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博士(薬学)佐久間 勉 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(薬学)佐久間   勉 学位論文題名

ハム ス タ ー肝 チトク ローム P450 の性差 の研究 学位論文内容の要旨

  第I相薬 物代 謝酵 素 であ るチ トク ロー ムP450(以 下P450ある いはCYP(個々の分子種を表 記 する 場合 ) と略 す) は多重遺伝子 族を形成し多くの分子種が 存在する。薬物代謝に性差が あ るこ とは 古 くか ら知 られており、 性特異的P450分子種の存在 がその要因であり、それらの 発 現が 性ホ ル モン や成 長ホ ル モン(GFDによ って 調 節さ れる こと も明 ら かとなっている。し か し、 薬物 代 謝の 性差 の報告はラッ トおよび一部の系統のマウ スに限られていた。当研究室 のMiuraらは薬物代謝の性差が広範な 動物種においても存在する と考え検討し、ハムスタ一肝 P450に も性 差 が存 在す ることを見い だした。即ち、ハムスタ一 肝ミク口ゾーム画分には少な く と も2種 以 上 の ラ ッ トCYP2C11と免 疫的 に 類似 したP450分 子種 が存 在し 、SDS‑PAGE上で 分 子量 の小 さ い分 子種 はオスに、分 子量の大きい分子種はメス に多〈存在していた。そこて 本 研究 はハ ム スタ ーの 性差を分子レ ベルで確証し、その発現調 節機構を解明することを目的 と した 。

  第I章 ハ ム ス タ 一 肝 チ ト ク ロ ー ムP450分 子 種 のcDNAク ロ ― ニ ン グ と 構 造 解 析   各P450分 子 種に 特異 的な プ ロー プを 設計 する た め、cDNAク口 一ニングを 行ない、一次構 造 を解 析、 し た。ハ ムスター肝cDNAライブラリ ―をラットの対応する分子種 のcDNAをプロ―

ブ と し て ス ク リ ー ニ ン グ し、4種 のCYP2C遺伝 子サ ブフ ァ ミリ ー、2種 のCYP2E遺伝 子サ ブ フ ん ミ リ ー に 属 す るcDNAを単 離し た04種 のCYP2C分子 種は 全て490残基 のポ リ ペプ チド で あ り、P450の 国際 命名 委員 会 からCYP2C25、2C26、2C27、2C28と命 名さ れた 。 推定 アミ ノ 酸 配 列 に は ミ ク ロ ゾ ー ム 型P450に 特 徴 的 な 多 く の 配 列が 認め られ た 。CYP2C25、2C26、 2C27は アミ ノ 酸配 列で 互い に90%以 上の 相同性 を示し、他の動物の分子種と 比較すると、ラ ットCYP2C6に最も高い相同性(81.2〜 82.5 010)を示した。他のハムスターCYP2C分子種に対し 低kゝ相 同性(71.4〜 72.60/0)を示すCYP2C28は、ラットCYP2C24に対し88.7%の相同性を示し対 応 する 分子 種 であ る可 能性 が 示唆 され たa2種のCYP2E分 子 種のcDNAは、3. ・非翻訳領域の 長 さの みが 異 なるcDNAであり、493残基からなる 同一のボりベプチド(CYP2E1)をコードして いた。他 の動物の分子種と比較したところ、アミノ酸配列のレベルで 78.1〜 90.3%の相同性を 示した。

  第II章CYP2C遺伝子ファミリーに属 する分子種の機能解析

  現 在ま でに ハム ス ターCYP2C分 子種 の機 能に 関 する 報告 はな され て いない。そこで、4種 のcDNAに コー ドさ れ るポ リペ プチ ドがP450で ある か否 か確 認 する と同 時に、その機能を明 ら か にす るた め に酵 母で の発 現 を行 なっ た。cDNAの 翻訳 領域 を発 現ベ ク タ−pAAH5の 酵母 ア ルコール脱水素酵素プロモ ーター下流に挿入し出芽酵母Saccharomyces cerevisiae AH22株に 導 入 した 。組 換酵 母 のミクロゾーム をウエスタンブロット分析 した結果、全ての組換酵母が 抗 ラ ットCYP2C11抗体 と交 叉反 応 性を 示す ポリ ベ プチ ドを 発現 して い た。CYP2C27はオス肝 ミ ク 口ゾ ーム に 多く 発現 して い る分 子種 とSDS‑PAGE上で ほぼ 同じ 移動 度 を示 し、CYP2C27 が オ スに 多く 発現 し ているP450分子 種である可能性が示唆され た。酵母ミクロゾームの還元

一 ・182 ‑

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型CO差 ス ペ ク ト ル を 測 定 し た 結 果 、 全 て450nm付 近 に 吸収 極 大を 持つ スベ ク トル を示 し cDNAに コー ドさ れる ポ リベ プチ ドがP450で ある と証 明さ れ た。 ミクロゾ― ム画分を用いて   酵素 活性 を測 定し 、 ハム スタ ーCYP2Cが以 下の4種 全て あ るい は一部の酵 素活性を有する ことが示された 。アミ丿ビリンN‐脱メチル 化酵素活性は4種全てに同程度認められた。一方、

CYP2C25、2C26のべ ンツ フェ タミ ンM脱 メチル 化酵素活性は他の2分子種よ り高かった。ト ル ブ タ ミ ド 水 酸 化 酵 素 活 性 はCYP2C25、2C26お よ び2C27で 認め られ た がCYP2C28で は認 め ら れな かっ た。 テス ト ステ 口ン 水酸 化酵 素 活性 はCYP2C25の みが 有し16p位 を水酸化した。

  第 皿章 ノーザン プ口ット分析およびSlヌクレ アー‐ゼプロテクション分 析を利用した各 P450分子 種の 発現 レ ベル の解 析

  単 離し たP450分 子 種の発 現レペルに性差があるか否か 明らかにするため、分子種 に特異的 なオ リゴ ヌク レオ チ ドを 用い た丿 ーザ ン ブロ ット分析 を行なった。CYP2C27は肝お よび腎に おい て発 現し てお り 、肝 では 約5倍、 腎で はそ れ以上の 性差(オス冫メス)が存在 した。ま た、 この 性差 は4週令 以降 に 生じ 性成 熟に 伴っ て現われ ることが明らかになった。 先のウエ スタ ンブ ロッ ト分 析 の結果 と考え併せると、ハムスタ一 肝でオスに多く発現してい る分子種 はCYP2C27で ある こと が強 く 示唆 され た。CYP2C28は肝 の みに 発現 が認 められオス で有意に 多く 発現 して いた 。CYP2C25、CYP2C26は 調べ た範 囲で は 肝の みで 発現 しており顕 著な性差 は認 めら れな かっ た 。CYP2E1は肝 で高 く 発現 し、 腎、 肺 でも 発現 が確 認された。 しかし、

その発現に性差は認められな かった。また、ハムスターでは他の動物と異なり3.・非翻訳領域 の 長 さ が異 なる2種 のmRNAが 発 現し てい るこ とも 確 認さ れた 。P450の 発 現レ ベル は種 々 の 化合 物の 投与 で変 化 する こと が知 られ て いる 。そこでCYP2C27の性差がP450誘導剤 の投与に よっ て影 響さ れる か 否か検 討した。CYP2C27の発現レペ ルは3‐メチルコランスレン(3‑MC)、 プレグネノロン16a−カ―ボ ニトリルの投与では影響を受 けなかったが、フェノバル ピタール (PB)投 与 に よ っ て 上 昇 し た 。 し か し 、 性 差 は 保 た れ て い た 。CYP2C25の 発 現 レ ベ ル は 3‑MC、PBの 投 与 で 上 昇 し た が そ の 効 果 は オ ス に お い て よ り 顕 著 で 性 差 が 現 わ れ た 。   第IV章CYP2C27分 子 種 の 性 ホ ! ヒ 垂 三 釜 よ び 成 長 ホ ル モZ! 三 圭 墨 発 現 調 節 の 解 析   CYP2C27の性 差発 現機 構に つ いて 検討 した 。 その 結果 、CYP2C27の発現 にテストステロン およびGHが関 与していることが明らかにな った。性腺摘除によルオスでは発現レベルが低下、

メ スで 上昇 し性 差 が消失した。そこにテストス テロンを投与すると雌雄共 に発現レベルは上 昇 した 。 脳下 垂体 摘除 によ っ ても 性腺 摘除 と同 様 に性 差が 消失 し た。 そこ にGHを1日2回7 日 間皮 下投 与す る と発現レベルが上昇し、ミニ ポンプで持続注入すると発 現レベルが低下し た 。以 上の 結果 は テス トス テロ ンと オ ス型GH分 泌が 促進 的 に、 メス型GH分泌が抑制的に作 用 する こと を示 し ている。テストステロンの影 響がラットで示されている 様に脳下垂体を介 した間接的な ものであるか否カ啼食討するため、脳下垂体摘除後にテストステ口ンを投与した。

CYP2C27発 現レ ペル は上 昇す る 傾向 にあ り、脳 下垂体を介さない肝細胞へ の直接的な効果あ るいは他の因 子を介する経路の存在が示唆 された。

  以上 、本 研究 に よって薬物代謝の性差がラッ ト、マウスに限られたもの ではなく他の動物

( ハム スタ ー) に も存在することが分子レベル で立証された。さらに、そ の調節機構はラッ ト 、マ ウス のも の と類似しており性差が種を越 えて共通の機構によって生 じていることが示 唆された。

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学位論文審査の要旨 主 査, 教授    鎌滝哲也 副 査    教授    横沢英良 副査   助教授   澤田   均 副査   助教授   横井   毅

学 位 論 文 題 名

ハムスター肝チトクローム P450 の性差の研究

薬 物 代 謝に お ける 性 差 は古 く から 知 ら れてい るが、薬 物代謝の 性差 の 報告はラ ットおよ び一部の 系統のマウ スに限ら れていた。しかし、

本 研究にお いてハム スターに おいても性 差がある ことを分子レベルで 確 証した。 本研究は 薬物代謝 の性差に関 して新し い概念を提供するも の であり、 以下に詳 述するよ うに極めて 優れた研 究成果であると評価 さ れる。

  1 ) Z ニ 蠱 , 丕 2 二 圭 と 里 ニ 蠱 E 壘 5Q̲a)cDNA:7 里 ニ 三 ZZ    ノ ーザンプ ロット分 析に用い る分子種 特異的な オリゴヌクレオチド プ ロ ー プ を 設 計 す る ため に cDNA クロ ー ニ ング を 行な い 、 4 種 のハ ム ス ター‐ CYP2C 分 子種(CYP2C25 、 2C26 、 2C27 、 2C28 )と 1 種のノヽムス タ − Cu 2E ( CM 2E1 )の一次 構造を明らかにした。 CIYP2C25 、 2C26 、 2C27 は互いにアミノ酸配列で 90 ワ。以上の相同性を示し、他の動物種の CYP2C 分子 種 と 比較 する とラット CYP2C6 に最も高 い相同性 を示した 。 他方、( XP2C28 は他のハムスター CYP2C 分子種には71 .4 〜 72 .6 ゲ。の低 い 相 同 性を 示 し 、他 の 動物 種 と の比 較 では ラ ッ ト CYP2Q4 に最 も高い 値 を 示 し た 。 ハ ム ス タ― CYP2E1 は CYP2C サ プ フ んミ リ ーに 比 ベ 概し て 高い動物 種間相同 性を示し た。それ らは全て ミクロゾー ム型P450 の 特徴を有していることが明らかとなった。

2) ハ ム ス 夕 一 チ ト ク ロ ー ム D450 の 醸 量 ! 三 茎 ! 士 墨 発 現 4 種のノヽ ムスター CYP2C cDNA クロ―ン が真に P450 を コードす るも

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ので ある か否 かを 確認す ると同時に、どのような酵素活性を有するか を明 らか にす るた め酵母 に発現させた。酵母に導入されたcDNA によっ て酵 母内 に外 来P450 が発 現し 、ハ ムス ター CYP2C 分子 種が酵素活性を 有す るP450 で ある ことが 立証された。また、酵素活性には分子種間で 差異 が認 めら れた 。現在 まで にハ ムス タ― CYP2C 分子 種の酵素活性に 関す る報 告は なく 、本研 究に よっ て、 4 種 全て がN‑ 脱 メチル化酵素活 性 を 、 CYP2C28 以 外 が ト ル ブ タ ミ ド 4 位 水 酸 化酵 素活 性を 、CYP2C25 がテストステロン16b‑ 水酸化酵素活性を示すことが初めて明らかになっ た。

  3) 堊 種 ! 三 主 ト ク ロ ー ム P450 堕 登 現 ヒ 釜 2 ヒ Q 鰹 盤    各分子種の・一次構造を基にオリゴヌクレオチドブロープを作製し、

ノーザンブロット分一析あるぃはSl ヌクレアーゼプロテクション分l 析に よっ て各 分子 種の 発現レ ベル の検 討を 行な った 。CYP2C27 は肝および 腎 で 発 現 が 認 め ら れ 約 5 倍 の 性 差 ( 雄 性 > 雌 性 ) が 存 在 し た 。 CYP2C28 は 肝の みで 発現 が認 めら れ有 意に 雄性 のレベ ルが高かった。

一 方 、 CYP2C25 とCYP2C26 は調 べた 限り では 肝の みに 発現 が認 められ 顕 著 な 性 差は な かっ た。 CYP2E1 の 発現 は肝 のみ なら ず腎 、肺 でも認 め ら れ た 。ま た 2 種 の 大 き さ の 異 な る mRNA が 転 写さ れて いる ことが 示さ れた 。CYP2C27 の性 差は 性成 熟に 伴っ て現 われる ことが示され、

性 差 発 現 に 性 ホ ´ レ モ ン 、 GH の 関 与 が 示 唆 さ れ た 。 CYP2C25 と CYP2C26 も 生 後 発 達 に 伴 う 発 現 レ ベ ル の 変 化 が 認 め ら れ た 。   4̲l̲CYPZC2 ヱ堕発現調節

   顕著な性差が.認められたCYP2C27 について、性ホルモン、GH によっ

て 性 差 発 現 が 調 節 さ れ て い る か 否 か を 検 討 し た 。性 腺 摘 除 に よ り

CYP2C27 の mRNA レ ベ ル は 雄 性 で は 低 下 、雌 性 で は上 昇し 、性 差が消

失した。´陸腺摘除ハムスターにテストステロンを投与すると雌雄でレ

ベル の上 昇が 認め れられ 、テ スト ステ ロン がCYP2C27 の発現に促進的

に 作 用 し て い る こ と が 示 さ れ た 。 脳 下 垂 体 摘 除 によ っ て 雄 性 で は

m RNA レベ ルが 低下 し雌 性で は上 昇し 性差 は消 失した 。脳下垂体摘除

ハ ム ス タ ー に GH を 雄 性 型 の 分 泌 様 式 で 投 与 す る とmRNA レ ベ ル は 上

昇 し 、 GH を雌 性 型の 分泌 様式 で投 与す ると 抑制 され た。 また 脳下垂

体 摘 除 ハ ムス タ ーに テス トス テロ ンを 投与 した とこ ろmRNA レ ベルの

上昇 が認 めら れ、 テスト ステロンが脳下垂体を介さず肝細胞に直接作

用しCYP2C27 の発現を促進する機構の存在あミ推測された。以上の結果

より 、ハ ムス ター CYP2C27 の ´陸 差が テス トス テロン およびGH の分泌

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様式の違いによって生じ、テストステロンの効果は脳下垂体を介する ものと、介さないものの二通りの発現機構があることが推測された。

   以上、本研究は本論文「ハムスター肝チトクロームP450 の性差

の研究」に含まれる研究成果は薬学における基礎および応用のいずれ

においても優れており、博士(薬学)の学位を受けるに充分値するも

のと認めた。

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