• 検索結果がありません。

博士(工学)佐藤芳幸 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(工学)佐藤芳幸 学位論文題名"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(工学)佐藤芳幸 学位論文題名

微量塩化水素含有雰囲気における金属の高温腐食に関する研究 学 位 論 文 内容 の 要 旨

  近年 、塵 芥・ 産業 廃棄 物の 多様 化にと もない、焼却炉には厳しい高温腐食が発生し、そ の 防食 対策 の確 立が 急務 とな って いる。 この主要因は塩化水素ガスによる腐食であるが、

塵 芥の 焼却 炉環境が非常に複雑であることにも関連して、現在、このHC1による高温腐食機 構 につ いて は殆 ど明 らか にさ れて いない 。

  本論 文は 、HC1ガス によ る高 温腐 食機 構の解明の基礎的研究として、酸素に微量のHC1ガ ス (lvol%)が 含ま れる 雰囲気 での 、鉄 、ク 口ム 、ニ ッケ ルお よび それ らの 合金 の高温 腐 食 挙動 を熱 重量 法を 用い て詳 細に 検討す るとともに、酸素ー塩素系の複合腐食機構におけ る 塩素 の役 割を 解明 した もの で、 全9章 より 構成 され てい る;

  第一 章は緒論であり、環境・省資源に関する社会的背景とそれに伴う塵芥等の質的変化 を 示し 、焼却炉の腐食を研究するに至った経緯について述べた。さらに、塩化物に起因す る 高温 腐食に関する研究の歴史的変遷について紹介し、本研究の目的と位置づけおよびそ の 重要 性を 示し た。 ・

  第二章では、HC1を含む雰囲気(lvol%HC1―50vol%02―N2)中におけるFeの高温腐食挙動を 明ら かに した 。Feの酸 化量 は低 温域(873K)で は純 酸素 雰囲 気に比 べて大きくなり、酸化 物皮 膜は 厚く 成長 した 。こ れは 、腐食 の主反応は酸化であるが、金属/スケール界面の酸 素ポ テン シャ ルが 酸化 物の 成長 ととも に低下するのに対して、塩素ポテンシャルは増大し て塩化物が形成されるためである。一方、1073K以上の高温域でtま腐食は抑制される傾向に ある 。こ れは、形成したFeCl2が比較的高い蒸気圧を有するため、スケール/金属界面にガ ス層 を形 成して物質移動が妨げられる事に起因する。さらに、1173K以上ではスケ―ルが膨 れ 、 か つ 塩 化 物 の 雰 囲 気 へ の 揮 散 が 活 発 と な り 質 量 減 少 が 観 察 さ れ た 。   第三章 では 、HC1を含む雰囲気中におけるCrの高温腐食挙動を明らかにした。Crの酸化量 は 時間に 対し て単調に増加する。一方、1100K付近の温度を境に、高温側では純酸素中の酸 化 量とほ ぼ同 程度 であ るの に対 して 、低 温側では酸化量が大きくなった。これは、生成す る ク口ム 塩化 物(CrCl2)の 蒸気 圧が 比較 的低 く皮 膜を 移動 中に酸 化さ れてCr203に変化す め である 。し かし、高温側ではCrCl.3が生成するようになり、これはCrCl2よりもさらに蒸 気 圧 か 低 い た め 、 加 速 的 腐 食 に 至 ら な か っ た も の と 考 え ら れ る 。

第 四章 では 、Niについての腐食挙動をまとめたものである。Niの酸化量の時間変化にお

(2)

いて、 いず れの温度においても、腐食の初期段階から揮発性物質の生成による質量減少が 観察さ れた 。腐食スケ―ルは多孔質で層状の酸化物スケールとなっており、Niの酸化反応 と塩化 反応 が交互に起こっていることが明らかとなった。腐食による金属消費量を酸化と 塩化の 両反 応に分けることによって、酸化物の形成速度は純酸素中での値と同程度である のに対 して 、塩化反応が腐食の初期段階から時間に比例レて進行していることを示した。

これよ り、 塩化反応が腐食を加速している要因であることを明らかにした。さらに、この 腐食挙動はスケール形態と熱力学(平衡)の観点から合理的に説明できるこ.とを示レた。

  第五章では、Fe基―Cr合金の高温腐食に対するHC1の影響を調査レた。Fe―Cr合金の酸化 量は 、純 酸素中での値に比較するといずれも大きいが、Cr添加量の増大にともない低下し た。 さら に、Cr添加は酸化のみならず塩化反応をも抑制する効果のあることを明らかにレ た。Fe―Cr合金の加速腐食はFeCl2の生成に起因し、Cr添加による腐食の抑制は金属/スケ ール 界面 付近に生成したFeCr204スピネル酸化物がFeCl2の生成を抑制するためであること を示した。

  第六章では,Ni基ーCr合金の高温腐食について調査した。Ni―Cr合金の酸化量の時間依存 性は 、腐 食の 初期 に増 加し 、反 応の 進行 とともに減少に転ずる。腐食による金属消費量を 酸化 と塩 化の 両反 応に 分け て調 査し た結 果、腐食の初期では酸化反応が優勢であるのに対 し て 、 後 期 に な る と 塩 化 反 応 が 支 配 的 に な る こ と が 明 ら か と な っ た 。   第七章でtま,高温環境で{まHClと02の反応によってH20蒸気が生成することに着目レて、

本 章で は、 高温腐食に及ぼすH20の影響を明らかにするため、水蒸気を12.2%添加した雰囲 気において、Fe、Ni、Fe−CrおよびNiーCr合金の高温腐食挙動を調査した。その結果、H20の 添 加は 腐食 速度を低下させることが示され、これは高温で発生するCl2ガスの生成が抑制さ れるためであることを明らかにした,

  第八 章で は, 酸素と微量塩化水素が共存する雰囲気中に存在する各種ガスの熱力学的平 衡 分圧 を求 めた 後、相安定図と金属塩化物の平衡分圧、さらにスケール中の物質移動過程 に 基づ いて 、反 応速度を解析した。その結果、酸化物の塩化反応および塩化物の雰囲気へ の 飛散 は、 酸化 物と塩化物の相互固溶と活量を考慮することによって、熱力学的に説明可 能 であ るを 実証 するとともに、塩化物の揮発をともなう高温腐食の動力学を表現する新し い 式を 提案 した 。

第九章は、本論文の要約と結論である。

  最後 に、 本論文はHC1含有雰囲気での金属・合金の高温腐食挙動に関する基礎的研究を纏 め たも ので あるが、得られた成果はごみ焼却炉内環境に見られるHC1を含む苛酷な腐食性雰 囲 気中 での 装置 材料 の腐 食機 構の 解明 に資するとともに、高耐食性金属材料の開発にも多 い なる 貢献 が期 待さ れる 。

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨

主 査   教 授   成 田 敏 夫 副 査   教 授   石 川 達 雄 副 査   教 授   瀬 尾 眞 浩 副 査   教 授   高 橋 英 明 副 査   助 教 授   黒 川 一 哉

学 位 論 文 題 名

微量塩化水素含有雰囲気における金属の高温腐食に関する研究

  近 年、 塵 芥 ・産 業廃 棄物の多 様化に ともない 、焼却 炉には厳 しい高 温腐食が 発生し、 その 防 食 対 策の 確 立 が急 務となっ ている 。この主 要因と して塩化 水素ガス による 腐食が挙 げられ る が 、 今ま で は 、こ のHC1ガ ス によ る 高 温腐 食 機構に ついては 殆ど明 らかにさ れていな い。

  本 論文6ま 、酸 素 に微量のHC1ガ ス(lvoloL) を含む雰 囲気での 、鉄、 ク口厶、 ニッケ ルお よ び そ れら の 合 金の 高温腐食 挙動を 熱重量法 を用い て詳細・ 系統的に 検討す るととも に、酸 素 ― 塩 素系 の 複 合腐 食におけ る塩素 の役割と その機 構を解明 したもの である 。その主 要な成 果 は以下の ように纏 められ る。

  HC1を含む 雰囲気 (lvol%HCl―50volo/02残No)中におけるFeの腐食は低温域(873K)におい て 純酸素雰 囲気中よ りも酸 化物皮膜 は厚く 成長し、HC1に よって腐 食が加速 される ことを見い だ 。 こ れは 、 酸 化物 の成長と ともに 金属/ス ケール 界面の酸 素ポテン シャル が低下す るのに 対 し て 、塩 素 ポ テン シャルは 増大レ て塩化物 が形成 されるた めである ことを 明らかに してい る 。 一 方、1073K以上 の高温域 では、FeCl2が比 較的高 い蒸気圧 を有す るため、 スケー ル/金 属 界 面 にガ ス 圧 によ る 膨 れを 形 成 して 腐 食 は抑 制され る傾向に あるこ と、さら に、1173K 上 で は 、塩 化 物 の蒸 気圧が増 大する 結果とし て雰囲 気への揮 散が活発 となり 質量減少 を観察 し て い る。Crの酸 化 量 は時 間 に 対し て 単 調に 増加 し、1100K付近の 温度を 境に、高 温側で は 純 酸 素 中の 酸 化 量と ほぼ同程 度であ るのに対 して、 低温側で は酸化量 が大き くなるこ とを見 い だ し 、CrCl2の 蒸 気圧 は 比 較的 低 い ため 、CrCloが皮膜 を移動中 に酸化 されてCr203に変 化 す る た めで あ る こと を明らか にして いる。し かし、 高温側で はCrCl3が生成し 、これはCrCl2 よ り も さら に 蒸 気圧 が低いた め、加 速的腐食 に至ら なかった ものと考 えられ る。Niの酸 化量 の 時 間 変化 は い ずれ の温度に おいて も、腐食 の初期 段階から 揮発性物 質の生 成による 質量減 少 が 観 察さ れ た 。腐 食スケ― ルは多 孔質で層 状の酸 化物スケ ールとな ってお り、Niの酸 化反 応 と 塩 化反 応 が 交互 に起こっ ている ことが明 らかと なった。 腐食によ る金属 消費量を 酸化と 塩 化 の 両反 応 に 分け ることに よって 、酸化物 の形成 速度は純 酸素中で の値と 同程度で あるの に 対 し て、 塩 化 反応 が腐食の 初期段 階から時 間に比 例して進 行してい ること を示した 。これ よ り 、 塩 化 反 応 が 腐 食 を 加 速 し て い る 要 因 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 〔 〕   FeCrおよ びNiCr合金の 高温腐食 はいずれ もCr添加 量の増大 にとも ない低下 した。 これ よ り 、Cr添 加 は塩 化 反 応を 抑 制 する 効 果 のあ るこ とを明 らかにし ている 。HC102の反応 に よ っ て 形成 す るH20蒸 気とCl2の 影 響 を実 験 的 に検討 し、H,0の添加 は腐食速 度を低下 させる が 、 Cl2ガ ス は 腐 食 を 促 進 す る こ と を 明 ら か に し た こ と は 高 く 評 価 さ れ る ,   酸 素と 微 量 塩化 水素 が共存す る雰囲 気中に存 在する 各種ガス の平衡 分圧、相 安定図、 金属 塩 化 物 の平 衡 分 圧、 スケール 中の物 質移動過 程に基 づいて反 応速度を 解析し 、塩化物 の揮発 を ともなう 高温腐食 の動力 学を表現 する新 しい式を 提案し ている。

231  ‑

(4)

  これ を要 する に、 著 者はHC1ガス 含有雰囲気での金属・合金の高温腐 食挙動に関する基礎的 知 見を 得た もの であ り 、苛 酷な 雰囲 気中 での 装置 材料 の腐 食機構の解 明に資するとともに、

将 来の 高効率発 電システムにおける高耐食性金属材料の開発にも多いな る貢献が期待される。

よっ て著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与さ れる資格あるものと認める。

‑ 232

参照

関連したドキュメント

  

な価値を有するものである。参考論文は,2 編あり,いずれも英文で国際誌に掲載済みあ るいは掲載決定済みである。.

  5 . 定電流 電解 時に作 用電 極の表 面に レーザ ー光 を照射 すると、めっ きの初 期に おいて は照 射部位と非照射部位の間にめっき層の厚みの差が 現れた

   本 攪拌 方式 が優 れて い るこ との 理由 を明 確 にす るた めに 、 粒子画像流速計(Particle Image Velocimetry: PIV)

4 .微小重力場の静止雰囲気中における導線被覆材の燃焼現象に及ばす心線材質の影響を

   第4 章では、通常のクラスター変分法を用いて、2 次元正方格子上の 2 元合金

  

容易に 還元され Zn 、In および Ga と Pd あるいはPt の合金相が生成するのに対し、他の担持Pd およびPt 触媒や Ni/Zn0 、Co/Zn0 触媒は、還元後も合金相は生成せず、Pd 、 Pl