論文内容要旨
論文題名 RANKL 処理 RAW264.7 細胞の NFATc1 発現に対する Palmatine 抑制 効果
掲載雑誌名 薬理と治療(JPT) 第 44 巻 第 7 号 997-1004 頁 2016 年掲載 生理系生理学(生体制御学分野)専攻 金木 清美
内容要旨
【目的】破骨細胞の前駆細胞における RANKL-RANK-NF-κB のシグナル経 路により NFATc1 発現レベルが上昇することで破骨細胞への分化が誘導さ れることから、NFATc1 は破骨細胞分化に必須なマスター転写因子である と考えられている。黄連や黄柏から単離されるベルベリンやパルマチンな どのイソキノリンアルカロイドは、NK-κB 経路の抑制作用から炎症の鎮 静あるいは病原微生物の増殖抑制を目的で用いられてきた。我々はパルマ チンの NF-κB 経路に対する抑制効果に着目して検討を行い、骨粗鬆症モ デルにおいて骨量減少を抑制し、その機序の一因として破骨細胞のアポト ーシスが誘導されることを報告した。しかしながらパルマチンの破骨細胞 分化における細胞内シグナルについては明らかになっていない。そこで本 研究では、RANKL 誘導により破骨細胞様細胞へ分化することが認められて いる RAW264.7 細胞を用いて、RANKL 添加時の NFATc1 に対するパルマチン の影響を検討した。
【方法】RAW264.7 細胞に異なる濃度のパルマチン(1, 10, 40, 100 µM)
を添加し、WST-8 法により細胞生存率を観察した。また骨吸収活性評価用 カルシウム固層化プレートを用いて RANKL(50 ng/ml)およびパルマチン の添加後の骨吸収像および蛍光標識リン酸カルシウム量の蛍光強度によ る骨吸収活性を評価した。さらに同細胞の NFATc1 産生量および mRNA 発現 量について ELISA 法およびリアルタイム RT-PCR による相対定量法により 評価した。
【結果】パルマチンは RAW264.7 細胞の細胞生存率を時間依存的、濃度依 存的に減少させた。また骨吸収度を示す骨吸収窩および遊離リン酸カルシ
ウムによる蛍光強度についてもパルマチン濃度依存的に減少した。さらに 同細胞の RANKL 誘導性 NFATc1 産生および mRNA 発現はパルマチン添加で 減少した。
【考察】パルマチンは RANKL 添加 RAW264.7 細胞の骨吸収を減少させ、破 骨細胞としての機能を抑制する可能性が示された。またパルマチンによる 当該細胞の生存率が低下は、破骨細胞様細胞の初期にアポトーシスを誘導 するという先行研究の見解と一致した。さらにパルマチンは RAW264.7 細 胞の NFATc1 発現を抑制して破骨細胞様機能の獲得を阻害することが推察 された。破骨細胞前駆細胞の NF-κB の活性化は、NFATc1 による破骨細胞 への分化を誘導し、同細胞のアポトーシスを阻害することで骨吸収を優位 にすることが知られており、骨粗鬆症など相対的骨形成が低下する疾患の 治療においては NF-κB 経路の抑制が有効とされている。本研究の結果、
パルマチンは破骨細胞分化誘導する細胞内伝達経路の抑制剤の候補薬に なり得ると考える。