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言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究(I) : 遊戯療法による社会性の発達と構音の改善

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(1)Title. 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究(I) : 遊戯療 法による社会性の発達と構音の改善. Author(s). 森, 範行. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 39(2): 73-87. Issue Date. 1989-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5102. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究 (工) -- 遊戯療法による社会性の発達と構音の改善 --. 森. 範. 目. 行. 次. 工. は じめ に … …・… … … … … …・… … … … … … … … … …,73 ロ. 事例の概要 ……………………………………………… 74. 1) 生育歴 2) 家族 m, 遊戯療法の経過 ………………………………………… 74 1) 受理面接 2) 治療期間 3) 治療方法 4) 遊戯内容 i) 第1期. (母子分離不安の克服:第1回~14回) i i) 第2期 (マッサージごっこ, 病院ごっこ:第15回~4 0回) i i i) 第3期 (名前の練習:第4 1回~44回) i 5回~52回) v) 第4期 (終結:第4. W, 心理検査結果の推移. … … … … …… … … … … … … …… 80. 1) 事前検査の結果 2) 事後検査の結果 V, 構音へのアプローチと結果 … … … … … … … … … … … 84. 班. お わ り に … … … …”… … … … … … … … … … … … … …, 86 引用文献 … … … … … … … … … … … … … … … … … 87. 工. はじめに かつて, 新カン ト主義哲学者の Wi de l b d n a n ,W. は, 科学の方法に関して, 法則定立学と個性記 述学とを区別した. 前者は物理学のような繰り返しの実験と観察が可能な領域であり 後者は歴史 , 学のような一回限りの現象を対象とする領域である. 現代心理学は 物理学をモデルに発展してき , たことから実験心理学が中心であり, 法則定立学としての色彩が強い 他方 いわゆる適応障害の , , 診断と治療を目的とする臨床心理学の領域においては事例研究が中心であり 個性記述学としての , 傾向が強い. この区分は方法論上のものであるから 対象は同一であっても取り扱う方法によって , 法則定立的研究にも個性記述的研究にもなり得る. 必ずしも他を排除するものでは ない. . 障害児を対象とする心理学 (障害児心理学) もこの区分にしたがえば 方法論上では障害児実験 , 心理学と障害児臨床心理学とに区分することが可能である. 片山 (19 8 0) は, 従来の障害児心理学 が実験心理学的手法に負うところが大きく, その手法が適用できる部分ではかなりの成果をあげて 73.

(3) . 森. 範. 行. いることを認めつつも, 指導や治療面に直接結びついていないことに不満を示し, 新たに障害児臨 床心理学を提唱した, 片山は障害児臨床心理学の目的として, 4つの特徴をあげている. 第1は問 定 題の把握 (診断) , 第3は治療的人間関係のあり方, 第4は効果の評 , 第2は問題の処置 (治療) であ る.. 筆者はこの数年来, 言葉の遅れを主訴とした一人の精神遅滞児とかかわってきた. 母親は当初,. speech の 不 全 を 問 題 に して い た が,. 次第 にlanguage の 遅 滞 の 方 が明 瞭 に な っ て き た.. 事例 に縦 断. 的にかかわっていく場合, 主訴をとりまく様々な背景を考慮する必要がある. 発達課題は子供の成 長や社会の要請に応じて推移する, にもかかわらず, 子供自身のその時点での発達課題と親の性急 な発達要求が一致しない場合が多く, 子供に過大な負荷がかかることになる. 2次的障害を新たに 引き起こす要因になり得るもの だが, 本事例にもその兆候がみられた. そこで筆者は, 指導の基本 方針として, 本児にとって比較的受け入れやすい外堀を埋めることから開始し, 徐々に本丸へ迫る 戦略をとることにした. 今回は, 構音障害を伴っていた精神遅滞幼児に遊戯療法を適用し, その過 程での遊 びの推移, 事前-事後の心理検査結果の比較, 家庭での変化について社会性の発達との関 連で検討する, 併せて, 構音の診断と指導を適宜行ったので, その結果も報告する.. ロ. 事例の概要 A子. 女児. 0月生れ (来談時5才) 昭和53年1. 1) 生育歴. 0 09の満期出産であったが, 生後7か月に斜視が発 胎生期, 出産時ともに異常はなく, 体重3 ,0 見され, これまで5回も手術を受けてきた. そのため遠視用の眼鏡を処方されている‐ この間, 歩 た そのためA子 は病院 行, 言葉, 知恵づき等の遅れに気づき整形外科, 小児科等を転々 としてき ・. 害 (置換) 非器質性の構音障 を極度に恐れるようになっており, 情緒面への悪影響が懸念された. があるが, 発語を抑制することはない. 注意が転導されやすく, 自己中心的であるが, 幼稚園には 喜 ん で 通 園 して い る.. 2) 家族. 4才) は土建業を営んでおり, 夜も接待 父, 母, 兄, A子の4人家族で函館市内に在住. 父親 (3 35才) が家事と育児を一手に引 その分 はあまりない 等で帰宅が遅く, A子と接する時間 . , 母親 ( き受けてきた. この数年はA子の治療と養育にかけずりまわってきた. 今は目前に迫ったA子の就 学について焦りを感じており, 家庭で市販の知能検査をやらせたりしている. 構音に関しては力行 がタ行に置換することを極度に気にしており, その治療に札幌の大学病院に通っていたが, 特に治 療の対象になるということはなかったようである, A子にとって父親は甘えさせてくれる存在であ るが, 母親には依存の対象であると同時に威圧感をもっているようである. 兄は小学3年で, A子 の遊び相手になっている, 他に, 父方の祖父母が近郊の町に住んでおり, 行き来がある,. m. 遊戯療法の経過 1) 受理面接. 母親は構音 が改善されれば知能も向上するのではないかと言語指導に望みを託していたが, 知能. 74.

(4) . 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究 (1) や言語を直接発達させる手だてはないこと むしろ今の段 階では精神発達全般を 促すようなア プ , ローチの方が適切 である旨を説明して遊戯療法を導入することにした . 2) 治療期間:昭和5 8年9月~昭和6 0年1月まで, 計5 2回,. & ) 治療方法. 子供中心の遊戯療法をAx lme ,V, M, (1947) の 「8 っ の 基 本原 理」 を ふ ま え て,.原 則 と して 週. 1回1時間行った. 昭和59年5月までは筆者が担当し その後女性セラピス ト(以後 Th , , 」と記す) と交代した, 交代の理由は, 母親との面接を並行して筆者が担当したこと 女性Th の方が母親と , , の関係が露呈しやすいと考えたからである.. 4) 遊戯内容. i) 第1期 (母子分離不安の克服;第1回~1 4回). 〈第1回:9月 8 日> 母親に引きずられるようにして引率されてきた, 泣きべそをかいており 母親によると これま , , でに病院を 「たらいまわし」 にしてきたために相談機関を恐れるようになっているとのこと 今回 . も正門をくぐったところで気づいたらしい. 遊戯室に案内する段になっても 母親との別れに泣い , て抵抗を示すため, やむなく母親同室のまま自由遊びに導入する, A子はじっと座っている母親に ま つ わり つ き, し ば らく は遊 具 を い じる こと もな か っ た が 30分 経過 頃 か らラ ッ パ タ ン バ リ ン , , ,. 電話機等で遊びだす. A子が一方の電話機の ダイヤルを回したところですかさ ずTh が他方の受話 . 器をとって簡単な応答をすると, A子は一言二言小声で応答して 照れたように電話を切る Th , , , との 関 係の き っ か けにな っ た よう だ,. 状 況 に慣れて き た と こ ろ で,サ ンタク ロ ー ス の 髭 を 引 っ 張り 取ろう と した り ラ ッ パの マ ウス ピ ー ,. スを噛んだりなど, 時折攻撃性を表出した. 残りの1 0分ほどで木製の箱車 (トラック) を引いて遊ぶ. 最初は自分が乗ってTh に引かせる , , 次にTh の代理らしき布 製の縫いぐるみ ,を乗せてA子が引く が, 重くて動かない, そこでTh 人形 . を代わりに乗せて引く. さらにA子の代理らしき 「女の子人形」 をTh に乗せさせ さらに 「お母 . , さん人形」 お婆ち ん人 「 形 」 「 お兄ち ん人形 」 を ゃ 荷台に積み上げ ゃ させる . , , , 終了時, 同室していた母親が後片付けを指示するとA子は従った 注1 , 〈第 2 回 :9月14日〉. ,両親に引率されてきた, 両親と一緒に遊戯室に入ったが, 母親は衝立ての陰におり, 代わりに父 親がA子のそばに座った. プラスチック製の トマ トやブドウを食べる真似をし Th にも同じこと , . をするように要求する,. (父親は就学時判定の仕組みや措置につ いて質問する. 子供にあった教育をしたいと思うのだけれ ど, 普通児と比べると焦ってしまう, 参考ま でに一度附属養護学校の授業を見学させてほ しいとい う, 見学できるように取り計らうことを約束した.) 〈第 3 回 :9月21日〉. 依然として母親と一緒に入室することを要求する, 遊びに熱中した頃を見計らって 母親はこっ , そり衝立ての陰に隠れた, 10分ほどTh ,との遊びに熱中していたが, 母親の不在に気づくと泣いて 母親を呼び戻す. はじめは笛を吹くなどこ じんまりした遊びであったが 次第にすべり台に移行するノ すべり台か , ら木製の汽車を転がして遊び, Th . .にも同じことをするように要求する, Th .のメ ガネを取って自 ・家庭では後片付けを膜けているため 母親同室のときには母親の指示に従わせた 注1: , , 75.

(5) . 森. , 範. 行. 分にかけ, 自分のメ ガネをTh .にかけようとする. プラスチックの トマ トを水道で洗うが, 次第に 水を飛ばして遊ぶようになる. 〈第 4 回 : 9月29日〉. 幼稚園からの帰りに母親 が引率してきた. しばらくはいつものように母親のそばでTh ,と遊んで いたが, 、突然 「ママ, あっちで座って」 と言い, 母親を衝立ての陰へ行かせた. 母親が見えなくて. も自由に遊べるようになった. すべり台や笛で遊んだ後, 木琴を ダイナミックにたたいて遊ぶ. 次に人形遊 びに熱中する, 母親 役の人形とA子役の人形を決めてTh ,の膝の上に乗せたり, 自分で背負って歩いたり, 大きなダン. ボールの箱に入れて寝かせたりする. 最後には自分自身も箱の中に入り, 人形と一緒に寝る真似を する.時間がきて終了を告げたが,A子はもっと遊びたいといってなかなか切り上げようとしなかっ た,. 母親との分離が可能になり, 遊びにも熱中するようになった.. 〈第 5 回 :10月 5 日〉. 母親と一緒に入室, 母親 がすぐに衝立ての陰に隠れても呼び戻そうとはしない. 木琴, すべり台, 笛, ラッパ, メ ガネの交換など, いつものように遊んだが, 途中÷度室外へ飛び出し, 廊下を走り ま わ る,. 〈第 6 回 :10月12日〉. 父親が引率, すぐに衝立ての ,をたたこう ・陰に行ってもらう. 遊びの途中で突然木琴のバチでTh としたり, 紙の笛を ズタズタに破いたりなど, 攻撃行動を示す, 室外に飛び出し, さらに廊下から 戸外に走り出て, バイクに興昧を示す, . しばらくして入室させると, すべり台の上からTh ,へ向け て数回 ダイ ビン グするも, Th ,に受け止められて安心して抱かれている, 攻撃行動と愛着行動が混 在 した, .. 〈第 7 回 :10月19日〉. 母親が引率. 最初は母親に衝立ての陰に行ってもよいと言いながら, すぐに母親を呼び戻し, 自. 分 の 傍 に 座 らせ る. 木 琴 の と き に バ チ で Th , と遊 , を た た こ う と した の で制 したと ころ, A 子 は Th. ぶことを拒否し, 母親の傍から離れない. 笛を吹いたり, すべり台に1回すべっただけで, 自主的 に後片付けをはじめた. 自然終了. したものと思われ A子は風邪気味で機嫌 が悪かった上, 初めてTh .に叱られたことで, 退行を示. る,. (両親は次の日に附属養護学校の授業を見学してきた, A子より重い障害児が多いことに驚いた様. 子 で あ っ た,) 〈第14回 : 3月28日〉. Th ,とのラポー トが形成され, 母親との分離が可能になったので, 遊戯の前に 「お勉強の時間」 飛kド と称して今回から初回の心理検査を施行した, 「お勉強」 の終了を告げると嬉々 として廊下 「A飛 出し, 率先して遊戯室へ向う, 母親の同室を求めることはなくなった. i i) 第 2 期 (マ ッ サ ー ジ ごっ こ, 病 院 ごっ こ : 第15回~40回) A 子 の家 庭 に は マ ッ サ ー ジ師 が出 入 り し, 両 親 はた びた び マ ッ サ ー ジを 受 けて い る. この 時 期 に. は, A子をとりまく状況がまとまりをもって遊 びの中に表現された. 〈第15回 :3月29日〉. 前 半 はいつ も の よう に, す べ り 台, ラ ッ パ 等 を 転々 と した. 縄 と びの 縄 の 一方 を Th , に 持 た せ, 76.

(6) . 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究(工) 他方は自分で持って 「大波, 小波」 をする. 砂遊びは砂の感触を楽しむといった感じで, 混ぜたり, 手で砂を持って立ち上がり, 少しずつ手からこぼして楽しんでいた. 後半はフェ ルト製の大型積木を使って ごっこ遊びをはじめた, 最初の2分くらいは積木を横に並. べたのを電車の座席にみたて, Th .を隣に座らせて電車ごっこをした. 次に積木を細長く継ぎ足し, 両端から二人がその上を歩いてきて中央付近でジャンケンをする遊びをする, 最後にTh .を積木の 上 にう つ ぶ せ に寝 か せ, A 子 が マ ッ サー ジ師 役 に な り, 挨拶 を 交 わ して か ら Th , の上 にま た がり,. 頭や背中を30分くらい持続してマッサージしていた, 〈第16回 : 3月31日>. 入 室 す る と す ぐに積 木 を 出 して き て 横 に 並 べ, そ の 上 に Th , を う つ ぶ せ に寝 かせ, マ ッ サー ジを ガネ え付 を せ か ら頭 か 押 さ のメ 外 さ 首 に けて ける よう に マ ッ サ ー ジして い た, 次に 始 め た. Th , ,. 背中に移り, Th .の背中の上に仰向けに乗り, 背中をこすり合わせるようなマッサージや, お尻で. Th . の背 中 の 上 を ポ ン ポ ン跳 ねる マ ッ サ. ジな ど, 15分く ら い持 続 した,. 途中で 「電話する」 と言って電話機を取りに行き, マッサージは中断し, 電話ごっこが始まる, 「もしもしAです」 , 「どうもすみません」 などの言葉を発するが, 一方的であり, 会話としては成. 立 して いな い.. 後半は砂遊 びに熱中し, 最後にもう一度マッサージごっこをして終了した,. 〈第18回 :4月 3 日〉. いつ も の よう に す ぐ積 木 を 出 して き て 横 に並 べ, Th . を うつ ぶ せ に寝 せ て マ ッ サー ジを 始 め る.. 途中砂に興味が移り, 数分間中断するが, 再びTh ,を寝かせ, マッサージをしたり, 背中の上にま た が っ て ラ ッ パ を 吹 い たり す る.. 直径5ミリ程の白い プラスチック製の筒を長さ10センチくらいにつないだものを煙草に見立て. て, Th ,に火を付けるように要求する. 右手の人差し指と中指の間に煙草をはさめ, 吸う真似をし, 何度も火を要求する. すべり台の上で煙草を吸い, 降りてくるとTh ,を寝かせて マッサージをした り, また火を付けさせたりを何度か繰り返す.. 最 後 は煙草 をく わ え たま ま 自 分 がうつ ぶせ にな り, Th , に マ ッ サ ー ジをさ せる, 何 度 か マ ッ サ ー. ジ師役を交代するが, Th ,のやり方には不満らしく, A子は何度かマッサージの手本を示し, コツ を教 え よう と して い た. 〈第20回 :4月13日〉. いつもの積木を出すが, 今回は横に並べず縦に積み上げようとする. 自分の背が届かなくなると, 」 と言って積木を積み上げさせ, Th Th ,の身長を越える .に 「とれも, とれも (これも, これも) 高さにすると, 別の積木の上に乗って積木の柱の中 ごろを手で押し倒す, 倒れたときに歓声をあげ, 再びTh ,に積木を積み上げさせ, また倒すということを何度も嬉々として繰り返す, 自分で倒すこ と に 飽 き る と, いつ も の 煙 草 を 手 に して す べ り 台 に 上 がり, Th .が . に 倒す よう に 指示 す る が, Th. 静かに積木をおるそうとしたので, A子はすべり台から降りてきて 「ドーンって倒すの」 と言って 見本を見せ, Th ,にも同じことをするよう促した.. 他にTh ,に積木を運 ばせ, すべり台の上からそれを蹴り落とすというような破壊的な遊 びを嬉々 として続けていたが, 下に転がっていたカスタネッ トに気づくと 「タスタネッ ト」 と言って要求し,. ズ Th , と 一 緒 に 「お も ち ゃ の チ ャ チ ャ チ ャ」 を 歌 い な が らチ ャ チ ャ チ ャ でカ ス タ ネ ッ トを 打 っ て リ ム を と っ て い た, 〈第21回 : 4月14日>. し, 大きな音 自分はすべり台の上に乗り, まず煙草を持ってくるように要求し, 次に積木を落と・ 77.

(7) . 森. 範. 行. を た て て喜 ん で い る. ラ ッ パ を 吹 い た り, 木 琴 を でた らめ にた た い た り で, 音 を 出 す こと に余 念 が. なく, マッサージを人形にしようとするが持続せず, 人形を振り回したり, 髭を引っ張り取ろうと したりで破壊的な遊 びが中心であった, 〈第25回 :5月29日〉. 今回から女性Th .に交代したが, すでに面識があるため抵抗を示すことはなかった. いろいろ な楽器で一通り音を出し÷ Th ,にも一緒に鳴らすよう指示した, マ ッサージごっこは持続せず, 数 分間で終わった, 〈第31回 : 7月17日〉. 積木をTh ,に積み重ねさせ, それを倒す遊びを何度か繰り返した後, 倒れた積木を椅子やベッ ド に見たて, 「お爺ちゃん人形」 , 「お母さん人形」 , 「お婆ちゃん人形」 , 「お兄ちゃん人形」 , 「Aちゃ. ん人形」 を登場させ, 病院ごっこを始めた, A子が医者になり, 「お婆ちゃん足痛いの?」 と言う. 黒板をカルテに見たて, 患者とのやりとりの時に何かぐちゃ ぐちゃと書いていた, A子が窓の外に 「お兄ちゃん人形」 を出したとき, Th .が 「お兄ちゃんどうするの?」 と声をかけたが, それには 答えず人形を窓から落と ・した. Th ,が 「あとで取りに行こうね」 と言っ たが, 「今行く」 と言って 強引に外へ出た, 〈第32回 : 7月24日〉. 「お婆ちゃんやる」 と言って積木を出してきて病院 ごっこを始めた. 「お婆ちゃん……」 と言いな がらも, 診察は 「お爺ちゃん」 から始まり,. 「お婆ちゃん」 と熊の診察をした後, 「お兄ちゃん」 を. 持っ て窓に向かった, Th .が 「お兄ちゃん落ちたら怪我するよ」 と言っても, 「いいよ」 と言って 落としてしまっ た. そして 「迎えに行く」 と外へ出て, 「お兄ちゃん」 を拾って戻ってきた, く第33回 :7月30日〉. 「お兄ちゃん」 を強引に窓から投げ落とし, 自分で拾って戻ってくる. それを持って自分も ダン ボールの箱に入る. 積木を積み上げて倒して遊 び, 次に横に並べてマッサージごっこが始まる, まずA子がうつぶせ. に寝 て マ ッ サ ー ジを して も らう が, 時々 身 ぶ り 手 ぶ り を 交 えて マ ッ サ ー ジの や り 方 を Th . に指 示 し て い た, 途 中 で 交代 して A 子 が マ ッ サ ー ジを したと き に は’ チ ョー ク を 持 っ て き て, 「注 射」 と言 っ て Th . にあ ち こ ち に 「注 射」 す る よう . の頭 にさ した, 次に A 子 が マ ッ サ ー ジさ れ る と き に は, Th 指示 して い た. マ ッ サ ー ジ ごっ こと 病 院 ご っ こ が混 交 して 遊 び が展 開 した. 〈第39回 :11月13日〉 トラ ン ポリ ン の 上 で し ば らく 跳 ね て い た が, そ れか ら積 木 を 出 して マ ッ サ ー ジを 始 めた. Th ,の バ た な ジで あ た が し ばらく 背 中 を 太鼓 の チ で 突 っ 突 い た り たた い り の 少々 手荒 マ ッ サ ー して か っ ,. ら 「ごめんね」 と言った.. 1回~44回) i i i) 第3期 (名前の練習:第4 両親はA子を普通学級に通学させることを切望しており, 函館市内の私立小学校に入学の可否を 打診していた, その結果, 受け入れ条件が 「自分の名前を書けること」 であったため, この頃から 次第に母親の特訓は厳しさを増してきた. この時期, A子は母親の役割を取り入れているように思 わ れ た.. 〈第41回 :11月19日〉 トラ ン ポリ ン で し ば らく 遊 ん でか ら, 黒 板 の と ころ へ行 っ て何 か書 き た が っ たの で, チ ョ ーク を 78.

(8) . 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究 (1) 持ってきて渡すと丸や三角を書き始めた, 字を覚え始めたのかA子の名前の頭文字 「あ」 らしい字 も書 いて い た.. 〈第42回 :11月26日〉. 入室するとすぐに黒板のところへ行き, すべり台の上に座って丸や三角を書いた後 A子の姓を ,. 構成 す る ひ ら がな の いく つ かを 自 分 で書 いた, そ して Th にも 同 じよう に書 か せ た A子 はそ れ を , ,. 見て最初は「上手でしょう」などとほめていたが, 次第に声高に叫びだし 突然「ごめんなさいは?」 , と聞いた. Th .が 「ごめんなさい」 と言うと次に 「泣きなさい」 と命じ, Th ,を泣かせた. これが 最後まで続き, その間, 声高に叫びながらたたく 蹴る つねる等の攻撃行動をTh に加えていた , , . . 〈第43回 :11月28日〉. 「アイウエオする」 と言って黒板の傍らに行き, すべり台の上から赤いチョークで自分の姓の最 初の文字を書いてTh .にも書く よう命じる, Th .は言われた通り黒板に書くが, A子はTh ,の書い た文字に自分の持っているチョークで×印を付け 「だめ 泣きなさ い」 と言う Th を泣かせな , , , . がら, 手 を つ ね っ た り, た た いた り 服 を つ か ん で引 っ 張 り 回 した り Th の 時計を 外 して 砂 の 中 , , ,. に埋めたりなど, 前回より激しい攻撃行動が1 0分ほど続いた. 次に姓の2番目の文字を書く ;ように 命じ, 「だめ, 泣きなさい」 が繰り返される,. Th ,の靴を廊下に持って行き, 「来なさい」 と命じる. 「靴ないよ」 と言うと靴を持ってきて, 「履 きなさい」 と命じ, 先に立って遊戯室を出て行く, Th .が出ないという強い態度を示すと戻ってき て, Th , を 抱 き しめ る, そ の 後, Th . への 攻撃 行動 は出なく な り, トラ ン ポリ ンで しば らく 遊 ん でか ら, 久 しぶ り でマ ッ. サージごっこが始まった. ほとんどTh ,がマッサージ師役であったが, 最後の方で役割交代があり,. Th , がマ ッ サ ー ジを 受 けた が,太 鼓の バ チ で背 中 を 突 い た り, す ね を た た い た りの 少々 荒 っ ぽい マ ッ サー ジであ っ た. 〈第44回 :11月29日〉. 最初 トランポリンや積木の上 で、 Th .にマッサージをさせてから, 「あ書く」 と言ってすべり台に 上り, 黒板に 「あ」 を書く, Th ,にも書かせ, 「泣きなさい」 が始まる, 今回はA子の攻撃をかわ ・ して みる こと に した. 2 度 頭 を たた こ う と して 2 度と もか わさ れ トラ ン ポリ ンの バ ー に 頭を 打 ち ,. つけようとしてこれもかわされ,A子は次第にイライラしたよう であった バーを音をたてて揺すっ , たり, 怒 鳴 っ た り して い た,. (母親との面接において, A子の家庭での変化について次の点が報告された ) . 1 )母親が外出しても泣かなくなった, ( 2 ( )発音 がハ キ ハ キ して, 難 し い 言 葉 を 使う よう にな っ た ,. 3 ( )ち じこま っ た 感 じがな く な り, 「い や」 を は っ き り 言う よう にな っ た .. i v) 第4期 (終結:第4 5回~5 2回) 以前の遊びの内容を繰り返し ながらも ・ , 情緒的には安定に向かってきた時期.. 〈第50回 :12月12日〉. 久しぶりで病院ごっこをはじめた, プラスチックの果物を注射や薬に見たて 診察室の風景を描 , 写していくもので, 以前の病院ごっことほぼ同じ内容である. この間 A子は急に 「怒って」と言っ ,. て Th , に 自 分 を に らめ,つ けさ せ たり, 「泣 き な さ い」 と 言 っ て Th , を に らめつ け て激 しく 叫 ん だ り,. 突然 「ごめんね」 と言って泣いているTh ,を抱きしめたりという感じで, かなり感情が揺れ動いて いた.. 79.

(9) . 森. 範. 行. 〈第51回 :12月13日〉. 病院ごっこを始める, Th .をトラ ンポリンの上に座らせ, 自分は医者の位置である積木の上に座 り, Th ,が 「Aちゃんです」 と答えると, 「Aちゃん」 と呼 .に向って 「あんた誰?」 と聞く, Th んで診察が始まった, 途中からTh .に自分を慰め .に医者役をさせると, A子は泣く真似をし,.Th る よう に指示 して い た,. 「病院あいていますか?」と電話し, 昨日病院へ行ってきた話になる. 電話を切るときA子が「お. や す みな さ い」 と 言 っ たの で, 二 人 で 寝 る こ と にな っ た. 朝 にな っ て 起 き る と, A 子 が砂 で朝 ご飯. を作り, Th ,に食べさせ, まま ごと遊びが始まった, 二人 で父親役と母親役を何度か交代する. 父 親 (Th .) が行ってきますと家を出て, 母親 (A子) が腕を組んで歩き回り, 「遅いなあ, 何やっ ているんだろう」 と父親の帰りを待つ. A子の家の一日の生活らしい. 最後に母親役のA子がA子役のTh .に 「名前の練習」 をさせるが, 攻撃性は消失してきた.. W. 心理検査結果の推移 ここで報告する検査項目 は, . TK 式田研・田中 ビネー知能検査 (以後, ビネー検査と記す) , 検 ‐M 社会生活能力検査 ( 以後 S -M 新版S ITPA 言語学習能力診断検査 (以後ITPAと記す) , , 査と記す) である. それぞれの検査を施行した目的は次のとおりである. ビネー検査はいわゆる一. TPA は情報処理の諸相を個人内差の観点から分析するため, 般知能の発達水準を把握するため, I S-M 検査はA子の生活場面での適応行動を調べるためである. 1) 事前検査の結果注2. 事前 (5才6か月 時) の検査結果が示すところによると, ビネー検査の MA (精神年齢) は3. TPA の全検査 PLA (言語学習年齢) は3才3か月, PLQ 才4か月, IQ (知能 指数) は62 ,I (言語学習指数) は5 9であり, 知能全般の発達水準は軽度の精神遅滞と思われた. 他方, S‐M 検 査の全検査SA (社会生活年令) は4才6か月, SQ (社会生活指数) は82であり, 比較的高かっ た, MA, 全検査PLA は生活年令 (CA) と比べてそれぞれ2年2, 3か月の遅れであるが, 全検査. SAでは1年の遅れにとどまっており, 社会生活能力は比較的高い. 情報処理の特徴はITPA プロフィ ールの実線に示される, 図1はSS表示であり, 図2はPLA表 示である, ITPAのSSは普通児を母集団として標準化されており, 10の下位検査項目ごとに, 平 均値3 6 , 標準偏差6に換算されている, A子自身のSS平均値は24であり, それを6点以上下まわっ. た下位検査項目は, 「ことばの類推」(PLA2才8か月, SS14) と 「文の構成」(PLA 2才 9 か月, SS15) で あ る. ITPA は osgood ,C.E, の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンモ デル に 基 づ き, 回 路, 過 程, 水準 の3つの次元で構成されている, 回路は聴覚-音声回路と視覚-運動回路があり, 表2はそれぞれ のPLA とSSの平均値を示す. 「ことばの類推」 と 「文の構成」 を含む聴覚-音声回路が視覚一運 動回路と比べて, PLA で9か月, SSで6点下まわっている, 表3は受容能力-連合能力-表現能. 力の過程のそれぞれの平均値を示す, SS表示では受容能力 が最も高く, 「こと ばの類推」 を含む 連合能力が最も低い. PLA表示では表現能力が最も低く示されるが, この年令段階では一般に表. 現活動が拙劣なためである. プロフィ ールが示すように, 回路間における表現能力にはほとんど差 はない, いずれにしても受容能力は比較的良好であり, 特に視覚-運動回路の 「絵の理解」(PLA 注2:厳密には事前ではないが, 便宜的にこう表記しておく. 80.

(10) . 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究 (工). 年. 令 ・ ふ. &. 発 達 年 令 言 語 学習年 他の 検査 年. 暦. 令. 令. 帆 PLA. 十 T P A 得 点. .白 , 日動 準 構 成 能 力 受 容 能絵 成 能 力 力 連 こ合と 能 絵力 表 現 能 動力 構 文 こと 絵 こと 作 の の さ の ばの ば ばの の表 の 類 理 構 が 類推 表現 理 推 解 現 解 成 し 表. 象. 闘鰯 ¥ 紳 鋒 雌. 水. 水 準 ・ 醐.記億 能ヵ. 評. 数. 形. の 記 憶. の 記憶. 点. 争ひ. ハ. CA. ×. ふ. x ・ ・ = \ .\ ・ 、 、 \、\、 、 、. い. \Lー \一 X. ス ′ ′ ′ ′ - ′ ′ ′ ′ ′ ー. x. / ′. い. CA. // \\ \\. \ . 、 \\. /. \V グ. $才 $才. /ズ ′ 、. カ“ 月 カ日 ”. )- 川. = ー. ー…. ー、 \. 外尋. メ、. ″′. \ \ // ′ Y′ ′ 1 、 、 x. 」ノ. ’. 価. 鮎 科 閃 砧 5 2 8 4 ” の 妬 観 2 8 2 4 2 0 節 1 2 8 4. (評価点) の推移 TPA言語学習能力診断検査 SS 図1 I. 年. 醗灘 畔 静r. 学習他年令 の検査. 年 令. I T P A 得 点. 発 達 年 令 言語 暦. 令 r. 帆. い. 態. 表・ 受 容 能 力 こと 絵. 象. 水 連 合 能 力 こと 絵. の ば の 理解 理. ばの 類推. 解. の 類 推. ’自 動 水 準 準 表 現 能 力 構 成 能 力 配列記憶能力 絵 動 文 数 こ 形 と 作 さ の の の ばの 表 の が 構成 記 記 表現 現 し 憶 憶. 0. ′ 1 1 ○ 1 0^ ^ = v 9ー ′ ○. 9. ^ = v 8‐ に V ^ = V 8▲. ‘ く. 7. R V ^ U 7ー 6ー ハー 0 x 6“ ^ = ・ 、v 、 、 5. ^ h\ \ U 5ー^ = \V\ 、 R V 二 ず ー ^ = V\ \ 4・ ー 3ー ・ R 3 V ^ = v ・. CA. ス ′ ′ ′ 」 ′ / ▲ ′ ′ ′. シ 」ー. ′. へ. CA. $才. カ“ 月 カ日 ”. ×. ↑一. . 一 、. 、 、. x. へ. 人. . ・, 、 1 ・ ▼ /ナ \ し/^. // \. /. $才. \〉 /. 『 〆 〆 {〉. 1 、 rメ /. 、. }. 、 ー 、/. /. リ ′. TPA言語学習能力診断検査 PLA(言語学習年齢) の推移 図2 1. U n X.

(11) . 範. 森 領. L. 動 移 し。 i t c 。m。 。 n. 0. 作 業 oc i t c up a 。 n. c s so. 領 域 別 社 会 生 活 年 令. 域. s H 竺三屋.立. 蔓 もま 審 , . 集 団 参 加 So l iz i ci a at on. 型 良 忌撚, ,. 行. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 l o l l 12 1 3 1 4 1 5オ 1 . 1 , 1 , 1 , L . l yl , - - - - -● - ー , ー , 1 ー i .』. , 一 ,,,. /. L ,,. ,,,,, -. -. - - ,,. \ / , , ,, ,,, ,,,, - - - - ,,,,,,. L/ CA煽 : 5 才6か月 お ,,,,,,, , ,, 。 、. ,, ,, , , ,. ;. キー- ー- - ‐式 キ 、 、 ,, ,, 、, , , , , , , , , , , , , , , , , 6 才 3か月 C A : 6才3か月 CA. / . , 一 ,,,, ,, , し ,,,,,,,,,,,,,,,,. SA) 社会生活年齢の推移 図3 新版S一M 社会生活能力検査 領域別 ( 4才9か月, SS3 3) は最も高く, A子のSS平均値を6点以上も上まわる, 表3に示す2つ の 水 準は処理の深さに対応する“ どちらかというと表象水準よりも自動水準の方が低いが, 事前検査の. 段階では ほとんど差はないといえる. 社会生活能力全般は前述のごとく比較的高く, 領域別では図3の領域別SA プロフィ ールに示す. 通りである, 領域間の変動はあまり大きくはなく, 表4に示すように 「身辺自立」 の5才が最高で あり, 「移動」 の3才9か月が最低である,. 2)事後検査の結果. 2で 9か月後の検査結果と比較すると (表1) , ビネー検査の MA は6か月増加したが, IQ は6 ・ ずかに2点伸 P L は 6 1 Aも7か月増加したが でわ Q TPA の全検査PL 変化がなかっ た. 同様に, I ,. びたに過ぎない. 知的, 認知的能力全般の発達は前回と同様の遅滞を示す, ITPAの プロフィ ール (破線) も初回 (実線) と同様のパターンを示す, すなわち, 図1に示すように最も高い 「絵の理 5を6点以上も上まわるが, 最も低い 「文の構成」 と次に低い 「こと 解」 はA子自身のSS平均値2. ばの類推」 は6点以上初回のSSを下まわっている. 中でも, 「文の構成」 は初回のSSをさらに下 回っており, このことは同一年令母集団の中で, 相対的に遅滞が進んでいることを示唆するもので ある. 図2に示すようにPLAで プロッ トすると, 初回と全く変化していない「絵の類推」を除くと,. 「文の構成」でも2才9か月から2才11か月へ2か月の発達を示した, 回路間の比較をしてみると, 表2に示すように, 今回も聴覚-音声回路が視覚-運動回路と比べて低く, PLA で7か月, SSで 5点下まわっている. 過程別でも表3に示すように, 初回と同様の傾向を示し, 受容能力が最も高 い. 特 に 今 回 は PLA で 5才 9か月, SS で34を 示 し, こ の 9 か月 間 で PLA で 1 年 8か月, SS で5. . 点増加し, 他の過程との差は一層大きくなったといえる, 水準別でも表4に示すように, 初回と同 様自動水準に比べて表象水準が低い傾向を示し, さらにこの9か月間の間に表象水準ではPLA で 1 1か月, SSで2点増加したのに対し, 自動水準ではPLA で5か月 伸びたに過ぎず, SSでは1点 低 下 して お り, そ の 差 は一 層 大 きく な っ た と い え る.. 社会生活能力では表1に示すように, 全検査SA が5才11か月でこの9か月間で1年5か月の伸 びを示し, SQ も8 2から9 5へと13点の伸びを示した, 領域別の プロフィ ールをみると, 図3に示す ように 「意志交換」 以外は全般に大きな伸 びを示す, しかも表5が示すように, 「作業」 と 「意志. 交換」 以外はCAを上まわっている, 特に発達の顕著な領域は, 2年9か月の伸びを示した 「移動」 82.

(12) . 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究 (工) 表1 発達の概要. (下段は増分を示す). 名 TK式田中ビネー検査 ミ Q 。 I. MA. I T P A 検 査. S一M社会生活能力. PLA. PLQ. SA. SP. 5才06月. 3才04月. 62. 3才03月. 59. 4才06月. 82. 6才03月. 3才10月. 62. 3才10月. 61. 5才11月. 95. 0年09月. 0年06月. 0. 0年07月. 十 2. 1年05月. 十13. 表2. 回路別PLAとSSの平均値. ミ名 。. ) は標準偏差 下段は増分を示す. (. 聴覚-音声回路. 視覚-運動回路. 差 (前項-後項). PLA. SS. PLA. SS. PLA. 5才06月. 3才00月 (3 .0). (5 .5). 21. 3才09月 (7 ,9). (3 ,3). 27. - 9か月. - 6. 6才03月. 3才09月 (9 ,9). (7 .8). 22. 4才04月 (11 ,9). (5 ,2). 27. - 7か月. - 5. 十 9か月. 十 9か月. + I. 十 7か月. 0. - 2か月. + I. 表3. 過程別PLAとSS の平均値. ミ名 。. 受. 容. 能. 力. (. SS. ) は標準偏差 下段は増分を示す. 連 合 能 力. 表. 現. 能. 力. PLA. SS. PLA. SS. PLA. SS. 4才01月 (8 .5). 29. (4 .0). 3才06月 (10 ,0). 20. 5才06月. (6 ,0). 3才00月 (1 .0). (0 ,0). 5才09月 (6 .0). 34. (3 ,0). 4才00月 (4 .5). 20. 6才03月. (3 .0). 3才06月 (3 .5). (0 .5). 十 9か月. +1年8月. + 5. 十 6か月. 0. - 6か月. + I. 表4. 水準別PLAとSSの平均値. 名 。. (. 25. 26. ) は標準偏差 下段は増分を示す. 表 象 水 準. 自 動 水 準. 差 (前項-後項). P LA. SS. PLA. S S,. PLA. 25. 3才02月 (2 ,9). (4 ,6). 5才06月. 3才06月 (9 .2). (5 ,6). 6才03月. 4才05月 (12 .7). (6 ) . ,3. 27. 3才07月 (5 ,0). (7 ,2). 十 9か月. 十11か月. + 2. 十 5 か月. SS. 23. 十 4か月. + 2. 22. 十10か月. + 5. - I. 十 6か月. + 3. 83.

(13) . 森. 範. 行. 表5 S一M社会生活能力検査 領域別社会生活 年令の推移 (右欄は増分を示す) 生活年令. 5才06月. 6才03月. +0年09月. 身辺自立. 5才00月. 6才06月. 十1年06月. 移. 動. 3才09月. 6才06月. +2年09月. 作. 業. 4才05月. 5才10月. +1年05月. 意志交換. 4才03月. 4才09月. +0年06月. 集団参加. 4才09月. 6才08月. +1年11月. 自己統制. 4才03月. 6才10月. 十2年07月. と2年7か月の伸びを示した 「自己統制」 である. この変化は,,自転車で遠くへ遊びに行けるよう になったことや,行儀がよくなったことなど,日常の生活の中にも現れている(母親との面接より) ,. 他方, 「意志交換」 では6か月 しか上昇せず, 他の領域と の差が一層開いた, このことはITPA の 聴覚-音声回路の発達が停滞していることに関連しているものと思われる. V. 構音への・ア プローチ と結果. 構音へのア プローチは, 主としてもう一人の女性Th ,が担当した, 構音の組織的な検査としては. 「言語障害児用総合診断検査」(国立特殊教育総合研究所)の中の 「構音検査票」 を使用した. 検. 査材料としては任意の音 (おん) を語頭, 語中, 語尾に含む有意味語を使用するが, 視覚化が容易 な事物を線画で描いたものに色を塗って絵カー ドに作り, A子の興味を引くように工夫した, A子. が意図した通りの命名をしなかった場合には, 検査者が正確に発音して反復をさせた. 初回の構音検査はCA5才・ 8か月 時に施行した. その結果, A子は表6に示す7種類の音で置換 が生 じる こ と が 明 ら か にな っ た. 中 で も, dz →d5とc →fの 置 換 は100% 生 じて おり (い ず れ も 正. 答率:0%) 5%で生じた (正答率:25%) . その中から今回はk音の指導を中心 , k→tの置換は7. に行った, 正答率ではd z音とG音の方が低いにもかかわらずk音を優先させた理由は, d z音とG 音は幼児音として聞き分けることが可能であり, 意味を取り違えることはあまりないが, k→ t の. 置換は日常会話の中でも目立ちやすい上に, 意味不明や誤解を招きやすいからである. A子は例え t t t ば, スイカ(S山n i t ek e a)をスイタ(smi a) o)をネト(n 。) e o)をテイ ト( 回t o , 猫(n , 毛糸(k. iは正 く ) の よう に, 語 頭, 語 中, 語 尾 を 問 わ ず ka →t a, ko → t o, ke → t e の 置 換 を 示 す が, k. 発音できる, 指導のはじめにt音とk音を正しく聞き分けられるかを調べるために弁別検査を行っ た. その結果, A子はk音とt音の弁別が可能であることがわかった, そこでk音の指導を開始し た, 指導の手順は次の通りである,. ( 1)う が い の 模倣 か らka 音 を 発 声 さ せ る,. 2 ( メ音の発声を模倣させる. )kq 【音を何度も聞かせて, kロ. (3 )k i音 か らk i OW 音, l qo 音を聞き, 定着させる. a 音, 1. 84.

(14) . 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究 (1) 表6 構音検査票による正答率の推移 \\ \. CA. 置換. 5才08月. 7才05月. 正答数 正答率 正答数 正答率. k→ t. 3/12. 2 5% 12/12. 100%. 9/D →d/n. 8/15. 53% 14/15. 93%. S→;. 4/12. 3 3%. 8/12. 67%. t s→tf. 2/ 6. 33%. 3/ 6. 50%. dz ÷→d3. 0/12. 0% 11/12. 92%. k j- t. 6/ 9. 6 7%. 9/ 9. 100%. 4 一;. 0/ 4. 0%. 4/ 4. 100%. 指導回数は, 時間的制約とA子が言語指導に回避的であったこととにより, 5回にとどま った. 以下は指導の経過である, 〈第 1 回 :11月19日〉. 「うがいをしようね」 と言葉をかけると進んでコッ プを取り, 自分で水を入れて2回うがいをし. た. う がい はきち ん と でき て い る」 次に, 水 な しのう が いへ導く た め に, 水の量 を減 ら してう がい. をするように促したが, 「できない」 と拒否した.. も の ま ね ご っ こ を し よ う と 誘 い, km, km, km と 聞 か せ る と tlu, tfu, tju と 発 音 した,. その音をテー プに録音して聞き比べさせると 「違う」 と答えた, ことによって 勾aを発声させることがで 超 とa (どちらも発音できる) を連続して速く言わせる・ き た. 〈第 2 回 :11月20日〉. 唇の形に注意を向けさせてkm の発声を練習させた, 発音はt′uのままで変りなかっ た. 途中で 泣きだし, 続けることを拒否した, k i→k i qaの発音ができたところでl qaを含む2音節の無意味語の模倣 qaの順で模倣させ, l a→l をさせたら正しく再生できた, 〈第 3 回 :11月22日〉 鏡 を 見 て 口 を す ぼめ て km の 練習 を した. 発音 はtJu も しく はt u であ っ た.. i→ 頭a→ 勾aと模倣を進めていったが, 本人が構音を意識しないとtfaもしくはt k aにな っ て し be) か まう, 野菜のキャ ベツ (幻a be b tm) になるが, 無意味音のキャベ (k tm) はタベッ (モ i e a a ら キ ャ ベ ツ (k tm) への移 行 は可能 で あ っ た. i abe 〈第 4 回 :11月28日〉. 水を使って2度うがいをした ,後, 水なしでうがいの真似をさせたら, k ax の音が出せた. を練 せるが f もしく 録音テープを聞かせて自己 はt になる に注意させてk m 習さ 口の形 u . , tu 弁別させると, はじめは 「違う」 というが, あとでは 「上手」 と自分をほめる, この指導を早く終. わらせたいとする気持ちの表れと思われた, 超 から順に導かなくてもl q aの発声が可能になっ たが, 勾ax と長く音を伸ばすことは, 息が続 85.

(15) . 森. 範 行. か ず あ ま り で き な い. 〈第 5 回 :11月29日〉. l qa音単独と1 q a を含む無意味音節の発声は可能になっ たので, 今度は有意味音のキャ ラメ ル (l qa r amerm) を 練 習 さ せ た が, い い か げ ん あ き て き た の か 「タ ラメ ル ( 卿amerm) , キ ャ ラメ. ル (超a 」 と2回言ったきり 「もうやらない」 と拒否した. r rm) ame 言葉の指導も「お勉強の時間」と称して, 原則として遊戯療法の前に行うようにした, A子にとっ. q 音が無意味音節では発音 ては遊 びの方が魅力的であるため, 十分な指導にはならなかっ たが, l できるようになっ たことや, 発音を模倣するときには音をよく聞き, その音を模倣しようとする態 度 がみ ら れる よう に な っ た こ と は, この 一 連 の 指 導の 成 果 と 思 わ れる.. 事後検査は事前検査から1年9か月後の7才5か月時に施行した, 結果は表6に示すように, 直 接指導したk音と 勾 音には置換 が全く起こらず (正答率:100%) , 他の音もほとんど置換を生じ 7%) ないようになったが, s→j(正答率:6 s→tf(正答率:50%) の置換はいくらかみら , とt れた. しかしながら, この2つの置換はいずれも幼児音として耳慣れたものであり, 意味を取り違 え ら れる 恐 れ はあ ま り なく, 日 常 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン活動 に はほ と ん ど 支 障 がな い もの と 思 われ. る. 家庭でも構音の問題はほとんど消失していることが母親からも報告さ れた.. W. おわりに 子供にとって遊 びは本来精神発達上, 治療上有効性を有しており, 心理療法の主要な手段として 利用されてきた, しかるに, 精神遅滞児は遊戯療法の対象から外される傾向 がある, その理由とし 2に ては, 第1に問題行動 が顕在化しているとしてもその原因は知能の問題に帰せられること, 第′ ることなどが考えられる 上を促すことには否定的であ 遊戯療法が直接知能の向 . 本事例においてもIQ に変化は なく, 聴覚-音声回路を経由する情報処理の不全にもほとんど改 善がみられなかった. 精神遅滞児に遊戯療法を適用する場合, 認知能力 を直接向上させるというよ 1985 ) は不安定 りは, 2次的に派生する問題行動の予防と治療に利用されることが多い, 森田ら ( 上 は主訴と家庭環境 ( 1 9 8 0 ) 坂 児の事例を報告し な生活環境で育てられた養護施設入所の3才女 , が本事例と類似した4才7か月の男児の治療事例を報告している, いずれも心理検査は施行してい. ないが,,治療効果は認められるようである. 一般に遊戯療法が効果的であるためにはある程度の認 知能力を必要とすることから, 精神遅滞児に対して適用する場合には5才以上でなけれ ば効果をあ ご ) 972 げにくいといわれるが(高野,1 , 3才以下でも可能な事例があることは心強い. おそらく, っ こ遊びや象徴化した遊 びにまで発展させることは困難かもしれない が, 感覚遊びのレベルであって としては十分効果的であり得る. もカタルシス● 本事例は, 母親からの分離不安を克服し, 自己表現が容易になったところで, 入試目前になって 母親の特訓が強ま ったが, 母親の役割を取ることでカタルシスを発揮 し, 自立を獲得していったも の と 思 わ れ る.. 本事例は5才以上であり, 心理検査の施行が可能であった. 遊戯療法は社会生活能力とおそらく 構音の改善にも効果的であったと思われる が, 遊びの内容の治療的な意味についてはほとんど触れ ることができなかっ た. 筆者の熟練と洞察力を待って, 改めて検討したいと思う,. 本児は, 両親の念願どおり私立の小学校に入学した. 元気で通学しているとのことだが, 今後は 主に学力との関連での適応が問題になろう.筆者は認知発達を含めて推移を見守りな がら,その時々. 86.

(16) . 言語発達遅滞が顕著な精神遅滞児にかかわる縦断的研究(1) の 発 達 課題 に かか わ っ て いく こ と になろ う,. 〈引用文献〉 1, AX I I I ヒ l 1 her f 五h e t k ayt aPy on Mi , M.:P , Hough ,V , Jew Yor ,1947,. 小林治夫 (訳) :遊戯療法, 岩崎学術出版社, 19 72 .. 2.片山義弘:障害児臨床心理学の目的と課題(片山義弘,生和秀敏(編):障害児臨床心理学 ブレーン出版 , , 198 0) 3, 森田喜治, 東山紘久:養護施設内精神遅滞児のプレイセラピー, 大阪教育大学障害児教育研究紀要 198 5 , , 8 , , 109-119. 4, 坂上ルミエ:知恵遅れの子の遊戯療法 -- 臨床事例1 (片山義弘 生和秀敏 (編) :障害児臨床心理学 , , プレーン出版, 1980). 5. 高野清純:遊戯療法の理論と技術, 日本文化科学社, 19 72 , 〈付記〉. この報告は, 日本特殊教育学会第23回大会 ( 1985) において発表したものに加筆したもの である, 当時の養. 護学校教員養成課程4年目学生, 片桐あゆみさん(現帯広聾学校教諭) 米田裕美さん (現八雲養護学校教諭) , には治療と指導の一部を担当してもらった, 記して感謝の意を表します.. (本 学 講 師. 函館 分校). 87.

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