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博士(農学)大藤泰雄 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)大藤泰雄 学位論文題名

   コ ム ギ 縞萎縮病 の発生生態 と 病原ウイルスの系統に関する研究

学位論文内容の要旨

  コムギ縞萎縮病は、土壌微生物Polymyxa graminisにより媒介される土壌伝染性のウイ ルス病害である。本研究では、コムギ縞萎縮病の耕種的防除技術の開発並びに抵抗性品種 の開発に資するために、被害の特徴に基づく診断方法を提示し、発生生態の詳細を温度環 境との関連から明らかにするとともに、効率的接種試験条件を確立し、播種期(晩播)に よる発病軽減の機作を明らかにした。さらに、これまで不明であったコムギ縞萎縮ウイル ス(WYMV)の病原性系統の分化とその分布実態を明らかにした。

1.コムギ縞萎縮病の病勢進展と被害、および診断 (1)病勢進展と減収要因

  縞萎縮病の病勢進展を調査した。モザイク症状は最初に新葉の基部に認められ、やがて、

萎縮症状を伴って植物体全体に現れた。重症株では―陥Z葉や分げっのえ死が起こったが、

しばしば軽症株は回復し終息した。病勢進展を基に、以下の評価基準くDisease Index:DI) を定めた。O:無病徴、1:最上位の1葉にのみ軽いモザイク、2:複数の上位葉にモザイ ク症状、3:株全体にモザイク症状と萎縮症状、4:株全体の激しい萎縮症状と新葉の壊死。

  コムギ縞萎縮病の減収要因をDIとの関係から解析した結果、コムギ縞萎縮病の減収は、

主にDI3以上での一穂粒数の減少によるものであり、DI4の重症個体では1000粒重の減 少も減収に関与していた。

(2)酵素標識抗体法くELISA)による診断

  ELISAによりWYMVを検出するための検出部位を、症状の程度別に検討した。その結果、

無病徴感染株と軽症株では植物体全体を、中症株、重症株、および回復後の株では上位葉 を用いることで確実に検出可能であった。

2.コムギ縞萎縮病の発生生態に及ぼす温度の影響 (1)感染期と潜伏期の温度環境

  様々な時期に汚染圃場ヘコムギ苗を移植し、感染期とその時の温度条件を調べた。その 結果、翌春の発病に関与する感染は秋期に日平均地温が約8へ15℃の時期に起こっていた。

汚染圃場のコムギを定期的に掘り取り、潜伏期のコムギ体内でのWYMVの増殖時期を調べ た。その結果、WYMVの検出頻度は、播種2ケ月日以降、積雪下約0℃の条件下を含む冬期 間 に 上 昇 し 、 発 病 前 に ほ ぼ 全 て の 調 査 株 の 全 身 か ら 高 濃 度 に 検 出 さ れ た 。 (2)気温が病勢進展に及ばす影響

  初発時からの病勢の変化と気温の推移を圃場での自然発病下で調査した。5年間の試験

(2)

を 通して 、病勢は 、日平 均気温が 約5〜10℃の時 に進展し 、10℃近 辺で推移 する時 には停 滞 し 、連 続 し て10℃ 以上 の 時は マスキ ングが起 こり回復 した。 同一年な ら播種 期を変え ても 病勢進展 の様式 は同じで あること から、 春の発病 期の気 温が、感染時の気象条件とは 別に 病勢進展 に影響を及ぼすことが明らかになった。気温と地温を制御した人工気象下で、

接 種 試験 に よ りWYMVの 地 下 部か ら 地 上部 へ の 移行 や 地 上 部で の 増 殖、 発 病 に及 ぼ す温 度 の 影響 を 確 かめ た 。 その 結 果 、WYMVの コ ム ギ体 内 に お ける 増 殖 ・移 行 は10℃ 付 近が 活 発であ ったが、 病徴発 現には5℃が適 し、15℃ はウイル スの増 殖と病徴 発現の いずれに も 適 さな か っ た。 病 勢 進展 に 対する温 度の影 響は、圃 場での 観察結果 とほぼ 一致した 。   (3) WYMVの媒介者P.gramむぬの活動に対する温度の影響

  P・呂′弸むぬの活動適温を土壌恒温槽で地温を変えて調べた結果、P.呂朋mむぬの活動は8℃

〜20℃で認められ、13〜15℃の時に最も活発であった。

  以上 の発生生 態に及 ぼす温度 の影響 の解析か ら、効率 的接種 試験系として以下の温度条 件 を確立 した。i)土 壌から感 染させる 場合: コムギ苗 を地温10〜13℃に保 った縞 萎縮病 汚染 土壌で60日 問育て たのち滅 菌土ヘ 移植し気温5℃で育てる。ii)汁液接種の場合:wYMv を接種した植物を5℃で60日問程度育てる。

3.晩播による発病軽減効果の作用機作

(1)翌春の発病期におけるコムギ体内でのウイルス濃度

  播種 期 の 異な る コ ムギ の 間 で、 発 病 期の 地 上 部に お け るWYMv濃度をELIsA値 で比較し た 。その 結果、全 ての供 試個体で 感染が 確認され 、播種期 が遅れ るに従いELIsA値 が低下 し、同時に発病も軽減された。

(2)気温低下に伴う感染好適期間の短縮の影響

  土 壌 恒 温 槽 内 で 地 温 を10℃ に 保 ち 、30日 間 と60日 問WYMV汚 染 土 壌で 育 て たコ ム ギ を殺 菌土に移 植・栽 培して発 病率を比 較した 。その結 果、両 処理で全ての株が感染してい た が 、発 病 株 数は30日問 汚 染土 壌で育 てた区で 少なく、 感染好 適期間の 短縮が 発病を軽 減した。

(3)秋期におけるコムギの生育量の影響

  晩播 によルコ ムギの 生育量も 減少す る。そこ で、感染 時のコ ムギの生育量が発病に及ば す影 響を調べ た。異 なる生育 量のコム ギ苗を 汚染圃場 に同時 に移植した結果、移植時のコ ムギ の生育量 が少な ぃほど発 病が軽微 になり 、感染期 間のコ ムギの生育量の減少が翌春の 発病を軽減した。

(4)感染機会の減少の影響

  伝染 源密度を 変えて 、感染機 会の減 少が発病 に及ぼす 影響を 調べた。無発病地の土壌で 2倍ず つ段階希 釈した コムギ縞 萎縮病汚 染圃場 の土壌で は、希 釈段階が 高いほ ど感染株 数 は減 少し感染 機会の減少を確認した。このとき高希釈段階では無病徴感染株が観察された。

すな わち、感 染機会 が減少す ると、発 病株率 に加えて 感染株 の発病程度も低下することが 明らかとなった。

  以上 から、晩 播で発 病が軽減 される 機作を以 下のよう に推定 した。感染好適期間の短縮 とコ ムギの生 育量の 減少は、 伝染源へ の暴露 時間とコ ムギ根 の量を減ずる。このため感染 機 会 が減 少 し て、 コ ム ギ1個 体 当た り のwYMv感染 量 とwYMvの 増殖量が 減少す るため発 病 が軽微になる。

4.wYMVの病原性系統の分化とそれら系統の日本国内における分布

(3)

(1) WYMV病原性系統の判別品種体系の確立と各系統の分布実態

  日本の標準株であるWYMV一T株と東北農業研究センター圃場から分離したWYMV・M株との 問の病原性の違いを基に、農林登録品種とその系譜上の品種を中心とする54品種から、

汁液接種検定によるWYMV系統の判別品種として「フクホコムギ」と「北海240号」を選 抜した。国内の主要なコムギ縞萎縮病発生地で採取したWYMV株の病原性は、「フクホコム ギ」のみを侵すI型、「フクホコムギ」と「北海240号」の両方を侵さないII型、両方を 侵すIII型の3系統に類別された。III型(Yt株)は、福岡県の1地点から採取された。

  岩手県以北からはIエ型、官城県以南はI型が採取され、系統の分布に地域性が認めら れた。岩手県以北からI型株が採取されない理由を過去の品種の抵抗陸から説明すること は出来なかった。

(4)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授    内 教 授    上 教 授    幸 助教授   近

藤 繁 男 田 一 郎 田 泰 則 藤 則 夫

     学位論文題名

コムギ縞萎縮病の発生生態と 病原ウイ ルスの系 統に関する研究

  本論 文は 、図35、 表31、200頁か らな る和 文で あ り別に参考論文5編が付されている。

  コム ギ縞 萎縮 病は 、 土壌 微生物めlymyxa gramめおが媒介する土壌伝染陸のウイルス病 害 である。防除の主体は、耕種的防除法 と抵抗性品種の作付けに頼らざるを得ない現状に あ るが 、こ れら 防除 法 の基 礎となる、発生生態の詳細や病原ウイル ス(W淵)の系統は不 明であった 。そこで、本論文では、コムギ縞萎縮病の発生生態の解明と接種試験系の確立、

播 種期 (晩 播) によ る 発病 軽減の機作の解明、さらに、WYWの病原陸系統の分化とその分 布実態の解 明、を試みた。

1.コムギ縞萎縮病の病勢進展と被害、 およぴ診断

  病勢 進展 の観 察に 基 づき0へ4の5段階の発病指数(Disease Index:DI)を定めた。 また、

縞 萎縮 病に よる 減収 は 、DI3以 上の中〜重症個体の一穂粒数の減少と千粒重の減少 による ことを明ら かにした。

  次にELISAによ りWYMVを 検出 するための部位を症状の程度別に検討した結果、無 病徴感 染 株と 軽症 株で は植 物 体全 体を、中症株、重症株、お よび回復後の株ではH立葉を 用いる ことで確実 に検出できた。

2. コ ム ギ 縞 萎 縮 病 の 発 生 生 態 に 及 ば す 温 度 の 影 響 の 解 明 と 接 種 試 験 系 の 確 立 (1) WYMV感 染から発病に至る温度条件

  コムギ苗の汚染圃場への 曝露試験により発病に至る感染時期と温度条件を調べた 結果、

秋 期の日平均地温が約8‑‑‑15℃の時期に起こっていた。汚染圃場に育てたコムギの ウイル ス 検出頻度の変化から、潜 伏期間中のWYMVの増殖時期とその時の温度条件を調べた 結果、

WYMVは積雪 下約O℃の条件下で増殖し続 け、発病前にはほば全個体で高濃度に検出された。

自 然発病と接種試験によりWYMVの増殖、病勢進展に及ぽす気温の影響を調べた結果 、病徴

(5)

発 現に は5℃ が適 し、10℃ 以上 では 病徴 は消 えた。WYMVのコムギ体内にお ける増殖・移行 は10℃ 付 近 が 活 発 で 、15℃ は ウ イ ル ス の 増 殖 と 病 徴 発 現 に 適 さ な か っ た 。 (2) WYMVの媒介者Pgraminisの活動に 対する温度の影響

  戸gramむ おの 活 動適 温を 土壌 ´甌 温槽 で地 温を 変え て調 べた 結果 、P彩御mおの活動は 8℃〜20℃で認められ、13〜15℃の時 に最も活発であった。

  以上 の発 生生 態 に及ぼす温度の影響の解析から、接種試験系における温 度条件を以下の 通り確立 した。i)土壌から感染させ る場合:縞萎縮病汚染土壌でコムギ苗を地温10〜13℃ で60日 間育 てた の ち滅 菌土 ヘ移 植し 気温5℃ で育てる。ii)汁液接種の場 合:wYMvを接種 した植物 を気温5℃で60日間程度育て る。

3.晩播による発病軽減効果の作用機 作

  晩播 に伴 う感 染 期間短縮とコムギの生育量の減少による感染機会の減少 からその効果を 検討した 。

  まず 、土 壌感 染 試験 系で 感染 期間 を30日問 と60日間 とし たコ ムギ で感 染と発病を比較 し た結 果、 両処 理 で全昧が感染したが発病株数は30日間処理区で少なく、 感染期間が短い と 発病 が軽 くな る ことを確認した。次に、生育量の異なるコムギ苗を同時 に汚染圃場に移 植 し、 感染 期間 の コムギの生育量が少ないと感染しても発病が軽くなるこ とを確認した。

  コム ギ縞 萎縮 病 汚染土壌を無発病土壌で段階希釈しコムギを育てると、 希釈閏皆が高い 程 感染 株数 は減 少 し、感染機会の減少を確認した。高希釈段階では無病徴 感染株が観察さ れ、感染 機会の減少に伴う発病度の低下を確認した。

  播種 期の 異な る コム ギの 間で 、発 病とwYMv濃度を比較した結果、感染率loo%でも播種 期が遅れ るに従い発病が軽減されwYMv濃度は低下した。

  以上 から 、晩 播 する と、 コム ギ1個体 当た りの伝染源への曝露時間と被 曝根量が減少す る 結 果 、 コ ム ギ1個 体 当 た り の 刪V感 染 量 が減 少し 、そ れがwYMv増殖 量の 減少 をも た ら し、翌春 の発病が軽微になる、と考察した。

4.wYMvの病原性系統の分化とそれら 系統の日本国内の分布

  農林 登録 品種 と その 系譜 上の 品種 を中 心と する54品 種か ら、wYMv系統 の判別品種とし て 「フ クホ コム ギ 」と 「北 海240号 」を 選抜 した。国内の主要なコムギ縞 萎縮病発生地で 採取したwYMV株の病原性を、「フクホコムギ」のみを侵すI型、「フクホコムギ」と「北海 240号」 の両 方を 侵さ ないII型 、両 方を 侵すIII型 の3系 統に 類別 し、I型 は宮城県以南、

II型 は 岩 手 県 以 北 、III型 は 福 岡 県 に そ れ ぞ れ 分 布 す る こ と を 明 ら か に し た 。

以 上 、本 論文 で得 られ た、 コム ギ縞 萎縮 病の 発生 生態 の詳 細、接種試験系の確立、晩播 に よ る発病軽減の機作、WYMVの病原性系統の類 別と抵抗性遺伝資源、WYMV系統の国内分布 等 の 新知見は、本病の耕種的防除や抵抗陸品種 の育成に大きく貢献するものであり,学術 的 、実用的に高く評価されるものである。

  よって,審査員一同は,大藤泰雄が博士(農学うの学位を受けるに十Jl‑j'な資格を有する も のと認めた.

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