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第 4 章 中国語の新型受動構文の構文的特徴及び事態把握

4.4 新型受動構文の事態把握

認 知言 語 学 は 、 意 味 を 概 念化 と 見 な す 。 概 念 化 とは 、 把 捉 事 態 に 対 す る解 釈 ・ 捉 え 方で あ り 、 従 っ て 、 意 味 と は 解 釈 ・捉 え 方 で あ る(菅 井 2002b:23)。 本 論 文 は 、Langacker(2008)、

谷 口(2005)で 提 案さ れ た 事 態認 知 モ デ ル を 用 い、他 動 詞、自 動 詞、形 容 詞 及び 名 詞 に よ る 新

型 受 動 文(10)-(15)を 例 に 、 認 定 類 と 強 迫 類 と の 二 つ に 分 け て 、 構 文 と し て の 新 型 受 動 構 文 の 表 す事 態 把 握 を 図 で 示 す 。

新 型受 動 構 文 の 事 象 構 造 を検 討 す る 前 に 、 認 知 モデ ル に よ っ て 形 容 詞 及び 名 詞 の 表 す事 態 を どの よ う に 表 示 す る か につ い て 紹 介 し て お こ う。

Langacker(2008)に よ れ ば 、 名 詞 は モ ノ 、 動 詞 は プ ロ セ ス 関 係 、 形 容 詞 は 動 詞 と 異 な り 、 非 プ ロセ ス 関 係 を プ ロ フ ァ イル す る 。「我 很高 兴(私は 嬉 し い)」と い う 単 純な 非 プ ロ セ ス 関

38 注28を 参 照 。

係 を 認知 モ デ ル に よ っ て 表 すと 、 以 下 の よ う に な る。

図 4-6 形 容 詞の表す非 プロセス関 係

サ ー クル は モ ノ 、 四 角 形 は 存在 、 こ こ で は 形 容 詞 の表 す 感 情 、 点 線 の 双 方向 矢 印 は 二つ の 存 在、 こ の 場 合 は、「 私 」 と「 嬉 し い 」 と の 両 者 の関 係 を 表 示 す る 。

ま た、「她 是 小 三(彼 女 は 愛人 で あ る)」と い う 単 純な 非 プ ロ セ ス 関 係 を 認知 モ デ ル に よ っ て 表 すと 、 以 下 の よ う に な る。

図 4-7 名 詞 の表す非プロセス関 係

サー ク ル は モ ノ 、点 線 の双 方 向 矢 印 は 二 つ の モノ 、こ の 場 合 は、「 彼 女」と「 愛 人 」と の 両 者の 関 係 を 表 示 す る 。

4.4.1 認定類の事態把握

ま ず、 普 通 A 類 で あ る 「她们 天 天 都 在 被 怀 孕(彼女 た ち は 毎 日(妊 娠 し てい な い の に メ デ ィ ア によ っ て)妊 娠 した こ と にさ れ て し ま う)」の「被 怀 孕」が 表 す 事象 構 造 は認 知 モ デ ル に よ っ て表 示 す る と 図 4-8のよ う に な る 。

(10) 周 迅 王 菲 谢 娜 ! 她 们 天天 都 在 被 怀 孕 人 名 人 名 人 名 彼 女 た ち 毎 日 み ん な し て い る 受 動 妊 娠 す る

(周 迅 、 王 菲 、 謝 娜 、 彼 女 た ち は 毎 日(妊 娠 し て い な い の に メ デ ィ ア に よ っ て)妊 娠 彼 女 tr 愛 人

関 係

N

私 tr Adj

関 係

嬉 し い

し た こと に さ れ て い る)

[新 浪 网 2015-04-01]

(10)は 、メデ ィ ア は 妊 娠 し て いな い 彼 女 た ち が 妊 娠 した と 言 う、と い う こ とを 表 す 。換 言 す れ ば、 メ デ ィ ア は 彼 女 た ちが 妊 娠 し て い な い こ とを 、 妊 娠 し た こ と に する 、 と い っ た使 役 事 態を 表 す 。図 4-8 で は 、実 線 の 二 重 矢 印 は 直 接的 な 影 響 を 表 し 、 点 線の 四 角 形 は 否定 の 意 味、 こ こ で は 非 事 実 性 、太 線 の 部 分 は プ ロ フ ァイ ル 、 点 線 の 曲 線 は 同一 指 示 を 表 す。

図4-8 普 通 A類 の新 型 受 動構 文の事 象 構 造

す なわ ち 、「被 怀孕」は 一 方の 参 与 者 で あ る「 メ デ ィ ア 」が 他方 の 参 与 者で あ る「 彼 女 た ち が 妊娠 し て い る 」 と い う 出来 事 に エ ネ ル ギ ー を 伝達 し 、 そ の 非 事 実 の 状態 を 変 化 さ せる と い う拡 張 的 な 他 動 事 態 を 表し て い る が 、 概 念 化 者で あ る 話 者 は 、 作 用 を受 け る 側 で ある

「 彼 女た ち が 妊 娠 し て い る 」と い う 出 来 事 の 中 の 行為 主 体 で あ る 「 彼 女 たち 」 に 注 視 し、

こ の 事態 全 体 を 主 語 「 彼 女 たち 」 に と っ て 好 ま し くな い も の と 捉 え 、 こ の事 態 の 一 部 だけ を 述 べて い る 。

(11) 哈 尔 滨 女 子 建 设 银 行 卡 1万元 莫 名 “ 被 消 费 ” 地 名 女 性 銀 行 名 カ ー ド 1 万 元 不 思 議 に 受 動 消 費 す る

(ハ ルビ ン 女 性 の 建 設銀 行 カ ード に あ る 1 万 元 は(本当 は 使 わ れ て いな い の に銀 行 員

に よ って)使 わ れ た こと に さ れた) tr

Cause (働 きか け)

Change (変 化)

State (仮 事実) 事 態 参与 者

(非 事実 性)

メ デ ィア

(動 作主 体) 彼女たち

(行 為主 体)

被 害 妊 娠 する

[东 北新 闻 网 2013-12-05]

特 殊 A 類 の 新型 受 動 文 で あ る(11)「1 万 元(没 有 被 女子 消 费 却)被(银 行 工 作人 员 说 成 被 女

子)消 费 了(1 万 元 は(本 当 は 女 性 に 使 わ れ て い な い の に 銀 行 員 に よ っ て)使 わ れ た こ と に さ

れ た)」 の 「被 消 費」が 表 す 事象 構 造 は 図 4-9に な る。

図4-9 特 殊 A類 の新 型 受 動構 文の事 象 構 造

つ まり 、「被消 費」は 、一 方の 参 与 者 で あ る「 銀 行員 」が 他 方 の 参 与 者 であ る「 女 子 が 1 万 元 を使 う 」 と い う 出 来 事 に エ ネ ル ギ ー を 伝 達 し 、そ の 非 事 実 で あ る 性 質状 態 を 変 化 させ る と いう 拡 張 的 な 他 動 事 態 を表 し て い る が 、 概 念 化者 で あ る 話 者 は 影 響 を受 け る 側 で ある

「 女 子 が 1 万 元 を 使 う 」 と いう 出 来 事 の 中 、 そ の 動作 対 象 で あ る 「1 万元 」 に 注 視 し 、こ の 事 態全 体 を 動 作 主 体 で あ る「 女 子 」 に と っ て 好 まし く な い 事 態 で あ る と捉 え 、 こ の 事態 の 一 部だ け を 述 べ て い る 。

こ のよ う に 、 新 型 受 動 構 文の 認 定 類 は 通 常 の 受 動構 文 と 同 様 に 、 直 接 的な エ ネ ル ギ ーの 伝 達 によ る 、 二 つ の 参 与 者 から な る 他 動 事 態 を 表 すが 、 通 常 の 受 動 構 文 の表 す 典 型 的 な他 動 事 態(Prototype transitive relation)と 異 な り、直 接 的な エ ネ ル ギ ー を 受 け るの は モ ノ 参 与 者 で は な く 、 コ ト あ る い は 事 態 参 与 者 で あ る 、 と い う 拡 張 的 な 他 動 事 態(Extensive transitive

relation)を 表 す39。言 語 化 に 際 して 、話 者 はこ の よ う な拡 張 的 な 他 動 事 態 の 一部 し か 明 示 し

39 こ こ で い う 「典 型 的 な 他 動 事態(Prototype transitive relation)」と 「 拡 張 的 な他 動 事 態 (Extensive transitive relation)」は 谷 口(2005)に よ る もの で あ る 。 谷 口(2005:292-293)に よる と 、 他動 事 態 は 全 体 と し て Cause-Change-State(Loc)の三 分 節 か ら な る も の であ り 、 物 理 的 物 体 とい う モ ノ 参 与 者 が 事 態参 与 者 の 典 型 で あ る のに 対 し 、 モ ノ 参 与 者 を含 む 事 態 、 つま り コ ト参 与 者 が モ ノ 参 与 者 の拡 張 で あ る と 考 え る 。ま た 、 直 接 受 動 構 文・中 立 受 動構 文 と

State (仮 事実)

女 性 (動 作主 体)

事 態 参与 者 (非 事実 性) 銀 行 員

(動 作主 体)

Change (変 化)

lm tr

Cause (働 きか け)

1万元

(動 作対 象)

被 害

な い 。

4.4.2 強迫類の事態把握

4.4.1で 新 型 受 動 構文 の 認 定類 の 表 す 事 態 把 握 を 考察 し て き た が 、本 節 では 新 型 受 動 構 文

の 強 迫類 の 表 す 事 態 把 握 を 分析 し て い く 。

(12) 在 监 视 下 上 吊 自 杀 和珅 原 是 “ 被 自 杀 ”

あ る 監視 下 首 を つ る 自 殺 する 人 名 な んだ で ある 受 動 自 殺す る

(な ん だ 和 珅 が(自 殺 した く な か っ た が)監 視 の下 で 首 を つ っ て 自 殺 させ ら れ た の か) [例(2)再掲]

(12)「在 监 视 下上 吊 自 杀 和 珅原 是“ 被 自 杀”(な ん だ 和珅 が(自 殺 し たく な か った が)(皇 帝

の)監視 の 下 で 首 を つっ て 自 殺さ せ ら れ た の か)」の「被 自杀」表 す 事 象 構 造 は 、認 知 モ デ ル

に よ って 表 す と 以 下 の よ う にな る 。 実 線 の 二 重 矢 印は 直 接 的 な 影 響 、 点 線の 二 重 矢 印 は間 接 的 な影 響 を 表 し 、 点 線 の サー ク ル は 否 定 の 意 味 、こ こ で は 反 意 図 性 を 表示 す る 。

図 4-10 普 通 B類の新 型 受 動構 文の事 象 構 造

間 接 受動 構 文 ・被 害 受 動 構 文 の表 す 事 態 解 釈 に 関 し ては 、 谷 口(2005:308)は以 下 の よ う に 述 べ て いる 。

被 害 受け 身 文 も 中 立 受 け 身 文も 共 に 、 デ フ ォ ル ト 的 な tr、lm配 列 か ら 逸 脱し た 認 知 的 際 立 ちを 課 す こ と を 示 す と いう 機 能 は 共 有 し て お り、 両 者 の 相 違 は ベ ー スと な る 事 態に あ る と言 え る 。 中 立 受 け 身 文 は P-transitive relation を ベ ー ス と し た受 け 身 文で あ る の に 対 し 、被 害 受 け 身 文 はE-transitive relation とい う 拡 張さ れ た 他 動 関 係 を ベ ース と し た 受 け 身 文で あ り 、 そ の 点 に お いて 中 立 受 け 身 文 か ら の拡 張 と み な さ れ る の であ る 。

Cause (働 きか け)

Change (変 化)

State (死 んだ)

被 害 和 珅

(被 使役 者 兼 行 為 主 体)

自 殺 する 皇 帝

(使 役者)

tr 反 意 図性

「被自 杀」 は 、 使 役 者 で ある 「 皇 帝 」 が 間 接 的 に被 使 役 者 の 「 和 珅 」 にエ ネ ル ギ ー を伝 達 し 、被 使 役 者 の 持 つ 反 意 図性 を 変 え る こ と に よ って 、 被 使 役 者 が 「 自 殺す る 」 と い う行 為 を 実行 し 、 そ れ が 生 き て いる 状 態 か ら 死 ん だ 状 態に 変 わ っ た と い う 典 型的 な 使 役 事 態を 表 し てい る 。 概 念 化 者 で あ る話 者 は 間 接 的 な 影 響 を受 け る 側 で あ る 「 和 珅」 に 注 視 し 、こ の 事 態全 体 を 主 語 「 和 珅 」 にと っ て 好 ま し く な い もの と 捉 え 、 こ の 事 態 の一 部 だ け を 述べ て い る。

続 いて 、 特 殊 B類 の 事 態 把握 を 見 て み よ う 。

(13) 北 京 房 价 物 价 高 涨 不 止 , 居 民 消 费 被 增 长 。 地 名 住 宅 価 格 物 価 騰 貴 す る な い 止 ま る 住 民 消 費 受 動 上 が る

(北 京 の 住 宅 価 格 と 物 価 が 騰 貴 し て 止 ま ら な い た め 、 住 民 の 消 費 額 は 増 加 さ せ ら れ た)

[地 产 中 国 网2010-11-24]

(13)「北 京 房 价 物价 高 涨 不 止,居 民 消 费 被增 长(北京 の 住 宅 価 格 と物 価 が 騰貴 し て 止 ま ら

な い ため 、住 民の 消 費 額 は 増加 さ せ ら れ た)」の「被 增 长」が 表 す 事 象 構 造は 以 下 の よ う に 示 す こと が で き る と 考 え ら れる 。 点 線 の サ ー ク ル は否 定 の 意 味 、 こ こ で は無 意 図 性 を 表示 す る 。

図 4-11 特 殊 B類の新 型 受 動構 文の事 象 構 造

す なわ ち 、「被 增长」は 、一 方 の参 与 者 で あ る「 北 京 の住 宅 価 格 と 物 価 が騰 貴 す る 」と い う 出 来事 が 、 被 使 役 者 で あ る「 消 費 額 」 に 間 接 的 にエ ネ ル ギ ー を 伝 達 し 、結 果 と し て 「 消

無 意 図性 Cause

(働 きか け)

State (事 実) 事 態 参与 者

(使 役事 態) Change

(変 化)

住 宅 価格 と 物 価 消 費 額

(被 使役 者 兼 経 験 主 体)

騰 貴 する tr 増 加 する

費 額 」が 「 増 加 し た 」 と い う状 態 に な っ た 、 と い った 拡 張 的 な 使 役 事 態 を表 し て い る 。概 念 化 者で あ る 話 者 は 間 接 的 な影 響 を 受 け る 被 使 役 者の 「 消 費 額 」 に 注 視 し、 こ の 事 態 全体 を 被 使役 者 に 関 連 す る 有 情 物「 住 民 」 に と っ て 好 まし く な い こ と で あ る と捉 え 、 当 該 使役 事 態 の一 部 だ け を 述 べ て い る。

こ のよ う に 、 新 型 受 動 構 文の 強 迫 類 は 、 認 定 類 の表 す 他 動 事 態 と 異 な り、 直 接 的 な エネ ル ギ ーで は な く 、 間 接 的 な エネ ル ギ ー 伝 達 に よ る 使役 事 態 を 表 す 。 使 役 事態 は 他 動 事 態か ら 拡 張す る も の で あ る と 考 えら れ る 。 新 型 受 動 構 文の 強 制 類 は モ ノ 参 与 者か ら 間 接 的 な影 響 を 受け る と い う 典 型 的 な 使役 事 態 を 表 す が 、 原 因類 は コ ト あ る い は 事 態参 与 者 か ら 間接 的 な 影響 を 受 け る 、 と い っ た参 与 者 が モ ノ か ら コ トへ と 拡 張 す る 使 役 事 態を 表 す 。 言 語化 に 際 して は 、 強 迫 類 は 認 定 類と 同 様 に 、 話 者 が そ のよ う な 使 役 事 態 の 一 部の み 明 示 す る。

以 上、 動 詞 に よ る 新 型 受 動構 文 の 表 す 事 象 構 造 を考 察 し て き た 。 最 後 に、 名 詞 と 形 容詞 に よ る新 型 受 動 構 文 の 事 象 構造 を 認 知 モ デ ル で 表 すこ と を 試 み る 。

(14) 被 小 三 和 被 人 当 作 假 想 敌 的 女 生 就 在 我 们 身 边 。 受 動 愛 人 と 受 動 人 と 思 う 仮 想 敵 の 女 性 絶 対 に い る 私 た ち 身 の 回り

((愛 人 で は な い の に)愛 人 で あ る こ と に さ れ て し ま う 、 あ る い は 仮 想 敵 に さ れ て し ま う 女性 た ち が 私 た ち の 身 の回 り に い る)

[北 方网 文 化 娱 乐 2012-09-29]

(14)は 、他人 は 愛 人 で は な い 女性 た ち が 愛 人 で あ る と言 う 、とい う こ と を 表す 。換 言す れ ば 、 他人 が 女 性 た ち は 愛 人 では な い と い う こ と を 、愛 人 で あ る と い う こ とに す る 、 と いっ た 使 役事 態 を 表 す 。図 4-12 で は 、実線 の 二 重 矢 印 は直 接 的 な 影 響 を 表 し、点 線 の 四 角形 は 否 定 の意 味 、 こ こ で は 非 事 実性 、 太 線 の 部 分 は プ ロフ ァ イ ル 、 点 線 の 曲 線は 同 一 指 示 を表 す 。