九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
管開口端からの圧縮波の放出により形成されるパル ス波の特性に関する研究
安信, 強
https://doi.org/10.11501/3110987
出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第5章 遠距離場におけるパルス波の特性
第3章において、 空力音響理論に関口端補正を考慮した解析法を提案し、 この解析法を 用いて圧縮波とパルス波の関係式を導出した。本章では、 この理論解析結果の検証を行な うことを目的とする。そこで、 5 ・ 1節で述べる数値解析と、 5 ・ 3節で述べる実験によ り遠距離場におけるパルス波の特性を調査し、 第3章で述べた理論解析結果との比較を行
なう。
5 . 1 数値解析方法
本節では、 第4章で述べた数値解析法に準じて数値計算を行なう。すなわち、 第4章と 同様に、 関口端に無限大のパッフル板を有する円管を考え、 この円管から放出される圧縮 波によって誘起される流れを二次元軸対称のオイラ一方程式を用いて数値解析する。した がって、 気体の粘性は考慮されていない。数値計算には、 第4章と同様にTVD法と演算 子分割法を使用する。よって本節では、 第4章で述べた数値解析法と異なる項目のみを述 べることにする。
計算領域を図5 ・ 1に示す。計算格子数は、 管内においては半径方向(B- B')に9、
軸方向(A-B )に150、 管外では関口端中心より半径方向(E -E ,)と軸方向(C -
E)
ともに200としている。計算に はムx=ムy=D/18の正方形メッシュを用いているので、 上 記の格子教を領域で示せば、 管内では関口端より上流x/D=-8.3(ーの符号は管内を示す)、y /D=0.5、 管外では関口端より下流x/D=ll.l、 y/D=ll.lとなる。第4章では、 関口端 近傍の 流れ場を詳細に調査 することを目的としたため、 関口端を中心に 管内、 管外とも 2.2Dの範囲を計算領域 とした。これに対して、 本節では形成されるパルス波の強さやパ ルス波の伝ぱ特性の調査が目的であるため、 メッシュ間隔を広げ、 計算領域を大きくして いる。このようにメッシュ間隔を変更しても 、 得られる計算値は数%の範囲内で第4章で 得られた結果と一致する。
一方、 数値計算の初期条件、 すなわちt=Oにおける圧縮波の波形 (圧縮波の初期波形 ) には、 第3章の 3 ・2節で述べた、 式( 3 ・11)で与えられる波形を用いる。式(3 ・11) は、 列車が突入することによりトンネル内に形成され る圧縮波の半経験式( 1 )を参考にし て得られた凶-1曲線である。 この圧縮波を管の関口端に仮定して計算を行なう。なお、 本 計算では、 変曲点を中心に前後60メッシュを用いて圧縮波の波形を表わしている。 また、
- 88 -
圧縮波による圧力上昇値Ap.や圧縮波の長さLの数値については、 第l章で述べたよう に、 新幹線の列車が速度500kmjhで、トンネルに突入する場合までを想定して決めている。
y/D
C (0,11.1)
Infinite baffle plate
.,E Ef---ー〉 x/D
E (11.1,11.1)
ーーーーーーーーーーーーーーーーÎ
A (0,0.5)
『(-8330) o iE,O) E'{干110)x/「
図5 ・ 1
計算領域
- 89 -
5 . 2 解析結果と考察
5 ・ 2 ・ 1 数値解析結果
数値解析結果の一例を図5 ・ 2
(a)
� (c)に示す。 これらの図は、 時刻t'= 0より ムP'/p 1 =9.87 X 10-3、 LjD=1.4の圧縮波が管の開口端から放出されてパルス波が形成され、それが空間的に広がっていく過程を表わしている。 各図の時刻t'は、 式(4・ 3)に示 す無次元時間である。 また、 これらの図は、 図5 ・ 1に示した計算領域のうち、 管外部の x-y平面上における圧力分布を表示したものである。 軸対称流れを仮定しているから、
例えば図5 ・ 2 (c)は球面状の パルス波を表わしている。 これらの図より、 パルス波が 形成され、 距離とともに減衰する様子がわかる。
ムp*jp 1=1.5X10ヘLjD=0.7の初期圧縮波が関口端から放出されるこ とにより形成さ れるパルス波の 、 中心軸上のxjD=2.22における圧力波形を 図5 ・ 3に示す。 図5 ・ 3の 横軸は、 パルス波の中心を時刻t'= 0とする無次元時間t'である。 図中の実線は数値解 析結果、 一点鎖線は式(2 ・81)、 破線は式(3・ 7 )より求めた結果を表わす。 図5 ・ 3より、 式(2 ・81)、 すなわち関口端補正を考慮しないときの空力音響理論によるパル ス波の強さはムp rra)P 1 =2.38 X 10・3で あるが、 関口端補正を行った式( 3・ 7 )による値 は1.40X10・3となり、 数値解析により求めた値1.47X 10-3とかなりよく一致する。
5 . 2 ・ 2 関口端における圧力の時間的変化
LjD=l.4の圧縮波が管端から放出され るときに関口端に生じる圧力の時間的変化ムPe を、 図5 ・ 4に示す。 横軸は無次元時間t'、 横軸はムp'で無次元化したムpjムp.であ る。 実線は数値解析結果、 破線は関口端に生じる圧力の時間的変化の解析結果を表わす 式
(3・20)による計算結果、 一点鎖線はRudingerの方法を もとにして得られた式( 3・21) による計算結果である。 図5 ・4より、 圧力が最大となる時刻 はどの方法でもほぼ同じで あることがわかる。 しかし、 圧力の最大値ムPe.maxに関しては、 式( 3 ・21)より得られ た結果は式(3 ・20)および数値解析で求めた値よりかなり小さい。 パルス波の強さを決 めるうえで最も重要なムPe.maxに関しては、 式(3 ・21)より式(3 ・20)の方が数値解 析結果と一致するといえる。 一方、 圧力変化のプロファイルに関しては、 式( 3 ・21)の 方が式(3・20)より数値解析結果とよくあっている。
開口端における圧力の最大値ムPe.聞とムpの比を 、 圧縮波の無次元長さL;Dに対して
- 90 -
x
1 0-
3- 1. 0
C
""
a
d 0.5
。
。 :シγ/0
\
x
1 0-
3- 1. 0
o_
""
o_
G
o. 5
x/D Axis of tube
。
� 8
t
'=8. 05
フー内/ι
+L
可叫か /に
× 0 5
T14
ハ什U
一己 \ 巳 d
x/D
図5 ・ 2 数値解析結果の一例
(6 P ./P 1=9.87X10 七 L/D=1.4 )
- 91
-2.38X10・ふ れ x/D=2.22
; υ0=0.7
f戸 : i
ムj内/伊件p 1似10-3 I七 : i
�ト r-モ-一一一一一-一-一一一-一- N.U……….市…市…一
;〆グγ ! \\� \
- �ェル",
!、ミ司、ー
X10・3 2.5
2.0
FC \a d
。 1.5
O -2 1.0
0.5
パルス波の圧力波形の比較
図5 ・ 3
0.5
0.4
0.1 0.3
0.2
0...
d
h、、、。
0...
d
6 5
4 2 3
。
関口端における圧力の時間的変化
図5 ・ 4
92
図5・ 5に示す。 図中の実線は式(3 ・20)により得られた結果、 破線は式(3 ・21)に より得られた結果を表わす。 いずれの解析方法においても、 ムP e.rnax/ムp.はL/Dの増加と ともに減少する。 第3章の3 ・2節で述べたように、 図5 ・5はL /Dの増加とともに完 全反射に近づくことを示している。 また、 式(3 ・20)による結果は、 数値解析結果とか なりよく一致する。 これに対して、 式(3 ・21)による結果は、 L/Dの小さな範囲では ムPe.rnaxに対して過小評価する傾向が認められる。
5 ・ 2 ・ 3 パルス波の強さと圧縮波の長さとの関係
単純な一次元理論(75)によれば、 新幹線のような高速列車が突入したとき、 トンネル内 に形成される圧縮波による圧力上昇値ムpは、 列車速度が200km/hのとき1 kPa、 250km/h のとき1.6kPaで、ある。 一方、 新幹線のトンネルでの実測結果(1 )によれば、 圧縮波の長さ Lは列車の速度によって変化し、 時速200km/hではおおむねトンネルの等価直径(9 m) の1--2倍程度である。 そこで、 ムp'=lkPa 、 L =1.4D=12.6m、 a1=34仇n/sを第3章の
年ζ1.
1.0
d
、、、X
Ë 0.8
Q圃0
<J 0.6
0.4
一一E向q叫. (ρ3.2初0) b山ぬ
Eq.(3.21 )
0.2
。 2 3 4 民JV ν nυ 円。
図5 ・5 関口端における最大圧力と圧縮波の長さとの関係
- 93 -
に代入すると、 圧力の最大こう配(δムP/δt) i.max=27.0kPa/sとなる。 この 式( 3・12)
ムpを大気圧P1によって無次元化すれ 式のtを無次元時間t'=t/
(
ぽD/
ar)
に変換し、(ムp/p
J
l '/δt
,}; �y=0.0084を得る。 本研究では、 新幹線の列車がトンネルに
I�lま、
iδ
突入することにより発生するパルス波を対象としているので、 以下のTVD差分法による 計算では、 新幹線が時速5∞km/hで、突入する場合までを想定してムpを125Paから8kPaま
(ムp/ P 1) /δt'} i�
L/Dを1.4の1/8倍から4倍 、 すなわち0.175から5.6まで、
iδ
で、を0.0084の0.5倍から4倍、 すなわち0.0042から0.0336まで変化させて計算を行なう。
x /D=2.22は遠距離場に (後述するように、
管中心軸上で関口端からの距離x/D=2.22
におけるパルス波の強さムPrmxと、 圧縮波による圧力上昇値ムp.との関係に 相当する)
いずれも大気圧 . 6に示す。 横軸と縦軸は、
より求めた結果を図5 ついて、 式( 3 ・14)
L/D=0.35から2.8に対する数値解析結果も示し P1で無次元化している。 図5 ・6には、
による値はTVD法によるイ直よりわずかに小さ したがって、
パルス波の強さと圧縮波による圧力上昇値との関係 L/D=1.4と2.8では逆にわずかに大きいが、 両者はほぼ一致している。
1 0・1
�p 1P1
1 0-
2L/D=0.35と0.7では式( 3 ・14)
1 0・4rL 1 0-
v図5 ・6
?a \ X伺E
a d
ている。
94
式(
3・14)は妥当で、 L/Dを一定とすればム Pmaxは ムp'に比例す るといえる 。 次に、 図5・6と同じ位置x/D=2.22におけるパルス波の強さムPmaxをムpaで無次元化 した値ムprmx/ムpとL/Dの関係について、 図5・7に示す。 図中の実線は式(3 . 14)、およびL/D >3.5に対する式(3・14)の近似式( 3・18)による計算結果を、 O印は数 値解析結果をそれぞれ示す。 第3章の3・ 2節で述べたように、 L/D→Oのとき、 式
(3・14)による漸近値は0.132である。 図5・7より、 式(3・14)はL/Dの広い範囲 にわたって数値解析結果 とほぼ一致しており、 圧縮波のムpとLを与えると、 関口端か ら任意の距離rにおけるパルス波の強さムP maxは、 式(3・14)より計算できる。
5
.2 ・ 4 パルス波の強さと圧縮波の最大圧力こう配との関係
図5・ 6 およ び図5・ ?と同 じ位置x/D=2.22におけ る 、 圧縮 波による圧力上昇 値ムp.で無次元化したパ ルス 波の強 さ ムPrmx /ムp・と 、 圧縮 波の最大圧力こう配 iδ(ムP/ムp.)/δt
'�
i,maxとの関係を図5・ 8に示す。 図 中の実線は式(3・23)事 a
〈コ
、、、何
〉く
cl... E
〈司
0.132
0.1
0.01
0.1
3.51 0
し/0
図5・ 7 パルス波の強さと圧縮波の長さとの関係
- 95 -
と式(3・24)により計算した結果を、 O印は数値解析結果をそれぞれ表わす。 また、 図 中の破線は、 第3章の3・2節で述べたように、 L/D=3.5のとき、 式(3・22)より計算 された{δ(ムP/ムP
* )
/δt,}
i,maxの値(=0.34)を示す。 図5 ・8より、 無次元化され た圧縮波の最大圧力こう配がゆ(ムP/ムP* )
/δt,}
i,max<
0.34では、 式(3 . 23)と 式(3・24)により求めたムPrmx/ムp.はほぼ一致することがわかる。 また、 数値解析結果は、
{δ(ムP/ムP* )
/δt,}
i,maxの広い範囲にわたって式(3・23)による結果とほ ぼ一致することを示している。 図5 ・8は第2章の図2・15に対応するもので、 第2章の 図2・15ではL/DとムP /P 1をパラメータとした数値解析結果が示しであるが、 第2章 の図2・15の横軸と縦軸を無次元化する際に用いたPlの代わりにムp で無次元化すると、図5・8 のょっに ムPrmxと(δムP/θt )の関係は一つの曲線[式(3・23) ]で表わ される。
c d
\ 活E
a d
: xJD=2. 22 :::::::::�:::::::::T:::::�:::::�::::�::::;::J
:0
:Numerical results二二戸 ;二;二μr�
4隊
0.132 0.1
0.01
0.1 0.34 1 0
(δ(ßp/ムp勺/δt')i.max
図5・8
パルス波の強さと圧縮波の最大圧力こう配との関係
- 96 -
5
.2 ・ 5 パルス波の距離減衰特性
パルス波の距離減衰特性、 すなわちムprmx/ムp・とr /D の関係を、 L/D=l.4の場合につ いて図5 ・ 9に示す。 図中の実線は数値解析 結果を、 破線と一点鎖線は式(3 ・14)と式 (3・15)により求めた結果をそれぞれ表わしている。 音響工学によれば、 球面音波は遠 距離場において倍距離(double distance、 以下ddと略記)で6dBずつ減衰することが知ら れているので(刷、 参考のためにその傾きを図中に 示している。 図5 ・ 9より、 数値解析 結果と式(3・15)による結果は、 ほぽ一致することがわかる。 また、 数値解析結果は、
r/D>約1.0で6dB/ddの減衰を示している。 これより、 近距離場と遠距離場の境界は、 お よそr=Dと考えられる。
... Q.
〈司 、\
何×CL E
〈ゴ
0.1
0.01
0.1 r/D 1 0
図5 ・ 9 パルス波の距離減衰
- 97 -
5 ・ 2 ・ 6 s�し1衝撃波の放出によって生じるパルス波
本解析においてL/D→Oとすれば、 圧縮波は弱い衝撃波とみなすことができる。 この 場合のパルス波の強さは式( 3 ・27)、 近距離場も考慮に入れると式( 3 ・28)でそれぞ れ与えられる。
さて、 Stolleryら(刃)、 Hillierら(力)は、 弱い衝撃波が管内を伝ぱし、 パッフル板をもたな い関口端から放出されたときのパルス波について解析している。 図5 ・10のO印およびム 印は、 これらの結果を用いて図5 ・ 9と同様にパルス波の強さムPmaxを衝撃波による圧力 上昇値ムpで無次元化し、 管の直径で無次元化した関口端からの距離r /Dに対して示し たものである。 図中のMsは管内を伝ばする衝撃波のマッハ数で、 実験値はいずれも管中 心軸上での値である。 これらのプロット点に 対して求めた近似式を次式に示し、 この式に
よる結果を図中の破線で示す。
um'
h
一勾 A
一( 5 ・ 1 )
•
〈司
。ー、、、
の× Q_ E
〈コ
0.1
0.01
1 0 r/D 100
図5 ・10 �fjい衝撃波の放出によるパルス波の強さ
- 98 -
図5・10から明らかなように、 これらの結果は、 Msの値によらず式( 5 ・ 1 )で与えら れる直線上にある。
一方、 関口端にパッフル板をもたない円管に対して、 波長が管径に比べて十分に大きい 波に対する関口端補正長はム1 =0.3Dで(49)、 さらにパッフル板がない場合には放射空間 がパッフル板のある場合の2倍になり、 パルス波の強さが半分になることを考慮すれば、
ノくツフル板がない場合、 式( 3 ・27)は次のようになる。
凶ゆ
( 5 ・ 2)
式(5 ・ 2)による計算結果を、 図5 . 10の実線で示す。 図5 . 10より、 実線と波線の定 性的傾向は一致しているものの、 実線が示すパルス波の強さは破線の値より小さい。 この 理由のーっとして、 関口端補正長ムlによる影響が考えられる。 すなわち、 ムlは第2章 の図2 ・ 3で示したょっに、 波長が短いほど短くなる。 ムlが短くなると式( 5 ・ 2)の 右辺の分子は大きくなる。 したがって、 圧縮波や衝撃波などの有限振幅波に対する関口端 補正長について、 検討を行なう必要がある。
- 99 -
5
.3 実験装置と測定方法
5
.3 ・ 1 圧縮波の発生装置
本節では、 遠距離場におけるパルス波の特性 を実験 により調査し、 第3章で述べた解析 結果との比較を行なう。
実験装置の系統図を図5 ・11に示す。 この実験装置は、 通常の衝撃波管の隔膜を急速関 口弁におきかえたもので、 高圧室(長 さ12m、 内径40mmの円管)、 急速関口弁、 低圧室
(長さ12.4m、 高さ31mm、 幅19mm、 肉厚5.5mmの矩形管で、 弁の関口に より形成される 圧縮波がこの管内を伝ばするから、 以下、 圧縮波伝ぱ管と呼ぶ)、 および測定部より構成 されている。 圧縮波イ云ぱ管の右端は大気に開放されている。 本実験は、 高速列車の突入に よりトンネル内に形成される圧縮波が、 トンネル出口から放 出される問題を対象としてい る。 このよう な圧縮波による圧力上昇は 、 前節で述べ たよう に、 例えば新幹線が時速 250如1で、トンネ ルに突入した とき、 たかだか1.6kPaで、ある。 隔膜方式衝撃波管では、 この ような弱い圧縮波を再現性よく形成することは困難であるため、 本研究では隔膜の代りに 急速関口弁(78)(79)を用いる。
High pressure chamber
12
me v a w
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Top view
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Actuating chamber
CPU
Aρconverter Amplifier
図5 ・11 実験装置の系統図
- 100 -
この弁は、 図5 ・11に示すように駆動室の高圧空気により仕切板を関口するもので、 駆 動室の初期圧力により関口時間をある範囲内で任意に設定でき、 かつ、 弁の関口により形 成される圧縮波の再現性はきわめてよい。
所定圧に設定された高圧室の空気は弁の開口により庄縮波伝ぱ管に流入し、 その前方に 圧縮波を形成する。 圧縮波が管内を伝ぱし、 右端の関口端に達するとパルス波が放出され る。 トンネル出口の地面を模擬するため、 図5 ・11に示すように圧縮波伝ぱ管の出口部に は、 管の内壁下面に接して広い平板が設置しである。
関口端に向かう圧縮波の測定は、 圧縮波の関口端での反射によって生じる膨張波の影響 を受けないよ うに、 関口端より上流1.48mの位置で行なう。 以下の記述では、 この点で測 定した圧縮波を初期圧縮波と呼ぶことにする。 本実験では初期圧縮波の強さ、 すなわち初 期圧縮波前後の圧力差ムp が2 �
8
kPaの範囲で、実験を行なう。なお、 本実験で使用する矩形管の内寸法(31mm X 19mm)を流体 平均深さを用いて等 価直径に換算すれば、 D=23.6mmとなる。 第4章では、 代表寸法として円管直径を用いて 位置と時間の無次元数を定義した。 よって本節では、 無次元化に際し代表寸法としてこの 等価直径の値を用いる。
5 .
3 ・ 2 測定された圧縮波の特性
初期圧縮波の波形の一例を図5 ・12の曲線a b cで示す。 横軸の時間tは圧力が急激に 上昇し始める瞬間(点b)からの時間、 縦軸のムpはゲージ圧力で、 この図5 ・12では圧 縮波の強さムp = 4 kPaで、ある。 点dにおいて圧力が急激に減少するのは、 圧縮波が関口 端で反射して形成された膨張波のためである。 圧縮波の圧力波形の最大こう配点bにおけ る傾きを用いてt 1を図5 ・12のように定義し、 L=a 1 t 1を圧縮波の長さとする。 ここ で、 a 1は圧 縮波前方の静止気 体(大気)の音速である。 このLを用いると 、 本実験の急 速関口弁によって作られる初期圧縮波の波 形は、 ムp• = 2 kPa �
8
kPaに対して近似的に次 式で表される。if=ft釦1( 1.2 �t) ( 5 ・ 3 )
図5・12の場合、 t 1 =1.2ms、 a 1 =340m/sで 、 L=408mmで、ある。 これらの値を式( 5
3
)に代 入して求めた圧縮波の波形は、 図5 . 12の破線で示すように、 実験で得られた波 形(実線)にきわめて近い。- 101 -
FHJ
A叶
の止ギハ]d500
ハUハU48
E ε 」
300 200 100 3
Experiment
r...�l
0ーニピ 寸 0..1
<11 Eq. (5.3): I
2
O -4 。 4 8 12
t ms
図5 ・12
初期圧縮波の波形の一例
o
:Experiment
-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・-、...・・・・・・・・・・... ...
r-..."...1
.
・・・・...・・・・・・・・・・一一一....・・...・・・・・・
4 ー
・・・・・・...・...・・・・・・a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・e・・・・・・・.... . . ... ..・・・ー一... .一-ー・。 2 4 6 8 10
.6p kPa
図5 ・13
初期圧縮波による圧力上昇値と長さとの関係
102 一
次に、 本実験で得られた初期圧縮波のムp. とLの関係を図5 ・13に示す 。 図中のO印 は実験点、 実線は実験点を結んだ線である。 図5・13より、 ムp*=2 kPaのときL=45仇nm、
ムp*=
8
kPaのときL=180mmで、 Lはムp.が大き いほと令小さ い。さ て、 第3章の3 ・ 2節において、 関口端 における圧力の時 間的変化 の最大値 (θムp/δt)e・max と初期圧縮波の圧力 波形の最大こう配 値(δムp/δt)Î.maxの
比をどとし、 圧縮波の波形が 式(3 ・ 11)で表される波形についてどとLの関係を 求め、 関口 端補正を必 要 とす るLの範囲を明ら かに した 。 同様のこ とを上述の式 ( 5・ 3)で表される初期圧縮波について考える。 式(5 ・ 3 )を 時間tで微分し、
その最大値を求めると、 初期圧縮波の圧力 こう配の最大値 として次式 を得る。
件L"x ðt J i m �Y =�伯l�P* πL ( 5 ・ 4) ー方、 式( 5 ・ 3 )を式( 3 ・6 )に代入して最大値をとると、 関口端における圧力の時
間的変化の最大値として次式が得られる。
(学Lmax = �:2 *加l (半L) ( 5・ 5)
ここで、 ムlは関口端補正長である。 式(
5 ・ 4
) と式(5・ 5)よりどを求めるとC三(芋Lmax / ( (5 . 6)
上式において、 直径Dの円管の関口端に無限大の大 きさのパッフル板があるとすれば 関 口端補正長はð.1=0.425 Dで、 パッフル板がないとすればム1=0.3 Dである(49)。 これらの 61を式(5 ・6)に代入して求めたどとL/Dの関係を図5・ 14に実線で示す 。 図5・
14からL/Dの増加と ともにどは1に漸近し、 L/D> 4ではどキlとなる。 一方、 図中に 示す実験点は、 圧縮波の圧力波形から求めたどの値を示している。 図5・14より、 本実験 の範囲内では ほぼど与し つまり(δムp/δt) e.max= (δムp/δt) Î.maxで、 放出される パルス波の強さを算出する際に、 関口端補正は必要ないといえる。
- 103 -
人r、
5 ・ 3・ 3
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0 0.1
; :;jjjJ竺�11l)1ω '->--'
!;〆〆: : 11 : :" Without baffle plate
d六七i i : : ( � 1
=0
.30 ) i /: : i i i : : i' With baffle plate:
( i 1 : : i 1 i: (� 1
=0
.4 25 0 )
o : Experiment:
ハ 一一一
: Eq.(5.6)
1 0 100
L/D
図5 ・14 CとL/Dの関係
パルス波の測定方法
パルス波の測定は、 管の中心軸(図5 ・11のO-A) を含む水平面上において行なう。
パルス波の距離による減衰特性と指向性を調べるため、 図5 ・11の右上に示すように、
口端中心(図5 ・11の点0) を原点とし、 原点からの距離r = 5 --400mmの範囲内で、
開
全会三邑
中心軸からの角度。=0。
、 300 、 60 0 、 900
の線上で圧力を測定する。 測定には、 圧力 変換器(キュライト社製XCS-190-S) および騒音計(リオン社製NA-Sl) を用いている。圧力変換器および騒音計からの出力信号はアンプで増幅され、 A/D変換器で変換された のち、 コンピュータにて記録解析される。
104
実験結果と考察
5 . 4
5 . 4 . 1 実験結果
図5 ・12に示したムp = 4 kPaの初期圧縮波が関口端より放出された際に生じる、 管中 の点x/D=3.4におけるパルス波の波形を図5 ・15の実線で示す。 図5 ・ 心軸上(0=00
)
15の横軸はパルス波のピーク値の時刻を原点とする時間、 縦軸はゲージ圧力である。 パル ス波の強さ 、 すなわちピーク値をムPmaxとすれば、 図5 . 15の場合ムP max=26.4Paで、 初 期圧縮波による圧力上昇値ムP�= 4 kPaに比べてかなり小さい。
遠距離場での圧力変化 一方、 第2章の2 ・ 2節で述べた空力音響理論によれば、
七百 初期圧縮波に関して前述のように開口端補正を必要とせず、
ふlL 、、,,J'
は、�P
関口端にパッフル板がない場合 、 圧縮波伝ぱ管出口部に地面を模擬した平板が つ、
設置されていることを考慮して鏡像の原理(80)を用いると、 次式で与えられる。
( 5 ・ 7 )
均一h S 一 日 一 π 一一
ri PA A
:i !J. p =4 kPa 23.1 Pa j r j\ X!D=3.:4
H
、\ f}=O
Experiment -ィ,,' 、て吋
I � 、,
a ・ 一
____________ i _____ l ____ Eq.(5.7)Y ' 、-u
...、 �
,c
26.4 Pa
a_ の302 0
1 0
Q_
d
。
恒 Î .0
Î .0
msec 0.5
パルス波の波形の一例
。
骨0.5図5 ・15
105
上式のSは圧縮波伝ぱ管の断面積で、 本実験装置ではS=589mm2で、ある。 図5・12の圧 縮波の圧力波形から(δムp/δt)iを求め、 式(5 . 7)によって算出したパルス波の 波形を図5 ・15に破線で示している。 この波形のピーク値はムpmax = 23.1Paで、 実測値 26.4Paよりわずかに小さいが、 時間に対する波形の変化の様子はほぼ同じである。 このこ
とから、 式(5・ 7)はパルス波の波形をよく表すといえる。
5 ・ 4 ・ 2
パルス波の強さと圧縮波の最大圧力こう配との関係
関口端から放出されるパルス波の強さムPmaxは、 関口端補正の必要がな い本実験では式 ( 5・ 7)の右辺が最大のときに得られる。 すな わち
.ópmax(r) = 百三�苧)
‘ \ V I./l.max ( 5・8 )
上式の両辺を初期圧縮波の強さムp'でわり、時間tを無次元時間t' = t
/ (ぽD / alいこ
よって表せば次式を得る。
企Pm以(r) _ S Jd(.óp/.óp*)\
�p* πrぽD t dt' h,max ( 5・ 9 )
もし開口端にパッフル板があると仮定すれば、 上式のムPmax(r)は2倍の値になるから、
上式は次のようになる。
APma似x(r))一 2s Jd(企p/企pワ
A勾p* πr仮D
t
dt' h,max( 5・10)
関口端からの無次元距離r/D=3.4の位置で7�1J定したムPmaxとムp.の比ムPmax/ムpeを、
|δ(ムP/ムP
*)
/δt,}
i,maxに対して図5・16に示す。 図5 ・16には、 管中心軸からの 角度。が00 、 600 、 および900 の実験点と 、 式(5・ 9 )および式(5・10)による計 算結果が示されている。 図5・16より、 実験で得られたパルス波の強さ6. P maxは8=00 の場合が最も強く、 。=600 、 900 の)1頃に弱くなっている。 これ はパルス波 に指向性があ ることを示しており、 指向性 については後述する。 また実験点は、 式(5・ 9 )による実 線よりやや大きく、 式(5・10)による破線より小さい。 これは、 前述したように、 本装 置の圧縮波伝ぱ管の関口端にはパッフル板を用いていな いものの、 管の肉厚が厚 いため、それが関口端で、パッフル板と類似の効果を生じているためと考えられる。
- 106 -
5 ・ 4 ・ 3 パルス波の距離減衰特性
管中心軸上(()=Oo )におけるパルス波の距離減衰特性、 すなわちムPmuのrによる 変化を図5 ・17に示す。 ムPmuとr はそれぞれムp・とDで無次元化している。 図中のO 印は実験点である。 なお、 記号Aで示す実験点 は、 図5 ・16の記号Aで示す実験点と同ー のものである。 音響理論によれば、 一辺の長さがbとc (b>c)の矩形の平面音源から の放射音圧は、 r/b>0.318では倍距離(double dis凶ce、 以下ddと略記)で6 dBずつの減 衰を示し、 r/c <0.318 では減衰せずに一定に保たれ、 この中間領域では倍距離で3 dB ずつ減少する(81 )。 参考のために、 この傾き、 すなわち- 6 dB/ddと- 3 dB/ddを図中に示
している。 圧縮波伝ぱ管の下面が平板で覆われていることを考慮に入れるとb=62mmで、
上述のr/ b =0.318とr/ c =0.318を等価直径D=23.6mm 、 c =19mmを用いてr/Dで表わす と、 本実験装置ではそれぞれr/D=0.835、 0.256となり、 これらの値を図中に一点鎖線で
a 1 m川
一…
〆 ・
ト・十!?:ム'・・・・
・・・・・・・
・・・・・
ト・
ケ固十固い・いφト:
十:γ;
十・ ペσ
十十七〆 ;
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・・
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十・十・
ふ。や・十白ア:
γ:L・vu
fvr …一一- 十 一十 一一一工一一一… . p …… 一 一 ノ 十一 〆 一 日 一 d 一 一 l'v 三 …一工~い一 ム
~
… …… ………
一 一 一 III じに ヌ亡 - ………じ…じん 的 巾 1 1 1 ・ 4 av - -a av
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…一 一 二 JA σ ノ色 口 … …… …… ………
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「「「仁|「|「ILl- -トL .--- - - - - いM O 内/』 J o
nu
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nu
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図5 ・16 パルス波の強さと圧縮波の最大圧力こう配との関係
- 107 -
この位置に 示している。 いま、 図5 ・17のAで示す実験点の位置を基準位置rref/Dとし、
とすれば、 遠距離場における他の任意の位置rに
( r ref)
おけるパルス波の強さ を� p rnu
おけるパルス波の強さは
( 5 ・11)
�Pmax(r) =平�Pm仇
r /D >0.835では実験値 で表される。 上式は図5 ・17の点Aを通る右下りの直線となり、
r /D=0.835にお とかなりよく一致する。 また、 図5 ・17の0.256< r /D <0.835の実線は、
r /D <0.256の実線は、 音圧が減衰しないと ける値から-
3
dB/ddを考慮してヲ|いた直線、このことか ら、 本実験では r/Dが約1.0より大きいところは遠距離場とみなすことができる。
-+c 0...
〈司
、\× 何
0... E
<l 1 0-
Ir /D <0.835 の実験点は実線と同じ傾向を示している。
100
可一
一
Aヘヘ
… 什 一 \ … E ー閥 、ー … ωめ∞.OHQ\」
一\d
、\…0
… 一ο …ωωN.OHQ\」
。==0 1 00
して描いた水平線で、
r/D
パルス波の距離減衰
1 0
図5 ・17
1 0・2
1 0・3
0.1
5 ・ 4 ・ 4 /てjレス波の指向特性
図5・11の右上に示すx-y面上において、 パルス波の強さムPrmxが等しい点を結んだ 線(以下、 等圧線という)を図5・18(a)と(b )に示す。 図5・18の計測点はいずれ も遠距離場内にあり、 図5・18(a)は長さL/D=17.6の圧縮波が放出される場合、 図5 ・ 18 (b)はL/D=9.S3の場合である。 パルス波に指向性がない場合には、 図5・18の等圧 線は関口端 を中心とす る1/4円 形となる。 図5・18(a)の等圧線は1/4円形に近く、
指向性は顕著ではない。 一方、 図5・18(b)の等圧線は大きく歪んで1/4楕円形状に なっており、 同じ距離rでは()=o。 の値が最も大きい。 このことから、 圧縮波の長さが 短いほどパルス波の指向性は中心軸方向へ強く現れるといえる。 また、 図5 ・18(a)と 図5・18(b)のいずれについても等圧線はほぼ相似形であり、 パルス波の指向性を考察 するうえで関口端からの距離r/Dによる影響は考慮しないでよいといえる。
さて、 同じ距離rにおいて、 任意の角度。におけるパルス波の強さ[ムPrmx(r) ]。
と中心軸上の強さ[ムPmax(r) ] 8=iJの比、 すなわち指向性係数D(())を次式で定義す る。
一 [ ð勾Pmax(ρωr)
D(8) ==
r LLll-'[ðPmax
( 5・12)
第2章で述べた音響理論によれば、 波長Aの音源から成る幅cの矩形の平面音源と、 直 径Dの円形の平面音源の場合、 遠距離場における音源、中心を含む水平面上のD(())は、
それぞ、れ式( 2・34)と式( 2・32)により次式で与えられる。
開)
= 平 φ= T si ( 5・13)
M 7 一一 ハり/'t、 D ハり n pδ 位入 0・ ( 5 ・14)
ここで、 式(5・14)のJ 1は第l次第l種のベッセル関数である。
本実験において、 L/D=9.S3の圧縮波が関口端から放出されるとき、 r/D=6.8の位置で 得られたD(())と0の関係を図 5・19 (a) のO印で示す。 図5 ・19(a)の実線は 式(5・13)においてÀ =0.1 L �0.2 Lとした場合の計算値で、 実験値 はÀ =0.16 Lの計算 値と比較的よく一致する。 したがって、 長さLの圧縮波が関口端から放出されるときに形
- 109 -
8 =90
(a)υD=17.6
8=0
300 400 500
xmm
。=90
(b)υD=9.53
EE
〉、
xπ1円1
図5 ・18
パルス波の等圧線
- 110 -
-圃h、
1.0
qご〉
。 0.9 0.8
0.7
0.6
r/0=6.8 υ0=9.53
一一一:
Eq.(5.13)
o
:Experiment
0.5 0
30
F、1,0
qコ
、周囲J
。0.9
0.8
0.7
0.6
0.5 0
(
a) 実験式と式( 5 ・13)との比較
一
S戸羽bol L/D ð. p -/ P I Symbol L/D ð. P '/ P I
図 0.7 o.∞5 圃 1.4 0.04
ム 0.7 0.01 。 2.8 0.02
。 0.7 0.02 回 2.8 0.04
A 1.4 0.01 。 2.8 0.08
• 1.4 0.02
xlO=2.22
一一:
Eq.(5.14)
-・ー・一一一....一...一一一一一一一一一一...一..一一・・・・司‘... ...
. .
. .
. .
. .
. .
. .
30 60
_ _90
e deg ( b ) 数値解析結果と式( 5 ・14)との比較
図5 ・19
パルス波の指向性
成されるパルス波の指向性は、 Lの定数倍(図5 ・19 (a)の場合は0.16)の波長Aの 音 波から成る矩形の平面音源の式(5 ・13)により推測できるといえる。
次に、 式(3 ・11)で表される圧縮波が、 関口端に無限に大きなパッフル板を有する円 管から放出されるときに形成されるパルス波の指向性係数D (8)を、 本章の5 ・ l節と 同様の数値解析法により求めた。 種々の無次元強さムP */P 1と無次元長さ L/Dをもっ圧 縮波が放出されるときの、 r /D=2.22におけるD (8)と0の関係を図5 ・19 (b)に示 す。 図5 ・19 (b)の実線は式(5 ・14)による計算値で、 第3章の3 ・ 2節と同様 に A = 2 Lとし、 これを式(5 ・14)に代入してL/D=0.7、 1.4、 および2.8の場合について 計算したものである。 図5 ・19 (b)より、 ムP */ P 1が変化しでもL/Dが同じであれば
D (8)の値はほぼ同じで、 同ーの指向性を示 すことがわかる。 また、 L/Dが小さいほ ど指向性が顕著に現れている。 これは、 図5 ・18で述べた実験結果と同じ傾向である。 一 方、 式(5 ・14)による計算値との比較では、 L/D=0.7の場合において指向性を過大評価 する傾向に あるものの 、 L/D=1.4と2.8の場合にはよく一致している。 このことから、 長 さLの圧縮波が関口端から放出されるときに形成されるパルス波の指向性は、 Lの定数倍
の波長Aの音波から成る円形の平面音源、の式(5 ・14)により推測できるといえる。 これ は図5 ・19 (a)で示した実験結果と同じ傾向である。
図5 ・19 (a) (b)において、 音響理論による式(5 ・13 )および式(5 ・14)を 用いて、 パルス波の指向性係数D (8)を推測できることが示 された。 よって、 中心軸上 の基準位置rref におけるパルス波の強さを[ムPrmx (r ref) ]日とすれば、 遠距離場の任 意の点(r, ())におけるパルス波の強さは、 式(5 ・11)に式(5 ・12)を乗じた
[�Pmax(巾=zfD(O)[Apm(hf)jtO ( 5 ・15)
で表される。
- 112 -
5 . 5 第5章の結論
第5章では、 まず、 断面積一定の管内を圧縮波が伝ぱし、 この圧縮波が管の関口端から 放出される際に形成されるパルス波の特性につい てTVD法による数値解析を行ない、 第
3章で述べた解析結果と比較した。 得られた結果を要約すると次のとおりである。
( 1 )関口端における圧力の時間的変化の最大値ムPe,maxと圧縮波による圧力上昇値ムp.
との比ムPe,rmx/ムpの数値計算結果は、 関口端における圧力の時間的変化を示す式 ( 3 ・ 20) による最大 値ムPe,maxとムp.に よ り 得られる値 とよ く一致するo Rudingerの方法によるムPe,maxは、 式(3 ・20)による最大値および数値解析結果よ り若干低い。
( 2 )遠 距離場におけ るパルス 波の強 さð. P maxと圧縮波によ る圧力上昇値 ムp*と の比ムP max/ ムp の数値計算結果は、 圧縮波の長さに対して式(3 .14)、 圧縮 波の最大圧力こう配に対して式(3 ・23)による結果とよく一致する。 したがって、
遠距離場の中心軸上の任意の位置におけるパルス波の強さは、 式( 3・14)および 式(3 ・23)により求めることができる。
( 3 )パルス波の距離減衰の数値解析結果は、 r>D で6 dB/ddの減 衰を示す。 したがっ て、 遠距離場と近距離場の境界はほぼr=Dである。 この結果は、 式(3 ・14)と 式(3 ・15)の比較による結果とも一致する。
( 4 )パッフル板をもたいない開口端からの弱い衝撃波の放出によって形成されるパルス 波の強さは、 式(5 ・ 1 )で与えられる。 本解析における圧縮波の長さL=Oとし たときのパルス波の強さは式(5 ・ 2 )で表わされ、 式(5 ・ 1 )と定性的に一致 する。
次に、 管内を伝ばする圧縮波が矩形関口端 から放出されたときに生じるパルス波の特性 を実験的に求め、 第3章で述べた空力音響理論による解析結果をもとに考察を行った。 得 られた結果を要約すると次のとおりである。
( 1 )波形が式(5 ・ 3)で表される圧縮波において、 その長さLと管の等価直径Dの比 L/D> 4の場合には、 放出されるパノレス波の強さを求めるに当たり関口端補正を 考慮しなくてよい。 本研究で用いた急速関口弁により得られる圧縮波はこの場合に 相当する。
( 2 )初期圧縮波の強さ6. P · �こ比べて パルス波の強さムPIllI.Xはかなり小さい。 また、 遠
- 113 -
距離場での圧力変化ムp
(r,
t)の実験値は、 式(5 . 7)による計算結果とよ く一致する。( 3 )パルス波の強さムPrmxは式(5・ 9 )による計算値よりわずかに大きく、 式(5・
10)による計算値より小さい。 これは、 圧縮波伝ぱ管の肉厚 が厚いため、 それ が開 口端でパッフル板と類似の作用をしたことによるものと考えられる。
( 4
)管中心軸に沿うパルス波の距離減衰特性は、 音響理論による矩形の平面音源からの 平面波の減衰特性とほぼ一致し、 r/Dが約1.0より大きいところでは遠距離場とみ なすことができる。 遠距離場でのパルス波の強さの距離による変化は、 式(5・11 ) による計算結果とよく一致する。( 5 )遠距離場におけるパルス波の強さムPræxは、 関口端を原点とした中心軸からの角度
。が大きいほど小さくなる。 このような指向性は圧縮波の強さムp.にほとんど依 存せず、 圧縮波の長さL/Dに依存し、 L/Dが小さいほど顕著に現れる。 このパ ル ス波の指向性は、 圧縮波の長さLの定数倍を波 長Aとして、 平面音源の式( 5・13) および式(5・14)により推測できる。 よって、 遠距離場の任意の点におけるパ ル ス波の強さは、 式(5 ・15)で表される。
- 114 -
第6章 結
6 ・ 1 本論文の結論
=と〉日間
本論文では、 関口端からの圧縮波の放出によって形成されるパルス波の特性について解 析を行ない、 パルス波と圧縮波との関係やパルス波の形成過程、 遠距離場でのパルス波の 特性を明らかにした。 得られた結論を以下に要約して述べる。
1 . 圧縮波とパルス波との関係に関する理論解析について
(
1 )圧縮波とパルス波との理論的な関係を求めるために、 空力音響解析に関口端補正を 行う方法を提案した。 この方法によると、 パルス波の強さは関口端における圧力の 時間的変化の最大値に比例する。( 2
)関口端における圧力変化を表わす式を導出した。( 3
)圧縮波の圧力波形が凶・1曲線で与えられる場合について、 以下のことを解析的に 明らかにした。(
a )関口端補正の必要性(b
)関口端における圧力変化と圧力の最大値(
c )パルス波の強さと圧縮波の長さとの関係( d
)パルス波の強さと圧縮波の最大圧力こう配との関係(
e )パルス波の距離減衰特性( f
)関口端からの弱い衝撃波の放出により形成されるパルス波の強さ2 . パルス波の形成過程の数値解析について
(
1 )パルス波の形成に深く関与する関口端近傍の三次元的な波動の影響はおおむね近距 離場内に及び、 したがって、 この領域でパルス波の形成は行なわれる。( 2
)圧縮波の長さがパルス波の形成過程に 及ぼす影響は、 圧縮波の長さが管の半径より 短い場合と長い場合によって顕著な相違が生じる。( 3
)パルス波の指向特性は、 近距離場においてはパルス波の形成過程の影響を受け、 遠 距離場では一様な特性を示す。( 4
)開口端補正長は、 パルス波の形成領域と強く関係する。- 115 -
3 . 遠距離場におけるパルス波の特性について .数値解析より得られた結論
( 1
)関口端における最大圧力と圧縮波による圧力上昇値との比の数値計算結果は、 第3 章の理論解析結果により得られる値とよく一致する。( 2
)遠距離場におけるパルス波の強さと圧縮波による圧力上昇値との比の数値計算結果 は、 第3章の理論解析結果により得られ る値とよく一致する。 したがって、 本論文 で提案を行なった解析法が有効であることが示された。( 3 )パルス波の距 離減衰の数値解析結果は、 r>Dで6 dB/ddの減衰を示す。 したがっ て、 遠距離場と近距離場の境界はほぼr=Dである。
( 4
)パッフル板をもたいない関口端からの弱い衝撃波の放出によって形成されるパルス 波の強さは、 第3章の理論解析結果により得られる値と定性的に一致する。-実験より得られた結論
( 1
)遠距離場での圧力変化の実験値は、 空力音響理論による計算結果とよく一致する 。( 2
)パルス波の強さの実験値は、 空力音響理論による計算結果とほぼ一致する。( 3 )遠距離場におけるパルス波の距離減衰特性について以下のことを明らかにした。
(
a )管中心軸に沿うパルス波の距離減衰特性は、 音響理論による矩形の平面音源か らの音波の減衰特性とほぼ一致する。(b
)パルス波の距離減衰特性は、 r>Dで6 dB/ddの減 衰 を示す。 したがって、r /D >1.0では遠距離場とみなすことができ る。
( 4
)遠距離場におけるパルス波の指向特性について以下のことを明らかにした。(
a )遠距離場におけるパルス波の強さ は、 関口端を原点とした中心軸からの角度が 大きいほど小さくなる。( b
)パルス波の指向特性は圧縮波の強さにほとんど依存せず、 圧縮波の長さに依存 し、 長さが短いほど顕著に現れる。(
c )パルス波の指向特性は、 圧縮波の長さの定数倍を波長として、 音響理論による 指向特性に関する理論式により推測できる。- 116 -
6 . 2 今後の課題
本論文の結果をふまえて、 今後の検討課題を以下に簡潔に示す。
(
1 )本解析法を用いて形成されるパルス波の強さやパルス波の距離減衰特性、 指向特性 が予測できる。 これらの結果をもとに、 今後の高速化によって生じる衝撃音の影響 の解析や、 衝撃音の有効な低減化対策法の確立が必要と考えられる。 また、 近年で は在来線でも高速化が計画されており、 在来線トンネルにおける衝撃音についても 解析を行なう。( 2
)本論文では、 関口端から圧縮波が放出されるときの関口端近傍の流れ場を非粘性軸 対称、流として数値解析を行なった。 今後は粘性を考慮した計算を行ない、 粘性の及ぼす影響について解析を行なう。
( 3
)今後の高速化により形成されるパルス波の特性を実験的に調査するために、 波面の 長さが短く、 かつ、 比較的弱い圧縮波を再現性よく形成させる圧縮波発生装置を開 発し、 波面の長さが短い圧縮波に対する実験を行なう。 また、 関口端から圧縮波が 放出されるときの関口端に生じる圧力変化や、 関口端近傍の流れ場についても調査 を行なう。- 117 -
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