奈良教育大学学術リポジトリNEAR
精神遅滞児のボディ・イメージの発達
著者 田辺 正友, 田村 弘子
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 38
号 1
ページ 83‑92
発行年 1989‑11‑25
その他のタイトル Development of Body Image in Mentally Retarded Children
URL http://hdl.handle.net/10105/1980
',:ll Rf( '、 f‑ws:恥弓.<き斡I '蝣' '\丈・!i;:' 1'\㍉LLI Bull. Nara Univ. Educ. Vol. 38. No. 1 (cult. & soc.).1989
精神遅滞児のボディ・イメージの発達
田 辺 正 友・田 村 浩 子*
(奈良教育大学障害児教育教室) (平成元年4月25日受理)
ボディ・イメージの問題は、精神医学、神経学、心理学など幅広い領域で研究されてきており、
人間の行動理解の一側面として、その重要性が指摘されている。
Schilder (1964)やFrostig (1970)は、ボディ・イメージは運動の開始や運動発達にとって不 可欠なものであると指摘している。筆者らも、運動機能・能力の発達にどのような要因が関与し ているかについて検討し、そこから精神遅滞児の運動機能の遅れのメカニズムを明らかにしよう
として計画した一連の実験的研究のなかで、ボディ・イメージの形成との関連性について検討し た結果を報告した(田辺・田村・小出、 1986;田辺・田村、 1988b)c そして、設定した運動課 題を一つの運動動作にまとめあげていく過程をみていると、単純な反復動作は巧妙に遂行するこ とができるが、複雑な動作になるとほとんど動けないといった子どもがおり、その遂行の様子を みていると、自己の身体のどの部分をどのように動かせばよいかがわからないようにみえること が多く、要素動作の運動能力がそなわっていても、それを有機的に組み合せて一つの運動動作に まとめあげるには、自己のボディ・イメージの形成も1つの要因として重要な役割を果たしてい ることを指摘した。
さらに、 Kephart (1960)は、 「われわれの身体外部にある対象の空間的相互関係のすべての原 点となるのはボディ・イメージである」と述べている。外部世界を判断する客観的な基準という
ものがあるわけでなく、ひとはそれを自己の身体との関係において構造化しているのである。自 己のボディ・イメージによって上下・左右・前後などの空間の方位あるいは定位がなされ、外界 の事象に対して合目的的活動がなされるのである。したがって、ボディ・イメージの形成・分化 とともに、子どもたちは外界に対する認識を深めていくといえる。また、山崎(1981)は、ボディ・
イメージの障害が、洗面、洗髪、入浴中の洗身といった日常生活動作にも影響を及ぼすものであ ることを指摘している。
Gorman (1969)が、 「ボディ・イメージは視覚的プールと経験的プールとの相互作用によって 形成される。したがって、ボディ・イメージは可塑的で力動的な総体である」と指摘するように、
ボディ・イメージの形成の問題は、子どもの全体的な発達と深くかかわる問題であるといえる。
このようにボディ・イメージの問題は、広くその重要性が指摘されてきてはいるが、これまでに、
必ずしも発達的・系統的にとらえられてきたとはいいがたい。
そこで本研究の第1の目的は、手指の模倣課題、言語指示による自己の身体各部の指示課題お よび他者の身体各部の指示課題の3領域からなるボディ・イメージ課題を設定し、精神遅滞児の ボディ・イメージの形成・発達過程を明らかにすることである。さらに、筆者らは先の研究(田 辺・田村、 1987)において、ボディ・イメージの発達を、子どもたちが描く人物描画によってと らえ得ることを明らかにした。そこで、第2の目的は、本研究で設定した上記3領域の課題と人
*現在、耳原総合病院小児科心理判xE員・大阪教育大学非常勤講師
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物描画でとらえ得るボディ・イメージとの関連性についての検討を試みることである。
方 法
1対象児 本研究は、奈良市N小学校および中学校障害児学級における発達診断活動の一貫 としてなされたものであるが、本稿での対象児は、課題の性質上とくに手指に顕著な麻埠のみら れる児童・生徒を除いた2次元可逆操作期以上の操作特性段階にある24名の精神遅滞児であっ た。その構成は、 Table lに示すとおりである。なお、各対象児の操作特性は、新版K式発達検 査結果を基本としながら、各操作特性段階の指標課題(田中・田中、 1984・1986;長嶋、 1984) の通過状況の分析を付加し、さらに、日常行動観察結果も考慮して決定した。
Table l 対象児の構成
2次元可逆操作期 3次元形成期 3次元可逆操作期
Mean :11 6 : 5 8 : 6 Range 4 : i‑6 :3 5 :8‑7 :3 7 :9‑9 :6 Mean 14: 0 13:10 13:n Range 12: 7‑15: 9 11: 2‑15: 5 13: 0‑15: 5
10
注) *一一次変換形成期の対象児1名を含む 2 実験課題および手続
(1)ボディ・イメージ課題
ボディ・イメージの発達の様相をみるために、 ① 手指の模倣課題、 ② 言語指示による自己 の身体各部の指示課題、 ③ 言語指示による他者の身体各部の指示課題、の3領域からなるボ ディ・イメージ課題を設定した。各領域の課題は、検査方法を理解させるために設定した練習課 (力 手指の模倣課題
1 . 指 組 み 2 . 示 指 立 て 3 . L 字 あ わ せ 4 . L 字 方 向 転 換 5 . き つ ね 6 . く さ り
蝣 <
^v
*」 ' *」*
歩 礎 /
② 言語指示による自己の身体各部の指示課題
1.右手を頭においてください。 4.左手を右ひざにおいてください。
2.右手をおなかにおいてください。 5.右手を頭において左手をおしりにおいてください。
3.右手を左肩においてください。 6.左手をおなかにおいて右手を鼻においてください。
(彰 他者の身体各部の指示課題
1.私(検査者)の左手はどれですか。
2.右耳 3.左目 4.右手 5.左耳 6.右目 Fig. 1ボディ・イメージ課題
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題と、 Fig.1に示す6項目ずつの本課題とからなっている。
① 手指の模倣課題 検査者の演示する手指操作のモデルを対象児が模倣する課題である。対 象児と検査者は対面して座り、「まねっこ遊びをしましょう。私の手をよく見ていてください。『ハ イ』と言ったら○○さんも私と同じようにしてください」と教示し、練習課題の後に本課題の手 指操作のモデルを演示した。演示後「ハイ」と言って対象児に模倣を促した。なお、検査者は対
象児の課題遂行中モデルを演示し続けた。項目2については項目1を、また、項目4については 項目3を遂行後連続して行った。 6項目とも一国目の演示で正しく遂行できなかった場合、一旦、
演示しているモデルを崩して、 「私の手をよく見て同じようにしてください」と教示し、再度モ デルを演示し、模倣させた。
② 言語指示による自己の身体各部の指示課題 検査者の言語指示にもとづいて、対象児が上 肢で自己の身体各部を指示する課題である。項目1 ・ 2は、左右弁別の要素(1)十身体部位概念の 要素(1)、項目3 ・ 4は、左右弁別の要素(2)+身体部位概念の要素(1)、項目5 ・ 6は、左右弁別の 要素(2)+身体部位概念の要素(2)をそれぞれ含む上肢の運動による課題として設定した。対象児は 検査者からおよそ2m離れた位置に対略して直立。「今から私の言うことをよく聞いていて『ハイ』
と言ったら○○さんは私の言ったように手を動かしてください」と教示し、練習課題の後に本課 題を実施した。なお、各項目の課題遂行ごとに基本姿勢(直立)に戻るように指示した。 ‑回目 の課題呈示で正しく遂行できなかった場合には、再度、同課題を皇示した。
③ 言語指示による他者の身体各部の指示課題 検査者の言語指示にもとづいて、対象児が検 査者の身体部位を指示する課題である。対象児が検査者の身体部位を指示することが可能な距離 で対面して座り、練習課題の後に本課題を実施した。なお、本領域での課題では、 ‑回目の課題 呈示で正しく遂行できなかった場合には、連続して項目1‑6を実施した後に、再度、項目1‑
6を実施した。
(2)人物描画課題
人物描画課題は、 Goodenough人物描画検査(DAM)を実施した。 DAMの実施手続は、小林・
小野(小林、 1977)の方法に従った。
また、すべての対象児に新版K式発達検査を施行した。
結 果 の 処 理 (i)ボディ・イメージ課題
各領域の課題とも‑項目2点を満点とした。したがって、各領域の満点は12点となる。各領域 における評価基準は以下のとおりである。
① 手指の模倣課題
2貞一課題としたモデル呈示後、即座に、正確に遂行できる。
1貞一課題としたモデル呈示後、数回の試行を経て、結果として正確に遂行できる。あるいは、
2回目のモデル呈示後、即座に、正確に遂行できる。
0点一正確に遂行できない。
なお、項目4については項目3が遂行できなかった場合には実施しなかった。
② 言語指示による自己の身体各部の指示課題
2貞一身体部位概念の要素、左右弁別の要素とも正確である。
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田 辺 正 友・田 村 清 子1貞一身体部位概念の要素は正確であるが、左右弁別の要素に誤りがみられる。
0点一身体部位概念の要素に誤りがみられる。
本領域の評価においては、身体部位概念の要素が正確であることを基本としたうえで、左右弁 別の要素の評価を行った。したがって、左右弁別の要素が正確であっても、身体部位概念の要素 に誤りがみられる場合は、 0点と評価した。また、項目3 ・ 4では左右弁別で、項目5 ・ 6では 左右弁別および身体的部位概念ともにそれぞれ2要素とも正確であった場合にのみ「正確に遂行 できる」とみなした。なお、本領城の課題では、 2試行実施した場合、上位評価の方をその対象 児の評価とした。
③ 言語指示による他者の身体各部の指示課題 2点一左右弁別が正確である。
0貞一左右弁別に誤りがみられる。
本領域で設定した身体部位要素は、全対象児が正確に遂行できたので、左右弁別の要素を評価 基準とし、 2点と0点の2段階評価とした。本領城の課題でも、 2試行の上位評価の方をその対 象児の評価とした。
(2) DAM課題
DAMの評価方法は、小林・小野(小林、 1977)の方法に従った。なお、 DAMの評価にあたっ ては、 2名の評価者が別々に評価し、評価者間の一致係数は、. 94であった。不一致の項目につ いては協議して再度評価を行なった。
結 果 と 考 察 1 ボディ・イメージの発達
まず、設定したボディ・イメージ課題の全体的な発達傾向について明らかにしておきたい。実 施したボディ・イメージ課題の結果を、領域別操作特性別にその平均得点を求めて示したものが Table 2である。また、これらの平均得点のそれぞれの満点に対する百分率(達成率)を求めて 図示したものが、 Fig.2である。 Table 2に示されているように、各領域とも2次元可逆操作期 から3次元可逆操作期までの操作特性の高次化にともなって、ボディ・イメージ得点の上昇がみ られる。そして、領域②および③では、有意な上昇が認められた(いずれもdf‑2/21)。さらに、
Table 2 ボディ・イメージ課題領域別平均得点 操作特性 領域 ① ② ③
2次元可逆操作期
N‑10
3次元形成期
N‑9
3次元可逆操作期
N‑5
6.t 6.5 4.4 (2.4) (2.6) (4.2)
7.1 3.6 4.7 (2.8) (2.8 (3.3)
8.6 10.8 10.4*
(2.7) (1.2) (2.3)
F値 0.86 4.63* 4.75"
荏)・( )内は標準偏差値
・*P<. 05
精神遅滞児のボディ・イメージの発達
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Mimt腿 Fig. 2 ボディ・イメージ領域別達成率
領域③では、 3次元形成期と3次元可逆操作期との間に有意差が認められた(t‑2.70, df‑21)。
いずれの領域においても、全体的傾向としては、操作特性の高次化にともなって、ボディ・イメー ジの形成能力がより確かなものになっていくといえる。
達成率でみると、領域①では、 2次元可逆操作期から3次元可逆操作期まで55‑70%の達成率 であって、ゆるやかな上昇傾向が示されている。領域②では、 2次元可逆操作期で55%、 3次元 形成期で70%であるが、 3次元可逆操作期に至って90%の達成率を示している。領域③では、 2 次元可逆操作期および3次元形成期にあっては30%台の達成率であったが、 3次元可逆操作期に なると90%近い達成率に達している。このように設定した領域によって、発達的様相および達成 率に若干のちがいがみられる。さらに、各領域内の項目によってもその達成率に差がみられる。
そこで、各領域ごとに分析を試みたい。
領域(丑の「手指の模倣課題」では、 2次元可逆操作期から3次元可逆操作期にかけてゆるやか な上昇が示されたが、 3次元可逆操作期の段階でもその達成率は70%であった。上肢(梶)のみ の姿勢模倣あるいはその姿勢を組み合せて一連の連続動作とした動作模倣においては、対象性の 2次元の並列構成‑非対称性の2次元の並列構成‑対称性の2次元の系列構成‑非対称性の2次 元の系列構成といった身体運動模倣能力における発達的順序性が仮説され、そこには、それぞれ 2次元形成から3次元可逆操作の各操作特性の働きをもった活動が展開されていることが示唆さ れた(田辺・田村、 1988a)c さらに、 1次元可逆操作期から3次元形成期までの精神遅滞児の 上肢、下肢、手指、上肢と手指あるいは下肢との協応といった身体部位別姿勢模倣の発達につい
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田 辺 正 友・田 村 浩 子て検討した先の研究(田辺・田村・小出、 1986)において、上肢および下肢の姿勢模倣は2次元 可逆操作期でその獲得が可能であることを報告した。また、運動と描画とを同一レベルで論じる ことはできないが、精神遅滞児のボディ・イメージの発達を、人物描画に描出される人物像の発 達的変容の側面から検討した研究(田辺・田村、 1987)において、 「腕部」では、 2次元可逆操 作期では「腕」の描出と「指らしきもの」の描出がみられる程度で、 3次元形成期になって「指 の細部」「指の数」などの腕部の明細化に関する項目の描出がなされ始め、 3次元可逆操作期で「指」
の明細化が進むが、この操作特性段階でも「掌」 「栂指の分化」の描出は困難であるとの結果を 得た。これらの結果から、手指模倣も操作特性の高次化にともなってその巧ち性を増していくが、
手指といった末端投射レベルにおけるコントロールひいてはボディ・イメージの形成にはかなり 高い操作能力が要求されるものであるといえよう。しかし、設定した項目(6項目)によってそ の達成率に差がみられる。項目1 (指組み)および項目2 (示指立て)は、 2次元可逆操作期で すでに高い達成率(90‑95%)を示すが、項目3 (L字あわせ)・4 (L字方向変換)は、 2次 元可逆操作期および3次元形成期では困難な課題であって(達成率20‑30%:、 3次元可逆操作 期に至って達成率60‑70%台を示し、項目5 (きつね)・6 (くきり)は、 2次元可逆操作期で は達成率50%前後で、 3次元形成期から3次元可逆操作期にかけて70%台の達成率を示すに至る。
項目3 ・ 4が最も困難な課題であったが、そこには前報告(田辺・田村、 1987)で指摘したよう に、空間関係の把握とその操作能力の要因も関連していることが推察される。
領域②および③は身体部位の名称を述べたり、自己と外界の対象物の相互関係を述べたりする 際には、当然言語によらなければならないわけで、ボディ・イメージと言語とは密接な関連があ るものとの考えから設定したものである。そして、領域②は、鹿取(1975)が指摘する「身体座 標軸」の形成に、領域③は「空間座標軸」の形成に、それぞれかかわるものとして設定したもの である。領域②の「言語指示による自己の身体各部の指示課題」は操作特性の高次化にともなっ て有意な上昇が示され、達成率からみて3次元可逆操作期でほぼこの課題が獲得されることが明 らかにされた。本領域の評価にあたっては、身体部位概念の要素が正確であることを基本とした うえで、左右弁別の要素の評価を行なった。身体部位の理解で困難であった部位は、 「肩」と「ひ ざ」であった。これは、 2‑5歳の子どもの身体部位の理解の程度をみた飯高(1987)の研究に おいて、 「頭」 「鼻」 「腹」 「尻」に比較して「肩」 「ひざ」の通過率が低かったという結果とも一 致するものである。また、当然のことながら、 2要素の左右弁別あるいは左右弁別と身体部位概 念の要素が含まれている項目3‑6は、それらの要素が1つであった項目1 ・ 2よりもその達成 率が低くなっている。項目1 ・ 2は、 2次元可逆操作期で70‑75%の達成率を示したが、項目3
‑6にあっては、 2次元可逆操作期・ 3次元形成期では25‑65%の達成率であった。しかし、 3 次元可逆操作期では各項目とも90%前後の達成率を示すに至っている。
領域③の「他者の身体各部の指示課題」は、全体としては操作特性の高次化にともなって有意 な上昇を示し、 3次元形成期から3次元可逆操作期にかけて急激な上昇が示された。しかし、達 成率からみてこの領域の課題は、 2次元可逆操作期および3次元形成期では困難であった(達成 率30%台)。自己の身体上での「左右弁別」は2次元可逆操作期の指標課題とされている。 2次 元可逆操作期と3次元形成期とは、その達成率では同程度であった。しかし、各対象児の新版K 発達検査の「左右弁別」の通過状況を比較すると、 2次元可逆操作期では自己の身体上での左右 弁別ができていない対象児がいるのに対して、 3次元形成期では全対象児が通過していた。本課 題は、自己の身体上で確立した左右の概念を、自己の周囲をとりまく外界・他者へ投影すること
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が要求されるものであるが、 3次元形成期では「対面する他者へ自己中心的に投影」する誤りが 多く見られたものである。この課題は、達成率からみて3次元可逆操作期以降になって確立して
くるものと考えられる。
2.人物描画におけるボディ・イメージとの関連および今後の課題
筆者らは先に、ボディ・イメージの発達を、子どもたちが描く人物描画によってとらえ得るこ とを明らかにした(田辺・田村、 1987)c ここで、本研究で設定した3領域のボディ・イメージ 課題と人物描画でとらえ得るボディ・イメージとの関連性についての検討を試みたい。全対象児
の各領域別のボディ・イメージ課題における得点とDAM得点との相関係数(Pearsonの相関係 敬)を求めて示したものが、 Table 3である。 DAM得点と領域①の「手指の模倣課題」の得点 との間に5 %水準で有意な相関関係が認められた DAM得点と領域②および③の言語的理解を 必要とする課題との間には相関関係が認められず、領域①の姿勢模倣課題との間で有意な相関関 係が認められた結果は、次のことから解釈できると考えられる。つまり、精神遅滞児を対象に DAMの妥当性を検討した研究(Gunzburg, 1955; Rohrs & Haworth, 1962; Tobias & Gorelics, 1960)
において、 DAMIQは言語性IQより動作性IQとの相関係数が高いことが示されており、また、
筆者らの研究(田辺・田村、 1986)の結果とも考え合せてみると、精神遅滞児のDAMは動作性 知能あるいは視覚、運動能力の発達水準を反映しているものと考えられるのである。
Table 3 ボディ・イメージ得点とDAM得点の相関係数 領域 ① ② ③
DAM 0.533' 0.238 0.200
注 *P<. 05
次に、有意な相関関係が認められた領域①とDAMとの関連についての分析を試みる。 l司操作 特性段階における領域①での低得点群と高得点群のDAM平均得点を求めて示したものが、
Table 4である。比較する例数が少なく、ここから一般的な結論を導き出せないが、 2次元可逆 操作期から3次元可逆操作期のすべての操作特性段階において、領域①のボディ・イメージ低得 点群に比して高得点群のDAM得点が高いといった傾向が示された。これらの結果は、手指の模 倣課題に反映されるボディ・イメージと人物描画におけるボディ・イメージとの間には一定の関 連性があることを示唆するものである。今後、こうした現象論的レベルでの関連性の検討から方 法論的な吟味も加えて、形成実験的なアプローチによってさらに確かめていくことが必要であろ
Table 4 操作特性別ボディ・イメージ課題(領域①)低得点群と高得点群の平均DAM得点 2次元可逆操作期(N‑各4 3次元形成期(N‑各4) 3次元可逆操作期(N‑各2) ボディ・イメージ 低得点群 高得点群 低得点群 高得点群 低得点群 高得点群
4.8 4.5 9.5 5.5 11.5
DAM得点
13.3 19.3 20.3 25.3 25.0 30.0 (2.7) (2.7) (6.6) (6.0) (2.0) (0)
注) ( )内は標準偏差値
90
田 辺 正 友・田 村 浩 子う。
近年、障害児といわれる子どもたちは、その障害からみてボディ・イメージの遅れあるいは何 らかのゆがみをもっているといった視点から、障害児教育の分野においてもボディ・イメージの 概念の重要性が指摘され始めている。一般に、精神遅滞児は動作的認識に対して言語的認識の弱
さが指摘される。とくに、自閉症候群児にあっては、言語的認識レベルと動作的認識レベルの両 レベル間の「ずれ」が大きいといった問題がみられる(岡本・田村・田辺、 1988;田辺、 1988 1989;田辺・田村、 1989)。そして、この動作的認識と言語的認識とを媒介する重要な要因とし てイメージ的認識が考えられるのである。精神遅滞児の運動・描画・言語といった行動発達およ びその連関性の問題を、ボディ・イメージを基軸としたイメージ的認識の側面から検討すること によって貴重な示唆が得られるものと考えられる。
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