• 検索結果がありません。

日中語の特殊受動構文に関する認知言語学的研究 ―構文的特徴及び事態把握を中心に―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日中語の特殊受動構文に関する認知言語学的研究 ―構文的特徴及び事態把握を中心に―"

Copied!
425
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日中語の特殊受動構文に関する認知言語学的研究

―構文的特徴及び事態把握を中心に―

著者

李 麗萍

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第17070号

URL

http://hdl.handle.net/10097/63770

(2)

博 士 論 文

日中語の特殊受動構文に関する認知言語学的研究

構文的特徴及び事態把握を中心に―

李 麗萍

2015 年

(3)

目次

第 1 章 序 論 ... 1 1.1 研 究 動 機 ... 1 1.2 研 究 の 背 景 と 目 的 ... 4 1.3 研 究 対 象 及 び そ の 位 置 づ け ... 6 1.3.1 日 本 語 に お け る 研 究 対 象 ... 8 1.3.2 中 国 語 に お け る 研 究 対 象 ... 9 1.4 研 究 方 法 ... 12 1.5 本 論 文 の 構 成 ... 14 1.6 用 語 の 定 義 ... 15 第 2 章 先 行 研 究 及 び 研 究 課 題 ... 24 2.1 は じ め に ... 24 2.2 先 行 研 究 ... 24 2.2.1 使 役 受 動 構 文 に 関 す る 日 中 対 照 研 究 ... 24 2.2.2 新 型 受 動 構 文 に 関 す る 先 行 研 究 ... 27 2.2.3 間 接 受 動 構 文 に 関 す る 日 中 対 照 研 究 ... 30 2.2.4 ま と め ... 31 2.3 本 論 文 の 課 題 ... 33 2.3.1 本 論 文 の 立 場 ... 33 2.3.1.1 本 論 文 の 受 動 構 文 の 捉 え 方 ... 33 2.3.1.2 本 論 文 の 受 動 構 文 の 分 類 ... 35 2.3.1.3 本 論 文 で 扱 う 特 殊 受 動 構 文 ... 38 2.3.2 本 論 文 の 研 究 課 題 ... 60 第 3 章 本 論 文 の 理 論 的 枠 組 み ... 61 3.1 は じ め に ... 61 3.2 構 文 及 び 構 文 ス キ ー マ ... 61 3.3 使 用 基 盤 モ デ ル ... 63

(4)

3.4 プ ロ ト タ イ プ ... 65 3.5 事 象 構 造 ... 68 3.6 事 態 把 握 ... 70 3.7 ま と め ... 76 第 4 章 中 国 語 の 新 型 受 動 構 文 の 構 文 的 特 徴 及 び 事 態 把 握 ... 78 4.1 は じ め に ... 78 4.2 先 行 研 究 ... 79 4.2.1 新 型 受 動 構 文 の 構 文 的 特 徴 に 関 す る 先 行 研 究 ... 79 4.2.2 新 型 受 動 構 文 の 事 態 把 握 に 関 す る 先 行 研 究 ... 80 4.2.3 ま と め ... 81 4.3 新 型 受 動 構 文 の 構 文 的 特 徴 ... 82 4.3.1 新 型 受 動 構 文 の 形 式 的 特 徴 ... 82 4.3.2 新 型 受 動 構 文 の 意 味 的 特 徴 ... 86 4.3.2.1 新 型 受 動 構 文 の 意 味 分 類 ... 86 4.3.2.2 新 型 受 動 構 文 の 意 味 的 ネ ッ ト ワ ー ク ... 91 4.3.3 ま と め ... 94 4.4 新 型 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 94 4.4.1 認 定 類 の 事 態 把 握 ... 95 4.4.2 強 迫 類 の 事 態 把 握 ... 98 4.4.3 ま と め ... 102 4.5 お わ り に ... 103 第 5 章 日 中 語 の 使 役 受 動 構 文 に 関 す る 対 照 研 究 ... 105 5.1 は じ め に ... 105 5.2 先 行 研 究 ... 107 5.2.1 日 本 語 の 使 役 受 動 構 文 に 関 す る 先 行 研 究 ... 107 5.2.2 中 国 語 の 通 常 の 使 役 受 動 構 文 に 関 す る 先 行 研 究 ... 108 5.2.3 中 国 語 の 新 型 の 使 役 受 動 構 文 に 関 す る 先 行 研 究 ... 111 5.2.4 ま とめ ... 112 5.3 日 中 語 の 使 役 受 動 構 文 の 構 文 的 特 徴 ... 113 5.3.1 形 式的 特 徴 ... 113

(5)

5.3.2 意 味 的 特 徴 ... 120 5.3.2.1 強 制 類 ... 121 5.3.2.2 原 因 類 ... 123 5.3.2.3 指 示 ・許 容 類 ... 137 5.3.3 使 役 行 為 と 使 役 結 果 の 明 示 化 ... 140 5.3.4 ま と め ... 143 5.4 日 中 語 の 使 役 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 145 5.4.1 強 制 類 の 事 態 把 握 ... 145 5.4.2 原 因 類 の 事 態 把 握 ... 149 5.4.3 指 示 ・許 容 類 の 事 態 把 握 ... 152 5.4.4 ま と め ... 155 5.5 対 訳 デ ー タ に よ る 日 中 語 の 使 役 受 動 構 文 の 対 応関 係 ... 156 5.5.1 日 本 語 の 使 役 受 動 文 と そ の 中 国 語 訳 ... 157 5.5.2 中 国 語 の 使 役 受 動 文 と そ の 日 本 語 訳 ... 173 5.5.3 ま と め ... 183 5.6 お わ り に ... 184 第 6 章 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 に 関 す る 対 照 研 究 ... 190 6.1 は じ め に ... 190 6.2 先 行 研 究 ... 192 6.2.1 日 本 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 に 関 す る 先 行 研 究 ... 193 6.2.2 中 国 語 の 持 ち 主 受 動 文 に 関 す る 先 行 研 究 ... 200 6.2.3 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 に 関 す る 対 照 研 究 ... 202 6.3 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 の 構 文 的 特 徴 ... 205 6.3.1 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 に 見 ら れ る 所 有 関 係 ... 206 6.3.2 主 体 -活 動 関 係 に あ る 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 209 6.3.2.1 状 況 活 動 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 209 6.3.2.2 非 状 況 活 動 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 213 6.3.3 相 互依 存 関 係 に あ る 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 221 6.3.3.1 対 格 の 属 格 類 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 222 6.3.3.2 主 格 の 属 格 類 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 224

(6)

6.3.4 同 一 関 係 に あ る 中 国 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 225 6.3.5 そ の 他 の 所 有 関 係 に あ る 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構文 ... 228 6.3.5.1 全 体 -部 分 関 係 に あ る 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 228 6.3.5.2 本 体 -属 性 関 係 に あ る 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 239 6.3.5.3 一 般 所 有 関 係 に あ る 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 ... 243 6.3.6 ま と め ... 247 6.4 日 中 語 の 持 ち 主 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 249 6.4.1 全 体 -部 分 関 係 の 持 ち 主 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 249 6.4.2 主 体 -活 動 関 係 の 持 ち 主 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 251 6.4.3 同 一 関 係 の 持 ち 主 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 256 6.4.4 相 互 依 存 関 係 の 持 ち 主 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 257 6.4.4 ま と め ... 260 6.5 対 訳 デ ー タ に よ る 日 中 語の 持 ち 主 受 動 構 文 の 対 応 関 係 ... 262 6.5.1 日 本 語 の 持 ち 主 受 動 文 と そ の 中 国 語 訳 ... 263 6.5.2 中 国 語 の 持 ち 主 受 動 文 と そ の 日 本 語 訳 ... 293 6.5.3 ま と め ... 310 6.6 お わ り に ... 311 第 7 章 日 中 語 の 第 三 者 受 動 構 文 に 関 す る 対 照 研 究 ... 319 7.1 は じ め に ... 319 7.2 先 行 研 究 ... 322 7.2.1 日 本 語 の 第 三 者 受 動 構 文 に 関 す る 先 行 研 究 ... 322 7.2.2 日 中 語 の 第 三 者 受 動 構 文 に 関 す る 対 照 研 究 ... 325 7.3 日 中 語 の 第 三 者 受 動 構 文 の 構 文 的 特 徴 ... 327 7.3.1 形 式 的 特 徴 ... 327 7.3.2 意 味 的 特 徴 ... 333 7.3.3 ま と め ... 352 7.4 日 中 語 の 第 三 者 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 354 7.4.1 有 情 物 主 語 の 第 三 者 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 354 7.4.2 無 情 物 主 語 の 第 三 者 受 動 構 文 の 事 態 把 握 ... 356 7.4.3 ま と め ... 357

(7)

7.5 対 訳 デ ー タ に よ る 日 中 語 の 第 三 者 受 動 構 文 の 対応 関 係 ... 357 7.5.1 日 本 語 の 第 三 者 受 動 文 と そ の 中 国 語 訳 ... 358 7.5.2 中 国 語 の 第 三 者 受 動 文 と そ の 日 本 語 訳 ... 368 7.5.3 ま と め ... 373 7.6 お わ り に ... 374 第 8 章 結 論 ... 381 8.1 本 論 文 の ま と め ... 381 8.2 日 中 対 照 研 究 の 結 果 ... 389 8.3 本 論 文 の 意 義 及 び 今 後 の 課 題 ... 393 参 考 文 献 ... 397 謝 辞 ... 412

(8)

表目次

表 2-1 日本語受動構文の分類 ... 36 表 5-1 日中語の使役受動構文の形式的特徴における異同点 ... 113 表 5-2 中国語における通常の使役受動構文の事態把握 ... 155 表 5-3 日本語の使役受動文に対応する中国語訳 (365) ... 157 表 5-4 中国語の使役受動文に対応する日本語訳 (235) ... 173 表 6-1 各研究者の「持ち主受動構文」への分類 ... 193 表 6-2 主体-活動関係にある日中語の持ち主受動構文の異同点 ... 221 表 6-3 日本語の持ち主受動文に対応する中国語訳 (516) ... 263 表 6-4 中国語の持ち主受動文に対応する日本語訳 (116) ... 293 表 7-1 日中語の第三者受動文における述語動詞の成立条件 ... 342 表 7-2 日中語における第三者受動構文の述語動詞 ... 351 表 7-3 日本語の第三者受動文に対応する中国語訳 (121) ... 358 表 7-4 中国語の第三者受動文に対応する日本語訳 (17) ... 368

(9)

図目次

図 1-1 本論文での受動構文の分類及び研究対象の位置づけ ... 7 図 2-1 本論文での受動構文の分類及び研究対象の位置づけ (図 1-1 再 掲) ... 38 図 2-2 本論文での日本語の受動構文の分類 ... 39 図 2-3 本論文での中国語の受動構文の分類 ... 45 図 3-1 構文間の継承関係 ... 62 図 3-2 スキーマと事例の関係 ... 63 図 3-3 使用基盤モデル ... 64 図 3-4 メタファー ... 66 図 3-5 プロトタイプ及び放射状カテゴリー ... 67 図 3-6 ビリヤードボール・モデル ... 68 図 3-7 行為連鎖 ... 69 図 3-8 プロトタイプ的他動事態 ... 69 図 3-9 因果連鎖モデル ... 69 図 3-10 合成記号 lipstick maker の合成経路 ... 72 図 3-11 参照点関係 ... 76 図 4-1 中国語における受動構文の事象構造 ... 81 図 4-2 原因と結果への拡張 ... 91 図 4-3 新型受動構文の意味的ネットワーク ... 92 図 4-4 典型的な他動詞の意味表示 ... 93 図 4-5 自動詞の下位分類 ... 93 図 4-6 形容詞の表す非プロセス関係 ... 95 図 4-7 名詞の表す非プロセス関係 ... 95 図 4-8 普通 A 類の新型受動構文の事象構造 ... 96 図 4-9 特殊 A 類の新型受動構文の事象構造 ... 97 図 4-10 普通 B 類の新型受動構文の事象構造 ... 98 図 4-11 特殊 B 類の新型受動構文の事象構造 ... 99

(10)

図 4-12 名詞による普通 A 類の新型受動構文の事象構造 ... 101 図 4-13 形容詞による特殊 B 類の新型受動構文の事象構造 ... 102 図 5-1 中国語における使役・受動標識 ... 109 図 5-2 使役受動事態を表す複合的な構文の融合過程 ... 115 図 5-3 日本語の使役受動構文の融合過程 ... 117 図 5-4 中国語における通常の使役受動構文の融合過程 ... 118 図 5-5 中国語における新型の使役受動構文の融合過程 ... 119 図 5-6 日本語の使役受動構文の事象構造 (強制類) ... 146 図 5-7 中国語における通常の使役受動構文の事象構造 (強制類) ... 147 図 5-8 中国語における新型の使役受動構文の事象構造 (強制類) ... 148 図 5-9 日本語の使役受動構文の事象構造 (原因類) ... 149 図 5-10 中国語における通常の使役受動構文の事象構造(原因類) ... 150 図 5-11 中国語における新型の使役受動構文の事象構造 (原因類) ... 151 図 5-12 中国語における通常の使役受動構文の事象構造(指示類) ... 153 図 5-13 中国語における通常の使役受動構文の事象構造(許容類) ... 154 図 5-14 日中語の使役受動構文の拡張過程 ... 187 図 6-1 部分全体関係の被害受動文の参照点関係 ... 197 図 6-2 所有関係の被害受動文の参照点関係 ... 197 図 6-3 ターゲット拡張 :被害受動文の参照点関係 ... 198 図 6-4 所有傾斜 ... 207 図 6-5 日中語の持ち主受動構文に見られる所有関係の分類 ... 208 図 6-6 全体-部分関係にある日本語の持ち主受動構文の事象構造 ... 250 図 6-7 全体-部分関係にある中国語の持ち主受動構文の事象構造 ... 250 図 6-8 主体-活動関係にある日本語の持ち主受動構文の事象構造(状況活動 ) ... 251 図 6-9 主体-活動関係にある日本語の持ち主受動構文の事象構造(非状況活動) ... 252 図 6-10 主体-活動関係 にある中国語の通常の持ち主受動構文の事象構造 (非状況活動) 253 図 6-11 主体-活動関係にある中国語の新型の持ち主受動構文の事象構造 (一重受動) .... 254 図 6-12 主体-活動関係 にある中国語の新型の持ち主受動構文の事象構造 (二重受動) .... 255 図 6-13 同一関係にある中国語の持ち主受動構文の事象構造 ... 256 図 6-14 相互依存関係にある日本語の持ち主受動構文の事象構造 (対格の属格類 ) ... 257

(11)

図 6-15 相互依存関係にある中国語の持ち主受動構文の事象構造(対格の属格類 ) ... 258 図 6-16 相互依存関係にある日本語の持ち主受動構文の事象構造(主格の属格類 ) ... 259 図 6-17 相互依存関係にある中国語の持ち主受動構文の事象構造(主格の属格類 ) ... 260 図 6-18 日中語の持ち主受動構文の拡張過程 ... 315 図 7-1 日本語の被害受け 身文の事態把握 ... 323 図 7-2 日本語における有情物主語の第三者受動構文の事象構造 ... 355 図 7-3 中国語における有情物主語の第三者受動構文の事象構造 ... 355 図 7-4 日本語における無情物主語の第三者受動構文の事象構造 ... 356 図 7-5 中国語における無情物主語の第三者受動構文の事象構造 ... 357 図 7-6 日中語の第三者受動構文の拡張過程 ... 377 図 8-1 日中語母語話者の受動事態に対する把握の仕方の相違 ... 382 図 8-2 日中語の特殊受動構文の拡張過程 ... 384 図 8-3 日中語の特殊受動構文の拡張過 程(続) ... 385 図 8-4 日中語母語話者の行為連鎖の参与者に対する際立ちの選択の相違 ... 387

(12)

本論文の表記法

1.「 ○ 」 例 文 が文 法 的 に 正 し い 場 合 には 普 通 何 も つ け ず に 示す が 、 特 に 例 文 の 一 部を 文 法 的 に正 し く ない 形 と 比 較 す る 形 式 で示 す と き に は ○ を つ けて 文 法 的 に 正 し い 形 式を 示 す 。 2.「 ×」 そ の 例文 ま た は 例 文 の 一 部 が文 法 的 に 正 し く な い こと を 表 す 。 3.「 ?/??」 そ の 例文 ま た は 例 文 の 一 部 が、 全 く 文 法 的 に 正 し くな い わ け で は な い が 、不 自 然 で ある こ と を示 す 。 4.「 #」 そ の 例文 が 求 め ら れ て い る 意味 と 異 な っ て い る 表 現で あ る こ と を 示 す 。 5. { / } 例 文 の 一 部 に つ い て 、 比 較 す る 形 を 示 す 場 合 に 使 う 。 6.「 Ф」 ゼ ロ 、 す な わ ち そ こ に は 形 式 が な い こ と を 意 味 す る 。 7. 下 線 例 文 中 、 本 論 文 の 考 察 対 象 と な る 部 分 に は 下 線 を 引 く 。 8. 波 線 例 文 中ま た は 本 文 中 、 考 察 対象 と な る 部 分 の 他 に 、強 調 し た い 形 式 が あ る場 合 用 い る。 9. ( ) 本 論 文中 の 中 国 語 の 例 文 ・用 語 、 ま たは 日 本 語 の 例 文 に は 、 そ の 和 訳 、 ま たは 中 訳 を 後 続 の ( )内に入れて示す。「被」などの文法形式には基本的に初出の場合のみ、その語 彙 的 意味 を 付 す 。 10. [ ] 本 論 文中 の 例 文 の 出 所 を 示 す。 [ ]内「訳」がついているのはその中訳、または和訳の 出 所 を示 す 。「訳 」 が つ い て いな い の は そ の 中 訳 が 筆者 に よ る も の で あ る 。 11. そ の 他 の 記 号 に つ い て は 、 そ の 都 度 説 明 を 行 う こ と に す る 。

(13)

第1章 序 論

1.1 研究動機

日 本 人 の 中 国 語 学 習 者 に は (1)~(3)の よ う に 、 中 国 語 受 動 文 の 誤 用 が よ く 見 ら れ る (陶 琴 2007、 郭 栩 2013、 车 纯 莲 2012)。 (1) 小 时 候 我 { ×被 /○ 被 迫 }学 钢 琴 。 (子 供 の 頃 、 私 は ピ アノ を 習 わ さ れ ま し た ) [车 纯 莲 2012:17]<使 役 受 動 > (2) { ×我 被 弟 弟 抢 了 玩 具 /○ 我 的 玩 具 被 弟 弟 抢 了 } (私 は 弟 に 玩 具 を 奪 われ た ) [车 纯 莲 2012:18]<持 ち 主 > (3) { ×因 为 被 孩 子 来 /○ 因 为 孩 子 来 了 }, 简 直 没 法 看 书了 。 (子 供 に 来 ら れ て 、 勉強 で き な く な っ た ) [车 纯 莲 2012:16]<第 三 者 > 一 方 、 中 国 人 の 日 本 語 学 習 者 に は (4)~(6)のように、日本語受動文の誤用がよく見受けら れ る (佐治 1992、張麟声 2001、中村 2002、李彦 2009、宋春雨 2014)。そのうち、とりわけ 日 本 語の 使 役 受 動 文 、 持 ち 主受 動 文 、 及 び 第 三 者 受動 文 に 関 す る 誤 用 が 挙げ ら れ る 。 (4) 私 は こ の 事 に { ×感 動 さ れ た /○ 感 動 さ せ ら れ た } [佐 治 1992:234]<使 役 受 動 > (5) { ×田 中 さ ん の 財 布 は /○ 田 中さ ん は 財 布 を }す り に す ら れ た 。 [張麟声 2001:134]<持ち主> (6) 台 所 に は { ×腐 ら れ た /○ 腐 っ た }野 菜 し か 残 っ て い な い 。 [宋 春 雨 2014:22]<第 三 者 > そ し て、 日 本 語 母 語 話 者 に は不 自 然 に 聞 こ え る よ うな 使 役 受 動 文 や 間 接 受動 文 の 発 話は

(14)

中 国 で編 纂 さ れ 、広 く 使 用 され て い る 日 本 語 の 教 科書 に お け る 会 話 に さ え観 察 さ れ る (近藤 他 2008、池上他 2009)1。その 不 自 然 さ は、(7)~(9)に示すように、多くの場合文法的な問題 と い うよ り 、 母 語 話 者 に 不 自然 に 感 じ ら れ る 、 い わゆ る 日 本 語 の 「 好 ま れる 言 い 回 し 」を 逸 脱 して い る と 感 じ ら れ る もの で あ る (近藤他 2008:296)。すなわち、どの言語の話者であ っ て も、 あ る 一 つ の 事 態 を いく つ か の 違 っ た や り 方で 把 握 し 、 そ れ に 応 じて い く つ か の異 な る やり 方 で 言 語 化 す る 能 力を 有 し て い る が 、 た とえ 同 じ 事 態 で あ っ て もそ れ を 認 知 的に 異 な るよ う に 把 握 し 、 異 な るよ う に 意 味 づ け す る こと が で き る と い う 一 方で 、 ど の 把 握の 仕 方 によ る 意 味 づ け を も っ とも 自 然 に 感 じ 、 も っ とも 好 ん で 採 る か と い う点 で は 、 言 語が 異 な ると 差 が あ る と い う こ とな の で あ る2(池 上 他 2009:18-19)。 (7) 私 た ち は そ の 映 画 を 見 て { ×感 動 さ せら れ /○ 感 動 し }ま し た 。 [近 藤 他 2008:299]<使 役 受 動 > (8) 教 師 : 元 気 が あ り ま せ ん ね 。 ど う し ま し た か 。 タ ン :満 員 電 車 で { ×私の財布が /○財布を }取られました。 教 師 :そ う で し た か…。 [池 上 他 2009:90]<持 ち 主 > (9) リ ー :昨 日 、 頭 が 痛 く て い で 横 に な っ て い た ん で すが 、外 で 道 路工 事 を { ×始 め て / ○ 始 めら れ て }、寝られませんでした。 山 田 :あ 、 そ う で し た か 。 [池 上 他 2009:92]<第 三 者 > 1 以 上 の 研 究 は 、 中 国 で 編 纂 さ れ た 日 本 語 教 科 書 の 一部 に 不 自 然 な 受 動 文 が 存 在 す る こ と を 指 摘し て い る が 、 日 本 語 教育 の 立 場 か ら 、 あ る 特定 の 教 科 書 に 出 て く る受 動 文 す べ て (使 役 受 動 文 も 含 む )を 精 査 し 、 不 自 然 な 受 動 表 現 が あ る か 否 か 、 ど れ ぐ ら い 存 在 す る の か を 明 らか に し た 研 究 は な い よう で あ る 。 そ こ で 、 筆者 は 、 中 国 で 編 纂 さ れ、 日 本 語 を (主) 専 攻 とし て い る 学 生 に 対 し て広 く 使 用 さ れ て い る 日本 語 教 科 書 『 新 編 日 語(1-4)』(改訂版 周 平, 陈小芬 2009-2011 上海外语教育出版社)を調査対象とし、その中に使われている受動 表 現 、特 に 近 藤 他 (2008)、池上他(2009)が指摘したような日本語母語話者にとって不自然 に 感 じら れ る 例 文 が 存 在 す るか ど う か を 調 べ た 。 その 結 果 、『 新 編 日 語 』 には 、 先 行 研 究 で 指 摘さ れ た 不 自 然 な 使 役 受動 文 ・持ち 主 受 動 文・第 三 者 受 動文 は 存 在 し な いこ と が わ か っ た 。 詳し く は 、 李 麗 萍 (2015)を参照のこと。 2 日 中 事 態 把 握の 相 違 に 関 し て 、 日 本 語 母 語 話 者 は <主観 的 把 握 >を 志 向 す る 傾 向 が 強 い の に 対 し、 中 国 語 母 語 話 者 は <客観的把握>に傾く傾向が強いという従来の見方がある。こ れ に つい て 、 詳 し く は 池 上 (2009a)、近藤他(2007,2009,2010,2014)、梁爽(2009)、守屋他 (2012)、 王 忻 (2012)な ど を 参 照 の こ と 。

(15)

(1)-(9)の よ う な 受 動 構 文 に 関 す る 誤 用 を 見 る と 、 次 の よ う な 疑 問 が 浮 か ぶ 。 中 国 語 に は 本 当 に日 本 語 の 使 役 受 動 構 文、 間 接 受 動 構 文 に 対 応す る 受 動 構 文 が 存 在 しな い の か 、 存在 す る とす れ ば 、 形 式 的 及 び 意味 的 に 両 言 語 は い か なる 共 通 点 と 相 違 点 を 持っ て い る の であ ろ う か。 同 じ 受 動 事 態 で あ って も 、 日 本 語 母 語 話 者と 中 国 語 母 語 話 者 は 必ず し も 同 じ タイ プ の 受動 構 文 に よ っ て 表 さ ない 。 受 動 事 態 に 関 し て、 日 本 語 母 語 話 者 と 中国 語 母 語 話 者は い か なる<好まれる言い回し>を有し、そのような好まれる表現にどのような把握の仕方の 相 違 を反 映 す る の か に つ い ては 十 分 に は 検 討 さ れ てい な い 。 ま た 、中 国 語 に お い て (10)-(11)のように、2008 年から見られるようになった、主に自動 詞 か ら構 成 さ れ た 「 新 型 受 動構 文 」 と 呼 ば れ る も のは あ る が 、 そ の 中 で 、自 動 詞 に よ る受 動 構 文 は 日 本 語 に 特 有 と 言 わ れ る 自 動 詞3の 第 三 者 受 動 構 文 と は 本 質 的 に 同 じ も の な の か 、 両 者 は事 態 把 握 の 面 に お い ては ど の よ う な 相 違 が ある の か 、 な ど の 問 題 が問 わ れ な け れば な ら ない 。 (10) 被 自 杀 其 实 就 是 他 杀 。 受 動 自殺する 実は 絶対に である 他殺 (自 殺 し た こ と に さ れた と い う 意 味 の 「被 自 殺 」と は 実は 他 殺 で あ る ) [名 城 新 闻 网 2014-05-16]<新 型 受 動 > (11) 我 是 在 不 明 真 相 的 情 况 下 “ 被 就 业 ” 的 ! 私 であ る で 真 相 を 知 らな い の 状 況 下 受動 就職する の (本 当 の こ と を 何 も 知 ら さ れ な い ま ま (就 職 し て い な い が )就 職 し て い る こ と に さ れた の だ ) [南 方 都 市 报 2009-07-20]<新 型 受 動 > 典 型 的な 他 動 詞 の 受 動 構 文 ある い は 直 接 受 動 構 文 に対 し て 、 以 上 三 種 類 の受 動 構 文 、い わ ゆ る日 中 語 の 使 役 受 動 構 文と 間 接 受 動 構 文 、 及 び中 国 語 の 新 型 受 動 構 文を 、 本 論 文 では 「 特 殊受 動 構 文 」 と 一 括 し て呼 ぶ こ と に す る 。 こ うい っ た 特 殊 受 動 構 文 はプ ロ ト タ イ プで あ る 直接 受 動 構 文 か ら の 拡 張で あ る と 見 な す こ と がで き る と 考 え ら れ る 。そ れ で は 、 それ 3 日 中 語 に お いて 、 自 動 詞 と 認 定 す る 基 準 は 異 な る 。詳 し く は 相 原 他 (1990)を 参 照 の こ と 。

(16)

ら の 拡張 は ど の よ う に 事 態 把握 の レ ベ ル で 動 機 付 けら れ て い る の か 。 言 い換 え れ ば 、 直接 受 動 構文 か ら 使 役 受 動 構 文 、間 接 受 動 構 文 及 び 新 型受 動 構 文 へ と 拡 張 で きる の は な ぜ であ ろ う か。 こ の よう に 、 日 中 語 の 特 殊 受動 構 文 が 習 得 し に く く、 誤 用 さ れ や す い 現 状か ら 、 こ れら の 構 文的 特 徴 及 び 事 態 把 握 にお け る 差 異 を 解 明 し 、そ の 成 果 を 日 本 人 の 中国 語 学 習 者 及び 中 国 人の 日 本 語 学 習 者 の 学 習に 役 立 て る こ と が 望 まれ る 。

1.2 研究の背景と目的

ヴ ォイ ス は 一 つ の 出 来 事 をど の 参 与 者 か ら 捉 え るか に 関 わ る 文 法 カ テ ゴリ ー で あ る が、 受 動 態4がそ の 典 型 的 な 一 つ とさ れ て き た 。受 動 構 文に 関 し て 、こ れ ま で 日本 語 に お い て も 中 国 語に お い て も 、 多 く の 研 究 者 に よ っ て さ ま ざ まな 分 析 が な さ れ て き てお り 、 い ず れに し て も受 動 構 文 は 能 動 構 文 と対 立 し た 文 型 と し て 捉え ら れ て き た。し か し、工 藤(1990)、林 青 樺 (2009)、志波(2015)、王力(1944,1954,1958)が指摘するように、日中語において対立関係 に あ る能 動 文 を 想 定 し に く く、 し か も 従 来 の 基 準 によ っ て 間 接 受 動 文 に はな ら な い 受 動文 が 存 在す る 。 こ の よ う な 言 語事 実 を 無 視 し て 、 日 中語 の 受 動 構 文 に 関 す る研 究 の ほ と んど が 、 対立 す る 能 動 文 の 有 無 を基 準 と す る 二 分 法 に 縛ら れ 、 受 動 文 の 主 語 は動 作 対 象 だ とい う プ ロ ト タ イ プ 的 な 考 え 方 で 捉 え ら れ て き た (陸艺娜 2011:9)。受動構文の日中対照研究は そ の よう な 捉 え 方 を 援 用 し 、日 本 語 の 使 役 受 動 構 文及 び 中 国 語 に お い て 日本 語 の 使 役 受動 構 文 と間 接 受 動 構 文 に 対 応 する 受 動 構 文 の 存 在 が 等閑 視 さ れ て き た 。 こ のよ う な 考 察 方法 で は 、日 中 語 の 受 動 構 文 に おけ る 異 同 点 を 正 確 に 確認 で き る と は 考 え ら れな い 。 受 動構 文 に 関 し て は 、 日 本語 に お い て 構 文 的 特 徴の み な ら ず 、 事 態 把 握の 面 か ら の 研究 (堀 川 他 2003、 町 田 2004,2005,2007,2011、 谷 口 2005、 林 青 樺 2009)も 少 な い も の の 見 ら れ る 。 一方 、 中 国 語 に お い て は、 構 文 的 特 徴 か ら の 研究 を 除 外 す れ ば 、 事 態把 握 か ら の 考察 は 極 めて ま れ で あ る (张媛 2012)。さらに、日中語の対照研究においては、 そのほとんどは 受 動 構文 の 構 文 的 特 徴 に 関 する 研 究 で あ り 、 事 態 把握 と 関 連 し て 分 析 す るも の は 極 め て少 な い (星 2011、陸艺娜 2011、王黎今 2012)。よって、従来の研究は、文法的あるいは意味的 に 問 題が あ る 受 動 文 に つ い ては 説 明 で き る が 、 文 法的 に も 意 味 的 に も 誤 りと は 言 え な い受 4 受 動 態 に は 多く の 研 究 の 蓄 積 が あ る 。 例 え ば 、 Stein(1979)、 Shibatani(1985)、

(17)

動 文 の不 自 然 さ に 対 し て は 、適 切 な 説 明 を 与 え る こと が で き な い 。 こ の よう に 、 受 動 構文 に 関 する 研 究 の 成 果 を 教 育 の場 で 生 か す た め に 、 単に 当 該 構 文 の 構 文 的 特徴 の 相 違 を 解明 す る こと だ け で は 不 十 分 で あり 、 母 語 話 者 と 学 習 者そ れ ぞ れ の 事 態 把 握 のあ り 方 、 つ まり 意 味 づけ か ら 、 言 語 化 に 至 る過 程 、 及 び 両 者 に お ける 違 い ま で を 明 ら か にし な け れ ば なら な い 。 日 中語 の 受 動 構 文 に 関 す る対 照 研 究 に お い て は 、そ の ほ と ん ど が 直 接 受動 構 文 に 関 する も の であ り 、 使 役 受 動 構 文 と間 接 受 動 構 文 に 関 す る対 照 研 究 は ほ と ん ど なさ れ て い な い。 ま た 、こ れ ま で の 日 中 対 照 研究 に お け る 使 役 受 動 構文 と 間 接 受 動 構 文 の 考察 は 、 そ の ほと ん ど が構 文 的 特 徴 に 関 す る もの で あ り 、 日 本 語 母 語話 者 と 中 国 語 母 語 話 者と の 受 動 事 態に 対 す る事 態 把 握 の 相 違 に は あま り 言 及 し て い な い 。ま た 、 構 文 的 特 徴 に 関す る 先 行 研 究の 中 で も、 検 討 す べ き 点 が 多 く残 っ て い る 。 例 え ば 、中 国 語 に 日 本 語 の 使 役受 動 文 に 対 応す る 文 型は な い と い う 定 説、中 国 語 に お ける 自 動 詞 の 第三 者 受 動 文 の 成 立 条 件に 関 す る 仮 説 、 及 び 日本 語 に 中 国 語 の 第 一 人称 行 為 主 体 に よ る 受 動文 に 対 応 す る 受 動 表 現が 存 在 し な いと い う 視点 制 約 な ど で あ る 。 本 論 文は 以 上 の よ う な 問 題 意識 の 上 に 立 ち 、 日 本 語・中 国 語 教育 へ の 応 用 を視 野 に 入 れ、 実 例 に基 づ き 、 日 中 語 の 特 殊受 動 構 文 を 研 究 対 象 とす る 。 従 来 の 対 照 研 究と 異 な り 、 認知 言 語 学の 立 場 か ら 、 受 動 を 再定 義 し 、 日 中 語 の 受 動構 文 の 体 系 を 捉 え 直 す。 そ の 上 で 、日 中 語 にお け る 特 殊 受 動 構 文 の構 文 的 特 徴 を 対 照 観 察す る こ と に よ り 、 そ れぞ れ の 事 態 把握 の 相 違を 明 ら か に す る 。 本 論 文の 目 的 は 以 下 の 三 つ であ る 。 1) 日 中 語 の 特 殊 受 動 構 文 の 構 文 的 特 徴 を 明 ら か に す る 。 2) 特 殊 受 動 構 文 の 構 文 的 特 徴 に 反 映 す る 日 中 語 の 各 構 文 の 事 態 把 握 の 特 徴 を 解 明 し 、 事 態 把 握 の レ ベ ル で 典 型 的 な 直 接 受 動 構 文 か ら 特 殊 受 動 構 文 へ と 拡 張 す る 動 機 付 け 及 び その 拡 張 過 程 を 明 ら か にす る 。 3) 同 じ 事 態 を 捉 え る 際 、 日 中 語 母 語 話 者 は ど の よ う な <好 ま れ る 言 い 回 し >を 有 し 、 そ の よ うな<好まれる言い回し>がいかなる事態把握の相違を表すのかを解明する。 ま た 、考 察 す る 際 に 体 系 性 、 及 び 実 用 性 を 重 視 す る。 こ こ で の 「 体 系 性 」と は 、 日 中語 の 受 動構 文 の 体 系 全 体 を 考 慮に 入 れ る こ と を い う 。研 究 の 対 象 は 直 接 受 動構 文 を 除 外 した

(18)

特 殊 受動 構 文 で は あ る が 、 事態 把 握 の レ ベ ル で 直 接受 動 構 文 か ら 特 殊 受 動構 文 へ と ど のよ う に 拡張 す る の か 、 日 中 語 の受 動 構 文 の 体 系 に お いて 、 特 殊 受 動 構 文 の 三種 類 は い か なる 位 置 づけ に な っ て い る の か 、と い っ た 問 題 を 解 明 する た め 、 直 接 受 動 構 文と 関 連 し つ つ、 日 中 語の 特 殊 受 動 構 文 に つ いて 考 察 を 行 う 。 「 実 用性 」 と は 、 本 論 文 の 成果 が 日 本 人・中 国 人 向 けの 中 国 語 ・日 本 語 教 育 に応 用 で き る こ と をい う 。 前 述 し た よ う に、 単 に 日 中 語 の 受 動 構文 の 構 文 的 特 徴 の 相 違を 解 明 す る こと だ け で は (1)-(9)の よう な誤 用に 対し て充 分に 説明 でき ず、 母語 話者 と学 習者 それ ぞれ の 事 態 把 握の あ り 方 を 解 明 し な けれ ば な ら な い 。 そ こ で、 本 論 文 は 日 中 対 訳 コー パ ス を 十 分に 利 用 し 、 統 計 デ ー タ を も っ て 同 一 の 事 態 に 対 し て 日 中 語 母 語 話 者 に お け る <好 ま れ る 言い 回 し>の選択の相違を考察し、それに反映する事態把握の傾向を 明らかにする。こういった 研 究 成果 を 日 本 人・中 国 人 向 けの 中 国 語・日 本 語 教 育 にお い て 生 か し て い た だき た い と 思 う。

1.3 研究対象及びその位置づけ

日 中語 対 照 研 究 に お い て は、 受 動 構 文 、 特 に 典 型的 な 他 動 詞 の 直 接 受 動構 文 に 関 す る研 究 は 、数多 く 行 わ れ て い る が 、持 ち 主 受 動 構 文 と 第三 者 受 動 構 文 と い っ た間 接 受 動 構 文5 関 す る論 述 は ほ と ん ど な く (中島 2007:80)、特に使役受動構文に関する考察は極めて少ない。 ま た 、2008 年に中国語に現れた、主に自動詞から構成される新型受動構文は、日本語に特 有 と 言わ れ る 自 動 詞 の 間 接 受 動 構 文 と の 対 照 研 究 を行 う も の は 管 見 の 限 り存 在 し な い 。 し た がっ て 、 本 論 文 は 、 日 中語 の 受 動 構 文 の 全 体 では な く 、 そ の う ち 、 特に 検 討 の 余地 が 大 いに 残 る も の 、 す な わ ち、 日 中 語 の 使 役 受 動 構文 と 間 接 受 動 構 文 、 及び 中 国 語 の 新型 受 動 構文 と い う 三 種 類 を 研 究対 象 と し 、 日 中 対 照 の角 度 か ら そ れ ら の 構 文的 特 徴 及 び 事態 把 握 につ い て 考 察 を 試 み る 。 本 論 文は 、 受 動 構 文 が 能 動 構文 と 対 立 し た 文 型 で ある と い っ た 捉 え 方 で はな く 、 行 為連 鎖 の エネ ル ギ ー 源 で は な く 、エ ネ ル ギ ー 源 か ら の エネ ル ギ ー を 直 接 ま た は間 接 的 に 受 ける 5 日 本 語 に お いて 、 能 動 文 の 対 応 関 係 の 有 無 と い う 形式 的 側 面 に よ る 二 分 類 、 つ ま り 「 直 接 受 動文 」 と 「 間 接 受 動 文 」は よ く 知 ら れ て い る 。ま た 、「被 害 ・迷 惑 」 の意 味 が 含 意 する か 否 かと い う 意 味 的 側 面 に よっ て 、 以 上 の 二 種 類 はぞ れ ぞ れ 「 中 立 受 動 文」、「 被 害 受 動 文 」 と呼 ば れ る こ と も あ る (谷口 2005:296-297)。谷口(2005:307)によると、中立受動文の 持 つ 意味 的 機 能 を プ ロ ト タ イプ と 考 え 、 被 害 受 動 文は プ ロ ト タ イ プ か ら の拡 張 で あ る とみ な し 、そ の 拡 張 は 事 態 解 釈 のレ ベ ル で 動 機 付 け ら れて い る と い う 。

(19)

も の をも っ と も 際 立 つ 参 与 者 (tr)として選択し、そのものに生じた変化過程または結果状態 を 捉 える 認 知 的 営 み で あ る とい う 立 場 を 取 る 。 そ れゆ え 、 対 応 す る 能 動 文を 持 つ か ど うか に よ る従 来 の 受 動 構 文 の 分 類と 異 な る 分 類 方 法 を 考え な け れ ば な ら な い 。本 論 文 で は 、ま ず 構 文的 特 徴 を 考 察 し 次 に 事態 把 握 の 特 性 を 探 る ため 、 主 語 の 意 味 役 割 及び 構 文 的 特 徴を 基 準 にし て 日 中 語 の 受 動 構 文を 再 定 義 し 、 再 分 類 する こ と に す る 。 本 論 文で の 日 中 語 の 受 動 構 文の 分 類 、 研 究 対 象 の 位置 づ け 、 及 び 従 来 の 分類 と の 対 応関 係 を 図に 示 す と 、 次 の よ う にな る 。 図 1-1 本論文での受動構文の分類及び研究対象の位置づけ す な わち 、 典 型 的 な 動 作 対 象主 語 の 直 接 受 動 構 文 を 受 動 構 文 の 全 体 か ら 除外 し た も のが 本 論 文の 対 象 と な る 。 後 述 する よ う に 、 中 国 語 の 新型 受 動 構 文 は 大 き く 認定 類 と 強 迫 類に 分 け られ 、 そ の う ち 、 強 迫 類は 日 本 語 の 使 役 受 動 構文 、 認 定 類 は 日 本 語 の持 ち 主 受 動 構文 に 対 応す る も の で あ る 。 つ まり 、 従 来 の 受 動 構 文 に関 す る 分 類 で は 、 使 役受 動 構 文 、 持ち 主 受 動構 文 及 び 第 三 者 受 動 構文 と の 三 つ の タ イ プ が 本 論 文 の 考 察 対 象 に なる 。 詳 し く は第 2 章を 参 照 の こ と 。 本 節 で は 、 例 を 挙 げ な が ら 簡 単 に 紹 介 す る こ と に と どめ る 。 使 役 受 動 構 文 (新 型 の 強 迫 類 を 含 む ) 持 ち 主 受 動 構 文 (新 型 の 認 定 類 を 含 む ) 2.1 行 為 主 体 主 語 の 受 動 構 文 2.2 非 行 為 主 体 主 語 の 受 動 構 文 (間 接 受 動 構 文 ) 1.動 作 対 象 主 語 の 受 動 構 文 (典 型 ) 対 象 外 2.非 動 作 対 象 主 語 の 受 動 構 文 (特 殊 ) 研 究 対 象 直 接 受 動 構 文 第 三 者 受 動 構 文

(20)

1.3.1 日本 語に おけ る研究対 象

ま ず、 日 本 語 に お い て 使 役受 動 文 は 意 味 的 に 強 制と 原 因 と 二 分 す る こ とが で き る 。 以下 の よ うな 例 文 が 本 論 文 の 考 察対 象 に な る 。 (12) テ レ ビ を 見 て い た の に お 使 い に 行 か さ れ た 。 [庵 他 2001:133] (13) 植 物 は 環 境 に よ っ て そ の 形 を 変 化 さ せ ら れ て し ま うと い う の も 多 く あ り ま す 。 [丁 2005:228] ま た、 持 ち 主 受 動 文 は 主 語 名 詞 と 述 語 動 詞 に 関 わる 名 詞 句 ま た は 名 詞 節と が 広 義 的 な所 有 関 係に あ る 受 動 文 で あ る 。持 ち 主 受 動 文 は 所 有 関係 に よ っ て 詳 し く 下 位分 類 す る こ とが で き る。 こ れ に つ い て 、 第 6 章で論じる。 (14) 次 郎 は 頭 を 太 郎 に 殴 ら れ た 。 [仁 田 1997:231] (15) 私 は 、 花 子 に あ め を 口 の 中 へ 押 し 込 ま れ た 。 [山 内 1997:122] (16) 太 郎 は 母 に 死 な れ た 。 [山 内 1997:122] (17) 彼 は (中 略 )だ か ら 、 昨 日 戻 っ た と こ ろ を 殺 さ れ た 、 と い う こ と に な り ま す か ね 。 [仁 田 1992:327] (18) 隣 の 家 が 突 風 に 屋 根 を 吹 き 飛 ば さ れ た 。 [影 山 2006:205] こ こ で 注 意 す べ き な の は 、 従 来 第 三 者 受 動 構 文 の 典 型 例 と し た (16)の よう な 例文 は 所有 関 係 (太 郎 の母 )が 存在 する ため 、 本論 文で は 第三 者受 動 構文 では な く、 持ち 主 受動 構文 と す る とこ ろ で あ る 。 ま た 、 (18)のような無情物主語の持ち主受動文も考察の対象にする。 さ らに 、 第 三 者 受 動 文 は 主語 名 詞 と 述 語 動 詞 に 関わ る 名 詞 (句/節)の間に広義的な所有関 係 が 存在 し な い 受 動 文 で あ る。(20)のように無情物 主語のものもあることに注意されたい。

(21)

(19) 私 は 彼 に 先 に 論 文 を 発 表 さ れ た 。 [仁 田 1997:231] (20) 風 に 吹 か れ て 、 ひ ら ひ ら し て い る 貼 紙 も あ る 。 [対 訳 黒 い 雨 ]

1.3.2 中国 語に おけ る研究対 象

中 国 語 に お い て 、 ま ず 新 型 受 動 構 文 が 対 象 と な る 。 新 型 受 動 文 に は 上 に 挙 げ た (10)-(11) の よ うな 自 動 詞 に よ る も の 以外 に 、 他 動 詞 、 形 容 詞及 び 名 詞 に よ る も の もあ る 。 こ う いっ た 新 型受 動 文 は 否 定 の 意 味 、元 の 述 語 動 詞 及 び 動 作主 が 明 示 さ れ て い な いの が 特 徴 的 であ る 。 意味 的 に 大 き く 非 事 実 性を 表 す 認 定 類 と 非 意 図性 を 表 す 強 迫 類 と の 二種 類 に 分 け られ る 。 詳し く は 第 4 章を参照のこと。 (21) 手 术 台 上 动 手 脚 患 者 无 奈 被 消 费 手 術 台 上 小細工をする 患者 仕方ない 受動 消費する (手 術 時 に (医 者 が )余 計 な こ と を す る た め 、 患 者 は (そ う 望 ん で い な い の に )し か た な く 出 費を 強 い ら れ る ) [广 东 电 视 台 2013-09-06]<他 動 詞 非 意 図 性 > (22) 中 国 人 又 一 次 “ 被 幸 福 ” 了 吗 ? 中 国 人 また 一度 受動 幸福 完了 のか (中 国 人 は ま た (外 国 の メ デ ィ ア に よ っ て 、 幸 福 で は な い の に )幸 福 で あ る こ と に さ れ た の たろ う か ) [腾 讯 网 2014-11-27]<形 容 詞 非 事 実性 > (23) 鲁 能 终 于 没 有 “ 被 冠 军 ”, 万 幸 万 幸 。 チ ー ム名 とうとう ない 受動 優勝者 幸甚 幸甚 (魯 能 チ ー ム が 最 後 に 受 動 的 に優 勝 者 に な っ て い な い の が 、 誠 に 幸 い で あ っ た ) [大 众网 生 活 日 报 2010-10-28]<名 詞 非 意 図 性 > ま た、 使 役 受 動 文 は 外 的 な使 役 者 の 影 響 に よ っ て、 主 語 指 示 物 が 何 ら かの 行 為 を 行 う、

(22)

ま た はあ る 状 態 に な る こ と を表 す 受 動 文 で あ る 。 例え ば 、 以 下 の よ う な もの で あ る 。 (24) 东 大 同 学 刚 刚 游行 回 来 , 就 被 集 合 去 听 東 北 大学 学生 したばかり デモ 帰ってくる すぐに 受動 集合する 行く 聞く 学 校 当局 的 堂皇 的 训话…… 学 校 当局 の 堂々としている の 訓話 (東 北大 の 学 生 は 、デ モ か ら 帰っ て く る と 、す ぐ に 集合 さ せ ら れ て、学 校 当 局 の 、も っ た いぶ っ た 訓 話 を 聞 か さ れた ) [対 訳 青 春 之歌 ] (25) 方 丹 被 自 己 美 好 的 想象 激 动 着 , 亮 闪 闪 的 眼 睛 里 现 人 名 受動 自分 美しい の 想像 感激する 持続 きらきら光る の 目 に 浮べる 出 了 泪 光。 て 来 る 完了 涙 光 (方 丹は 自 分 の 夢 に 心 を 動 か され て 涙 を 浮 か べ た ) [対 訳 轮 椅 上 的 梦 ] (26) 倪 藻 走 进 一 个 宽 敞 的 、 同 样 昏 暗 的 客厅 , 他 被 让 人 名 歩く 入る 一つ 広々としている の 同様 暗い の 客間 彼 受動 使役 坐 在 一个 不 新 的 暗 红色 沙发 上。 座 る に 一つ ない 新しい の 暗い 赤色 ソファ 上 (倪 藻は 広 々 と し た、や は り ほ の 暗 い 客 間 に 人 り 、彼 は 古 び た エ ン ジ 色 の ソフ ァ に 案 内 さ れた ) [対 訳 一 部 修 正 活 动 变 人 形 ] さ らに 、 持 ち 主 受 動 文 は 主語 名 詞 と 述 語 動 詞 に 関わ る 名 詞 句 ま た は 名 詞節 と が 広 義 的な 所 有 関係 に あ る 受 動 文 で あ る。 (27) 我 被 他 抱 着 两 只 腿 , 动 弹 不 得 。 我 呆 呆 地 看 着 他 。 私 受動 彼 抱える 持続 両足 動く できない 私 ぼんやりと 見る 持続 彼 (両 足に し が み つ か れ て 動 け ない ま ま 、 私 は ぼ ん や りと 彼 を 見 て い た ) [対 訳 天 云 山 传 奇 ]

(23)

(28) 彰 被 他 的 儿 子 把 自 己 的 家 产 花 干 净 了。 人 名 受動 彼 の 息子 処置 自分 の 家産 使う すっかり 完了 (彰 さん は 子 供 に 自 分 の 家 の 財産 を す っ か り 使 い 果 たさ れ た ) [黒 田 訳 2013:390] (29) 阿 巧 不 敢 做 声 , 心里 却 万 分 怔 忡 … … 还 是 刚 才 人 名 する勇気がない 立てる 声 心の中 ところが 極めて 動悸 それとも 先 被 她 看见 了 她 对 阿寿 做 了 两次 的 手势。 受 動 彼女 見える 完了 彼女 に 人名 する 完了 二回 の 手真似 (阿 巧は 震 え 上 っ て 、 声 も 出 せな か っ た … … そ れ と も、 さ っ き 阿 寿 に 手 真 似 を し た の が 見つ か っ た の か 、 ど ち らと も 見 当 が つ か な か った ) [対 訳 霜 叶 红似 二 月 花 ] (30) 苹 果 被 削 了 皮 。 り ん ご 受動 剥く 完了 皮 (リ ンゴ は 、 皮 を 剥 か れ た ) [于 康 訳 2012:2] こ こで 注 意 す べ き な の は 、(28)のような「把」を伴う形式のもの、及び (30)のような無情 物 主 語の も の も あ る こ と で ある 。 最 後 に、 第 三 者 受 動 文 は 主 語 名 詞 と 述 語 動 詞 に 関 わる 名 詞 (句/節)の間に広義的な所有関 係 が 存在 し な い 受 動 文 で あ る。(32)のように無情物主語のものもあることに注意されたい。 (31) 我 坐 庄 , 又 被 他 自摸 了。 私 親になる また 受動 彼 つもる 完了 ((マ ー ジ ャ ン で )親 に な り 、 ま た 彼 に つ も ら れ た ) [C.-T. James Huang 他 2009:140] (32) 秦 始 皇 惹 了 孟 姜 女 , 刚 修 的 长 城 被 秦 始皇帝 逆らう 完了 人名 したばかり 修築する の 万里の長城 受動 哭 倒 了。 泣 く 倒れる 完了 (秦 の始 皇 帝 が 孟 姜 女 を 怒 ら せた た め 、修 築 さ れ た ばか り の 万 里 の 長 城 は 彼女 に 泣 か

(24)

れ て 倒れ た ) [月 亮 岛 教 育 2015-04-17]

1.4 研究方法

話 者 の 事 態 に 対 す る 把 握 は 、 そ の 話 者 が 使 用 す る 言 語 表 現 か ら 探 る こ と が で き る (中 村 2004:5)。し た が っ て 、話 者 の 事 態 把 握 を 明 ら か に す る 前 に 、話 者 の 使 用 す る 言 語 表 現 の 特 徴 を 解明 し な け れ ば な ら な い。 本 論 文は 、 日 中 語 の 特 殊 受 動構 文 の 構 文 的 特 徴 及 び事 態 把 握 に お け る 相 違を 明 ら か にす る と いう 目 的 に 従 い 、 以 下 のよ う な 手 順 で 研 究 を 進め て い く 。 ま ず 、 両 言語 に お け る 特殊 受 動 表 現 の 形 式 的 ・意 味 的 相 違 を 考 察 し 、 そ の 構 文 的 相 違 に 反 映 す る 事 態 把 握 の 差 異 を 解 明 す る。 次 に 、 日 中 対 訳 コ ーパ ス の デ ー タ に 基 づ き、 日 中 語 の 特 殊 受 動 構文 の 対 応 関 係を 分 析 し 、日 中語 母 語 話 者 の 同一 事 態 に 対 す る <好まれる言い回し>を考察し、そのような表 現 の 違い に 反 映 す る 把 握 の 仕方 の 差 異 を 解 明 す る 。 本 論 文で の 中 国 語 の 新 型 受 動構 文 の デ ー タ に つ い ては 、 北 京 大 学 漢 語 語 言学 研 究 セ ンタ ー 語 料庫 や 日 中 対 訳 コ ー パ スな ど か ら 抽 出 で き な いた め 、百 度6か ら イ ン ター ネ ッ ト で 実 際 に 使 用さ れ て い る 例 を 収 集 する こ と に す る 。 日 中 語の 特 殊 受 動 表 現 が 実 際に ど の よ う に 用 い ら れる の か を 見 る た め に 、本 論 文 で は、 で き る限 り 作 例 を 避 け 、 以 下の ソ ー ス か ら 実 例 を 収集 す る こ と に す る 。 以下 の よ う に 、用 例 の 後、 [ ]の中に出所を明示する。 1) 日 本 語 a.日 中 対 訳 コ ー パ ス [対 訳 作 品 名 ] b.現 代 日 本 語 書 き 言 葉 均 衡 コ ー パ ス 「小 納 言 」 [小 納 言 作 品 名 ] c.イ ン タ ーネ ッ ト 検 索 :グ ー グ ル か ら 検 索 す る [出 所 を 明 示 す る ] d.先 行 研 究 か ら 用 例 を 引 用 す る [論 文 の 著 者 名 、 出 版 年 と 頁 数 を 明 示 す る ] 6 百 度 と は 、 中国 の 百 度 公 司 が 提 供 し て い る 検 索 エ ン ジ ン の 名 称 で あ る 。 中 国 語 を 中 心 と し た 全文 検 索 を 提 供 し て お り、「 中 国 の Google」の異名をとる(http://www.sophia-it.com/content/%E7%99%BE%E5%BA%A6 2015/11/28 参 照 )。

(25)

e.本 稿 に よる 作 例 [出 典 が 明 示 さ れ て い な い ] 2) 中 国 語 a.日 中 対 訳 コ ー パ ス [対 訳 作 品 名 ] b.北 京 大 学 汉 语 语 言 学 研 究 中 心 语 料 库 (北 京 大 学 漢 語 語 言 学 研 究 セ ン タ ー 語 料 庫 ) [北 京 作 品 名 ] c.イ ン タ ーネ ッ ト 検 索 : 百 度 か ら 検 索 す る [出 所 を 明示 す る ] d.先 行 研 究 か ら 用 例 を 引 用 す る [論 文 の 著 者 名 、 出 版 年 と 頁 数 を 明 示 す る ] e.本 稿 に よる 作 例 [出 典 が 明 示 さ れ て い な い ] な お 、構 文 的 特 徴 に お い て は、 主 に 文 法 形 式 や 言 語形 式 の 表 出 、 結 果 の 意味 の 明 示 化な ど の 形式 面 、 及 び 主 語 の 有 生性 、 述 語 、 情 意 性 と いう 意 味 面 か ら 考 察 を 行う 。 ま た 、事 態 把 握 に お い て は 、主 に 詳 述 性 、 焦 点 化 、際 立 ち 、 視 点 と い う 四つ か ら 分 析す る 。 事態 把 握 に つ い て 、 詳 しく は 第 3 章で紹介する。 こ こ では 、 受 動 構 文 に 関 す る従 来 の 日 中 対 照 研 究 と異 な り 、 本 論 文 は 認 知言 語 学 の 理論 及 び 事態 把 握 の 観 点 を 用 い て分 析 す る 必 要 性 と メ リッ ト に つ い て 述 べ る 。 第 一 に、 受 動 構 文 に 関 す る 従来 の 日 中 対 照 研 究 は 、受 動 構 文 は 能 動 構 文 と対 立 し た 文型 で あ ると い う 考 え 方 で 、 受 動事 態 に お け る 動 作 対 象以 外 の 参 与 者 を 主 語 とす る 受 動 構 文の 分 析 を抜 き に し て お り 、 こ のよ う に 、 日 中 語 の 受 動構 文 の 体 系 間 の 真 の 不均 衡 を 看 出 すこ と が でき な い (陸艺娜 2011:9)。本論文は、受動構文を、従来の先行研究のように能動構文から の変形操作により意味を変えずに派生された構文とするのではなく、 受 動 構 文 独 自 の 意 味 機 能、い わ ゆ る「 有 標 の 状 態」を 持 つ もの (谷口 2005:40-41)と規定し、行為連鎖のエネルギー 源 か らの エ ネ ル ギ ー を 直 接 また は 間 接 的 に 受 け る もの を も っ と も 際 立 つ 参与 者 と し て 選択 し 、そ の も のに 生 じ た 変 化 過程 ま た は 結 果 状 態 を 捉え る 認 知 的 営 み で あ る (陸艺娜 2011:10) と い う認 知 言 語 学 の 立 場 を 取 る 。 そ の 上 で 、 動 作 対象 を 主 語 と す る 受 動 構文 、 い わ ゆ る直 接 受 動構 文 を プ ロ ト タ イ プ とし 、 そ の 他 の 非 動 作 対象 を 主 語 と す る 受 動 構文 、 本 論 文 でい う 特 殊受 動 構 文 を プ ロ ト タ イプ か ら の 拡 張 だ と い う プ ロ ト タ イ プ 理 論 を 援用 す る 。 こ のよ う に 、日 中 語 の 受 動 構 文 の 体系 を 捉 え 直 し 、 両 言 語の 受 動 構 文 の 体 系 に おけ る 異 同 点 を正 確 に 確認 す る こ と が で き る と考 え る 。 第 二 に、 日 中 語 の 対 照 研 究 にお い て は 、 そ の 大 部 分が 受 動 構 文 の 構 文 的 特徴 に 関 す る研 究 で あり 、 事 態 把 握 と 関 連 して 分 析 す る も の は ほ とん ど な さ れ て い な い 。よ っ て 、 従 来の

(26)

研 究 は、 第 1 章で挙げた例文(1)-(4)のような文法的あるいは意味的に問題がある受動文に つ い て は 説 明 で き る が 、 例 文 (7)-(9)のよ うな 文法 的に も意 味的 にも 十分 な受 動文 の不 自 然 さ に 対し て は 、 適 切 な 説 明 を与 え る こ と が で き な い。 こ の よ う に 、 受 動 構文 に 関 す る 研究 の 成 果を 教 育 の 場 で 生 か す ため に 、 単 に 当 該 構 文 の構 文 的 特 徴 の 相 違 を 解明 す る こ と だけ で は 不十 分 で あ り 、 母 語 話 者と 学 習 者 そ れ ぞ れ の 事態 把 握 の あ り 方 を 明 らか に し な け れば な ら ない 。 本 論 文 は 研 究 成 果を 日 本 人・中 国 人 向 け の中 国 語 ・日 本 語 教 育 へ 応用 す る こ と を 目 指 すた め 、 日 中 語 の 特 殊 受動 構 文 の 構 文 的 特 徴 のみ な ら ず 、 事 態 把 握 をも 考 察 す る 。 第 三 に、 受 動 構 文 に 関 す る 従来 の 日 中 対 照 研 究 で は、 中 国 語 に 日 本 語 の 使役 受 動 構 文に 対 応 する 文 型 は な い と い う のが 今 ま で の 定 説 で あ る。 し か し な が ら 、 本 論文 は 事 態 把 握の 面 か ら見 る と 、 機 能 的 に 中 国語 に も 日 本 語 の 使 役 受動 構 文 に 対 応 す る 受 動構 文 が 存 在 し、 両 言 語は 使 役 事 態 の う ち 、 結果 事 態 の 言 語 化 に お いて 大 き な 相 違 が 存 在 する こ と を 明 らか に す る。

1.5 本論文の構成

本 論文 は 8 つの章によって構成される。第 1 章では本論文の研究動機、研究の背景と目 的 、 研究 対 象 及 び そ の 位 置 づけ 、 研 究 方 法 及 び 用 語の 定 義 に つ い て 述 べ る。 第 2 章では先行研究を概観し、その問題点を指摘した上で、本論 文の立場及び研究課題 を 提 示す る 。 第 3 章では、本論 文の論述の支えとなる認知言語学の諸概念を紹介し、本論 文の理論的 背 景 を提 示 す る 。 第 4 章では、日中語の特殊受動構文に関する対照研究に入る前に、中国語の新型受動構 文 に つい て 紹 介 す る 。 そ の 構文 的 特 徴 及 び 事 態 把 握を 考 察 す る こ と に よ って 、 新 型 受 動構 文 は 述語 の 表 す 動 作・性 質・属 性 の 主 体、 つ ま り 行 為 主体 が 主 語 に 立 つ 受 動 構文 で あ る と 位 置 づ けを 行 い 、 日 中 対 照 の 観点 か ら 見 る と 、 新 型 受動 構 文 の 強 迫 類 は 日 本語 の 使 役 受 動構 文 、 新型 受 動 構 文 の 認 定 類 は日 本 語 の 持 ち 主 受 動 構文 と 対 応 す る も の で あ る 、 と い う こと を 指 摘す る 。 第 5 章から第 7 章にわたり、 それぞれ使役受動構文、持ち主受動構文及び第三者受動構 文 と いう 順 を 追 っ て 、 日 中 語の 特 殊 受 動 構 文 に 関 する 対 照 研 究 を 行 う 。 考察 の 手 順 と し て ま ず 、先 行 研 究 を 紹 介 し 、 その 問 題 点 を 指 摘 す る 。次 に 、 形 式 及 び 意 味 の面 か ら 特 殊 受動

(27)

構 文 の構 文 的 特 徴 を 考 察 し 、日 中 語 の 共 通 点 と 相 違点 を 解 明 す る 。 ま た 、そ の よ う な 構文 的 特 徴に お け る 差 異 に 反 映 する 事 態 把 握 の 相 違 を 認知 モ デ ル で 表 す 。 さ らに 、 日 中 対 訳 コ ー パ スよ り 収 集 し た デ ー タ に基 づ き 、 日 中 語 の 特 殊受 動 文 の 対 応 関 係 を 明ら か に し 、 同一 事 態 に 対 す る 異 な る <好 ま れ る 言 い 回 し >に 反 映 す る 日 中 語 母 語 話 者 の 事 態 把 握 の 傾 向 を 解 明 する 。 最 後 に 、 以 上 の 分析 に よ っ て 日 中 語 に おい て 、 事 態 把 握 の レ ベル で 直 接 受 動構 文 か ら 特 殊 受 動 構 文 へ と 拡 張 す る 動 機 付 け 及 び 過 程 を 明 ら か に し 、 日 本 人 ・中 国 人 の 中 国 語・日 本 語 学 習者 の 誤 用 に つ いて 説 明 す る 。 最 後 の 第 8 章では、本論文で明らかになったことをまとめ、日中対照の結果を述べ、今 後 の 研究 課 題 を 展 望 す る 。

1.6 用語の定義

こ こで 、本 論 文 で 用 い る「 主語 /行為主体/述語」、「 使役 /使役動詞)」及び「結果 /結果補語」 と い う用 語 に つ い て 説 明 し てお く 。 1) 主語、 行為主体、 述語 日 中 語の 受 動 構 文 の 研 究 で は、 受 動 構 文 の 表 す 事 態に 関 与 す る も っ と も 重要 な 参 与 者の 二 つ を「 主 語 」と「 行 為 主 体 (動作主)」という呼称で呼んでいる。両者のうち 、主語とは、 あ る 名詞 句 の 文 内 に お け る 成分 と し て の 機 能 で あ り、 行 為 主 体 と は 、 名 詞句 の 述 語 動 詞に 対 す る関 係 的 な 意 味 、 つ ま り意 味 役 割 の こ と で 、 観点 の 異 な る 呼 称 で あ る (志波 2015:31)。 受 動 構文 の 場 合 、 主 語 は 意 味的 に 「 動 作 対 象 」 で ある と は 限 ら ず 、 い わ ゆる 使 役 受 動 や、 持 ち 主の 受 動 、 第 三 者 の 受 動で は 、 対 象 以 外 の 名 詞句 が 主 語 に 立 っ て い る。 ゆ え に 、 こう し た さま ざ ま な 関 係 的 意 味 を有 す る 参 与 者 を 統 一 的に 指 示 す る に は、「 主語 」と 呼 ぶ のが 便 宜 的 に都 合 が よ い の で あ る。他 方、行 為 主 体 (動作主)のほうは、文内では補語であったり修 飾 語 であ っ た り す る た め、こ れ は「 行 為 主 体 (動作主)」と呼ぶことにする。本論 文では、志 波 (2015)と同様に、意志の有無や有情物か否かに関わらず、広く行為連鎖 (action chain)の始 点 と 考え ら れ る も の を 「 行 為主 体 」 と 呼 ぶ 。 な お、 中 国 語 の 新 型 受 動 構文 に お け る 「 行 為 主 体」 は 日 本 語 の 受 動 構 文及 び 中 国 語 の通 常 の 受動 構 文 に お け る 「 行 為主 体 」 と 異 な る 参 与 者を 指 す 場 合 が あ る 。 中国 語 の 新 型 受動 構 文 では 、 否 定 の 意 味 、 元 の述 語 動 詞 及 び 動 作 主 が明 示 さ れ な い た め 、 形式 上 「 被 」 に後

(28)

続 す る動 詞 (句)・形容詞(句)・名詞(句)が述語になる。その主語指示物はこういった述語に関 連 す る主 体7で あ る た め 、明 示 さ れ な い動 作 主 と 区 別し て 、「 行 為 主 体 」と 呼 ぶ こ と があ る 。 よ っ て、新 型 受 動 構 文 に お いて 、「 行為 主 体 」い う カテ ゴ リ ー の 指 す 範 囲 には 、動 作 主 体の み な らず 、 属 性 主 体 及 び 経 験主 体 も 含 ま れ る こ と にな る 。 つ ま り 、 本 論 文で は 便 宜 上 、中 国 語 の新 型 受 動 構 文 に お い て、 明 示 さ れ な い 述 語 動詞 の 表 す 動 作 の 主 体 を「 動 作 主 」 と呼 び 、そ れ と 区別 し て 述 語 の 動詞 (句)・形容詞(句)・名詞(句)に関連する主体、つまり主語指示 物 を 「行 為 主 体 」 と 一 括 し て呼 ぶ こ と に す る 。 要 する に 、 日 本 語 の 受 動 構文 及 び 中 国 語の 通 常 の受 動 構 文 (使役受動構文を除く )においては、「主語」と「行為主 体」はそれぞれ別の も の を指 す が 、中 国 語 の 新 型受 動 構 文 に お い て は、「 主 語 」と「行 為 主 体 」は「 動 作 主 」以 外 の もう 一 つ の 参 与 者 、 つ まり 述 語 に 関 わ る 主 体 のこ と を い い 、 実 は 同 じも の を 指 す 。 ま た、「 述 語」と は 文 の 支 配的 な 要 素 で あ り 、品 詞に よ っ て 、動詞 述 語・形 容 詞 述語 ・名 詞 述 語 に分 け ら れ る (日本語記述文法研究会 2010:54)。形態変化を伴う活用を持つ日本語にお い て 、受 動 は 動 詞 の み に 関 わる 文 法 的 カ テ ゴ リ ー であ る 。 そ れ に 対 し 、 活用 を 持 た な い中 国 語 にお い て は 、 動 詞 以 外 、形 容 詞 及 び 名 詞 も 新 型受 動 構 文 に 入 る 。 よ って 、 中 国 語 の 新 型 受 動構 文 に お け る 「 述 語 」に は 、 通 常 の 受 動 構 文と 異 な り 、 品 詞 的 に 動詞 ・形 容詞 ・名詞 と い う三 つ が あ る 。 中 国語 に お け る 受 動 構 文 の述 語 は 普 通 は 、 単 純 な一 つ の 動 詞 だ け で は ない と い う こ とは し ば しば 指 摘 さ れ て い る (刘月华他 1991、范晓 2006)。范晓(2006)は(33)のように、述語 VP に 二 つの 動 詞「 吓 (驚かす)」、「住(止まる)」がある場合、一方は主要動詞であり、他方は結 果 を 表す 副 次 動 詞 で あ る と して い る8 (33) 咱 们 可 别 被 他 给 吓 住 啊 。 私 た ち 必ず てはいけない 受動 彼 助詞 驚かす 止まる 感嘆詞 (あ い つ に 驚 か さ れ ては い け な い ) [刘 月 华 他 訳 一 部 修 正 1991:452] 7 林 璋 (2010)は 、 こ う い っ た 新 型 受 動 文 に お け る 主 語 の 位 置 に 動 作 主 の み な ら ず 、 経 験 者 や 対 象も 生 起 し 、 通 常 の 受 動文 と 区 別 す る た め、「 動 作 主 主語 受 動 文 」 と 呼ん で い る 。 8 张 国 宪 (2006:164)に よ れ ば 、 こ う い っ た 中 国 語 の 動 補 構 造 に つ い て 、 海 外 の 学 者 は 複 合 動 詞 だと み な す の に 対 し 、 大陸 の 学 者 は 動 詞 フ レ ーズ だ と み な す 傾 向 が ある と い う 。 つま り 、 例文 (33)では、前者によれば、主語の「私たち」は「 吓住」という複合動詞の表す動 作 の 対象 で あ る が 、 後 者 に よれ ば 、「 吓 住 」 と い う 動詞 フ レ ー ズ の う ち、「 吓 」 と いう 主 要 動 詞 の表 す 動 作 の 対 象 で あ る、 と う こ と で あ る 。

(29)

本 論文 は 、 日 中 語 の 受 動 構文 の 構 文 的 特 徴 を 解 明す る た め 、 范 晓(2006)の意見に従い、 述 語 が二 つ ま た は 二 つ 以 上 の動 詞 か ら な る 場 合 、 主要 動 詞 だ け を 「 述 語 動詞 」 と 呼 ぶ こと に す る。 2) 使 役 、 使 役 動 詞 「 使 役」 と は 、 二 つ の 出 来 事間 の 関 係 を 単 一 の 節 によ っ て 明 示 的 に 表 す ため の 言 語 的手 段 で あ る (Lindsay 1997:193) 。 使 役 に つ い て は 多 岐 に わ た る 議 論 が あ る が 、 Shibatani(1976a:239,1976b:1)は 特 定 の 言 語 形 式 に 囚 わ れ ず 、か つ 通 言 語 的 にも 適 用 で き る よ う な 使役 構 文 の 定 義 を 求 め 、二 つ の 出 来 事 間 以 下 のよ う な 関 係 が 存 在 す れば 、 使 役 構 文だ と み なす 。 本 論 文 は Shibatani(1976a,1976b )の見解に従い、ある構文が ①②の条件を満たせ ば 、 使役 構 文 だ と 判 定 す る 。

① The relation between the two events is such that the speaker believes that the occurrence of one event, the “caused event,” has been realized at t2, which is after t1, the time of the “causing

event.”

(二 つ の イ ベ ン ト の 関 係 に つ いて 、話 者 は 、被 使 役 事 態 が 起 こ っ た 時 間 t2は 、使 役 事態 が

起 こ った 時 間 t1の 後 で あ る 、と 信 じ る 。 )

② The relation between the causing and the caused event is such that the speaker believes that the occurrence of the caused event is wholly dependent on the occurrence of the causing event; the dependency of the two events here must be to the extent that it allows the speaker to ente rtain a counterfactual inference that the caused event would not have taken place at that particular time if the causing event had not taken place, provided that all else had remained the same. (使 役 事 態 と 被 使 役 事 態 の 関 係に つ い て 、話 者 は 、被 使 役 事 態 の 生 起 は す べ て 使 役 事 態 の 生 起 に依 存 し て い る 、 と 信 じる 。 す な わ ち 、 こ の 二つ の イ ベ ン ト の 依 存 関係 に つ い て、 話 者 は、 他 の す べ て の 状 況 が同 じ で あ っ た 場 合 、 もし 使 役 事 態 が 起 こ ら なけ れ ば 被 使役 事 態 も起 こ ら な い 、と い う 反事 実 的 推 論 に 基 づ く 確信 を 抱 く も の で な け れば な ら な い 。) Shibatani(1976b:1)[日 本 語 訳 は 鄭 (2006:100)に よ る ] 本 論 文で は 、 使 役 状 況 を 特 徴づ け る 二 つ の イ ベ ン ト、 つ ま り 「 使 役 事 態 」と 「 被 使 役事

(30)

態 」を そ れ ぞれ「 原 因 事 態 」と「 結 果 事 態 」 と 呼 ぶこ と に す る9。鄭 (2006)によると、使役 は 使 役状 況 に よ っ て 二 分 す るこ と が で き 、 原 因 事 態と 結 果 事 態 を X、Y と表記すると、こ れ ら 二種 類 の 使 役 は 次 の よ うに 示 す こ と が で き る 。 鄭 (2006:103) す な わち 、一 つ は 、「 x が何かをする」ことが「yがある状態にある」ように引き起こす こ と であ る 。も う 一 つ は、「 x が何かをする」ことが「yがある 行為をする」ように仕向け る こ と で あ る 。 こ の 二 分 類 は ほ ぼ 「 直 接 使 役 」、「 間 接 使 役 」 と い っ た 分 類 に 等 し い 。 Lindsay(1997:196-197)に よ る と 、 直 接 使 役 は 使 役 者 の 行 為 が 被 使 役 者 の 行 為 に 直 接 の 影 響 を も った 状 況 を 指 し 、 間 接 使役 は 因 果 性 の 隔 た り が大 き い 状 況 を 指 す が 、こ の 区 分 は 絶対 的 な もの と い う よ り は 、直 接 -間接の間にさまざまな段階を認めるものである。換言すれば、 影 響 には 性 質 の 異 な る も の があ る も の の 、 直 接 的 なも の か ら 間 接 的 な も のへ と 連 続 体 をな し て いる と 考 え る 。 使 役 の意 味 を 表 す 表 現 の こ とを 「 使 役 構 文 」 と い う。 使 役 構 文 は 従 来 、 使役 を 表 す 形式 あ る いは 手 段 に よ っ て 、形 態 的使 役 、分 析 的 使 役 と語 彙 的 使 役 の 三 つ に 分け ら れ て い る (早 津 1997:164、Lindsay 1997:193-195)。それぞれ例を挙げると、以下のようになる。 ① 形態的使役: a. ~させる b. -dir(トルコ語) ② 分析的使役: a. make/cause/compel/force+(to) do; b.使 (使う )/叫 (呼 ぶ )/让 (譲 る )/令 (命 じ る )+NP+VP(使 役 兼 語式10) 9 三 宅 (2004:20)に よ る と 、 使 役と は そ も そ も 、 二 つ の出 来 事 の 因 果 連 鎖 を 表 し 、 つ ま り 原 因 と なる 出 来 事 が 起 こ り 、 結果 と な る 出 来 事 を 引 き起 こ す と い う 事 態 で ある 。 よ っ て 、本 論 文 は便 宜 的 に 、 こ の よ う な使 役 的 事 態 を 「 原 因 」と 「 結 果 」 と の 二 つ に分 け て 、 そ れぞ れ 「 原因 事 態 」、「 結 果 事 態 」と 呼 ぶ こ と に す る 。 10 兼 語 式 に 関 する 先 行 研 究 は 、「 NP1+V1+NP2+VP2」と い う 形 式 に お け る V1 の 動 詞 、 つ ま り 「使 役 動 詞 」 に つ い て の認 定 に お い て 一 致 す る意 見 が 見 つ か ら な い が、 本 論 文 は 楊凱 栄 (1989:166)と同様、胡附,文炼(1990)の意見に従い、以下 1)-4)という四つの条件を満たす も の を「 使 役 兼 語 式 」 と し 、そ の 使 役 動 詞 V1 として 5)のような動詞が挙げられる。 X CAUSE Y

①.[ x DO SOMETHING ] CAUSE [ BECOME [ y BE ]] ②.[ x DO SOMETHING ] CAUSE [ BECOME [ y DO ]]

(31)

③ 語彙的使役: a. kill, destroy b.殺す、壊す c.杀(殺す), 毁(壊す)

ま た 、 彭 利 贞 (1996) は 世 界 の 言 語 を 考 察 し 、 使 役 を 表 現 す る 形 式 、 つ ま り 使 役 形 式 (causative form)を 、 ① の よ う な 形 態 的 レ ベ ル 、 ② の よ う な 文 法 構 造 の レ ベ ル 及 び ④ の よ う な ゼ ロ形 式 の レ ベ ル と の 三 つの レ ベ ル に 分 け て い る。

④ ゼロ形式の使役 : a. The noise of the traffic worried me. <英語> (直訳:交通の騒音が私を悩まさせた) b. 泪 水 模糊 了 她 的 眼 睛 。 <中 国 語 > (直訳:涙が彼女の目をぼやけさせた) c. Tränen verschleierten ihre Augen. <ド イ ツ 語 > (直訳:涙が彼女の目をぼやけさせた) 彭 利 贞(1996:105-106) す な わち 、④ の よ う な 使 役 動詞 (下線)は、③のような語彙的使役の他動詞と同様に 、「NP1 主 語+VP+NP2目 的 語」と い う 形 式を 取 る が 、NP2 目 的 語が VP の表す動作・行為の対象ではなく、 主 体 であ る と い う 点 に お い ては 、 普 通 の 他 動 詞 と は本 質 的 に 異 な る(彭利贞 1996:105)。 本 論 文 は 彭 利 贞 (1996)と同 じ 立場 を 取り 、 動 詞の う ち、 ① 、② 、 ④ の形 式 を取 る もの を 「 使 役動 詞 」、③ の 形 式 を 取 るも の を 普 通 の 語 彙 的「他 動 詞 」と 呼び 分 け るこ と に す る 。た だ し 、中 国 語 の 「 使 /叫/让/令」は先行研究に従い、「使役標識」と呼ぶこともある。 さ ら に 、彭利 贞 (1993)によると、中国語では、④b のような「使宾动词(使役動詞)」は意 味 的 に見 る と 、 主 に 以 下 の 五つ に 分 け ら れ る 。 1) V1 が 使 役 の 意 味 を 表 す 。 2) 「 NP1+V1+NP2+VP2」 の う ち 、 V1 と NP2 と の 間 に 他 の 成 分 を 付 け 加 え たり 、 ポ ー ズ を 置い た り す る こ と が 不 可能 で あ る 。 3) 「 NP1+V1+NP2+VP2」 の 「 NP2+VP2」 を 「 NP1+V1」の 前 に 移 動 し 、 「NP2+VP2+NP1+V1」のように置き換えられない。 4) V1 の 動 作 と VP2 の 動 作 と の 結 び 付 き が 強 く 、 原 因 と 結 果 の 関 係 に あ る 。 5) 使 役 兼語 式 に お け る 「 使 役 動 詞 」 使 (~させる) 促使(促す) 迫使(余儀なくさせる ) 致使(至らせる ) 逼(迫る) 强 迫 (むりやりにさせる ) 托(託する) 委托(頼む) 唆使(唆す) 派(派遣する) 打 发 (よこす) 差(よこす) 催(せかす) 请(~てもらう) 请求(お願いする) 求 (せがむ) 要(~てほしい) 劝(すすめる ) 鼓励(励ます) 命令(命令する) 吩 咐 (言いつける) 叫(~させる) 让(~させる )

表 2-1  日 本 語 受動 構 文 の分 類 (田 中 2010:117 より  一部 修 正・追 加 )  三 上 (1953)  寺 村 (1982)  森 山 (1988)  工 藤 (1990)  Shibatani (1990)  仁 田 (1991)  山 内 (1997)  太 郎 が 花 子 に 殴 ら れ た ま と も 直 接 ま と も 当 事 者 Direct  Passive  ま と も 斜 格 昇 格 型太 郎 が 花 子 に 足 を 踏 ま れ た は た  迷 惑  間
図 2-1  本 論 文 での 受 動 構 文 の分 類 及 び 研 究 対 象 の 位置 づ け (図 1-1 再 掲 )  す な わち 、 本 論 文 で は 動 作 対象 (lm)が 主 語 に 立 つ 典型 的 な 他 動 詞 の 受 動 構文 、 い わ ば 「 直 接受 動 構 文 」 を 除 外 し たも の を 「 特 殊 受 動 構 文」 と 呼 び 、 そ れ を 考 察の 対 象 と す る。 図 2-1 か ら もわ か る よ う に 、本 論 文 の 考 察 対 象 は それ
図 3-2  スキーマと事例 の関 係(テイラー他 2008:62 より)
図 3-4 に 示す よ う に 、「旅」と 「 恋 愛 」と い う 異 な る 概念 が 対 応 づ け ら れ る のは 、 メ タ フ ァ ー の見 方 に 基 づ く と 、 起 点領 域 に あ る「旅 」と い う空 間 的 移 動 と 、 目 標 領域 に あ る「恋 愛」 と い う 抽 象 的 経 験 と が 、 と も に 「 出 発 点 (恋 愛 関 係 の 始 ま り )」、「 終 点 (恋 愛 関 係 の 終 わ り )」 と い う類 似 し て い る 構 造 を 持っ て
+7

参照

関連したドキュメント

「比例的アナロジー」について,明日(2013:87) は別の規定の仕方も示している。すなわち,「「比

C−1)以上,文法では文・句・語の形態(形  態論)構成要素とその配列並びに相互関係

Der Kaiser - so heißt es - hat Dir, dem Einzelnen, dem jämmerlichen Untertanen, dem winzig vor der kaiserlichen Sonne in die fernste Ferne geflüchteten Schatten, gerade Dir hat

Key Words: Geolinguistics (linguistic geography), Willem Grootaers, Bernhard Karlgren, Language Atlas of China (LAC), Project on Han Dialects (PHD), Huaihe line, Changjiang

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

いずれも深い考察に裏付けられた論考であり、裨益するところ大であるが、一方、広東語

物語などを読む際には、「構造と内容の把握」、「精査・解釈」に関する指導事項の系統を

あれば、その逸脱に対しては N400 が惹起され、 ELAN や P600 は惹起しないと 考えられる。もし、シカの認可処理に統語的処理と意味的処理の両方が関わっ