第 2 章 先行研究及び研究課題
2.2 先行研究
2.2.1 使役受動構文に関する日中対照研究
日 本 語に お い て 、 使 役 で 言 い表 さ れ た こ と が さ ら に受 動 の 形 で 表 現 さ れ た「V-さ せ ら れ る 」 とい う 形 式 を 使 役 受 動 形と い う 。 日 本 語 の 使 役受 動 構 文 に 関 す る 研 究は こ れ ま で その 構 文 的特 徴 を 中 心 に 行 わ れ てき た が 、 事 態 把 握 の 面か ら の 研 究 は 管 見 で は存 在 し な い 。構 文 的 特徴 に 関 す る 代 表 的 な もの と し て 、 森 田(1977)、 前 田(1989)、 丁(2004,2005)、 高見 他
(2006)、 山 内(2007)な ど が 挙 げら れ る 。
森 田(1977)は 、使 役 受 動 表 現の 表 す 意 味 に は「 強 制 」と「 誘 発 」の 二 つ が あり 、後 者 のほ
う が 多 く 用 い ら れ る と 述 べ て い る 。 前 田(1989)は 使 役 受 動 を 独 立 し た カ テ ゴ リ ー と す る 立 場 に 立ち 、「被 役 」と い っ た 意味 用 法 の 中 に 持 ち 主 受動 と い う 間 接 受 動 に よる 使 役 受 動 態も 存 在 し、使 役 受 動 表 現 は 迷 惑以 外 に 、「 恩 恵 的 」、「 中立 的 」な 意 味合 い も ある と 指 摘 し て い る 。
ま た 、丁(2005)では 、 日 本 語の 使 役 受 動 は 、 表 面 構造 を 基 準 に す る 際 、 受動 の 下 位 タ イ プ の 設定 の 場 合 と 同 様 、 直 接使 役 受 動 、 間 接 使 役 受動 、 持 ち 主 の 使 役 受 動の 三 つ の 下 位タ イ プ が設 定 で き る と し 、 そ の三 つ の タ イ プ の う ち 、間 接 使 役 受 動 と 持 ち 主の 使 役 受 動 を中 心 に 、意 味 の 面 か ら そ の 特 性と そ れ ぞ れ の 細 部 タ イプ 及 び 連 続 性 な ど に つい て 考 察 を 行っ
て い る。
な お 、高 見 他(2006)は 使 役 受動 文 と な る 条 件 を 考 察し 、 強 制 使 役 と 原 因 使役 の 二 つ し か 使 役 受動 文 に な ら ず 、 使 役 受動 文 に 課 さ れ る 意 味 的 ・機 能 的制 約 を 提 案 し た。 す な わ ち 、 使 役 受動 文 は 、 使 役 者 が 、 当該 の 使 役 事 象 を 引 き 起こ す 直 接 的 要 因 に な って お り 、 被 使役 者・主 語 指 示 物が そ の 使 役 事 象の 直 接 的 対 象 に な っ てい る 場 合 に の み 、 適 格と な る 。 明 ら か に 、高 見 他 は 、 丁(2005)でい う 間 接 使 役 受動 文 を 視野 に 入 れ ず に 、 直 接 使役 受 動 文 の み を 考 察対 象 と し 、 こ の よ う な意 味 的 ・機 能 的 制 約 を 提案 し た 。 つ ま り 、 こ の制 約 は 直 接 使 役 受 動構 文 に し か 適 用 で き ない の で あ る 。
一 方、日 中 翻 訳の 面 に お い ては 、黄 晓兵他(2008)では 、中 国語 に 日 本 語 の 使役 受 動 文 に 対 応 す る文 型 は 存 在 し な い と し、 日 中 機 械 翻 訳 に お ける 使 役 受 動 構 文 の 「 被役 」 と 「 誘 発」
の 二 つの 意 味 の 翻 訳 規 則 を 作成 し た 。梁麗 平(2013)で は 、使 役受 動 表 現「-さ せ ら れ る 」の 史 的 発 展と そ れ が 表 す 「 強 制・誘 発・使 役・可 能 ・使 役 可能 ・尊 敬・中 立 的 」 と いう 七 つ の 意 味合 い を 考察 し 、 各 意 味 合 い に 対応 す る 中 国 語 訳 を 検 討し 、 コ ー パ ス か ら 抽 出し た 例 文 を 日中 機 械 翻訳 の 観 点 か ら 分 析 し 、規 則 を 作 成 し 、 そ の 有効 性 を 評 価 し た 。
従 来 の研 究 は 、主 に 日 本 語 の使 役 受 動 構 文 の 二 種 の意 味 用 法「 強 制 」と「原 因 」に関 する も の であ り 、 こ れ ら は 本 論 文の 土 台 と な っ て い る 。ま た 、 日 中 対 照 及 び 翻訳 の 面 か ら の研 究 で は、 中 国 語 に 日 本 語 の 使役 受 動 構 文 に 対 応 す る文 型 は な い と い う の が今 ま で の 定 説で あ る が、林 璋(2010:19)が 指 摘し た よ う に、近 年 中 国語 に 見 ら れ る、(1)の よ う に 新型 受 動 構
文「 被+X」は 日 本 語 の「V さ せら れ る 」と 同 様 に 、動 作 主 が 他 者 の 関 与 で不 本 意 に 行 為を
す る こと 、 つ ま り 「 強 制 使 役」 の 意 味 を 表 す 。 林 璋の 指 摘 は 非 常 に 有 益 であ る が 、 後 述す る よ うに 、 新 型 受 動 文 に は、「 強 制 使役 」 の み な ら ず、「 原 因使 役 」 の 用 法 もあ り 、 原 因 と 強 制 のい ず れ に し て も 、 日 中語 は 使 役 事 態 の う ち 、結 果 事 態 の 言 語 化 に おい て は 大 き く異 な る 。
(1) 小 心 “ 被 会 员 ” 和 “ 被 消 费 ”。
気 を つけ る 受動 会 員 と 受 動 消 費 す る
(会 員に さ せ ら れ 、 消費 さ せ られ る こ と に 注 意 す る)
[www.jryh.com.cn/html/2... 2010-11-17 2014/12/13 参照]
さ ら に 、(2)-(3)の よ う に 通 常 の 使 役 受 動 構 文 は こ の よ う な 使 役 受 動 の 意 味 も 表 す 。 し か
し 、 使役 受 動 事 態 を 表 す こ れら 三 つ の 構 文 に 関 す る対 照 研 究 は い ま だ に ない よ う で あ る。
(2) 倪 藻 走 进 一 个 宽 敞 的 、 同 样 昏 暗 的 客厅 , 他 被 让 人 名 歩 く 入 る 一 つ 広 々 とし て い る の 同 様 暗 い の 客間 彼 受 動 使 役 坐 在 一 个 不 新 的 暗 红 色 沙 发 上 。
座 る に 一 つ な い 新 し い の 暗 い 赤 色 ソ フ ァ 上
(倪 藻は 広 々 と し た、や は り ほの 暗 い 客 間 に 人 り、彼 は 古 び た エン ジ 色 の ソフ ァ に 案 内 さ れた)
a.使 役 能 動文:(史 太 太)让 他 坐在 一 个 不 新 的 暗 红 色 沙发 上
(史 太々 が 彼 に 古び た エ ン ジ 色 の ソ フ ァに 座 ら せ た)
[対 訳一 部 修 正 活 动 变 人 形]
(3) 东 大 同 学 刚 刚 游行 回 来, 就 被 集 合 去 听 東 北 大学 学 生 し た ば か り デ モ 帰 っ て く る す ぐ に 受 動 集 合 す る 行 く 聞 く 学 校 当 局 的 堂 皇 的 训 话 … …
学 校 当 局 の 堂 々 と し て い る の 訓 話
(東 北大 の 学 生 は 、デ モ か ら 帰っ て く る と 、す ぐ に 集合 さ せ ら れ て、学 校 当局 の 、も っ た いぶ っ た 訓 話 を 聞 か さ れた)
a.使 役 能 動文:(老 师)叫 东 大 同学 集 合 去 听 学 校 当 局 的堂 皇 的 训 话
(先 生 が東 北 大 の学 生 を 学 校 当 局 の 訓 話を 聞 く よ う 集 合 さ せ た)
[対 訳 青 春 之歌]
従 来、「 使 役+受 動 」と い う 形式 に こ だ わ る ゆ え に 、日 中対 照 及 び 翻 訳 の 面か ら の 研 究で は 、 中国 語 に 日 本 語 の 使 役 受動 構 文 に 対 応 す る 文 型は な い と い う の が こ れま で の 定 説 であ る 。 しか し 、 本 論 文 は 、 日 中語 に お い て 使 役 受 動 事態 に 関 す る 把 握 の 相 違点 を 解 明 す るた め に、以 上 の よ うな 研 究 と 異な り 、「 使 役+受 動」と い う 形 式 的特 徴 に こ だわ ら ず 、孤 立 語 で あ る中 国 語 に お い て は 、実 質 的な 意 味 を 持 た な い機 能 語 を 二 つ 繋 ぎ に くい(使 役 標 識 がつ い て いる 使 役 受 動 文 は 極 め て少 な い と い う こ と は まさ に そ の 証 拠 の 一 つ であ ろ う)た め 、形 式 上 使役 標 識 が な く て も 、日 本 語の 使 役 受 動 構 文 と同 じ 文 法 的 振 る 舞 い(対 応 す る 使 役 能動 文 が 存在 す る)及 び「 使 役 受 動」の 意 味 を表 す 受 動 文、つ ま り 新型 の 使 役 受動 文 を 通 常 の 使 役 受 動文 と と も に 「 使 役 受 動構 文 」 と い う カ テ ゴ リー に 入 れ て お く 。