置に使用される
Mo/Si多層膜の反射波長である
13.5nmが要求されてい る。出力としては、115−180W が要求されている。Mo/Si 多層膜ミラーの反射率は、1 枚 あたり最大でも
70%程度である。現在のところ、露光装置としては、6枚ミラーでの光学系が検討されているが、6 枚ミラー後の出力は、10%程度に低下してしまう。したがって、
光源には、高出力が要求される。また、レジストの感度によっても、必要出力が変わって
くることになり、5mJ では、115W の出力ですむものが、
10mJでは、180W 必要だといわ
れている。
8
表
1-4-1. EUV光源への要求仕様
16)Source Characteristics Requirements
Wavelength [nm] 13.5 nm
EUV power [in-band] 115 – 180 W
Repetition Frequency > 7 – 10 kHz (no upper limit) Etendue of Source output Max 3.3 mm2 sr
Spectral purity
130 – 400 [nm] (DUV/UV) > 400 [nm] (IR/VIS)
( compared with 13.5 nm in-band energy )
< 1 % at wafer (design dependent)
< 10 – 100 % at wafer (design dependent)
Liquid jet target Droplet target
図
1-4-1. レーザ生成型プラズマ光源陽極 陰極
図
1-4-2. 放電生成型プラズマ光源9
1-5. 本研究の目的と論文構成
さきに示したリソグラフィ用
EUV光源への要求から、高出力化、光学素子長寿命化が大 きな課題である。レーザ生成型
EUV光源の実用化には、レーザ光から
EUV光への変換効 率の改善および高出力レーザの実現が不可欠である。さらに、高出力レーザを実現するだ けでなく、電気エネルギーからレーザエネルギーへの効率の向上、装置の小型化が必要で ある。現在、EUV 露光装置には,100 ウエファ/時間以上の必要なスループットを達成する
ために
100 W以上の
EUV出力パワーが要求されている。レーザ生成プラズマでのレーザ
から
EUVへの変換効率は、高効率である
CO2レーザ
Snプラズマにおいて
2〜4%である。したがって、EUV 光集光ミラーの反射率、捕集立体角を考えると、レーザ出力としては、
少なくても
10kW以上が必要となってくる。さらに、上記のような
EUV光への変換効率を 実現するためには、少なくても
109W/cm2以上の高強度が必要である。高出力、高強度を合 わせて達成する必要がある。このような高出力化が可能なレーザシステムの候補としては,
Nd:YAG
レーザおよび CO
2レーザがある。いずれも,ナノ秒のパルス幅で高繰返し,高出
力のレーザが求められ,実用化された後ではさらなる高出力化が求められる。このような 仕様のレーザはこれまでに製作されたことの無いものであり,実際に装置を製作して評価 する必要がある。
また、レーザ生成型
EUV光源の実用化には、集光ミラーの長寿命化の実現が不可欠であ る。プラズマの近くに置かれた集光鏡の寿命は、EUV 露光実現のために経済的コストを下 げるために、一年以上の寿命が要求されている。しかし、プラズマ近傍の光学素子表面は、
プラズマからのデブリによって堆積、削れといった影響を受けるため、反射率が著しく低 下してしまう。
さらに、EUV 光源を開発するためには、EUV 光を評価するための計測装置の開発が必 要不可欠である。我々は、それぞれの課題に対し、以下の研究開発を行うことにより、今 後の
EUV露光実用化のための指針を得ることが可能となり、EUV 光源実用化が加速でき るものと考える。また、EUV 光源が実用化されることにより、我々の生活において、情報 処理装置の微細化が可能となり、処理能力が向上し、来る情報化社会を実現することが可 能となる。
本論文は,レーザ生成プラズマ方式による
EUV光源装置の開発において,高出力
EUV光の発生に不可欠なプラズマ生成用の高出力レーザシステムの開発,装置寿命を制限する 最大の要因の一つである集光ミラーへの付着物に起因する反射率の低下を防止するための 付着防止技術の開発,さらに実用化に際して不可欠な
EUV光源性能の評価技術の確立を目 的として行った研究成果をまとめたものであり,以下の
6章から構成される.
第
1章では、本研究の背景と目的について述べる。
10
第
2、第3章では、
LPP方式
EUV光源の高出力化に不可欠となる、高出力パルスレーザ 開発について述べる。高出力のパルスレーザとしては、Nd:YAG と
CO2を用いる方法が提 案されている。いずれも,ns で高繰返し,高出力のレーザが求められ,実用化された後で はさらなる高出力化が求められる。このような仕様のレーザはこれまでに製作されたこと の無いものであり,実際に装置を製作して評価する必要がある。
第
2章では、EUV 光源用高出力レーザシステムとして、パルス
Nd:YAGレーザの構成 と性能について詳述した。小出力のパルス
Nd:YAGレーザ発振器に
LD励起
Nd:YAG増幅器を用いる
MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式を採用して, EUV光を生成するレーザパルス出力として最大
1.4kW,パルス幅
15nsec,繰り返し周波数
100kHzの性能を得るとともに,ビーム品質や安定性などの特性を評価している。
しかし、Nd:YAG レーザシステムでは,高出力動作時のビーム品質の劣化が激しく,さら なる高出力化は困難と判断した。
第
3章では、現在、最も最適だと考えられている
EUV光源用高出力レーザシステムとし て、CO
2レーザシステムの開発結果を述べる。CO
2レーザシステムは、小出力のパルス炭 酸 ガ ス レ ー ザ 発 振 器 に 市 販 の 連 続 発 振 用 炭 酸 ガ ス レ ー ザ を 増 幅 器 と し て 用 い る
MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式を採用して, EUV光を生成するレ ーザパルス出力として最大
8kW,パルス幅
20nsec,繰り返し周波数 100kHzの性 能を得るとともに,ビーム品質や安定性などの特性を評価している。また、今後実用 化に対しては、増幅器の増幅効率改善が必要である。そのためには、スラブタイプの
CO2レーザを用いて、装置規模の縮小化を図る必要がある。スラブタイプの
CO2レ ーザを増幅器として用いて、増幅効率のよい増幅器であることを実証した。
第
4章では、EUV 用集光ミラーへの中性粒子付着による反射率低下を改善するために、
ECR
条件を用いた中性粒子のイオン化による実験結果を述べる。QCM を用いて、堆積量 を測定し、磁場を用いたイオン制御により、集光ミラーへの堆積量は、約
60%に低減することを確認した。また、ECR 条件を用いて、磁場でコントロールされたイオン信号量は、
1.5
倍に増加することを実証した。本
ECR条件を用いた中性粒子イオン化により集光ミラ ー寿命は、最大
1.5倍になる可能性があると見積もられる。
第
5章では、高出力
LPP方式
EUV光源の集光点での性能評価技術、結果について述べ
る。EUV 光は、13.5nm と非常に短く、真空装置内での計測が必要である。また、光源に
要求されている仕様は、13.5nm のみではなく、非常に幅広い波長域にわたっている。集光
後の
EUV光源性能を高出力
LPP方式光源で直接測定した例はなく,実用技術として確立
するには直接測定により設計値を評価する必要が有る。EUV 光源システムには、CO
2レー
11
ザを励起レーザとして、ターゲットには、錫を用いた。プラズマ発光点での計測値からの 集光点換算値
16Wに対して、集光点での実測値でも
16Wの出力を確認した。本計測結果 より、設計値通りの出力が集光後に得られることが実験的に確認できた。また、EUV 出力 の他に、EUV 光スペクトル、EUV 光イメージ、EUV 以外の波長での出力を評価した。
第
6章では、本研究で得られた成果をまとめ、今後の課題を述べる。
12
2. EUV
プラズマ生成用高出力レーザシステムの開発
2.1. 緒言
現在、EUV 光源には、100 W 以上の出力が要求されている。レーザ生成プラズマでのレ ーザから
EUVへの変換効率は、実験的に測定されており、数%である。EUV 用高出力レ ーザシステムの可能性があるものとして,Nd:YAG レーザシステムと
CO2レーザシステム の可能性が有る。いずれも,ns で高繰返し,高出力のレーザが求められ,実用化された後 ではさらなる高出力化が求められる。このような仕様のレーザはこれまでに製作されたこ との無いものであり,実際に装置を製作して評価する必要がある。本章では
Nd:YAGレー ザレーザシステムを構築して,EUV プラズマ生成用のレーザとしての可能性を特に出力と ピーム品質の観点から評価したので、報告する。
2.2. Nd:YAG
レーザシステムの開発
2.2-1. はじめに
EUV生成用レーザとしては、1990年代から2000年前半まで一般にNd:YAG固体レーザ
(波長1μm)が用いられてきた。近年の固体レーザ技術の進歩は著しく、CWレーザでは キロワットレベルの出力を持つ製品が開発、販売されている
17,18,19)。しかし、EUV光を発 生させるためのプラズマ生成には、高ピークエネルギーが要求されるため、EUV生成用レ ーザとしてはナノ秒パルスレーザであることが求められる。また、その仕様は、パルスエ ネルギーが500 mJ程度、パルス幅が〜数十 ns程度であることが望ましい。
Nd:YAG
レーザは広く採用されている固体レーザ媒質であり、パルス、
CW双方の動作環
境で高い効率と信頼性が実証されている。従来のランプ励起方式は、量子効率が低いこと に起因する発熱のため
Nd:YAGロッドに熱ひずみが生じる。このため、増幅されるレーザ 光も歪が大きくなり限界まで集光できないという問題がある。近年、開発が進んでいる半 導体レーザ励起方式は、この点が大きく改善されており、パルス、
CW双方の動作で共に実 用的な製品が出現しつつある。そのため、半導体レーザ励起の
Nd:YAGモジュールを採用 し、高出力レーザの開発を進められてきた。
しかし、前述したようにロッドタイプの高出力固体レーザでは、熱ひずみの問題により 偏光特性の悪化、集光性能の悪化、レーザシステムの光学素子の破損を生じることとなる。
ロッドでの熱ひずみ問題を解決するために、
Yb:YAGといったレーザ媒質を利用し、ディス ク、ファイバーといった新しいレーザタイプの開発が進められており、これらのレーザは
CWで、
kW以上の出力が得られるようになっている
20,21)。しかし、これらの熱ひずみを低 減したレーザタイプでは、パルスエネルギーに限界があり、EUV 生成用レーザとしては、
高強度パルスレーザが必要であり、利用するには、更なる開発が必要である。
13
2.2-2. 高出力Nd:YAG
レーザシステムの構成および性能
ここで、我々が開発した
EUV用
Nd:YAGレーザの構成ならびに性能を報告する。
我々は、高出力パルス
Nd:YAGレーザを達成するために、産業用途で実績のある加工用
Nd:YAG
レーザを組み合わせて用いた。具体的には、マスターオシレータに市販品の高繰
り返し、低出力のパルスレーザーを、アンプモジュールには
LD励起の
CWレーザーを用い た
Master Oscillator Power Amplifier(MOPA) システムを採用した。図
2-1.に高出力Nd:YAGレーザシステム構成図を示す。
図
2-1.高出力Nd:YAGレーザシステム
(1) 発振器
マスターオシレータには、EUVへの高い変換効率を達成するために、10ns以下のパル ス幅が要求される。また、高い集光性を有する必要がある。本マスターオシレータの仕様 を表2-1、外観、ビームプロファイルを図2-2および図2-3に示す。本オシレータは、パルス 幅10ns以下を達成のために、共振器長を短くし、かつ良好なガウシアンビームプロファイル を達成するために、ファイバーカップリングにて媒質を励起している。
表
2-1.マスターオシレータ仕様
出力
7W at 10kHzパルス幅
7 nsec(FWHM)M2 <1.5
発振波長
1064nm14
図2-2 マスターオシレータ
図2-3 ビームプロファイル
(2) 増幅システム
プリアンプ、メインアンプ、ブースターアンプモジュールは、半導体レーザ励起であり、
各アンプモジュールは、励起用の
LD出力が異なり、後段に行くほど、高出力の
LDで励起 されている。したがって、各アンプモジュールから出力を効率よく取り出すために、必要 となる入力が異なってくる。各アンプでの増幅特性を図
2-4、2-5、2-6に示す。さらに、得 られた増幅ビームプロファイルを図
2-7に示す。増幅ビームプロファイルは、各アンプ
Nd:YAG
レーザモジュールのレーザ媒質への熱ひずみにより、当初のビームプロファイル
を保存していない。増幅ビームを焦点距離
200mmの凸レンズで集光した際に、スポット径
が
200μm程度であり、M
2メータでの測定結果は
40であった。これでは、EUV 生成時のタ
ーゲットサイズとの最適化が不十分となり、EUV への変換効率の向上が困難である。その
ため、デフォーマブルミラーを用いた波面補正を行う必要がある
22,23)。EUV 変換効率向上
のため、デフォーマブルミラーを用いて、最終ビームプロファイルの補正を試みた。
15
図
2-4. プリアンプ増幅特性図
2-5. メインアンプ増幅特性図
2-6. ブースターアンプ増幅特性16
図
2-7. 増幅ビームプロファイル2.3 デフォーマブルミラーによるビーム制御
デフォーマブルミラーは、図
2-8に示すように、エッチングされたシリコン基板上に、誘 電体多層膜コートした窒化シリコン薄膜ミラーを取り付けたものである。この基板をマト リックス状に配置された静電型アクチュエーターで制御し、ミラーの面形状を変化させる。
図
2-8にデフォーマブルミラー構成を示す。また、本デフォーマブルミラーは、静電効果を 利用した方式によりミラー面形状を変化させるため、ピエゾ素子を用いた場合よりも低コ ストで量産が可能であり、また形状変化に必要な電圧も低くて済むため、高速応答が可能 である。また、静電効果を利用してミラー面形状を変化させるため、ミラー基板と本体は 非接触であり基板の裏面には電極のみが取り付けられているため、ミラー表面には、どの ようなミラーコートも可能であり、高反射率、高耐ダメージな誘電体多層膜コートを施す ことにより、高出力レーザの共振器ミラーに使用することも可能である。本デフォーマブ ルミラーを用いて、ビームプロファイルの補正を試みたので、以下に報告する。
18mm 2 mm
18mm 2 mm
18mm 2 mm
図
2-8.デフォーマブルミラー構成図
17
表
2-2. デフォーマブルミラー仕様Parameters
Number of Actuators Actuator Spacing Diameter
Applied Voltage (max) Central Actuator Throw Edge Actuator Throw Resonance Frequency Coating
37 2 mm 18 mm
200 V 10 microns
1 micron
>1 kHz Dielectric Coat
1064 nm HR
まず、はじめに低出力化でのビーム補正試験について示す。図
2-9に補正試験配置図、補 正結果を示す。評価は集光スポットでの集光密度によって行い、レーザ強度としては補正 前と比較して、約
2倍が得られた。
また、レーザシステム各増幅段での
M2を測定したところ、マスターオシレータ
M2=1.5、プリアンプモジュール増幅後
M2=1.5、メインアンプモジュール増幅後M2=20、ブースターアンプモジュール増幅後
M2=40であった。本結果よりメインアンプモジュール入出力での、
M2
の悪化が顕著であることがわかる。そのため、図
2-10に示すように、プリアンプモジュ ール増幅後にデフォーマブルミラーを導入し、メインアンプモジュール増幅後のビームを フィードバックし、補正を試みた。結果、メインアンプモジュール増幅後の
M2を
10以下 にすることができたが、出力が補正前と比較して
30%低下してしまった。ビームプロファイルを保存して増幅するためには、励起されたロッドのうち、均一に励起された中央部の みしか使用できないためであると考えられる。
また、本レーザシステムでは、1.4kW の出力で最終増幅器の
Nd:YAGロッド表面が損傷
してしまった。したがって、パルス高出力
Nd:YAGレーザは、1 ビームで
1.4kW程度まで
の出力しか得られないこととなる。EUV 光源には、10kW 以上の出力が求められているた
め、Nd:YAG レーザでの達成は困難である。
18
図2-9. 補正試験配置図(上)および補正結果(下)
図
2-10. 波面補正試験配置図2.4
結論
・Nd:YAG レーザの
MOPAシステムを構築し,出力
1.4 kW,パルス幅
15ns, M2=40を 達成した。
・ピーム品質を評価し,発振機の
M2=1.5に対し,結晶の熱ひずみのためにメインアン
プ増幅後
M2=20,ブースターアンプ増幅後には
M2=40に低下することが示された。
・増幅システムの光路に波面補正用のデフォーマブルミラーを設置して,メインアンプ 後のビーム品質改善を試みた。その結果,M
2は
10以下まで改善できたが,出力エネル ギーは補正前と比べて
30%低下した。以上の結果から、Nd:YAG レーザシステムでは,高出力動作時のビーム品質の劣化が
激しく,さらなる高出力化は困難と判断した。
19
3.
高出力
CO2レーザシステムの開発
3-1. はじめに
CO2
レーザは、 現在商用の加工用レーザで
10 kW以上の出力が
CW発振で得られている。
また、発振効率も
10 %以上と高い。しかし、媒質がガスであるため、高出力を得るためには、レーザ媒質の体積を大きくとる必要がある。結果、レーザが大型化してしまうことと なる。しかし、Nd:YAG レーザといった固体レーザに対して、レーザ媒質がガスであるた め、強励起による破損がないこと、温度分布による熱レンズ効果がないことがメリットと して挙げられる。加工用レーザでは、CW 発振であるため、EUV 光を発生するような高温 プラズマ生成ができない。 本節では、
EUV光を高効率に発生するための短パルス高出力
CO2レーザシステムの開発指針と、開発結果について、詳しく述べる。
3.2. CO2
レーザ開発指針
TEA(Transverse-Electric-Atmospheric
)レーザは、短パルスで高いエネルギーを出力 することが可能である。しかし、放電をパルスで行うため、パルス電源の発振周波数に制 限があるゆえに、高い出力が得られない問題がある。一方、RF 励起の
CO2レーザを用い、
Q
スイッチで高エネルギーのパルスを得る発振器モードおよび発振器−増幅器モードでの 報告がされている
24, 25)。典型的な性能としては、4 kHz の発振周波数で
680 W、パルスエネルギー170 mJ、パルス幅
250 ns(FWHM)、10 kHz の発振周波数で、700 W、パルス エネルギー70 mJ、パルス幅
35 ns(FWHM)であった。それぞれの
CWでの出力は、
2 kW、7 kW
であるため、レーザ効率としては、決して高いものが得られていない。
CO2
レーザの発振原理を以下に示す。
CO2
は直線上の
3原子分子であり、その振動に関して
3つの自由度がある。それぞれの エネルギー準位を図に示す。CO
2の上位準位から下位準位の遷移におけるエネルギー差は 小さく、この遷移も伴うレーザ発光の波長は、約
10.6μmである。基底状態の
N2(ν=0)
は放電によって生成されるプラズマ中の電子との衝突によって、上位の振動準位(ν=1)
へと励起される。そして、CO
2(000)の基底状態から上位準位(001)への励起は、基底 準位の
CO2(000)と励起された
N2(ν=1)との衝突によって生じる。このエネルギー交 換は、N
2(ν=1)におけるエネルギー準位が、上位準位
CO2(001)に極めて近接したエ ネルギーをもち、かつ寿命の長い準安定準位であることによる。
CO2分子は、上位準位(001)
より誘導放出を行って、下位準位の(100)または(020)にうつり、さらに緩和過程によ って(010)を経て基底準位(000)へと移る。この誘導放出において、レーザ発光が行わ れる。
ガス温度が上昇すると
CO2(000)から(010)への熱励起が増加してしまうため、 (100)
または(020)から(010)への緩和過程を妨げる。したがって、この温度上昇を避けるた
めに、He を加えて(010)から(000)への緩和過程を促進させる必要がある。He は
CO220
と比較して比熱が高いので、ガス温度上昇を抑制し、 (010)準位の緩和を促進する効果を もつ。そのため、一般的には、CO
2レーザ媒質ガスとしては、CO
2-N2-Heの混合ガスが使 用される。
図
3-1. CO2レーザのエネルギー準位図
RF
励起の
CO2レーザとしては、拡散冷却(スラブ) 、高速軸流タイプの
2タイプがあり、
それぞれの方式の特性を示す。
まず、拡散冷却(スラブ)タイプの概念図を図
3-2に示す
26)。拡散冷却レーザでは、電 極は、金属電極を用い、放電ギャップは、数
mmである。放電ギャップ長を狭くすること により、放電によって発生した熱を熱伝導によって電極より取り除けるため、高速軸流レ ーザで必要であるブロア、熱交換器が不要となる。結果、レーザ装置を大幅に小型化でき る。
次に、高速軸流タイプの概念図を図
3-3に示す
27)。高速軸流レーザでは、レーザガスを
ブロアにより光軸と同一方向に流して、放電によって生ずるガス温度上昇を取り除く構造
となっている。RF による電界は、光軸と垂直になっているので、電極間電圧を低くするこ
とが可能であり、装置の小型化が可能である。また、図
3-3は、放電管1本分での構成であ
るが、実際のレーザ装置では、複数の放電管を直列に配置し、構成されている。
21
図
3-2. RF励起拡散冷却レーザの概念図
図
3-3 RF励起高速軸流レーザの概念図
それぞれのCO
2レーザには次のような特性がある。スラブタイプは、ガスを拡散冷却する ために、電極間数mmと非常に狭くする必要がある。また、高出力化のためには、放電面積 を広くすることでのみ対応可能である。また、高速軸流タイプでは、ガスを循環冷却する ことにより、電極間を大きくとることが可能である。
そのため、初段に、スラブタイプ、後段に、高速軸流タイプを使用することが、もっと
も効率よく、増幅器特性を利用できると考える。
22
3.3 CO2
レーザシステムの構成と動作特性
3.3-1 EUV
光源用高出力
CO2レーザ構成
パルス幅
15〜30 nsで、
10〜30 kWの
CO2レーザ出力を1段の増幅器で実現することは 非常に困難である。そのため、我々は、多段の
MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)
システムによる達成を試みた。図
3-4にレーザシステム構成を示す。本システムは、短パル ス高繰り返しの発振器(Master Oscillator)と多段の増幅器(Power Amplifier)で構成さ れている。
短パルス発振器は、EO
Q-スイッチにより15〜30 nsのパルスを得ることができ、多数 ある
CO2レーザの発振線から利得の高い
P(20)のシングルラインで発振する。また、発振器の出力は
60 W、そのときの発振周波数は、100 kHzである。発振周波数は
10〜140 kHzまで変更可能である。
増幅器としては、発振器での
CW出力として
5 kW、15 kWが得られるものを使用した。
それぞれの増幅器は、13.56 MHz の
RF励起、高速軸流タイプのレーザである。レーザを 増幅器として使用するために、共振器用ミラーをウィンドウに交換して使用した。
5 kW
出力のレーザは、標準ガス組成として、
CO2:N2:He=5:29:66、ガス圧としては、120 torrで使用した。ガス流速としては、レーザチューブ内のガス温度を維持するために十分 な速度である。レーザチューブ1本当たりの長さは
15 cmであり、1台のレーザ当たり
16本のレーザチューブが使われている。レーザチューブの内径は、17 mm である。また、レ ーザ1台当たりの光路長さは、590 cm ある。発振器として
5 kW出力時の集光特性は、
M2=1.8
である。また、励起パワーとしては、
36 kWであり、発振効率は、約
14 %である。15 kW
出力のレーザは、標準ガス組成として、CO
2:N2:He=2:10:48、ガス圧としては、150 torr
で使用した。レーザチューブ1本当たりの長さは
28 cmであり、1台のレーザ当
たり
16本のレーザチューブが使われている。レーザチューブの内径は、30 mm である。
また、レーザ1台当たりの光路長さは、
890 cmある。発振器として
15 kW出力時の集光特
性は、M
2=4.2である。また、励起パワーとしては、88 kW であり、発振効率は、約
17 %である。
23
Main-Amplifier RF-excited CO2 laser Pre-Amplifier
RF-excited CO2 laser Oscillator
Wave length: 10.6um Rep. rate :100kHz
Pulse width :20 ns (FWHM)
60W 3 kW
8 kW
Main-Amplifier RF-excited CO2 laser Pre-Amplifier
RF-excited CO2 laser Oscillator
Wave length: 10.6um Rep. rate :100kHz
Pulse width :20 ns (FWHM)
60W 3 kW
8 kW
図
3-4. CO2レーザ構成
24
3.3-2 高速軸流方式増幅システムの特性評価
高速軸流タイプの概念図を図
3-5に示す。高速軸流レーザでは、レーザガスをブロアによ り光軸と同一方向に流して、放電によって生ずるガス温度上昇を取り除く構造となってい る。RF による電界は、光軸と垂直になっているので、電極間電圧を低くすることが可能で あり、装置の小型化が可能である。また、図
3-5は、放電管1本分での構成であるが、実際 のレーザ装置では、複数の放電管を直列に配置し、構成されている。図
3-6に実際のレーザ 装置の概略図を示す。
図
3-5 RF励起高速軸流レーザの概念図
25
図
3-6. RF励起高速軸流レーザ装置概略図
26
(1) 増幅特性
MOPA
システムでの増幅特性を図
3-7に示す。
MainAMPへの
3 kWの入力に対して、8
kWの出力が得られている。そのときの発振周波数は、100 kHz である。
我々は、発振器として
15 kWの
CW出力が得られる増幅器から、5 kW の出力を増幅器 として取り出すことができた。この取り出し効率は、30%以上である。取り出し効率は、以 下の式で定義する。
出力 発振器としての
(増幅出力ー入力)
CW
取り出し効率は、
EUV生成用
CO2レーザシステムのスケーリングに重要なパラメータで ある。
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000
0 1000 2000 3000 4000
Input Power (W)
Output Power(W)
図
3-7. MainAMP増幅特性
27
0 5 10 15 20 25 30 35
0 1000 2000 3000 4000
Input Power(W)
Extraction Efficiency (%)
図
3-8. MainAMPからの取り出し効率
また、パルスレーザの増幅特性は、増幅器のパラメータ、飽和ネルギー密度
Es、小信号利得
go、利得長Lから、Frantz-Nodvik の式を用いて、計算可能である。本増幅特性をも
とに以下の
Frantz-Nodvikの式を用いて、増幅シミュレーションを行った。シミュレーシ ョン結果図
3-9に示す。
1 exp
exp 1
ln 0
s in s
out E
L E g E
E
ここで、E
out:出力エネルギー密度[mJ/cm2]
Ein
:入力エネルギー密度[mJ/cm2]
Es
:飽和エネルギー密度[mJ/cm2]
go
:小信号利得[1/m]
L:利得長[m]
本結果から、増幅器から取り出せる出力は、入力
3kW以上時に
5kW以上が取り出せる
と予測される。この出力は、増幅器への
RF入力
88kWに対して、5.5%以上の効率が期待
できる。よって、入力を最適にすることが、増幅器の効率を上げるために必要である。
28
図
3-9. 入出力増幅シミュレーション結果29
(2) ビーム集光特性
レーザの集光性能を表すものとして、
M2がある。
M2が小さいほど、理想的なビームであ り、集光性能が高いといえる。今回は、我々は、集光性能を確認するために、
M2を評価し、
それをもとに実際の集光スポット径を予測した。M
2の評価方法を以下に示す。
レーザシステムの集光性能は、
508 mmの焦点距離をもつ
ZnSeレンズと、スリットスキ ャンタイプのビームプロファイラ(Photon Inc., NanoScan)により評価を行った。レンズ で集光した際の発振器単体および増幅後のレーザビームサイズを図
3-10に示す。本結果か らビーム集光性能を示す
M2は、1.1 であった。特に、ビームサイズが、発振器単体、増幅 後ともに等しく、増幅器により位相歪みが起こっていないことが確認された。
0 500 1000 1500 2000 2500 3000
400 450 500 550 600
Distance form focusing lens (mm)
Beam Diamater (μm)
After amplification Ocillator
f= 508mm
図
3-10. CO2レーザ集光特性
30
図
3-11に増幅後のビームプロファイルを示す。ビームプロファイルの測定には、
Ophir-spiricon
製
PyrocamⅢを使用した。図
3-11. CO2レーザプロファイル
31
(3) 出力特性
増幅後のレーザパルス波形を図
3-12に示す。パルス波形の測定には、VIGO 製ディテク
タ
PEM-10.6を使用した。本ディテクタは、立ち上がりが
1ns以下であり、短パルス計測
に適している。パルス幅は、半値全幅で
20 nsであり、EUV 生成への寄与が低いペデスタ ルは、全パルスエネルギーの
10%以下である。ペデスタルとは、主パルスの前に存在する比較的低強度パルスである。発振器パルスのペデスタル、テールも増幅され、主パルスの 利得を低下させてしまう。そのため、発振器パルスは、ペデスタル、テールが低いものが 望まれる。
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
Time 50 ns/div.
Intensity
図
3-12. レーザパルスプロファイルエネルギー安定性評価結果を図
3-13に示す。発振周波数は
100 kHzであり、レーザの制
御は特に行っていない。結果、エネルギー安定性は、2%(3σ, 500 pls)であった。本安定
性は、主に発振器のエネルギー安定性に依存している。そのため、発振器のエネルギー安
定性を改善することが、レーザシステムのエネルギー安定性を改善することにつながると
考える。
32 0.0
0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
0 100 200 300 400 500 600 700 800
Number of pulses
Laser pulse energy (arb. unit)
図
3-13. レーザパルスエネルギー安定性33
3.3-3
スラブ方式増幅システムの特性評価
先に示したように、現在
CO2レーザシステムでは、PreAMP、MainAMP に高速軸流タ イプのレーザ装置が望ましい。また、レーザシステム全体での高効率化を考えると、
PreAMPでの増幅器での出力を
MainAMPでの飽和増幅レベルまで増加する必要がある。しかし、
PreAMP
でそのような増幅出力を得ようとすると、さらに長い増幅媒体距離が必要となり、
得策ではない。また、
PreMAPでの出力向上のためには、マルチパス増幅が考えられるが、
光学素子の耐性の問題があり非常に困難である。
これらの問題から、拡散冷却
CO2レーザをマルチパス増幅器として
PreAMPに使用する ことはできないかといった検討を始めた。拡散冷却
CO2レーザを増幅器として使用するこ とが、近年報告されている
28)。著者らは、入力ビームが拡散冷却タイプの特徴とマッチし ていることにより、シングルパス増幅による高ビーム品位の出力が得られることを示して いる。
80
年代初頭から拡散冷却
CO2レーザは、小型で、出力スケーラブルなレーザとして開発
されている
29, 30)。現在までに、本拡散冷却タイプ
CO2レーザは、CW 出力で
8 kWまでの
ものが市販されている。高速軸流タイプと比較して、ブロア、熱交換器がないため、パワ
ースケーラビリティ、小型、高信頼性が利点として挙げられる。我々は、今後の
CO2レー
ザシステムの小型化、高効率化のために、拡散冷却
CO2レーザ増幅器を導入し、増幅特性
評価を行ったので、報告する。
34 (1)
スラブレーザ増幅実験構成
拡散冷却タイプ
CO2レーザの増幅試験の構成を図
3-14に示す。増幅器へ入力する発振器 としては、出力
5 W、繰り返し100 kHz、パルス幅20 ns(FWHM)を使用した。本発振器は、
Synrad製
CWレーザをベースに改造し、キャビティダンプの
Qスイッチを用いて、
短パルスでの発振を可能としている。増幅器としては、発振器として
CW出力
175 Wが得 られるものを使用した。電極サイズとしては、600×60 mm、電極幅は、2 mm である。シ ミュレーションモデルでの計算結果では、30 W/cm
3の励起電力密度に対して、5 W 入力、
9
パス増幅で、10 倍の出力が得られると予想される。また、マルチパス増幅を構成するミ ラーは、9-,11,-13 パスの構成が可能となるように設計を行った。試験構成は、システム評 価として、出力、ビームプロファイル(Ophir-Spiricon, PyrocamⅢ)、パルス波形(VIGO ) が測定できるように配置した。また、増幅器のマルチパス調整は、HeNe レーザをガイド光 として用いて行った。
図
3-14. スラブレーザ増幅実験構成(2) スラブレーザ増幅実験結果
9
パス構成での短パルス増幅結果を図
3-15に示す。技術的に難しい面があり、励起の電
力密度は、当初のシミュレーションモデルで使用された値の
60%であった。しかし、実験結果とモデルは、よく一致することが確かめられた。
35
図
3-15. 励起電力密度18 W/cm3での
9パス増幅入出力特性
11
パス、13 パス構成での試験も行い、自励発振がないことを確認した。13 パス増幅で は、励起電力密度
18 W/cm3の際、
4 W入力に対し
40 Wの増幅出力が得られた。出力利得 としては、10 倍が得られている。また、パルス波形をオシロスコープにより確認し、増幅 後のパルス波形が入力パルスと変化がないことを確認した。
9パス増幅出力時のビームプロ ファイルを図
3-16に示す。垂直、水平どちらの軸に対してもほぼ回折限界のものが得られ た。EUV 生成用レーザとして、十分な集光性能をもっているといえる。
拡散冷却タイプのレーザでの特性のひとつが、パワースケーラビリティである
31)。上記、
試験によりシミュレーションモデルとの一致が得られた。今後、より出力の高い拡散冷却 レーザ条件でのシミュレーションを行うことで、入力に対する出力特性を検討することが 可能である。
図
3-16. 9パス増幅出力のビームプロファイル
36
3.4. 結論
・ナノ秒パルスの発振器と高速軸流タイプの
CO2レーザ増幅器のシステムを構築し、出
力
8kW、パルス幅20ns、M2=1.1を達成した。これは、Nd:YAG レーザと比較し、出力で
5