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博士(医学)田本英司 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)田本英司 学位論文題名

食道癌における腫瘍増殖に伴う 遺伝子発現プロフイールの推移

学位論文内容の要旨

    背景と目 的

  食道癌は 消化管悪 性腫瘍 の中でも 最も予 後不良で あり、 近年の手 術手技の進歩および化学放射線 治 療の進 歩にもか かわら ず、5年生存率iま 依然とし て40〜60%にとど まって いる。食 道癌の疾 患病 態 をより よく理解 する、 あるいは 予後を 予測すべ くこれま で多く の研究者達によりいくつかの遺伝 子 が腫瘍 増殖ある いはり ンバ節転 移のマ ーカーと して報告 されて きた。しかし、単一の遺伝子の情 報 だけで は癌化、 増殖、 浸潤とい った食 道癌の疾 患病態を 明らか にすることは困難である。そこで 申 請者ら はこうい った個 々の遺伝 子のみ の検索と は異なり 多くの 遺伝子発現値を一茎に取得できる cDNAアレ イ を 用い た 遺 伝子発現 プ口フ イール解 析を行 い、癌の 分子生物 学的特 徴を明ら かにす る こ と を 試 みた 。 食 道癌36例に おける 遺伝子発 現プ口フ イール 解析を行 い、病 理組織学 的因子 との 関 連を解 析するこ とによ り腫瘍の 進達度 に附随し て発現の 変化す る遺伝子およびりンパ節転移に関 与 す る 遺 伝 子 を 同 定 し 、 食 道 癌 の 分 子 生 物 学 的 特 徴 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。

    対象と方法

  北大 医 学 部附 属 病 院およ び北海 道内の関 連33施設 で切除さ れた食 道癌細織 のうち病 理組織 学的 に 扁 平上 皮 癌 細織 が 確認 された36例を対象 とした 。今回の 研究は北 海道大 学病院お よび関 連病院 にお ける倫理 委員会 の承認を 得た上 で行い、 研究の趣 旨を十 分説明した上で同意の得られた症例を 対 象 と し た 。 病 理 組 織 学 的 因 子 に つ い て は TNM分 類 (UIく C.第 6版 ) を 用 い た 。   腫瘍 組 織 からmRNAを 抽 出しRI: PCRにてbiotin‑16‑dUTPとも に 増 幅し た 。BioOnで標 識され た cDNAを1289種 類の 癌 関 連遺 伝 子 の搭 載 さ れ たア レ イ フィ ル タ ーに ハ イ プリ ダイ ズさせ 各遺伝子 の 螢 光強 度 を コン ピ ュー ターに て読みと り数値化 し遺伝 子発現値 とした 。取得し た36例の 遺伝子 発現 値を用い て、ま ず深達度 の進行 に伴い発 現が増加 または 減少していく遺伝子を一般化線形モデ ルに 基づいた 回帰分 析を用い て検索 した。ま た、リン パ節転 移の有無による遺伝子発現プ口フイー ル の 特 徴 を 知 るた め に 、統 計 学 的に 発 現 値に 有 意 差の あ っ た遺 伝 子 を 選択 し た (両 側t検定 、 p一′`.05)。さらに、選択された遺伝子カ洛群の特徴をよく表しているかどうかを知るために最尤推 定 を 基盤 と し てデ ー 夕 空間 の 混 合分 布 を 分離 す るEMア ル ゴ リズ ム を 用い て 、教師 なし学 習法に よる分類を行った。また、別の教師なし学習法であるk一meanscluSterむ・曙でもデ一夕分布の分離l生を 検討 した。そ れから りンパ節 転移に 関わる遺 伝子群の 本質的 な部分を抽出するために、選択された 遺伝 子の中か ら分類 に最適な 遺伝子 セットを 同定する 特徴サ プセット選択を行った。特徴選択アル ゴリ ズムにはk最 近隣法を 識別関数 としてleavc‐on争0ut法 による誤 識別率 を最小に する遺 伝子の 組み合わせを広範囲に探索できる逐次前方選択法を適用した

(2)

    結果

  一般化線 形モデ ルに基づ く回帰 分析で腫 瘍の増殖 に伴い 発現が変化する遺伝子を検索した結果、

pT stageの進行により発現が増加していた遺伝子が47個抽出され、この中にはcell adhesion protem、 ex弧cellularm矧xrelatedprote弧groMh/d価闇mti甜onfactorが含まれていた。一方、発現が減少して いた 遺 伝 子は24個抽 出 さ れ、 そ の 中にceucyderegulator丶鰤sdptio耐fねorが含まれ ていた。 リ ンバ 節 転 移に 関 し ては 、陰性 例と陽 性例の間 で発現 値に統計 学的有 意差を認 めた87遺 伝子を抽 出 した(両 側t検 定、tく0.05)。 次に教師 なし学習 法のEMア ルゴリズ ムを使 用して87遺 伝子の発現 値 か ら な る デ 一 夕 分 布 の 分 離 性 を 検 証 し た と こ ろ36例 中5例 が 誤 っ て 分類 さ れ た( 誤 識 別率 13.9%)。別の教師無し学習法であるk‐rncans法による分類では36例中n例が誤って分類された(誤 識別率30.6% )。次い で特徴選 択アル ゴリズムによルリンバ節転移の有無を最も良く分類する特徴 遺伝子を44個選択した。この中にはceuadhcsionproteinS、ceumembranereccptors、ceucyderegulatorS、 血舶ceuularsig耐ingmol・eculeSが含まれていた。これらの遺伝子を用いて9712%の確率で2群を識別 することが可能であった。

  pTstageの 進行とと もに発現 が変化 する遺伝 子とり ンバ節転 移の有 無により 発現値に 有意差の有 る遺 伝 子 のう ち14個 が 共 通し て い た。 ま た 、71個 の うち こ れ ら14個 の遺 伝 子を除 いた57遺 伝子 がpTs咤eの 進 行に 特 有 の分 子 生 物学 的 特 徴を 反 映 する と 考 え られ た 。 さら に 、71遺 伝 子中4遺 伝子のみがりンパ節転移の特徴を反映する遺伝子と共通していた。

    考察

  食 道癌の癌 化,増 殖,浸潤 能の獲 得におけ る複雑か つ多段 階の過程には多数の遺伝子が関与して い る 。 今 回 の 研 究 で は 深 達 度 の 進 行 と り ン バ 節 転 移 に 特 徴 的 な 遺 伝 子 を 同 定 し た 。   深 達度(pT蜘ge)の進行に伴い発現が増加する遺伝子群はcenadhesionprotem、ex弧∞llularma缸仮 relatedpmtem、ぴ)wm/d砥eIIenti甜onf犯0r等、その機能も多岐にわたっていた。一方、Tstageの進 行に伴い発現が低下する遺伝子にはceucyderegulator、tr.anScriptiondfadorが含まれていた。これ ら の結果か ら、食 道癌の早 期にはceucyderegulatorによるtuInorsuppressorとして作用する遺伝子 の 発現が保 たれて いる一方 で恤s面ptionfadorがその転写活性により多岐にわたるsignal血gp甜Iway を 介して腫 瘍増殖 促進的に 作用して おり、 進行する にっれ て腫瘍の 浸潤に関わる遺伝子が関与して く ることが 示唆さ れた。ま た、リン バ節転 移(pNstage)につ いてはり ンパ節 転移陽性 群にお いて celladh函onprot価 やceu111e11nぬnere呷t觚 が高発現 であり、 一.方ceucyde嚠la脇やmacellular s蜘alむ1gmolecubが 低発 現であ った。こ れらの 遺伝子は 細胞増殖 能より もむしろ 細胞と それを取 り 巻く環境 との相 互作用に よる腫瘍 の細胞 浸潤の特 徴を表 している と思われた。興味深いことにり ン バ節転移 に関わ る分子生 物学的特 徴は深 達度の進 行に伴 うそれと は異なるものであった。両因子 の 間でほと んどの 遺伝子が 共通して いなか ったこと は、深 達度とり ンパ節転移は互いに異なる分子 病態を呈することを示唆していた。

  cDNAア レイ は 多 数の 遺伝 子の発 現プロフ イール 解析を行 うことに より、 癌に特有 の遺伝 子発現 パ ターンを 包括的 に把握す ることを 可能に させ、未 だ完全 には明ら かになっていない食道癌に特有 の分子病態を理解する有カな手法であると考えられた。

  今 回、食道 扁平上 皮癌にお ける腫 瘍増殖、 浸潤の分 子生物 学的特徴として選択された遺伝子は幾 っ か興味深 い傾向 を示した が、悪性 度に関 与する特 徴のご く一部で ある可能性がある。しかし、さ ら なる研究 により 今回明ら かになっ た特徴 遺伝子が 食道扁 平上皮癌 の悪性度の本質をより理解する 端緒となることが期待される。

(3)

     結語

   食道扁平上皮癌36 例でcDNA アレイ解析を行い病理組織学的因子との関連を検討した結果、食

道 癌 の 増 殖 、 進 展 に 関 与 す る 分 子 生 物 学 的 特 徴 が 明 ら か に な っ た 。

(4)

学位論 文審査の要旨

学位論文題名

食道癌における腫瘍増殖に伴う 遺 伝子発現プロフイール の推移

   食道癌は消化管悪性腫瘍の中でも最も予後不良である。これまでにいくっかの遺 伝子が腫瘍増殖あるいはりンパ節転移のマーカーとして報告されてきたが、単一の 遺伝子の検索だけでは食道癌の疾患病態を明らかにすることは困難である。そこで 申請者らは多数の遺伝子発現値を一挙に取得できる cDNA アレイを用いた遺伝子発 現プロフイール解析を行い、食道癌の分子生物学的特徴を明らかにすることを試み た。

   外科的に切除された食道癌組織のうち病理組織学的に扁平上皮癌組織が確認され た 36 例を対象とした。今回の研究は研究の趣旨を十分説明した上で同意の得られた 症例のみを対象とした。 1289 種類の癌関連遺伝子が搭載されたアレイフィルターを 用 い て cDNA ア レ イ解 析 を行 い 、取 得 した 36 例の 遺 伝子 発 現値 と TNM 分類 に 基 づく病理組織学的因子との関連を検討した。まず深達度 (pTstage )の進行に伴い 発現が変化する遺伝子を一般化線形モデルに基づいた回帰分析を用いて検索した。

また、リンバ節転移 (pNstage) における遺伝子発現バターンを知るために、 t 検定 を用いてりシパ節転移陽性例と陰性例で発現値に統計学的有意差のあった遺伝子を 選択した。選択された遺伝子のデー夕分布の分離性を検討するため EM アルゴリズ ムによる分類を行った。さらに、1 」ンバ節転移に関わる遺伝子群の本質的な部分を 抽出するために、特徴サプセット選択により分類に最適な遺伝子セットを選択した。

特徴選択アルゴリズムにはk 最近隣法を識別関数として  le ave −one ―out 法による 誤識別率を最小にする遺伝子の組み合わせを広範囲に探索できる逐次前方選択法を 適用した。

   一般化線形モデルに基づく回帰分析によりpT stage の進行に伴い発現が増加して いた遺伝子が47 個抽出され、この中には cell adhesion protein , extracellular matrix related protein ,growth/differentiation factor が含まれていた。一方、発

之 敬

紘  

  哲

藤 木

加 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

現 が 減 少 し て い た 遺 伝 子 は24個 抽 出 さ れ 、 そ の 中 にcell cycle regulator, trarlscription factorが含まれていた。リンバ節転移に関しては、陰性例と陽性例の 間で 発現 値に 統計 学的 有意 差を 認め た87遺伝 子を 抽出した(両側t検定,pく0.05)。 次 にEMア ル ゴ リ ズ ム を 使 用し て87遺 伝 子 の 発 現 値 か ら な る デー 夕分 布の 分離 性を 検証 した とこ ろ、 誤識 別率 が13.9% であ った 。次 いで特 徴選 択ア ルゴ リズ ムに よル リン ノヾ 節転 移の 有無 を最 も良 く分 類す る遺 伝子 を44個 選択 した 。こ の中 にはcell aclhesion proteins,cell rnernbrane receptors,cell cycle regulators,intracellular sigrlaling moleculesが 含ま れ てい た。 これ らの 遺伝 子を 用い て97.2% の確 率で2 群 を 識 別 す る こ と が 可 能 であ っ た 。pT stageの 進 行 と と も に発 現が 変化 する71遺 伝子とりンノヾ節転移の特徴を反映する44遺伝子のうち4遺伝子のみが共通していた。

  深 達度 の進 行に 伴い 発現 が増 加あ るい は低 下す る遺伝 子を 検索 した 結果 より 、食 道癌 の早 期に はcell cycle regulatorに よるtumor suppressorと して 作用 する 遺伝 子 の 発 現 が 保 た れ て い る 一方 でtranscriptionfactorが 腫瘍 増殖 促進 的に 作用 して おり 、進 行に 伴い 腫瘍 の浸 潤に 関わ る遺 伝子 が関 与して くる こと が示 唆さ れた 。ま た、1」 ンバ 節転 移に 関して は細 胞増 殖能 より もむ しろ細胞とそれを取り巻く環境と の相 互作 用が 関与 して いる と考 えら れた 。興 味深 いこと に両 因子 の問 で共 通す る遺 伝子 が殆 ど無 かっ たこ とは深達度とりンノヾ節転移は互いに異なる分子病態を呈する ことを示唆していた。

  今 回明 らか にな った 分子 生物 学的 特徴 が食 道扁 平上皮 癌の 悪性 度の 本質 をよ り理 解する端緒となると期待された。

  口 頭発 表に おい て吉 木教 授よ り深 達度 とり ンバ 節転移 で共 通す る遺 伝子 は何 であ った か、 問質 の影 響を 反映する遺伝子について質問があった。つい、で守内教授より 問質 を混 じた サン プル とマ イク ロダ イセ クシ ョン を行っ たサ ンプ ルで は異 なる 結果 が得 られ るの か、 予後 は何年で評価するのが妥当かについて質問があった。さらに、

加藤 教授 より 術前 の生 検材 料を 用い た適 正治 療法 の選択 、予 後予 測は 可能 か、 深達 度 と り ン バ 節 転 移 で 共 通 した 遺 伝 子 が 少 な か っ た 理 由 に つ いて の質 問が あっ た。

  申請者は質問内容をよく理解し誠意ある回答をしていた。

  本 研究 は食 道癌 の分 子病態を解明し、、適切な臨床応用への道を開いた研究として 期待 され 審査 員一 同, この 成果 を高 く評 価し ,大 学院課 程に おけ る研 鑽や 取得 単位 なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有する者と判断した。

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