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博士(薬学)扇谷 悟 学′位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(薬学)扇谷   悟 学′位論文題名

P450 発 現系 の新 規 構築 とその系を用いた CYPIA の 酵 素 活 性 の 種 差 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

1.序論

  薬物代謝に おける種差は、薬物のヒトに おける安全性の予測を困難にする最大の問題であ る。薬物代謝 の種差の原因としては、動物種間における1)薬物代謝酵素の発現量の差、およ び2)薬物代謝 酵素自身の酵素活性の差、 の2っが考えられるが、後者についての報告は極め て少ない。

  チ ト ク ロ ー ムP450(以 下 、P450あ るい はCYP)の中 で、CYPIA1とCYPIA2はい ずれ も 発 ガンへの関与 などの点から注目を集めてい る分子種である。しかし、これらの分子種の酵素 活性の種差を 同一条件下で検討した報告は ない。そこで本研究では、ヒト、マウス、ハムス タ ―、 モル モッ ト のCYPIA1とCYPIA2に つい て、 どの よう な酵素活性の違いが あるのか、

ま たそ の酵素活性の種 差は一次構造上のどの領域に 由来するのかを明らかにす ることを目 的 とし た。 本研 究 では 、P450の 酵母 発 現系 を新 たに 構築 し、これらについて 検討した。

2. 各 種 動 物 肝 CYPIA1、 CYPIA2お よ び P450還 元 酵 素 のcDNAク ロ ー ニ ン グ   マ ウ ス 、 ハ ム ス タ ー 、 モ ルモ ット 肝cDNAラ イ ブラ リー からCYPI A1、CYPIA2 cDNAお よ びP450に 電 子 を 伝 達 す るP450還 元 酵 素 のcDNAを 単 離 し た 。 ま た 、 ヒ ト 肝cDNAか ら CYPIA1、 CYPJA2cDNAを polymearsech虹 nreacdon法 に よ っ て 単 離 し た 。   推定アミノ 酸の相同性は、CyPJA|cDNA間あるしゝはC即JA2cDNA間で は70ゲ。以上、P450 還元酵素では90%以上であった。また、P450還元酵素のFMN(navinmononucleodde)結合領 域近傍に、動 物から微生物に至るまでよく 保存された酸性アミノ酸クラスターを初めて見い だした。

3.P450およびP450還元酵素 の酵母発現系の検討

  P450を酵母で発現させたと きの発現効率は、分子種に よって大きく異なる。そこで、cDNA の 非 コ ー ド 領 域 の 修 飾 に よ る 酵 母 内 発 現 量 の 変 化 に つ い て 検 討 し た 。   マ ウスCyplal cDNAをモ デ ルと して 、非コード領域除去の 影響について検討した。そ の 結果 、マ ウスCyplal cDNAの 非コ ード 領域 の除 去 によ り、 発現 効率 が 増加 した 。ま た 、 CYPIA2やP450還 元 酵 素cDNAで も同 様 な結 果を 得た 。以 上 の結 果よ り、 酵母 に おけ る発 現効率を増加させる方法につ いて明らかにした。

4. P450発現のための新規酵 母株の作成

  酵 母P450還 元酵 素 から 動物P450への 電 子伝 達効 率は 低い 。そこで、ハムスターP450還 元 酵素を安定に高発現する新 規酵母株を作成した。6配列 を相同組換えのターゲットとして ハ ム スタ ーP450還 元 酵素 発現 ユニ ット を 酵母YPH500株 の染 色体の複数の位置ヘ導入し 、 高 いP450還 元 酵 素 活 性 を 示 す 酵 母 株‑ High一red酵 母 と 命 名 ― を 得 た 。

‑ 292―

(2)

  ハ ム ス ターP450還元酵 素発現 ユニッ トはHigh‑red酵 母の第V染色体 に6コピ ー以上 挿入 されて いた。 また、High‑red酵母は富栄養培地中100世代以上にわたって安定な形質転換体 であっ た。

  親 酵 母 であるYPH500とHigh‑red酵母に マウスCYPIA1発現プ ラスミ ドを導 入し比 較する と、Higkred酵 母 はYPH500に 比 べ 、20倍 のP450還 元酵 素 活 性 を示 し 、 発 現し た マ ウ ス C1仰1A1の酵 素活性 はおよ そ250倍上 昇した 。この 結果より、本研究で作成したHgh・red酵 母 は 非 常 に 高 いP450酵 素 活 性 を 得 ら れ る 有 用 な 酵 母 で あ る と 考 え ら れ た 。 5. ヒ ト 、 マウ ス 、 ハ ムス タ ― 、 モル モッ 卜にお けるCYPIA1、CYPIA2の酵 素活性 の種差   ヒト 、 マ ウス 、ハムス 夕―、 モルモ ットのCYPIA1およ びCYPIA2をHigh‑red酵母で 発現 させ、それらの酵素活性の種差について検討した。

  CYPIA1のべンゾ[ロ]ピレン3位水酸化酵素活性および7‐エトキシクマリン0‐脱エチル化酵 素活 性を比 較する と、マ ウスが 最も高 く、次 いでヒトであった。マウスとハムスターの71 エトキシクマリン〇‐脱エチル化酵素活性には60倍の差があった。次に、High・red酵母のカ ナバ ニン耐 性への 突然変 異率および生存率を指標とした新規変異原性試験法を開発し、4種 の 動 物 のCYPlA1のア フラト キシンB1代謝的 活性化 能を比 較した 。その結 果、ヒ トCYPlAl の ア フ ラト キシ ンBlの代 謝的活 性化能 が他の 動物種 のCYPlA1よ り低いこ とが示 された 。   CYPlA2の7゛エト キシク マリン〇・脱エチル化酵素活性ではハムスターが最も高く、次い でマ ウス、ヒトの順であった。また、カフェイン代謝反応では、カフウイン代謝物の比率は 動物 種によ って若 干異な ってい た。一 方、4種 の動物 のCYPlA2のア フラト キシンBl代謝的 活 性 化 能を 比較 すると 、ハム スターCYPlA2が他 の動物種 のCYPlA2よ りも非 常に高 い代謝 的活性化能を示した。

  以上 の よ う に、 こ れ ら4種 の 動物 のCYPlAl、CYPlA2の酵素活 性には 大きな 種差が 存在 することを明らかにした。

6. マウ スCYPIA1と ハム ス タ−CYPIA1の7‐エ 卜キシ クマリ ン〇. 脱エチ ル化酵 素活性 の 種差に 関わる一 次構造 上の領 域の検 索

  マウ スCYPIA1と ハムス ターCYPIA1に おける7.エト キシク マルン 〇‐脱 エチル 化酵素 活 性の種 差に関わ る領域 をキメ ラCYPIA1の 作成に より検 討した。

  マウス 、ハム スター のCYPIA1の7− エトキ シクマリン〇一脱エチル化酵素活性の速度論的 パラメ ータを求 めたと ころ、KmよりもVmaxが大 きく異 なってい た。そこで、マウスCyplal cDNAと ハ ム ス タ ーCYPIAl cDNAを お よそ3分 割 し て 組み 合 わ せ たキ メ ラCYPIAl cDNA、 およ び 中 央3分 の1の 領域 を さらに2分割し て組み 合わせ たキメ ラCYPIAl cDNAを 作成し 、 Hiah‑red酵 母で 発 現 さ せた 。こ れらの キメラCYPIA1の中で は、中 央3分の1の前半 領域が マウス 由来であ るキメ ラCYPIA1が 高い7. エトキシクマリン〇―脱エチル化酵素活性を示し た。 ま た 、 この 高 い 酵 素活 性 を 示 すキ メ ラCYPIA1は ハ ム ス ターCYPIA1よ り も高いVmax を示 し た 。 この 結 果 よ り、 中央3分の1の 前半領 域が、 マウスCYPIA1とハム スターCYPIA1 のVmaxの種 差に最 も重要 な領域 である ことを明 らかに した。 この領域はこれまでに報告さ れてい るP450の機 能領域 とは異 なった 領域であ った。

6.まと め

  本研究 におい て、高 いP450酵 素活性が 得られ る酵母発現系を新たに構築した。また、本 発 現系 を 用 いて、 ヒト、 マウ. ス、ハ ムスタ ー、モ ルモットCYPIA1とCYPIA2におけ る酵 素活性 の種差 につい て検討 し、以 下のよ うな結論 を得た 。

1)4種 の 動 物種のCYPIA1、CYPIA2の 酵素活 性には 大きな種 差が存 在する 。この 薬物代 謝   酵 素 自 身 の 酵 素 活 性 の 種 差 を 同 一 条 件 下 の 比 較 に よ り 初 め て 見 い だ し た 。 2) マ ウス と ハムス タ―のCYPIA1の酵 素活性 の種差6毒Vmaxの違 いに由 来して おり、 これ   には中 央3分の1の前半 領域が 強く関 わって いる。 この領域はこれまで機能が未同定であ   っ た 領 域 で あ り 、 本 研 究 に よ っ て 初 め て 機 能 を 明 ら か に し た 。

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(3)

学位論文審査の要旨 主 査    撒 授    鎌 滝 哲 也 副 査    教 授    横 沢 英 良 副 査    助教 授    澤田    均 副 査    助教 授    横井    毅

学 位 論 文 題 名

P450 発現系の 新規構 築とその 系を用 いた CYPIA の 酵 素 活 性 の 種 差 に 関 す る 研 究

  薬 物 代 謝 能 に お け る 種 差 は 、 ヒ ト に お け る 薬 物 の 薬 効 ・ 毒 性 を よ り 正 確 に 予 測 す る 上 で 極 め て 重 要 で あ る 。 し か し 、 こ れ ま で の 研 究 に お い て は 、 動 物 種 間 に お け る 薬 物 代 謝 酵 素 の発 現 量の 差に 関す る研 究に 比ベ 、. 薬物 代謝 酵素 の 分 子 当 た り の 酵 素 活 性 ( 夕 ー ン オ ー パ ー 数 ) の 差 に 関 す る 報 告 は 少 な か っ た 。

本 研 究 で は こ の 点 に 関 し て チ ト ク 口 ー ムP450( 以 下P450ま た はCYP)を 中 心 に 詳 し く 研 究 し 、 数 々 の 新 発 見 を し た 。 本 研 究 は 薬 物 代 謝 に 関 し て 有 用 な 概 念 を 提 供 す る も の で あ り 、 以 下 に 詳 述 す る よ う に 極 め て 優 れ た 研 究 成 果 で あ る と 評 価 さ れ る 。

1)各 種 動 物 のP450とNADPH‑P450還 元 酵 素cDNAの 皇 離

  ま ず 、 ヒ ト 、 マ ウ ス 、 ハ ム ス タ ー 、 モ ル モ ッ ト か らCYPIAヱ 、CYPIA2 cDNA を 単 離 し 、 そ の 塩 基 配 列 を 決 定 し 、 一 次 構 造 上 の 相 同 性 に つ い て 明 ら か に し た 。 こ れ ら の 中 で は 、 モ ル モ ッ ト のCYPIA1、CYPIA2 cDNAが 初 め て 単 離 さ れ たcDNAで あ っ た 。 ハ ム ス タ ー CYPIAヱ 、CYPIA2 cDNAは 本 研 究 と ほ ぽ 同 時 期 に 塩 基 配 列 が 報 告 さ れ た が 、 一 部 の 塩 基 配 列 が 異 な っ て い た 。 ま た 、 マ ウ ス 、 ハ ム ス タ ー 、 モ ル モ ッ ト か らP450還 元 酵 素 のcDNAを 単 離 し た 。 こ れ ら3種 は い ず れ も 初 め て 単 離 さ れ たcDNAで あ る 。 こ れ ら に つ い て 一 次 構 造 の 解 析 を 行 い 、 高 い 相 同 性 を 有 し て い る こ と を明 らか にし た。 特に 、 P450還 元 酵 素 か らP450へ の 電 子 伝 達 に お い て 接 点 と な っ て い る と 考 え ら れ るFMN結 合 領 域 付 近 の 酸 性 ア ミ ノ 酸 配 列 が 動 物 か ら 植 物 、 微 生 物 に 至 る ま で 非 常 に よ く 保 存 さ れ て い る こ と を 初 め て 見 い だ し た 。

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2) 醸量 t 三 壷吐 る醸 盍c 発 現効 壅の 改良

マウ ス CYPIA1 を モ デ ル と し て 、 cDNA の 非 翻 訳 領 域 の除 去に よる 発現 効率 の変化 につ いて 検討 した 。そ の結 果、 cDNA の非 翻訳 領域 をトリ ミングする ことに より 、酵 母内 発現 量が 増加 する こと を明 らか にし た。ま た、CYPIA2 やP450 還 元 酵 素 に っ い て も 同 様 な 検 討 を 行 い 、 マ ウス CYPIA1 に 限ら ず、

CYPIA2 や P450 還 元 酵 素 で も 発 現 効 率 が 上 昇 す る こ と を 見 い だ し た 。

3 )  NADPH‑P450 還 元 醸 素 立 高 発 現 立 る 新 規 醸 量 桂 の 樹 立 P450 を 発現 させ 酵素 活性 を検 討す るた めの 酵母 、す なわ ち動物 由来のP450 還元酵 素を 安定 に高 発現 して いる 新規酵母株(High‑red 酵母)を樹立した。

安定性 と高 発現 を両 立さ せる ため 、6 配列を相同組換えのターゲットにした マルチ インテグレーションを手法として用いた。その結果、親酵母に比較し てお よ そ 20 倍 の P450 還 元 酵 素 活 性 を 示 し 、 同 時 発 現さ せた マウ スCYPIA1 の7 ・ エト キシ クマ リン 〇・ 脱エチ ル化酵素活性が親酵母で発現したときの 250 倍 にな る組 換え 酵母 、High‑red 酵母 を樹 立し た。

4) High‑r?d 醸量空目!!たCYPIA の醸塞活性の種差

単 離 し た CYPIA1 と CYPIA2 を High . red 酵 母 で 発 現 さ せ 、 酵 素 活 性 に お ける種差や変異原物質の代謝的活性化能における種差を明らかにした。特に、

同じ 分 子 種 で あっ ても酵 素活 性や 基質 特異 性な どが 大き く異 なっ てお り、

CYPlA1 や CYPlA2 の 酵 素 活 性 の 種 差 も 個 体 の 薬 物 代 謝 能 に お け る 種 差 の 原因と なり うる こと を明 らか にし た。 また 、組 換え High ・red 酵母が酵母内 で高 い P450 酵 素活 性を有 する こと を利 用し た新 しい 変異 原性 試験 法を 開発 した。

亘ユP450 堕酵塞活性Q 種差c 原因となる二次撞造cD 推定

P450 の酵 素活 性に おけ る種 差の 原因 とな って いる 一次 構造 上の領 域を 推定 す る た め に 、 マ ウ ス ー ハ ム ス タ ー キ ヌラ CYPIA ヱ cDNA の 作 成 と High‑red 酵 母での 発現 を行 った 。速 度論 的解 析に より、CYPIA1 の7 ・工トキシクマリ ン O 脱 工 チ ル 化 酵 素 活 性 に お け る 種 差 が Vmax の 差 に 由 来 し て い る こと を 明らかにした。また、7 .エトキシクマリン〇.脱エチル化酵素活性における種 差 に 、 こ れ ま で 機 能 が 未 同 定 であ っ た マ ウ ス く :YPIA1 の 141 番目か ら208 番 目のア ミノ 酸を含む領域が強く関与していることを明らかにした。本研究 で は異な った 動物由来の同一分子種の酵素活性の比較検討と、同一分子種の キ ヌラ体 の作 成というアプローチを用いたため、新しい機能領域が特定でき たと考えられる。

以上、 本研 究は P450 の動 物種 差の 原因 とな るぺ プチ ドの 一次構 造を明らか

(5)

にした。   本論文『 P450 発現系の新規構築とその系を用いたC1 口1A の酵 素活性の種差に関する研究』に含まれる研究成果は薬学における基礎および 応用のいずれにおいても優れており、博士(薬学)の学位を受けるに充分値 するものと認めた。

     一

参照

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