• 検索結果がありません。

肺胞大食細胞に関する実験:的研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "肺胞大食細胞に関する実験:的研究"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

380 金沢大学十全医学会雑誌 第65巻 第3号 380−401 (1960)

肺胞大食細胞に関する実験:的研究

特に肺自浄作用における意義について

        金沢大学医学部病理学教室(主任 渡辺四郎教授)

      上  田  龍  男       (昭和35年4月18日受付)

(本研究の要旨は昭和25年北陸医学会及び昭和26年日本病理学会総会において発表した)

 肺臓は呼吸運動に関与する重要な臓器であるにも拘 らず,その役割上,吸入された空気とともに外界異物 が侵入して来るために,肺臓は常に生体に有害な種々 の物質の侵入の危険に曝されている.このため肺臓に は外来異物を除去すべき種々の機能が解る程度発達し ていることが認められている.而してこの機能は肺臓 内自浄作用として知られている.この肺臓内自浄作用 の問題に関しては,肺臓組織の微細構造の複雑性並び に塵埃細胞乃至は心臓弁膜病細胞と称される.諸々の 炎症に際し.て出現して来る肺胞大食細胞の由来,意義 並びに運命等の問題を伴って来るために,複雑多岐で 難解な問題として,種々研究論議されているが,未だ に解明されていない現状である.由来肺臓内自浄作用 は主として肺胞大食細胞による異物早食作用並びに肺 臓内淋巴管系統による異物の淋巴静内転移の両作用に よってなされることがいわれているのであるが,この 両作用の関連性の限界については充分明らかにされて「

いない.又異物の肺実質内侵入の機転匠関しても,如 何なる道を通り,又如何なる力によって異物が肺実質 内に侵入せしめられるのかという点,更に現在,主と して肺胞大食細胞出現の主役を演ずるものと解されて いるところの肺胞壁中隔細胞(Septumze11en)から肺 胞大食細胞の形成される機序の問題,即ち如何なる機 転によって中隔細胞が肺胞壁から剥離脱落して大食細 胞を形成して来るかという問題も,中隔細胞の貧食作 用と大食細胞の出現の両現象解明に目的論的並びに現 象論的の両観点の対立が存しているために,充分明ら かにされていない現状である.これらの点に鑑み,諸 種の異物を気管を経て肺臓内に注入し,異物の肺臓内 での運命を追及し,更に上述の諸問題についての解明 を試みた・而してこの際肺内自浄作用に重大な意義を 有している肺内大食細胞系統の機能問題についても肺

自浄作用との関連において観察し,又現在種々の研究 によって論ぜられているところの生体染色と負食作用 との異同性の問題に関しても,両者の類似性について の一知見を得たのでここに報告する.

実験材料及び実験方法

 実験材料としては,体重15瓦乃至20瓦の成熟健康

「マウス」を使用した.

 1.墨汁注入実験  1)生体における実験

 置上(古梅園紅花墨)生理的食塩水混和液を濾過,

滅菌し,背位に固定した「マウス」の気管を露出し,

%注射針を用いて,0.15cc宛を気管内に注入して肺 臓内に至らしめ,或いは「エーテル」で麻酔した「マ ウス」の鼻腔に該液を滴下して早早せしめて10滴に至 り,直後,15分,1時間,2時間,4時間,24時間,

3日,5日,10日,20日,30日,2カ月,5カ月後に 至って,「マウス」の頸動脈を切断して脱血死に至ら しめた後,肺臓を摘出した.なお肺臓摘出1時間前に おいて,38。Cに加温した2%中性赤生理的食塩水溶 液1ccを腹腔内に注入しておいた.而してこの場合 の固定は佐口脇固定法及び小田氏固定法を用い,後染 色はメチレン青を用いた.

 2)摘出した肺臓における実験

 中性赤で予め生体染色をほどこした「マウス」の肺 臓を,大動脈を一部附着した心臓及び気管と共に体外 に摘出し,気管の断端を結紮しておいてリンゲル氏液 中に保存し,心臓の右心室に注射器で38。Cに加温し たリンゲル氏液を注入し,大動脈の断端から出る液が 無色となる迄注入を続行した.しかる後,気管の断端 から墨粒,生理的食塩水混和液0.15ccを注入して肺 臓内に至らしめ,直後及び30分後に固定液中に投入し  Experilnental Studies of Alveolar Macrophages with Special Reference to the Fate of Foreign Bodies Aspirated into Lungs of Mice. Tatsm Ueda, Department of Pathology(Director:

Pro£S. Watanabe), School of Medicine, University of Kanazawa.

(2)

た.

 2.「トリパン青」注入実験

 トリパン青の2%生理的食塩水溶液を濾過,滅菌し て,墨汁注入実験と同じ要領で0.15ccを肺臓内に注 入し,直後,30分,1時間,4時聞,12時間,24時 間,3日,5日,10日,20日後に肺臓を摘出し,これ

らトリパン青注入肺はSusa液及び小田氏液19)により 固定し,後染色には「サフラニン」を主として使用し

た.

 3.非働性葡萄状球菌注入実験

 寒天斜面に24時間培養した寺島株葡萄状球菌を生理 的食塩水で浮遊液とし,56。Cに30分間おし1)て非働性 化し,塗抹標本によって大体の濃度を決定し,前述の 方法によって。.i5ccを肺臓内に注入し,直後,1時 間,3時間,9時間,24時間,3日,5日,20日後に 肺臓を摘出し,Zenker氏液で固定し,「パラフィン」

包埋によって標本を作製し,染色には主として石炭酸 フクシン液を使用した.

 4.血色素溶液注入実験

 1)血色素溶液のみを注入した実験

 人血2ccを採取し,これに等量の溜水を混和して 溶血を起させ,「フィブリン」等の凝固物を除去し,

濾過滅菌後前述の方法によって0.15ccを肺臓内に注 入し,直後,1時間,5時間,10時間,24時間,3 日,5日,10日,30日後に肺臓を摘出して,主として

「ヘモヂデリン」形成状況を検した.固定はHa11氏 法により,「パラフィン」切片を製し,Per1氏鉄反応 によって「ヘモヂデリン」の検出を試み,後染色には 主として「サフラニン」染色を使用した.

 2)墨汁注入後血色素溶液を注入した実験  恵良生理的食塩水混和液を注入後10日を経て0、15cc

の血色素溶液を注入し,更に5日間を経た後肺臓を摘 出し,Ha11氏法によって標本を作製した.

 5.墨汁及び朱浮遊液注入実験

 前述の方法により墨汁を注入し,しかる後朱の浮遊 液を注入した.即ち墨汁注入後5日を経て朱の浮遊液 を注入し,:更に1時間,1日,2日を経たものと,墨 汁注入後9日を経て朱を注入して更に1日を経たも の,及び墨汁注入後5日を経て,5日一7日聞隔に朱 浮遊液を3回注入し,最後の朱浮遊液注入後1日を経 て標本を作製したものとあり,何れも面面出前1時間 に中性赤により生体染色をほどこしておいた.

 6.葡萄糖溶液注入実験       、  1)葡萄糖溶液のみを注入した実験

 20%「ロヂノン」注射液を生理的食塩水によって2 倍に稀釈し,これの0.15ccを肺臓内に注入し,直後

10時間,1日,3日,10日後に肺臓を摘出し無水アル コールで固定後「ツエロイジン」切片を作製し,Best 氏「カルミン」染色,沃度反応及び唾液試験を併用し て「グリコーゲン」の有無を検した.核染色には「ヘ マトキシリン」を用いた.

 2)葡萄糖及び墨汁の混和液を使用した実験  20%「ロヂノン」注射液と墨粒生理的食塩水を等分 に混和してその0.15ccを肺臓内に注入し,3日後及 び5日後に標本を作製した.

 7.塩酸注入実験

 2%の塩酸0.15ccを注入して,直後,4時間,1 日後に肺臓を摘出した.

 8.;塩酸キニーネ注入実験

 塩酸キニーネの2%生理的食塩水溶液0.15ccを注 入して直後,3時間,1日後に標本を作製した.

 9.生理的食塩水注入実験

 生理的食塩水0.15ccを注入し直後,2時間,1 日,3日,10日後に標本を作製した.

 以上の諸実験の組織標本は個4の実験にて前述の特 別の固定染色による外,「フォルマリン」又は無水アル コールによって固定し,「ヘマトキシリンーエオヂン重 染色,Azan染色,ワンギーソン染色等をほどこした.

実 験 成 緕  1.墨汁注入実験所見

 1)生体肺における墨汁注入実験所見  注入直後:

 気管支腔内に.は遊離した墨粒が気管支壁に附着して いるのが認められ,腔内にも大量の遊離した墨粒が粘 液に混じて存在している.その中には少数の墨画を負 食した細胞が存在しているのも認められる.なお遊離 している墨粒は気管支分岐部,特に分岐尖部に割合多 く見られる.終末気管支の部において,気管支上皮細 胞上に遊離している感心を認め,又その部分において 両上皮細胞間に線状或いは点滴状を呈した墨粒が存在 しているのが認められ,更にこの墨粒が基底膜を超え て,気管支周囲結合織内の淋巴間隙内へと連続してい る像を認めることが出来る.又肺胞腔は一般に拡大し ている.肺胞内には多量の遊離墨粒が肺胞壁に附着し て存在しているのが認められるが,就中肋膜に接する 部の肺胞腔内に多量の雨粒が遊離して存在している像 は特に印象的である.気管支上皮細胞には墨粒を摂取 している像は認めることが出来ない.又肺胞中隔の組 織空隙内に遊離墨粒の存在している像を認めることが 出来る.更に肺胞壁に存する中隔細胞には墨粒を貧食 している像を認めることが出来るが,肺胞腔内に遊離

(3)

382 上

して存在する大食細胞は殆んど認めることが出来な い.中隔細胞の墨直心食の状況を仔細に観察すると,

中隔細胞の肺胞腔内に面する部分の胞体の周囲に墨壷 の附着している像及びその墨粒が原形質内にとり入れ られて来ている種々の段階を認めることが出来る,原 形質内の墨粒はその形状が一般に微細であり,腔内に 遊離している墨粒と比べてもその大きさは殆んど差異 がない.中性赤で生体染色をほどこした例では魚心を 負食しない中隔細胞の原形質内の中性赤威粒は,一般 にその大いさは平等であるが,墨粒を負食したものに あっては中性赤面粒が幾分増大したものも認められ,

この頼粒の周囲に微細な墨粒がそれを取捲いて附着し ている像も認められる.血管内には単球,多核白血 球,淋巴球,赤血球等の増加している像は認めること が出来ない.又肺胞壁毛細血管内皮細胞にも変化は見 られない.次に肺門部淋巴結節の入口部に幽く少量の 墨粒が認められるが,この密粒は細胞に摂取されてい るものも亡く少量認めることが出来るが,主として淋 巴洞或いは髄索等に遊離して認められるものが多い.

 注入後1〜2時間

 気管支腔内に遊離している面面は注入直後に比して 減少しているのが認められるが,墨粒を食貧した細胞 が粘液に混じて腔内に,或いは気管支壁に附着してい るものが増加している.終末気管支の部において遊離 している墨粒が両上皮細胞の間隙から線状に連続して 侵入し,気管支周囲の結合織内淋巴間隙に至り,更に その部から上行しょうとする像が認められ,又侵入部 位或いは更に上方の気管支周囲結合織内の細胞内に墨 粒が貧食されている像も認めることが出来る,而して 肺胞腔の拡大は幾分減少している.肋膜下肺胞を始め として全肺野の肺胞腔内には依然として遊離している 墨粒を多量に認めることが出来るが,肋膜下肺胞内壁 においては遊離墨壷が壁内へ侵入しつつあると考え得 る像を認めることが出来る.肺胞壁中隔細胞には歯面 を貧食したものが注入直後に比して著しく増加して来 ており,原形質内の墨画は大いさを増して美麗な頼粒 状として認められる.又中隔細胞が墨粒を貧食したま ま肺胞壁から遊離しようとしている像も散見され,肺 胞腔内に遊離して存する墨粒を貧食した大食細胞の数 も増加している.大食細胞の墨粒食食度が大であり恰 も一大墨需品の如く見られるものもあり,このような 細胞の原形質の内部構造は不明となっているが,内部 構造を認め得るものにあってはその原形質内に中性赤 の生体染色頼粒を認める.更に溶食度の大なものにあ っては中性赤心粒も著しく大きくなっているものが認 められ,その頴脳内に墨粒を認めるものもある.なお

気管支腔内にあって排泄途上の大食細胞にも中性赤面 粒を認めることが出来る.肺胞壁毛細血管内には赤血 球の充盈が軽度に認められるが,「モノチーテン」,多 核白血球その他の血液細胞成分には変化を認められな い.又血管壁内皮細胞にも特記すべき所見を認めない

.肺門部淋巴腺内には注入直後に比して墨粒の増加が 認められ,遊離して存するもの並びに細胞体内に摂取 されているものもある.

 注入後4時間

 気管支腔内及び肺胞腔内には遊離墨粒は前例に比し て更に減少し,腔内の大食細胞の数は更に増加してい る.就中肋膜下肺胞腔内には前実験において大量に見 られた遊離墨粒は本実験においては著しく減少してい るのが認められる.終末気管支の部において両上皮細 胞間から遊離墨粒が気管支周囲淋巴間隙内に侵入する 状況は同様に認められる.気管支周囲壁に附着して存 在する肺胞においては,その肺胞壁から遊離墨粒が侵 入して気管支周囲淋巴間隙へと線状に連続している像 を認めることが出来る.なお肺門に近い部分の気管支 周囲及び血管周囲の結合織内淋巴間隙に遊離墨粒の存 在が見られる.更に気管支周囲結合織内には墨粒を負 食した細胞が認められるが,肺胞壁中隔細胞もしくは 大食細胞が淋巴流によって上行したと認められる像は 見ることは出来ない.なお肺胞壁には二面の中隔細胞 を少数認めることが出来る,血管内には軽度の充血と 多核白血球が僅かに増加する像が認められるが,淋巴 球及び「モノチーテン」の増加は見られない.更に肺 胞中隔内毛細管内皮細胞の変化も認めることが出来な い.淋巴腺内の南無は更に増加して来ている.

 注入後12時間乃至24時間

 気管支腔内の遊離墨粒は漸次減少し,24時間後には 殆んど認めることが出来ない.気管支上皮細胞の負食 像は前実験と同様に認めることが出来ず,終末気管支 上皮細胞間から遊離雲粒の侵入する像も認あることが 出来ない.各気管支部位においては大食細胞の存在が 腔内に引き続き認められる.肺胞腔内においても遊離 旧知は漸次減少して来て,24時間後のものにおいては 殆んど認めることが出来ない.又寅食した壁在中隔細 胞,それが壁から剥離しようとするもの及び剥離した 大食細胞が見られ,後者は中隔細胞に比すれば貧食度 は大である.中隔細胞には有糸核分裂或いは無糸核分 裂の像が認められ,二核の中隔細胞も散見される.気 管支周囲の試合織内には雨粒が遊離し或いは結合織内 細胞に負食されている像が認められ,肺内淋巴組織及 び肺門部の淋巴結節内の記帳も漸増している.肺胞壁 毛細血管内には多核白血球の軽度の増加が認められる

(4)

外には著レい変化を認めることは出来な吟・

 注入後3日、

 気管支腔には各部位に大食細月包が散見されるが遊離 墨粒は全然認められない・気管支周囲結合白及0淋巴 線緯には紳晦夕露の幾争増殖し#啄炉卑・ら都その和 にに墨粒を章食している朝月包を認める・肺胞府には遊 離曝書嫡全然認めることが出来ず・墨画を章廉した中 隔輝脚が壁から剥離して来る像が顕著に痛めちれ・又 木食緬胞も肺鼻腔内に多数存在する・二核ρ中隔籾塵 も多く牝壁塗して寅食してい遠い中隔紳胞もその数を 増して来ている!肺胞腔内に遊離レ#本食綱胞は一事 に膨イhρ輝向を示し始め・その胞体は漸次不整形とな り1原形面内には空胞を形成するちのも認砕られる・

原形輩内②墨粒は大形となり粗になって存在する・中

性動体雑騨も一般にその色が淡儒り離醗

布も疎と饗って来ているかくの如く今期細いては 大食紳胞の「部に退行性と思われる各蓮の変化を細め る・ゆ管閤には亦血球の充盈が苓お軽度に認φられる 均ミ,多核白庭球の虚数は認められない.しカrし本実験 において始めて「モノチーテン」が血管内に幾分増加

して来ている.肺胞壁血管内皮細胞には著しい変化は 見られない.淋巴組織及び淋巴結節内の墨粒は更に増 加して来ているもののようであるが前実験に比して著

しい差を認めない.

 注入5日壕

 気管支腔内には排泄途上の大食細胞が各気管支部位 特に分岐部のあたりに見られる.これら木食細胞はす べて中性赤面体染色穎粒を保有している・気管支嗣 及び血管周囲の結合織及び淋巴組織は幾分増面してお り,内に雨粒貧食細胞の存在するのを認める.肺胞壁 においては守隔細胞の核分裂にタる噌殖炉著明に卑ら れる.肺胞壁中隔細胞の墨粒を貧食しているものは立 案験に坊べてその数が減少している・而して壁力「ら剥 離途上の中隔細胞及び肺胞腔内に遊離した木食細胞は 依然として認透ることが出来為.これらの大食細胞中 には核が膨化して染色不鮮明となり原形質が空胞状と なり,胞体も著しく不整形となり,甚だしいものは胞 体ので部が断片状となっているものもある.東に変化 が強くまさに崩壊に瀕したもの等種々の退行性変化の 像謹呈する細胞が認められる.大食細胞ρ中性赤鼻粒 は著しく疎になっており,この穎粒内に小墨粒炉縁ど つでいるものも諦められ1又至近の融合により著しく 太きくなった中性赤霊位内に墨粒が大量に包含されて いるものも認められる.血管内には「モノチーテン」

の増数が前実験に引き続き認められるが,その他の典 液纈隠球倉及び血管細々皮糸甲事跡には著しい変化は認

められない・肺門部淋巴腺申に嬬墨難の奪蕉炉見阜れ るが,その量には煎実騨に些し歪無しい葦を謬㌍〉な

い.

注入後1照

総支出内の歯噛雌駐と殆酵同柳南登・善

管卒原び虫垂壁周囲の錆合宮内に見られた畢牌章章糧 馳の数は減磁しrζれに重して煎実験に見ら塾苓牟つ た肺門に近い部の気管支周囲結合織内の尊卑間、際に遊 離した墨粒をかなり多量認めることが出来るが,この 學粒は木型円型であり大食紳耳包体内に見睡れ葬學砂粒 とその形状が類相している1月朝塗壁中隔紳胆の茸食し て畢糊するものは著しく減少し孔種々の形態を直して 壁より剥離途‡(ρもの及び腔内に脱脅した大傘輝々婿 依然として多数諦められる・貧食した中事紳胆で壁聴

しているも㊧は躍層囲・血管と騨に槻れ燭

う,及び肺尖部等の肺胞においては比較的多尽早ら築 る・又大食濾胞の崩壊への種無の段階が鐸められる⊆

とは煎実験と殆んど同様であるが,肺胞脾内には木隼 糊包の崩、騨よつて生じたと思われる町片状ρ原瑚 様物質が認められるものも南り・同様に太食紳胞ρ碑 面によって生じたと思われる中腹穎粒大ρ墨騨が 遊離して存在している像も認められる・肺胞中隔申に は二核の中隔嚢胞がぢ事も臆見されるが§日後のも(ρ に比すれば少数である.画嚢円毛細血管の赤皿球布甦 像及びその他の卑液綿胞成分多変体も殆んど認め自μ ない・血管壁内皮細胞にも著Pい変化は認吟られ:な い・更に肺門部(ρ淋巴瞬円の墨智歯には著しい変年は 認〜うられない.

 注入後20日乃至3q日

 肺胞壁に存在する藍鼠中隔糸田胞は更に減車してし「

る.肺胞腔内に遊離した大食糸甲胞の数も減奏して来て いるが・気管支々経て外部に排潤しρつある木中綿胞 の像嬬至上として婿められ,それらの大食細塵はぢお 中性赤騨粒を原形質内に保持している¢)が見写れる.

大食細胞が肺胞呼率或いは肺卑道壁面から盛事質丙r 侵入し淋巴間隙内に進むと見られるべき像は認められ

ず・磁気骸七曲は蘭曲雌今榔に彫れ 峰粒飴細脚引き書き融し味てお9!肺門に

近い部分爾淋巴間隙円には遊離良種の存在してい筍爾 が小量虚夢自れる:膣内本食細胞頓は崩壊の種々の段 階が認められる・注入後2q日のものにあっては壁在す る多核φ中隔細胞が認められ,その胞体内に小量の墨

        ヨ       リ      じ   ヒ        ダ       ゾ

粒曲舞める・肺内淋巴組織爾噌殖は幾分減少レて辛て いる・蜻内の麺球充盈像は言勘勢ず・その他の 珀1液綱胆成分及び肺胆壁血管対当細胞等にも著Pい奪 化は認められない.

(5)

384 上

 注入後2カ月乃至5カ月

 肺内の墨粒を貧食している中隔細胞及び大食細胞は 著しく減少して,5カ月を経過したものにあっては一 般肺胞内の組織像は正常に復し,藻塩貧食中隔細胞は 殆んど認めることが出来ないが,なお肋膜と大血管又 は大気管支の間に噛まれる部,血管周辺の部,及び肺 尖部の肺胞においては墨粒を貧食している中隔細胞が 未だに壁在しているのが認められる.

所見総括

 墨壷は注入直後において既に気管支から肺胞に至る 全肺野に分布する・この際肋膜下の肺胞腔内には特に 大:量の墨粒が遊離「して存在している.肺内に入った墨 粒の運命は二途に分れる.即ち一部は遊離したまま肺 実質内に侵入し,一部は肺胞壁中隔細胞に負食され る.即ち墨粒は終末気管支の部において遊離したまま 両上皮細胞の間隙から気管支周囲淋巴間隙内に進入 し,更に上行する.而してこのような像は直後から4 時間まで見られ,中隔内に存在する間隙内に遊離墨粒 の奄する像も散見出来る.気管盲壁に接して存する肺 胞においては肺内から気管支周囲結合織内淋巴間隙へ と遊離墨粒が線状に連なっている像が認められる.又 肋膜下肺胞腔内に注入直後に大量に認められた遊離墨 粒はその後肺胞壁から肋膜下淋巴管内に侵入すること が認められ,4時間後面には遊離墨画が急激に減少す るのが認められて他の部分の肺胞内と殆んど差異を認 めないようになる.淋巴間隙内に進入した遊離墨壷は 時間の経過とともに次第に肺門に近い部の気管支又は 血管周囲の淋巴間隙或いは淋巴管内に見られるように.

なるが,途中の結合織内でその部の細胞に貧食される ものも見られる.次にこれらの墨粒は肺臓内淋巴装置 及び肺門寓話は気管支周囲淋巴腺に漸次沈着するに至 る.淋巴組織内の墨粒は最初は主として遊離している ものが多く見られるが,次第に細胞体内に摂取される ものが多くなって来ている,24時間後乃至3日後頃に は肺胞腔内には遊離した墨粒は認められないようにな

る.

 次に注入された墨画の他の一部は肺胞壁中隔細胞に 負食される.墨粒往入直後には大食細胞は殆んど認め ることが出来ず,壁在する中隔細胞に墨粒負食像が先 ず認められる.負食の過程は先ず中隔細胞周辺に遊離 墨粒が附着し,次いでこれが原形質内に摂取されて行 く.原形質内にあっては墨画は最:初は微細な頼粒とし て見られるが漸次穎粒が増大して来り,1時間乃至2 時間を経過したものにあっては大凡中性赤穎粒に一致

した大いさとして認められて来る・墨汁注入後中性赤 で生体染色を行うと細胞内中性赤穎粒の中に墨粒の存

在を認めることから,墨粒は中性赤穎粒の部位に侵入 するものと考える.この中隔細胞及び大食細胞には墨 粒を無制限に負食して原形質構造不明となり一大墨粒 塊として見られるものもある.この中隔細胞は墨粒貧 食後大食細胞として漸次肺胞腔内に剥離して行き,更 に気管を経て外部に排泄されて行く.而してこの中隔 細胞の脱落は貧血した墨粒の量に比例する如くである が,ともあれ2カ月乃至5カ月後には殆んどすべての 負食中隔細胞が肺胞壁から剥離脱落して大食細胞とな り外部に排泄され終るのであるが,肋膜と大血管或い は気管支の間に挾まれた部分の肺胞においては中隔細 胞の脱落が遅延し,5カ月を経るもなお壁在する負食 中隔細胞が認められる.なお腔内に一旦剥離した大食 細胞が再び肺実質内淋巴間隙に入り更に上行するとし「

うような像ば認めることが出来ない.なおこの大食細 胞が外部に排泄されないで肺胞腔内に止っている場合 には漸次膨化し,原形質粗となって空胞を生じ中性赤 顯粒も色淡く疎となって来る.更に進むと胞体不整形 となり断片状を呈し始め,核の染色も弱くなり遂には 崩壊して墨壷粒を飛散させる.而して中性赤面粒は,

かなり後継見られる.気管支及び血管周囲結合織内に は2時間〜1日後のものに墨粒を食食した細胞が見ら れるが3日後,更には10日後には減少し,10日後には 肺門に近い部の気管支及び血管周囲淋巴間隙内に大型 の円形細粒の遊離して存するものが認められるに至 る.肺内淋巴装置及び淋巴腺内には漸増する葛鰹の沈 着像を認める.なお中隔細胞には4時間後には少数,

24時間後にはかなりの数の有糸核分裂像或いは無糸価 分裂像が認められ,3日後には2核の中隔細胞が多数 見られるようになり,20日後の標本では多核の中隔細 胞が認められる.血液細胞について見ると,雨粒注入 直後から血管内血液の充盈が軽度に認められるが数日 にして消退する.多核白血球には4時間乃至1日後に 軽度の血管内集積を認めるが3日以後のものでは正常 に復している.「モノチーテン」は1日後或いは3日 後のものには幾分増加しているのが認められるが,淋 巴球その他のもの仁は著しい変化が認められず,又肺 胞壁血管内皮細胞にも全実験を通じて著しい変化を認 めることは出来ない.

 2)摘出肺における墨汁注入実験所見  注入直後:

 気管支腔内及び肺胞腔内には遊離した墨粒が多量に 存在しているのが認められる.就中肋膜下肺胞腔内に は大量の墨粒が肺胞壁に附着しているのが見られる.

終末気管支の部において両上皮細胞間から面面の進入 する如き像は認め得ない.気管支周囲の淋巴装置にも

(6)

墨粒は見られない.肺胞壁中隔細胞の肺胞腔に面する 部の胞体の周囲には山面の附着しているのが認められ

るが貧食像は余り明瞭ではない.又肺胞腔内に遊離す る大食細胞は殆んど見ることが出来ない.肺胞壁の血 管内皮細胞にも特別の変化は認めることが出来ない.

 注入30分後:

 気管支腔内及び肺胞腔内就中肋膜下肺胞腔内に大量 の墨粒が遊離して壁に粘着している像は前実験と比較 して著しい差を認め得ない.又各所の肺胞壁或いは終 末気管支上皮細胞間隙から遊離墨譜が侵入して気管支 周囲結合織内淋巴間隙に至るような像も見ることは出 来ない.又気管支周囲淋巴装置或いは肺門部淋巴腺に も変化は見られない.肺胞壁中隔細胞には墨粒の負食 される像を少数認めることが出来るがそれが大食細胞 として肺胞壁から脱落している像は余り認めることが 出来ず,生体内のものに比すれば遙かに少数である.

肺胞壁血管の内皮細胞には変化を認めない.

 所見総括:

 注入墨粒が直後よの.全肺野に分布.ざれ,特に肋膜下 の肺胞腔内にては肋膜側の肺胞壁には特に大量の遊離

した墨粒の存在する像は生体のものと同楼である.し かし終末気管支上皮細胞の間隙或いは肺胞壁から遊離

した墨粒が肺実質内に侵入する像は認めることが出来 ない.肺胞壁中隔細胞の墨粒貧食像は認められるが,

大食細胞の出現して来る像は30分後のものにおいても なお生体実験の所見に比すれば遙かに少ないことが認 められる.肺胞壁血管内皮細胞にはその増殖遊走を思 わせるような像は認めることは出来ない.

 2.トリパン青溶液注入実験所見  注入直後〜10分後

 気管支腔内には遊離したトリパン青色素が認められ る.気管支上皮細胞には一般に「トリパン青」を摂取 したものは認められないが,所々に核及び原形質が

「トリパン青」にて禰漫性に染色されているものが極 く少数認められる.終末気管支の部にあっては両上皮 細胞間から「トリパン青」が進入して気管支周囲淋巴 間隙内に至り,更に上部の淋巴間隙へ進もうとしてい る像が見られる.肺胞腔内にあっては肋膜下肺胞腔内 に特に大量の「トリパン青」の流入する所見が認められ る.肺胞壁中隔細胞はその原形質内に「トリパン青」

を摂取しているが,注入初期に.あっては「トリパン青」

がその胞体の外囲に附着しており,それが漸次原形質 内に摂取されつつあるものを認める.原形質が「トリ パン青」によって扇面性に染色されるものも認めるこ とが出来るが,一般に原形質内の「トリパン青」は微 細な一穎粒状を呈しているものが多い.肺胞腔内には

「トリパン青」摂取細胞は未だ少数である.肺内淋巴 装置にも極く少量の「トリパン青」を摂取した細胞が 認められる.血管内血液細胞成分には著しい変化は認 められず,肺胞壁血管内皮細胞にもその増殖及び遊走 を思わせるような所見を認めることが出来ない.

 注入後1時間乃至2時間

 気管支腔内には「トリパン青」は著しく減少し,

「トリパン青」を摂取する大食細胞が存する.気管支 周囲結合織淋巴間隙内及び淋巴組織には「トリパン青」

が幾分増加しているのが見られる.肋膜下肺胞内には 多量の「トリパン青」が見られる.肺胞壁においては

「トリパン青」を摂取した中隔細胞は前例に比し著し く増加して来ているが,腔内に遊離して存在する「ト リパン青」摂取細胞の数は墨汁注入例に比すれば少数 である.なお,この大食細胞には,「トリパン青」の 外に小量の塵埃をも含有しているものも認められる,

なお未だに中隔細胞及び大食細胞には「トリパン青」

によって禰漫性に染色されているものも少数認められ るが,次第に穎粒状を呈して来るものも多く,特に核 の周辺部あたりに多いように思われる.肺胞壁血管に 僅:かに赤血球の充盈像が認められる外は血液細胞成分 には著変なく,血管壁内皮細胞にも認むべき変化は見 られない.

 注入後4時間乃至12時間:

 気管支腔内の「トリパン青」は漸次滅少して僅かに 認められるに過ぎない.「トリパン青」摂取大食細胞 が少数認められる.気管支上皮細胞には「トリパン 青」を摂取した像は見られない.気管支友び血管周囲 結合織内においては淋巴間隙内に「トリパン青」が認 められ,又結合織性細胞に摂取されるものもあり,肺 内淋巴組織内にも「トリパン青」が増加している.肋 膜下肺胞腔内の「トリパン青」は著しく減少して来て いる.肺胞壁中隔細胞及び大食細胞には原形質内に

「トリパン青」が美麗な穎粒状を呈しているのが見ら れるが,墨汁注入例の如く無制限に摂取して原形質の 内部構造が不明になっているような像は見られない.

肺胞壁から剥離する大食細胞は墨汁注入例に.比べると 非常に.少ない.血液細胞成分及び血管壁内皮細胞等に

も特記すべき所見は認め得ない.

 注入後1日:

 気管支腔内及び肺胞腔内には遊離した「トリパジ青」

は殆んど見られない.気管支腔内には「トリパン青」

摂取大食細胞が僅かに認められる.「トリパン青」摂 取中隔細胞の壁在するものは減少し,その剥離像及び 遊離大食細胞は増加している.その外に特に著しい所 見は認めることが出来ない.

(7)

38Sぴ .上

 注入後3日:

 気管支腔内及び肺胞腔内たは遊離した「トリパン青」

は認められない.「トリパン青」摂取大食細胞は依然 として気管支腔内に認められる.気管支周囲結合織内 には「トリパン青」が遊離或いは結合織性細胞に摂取 されている.淋巴組織内にも「トリパン青」は見られ る.肺胞腔内には「トリパン青」摂取大食細胞が増加 している.この「トリパン青」摂取量には種々の殺階 が認められ,原形質が空胞状を呈し,その空胞壁を微 細な「トリパン青」顯粒が縁どっているものも認めら れ,更に大食細胞崩壊への種々の過程が認められる.

肺胞壁中隔細胞には2核のものがかなり多数認めら れ,その中隔細胞が「トリパン青」を摂取している像 も見ることが出来る.血管内血液細胞成分及び血管壁 内皮細胞には著しい変化を認めることは出来ない.

注入後ブ日・

 気管支腔内の状況は前例と殆んど同様である.気管

:支周囲結合織内の状態も大体向様であり,気管支周囲 淋巴装置には多数の「トリパン青」摂取細胞が見られ る.肺胞腔内にあっては遊離した大食細胞が更に増加 している.血管内においては「モノチーテン」が始め て軽度に増加して来ているのが認められるが,その他 の血液細胞成分及び肺胞壁血管内皮細胞等には著しい 所見は認められない.

 注入後20日:

 気管支腔内の状況には大差はない.気管支周囲淋巴 蘭隙内には「トリパン青」が依然として認められ,肺 門に近い部の淋巴組織内にも相当:量の「トリパン青」

を認める.肺胞壁の「トリパン青」摂取中隔細胞は未 だ少数認あられるが,一般に大食細胞内にあっても

「トリパン青」の頼粒は7日後のものに比すれば小型 であり,又甥も少なくなっている.なお肺胞腔内にも

「トリパン青」微細砂粒が少量認められる,肺胞聖血 管内血液細胞成分には出刃を認めず,血管内皮細胞に

も何らの変化を見ることが出来ない.

 所見総括・

 「トリパン青」注入直後の肺野分布その後の肺実質 丙侵入及び肺胞壁中隔細胞により摂取される状況は墨 汁注入例と殆んど同様である.気管支友び血管壁周囲 淋巴間隙及び結合織内に認められる「トリパン青」は 墨汁注入例に比して大量で且つ早期に認められる.又 淋巴組織内にもより速かに認められるボ明解における

       ど

処理状況も速かであって∫12時蘭乃至24時間後には肺 胞腔内に「トウパン青」は最早認められない.中隔細 胞による摂取状況は最初に原形質が禰漫吟に「トリパ ン青」によって染色惑れるものも認められるが,先ず

胞体の外囲に「トリパン青」が附着し,漸次胞軍内に 摂取され,微細願粒状を呈し,次いで美麗な頼粒状を 呈して来る.しかし,墨粒摂取細胞に見るように摂取 が過度に進行して原形質構造不鮮明となるものは認め 得なかった.注入後1日頃より中隔細胞の脱落が顕著 に現われ,大食細胞として気管を経て次第に外部に排 泄されて行くのを認めるが,この場合大食細胞の出現 の速度は墨汁注入例に比すれば緩徐である.又肺胞腔 内での崩壊状態も墨汁注入例に比すればその程度は軽 微である.中隔細胞にはやはり増殖像力弐認められ,2 核の中隔細胞が「トリパン青」を摂取している像も認 めることが出来る.気管支上皮細胞には「トリパン青」

を摂取した像は認めることが出来ず,「モノチーテン」

の血管内増加が注入後7日のものに軽度に認められ,

又初期において赤血球の充盈が軽度に認められる外に はその他の血液細胞成分及び肺胞壁血管内皮細対等に は全例を通じて何らの著しい変化は認め得ない.

 3.非勢性葡萄状球菌浮遊液注入実験所見  注入直後:

 気管支腔内には多数の葡萄状球菌が遊離したまま気 管支上皮細胞上に附着し,或いは腔内の粘液中に混じ        くて存在しているのが認められる.しかし,気管支上皮 細胞には貧食像は認められない.終末気管支上皮細胞 上並びに両上皮細胞間隙に葡萄状球菌を見,更に気管 支周囲淋巴間隙内に遊離して存在するのが認められ る.肺胞内に.も遊離した葡萄状球菌が多数肺胞壁に附 着して存在しているのが認められるが,「トリパン青」

注入の場合と同じように肋膜下肺胞腔内に多数存在す るのを認めることが出来る.葡萄状球菌を入れる肺胞 腔は他のものに比してやや拡大している.肺胞壁中隔 細胞には葡萄状球菌を貧食しているものが見られるの が極めて少数である.肺胞腔内には葡萄状球菌を負食 する大食細胞が認められるが,これも極めて少数に過 ぎなも).気管支周囲の結合織内及び淋巴組織には著変 を見ない.血管内には赤血球の充盈が軽度に認められ る外には血液細胞成分には著しい変化が見られない.

 注入後3時間・

 気管支腔内には遊離した葡萄状球菌及びそれを貧食 した大食細胞が粘液に混じて存在している.気管支周 囲結合織内の淋巴間隙には遊離した葡萄状球菌が存在

し,そめ部の結合織性細胞(局所組織球)に貧食され ている禦も認められる.更に肺門部淋巴腺内にも葡萄 状球菌力現られる.菌の注入直後に拡大した肺胞は大 体正常に復している.肺胞壁に附着する菌を見る.中 隔細胞たも大:量に葡萄状球菌が貧食されており,腔内 に遊離した大食細胞もかなり認められる.凍形質内に

(8)

克ちれる葡萄状球菌は,未だに遊離している葡萄状球 菌と比較しても形態的には何らの差異も見出し難い.

中隔細胞には有糸核分裂像を認めることが出来る.血 管内赤血球充盈は減退して来ており,その他の血液細 胞成分及び血管壁内皮細胞にも著変を見ない.

 注入後9時間〜24時蘭

 気管支腔内の遊離葡萄状球菌は漸次減少して来り,

葡萄状球菌を貧食した大食細胞の数も少ない.肺胞腔 内には遊離葡萄状球菌は24時間後には認められなくな る.中隔細胞及び大食細胞の葡萄状球菌を貧食したも のが多数見られるが,葡萄状球菌の染色が不鮮明とな り,形骸のみが見られるに過ぎないものも認められ,

大食細胞には葡萄状球菌の外に小量の塵埃をも併せ食 しているものが認められる.肺胞壁中隔細胞には2核 のものも認められる.肺門部淋巴腺内には葡萄状球菌 を認める.血管内赤血球充盈像は未だ軽度に残存する ようであるがその他の所見には著しいものを見ない.

 注入後3日〜5日〜20日:

 気管支腔内及び肺胞腔内に存する大食細胞は極めて 少数である.中隔細胞及び大食細胞体内に見られる葡 萄状球菌は漸次輪廓不鮮明となり,染色性も減退して 来て一般に小型となり,又それが細胞内において融合 していると思われる像も認められ,更に20日後のもの には葡萄状球菌は激減している.なおこのような早食 中隔細胞は肺胞壁から脱落する一ことが極めて少ないこ        じとも注目される.淋巴装置内の葡萄状球菌も漸次認め

られないようになる♂肺胞壁毛細血管内には3日乃至 5日後頃には「モノチーテン」の軽度の集積が認めら

れる.

 所見総括:

 葡萄状球菌注入直後の肺内分布及び肺実質内進入並 びに淋巴管に入った菌の淋巴組織内沈着状況等に関し ては墨汁及び「トリパン青」注入の所見に比して著し い差は認められない.又気管支上皮細胞には貧食像は 認あられない.肺胞壁中隔細胞に葡萄状球菌食食像が 見られ,3時間後のものには大食細胞の出現がかなり 多数認められるが,墨汁或いは「トリパン青」注入の 場合と異なり,菌注入後1日,3日と時を経るに従 1)1中隔細胞の脱落が少なくなる.胞体内葡萄状球菌 は3時軍陣には何ら形態的の変化を生じないが,1日 以後のものにあって菊萄状球菌の染色不鮮明となり,

形骸のみ認められ,数を減じて行く等種々の消化現象 の過程が認められ,漸次原形質内において消失して行

くのが認められる.又巾隔細胞には3時間後に増殖像 が認められ,1日後友び3日後には2核の中隔細胞が 認められる.この核牙裂には有糸核分裂及び無糸核分

裂の両様式が入り混って存在している所見が認められ る.多核白血球及び赤血球の増加は初期において軽度 に認められ,「モノチーテン」は3日後頃に多少増加 している像が見られるが墨汁注入例に比すれば軽度で ある.その他の血液細胞成分及び血管壁内皮細胞には 著しい変化を認めることが出来ない,

 4.血色素溶液注入実験所見  r)血色素溶液のみを注入した実験  注入直後乃至3時間後:

 血色素溶液注入直後には肺胞腔の拡大が認められる が間もなく消罰する.血管内には赤血球の軽度の禿盈 が認められるがその他の血液細胞成分には著しい変化 が認められず,血管壁内皮細胞にも変化は見られな い.肺胞腔内には極く少数の遊離した大単核細胞を認 あ,これらの中には塵埃を小量貧食しているものも見 られるが,「ベルリン青」反応は陰性である,なおこ の外全肺野に「ベルリン青」反応陽性の物質を認める

ことは出来ず「ヘマトイヂン」結晶も認められない.

中隔細胞にも著変を認めない.

 注入後10時間

 肺胞壁中隔細胞原形質内に「ベルリン青」反応陽性 の頼粒が認められ,その原形質内における形状は微細 な穎粒状を呈している.文肺胞腔内に存在する犬食細 胞体内にも「ヘモヂデリン」色素が認められるが,こ れらの所見は就中肋膜下の肺胞において多数認あるこ とが出来る.なお,大食細胞には少量の塵埃をも併せ て食食しているものも見られる.又気管支腔内及び気 管支周囲結合織内及び淋巴組織内にも「ヘモヂデリン」

色素を細胞体内に保有している細胞が少数認められ る.なお遊離している「ヘモヂデリン」色素は肺内に おいて認めることが出来ず,「ヘマトイヂン」結晶も 認められない.細胞体の内外を問わず全肺野において 認められない.肺胞壁血管内においては著しい変化は 見られない.

 注入後1日乃至3日

 「ベルリン青」反応陽性物質を保有する中隔細胞の 脱落途上のもの及び剥離した大食細胞の出現が漸次顕 著に認められて来るが,壁在している中隔細胞もかな り多数認められる.中隔細胞及び大食細胞原形質内の

「ヘモヂデリン」穎粒は10時間後のものと比較すると 美麗な穎粒状を呈して来ている.遊離して存在する

「ヘモヂデリン」色素及び「ヘマトイヂン」結晶は見 られない,淋巴組織内に「ヘモヂデリン」色素が僅:か に認められる.血管内の状況には著しいものは見られ

ない.

 注入後10日乃至30日

(9)

388

 「ヘモヂデリン」色素を保有する中隔細胞は漸次肺 胞壁から姿を消す.「ヘモヂデリン」を保有する中隔 細胞で肺胞壁に残存するものは肋膜と大血管又は大気 管支に挾まれた部及び肺尖部の肺胞において特に多く 見られるが,その他の部の肺胞部の組織像は漸次正常 に復して来る.血管内血液細胞成分には著しい変化は 見られないが,「モノチーテン」は10日後のものに幾 分増加している像が認められるが30日後には正常に復

している.

 所見総括・

 血色素溶液を注入した場合注入後3時間迄は「ヘモ ヂデリン」形成は認められず,大食細胞の出現にも著 しいものを見ない.10時間後に至ると中隔細胞原形質 内に「ヘモヂデリン」の形成が認められ,しかる後大 食細胞の出現が顕著に見られて来る.気管支周囲結合 織及び淋巴装置内に僅かに見られる「ヘモヂデリン」

の状況も前の諸実験の所見に比して著しい差を認めな い.「ヘモヂデリン」の形成はすべて細胞体内におい てのみ認められる.「ヘマトイヂン」結晶の出現は全 例を通じて認め得ない.血管内においては10日後のも のに「モノチーテン」の集積が軽度に認められる外に は著しい変化を認めることは出来ない.

 2)墨汁注入後血色素溶液を注入した実験所見  墨汁注入後10日を経て血色素溶液を注入し,更に5

日を経て検査した.

 気管支腔内の各部位において大食細胞が多数見られ るが,それらには出汐を貧食しているもの,「ヘモヂ デリン」を保有しているもの及び両者を併有するもの 等が認められる.肺胞壁中隔細胞には墨粒と「ヘモヂ デリン」を併有するものと「ヘモヂデリン」のみを有 するものとが認められが前者は極めて少数である.肺 野の部位によって墨粒と「ヘモヂデリン」の分布状態 の相違しているのが認められるが,両者の混在してい る部では,大食細胞は殆んどすべてのものが両者を併 有している.この像は特に肺尖部等の肋膜下の肺胞に おいてやや多いことが認められる.両者を併有してい るものは殆んど肺胞壁から脱落している.同一肺胞腔 内において墨粒と「ヘモヂデリン」を単独に保有して いる大食細胞の見られることは殆んどない.気管支周 囲結合織内及び淋巴組織内に雲粒及び「ヘモヂデリン」

が細胞体内に包摂されている像も認めることが出来 る.而して「ヘマトイヂン」結晶は肺の何れの部位に おいても認めることが出来ない,血管内には充血が軽 度に認められるが,他の血液細胞成分には著しい変化 が認められない.なおこの実験の結果から既に砂粒を 貧食して肺胞壁から剥離した大食細胞が数日を経ても

なお「ヘモヂデリン」形成機能が保たれている事実を 知ることが出来る.

 5.墨汁注入後朱浮遊液を注入した実験所見  墨汁注入後5日を経て朱浮遊液を注入後1時間の所

 見・

 気管支腔内には朱が遊離して気管支上皮上に附着し ており,管内には粘液に混じて大食細胞が認められ,

該大食細胞の原形質内には墨粒並びに朱を併有するの が見られる.又朱のみを貧血しているものは僅:かに見 られるが,しかし墨粒のみを貧食しているものは盛ん ど見られない.肺胞腔内には朱が中隔壁に附着し或い は粘液に混じて腔内に遊離している.本知においては 既に墨汁注入によって遊離した墨粒面食大食細胞によ って朱の負食が行われるため朱の貧食度は大である.

而して壁在中隔細胞には朱のみを食するものは余り認 められず,墨粒のみ或いは墨田と朱を併せて負食して いるものが多い.これに反して大食細胞には墨粒及び 朱を併食するものが多く認あられる.又写細胞食細胞 の外囲を朱が包囲して附着しているものも認められ る.気管支周囲淋巴間隙には朱が遊離して存在するも のも少量認められる.肺胞壁血管内には著しい変化は 認め得ない.

 墨汁注入後5日を経て朱を注入し1日後の所見=

 肺胞腔内に未だに遊離している朱の存在を認める.

特にこの現象は墨粒の侵入する量の多かったと思われ る肺胞腔内において著しい.腔内には墨粒と朱を併せ て負食している大食細胞が多数見られ,朱のみを負食 している大食細胞乃至は中隔細胞も前例と比すれば増 加している.気管支腔内にもこれらの大食細胞が見ら

れる.

 墨汁注入後5日を経て朱を注入2日後の所見:

 気管支腔内の所見は前例に比して著しい差を認める ことが出来ない.又肺胞腔内には墨粒及び朱が遊離し て存在する像は殆んど見られない.中隔細胞には墨粒 並びに朱を併せて貧血するものが多く認められ,朱の みを負食するものも幾分増加している.大食細胞にも 大体同様な所見が認められる.大食細胞の形態及び大 きさは種々雑多であるが,中には胞体が著しく膨化し て原形質疎となり崩壊の過程としての形態と認められ るものも多いが,相当度崩壊に瀕した細胞にもなお中 性赤生体染色顯粒を証明することが出来る.血管内所 見には著しい変化を認めることは出来ない.

 墨汁注入後10日を経て朱注入1日後の所見:

 気管支腔内に遊離した朱が未だに認められるが,し かし少量に過ぎない.肺胞腔内に墨顯粒の飛散してい るのを認める所もあるが,この墨穎粒はかなり大であ

(10)

り中性赤二三と似ている.この外に崩壊寸前と目され る大食細胞を諸所に認めることが出来る.

 墨汁注入後朱を反覆注入した場合の所見:

 墨汁注入後5日を経て5〜7日商隔に.朱浮遊液を3 回注入し,最後の朱浮遊液注入後1日を経た肺を検索 すると,気管支腔内,肺胞腔内及び肺胞二等における 墨粒の量は著しく減少しており,中隔細胞には主とし て朱のみを負食しているものが多く見られる.大食細 胞にも二二と朱を併せ食しているものと朱のみを食し ているものが認められるが,併せ食しているものでも その丁丁量は極め丁少量である.この外諸所に墨粒及 び朱の飛散しているものも認められるが,山内の墨粒 の総量は墨汁のみを注入して20日間を経たものに比す れば遙かに少ない.

 所見総括:

 墨汁注入後朱を注入すれば、初めに墨粒侵入に際し て出現した大食細胞の存在により初期における朱の貧 食速度が速かであることが認められる.而して墨粒注 入量の大であったものでは朱の負食は遅れて現われ,

朱注入後2日を経過したものにおいて始めて腔内に遊 離した朱の消失を認めた.朱のみを負食した中隔細胞 及び大食細胞の出現は同じ時間を経過した墨汁注入例 におけるそれの出現に比すれば遙かに遅れる.大食細 胞は朱注入後1日を経ればその崩壊像が著明となり種

々の段階の崩壊過程を見,肺胞腔内には細胞崩壊によ って生じたと思われる大型の墨二二を認めることが出 来る.墨汁注入後反覆して朱を注入した例では,朱を 貧食することにより壁在する墨粒寝食中隔細胞は速か に壁か・ら脱落剥離して大食細胞となり肺胞から外部に 排泄されてしまうことが認められる.血液細胞成分及 び肺胞壁血管内皮細胞等に関しては特記すべき所見を 認めることは出来ない.

 6.葡萄糖溶液注入実験所見

 正常肺に.ついて「グリコーゲン」染色を行うと気管 支上皮細胞並びに中等大動脈周囲滑二筋に極めて少量 の「グリコーゲン」が証明されることがあるが,その 他の肺野には認めることは出来ない.

 注入直後・

 正常肺と殆んど差異を認めることが出来ない.

 注入後5時聞乃至3日3

 何れのものにも著しい差は認められない,気管支上 皮細胞,気管支周囲淋巴組織内細網系細胞及び肺胞壁 中隔細胞体内において,禰二二或いは穎粒状にベスト 氏「カルミン」染色陽性の物質を証明し,これは唾液 試験によって著しく減少するのが認められる.なおこ の中隔細胞が肺胞壁から剥離して来る像は殆んど認め

ることは出来ない.血管内の状況にも著しい変化は認 められないが,血管内多核白血球及び血管外膜細胞体 内に「グリコーゲン荘が証明される,

 墨汁及び葡萄糖溶液混和液注入後3日一5日の所

 見:

 庁内墨粒の分布状況は墨汁の単独注入例に比して著 しい差を認めず,肺臓の組織学的変化も亦同様であ る.気管支上皮細胞及び淋巴組織内には前例と同様に

「グリコーゲン」が証明される.中隔細胞には「グリ コーゲン」のみを認めるものと,それが墨粒と混在す るものとが認められる,大食細胞は墨粒を大量に負食 しているものにあっては見難いが二二二食量小なるも のにあっては墨二二の間に「グリコーゲン」穎粒が認 められる.而して「グリコーゲン」のみを有する大食 細胞は殆んど認められない.

 所見総括=

 気管支上皮細胞には正常時にも極めて僅か「グリコ ーゲン」が証明されることもあるが,葡萄糖注入によ り増加が認められる.中隔細胞には正常肺においては 見難いが葡萄糖注入によりその原形質内に「グリコー ゲン」集成が認あられ,大食細胞も同様である.而し て「グリコーゲン」を集成する中隔細胞が肺胞壁から 脱落して来る像は殆んど見ることが出来ない.血管内 血液細胞成分には著しい変化を認めることは出来な

い.

 7.1%塩酸注入実験所見  注入直後乃至30分後:

 気管支上皮細胞には著変を認めない.肺胞中隔壁内 血管には何れの部位においても赤血球の充盈像が認め られる.しかしその他の血液細胞成分には著しい変化 は見られない.肺胞腔には軽度の拡張が認められる が,中隔細胞には二三を認めず,又その腔内に剥離し て来る像も殆んど認められない.

 注入後5時間乃至1日:

 肺胞壁の充血像はかなり減退しているがその他の血 液細胞及び血管内皮細胞には変化は見られない.肺胞 においては中隔細胞が壁から脱落して来ている像をか なり多く認めることが出来る.この大食細胞には少量 の塵埃を貧食しているものも認められるが然らざるも のも相当多く見られ,その内には原形質が空胞状を呈

している細胞も認められる.

 所見総括:

 気管支上皮細胞には著しい変化を見ない.肺胞壁内 血管には赤血球の充盈像の他には著しいものを見な い.中隔細胞の剥離像は5時間後のものに著しく認め られ,これらの中には原形質空胞状を呈している細胞

(11)

3鍍

も認められる.

 81・2%塩酸キニーネ注入実験所見  注入直後:

 肺胞腔拡張して,肺胞中隔に軽度の赤血球充盈を認 める外,中隔細胞その他には著しい変化は見られな

い.

 注入後3時間:

 気管支腔内には小数の単核綿胞が認められ・肺胞腔 の拡張は或る程度減少している,肺胞壁血管内皮細胞 及び血液細胞成分には著しい変化は認められない.肺 胞腔内には中隔細胞揮剥離して大食綱胞として出現し 却ものが多数認めることが出来る.この大食綱胞には 少量:の塵埃を草食しているものも見られるが,何らの 異物をも認め得ないものも多数認められる.それらの 大食細胞には原形質が多少空胞状を呈するものを認め ることが出来る.

 注入後1日〜3日=

肺晦腔内に存する大食細胞及びそれの気管支を経て 外部に排泄される像は依然として見られるが,a時間 後のものに良して減少して球少している・大食細胞の 外観は前例と同様である.その他皿管内所見及び気管 支周囲結合織又は淋巴組織にも著しい変化は認められ

ない.

所見緯括・

気管支上皮細胞,血液細胞及び血管壁内皮細胞には 著しい変化は認められない.3時間後より中隔細胞の 剥離が認められ,1日後においてこの状況が継続して いる.大食細胞には原形質空胞状を呈するものが早く から認めることが出来る。

 9.生理的食塩水注入実験所見  注入直後乃至2時間後・

 気管支上皮細胞には著しい変化は見られない.肺胞 の部位においても著しい変化は認められない.、又肺胞 壁血管内にも著変はない.肺胞壁中隔細胞にも変化が 見られないが,鳴く少数(g大食綱胞が特に肋膜下肺胞 腔内に見られる.而してこの大食細胞の数は前述の諸 種の異掬を注入した例に比すれば殆んどいうに足りな い位少数であり,この大食細胞には少量の塵埃を負食

しているものもある.

 注入1日後一3日後:

 肺胞壁血管内に多核白血球及び赤血球の軽度の増加 が認められるが,内皮細胞には変化を認あない.肺胞 中隔には軽度の腫脹が認められる.中隔細胞には変化 が見られないし,又大食細胞は殆んど認めることが出 来ない.但し稀に見られるものも少量の塵埃を食食し ているものが多く,生理的の範囲を出ない.

注入後10日・

 肺胞腔内には遊離した大食細胞は殆んど見られな い.血管内所見も正常に近づいている.その他気管 支・肺胞部位の組織像には著しい変化は認めら制な

い.

 所見総括・

 生理的食塩水注入によって輝織に与える影響は僅少 であって,初期に肺胞壁血管内の赤虹言及び多核白血 球の増加を謬めるが漸次年常に復している乳中隔糸甲信 は初期において特に生理的食晦水癒入の多い肋膜下肺 胞腔において少数脱落して木食綱胞を形成するが1目 以後には殆んど認められない.中隔国書には核分裂に よる増殖像を認めること導出来ない・

 肺臓内注入異物の運命に関する実験的研睾は既に Slavjansky 2の」環s冥)・RupPeエt 23)等の最例の研究以 来今日に至る迄極めて多い.これらの研究の多くは 各種の物質の浮遊液・溶液乃至は乾燥した物質(塵埃 等)を気管から吸入により肺臓内に到達させ,肺臓内 において演じられる過程を組織形態学的な立場から追 求して吸入異物の運命を検討しているのであるが,肺 臓微細構造の複雑性及び肺胞大食細胞の由来や役割等 に関する種々不無明な点かち孝だ一致を見ない・

 従来肺内自浄作用には二つの途が謬められている.

即ち一は肺臓内琳巴管系緯によって行われる異物の淋 巴腺内沈着作用であり,他に肺胞大食糸甲胞による貧食 作用で,この両作用にホつて零露自浄作用が完遂され ることが認められているのである,古来の文献を通直 すると,:Lubenau 13)は吸入された異物の大部分は再 び外部に排泄喀出されるが,肺組織内に侵入した塵壕 は数時間後には気管支淋巴腺内に誕明さ妬肺胞から 淋巴腺内に到着する時間は甚だ迅速で塵壌吸入停止律 速かに肺は完全に清掃されるものといってPる・

Knauff i1)は生後3日の仔猫において気道及び肺臓1勺 には塵埃は認めないが,気管支淋巴腺及び縦隔蜜淋巴 此内においては炭粉の存在を認φたといって右り・炭 塵は遊離したまま,或いは細胞に負食されて肺実質内 に入るもので,肺胞腔と肺胞壁内には自由な交渾が存 在し,組織内の炭粉の前進には淋巴管が関与するもの であるといっている.V・1耳sは燧石吸入実験に:おい て,組織内において白血球が異物を負食して2倍乃至

3倍大に至ることを述べ,これは初期には肺胞中隔命 岐部と肺胞中隔内に少数認められるが漸次深部紐織殊 に血管周囲の肺実質内にこの細胞が納められることに より,塵埃はこの白卑球に貧食されて肺実質内に侵入

(12)

するものと考え・た.Kδ11iker 12)は異物吸入後,異物 は肺胞或いは肺胞道の上皮細胞の間隙から肺実質内に 進入するものと考えた.又Ruppert 23)は異物吸入後

2時間で肺門淋巴腺内,主として淋巴濾胞もしくは淋 巴索に附着する炭末を認めた.彼は吸入された炭末の 大部分は,気管支粘膜上に附着して顛毛運動により直

ちに外部に排除され,その一部はその粘液中に存在す る細胞に寅食される一もめ.もある一ととを述べている.又 彼は肺胞腔内と肺実質内を連ねる結合部を想定し,こ の結合路から炭末が遊離七たまま肺実質内に進入して 行くことを考え,更に彼はその外に大食細胞によって 肺実質内に持ち込まれるものも一部存在することを考

えた、西川17)は気管支腔内から遊離血忌の肺実質内に 侵入するもののあることを述べたが,その侵入部位と

して言言の存在する部位においては上皮型淋巴組織を 有する部分から,二子形上皮,又は扁平上皮を有する 部位においては至る所から炭末が侵入して二言織内に 至り,これが淋巴流によって肺門部に運ばれるもので,

上流の淋巴組織程早期に炭末の沈着を見ることを述 べ,又大食細胞に摂取された炭末も亦,大食細胞が肺実 質内部に侵入して行くことにより,共に内部に持ちこ・

まれて行くことを述べている.堀地6)も亦結核菌を吸 入する際に終末気管支上皮細胞上,細胞間及び気管支 周囲結合織並びに淋巴組織内に遊離存在する結核菌が 該部から肺実質内,殊に.淋巴組織内に遊離したまま到 達し得ることを述べた.船橋3)も墨汁及び肺炎双球菌 浮遊液注入において同様な所見を得ており,気管支周 囲淋巴間隙内に遊離異物の存在を認めた.Permef 20)

は肺胞壁血管内皮細胞が増殖して肺胞上皮間を通って 肺胞腔内に出て異物を貧食して再び肺間質にもどり,

それが淋巴流に入って肺門部淋巴腺内に至って沈着す 澄ことを述べている.更に,Haythom 4)も亦Permer と同様な所見を挙げている.一方Mafvogordatoは 塵埃の大部分は気管支を経て体外に排泄されるものと

 ドミ

し,淋巴流によりて処理されるものは極めて少ないこ とを述べている.そして気管支淋巴結節内の塵埃は気 管皮壁を経て大気管支腔内に排泄されるものもあるこ とを述べた.Rosin 21)は注入された異物を処理する に際して,淋巴流によるもの及び肺胞→気管支道によ るもの,両作用を認めるが,消化不能の物質は淋巴流 によって淋巴腺の方向に運び去られ,可消化物(赤血 球及び蛋白穎粒)にあっては淋巴流による除去を要せ ず,肺胞上皮細胞によって処理されるものであること を述べた.

 以上の研究から知る如く吸入された異物には腔内か ら肺実質内に侵入し,更にこれが淋巴流によって肺野

から姿を消して肺門部淋巴腺内に沈着するものと,肺 胞大食細胞に負食されて処理されるものの二途に別れ ることがいわれているのであるが,淋巴腺内沈着への 一過程として肺実質内に異物の侵入する方式に関して は二つの対立した意見が認められる.即ち肺実質内侵 入は遊離したままの異物の侵入説と肺胞腔内で大食細 胞に負食された異物が細胞と共に組織内に持込まれる という説であり,両作用の併存を認めるところの中間 的意見も色々述べられている.

 私の実験によれば前章所見の項及び以下に詳述する 如く六二,その他の異物が大食細胞に摂取されて肺実 質内に侵入して淋巴流によって淋巴腺に到達するよう な像は認め得られず,異物が遊離したまま肺実質内に 侵入するものであることを確かめ得た.遊離異物の侵 入場所としてRuppef㌻23)等は肺胞壁であるといい肺 胞上皮細胞間において腔内と実質内とを連絡する結合 路を想定し,その結合路を通って遊離炭末が中隔内に 侵入することを主張し,船橋3)等は遊離している墨粒 が終末気管支上皮細胞間隙から気管支周囲淋巴間隙内 に侵入する像を認めた,私の実験においては上述の所 見の項において示した如く終末気管支上皮細胞間隙か ら注入初期において墨壷が遊離したまま侵入もて行く 像が認められた.次いで肺胞壁から墨粒が侵入するか

どうかという問題であるが,注入直後において肋膜下 の肺胞腔内に極めて大量に遊離して存在する墨粒カミ肺 胞壁に侵入する像が認められ,4時間後にはそれが急 激に減少し,12時間後には他の部分の肺胞腔内と比較 しても遊離した墨粒の量には殆んど著しい差異を認め 得ないようになっている.しかもそこには墨粒が遊離

したまま喀出され,或いはその部分の肺胞には他の部 分の肺胞に比較して特別著:しく大食細胞の出現が多く ない点から大食細胞に寅食されたため遊離墨粒が減少 して来たと解すべきものではなく,これら大量の遊離 した墨粒の大部分は肺胞壁から吸収されて肋膜下淋巴 管内に侵入して,淋巴流によってその部から運び去ら れたものと考えねばならない.

 更に注入後4時間の標本に.おいて,かなり大きい気 管支の壁に附着している肺胞においても腔内から気管 支周囲結合織内淋巴間隙へと遊離した温湯が線状に連 続している像を見たが,これらの所見は腔内の墨粒が 遊離したまま肺胞壁を通過して肺実質内に侵入したこ とを示すものである.而して上述の場合は肺胞の位置 が肋膜下及び気管支壁に附着するという特別な場合の 肺胞内所見であって見れば,これを一般化して一般肺 胞中隔壁から遊離墨粒が侵入するかどうかという問題 を論ずることは出来難いものとも思われるが,この一一

参照

関連したドキュメント

生命が維持されるためには、通常、生物の内臓器官、例えば

肝臓に発生する炎症性偽腫瘍の全てが IgG4 関連疾患 なのだろうか.肝臓には IgG4 関連疾患以外の炎症性偽 腫瘍も発生する.われわれは,肝の炎症性偽腫瘍は

心臓核医学に心機能に関する標準はすべての機能検査の基礎となる重要な観

る、関与していることに伴う、または関与することとなる重大なリスクがある、と合理的に 判断される者を特定したリストを指します 51 。Entity

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

A Study on Vibration Control of Physiological Tremor using Dynamic Absorber.. Toshihiko KOMATSUZAKI *3 , Yoshio IWATA and

以上,本研究で対象とする比較的空気を多く 含む湿り蒸気の熱・物質移動の促進において,こ

題護の象徴でありながら︑その人物に関する詳細はことごとく省か