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博士(歯学)楊 慧瑛 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)楊   慧瑛 学位論文題名

多変量解析法による上顎前突者の

顎顔面形態と成長特性との関連に関する研究

     学位論文内容の要旨

【 はじめ に】

  上 顎前 突患者 の矯正 治療に おい ては, 個々の 患者の 顎顔面 の成 長特性 を把握し,その後の成長 変 化の傾 向を 適切に 判断す ること が極め て重 要であ る。し かし, 顎顔 面の成長変化にっいては,

個 体変異 が大 きいに もかか わらず ,個成 長を 予測す る有効 な手段 が確 立されていないため,いま だ に平均 成長 での検 討がな されて いるに すぎ ない。 さらに ,上顎 前突 患者の顎顔面形態は極めて 多 様であ るた め,個 々の患 者の成 長変化 の詳 細な予 測は, より一 層困 難なものとなっている。最 近 ,顎顔 面形 態の分 析に, 多変量 解析法が広く応用されるようになり,これとともに主成分分析,

ク ラスタ ー分 析等を 用いた 形態類 似性に 基づ く成長 予測の 試みが なさ れるようになってきた。こ れ らの基 礎的 研究に おいて ,顎顔 面パタ ーン とその 成長変 化には 従属 性があり,成長予測の方法 と して類 似し た顎顔 面形態 を用い ること の有 効性が 示唆さ れてい る。 そこで本研究では,未治療 上 顎前突 者の 顎顔面 の経年 的な成 長変化の観察から,上顎前突者の成長特性にっいて分析を行い,

さ らに多 変量 解析法 を用い て,上 顎前突 者の 顎顔面 パター ンと成 長特 性との関連にっいて検討を 行 った。

【 研究資 料】

  上 顎 前突 患 者 と し て, 北海道 大学歯 学部附 属病 院矯正 科に来 院した 患者 の中か ら,初 診時に Hellmanの 歯 牙 年 齢 がmBで ,overjetが7mm以 上 あ る い は両 側 白 歯 関 係 がH級 の112例 を 抽 出 し た。ま た未治 療上 顎前突 者とし て,同 学部 歯科矯 正学講 座所蔵 の北海 道南幌町における経年的 資 料の中 から, 同じ 条件の13例を選 択し ,さら に対照群として,overjet,overbiteがともにO.5 mm以 上6.5mm以下で ,両 側白歯 関係が ほぼ1級の40例を 選択し た。資 料とし てこ れらの 側面頭 部 X線規 格写真 を用い た。

(2)

【研究方法】

  顎顔面の形態分析にあたっては,頭部X線規格写真分析により,骨格系に関する14項目と,歯 系に関する2項目の計測を行った。また上下顎の成長変化にっいては,観察開始時と終了時にお けるA点とB点の動態から,成長方向のバランスおよび成長量のバランスを算出した。以上のデ一 夕をもとに,本研究は次のように行った。

1.未治療上顎前突者13例を歯槽性および骨格性上顎前突者に分類し,それぞれの顎顔面の経年 的な成長変化を観察した。

2.クラスター分析により,骨格性上顎前突患者の顎顔面形態の分類を行い,それぞれのグルー プにおける顎顔面パターンを抽出した。さらに,判別分析により成長変化が既知の未治療上顎前 突者 を各パターンに識別し,顎 顔面パターンと成長特性との 関連にっいて検討を加えた。

【結  果】

1.未治療上顎前突者の顎顔面の経年的な成長変化

  歯槽性上顎前突者4例において,上下顎の前後的関係には経年的な変化が認められなかったが,

上顎前歯の唇側傾斜が強くなり,overjetの増加が認められた。一方,骨格性上顎前突者9例に おいては,上下顎の前後的関係が経年的に増悪したものが4例で,ほとんど変化の認められない ものが5例で あった。またその間の上下 顎の成長量のバランスにっいては,ANBの増加した4 例のうち2例で対照群の十1. OS. D.を越える値を示していたが,他の7例では土1.OS. D.内の 値を示し,多くの場合成長量の不調和の傾向は認められなかった。成長方向のバランスにっいて は,9例中7例で十1. OS. D.を越える大きな値を示し,成長方向の不調和の傾向が明らかに認 められ,特にANBの増加した4例では,この傾向が強かった。

2.骨格上顎前突者の顎顔面形態の分類

  クラスタ一分析により骨格性上顎前突患者54例を5っのグループに分類することができ,それ ぞれにおける顎顔面パ夕―ンが抽出された。.このうち,上顎骨の前方位を示すものは2グル―プ で,下顎骨の後方位を示すものは3グループであった。また,下顎骨の後方回転による後方位の パターンをもっグループの症例が最も多かった。さらに,未治療の骨格性上顎前突者9例を,判 別 分析 によ り各 グ ルー プに識別 したところ,5グループのう ち4グループに判別された。

【考  察】

1.上顎前突者の顎顔面の成長特性

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(3)

  歯槽性上顎前突者4例でfま,ともに上顎前歯の唇側傾斜が強くなり,overjetの増加が認めら れた。これにっいては, overj etが元々著しく大きいため,舌,口唇等の口腔周囲筋の影響が経 年的にさらに強くあらわれてくるものと思われる。一方,骨格性上顎前突者9例の上下顎の成長 に っ い てfユ , 特 に 成 長方 向の 不調 和 の傾 向が 大き な 問題 とな るこ とが 示 唆さ れた 。 2.骨格性上顎前突者の顎顔面形態

  全上顎前突者のうち,下顎骨の後方回転による後方位の傾向をもっものが約40%を占め,これ は日本人上顎前突者の典型的な顎顔面パターンであると思われる。

3.顎顔面形態と成長特性との関連

  形態類似性に基づく顎顔面の成長パターンの抽出を目的に,骨格性上顎前突者の5っの顎顔面 パターンに,成長が既知である未治療上顎前突者を判別した。その結果,2っの顎顔面パターン においてfま,判別された未治療上顎前突者の間の成長特性が類似しており,またその成長特性は 形態的特徴をますます強調するものであることが確認され,顎顔面パ夕一ンとその後の上下顎の 成長パ夕一ンとの間に強い関連性が示唆された。すなわち,上顎骨の前方位および狭小な顎角と 平坦な下顎下縁平面を特徴とし,前顔面高に対する中顔面の深さの比率が著しく大きな顎顔面パ ターンでは,その後の成長において上顎の前方への成長の傾向が強く,成長量も大きいことが示 唆された。また下顎骨の後方回転による後方位を特徴とする顎顔面パターンでは,下顎の強い下 方成長を示すことが示唆された。一方,残りの3っの顎顔面パターンの上下顎の成長にっいては,

それぞれに判別された未治療上顎前突者の間の成長特性に相違点がある等,今後の検討が必要で あると思われる。

4.骨格性上顎前突者の矯正治療

  成長期にある骨格性上顎前突者の矯正治療においては,特に上下顎の成長方向のコント口―ル を適切に行うことの重要性が示唆された。また,同一の矯正装置を用いても顎顔面パターンの違 いにより治療効果の異なることも示唆された。さらに,日本人上顎前突者に最も多い下顎骨の後 方回転による後方位を特徴とする顎顔面パ夕―ンをもつ症例では,治療が困難なものが数多く含 まれることがわかった。

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(4)

学位論文審査の要旨

  審査は 小口, 吉田お よび中 村審 査員全 員の出 席のも とに ,申請 者に対 し口頭 試問により,提出 論 文の内 容と それに 関連し た学科 目に っき行 われた 。

  矯正治 療にお いて個 々の患 者の 顎顔面の成長特性を把握することは極めて重要である。しかし,

個 成長を 予測 する有 効な手 段が今 のと ころ確 立され ておら ず,持 に上 顎前突 患者の顎顔面形態は 極 めて多 様な ため一 層困難 である 。

  近年多 変量解 析法が 広く応 用さ れるよ うにな り,主 成分 分析や クラス 夕―分 析等を用いた形態 類 似性に 基づ く顎顔 面の成 長予測 が試 みられ るよう になっ てきた 。本 学部矯 正学講座でも「類似 症 例検出 法の ための 頭蓋顔 面パタ ーン の定量 的識別 に関す る研究 」と いう学 位申請論文で,下顎 前 突患者 の形 態類似 性の解 析を行 って いる。

  そこで 本研究 では未 治療上 顎前 突者の 顎顔面 の経年 的資 料で顎 顔面の 成長特 性にっき分析を行 い ,さら に多 変量解 析法を 用いて 骨格 性上顎 前突患 者の顎 顔面パ ター ンの分 類とその成長特性に っ き検討 を行 ってい る。そ の概要 は以 下のと おりで ある。

  研 究資 料とし ては, 側面頭 部X線写真 を用 い,ま ず本学 部附属 病院矯 正科 に来院 した患 者の中 か ら 上顎 前突 患者と して112例を 選択し た。 また, 本学部 歯科矯 正学講 座所 蔵の北 海道南 幌町に お ける経 年的 資料の 中から 未治療 上顎 前突者 として13例を 選択し ,さら に対照 群として40例を選 択 した。 これ らの資 料をも とに, 本研 究は次 のよう に行っ た。

1, 未 治療上 顎前突 者13例 を歯槽 性およ び骨 格性上 顎前突 者に分 類し, それ ぞれの 顎顔面 の経年 的 な成長 変化 を観察 した。

2. ク ラスタ ー分析 によ り,骨 格性上 顎前突 患者の 顎顔 面形態 の分類 を行い ,そ れぞれ のグル ー プ におけ る顎 顔面パ ターン を抽出 した 。さら に,判 別分析 により 成長 変化が 既知の未治療上顎前 突 者 を 各 パ 夕 一 ン に 識 別 し , 顎顔 面 パ タ ー ンと 成 長 特 性 と の関 連 に っ い て検 討 を 加 え た。

  その結 果,以 下の知 見が得 られ た。

1.未 治療上 顎前突 者の 顎顔面 の経年 的な成 長変 化にっ いて

  歯槽性 上顎前 突者4例に おいて は,上 下顎 の前後 的関係 に経年的な変化が認められなかったが,

333

治 久

村 口

中 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

上 顎 前歯 の唇側 傾斜が 強くな り,overj etの増 加が認 めら れた。 これはoverjetが元々 著しく 大 きい ため, 舌,口 唇等 の口腔 周囲筋 の影響が経年的にさらに強くあらわれてくるためと思われる。

一方 ,骨格 性上顎 前突 者9例 にお いてtま, 上下顎 の前後 的関係が経年的に増悪したものは4例で,

ほ と んど 変化の 見られ ないも のは5例で あっ た。ま た顎関 係の改 善の みられ たもの はなか った。

さら に骨格 性上顎 前突 者の上 下顎の 成長で は, 特に成 長方向 の不調 和の傾 向が 大きな問題となる こと が示唆 された 。

2,骨格 性上顎 前突者 の顎顔 面形 態の分 類いっ いて

  クラ スタ ー分析 によ り骨格 性上顎 前突患 者54例 を5っのグ ループ に分類 するこ とが でき, それ ぞれ におけ る顎顔 面パ ターン が抽出 された 。こ のうち ,下顎 骨の後 方回転 によ る後方位のパター ンを もっグ ループ の症 例が最 も多く ,これ は日 本人上 顎前突 者の典 型的な 顎顔 面パ夕一ンである と思 われる 。

3.顎顔 面形態 と成長 特性と の関 連にっ いて

  形態 類似 性に基 づく 顎顔面 の成長 パター ンの抽 出を 目的に ,骨格 性上顎 前突 者の5っの 顎顔面 パ タ ―ン に,成 長が既 知であ る未 治療上 顎前突 者を判 別し た。そ の結果 ,2っの顎 顔面パ ターン にお いては ,判別 され た未治 療上顎 前突者 の間 の成長 特性が 類似し ており ,ま たその成長特性は 形態 的特徴 をます ます 強調す るもの である こと が確認 され, 顎顔面 パター ンと その後の上下顎の 成長 パター ンとの 間に 強い関 連性が 示唆さ れた 。すな わち, 上顎骨 の前方 位お よび下顎骨の狭小 な顎 角と平 坦な下 顎下 縁平面 を特徴 とし, 前顔 面高に 対する 中顔面 の深さ の比 率が著しく大きな 顎顔 面パタ ーンで は, その後 の成長 におい て上 顎の前 方への 成長の 傾向が 強く ,成長量も大きい こと が示唆 された 。ま た下顎 骨の後 方回転 を特 徴とす る顎顔 面パタ ―ンで は, 下顎の強い下方成 長 を 示す ことが 示唆さ れた。 一方 ,残り の3っの顎 顔面パ 夕一ン の上 下顎の 成長に っいて は,そ れぞ れに判 別され た未 治療上 顎前突 者の間 の成 長特性 に相違 点があ る等, 今後 の検討が必要であ ると 思われ る。

4.骨格 性上顎 前突者 の矯正 治療 にっい て

  成長 期に ある骨 格性上 顎前突 者の矯 正治 療にお いては ,特に 上下 顎の成 長方向のコント口一ル を適 切に行 うこと の重 要性が 示唆さ れた。 また ,同一 の矯正 装置を 用いて も顎 顔面パターンの違 いに より治 療効果 の異 なるこ とも示 唆され た。 さらに ,日本 人上顎 前突者 に最 も多い下顎骨の後 方回 転を特 徴とす る顎 顔面パ 夕一ン をもつ 症例 では, 治療が 困難な ものが 数多 く含まれているこ とが わかっ た。

  以上 より ,本研 究は 形態的 類似性 に基づ き骨格 性上 顎前突 患者を5っ の顎顔 面パ夕 ―ン に分類

(6)

し,その成長特性にっき論じた点,今後の矯正歯科臨床に資するところ大である。よって申請者 は博士(歯学)の学位を授与される資格をもっものと認められる。

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