精神薄弱児の概念形成に関する研究
松 村 多美恵*・加 藤 三由紀**
(1984年9月29日受理)
AStudy on the Concept Formation in the Mental Retarded
Tamie MATSUMURA*and Miyuki KATO**
(Received September 29,1984)
は じ め に
われわれが日常生活を営んでいく上で,多量の変化する情報を,個々ばらばらなものとして認知 し対処してゆくことは不可能なことである。その際,何らかの弁別的分類を行い,「同じもの」,
「似ているもの」としてそれらに対処していくことが必要である。このような等価性の形成は,概
念の発達と密接な関係がある。
概念とは,四宮(1971)によれば,「抽象作用によってそこにつくりあげられたもの」であり,
その抽象作用とは,「いくつかの素材から,それらに共通している要素を引き出す働き」である。し
たがってこの抽象作用が適切に機能しない場合,概念は発達せず,等価性の形成も遅れてくること になる。従来の研究において,この抽象作用は概念形成(分題)課題を用いて検討されてきた。概念形成とは,Bruner q 966)によると,「刺激として同じでない多くのモノや事象を分類して,い
くつかのクラスを備えた意味あるセットを作り出す方法を発明してゆく過程」である。
従来の概念形成の研究では,事例の分類のしかた,さらに分類理由の言語化の内容によってその 被験者の抽象作用の能力のレベルを分析している。まず,精神薄弱児を対象とした研究の結果を概
観すると,低MA,低IQ水準の精神薄弱児では,概念発達過程における足ぶみ状態(末分化で漠
然とした感覚的印象に固執する傾向を示し,実質的概念内容を欠いて,言語の使用が先走っている 傾向があるが,MAの階段の上昇とともに概念的分類反応は増加する傾向を示すこと(清水1962),, 分類は同一MAの健常児と同じ成績であるが,分類理由の言語化が劣ること(Milgram 1966),
さらに,精神薄弱児はMA 7〜8歳を転換期として,知覚映像的な刺激属性に基づく分類から言語 概念に基づく分類優位へと移行し,言語概念を媒介とした概念形成の発達において健常児にくらべ
MA 1〜2年のおくれがあること(寺田 1970)が報告されている。また,神田(1980)は,要
素事例の数が多くなるほど完全分類者の割合が減るが,完全分類ができた者に限定すると,言語化 の点では枚数が多くなるほど高度な分類理由の言語化が可能となること,健常児はCA 7〜8歳以* 茨城大学教育学部障害児教育学科
** 協和養護学校
後,要素事例の数によって受ける概念形成成績への影響が少なくなるが,精神薄弱児ではこの現 象がMA 9〜10歳以後となることを指摘している。
こうした精神薄弱児の概念的分類の劣弱性に対処するための手だてを検討した研究が最近になっ ていくつか発表されている。そうした手だての1つは,カテゴリー名を教示した後に分類させる方 法であり,この効果についてはStephens(1966)が実証している。従来から,精神薄弱児が分類課
題において成績が悪いのは媒介欠如(mediation deficiency)か,生成欠如(production deficien一
cy)かという論争(Landau&Hagen 1974)があったが, Stephens(1966)の結果は言語的手が かりが与えられればそれを有効に利用することができることを示しているので,精神薄弱児の分類 課題における劣弱性は媒介欠如ではなく,生成欠如である可能性が高い。しかし,藤井(1981)は ミニチュアを用いた訓練課題における視覚的探索や自由な接触活動,および言語的教示(その本質 的性質について言語的に教示すること)の効果を検討した結果,どの訓練においても有意な効果を 認めることができなかった。一方,健常児においては,概念名辞の教示が4,5歳児の事後課題お よび転移課題に効果があること(北尾・秦1971),4歳児では等価性の訓練(同じ概念に属する 対になった刺激絵を呈示し,事例名を付加した後,それらが同じ仲間であることを知らせる)が有 効で,5歳児では概念名付加の訓練が有効であること(佐藤 1978),また上位概念名辞の教示は5歳児,6歳児のいずれに対しても効果的であり,下位概念名辞の教示は5歳児に対してのみ効果 的であること(山口 1979)が報告されている。さらに,Sato(1978)は分類の方略の訓練が転
移課題にも有効であると指摘している。
以上のように,健常児におけるいくつかの教示および訓練の効果は認められているのに対して,
精神薄弱児においてはまだこの領域の研究も少なく,結果も一定ではない。また,精神薄弱児にお いては転移課題への教示や訓練の効果も検討されていない。そこで本研究においては,3種類の訓 練を精神薄弱児(および健常児)に行うことにより,その効果を検討する。その3種類の訓練は具 体的には,①概念の共通属性の説明と概念名の教示(実験1),②分類手がかりのカードを呈示
(実験皿),③分類の方略の訓練(実験皿),である。
実 験 1
方 法
被験者:被験者は茨城県内の精神薄弱児養護学校の小学部,中学部,および特殊学級に在籍する
精神薄弱児34名である。これらの被験者はMA4〜5歳群とMA 7〜8歳群に分けられ,さらに第
1分類課題不完全達成者は実験群と統制群の各々に分けられた。Table 1は各群の内訳を示してい
る。
実験材料:9cm×11cmの大きさの白ボール紙に, Table 2に示された各事例の絵を色つきで描 いたカード計48枚が実験材料として用いられた。Table 2に示されるように,第1分類から第3分
類での3課題において,各々4類,各類4要素の16枚のカードが用いられる。第1分類課題と第
2分類課題で用いられる事例の類(カテゴリー)は同じであるが要素が異なり,第3分類課題の事 例は第1分類課題および第2分類課題とは類も要素も異なっている。また,実験材料は各類に共通
馨
の色の絵カードが含まれるよ
Table 1 被験者の人数
うに作製されている。尚,呈
示順序はランダムである。
完全達成者未達成者 計
実験手続き:〈第1分類課 実験群 統制群
題>16枚の絵カードを順番に MA 4〜5歳 0 9(5.0)
8(4。8) ユ7(49)
呈示し,各事例を命名させる。
MA 7〜8歳 5(7.6)6(7.4) 6(7.2) 17(73)
命名できない時には実験者が ()内は各群の平均MA
教える。全部命名できること
が確認された後,「これらの Table 2 刺激材料
カードの中で同じ仲間に入る 類
要 素 と思うもの,一緒に集められ
驍ニ思うものを集めて,仲間 轡
たべものフりもの
パン,りんご,きゅうり,たまごゥ転車,自動車,電車,船
を作って下さい・仲間はいくつ 輪
はきもの 運動ぐつ,長ぐつ,げた,サンダル作ってもかまいません。どうし
楽 器 大だいこ,タンバリン,トライアングル,フエ ても同じ仲間に入れられないも 第課 たべもの なす,にんじん,キャラメル,ぶどう2 のりもの バス,オートバイ,ヨット,飛行機
のがあったら残しておいても 分 類題かまいません。」の教示をし
はきもの y 器
ぞうり,スリッパ,わらぞうり,くつ
Jスタネット,ピアノ,オルガン,ハーモニカ
て分類させる。被験者が分類 第課
魚 カッオ,フグ,フナ,ウナギを終了したことを確認後,実 3 道 具 カナヅチ,ノコギリ,ペンチ,ノミ
分験者はそれぞれの分類群につ 類題
家 具 鏡台,タンス,机,椅子
帽 子 麦わら帽,スキー帽,通学帽,野球帽 いて「どうしてこれらを同じ
仲間にしましたか。どういう
所が似ていますか。」と教示し,分類理由を問う。第1分類で4つの類すべてについて分類内容お よび分類理由の言語化ともに概念的レベルでなされた者を完全達成者とし,それ以外の不完全達成 者を実験群と統制群に分けた。実験群では,訓練を行った後,第2分類課題と第3分類課題を実施 する。〈訓練〉訓練は要素から類へ(訓練)と,題から要素へ(訓練2)の2とおりの方法で第1
分類課題の実験材料16枚のカードを用いて行う。訓練1は1つの類に属する4枚のカードを呈示
し,各類の説明を行う(たとえば「のりもの」の場合,これらは色や形は違っても,ひとりの人 やたくさんの人を乗せて運んだり,荷物を積んで運んだり,歩いたり走ったりしなくても行きたい ところへ運んでくれるものですね。このようなものをまとめて何と言ったらいいでしょう。1つ1 っの名前は違ってもみんなのりものと言えますね)。訓練2は,16枚のカードを呈示し,(たとえば
「のりもの」を選んで下さい。)の教示で各類の要素を選ばせる訓練である。〈第2分類課題〉〈第 分類課題〉実験手続きは第1分類課題と同様に,命名させ分類をして,分類理由を問う形をとる。
結 果
第1分類課題の完全達成者はMA 4〜5歳群には1人もみられず, MA 7〜8歳群で5名(29.4
%)みられた。したがって,MA 7〜8歳群はMA 4〜5歳群より有意に多くの者が完全達成をし
たことになる(Z2=5B6, df=1, P〈の5)。完全達成者以外の被験者,すなわちMA 4〜5歳群17名とMA 7〜8歳 Table 3 分類達成者率 単位:%
群12名を各々実験群
実 験 群 統 制 群
と統制群に分けたわけ
分類達成者 完全達成者 分類達成者 完全達成者
それらの第
であるが, M4第1
0(0/9)
0 (0/9) 12。5(1/8) 0 (0/8)1分轍題第2纐 Al第2
22.2(2/9) 0 (0/9) 12.5(1/8) 0 (0/8)課題および第3分類課 歳第3 22.2(2/9)
0 (0/9) 12.5(1/8) 0 (0/8)題における成績を示し M7第1 16.7(1/6)
0 (0/6) 50.0(3/6) 0 (0/8)たのカ㍉T。bl,3であ Al第2 50.0(3/6)
33.3(2/6) 50。0(3/6) 33.3(2/6)歳第3る。また,分類理由の
66.7(4/6) 16.7(1/6) 16.7(1/6)0 (016)
言語化の内容を分析し
たのカ㍉Table 4であ Table 4 分類理由の言語化の内容
る。尚,Table 4にお
単位:%けるA,B, C, Dは,
MA 4〜5歳 MA 7〜8歳
各々A二概念的抽象
実験群 統制群 実験群 統制群(類を名称で明確に指 A 2.0 10.0 29.0 30.5
摘したもの・・x・たべ 第2B
23.50.0 29.0
30.5Cもの),B二前概念的
22.5 12.5 6.5 15.5
D
52.077.5 35.5 23.5
抽象(機能,構造,用A 12.5 10.0 61.5
33.0途,成分,発生,形成 B
17.5 4.5 23.0
40.0第3過程,材料等によって C
30.0
ユ9.0
07.5
類似性を指摘したもの, D
40.O66.5 15.5 19.5 ex,たべる), C:知
覚的抽象(色,形,部分的類似,場所的近接,感覚等によって類似性を指摘したもの),D:非解答
(理由の主旨が不明確なものおよび無解答)である。これは,四宮(1971)の考えに基づいている。
実験皿および実験皿における言語化の内容分析も上記の分け方によっている。
実 験 豆
方 法
被験者:被験者は茨城県内の養護学校の小学部,中学部および特殊学級に在籍する精神薄弱児45
名(男子24名,女子21名)と,水戸市内の幼稚園に在籍する健常児46名(男子18名,女子28
名)である。これらの被験者は教示条件および呈示条件によってそれぞれ4群に分けられた。Table5は各群の内訳を示している。各群はMAによって統制さ礼その平均は全群5歳台である。精神
薄弱児についてはすべて,極度の情緒障害や言語障害を示さない者が選ばれた。実験材料二10cm×12cmの大きさの白色ボール紙に, Table 6に示された各事例の絵を色つき で描いたカード計20枚が実験材料として用いられた。色,形などで共通するものが含まれるが,上
位概念でカテゴリー化できるものである。
Table 5 被験者
CA MA
人
数
平均
範 囲 平 均範 囲 IQ
精神薄弱児
実験1群 10
10:2 7:10−14:2 5:3
4:3−6:1152
実験皿群 1211:2
8:9−15:05:8
4:3−6:11 51統制1群
1010:4
7:8−14:85:6 4:8−6:5 55
統制豆群 13 11:1 8:9−13:7
5:6 4:1−6:8 50
健 常 児
実験1群 12
5:7 4:8−6:6
実験H群 115:10 4:7−6:8 統制1群
125:9
4:10−6:6統制皿群 11
5:7 4:4−6:7
Table 6 刺激材料
類 要 素
た べ も の
りんζキャラメル,きゅうり,パン,たまご
の り も の 自動車,自転車,船,飛行機,電車動 物 うさぎ,犬,ぞう,ライオン,牛
楽 器 タンバリン,オルガン,大だいこ,カスタネット,ハーモニカ
実験手続き:絵カードをランダムに1枚つつ呈示しながら,命名させ,各群にそれぞれ次のよう な教示をして分類させる。〈統制条件〉:「この中で,あなたが同じものどうしだと思うものを探
して一緒に集めて下さい。いくつに分けてもかまわないし,どうしても同じものどうしにならない
と思ったものは,残しておいてもかまいません。」〈実験条件〉:呈示した全カードの中から各類に
つき1枚つつ分類手がかりとするカードを選び出し,被験者の右側に並べ,「この中で(分類手が かりのカード以外の全カードを示しながら),○○と同じものどうしだと思うもの… ,○○と同じものどうしだと思うもの(分類手がかりのカードを1枚1枚指し示しながら)を探して一緒に集
めて下さい。どうしても同じものどうしにならないと思ったものは,残しておいてもかまいません。」
分類終了後「これらはどうして同じものどうしなのですか。」と問い,分類理由を説明させる。類
の数が2個の群(実験1群統制1群)は9枚,4個の群(実験皿群,統制H群)は18枚のカード
が与えられるが,各類には4個ないし5個の要素が含まれており,用いられる類および要素は被験者によって異なる。
結 果
各被験者の分類反応を群ごとに,概念的分類,非概念的分類,および分類不能の3カテゴリーに 整理し,それぞれのカテゴリーに属する被験者の人数を示したのがTable 7である。また,概念 的分類を行った被験者の割合を角変換し,その値について処遇条件(実験条件,統制条件),類の 数(2個,4個)および被験者タイプ(精神薄弱児,健常児)の3要因の分散分析を行った結果力㍉
Table 8である。処遇条件の主効果が有意であった。しかし,下位検定の結果,精神薄弱児の実験
1群と統制1群の間に差のある傾向が見い出されたのみであったα2=3BO, df=1, P<.1)。
また,精神薄弱児の実験1群と実験皿群の間に差のある傾向がみられた(Z2=2.79, df=1,P
<.1)。さらに,分類理由の言語化の内容を分析したのが,Table 9である。
Table 7 分類の内容
単位:%
実験1群 実験H群 統制1群 統制五群 概念的分類
60(6110) 34(4!12) 20(2110) 15(2/13)精神薄弱児 非概念的分類 40(4!10) 58(7!12) 60(6!10) 54(7113)
分類不能
0(0/10) 8(1112) 20(2110) 31(4113)概念的分類
33(4/12) 27(3/11) 25(3!12) 18(2!11)健 常児
非概念的分類 42(5!12) 64(7/11) 67(8/12) 55(6111)分類不能
25(3112) 9(1!11) 8(1!12) 27(3/11)Table 8 概念的分類者の割合の分散分析表
変動因 SS df 〆=ss!σ2w P
A
(処遇条件) 292.34 1 4.02 *B (類の数) 94.67 1 1.30 C (被験者タイプ) 25β4 1 0.35 AB 12.95 1 0.17 AC 83.32 1 1.14
BC 13.04 1 0.17 ABC 19.47 1 0.26計(全群間) 541.43 7 7.44 **
群 内 一 。。 σ2w=72.71
*:P<.01, **:P〈.05
Table 9 分類理由の言語化の内容
単位:%
精 神 薄 弱 児
健 常 児
実験1群 実験∬群 統制1群 統制皿群 実験1群 実験∬群 統制1群 統制皿群
A
46 4467
89 8650
50100
B 18
12 0 11 1450 25
0C 18
00 0 0 0 0 0
D 18 44 33 0 0 0
25 0実 験 皿
方 法
被験者:茨城県内の養護学校の小学部および中学部に在i籍するMA 4〜6歳の精神薄弱児44名と 幼稚園および保育所に在籍するCA 4〜6歳の健常児70名が被験者である。これらの被験者は後述 の条件によって各々4群に分けられた。Table 10は各群の内訳を示している。
実験材料:2つの投入口のある24cm×39 cm x 19cmの分類用ポストと, Table 11に示された
刺激事例の線画による絵カード(7cm×8cm)計242枚が実験材料として用いられた。これらの
事例は,杉村・市川(1978)による幼児の概念カテゴリー規準表をもとにして選ばれた。実験計画:実験は,処遇条件(実験条件,統制条件),概念の種類(同カテゴリー,異カテゴリ 一),被験者タイプ(精神薄弱児,健常児)の2x2 x2の要因計画で行う。すなわち,精神薄弱児 健常児ともに以下の4群を設ける。〈SC−same category一群〉方略訓練時と転移課題時で同カテ ゴリーの刺激事例を用いる群。〈DC−different category一群〉方略訓練時と転移課題時で異カテ ゴリーの刺激事例を用いる群。〈SCC−same category・contro1一群〉訓練は行わないでSC群と
Table 10 被験者
人
CA
MAIQ
数 平 均 範 囲
平均
範 囲 平 均 範 囲SC
11 12:39:1−15:3
5:44:0−6:9
46.030−73 SCC 10
12:98:3−14:11 5:2
4:0−6:10 41.830−56
精神薄弱児 DC
12
11:11 8:11−15:45:6
4:9−6:10 48.630−68
DCC 11 11:9
7:9−15:4 5:3
4:1−6:10 46.435−56
SC 18 5:5 4:5−6:3 SCC 18 5:5 4:0−6:4 健 常児
DC 175:6 4:1−6:6
DCC
175:5 4:0−6:6
Table 11 刺激材料
類
要 素動物
イヌ (1枚)手がかり刺激用
虫
カブト虫(1枚)動 物 ネコ,ブタ (各30枚)
訓練課題用 虫
バッタ,トンボ (各30枚)動物 ウサ航ウマ (各15枚)
A 虫
チョウ,セミ (各15枚)本課題用
果物
ミカン,バナナ (各15枚)B 花
タンポポ,ヒマワリ(各15枚)同じ刺激事例を用いる群。〈DCC−different category・control一群〉訓練は行わないでDC群と
同じ刺激事例を用いる群。
実験手続き:SC群とDC群は以下の手続きに従って実験が進められる。〈訓練課題1>実験者は,
分類用ポストの投入口の上方に手がかり刺激用カードを置く。事例名確認後,訓練課題用カードと 手がかり刺激用カードのマッチングをさせる。カードは1枚つつランダムに手渡し,被験者が投入 する毎に アタリ ハズレ を告げることにより正誤のフィードバックをする。学習達成基準は
4試行連続正反応で,最大許容試行数は60とする。〈訓練課題2>手がかり刺激用のカードを取り 去る。訓練課題用のカードをランダムに1枚つつ手渡し,同じ仲間どうしになるようにポストに分 類して投入させる。第1試行をすべて正反応とし,その後正誤のフィードバックをしながら8試行 連続正反応の学習基準に達するまで続ける。最大許容試行数は60とする。〈本課題〉本課題用の絵 カード(SC群はAリスト, DC群はBリスト)を用い,事例名確認後,訓練課題2と同様の手続き
で行う。この課題は訓練課題に対する転移課題とみなす。SCC群およびDCC群には本課題のみを 課す(SCC群はAリスト, DCC群はBリストを用いる)。 SCC群およびDCC群において60試行ま
でに学習基準に達しない場合は,SC群およびDC群と同様の手続きによる課題を初めから課す。なお,全群において,本課題の学習達成者に分類理由の言語報告を求める。
結 果
1.本課題における学習達成者率
本題において60試行以内に8試行連続正反応の学習基準に達した被験者の割合を各群毎に示し たのが,Table 12である。この達成者率の角変換値について,3要因の分散分析を行った結果が
Table 13である。処遇条
Table 12 学習達成者率件の主効果および被験者
のタイプの主効果が有意 単位:%
であった。下位検定(12
SC SCC DC DCC
検定)の結果,精神薄弱 精神薄弱児
90.9(10/11) 50.0(5/10) 91,7(11/12) 63.6(7/11)児においてSC群がSCC 健常 児
100 (18/18) 88,9(16/18) ユ00 (17/17) 88.2(15/17)群に比べて有意に学習達
成者率が高く(Z2−4.29, Tabl,13 学習達成者率の分散分析表
df=1, P<.05), SCC群において健常児が精神
変動因 SS df ノ=ss/σ2w P
A薄弱児に比べて有意に学
(処遇条件) 954.84 1 15.66 **B (類の種類) 6.91 1 0.11
習達成者率が高かった C (被験者タイプ) 73997 1 12.14 **α2=5.18,df=1, P〈 AB 5.15 1 0.08
.05)。 AC 8・24 1 0・13
BC 10.67 1 0.17また,精神薄弱児と健
ABC 8.44 1 0ユ3
常児において,MA(健
計(全群間) 1734.24 7 28.44 **
常児ではCA)の高い被 群 内 _ 。。 σ2w=60.95
験者と低い被験者の学習 **:P〈.01達成者率を比較したのが,Table 14である。 Table 14において,精神薄弱児,健常児ともに, S C 群とDC群を一緒にしたのが実験条件であり, SCC群とDCC群を一緒にしたのが統制条件である
(κ2検定の結果,精神薄弱児,健常児ともにSC群とDC群,およびSCC群とDCC群の間に有意
差がなかったため,各々一緒にして検定した)。高MA群は,各条件中, MA(あるいはCA)の高い方から順に3分の1の被験者,低MA群はMA(あるいはCA)の低い方から順に3分の1の被
験者で構成した。z2検定の結果,精神薄弱児,健常児ともに実験条件においても統制条件においても,高MA群と低MA群の間に有意差はみられなかった。
さらに,精神薄弱児のCAの高低と学習達成者率の関連をみるため,実験条件と統制条件のそれ
それにおいて,CAの高い方から順に3分の1の被験者,低い方から順に3分の1の被験者を選ん で高CA群と低CA群を構成した。それらの平均CAと学習達成者率をTable 15に示す。 Z2検定
の結果,両条件においてCAの高低による違いは認められなかった。Table 14 MAの高低による学習達成者率
高MA 群 低MA群
平均MA(範囲)
達成者率平均MA(範囲)
達成者率 実験群6:3(5:9−6:11) 85.7%(6/7) 4:8(4:0−5:0) 85.7%(6/7)
精神薄弱児
統制群
6:2(5:7−6:10) 57.1%(4/7) 4:3(4:0−4:7) 57.1%(4/7)
実験群
6:1(5:11−6:6)
100%(12/12)4:9(4:1−5:3)
100%(12112)健 常児
統制群6:2(5:11−6:6)
100%(12/12) 4:マ(4:0−5:2) 83.3%(10/12)Table 15 CAの高低による学習達成者率
高 CA群 低 CA群
平均CA(範囲) 達成者率 平均CA(範囲) 達成者率 実験群
15:0(14:5−15:ユ0) 100%(7/7)9:2(8:11−9:8)
85。7%(6/7)統制群 14:5(13:7−15:4)
57.1%(4/7)9:8(7:9−11:7)
42.9%(3/7)2.本課題における平均所要試行数
Table 16に各群の平均所要試行数を示す。 Table 16における値は,8試行連続正反応の学習達 成基準に達するまでの試行数であり,60試行以内にその基準に達しなかった被験者については,
便宜上61試行とした。試行数を〜圧再変換して求めた各群の平均値について,3要因の分散分
析を行った結果,Table 17に示されるように,処遇条件の主効果および被験者タイプの主効果が有 意であった。下位検定(t検定)の結果,精神薄弱児,健常児ともにSC群およびDC群が, SCC 群およびDCC群より有意に良い成績を示した(精神薄弱児SC群:SCC群t=2.35, df=19, P〈.05;精神薄弱児DC群:DCC群t=2.99, df=21, P〈.01;健常児SC群:SCC群 t=4.88,
df−34, P<.01;健常児DC群:DCC群t=3.59, df=32, P〈.01)。精神薄弱児と健常児を比較す
Table 16 平均所要試行数
SC SCC DC DCC
精神薄弱児 14.09(18.92) 40.20(24.63) 7.58(16.61) 32.73(25.51)
健常児 3.28(6.61) 17.72(2α10) 4.12(6.86) 18.82(21.43)
()内はSD
Table 17 平均所要試行数の分散分析表
変動因 SS df MS F P A (処遇条件) 150.35 1 150.35 33.84 **
B (類の種類) 3.15 1 3.15 0.71
C (被験者のタイプ) 50.37 ユ 50.37 11.34 **
AB O。01 1 0つ1 0.00 AC 6.12 1 6.12 1.38
BC 5.89 1 5.89 1.32 ABC O.51 1 0.51 0.12個人差 470.84 106 4.44
**:P〈.01
Table 18 MAの高低による平均所要試行数
高MA群
低MA群
実験群
10.01(20.91) 14.33(23.34)精神薄弱児
統制群
27,32(29.24) 35.70(23.71)実験群
231(4.73) 5.40(7.91)健 常 児
統制群
5.00(9,96) 31.32(23.04)()内は SD
ると,SC群およびSCC群で健常児の Table 19 CAの高低による平均所要試行数
成績が精神薄弱児より有意によかった高CA群 低CA群
(SC群 t=2.21,df=27, P<.05;
実験群
6.41(6.48) 11.40(20.49)SCC群 t=2.15, df=26, P〈.05)。
統制群
31.91(27.39)44.33(2344)
また,精神薄弱児と健常児において,
()内はSD MA(健常児ではCA)の高い被験者
と低い被験者との成績を比較したのがTable 18である。高MA群と低MA群の構成は,学習達 成者率の分析の時と同様である。SC群とDC群を一緒にして実験条件とし, SCC群とDCCを一緒
にして統制条件とした(t検定の結果,各々の群の間に有意差がなかったため)。条件ごとにU検定を行った結果,健常児の統制条件で高MA群の方が低MA群より有意に成績がよかった(U=
20,5,n1=12, n2=12, P<.01)。
精神薄弱児における高CA群と低CA群の平均所要試行数を示したのがTable 19である。 U検
定の結果,両条件においてCAの高低による違いは認められなかった。3.分類理由の言語化
本課題で学習達成基準に達した被験者に,分類の理由を言語報告させた結果を分析したのがTable 20であよ。なお,本課題では絵カードを2分させており,分類理由についての反応は1人の被験者 につき2つづつ得られる。その2つが必ずしも同一レベルの反応であるとは限らないため,分析に 当たっては1つの反応に対して1つのレベルを与えることにした。Table 20の反応率の分母が達成 者数の2倍になっているのは,そのためである。Aレベルの言語報告を行った被験者の割合を角変 換した値について,3要因の分散分析を行った結果が,Table 21である。処遇条件と被験者タイプ
の主効果が有意であった。処遇条件の下位検定の結果,健常児のSC群とSCC群の間,およびDC 群とDCC群の間に有意差が認められた(Z2=4.68, df=1,P<つ5;!=6.45, df=1, P<.01)。
また,被験者タイプの下位検定の結果,DCC群においてのみ精神薄弱児が健常児より有意に成績が
2
ォかったα=4.78,df=1,P〈つ5)。
Table 20 分類理由の言語化の内容
単位:%
Group N
達成者A B C D
SC
1110
20.0(4!20) 10.0(2120)0(0/20)
70.0(14120)SCC
10 5 20.0(2110) 40.0(4110)0 (0!10)
40.0(4/10)精神薄弱児
DC
12 11 31.8(7!22) 4.5(1122)0(0!22)
63.6(14/22)DCC 11 7 21.4(3!14) 14.3(2/14)
0(0/14)
64.3(9/14)Total
4433
24.2(16/66) 13,6(9166)0(0!66)
62.1(41/66)SC 18 18
25.0(9!36) 5.6(2!36) 36.1(13136) 33」(12136)SCC 18 16
25.0(8!32) 25.0(8132) 15.6(5!32) 34,4(11/32)健常 児 DC
17 17 50.0(17!34) 32.4(11134)0(0!34)
17.6(6/34)DCC 17 15 56.7(17!30) 133(4130)
0(0!30) 30.0(9130)
Total 70
66 38.6(51!132) 18.9(251132) 13.6(18!132) 28.8(38/132)Table 21 概念的言語化をした被験者の割合の分散分析表 SS df π2=ss1σ2w P
A (処遇条件) 227.80 1 5.71 * B (類の種類) 1.19 1 0.03 C (被験者タイプ) 185。57 1 4.65 *
AB 1」9 1 0.03 AC 76.69 1 1.92 BC 13.92 1 0.34 ABC 13.90 1 0.34計(全群間) 520.26 7 13.04 **
群 内 一 。。
σ2w=39.88
**:P〈.01, *:P〈.05
4.統制条件の本課題で学習基準に達し Table 22 統制群の訓練後の学習達成者 なかった被験者について
SCC DCC
統制条件の本課題で学習基準に達しなか
@ 精神薄弱児 4/5 214 った被験者に対して,実験条件と同様の訓
健 常 児 2/2 2/2
練を行った結果,学習達成した被験者の割
合を示したのが,Table 22である。
5.訓練課題における平均所要試行数 Table 23 訓練課題における平均試行数
訓練課題(1)および(2)の平均所要試行
数を示したのが,Table 23である。所要試
訓練課題(1) 訓練課題(2)行数をV荊変換して求め坪均値につ 榊薄身覗 SC
cC5.18(7.12)
P.58(2.90)
16.09(20.43)
S.50(9.02)
いて,被験者タイプごとにSC群とDC群 Total
3.30(5.64) 10.04(16.60)の間の違いをt検定によりみた結果,精神
SC
2.78(6.86) 4.83(9.41)薄弱児,健常児とも,訓練課題(1)におい 健常 児 DC 2.00(3.45) 6.12(13.27)
ても(2)においてもSC群とDC群の問に有
Tota1
2.40(5.49) 5.45(11.47)意差はみられなかった。そこで,精神薄弱
()内はSD
児と健常児のそれぞれにおいて,SC群と
DC群を一緒にし,被験者タイプ間で所要試行数の研「変換値についてt検定を行った結果,
やはり,訓練課題(1)においても(2)においても,有意差はみられなかった。
考 察
まず最初に,本研究(実験1〜1皿)において絵画的材料を用いたことについて説明しておく。
Brunner(1966)によると,言語的材料による分類では,共通の用途(機能的)に基づく概念が獲 得される傾向が強く,絵画的材料による分類では,共通の知覚的部分に基づく概念が獲得されやす
い。すなわち,知覚的な面に等価性の根拠を見い出しやすい傾向を,絵画的材料は提供しうる要因 を持つということになる。また,絵画的材料では,対のかたち(2個)で分類するケース(2個群 構成の構え)が多い。たとえば2つの動物,2つの食物だけを選んで,その他の動物や食物を抱括 することができない。このように対にした事で満足してしまい,類似性の判断を下してしまうとい
う傾向がある。以上,絵画的材料では,知覚的属性を基に対を形成することが多いようである。こ のように絵画的材料には難点があるにもかかわらず,本研究で絵画的材料を用いたのは,言語的材 料を用いると精神薄弱児の場合,文字を読むことから難しく,文字と実際の事物とを結びつけるこ
とも一層困難であると判断したからである。
実験1の結果を考察する。第1分類課題において,MA 7〜8歳の精神薄弱児はMA 4〜5歳の 精神薄弱児より有意に多くの被験者が分類を達成した。これは,Bruner(1966)が指摘するように,
象徴的表象作用の発達が進んでいるからであると思われ,清水(1962)の結果と一致している。ま
た,MA 4〜5歳群において, 2個群構成の構え が多くみられた。第2,第3分類課題におい
て,MA 4〜5歳群では,完全達成者(分類も言語化も完全にできた者)は1名もいない。ただし,分類のみの達成者については,実験群において,第2,第3課題とも22.2%の上昇率であるのに対 し,統制率では0%の上昇率であった。このことは,訓練によって,分類理由の言語化までは達成 できないに七ても,何らかの基準で分類することが可能になり,その分類方略が類,要素とも異な る第3課題にも転移したことを示している。次に,MA 7〜8歳群における完全達成者は,実験群 で33.3%(第2課題)と16.7%(第3課題)の上昇率である。さらに,分類達成者も第2課題,
第3課題ともに第1課題より増加している。このことから,MA 7〜8歳群では,訓練によって類
のとらえ方を学習するとともに,概念的言語が類と結びついて使えるようになった被験者がいたことが示唆される。すなわち,MA 4〜5歳よりMA 7〜8歳の方が訓練の効果は高いといえる。と ころで,MA 7〜8歳の統制群の第2課題において,完全達成者が2名みられる。この内容をみる
と,第1分類の のりもの を 自転車の仲間 とか, はきもの を くつの仲間 と答えた被験者が,第2分類で のりもの はきもの と答えている。これは,第1分類の 仲間を作
って下さい という教示の 仲間 ということばに影響され,混乱を招いたたあと考えられる。分類理由の言語化の内容について,MA 4〜5歳の被験者で実験群,統制群ともに目立っていえ ることは, 非解答(理由の主旨が不明確なものおよび無解答) が多いということである。この結
果も清水(1962)の結果と一致する。また,実験群では, 概念的抽象 の言語化が第2課題で増 」
加しているのに対し,統制群では増加していない。この傾向はMA 7〜8歳群の被験者において著 しい。これは,概念的抽象を獲得しうる発達的基盤を持つ者にとって,概念の意味を知らせ,等価 性を付与する根拠を,子どもがすでに持っている等価的にとらえる観点の1つとして気付かせるこ
とで,その概念を使えるようになることを示唆している。
次に,実験皿の結果であるが,概念的分類者率の高い群から順に示すと,精神薄弱児,健常児 ともに実験1群,実験皿群,統制1群,統制皿群となる。精神薄弱児において,2類同志では実験群の 方が統制群より概念的分類が多い傾向がみら礼実験群同志では2類の方が4類より概念的分類が多
い傾向がみられた。以上,特に精神薄弱児において分類の手がかりが与えられ,さらに類の数が少ない
方が,概念的分類をする被験者が多くなると推察される。概念的分類反応に対する言語化は,いず れの群においても,概念的抽象の割合が最も高く,本課題がかなり易しかったことを示唆する。ま た,未発達な分題の特徴として挙げられる二個群構成反応と色による分類反応についてみると,両 者とも分類手がかりが与えられ,さらに類の数が少なくなると抑えられることがわかった。このことが上記の概念的分類成績に影響したと考えられる。
最後に実験皿の結果について考察する。本課題の平均所要試行数についての分析の結果,精神薄
弱児,健常児ともSCC群よりSC群, DCC群よりDC群の成績がよかったことから,本実験の方
略訓練は効果があったといえる。このことは,実験条件(SC群, DC群)の被験者が,訓練時に獲 得した分類の方略を,刺激事例が変わっても,さらに異概念の刺激事例においても,有効に利用す ることができたことを意味する。また,統制条件において学習を達成できなかった被験者に実験条 件と同様の訓練をしたところ,分類を達成できた被験者がみられたことも訓練の効果を示唆する。このような訓練の効果が認められたということは,概念的分類の能力を持ちながら,その方略を獲 得していないために,分類課題遂行が不可能な者が存在することを裏づけている。
精神薄弱児,健常児ともに,SC群とDC群の成績の間に有意な差がみられなかった。これは,
両被験者にとって,訓練時と転移課題時の刺激事例が同概念か否かは問題ではなく,一度分類の方
略を獲得すれば,それを他概念にも適用することが可能なためであると思われる。
さらに,全体として,精神薄弱児は健常児より成績が劣っていた。本実験では,被験者が刺激事 例に注視することができるように,刺激事例を1つづつ呈示する方法を用いた。この方法において は,たしかにそうしたプラスの効果も期待されるが,一方で,同時呈示に比べて,記憶力を要する ことも考えられる。すなわち,本課題において連続して正反応となるたあには,前のカードをどち らの投入口に入れたか,またその時の実験者によるフィードバックは アタリ だったか ハズ レ だったかを記憶することが要求されるからである。精神薄弱児の短期記憶の障害については,
以前から指摘されており(Ellis 1963),本実験における精神薄弱児の劣弱性の一因と考えられる。
以上のような考え方からすれば,どの群においても精神薄弱児が健常児より成績が悪いはずであ
るが,有意差のあったのはSC群とSCC群に限られていた。なぜDC群とDCC群においては両者 に差が認められなかったのであろうか。この一因としては,刺激事例の熟知度の違いが考えられる。
本実験の刺激事例の選択の際に参考とした概念カテゴリー規準表は,健常児を対象として作製され たものであって,健常児にとっては,用いられた事例はすべて同程度の熟知度であったとしても,
精神薄弱児にとっては,CAが高いこともあり,必ずしも同程度の熟知度であるとは限らない。 DC 群とDCC群で用いられた事例(果物,花)が,健常児以上に熟知されたものであった可能性もあ
る。このことから,精神薄弱児は短期記憶に障害があるにもかかわらず,DC群とDCC群におい
てはそのマイナス面を克服して,健常児と同程度の成績を修めることができたのではないかと考えられる。
精神薄弱児においては,本課題の学習達成者率と平均所要試行数のどちらの観点からみても,MA の高低による差,およびCAの高低による差は認められなかった。この点に関しては,本実験の被
験者より低いMAおよびCAの被験者,および本実験の被験者より高いMAおよびCAの被験者
を対象に再検討する必要があるように思われる。一方,健常児においては,統制条件の高MA(CA)群と低MA(CA)群の間に平均所要試行数の有意差が認められたが,実験条件においては有意差は 認あられなかった。このことから,健常児は低MA(4歳台)において特に方略訓練が有効である
ことが示唆される。
さらに,精神薄弱児は健常児より言語化において劣弱傾向が認められた。これは,「精神薄弱児に 分類課題を遂行させると,分類はできても分類理由の言語化については健常児に比べて遅れを示或」
というMilgram(1966)の研究結果と一致する。この結果は実験1および実験皿の結果とも一致 し,精神薄弱児の一般的特性といえそうである。本実験のような分類課題においては,分類の際,
言語の機能をあまり働かせる必要がなく,知覚的抽象や前概念的抽象によっても解決が可能である のに対し,分類理由の言語化は言語媒介が関与していなければ達成できない。したがって精神薄弱 児は健常児と比べて,分類の過程において言語媒介をしていない者が多いと考えられる。
以上,3つの実験において,概念の共通属性の説明と概念名の教示,分類手がかりのカードの呈 示,および分類の方略の訓練によって,精神薄弱児の分類課題の成績が改良されるか否かを検討し たわけであるが,各々分類達成に対しては効果が認められ,その転移効果も認められた。しかし,
言語化に及ぼす効果については,概念の共通属性の説明と概念名の教示(実験1)では効果があり
(ただし,被験者の人数が少なく,検定はしていない),分類方略の訓練(実験皿)では効果が認 められなかった。
分類課題の達成には,大きく2つの要因が関与しているように思われる。1つは,各刺激事例に 共通する属性をみつけることができるか否か,あるいは,それらの上位概念に気付くことができる か否かであり,他の1つは,分類の方略を知っているか否かである。従来の精神薄弱児を対象とし た概念形成の研究においては,前者にのみ目を向けていたように思われる。しかし,本研究の実験
1において気付いたことであるカ㍉精神薄弱児の中には,各刺激事例に共通する属性をみつけ,そ れらの上位概念に気付いていても(たとえ1弍「のりもの」の場合,自転車,自動車,電車および 船が人を乗せるものであり,それらがすべて「のりもの」の仲間であることを知っていても),具体 的にカードをどのようにしたらよいのかわからないという被験者がいたように思われる。こうした 被験者は,分類の手がかりを与えることによって,あるいは,分類の方略をあらかじめ教えておく
ことによって,分類が可能になるのではないかと考えた。実験皿および実験皿の結果,これらの方 法の効果が認められ,前述の2つの要因の重要性が確認された。実験皿において,分類の方略の訓 練が分類理由の言語報告にまでは及ぼなかったのは,共通する属性や上位概念を教示したのではな
く,ただ分類のしかたを教えたのみなので,当然といえるかもしれない。
引 用 文 献
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