第 5 章 日中語の使役受動構文に関する対照研究
5.4 日中語の使役受動構文の事態把握
原 因 類と 強 制 類 の 使 役 受 動 構文 に 入 る 述 語 の 制 限 は、そ の 厳し さ に よ っ て、中 国 語の 新 型 、日 本 語 、中 国語 の 通 常の 短 縮 形 式 型 と い う 順に な り 、上 か ら 下 へ より 厳 し く な る の であ る 。
3) 位 置 変化 ・状 態変 化 を 意 味 す る非 意 志 的 自 動 詞 の 他 動詞 代 用 の 形 式 に お い ては 、 日 中 語 の間 に は 明 ら か な 相 違 が見 ら れ る 。 使 役 の 意 味は 日 本 語 で は 使 役 形 式に よ っ て 明 示 され る が 、 中 国 語 で は 使役 形 式 に よ っ て 表 さ れず 、 動 詞 の 意 味 と し て語 彙 化 さ れ る 。
4) 情 意 性に お い て は 、 日 中 語 の使 役 受 動 構 文 は 、 い ずれ も 強 制 類 で は 、 被 害の み 、 原 因 類 では 、 被 害 の み な ら ず 、中 立 、 利 益 に も な り うる 。 一 方 、 中 国 語 に 特有 の 指 示・許 容 類 も 、原 因 類 と 同 様 に、 被 害 、 中 立 及 び 利 益の い ず れ に も な り 得 る。
サ ー クル は 参 与 者 、 二 重 矢 印は エ ネ ル ギ ー の 伝 達 ある い は 影 響 、 一 重 矢 印は 影 響 を 与え ら れ た参 与 者 の 位 置 や 状 態 など の 変 化 、 四 角 囲 み は影 響 を 与 え ら れ た 参 与者 が 最 終 的 にあ る 位 置や 状 態 に な る 結 果 を 表す 。 プ ロ フ ァ イ ル は 太線 で 表 記 し 、 そ の う ち、 も っ と も 際立 つ も のを「tr」、次 に 際 立 つ もの を「lm」で 表 す 。も っと も 大 き い 四 角 形 は存 在(entity)、こ こ で は事 態 を 表 す 。 点 線 の サー ク ル は 反 意 図 性 を 表示 す る 。
(73) 643 年 に 蘇 我 氏 に よっ て 自 殺さ せ ら れ た の は 誰 で すか 。
[j-history.idea-mix.net/workbook/jhistory_question.php?no=64 2015 /09/09参 照]<日 本 語>
図 5-6 日 本 語 の使 役 受 動 構 文の 事 象 構 造(強制 類)
つ ま り、「 自 殺 させ ら れ た 」は 、使役 者 で あ る「 蘇 我 氏 」が 被 使 役 者「 誰 か 」に間 接 的 な エ ネ ルギ ー を 伝 達 し 、 被 使 役者 の 持 つ 反 意 図 性 を 変え る こ と に よ っ て 、 被使 役 者 が 強 制さ れ た とお り 、「 自 殺 す る 」とい う 行 為 を 行 い、自 分 自身 に 生 理 的 状 態 変 化 が起 こ っ た と い う 典 型 的な 使 役 事 態 を 表 し て いる 。使 役 者 と自 律 的 事態 と の 間 に は、「 引 き 起こ す 」と い った 使 役 的関 係 が 存 在 し、「 蘇 我 氏」 が 自 殺 す る よ う 強 制し た た め、「 誰 か が 自 殺し た 」 と い う 自 律 的事 態 が 生 じ た の で あ る。 概 念 化 者 で あ る 話 者は 影 響 を 受 け る 側 、 つま り 被 使 役 者 兼 動 作 主体51で あ る「 誰 か 」に 注 視 し 、こ の 事 態 全 体 を主 語「 誰 か 」に と っ て好 ま し く な い も
51 村 上(1986:86)で 、 使 役 受 動 文の 主 語 の 位 置 に あ る もの は 、 使 役 動 作 に と って は 「 使 役
の 相 手・客 体 」で あ り 、 ま た 現実 の 動 作 に と っ て は 「動 作 の お こ し 手・動 作 主体 」 で あ る と い う 二重 性 を 持 っ て 文 の 中 に入 り 込 ん で い る 、 と いう こ と が 指 摘 さ れ て いる 。
サ セ Cause (働 きか け)
State (状 態) Change
(変 化)
蘇 我 氏 (使 役者)
誰 か
(被 使役 者 兼 動 作 主 体)
自 律 的事 態 自 殺 する lm tr
被 害 反 意 図性
の と 捉え 、 こ の 事 態 の 全 体 を述 べ て い る 。
次 に 、中 国語 に お け る 通 常の 短 縮 形 式 型 の 使 役 受動 文(74)は、「 学 生 が 先生 に 集 合 さ せ ら れ た 」と いう こ と を 表 す。「被 集 合(集合 さ せ ら れ た)」の 表 す 事 象 構 造 は 、認 知モ デ ル に よ っ て 表す と 次 の よ う に な る 。
(74) 东 大 同 学 刚 刚 游行 回 来, 就 被 集 合 去 听 東 北 大学 学 生 し た ば か り デ モ 帰 っ て く る す ぐ に 受 動 集 合 す る 行 く 聞 く 学 校 当 局 的 堂 皇 的 训 话……
学 校 当 局 の 堂 々 と し て い る の 訓 話
(東 北大 の 学 生 は 、デ モ か ら 帰っ て く る と 、す ぐ に 集合 さ せ ら れ て、学 校 当局 の 、も っ た いぶ っ た 訓 話 を 聞 か さ れた)
[例(66)再 掲]<中国 語 の 通 常 の短 縮 形 式 型>
図 5-7 中 国 語 にお け る 通 常 の使 役 受 動 構 文 の 事 象 構造(強 制 類)
図 か らわ か る よ う に 、(74)の表 す 事 象 構 造 は(73)と 同 様 、二 つ の 参 与 者 の 間に 間 接 的 な エ ネ ル ギー の 伝 達 が 起 こ る 、 とい う 典 型 的 な 使 役 事 態で あ る が 、 二 つ の 文 では 焦 点 化 さ れる 部 分 は 異 な る 。 日 本 語 は(73)の よ う に 当 該 使 役 事 態 の 全 体 を プ ロ フ ァ イ ル す る が 、 中 国 語
は(74)の よ う に 当該 使 役 事 態の 一 部 し か プ ロ フ ァ イル し な い 。
さ ら に、中 国 語に お け る 新 型の 使 役 受 動 文(75)の 表す 事 象 構 造 を 検討 す る。「在 监 视 下 上 吊 自 杀 和 珅 原 是 “ 被 自 杀 ”(な ん だ 和 珅 が(自 殺 し た く な か っ た が)(皇 帝 の)監 視 の 下 で 首
先 生 (使 役者)
Cause
(働 きか け)
State (位 置) Change
(変 化)
学 生
(被 使役 者 兼 動 作 主 体)
自 律 的事 態 集 合 する lm tr
被 害 反 意 図性
を つ って 自 殺 さ せ ら れ た の か)」で は、「被 自 杀(自殺 さ せ ら れ た)」の 表 す 事象 構 造 は 、認知 モ デ ルに よ っ て 表 す と 以 下 のよ う に な る 。
(75) 在 监 视 下 上 吊 自 杀 和珅 原 是 “ 被 自 杀 ” あ る 監 視 下 首 を つ る 自 殺 す る 人名 な ん だ で あ る 受動 自 殺 す る
(な んだ 和 珅 が(自殺 し た く なか っ た が)監 視の 下 で 首を つ っ て 自 殺 さ せ ら れた の か)
[博 宝艺 术 网2009-11-27]<中 国語 の 新 型>
図 5-8 中 国 語 にお け る 新 型 の使 役 受 動 構 文 の 事 象 構造(強 制 類)
図 5-7、 図 5-8 か ら 明 ら かな よ う に 、(75)の 表 す事 象 構 造 は(74)と 同 様、 二 つ の 参 与 者 の
間 に 間接 的 な エ ネ ル ギ ー の 伝達 が 起 こ る 、 と い う 典型 的 な 使 役 事 態 で あ るが 、 二 つ の 文は 焦 点 化 さ れ る 部 分 は 異 な る 。 中 国 語 で は 、 通 常 の 使 役 受 動 構 文 は(74)の よ う に 当 該 使 役 事 態 の 、エ ネル ギ ー の 伝 達 を 除外 し た 部 分 を プ ロ フ ァイ ル す る が 、新 型 の 使役 受 動 構 文 は(75) の よ うに 当 該 使 役 事 態 の 、 エネ ル ギ ー の 伝 達 の み なら ず 、 使 役 者 で あ る 参与 者 も プ ロ ファ イ ル しな い 。
以 上論 述 し た 事 象 構 造 、図 5-6、図 5-7、図 5-8を もと に 、使 役 受 動 事 態を 捉 え る 際 、日 中 語 の使 役 受 動 構 文 の 強 制 類の 事 態 把 握 に お け る 異同 点 を 以 下 の よ う に まと め る こ と がで き る 。
1) 共 通 点に 関 し て は、三 構 文 はい ず れ も あ る 参 与 者・使 役 者 の間 接 的 な 影 響 によ っ て も う 一 つ の 参 与 者 ・被 使 役 者 に 位 置 や 状 態 変 化 が 起 こ る と い う 二 つ の 参 与 者 を 含 む 典
Cause (働 きか け)
Change (変 化)
被 害 和 珅
(被 使役 者 兼 動 作 主 体)
自 殺 する 皇 帝
(使 役者)
tr
State (状 態)
自 律 的事 態 反 意 図性
型 的 な使 役 事 態 を 、 事 態 外 から 被 使 役 者 を 視 点 人 物と し て 捉 え る こ と を 表す 。 2) 相 違 点 は 際 立 ち の 面 に お い て で あ る 。 日 本 語 の 使 役 受 動 構 文 は 使 役 事 態 の 全 体 が プ
ロ フ ァ イ ル さ れ る が 、 中 国 語 に お け る 通 常 及 び 新 型 の 使 役 受 動 構 文 は そ の 一 部 だ け が プ ロフ ァ イ ル さ れ 、 他 の 部分 は 背 景 化 さ れ る 。
次 節 では 、 日 中 語 に お け る 使役 受 動 構 文 の 原 因 類 の事 態 把 握 に つ い て 考 察す る 。
5.4.2 原因類の事態把握
前 述 した と お り 、日 中 語 に おけ る 使 役 受 動 構 文 の 原因 類 は 、主 に 状 態・位 置 変 化 を表 す非 対 格 自動 詞(例:「 悩 む」、「 移 動 す る 」 など)と い っ た非 意 志 動 詞 に よ る も ので は あ る が 、 意 志 動 詞に よ る も の も 見 ら れ る。 そ れ は 動 詞 の 性 質 によ っ て 、 大 き く 二 つ に分 け ら れ る 。一 つ は 思考 ・認 知動 詞(例:「 考 える 」、「 反 省 す る 」な ど 日 本 語 の み)で あ り 、も う 一 つ は 意 図 性 が 非常 に 薄 く な り、む し ろ非 意 志 動 詞 に 近 い 性 質を 持 つ 、主 に状 態・位 置 変 化 を表 す 非 能 格 自 動詞(例:「 休 む」、「 帰 郷す る 」 な ど)であ る 。
以 下 、 非 意 志 自 動 詞 に よ る 使 役 受 動 文(76)-(78)を 例 に 、 日 中 語 の 使 役 受 動 構 文 の 原 因 類 の 事 態把 握 に お け る 相 違 点 を図 で 表 す 。
ま ず 、日 本語 の 使 役 受 動 文(76)を 見 て みよ う 。「 私 は び っく り さ せ ら れ た 」の「 び っく り さ せ られ た 」 の 表 す 事 象 構 造は 、 認 知 モ デ ル に よ って 表 す と 次 の よ う に なる 。 点 線 の 二重 矢 印 は間 接 的 な 影 響 、 点 線 の サ ー ク ル は 非 意 図 性 を表 す 。
(76) 突 然 、彼 が 深 夜 に 訪 ね て き て、 私 は び っ く り さ せ られ た 。
[高 見 他2006:221]<日 本 語>
図 5-9 日 本 語 の使 役 受 動 構 文の 事 象 構 造(原因 類) Cause
(働 きか け)
State (状 態) Change
(変 化)
私
(被 使役 者 兼 経 験 主 体)
び っ くり す る tr
lm 被 害 彼
事 態 参与 者 (使 役事 態)
訪 ね る
非 意 図性
つ ま り、「 び っ く り させ ら れ た 」は 、一 方の 参 与 者 であ る「 彼 が 深 夜 に 訪 ねて き た 」と い う 事 態が 他 方 の 参 与 者 で あ る「 私 」 に 間 接 的 な エ ネル ギ ー を 伝 達 し 、 被 使役 者 の 持 つ 意図 性 に 関わ ら ず そ の 心 理 的 状 態を 変 化 さ せ る 、 と い う拡 張 的 な 使 役 事 態 を 表し て い る が 、使 役 事 態と 被 使 役 者 と の 間 に は、「 引 き起 こ す 」 と い った 使 役 的 関 係 が 存 在 し、「 彼 が深 夜 に 訪 ね てき た 」か ら こ そ、「 私 がび っ く り し た」と い う結 果 事 態 が 生 じ た の であ る 。概 念 化 者 で あ る話 者 は こ の 事 態 の 外 に立 ち 、 影 響 を 受 け る 側、 つ ま り 被 使 役 者 で ある 「 私 」 に 注視 し 、 当該 事 態 を 経 験 主 体 で ある 「 私 」 に と っ て 好 まし く な い も の と 捉 え 、こ の 事 態 の 全体 を 述 べて い る 。
次 に、中 国 語 にお け る 通 常 の短 縮 形 式 型 の 使 役 受 動文(77)は、「み ん な が 何が な ん だ か わ か ら ない 困 惑 に 悩 ま さ れ て いた 」と い うこ と を 表 す。「被 苦 恼(悩 ま さ れ てい た)」の 表 す 事 象 構 造は 、 認 知 モ デ ル に よ って 表 す と 以 下 の よ う にな る 。
(77) 这 时 不 管 他 是 工 人 、 农 民 、 公 务 人 员 , 还 是 大 腹 こ の 時 で あ ろう と 彼 で あ る 労 働 者 農 民 公 務 員 で あ ろ う と 大 き い 腹 便 便 的 商 人 , 人 们 的 眼 睛 都 被 一 种 莫 名 其 妙
肥 満 して い る さ ま の 商 人 人 々 の 目 す べ て 受 動 あ る 種 わ け が わ から な い 的 困 惑 苦 恼 着 。
の 困 惑 悩 む 持 続
(そ うし た 騒 ぎ に ま きこ ま れ て、 労 働 者 だ ろ う と 、 農民 だ ろ う と 、 は て は 公務 員 か ら 腹 のつ き で た 大 商 人 に 至 るま で 、 み ん な い ち よ うに 、 な に が な ん だ か わか ら な い た め の困 惑 と 、 苦 悶 の 色 を その 目 に 浮 か べ て い た)
[例(28)再 掲]<中国 語 の 通 常 の短 縮 形 式 型>
図 5-10 中 国 語 に お け る 通 常の 使 役 受 動 構 文 の 事 象構 造(原 因 類)
Cause (働 きか け)
Change (変 化) lm
困 惑 (使 役者)
tr
悩 む み ん な 被 害
(被使役者兼経験主体)
State (状 態)
lm
非 意 図性
す な わち 、 一 方 の 参 与 者 で ある 「 困 惑 」 が 他 方 の 参与 者 で あ る 「 み ん な 」に 間 接 的 にエ ネ ル ギー を 伝 達 し 、 被 使 役 者の 持 つ 意 図 性 の 如 何 に関 わ ら ず そ の 心 理 的 状態 を 変 化 さ せる と い う典 型 的 な 使 役 事 態 を 表し て い る 。 概 念 化 者 であ る 話 者 は こ の 事 態 の外 に 立 ち 、 影響 を 受 ける 側 で あ る「み ん な」に 注 視 し 、使 役 者「困 惑 」の せ いで 経 験 主 体で あ る「 み んな 」 が 「 被害 」 を 被 る と 捉 え 、 この 事 態 の 全 体 を 述 べ てい る 。
さ ら に 、 中 国 語 に お け る 通 常 の 短 縮 形 式 型 の 使 役 受 動 文(78)の 表 す 事 象 構 造 は 、 認 知 モ デ ル によ っ て 表 す と 図 5-11の よ う にな る 。点 線 の サー ク ル は 非 意 図 性 を 表示 す る 。太 線は プ ロ ファ イ ル 、 細 線 は 背 景 を表 す 。
(78) 星 月 礼 品 太 多 , 玩 家 们 “ 被 烦 恼”。
ゲ ー ム名 贈 り物 す ぎ る 多 い プ レ イ ヤ ー た ち 受 動 悩 む
(星 月の 景 品 が 多 す ぎる た め 、 プ レ イ ヤ ー た ち が 悩 まさ れ て い る)
[例(29)再 掲]<中国 語 の 新 型>
図 5-11 中 国 語 に お ける 新 型 の使 役 受 動 構 文 の 事 象 構造(原 因 類)
図 5-9 と 図 5-11 か ら わ か るよ う に 、(78)は(76)と 同 様 、 使役 者 と い う 参 与者 が モ ノ から コ ト へと 変 化 し た 拡 張 的 な 使役 事 態 を 表 す が 、 両 者は 際 立 ち の 面 に お い ては 異 な る 。 日本 語 の 使 役 受 動 文(76)は 当 該 使 役 事 態 の 全 体 を プ ロ フ ァ イ ル す る が 、 中 国 語 の 新 型 の 使 役 受
動 文(78)は 、Cause-Change-State のう ち 、Change-State 節 の み プ ロフ ァ イ ルす る 。
以 上論 述 し た 事 象 構 造 、 図 5-9、 図 5-10、 図 5-11 をも と に 、 使 役 受 動 事態 を 捉 え る 際 、 日 中 語の 使 役 受 動 構 文 の 原 因類 の 事 態 把 握 に お け る差 異 を 次 の 二 点 に ま とめ る こ と が でき る 。
Cause (働 きか け)
プ レ イヤ ー た ち (被 使役 者 兼 経 験 主 体)
Change (変 化)
State (状 態)
悩 む
多 い tr
事 態 参与 者 (使 役事 態)
被 害 景 品
非 意 図性
第 一 に 、 共 通 点 に 関 し て は 、 三 構 文 は い ず れ も あ る 参 与 者(事 態 参 与 者 を 含 む)の 間 接 的 な 影 響に よ っ て 、もう 一 つ の参 与 者 に 位 置 変 化・状 態 変 化 が起 こ っ た 、とい う 二 つ の 参 与者 を 含 む 使 役 事 態(典 型 的 使 役 事 態 と 拡 張 的 使 役 事 態 を 含 む)を 、 事 態 外 か ら 被 使 役 者 兼 行 為 主 体 を視 点 人 物 と し て 捉 え るこ と を 表 す 。
第 二 に、 相 違 点 は 際 立 ち の 面に あ る 。 日 本 語 と 中 国語 の 通 常 の 使 役 受 動 構文 は 当 該 使役 事 態 の全 体 が プ ロ フ ァ イ ル され る が 、 中 国 語 の 新 型の 使 役 受 動 構 文 は そ の一 部 だ け が プロ フ ァ イル さ れ 、 他 の 部 分 は 背景 化 さ れ る 。
次 節 では 、 日 本 語 と 中 国 語 の新 型 の 使 役 受 動 構 文 には 見 ら れ な い 用 法 、 つま り 中 国 語に お け る通 常 の 使 役 受 動 構 文 の指 示 ・許容 類 の 事 態 把 握に つ い て 考 察 す る 。
5.4.3 指示・許容類の事態把握
上 に 述べ た よ う に 、 日 本 語 にお い て は 、 強 制 使 役 と原 因 使 役 の 二 つ し か 使役 受 動 文 にな ら な い(高 見 他 2006)。 ま た 、収 集 し た デ ー タ を 見 ると 、 中 国 語 に お け る 新型 の 使 役 受 動文 に は 、日 本 語 と 同 様 に 、 強 制使 役 と 原 因 使 役 と の 二つ し か 見 つ か ら な い 。一 方 、 中 国 語の 通 常 の使 役 受 動 文 で は、「被-叫/让(受 動 標 識+使 役 標 識)」と い う 完 全 形 式 型 の使 役 受 動 文 は 少 な いも の の 、存 在 し な い わけ で は な い。本 節 で は、意 志 的自 動 詞 に よ る使 役 受 動 文 (79)-(80)を 例 に 、 こ のよ う な 指 示・許 容 類の 使 役 受 動 構 文の 事 象 構 造 を 検 討 し てみ る 。
前 述 した と お り 、中 国 語 の 使役 標 識「使/叫/让」の う ち 、使 役 専 用 の 標 識 、つ ま り原 因 使 役 を 表す「使(-さ せ る)」に 比 べ て、「叫(命 令 し て-さ せ る)」と「让(許 可 して-さ せ る)」は 抽 象 度 が低 く 、「 命 令 す る 」、「許 可 す る 」と いっ た 実 質的 な 意 味 内 容 が ま だ 残っ て い る と 考 え ら れ る 。また 、「强 迫(無 理 やり に さ せ る)」類 の 動 詞が 兼 語 式 と い う 特 定 の構 文 の 中 で 、二 義 的 に 「 命 じ て-さ せ る 」、「 頼 ん で-し て も ら う 」 と い っ た 使 役 の 意 味 を 派 生 し 、 結 果 的 に
「叫/让」と い っ た 使 役 標 識 とし て 機 能 す る も の と 同じ よ う な 使 役 表 現 と 見な す こ と が でき
る(加納 他 1994:92)。 よ っ て 、中 国 語 の 通 常 の 使 役 受動 文 で は 、 指 示・許 容 類は 強 制 類 と 同
じ 事 象構 造 を 表 し て い る と 考え る 。
ま ず 、指 示 の 意 味 を 表 す 使 役受 動 文(79)を 考 察 し てみ よ う 。
(79) 昨 晚 ,她 被 叫 到 了 派 出 所 。 昨 晩 彼 女 受動 使 役 行 く 完 了 派 出 所