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日本内科学会雑誌第109巻第7号

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はじめに

 特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic throm- bocytopenic purpura:ITP)は,原因不明の後天 性血小板減少症として定義されてきたが,ITPの 血小板減少は免疫的機序に起因することが明ら かにされてきたこと,また,紫斑等の出血症状 を示さない症例も少なくないことから,近年,

欧米においては,primary immune thrombocyto- peniaの名称が定着しつつある1).ITPの治療は長 年,副腎皮質ステロイドがファーストライン,

脾臓摘出術(脾摘)がセカンドラインとされて き た が2), 近 年, ト ロ ン ボ ポ エ チ ン 受 容 体

(thrombopoietin receptor:TPO-R)作動薬及び

リツキシマブの有効性が明らかにされ,最近発 表された「成人特発性血小板減少性紫斑病治療 の参照ガイド2019改訂版」において,TPO-R作 動薬及びリツキシマブは脾摘と同じセカンドラ インに位置付けられた3).本稿では,ITPの病態 に関する最近の理解,診断の進め方ならびに最 新の参照ガイドに基づく治療方針について解説 する.

1.分類及び疫学

 特発性血小板減少性紫斑病は,国際的には免 疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia:

ITP)のうち,血小板減少を来たすその他の疾患

特発性血小板減少性紫斑病

(ITP)の病態と治療

要 旨

柏木 浩和  特発性血小板減少性紫斑病は,自己免疫的機序による血小板破壊の亢進

及び血小板産生障害により生じる血小板減少症である.現在においても,

その診断は除外診断が中心となる.治療においては,副腎皮質ステロイド 不応/不耐例に対してトロンボポエチン受容体(thrombopoietin recep- tor:TPO-R)作動薬が広く使用されるようになり,また,リツキシマブ も保険適用となったことから,最近発表された「成人特発性血小板減少性 紫斑病治療の参照ガイド2019改訂版」では,セカンドライン治療として,

従来の脾臓摘出術に加え,TPO-R作動薬及びリツキシマブが同等に推奨 されている.

〔日内会誌 109:1347~1354,2020〕

Key words 特発性血小板減少性紫斑病(ITP),(一次性)免疫性血小板減少症(ITP),

トロンボポエチン受容体(TPO-R)作動薬,リツキシマブ,脾臓摘出術

大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学

Bleeding Tendency. Topics:II. Pathophysiology and treatment of primary immune thrombocytopenia.

Hirokazu Kashiwagi:Department of Hematology and Oncology, Graduate School of Medicine, Osaka University, Japan.

Ⅱ. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の病態と治療 トピックス

(2)

が存在しないprimary ITPに分類される.全身性 エリテマトーデス(systemic lupus erythemato- sus:SLE)やHIV(human immunodeficiency virus)

感染等に伴う二次性の免疫性血小板減少はそれ ぞれループス関連ITP,HIV関連ITPと呼ぶこと が提唱されている(表 1)1).また,primary ITP は,その診断時期により,診断後 3 カ月以内の 場合を新規診断(newly-diagnosed)ITP,診断 後 3~12 カ月間,血小板減少が持続する症例は 持続性(persistent)ITP,12 カ月以上,血小板 減少が持続する場合は慢性(chronic)ITPと分 類される1)

 成人ITPは厚生労働省の難治性疾患(難病)に 指定されており,数十年に亘る患者登録データ ベ ー ス が 存 在 す る.2004~2007 年 の デ ー タ ベースの解析から,本邦では約25,000名が本疾 患に罹患しており,年間の新規発症数は10万人 あたり 2.16 人と推計されている4).6 歳以下の 小児(やや男児に多い),20~34 歳の女性なら びに高齢者に好発し,近年は特に高齢の症例が 増加している(図 1).

2.病態

 主に血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIa(CD41/CD61)

やGPIb/IX(CD42)を標的とする抗血小板自己 抗体によりオプソニン化された血小板が,脾臓 等の網内系細胞のFc受容体を介して捕捉され,

貪食されることが血小板減少の主因である.血 小板蛋白は網内系細胞内でプロセッシングを受 け,そのペプチド断片がHLA(human leukocyte antigen)上に表出される.これらを認識した自 己 応 答 性T細 胞 は, サ イ ト カ イ ン の 分 泌 や CD154/CD40 の相互作用を介して自己応答性B 細胞を活性化することにより,自己抗体産生が 促進される.慢性ITPにおいては,この悪循環が 持続することにより,血小板減少が慢性化す る.Th1/Th2 バ ラ ン ス の 異 常, 制 御 性T細 胞

(regulatory T cell:Treg)の機能低下等のT細胞 の異常が自己抗体の産生及びその維持に関与し ていると考えられている(図2)5).また,TPO-R 作動薬の高い有効性から,血小板産生の障害も ITPにおける血小板減少の重要な要因と考えら れるようになってきている.実際,抗血小板自 己抗体は巨核球の成熟障害やアポトーシスを誘 表1 ITPの分類(文献1より)

成因による分類

一次性(primary)ITP

・血小板数<10万/μl

・血小板減少を来たすその他の疾患が存在しない

二次性(secondary)ITP

・一次性ITPに属さないあらゆる免疫性血小板減少症 例)ループス関連(lupus-associated)ITP

HIV関連(HIV-associated)ITP

Helicobacter pylori関連(H. Pylori-associated)ITP 薬剤誘発性(drug-induced)ITP

診断時期による分類

新規診断(newly-diagnosed)ITP:診断後3カ月以内

持続性(persistent)ITP:診断後3~12カ月血小板減少が持続,あるいは無治療で寛解を維持できない症例

慢性(chronic)ITP:診断後12カ月以上血小板減少が持続,あるいは無治療で寛解を維持できない症例

(3)

導することが報告されている.一方で,抗血小 板自己抗体が検出されないITP症例も少なくな く,免疫複合体,補体ならびに細胞傷害性T細 胞等の多彩な免疫異常が血小板減少に関与して いると考えられている.

3.診断

 ITPに対する疾患特異的な検査法が確立され ておらず,その診断は基本的に除外診断であ る.すなわち,血小板減少(10万/

μ

l未満)を認 図1 年齢別ITP罹患者数(文献4より)

500

(例)

男性 女性

年齢 0 ~ (歳)

4 5 ~

9 10~14

15~19 20~24

25~29 30~34

35~39 40~44

45~49 50~54

55~59 60~64

65~69 70~74

75~79 80~84

85~89 >90

患者数

0 100 200 300 400

図2 ITPの病態と治療薬(文献5より著者改変)

TPO-RA:thrombopoietin receptor agonists

TPO-R作動薬

リツキシマブ

骨髄 巨核球

巨核球

マクロファージ マクロファージ

B細胞 Th細胞 B細胞

Th細胞 脾臓

血小板

抗血小板抗体 副腎皮質ステロイド

免疫抑制薬 Tc細胞Tc細胞

脾臓摘出 TregTreg

Treg Treg

(4)

めるが,赤血球系(出血あるいは慢性鉄欠乏に よる貧血を除く)及び白血球系は正常であり,

且つ血小板減少を来たすその他の疾患を除外で きる場合にITPと診断する.以下,診断の際に参 考となる臨床所見及び検査を記す.

1)問診および診察所見

 問診では,血小板減少及び出血症状の経過,

先行感染の有無,合併症及び服用薬剤,家族歴 の有無を確認する.診察では,出血症状の有無 及びその性状に注意する.ITPでみられる紫斑は 点状~小斑状出血であることが多い.粘膜出血

(鼻出血,消化管出血ならびに血尿等)は,血小 板数が1万/

μ

l以下の重篤な血小板減少例で認め られることが多い.成人の1%程度,小児の0.4%

程度において致命的な脳出血も生じる.一方 で,特に成人例においては,出血症状を認めな いことも少なくない.

2)検査所見

(1)末梢血

 血算と共に末梢血塗沫標本の丁寧な観察が重 要 で あ る. 血 小 板 凝 集 塊 を 認 め る 場 合 は,

採血手技の不備や偽性血小板減少の可能性を 考える.著明な巨大血小板の増加を認める場 合 は,Bernard-Soulier症 候 群 や

MYH9

異 常 症

(May-Hegglin異常等)の可能性を考慮する.

(2)骨髄検査

 ITPに特異的な骨髄検査所見はなく,ITP診断 のために必須の検査ではない6).ただし,赤血 球や白血球系に異常を認める場合や治療抵抗例 では,他疾患除外のために骨髄検査を行うこと が望ましい.

(3) 網状血小板比率(RP%)及び 血中トロンボポエチン濃度

 ITPにおいては血小板寿命が短縮しているた め,幼若な血小板の割合を示す網状血小板比率

(percentage of reticulated platelets:RP%)が高 値となることが多い7).自動血球測定装置で測

定される幼若血小板比率(percentage of imma- ture platelet fraction:IPF%)もRP%と同等の有 用性がある.また,血中TPO濃度は,ITPでは正 常~軽度高値に留まるが,骨髄低形成による血 小板減少で著明な高値を示す.これらの検査 は,ITPと再生不良性貧血等の低形成性血小板減 少との鑑別に有用であるが8),保険適用はない.

(4)抗血小板自己抗体の検出

 現在,保険収載されているPAIgG(platelet-as- sociated IgG)は,ITPに対する特異性が低く,

その診断的価値は低い.一方,血小板に結合し た抗GPIIb/IIIa抗体や抗GPIb/IX抗体の検出ある いは抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞の検出(ELISPOT

(enzyme-linked immunospot)法)はITP診断に 有用である可能性があるが8),検査可能な施設 が限られており,保険適用もない.

4.治療の流れ(図3)3)

 ITPの治療目標は,血小板数を正常に戻すこと ではなく,重篤な出血を予防し得る血小板数(通 常 3 万/

μ

l以上)に維持することである.血小板 数を正常化するための過剰な薬剤の長期投与 は,その副作用のために生活の質(quality of life:QOL)を低下させる場合が多く,避けるべ きである.

 ITPと 診 断 さ れ た 場 合, ま ず

Helicobacter pylori

H. pylori

)感染の有無について検討す

る.

H. pylori

陽性例においては,除菌すること

により,除菌成功例の50~70%で血小板数の増 加 が 得 ら れ る.

H. pylori

陰 性 も し く は 除 菌 失 敗・無効例では,出血症状及び血小板数に基づ き,治療適応を決定する.血小板数 3 万/

μ

l以上 で出血症状がない,あるいは軽微な場合には,

無治療で経過観察を行う.血小板数 2 万/

μ

l以上 3 万/

μ

l未満で出血症状がない場合の治療適応 は,個々の患者の年齢や併存疾患等の出血リス クを考慮して判断する.血小板数 2 万/

μ

l未満あ るいは強い出血症状を認める場合は,治療適応

(5)

となる.特に血小板数 1 万/

μ

l未満の重篤な血小 板減少例では,致命的な消化管出血や頭蓋内出 血を呈することがあり,積極的な治療が必要で ある.

1)ファーストライン治療

 ファーストライン治療は副腎皮質ステロイド である.初回治療としては,通常,プレドニゾ ロン(prednisolone:PSL)0.5~1 mg/kg/日2~

4 週間の経口内服を行う.その後,8~12 週か けてPSL 10 mg/日以下にまで漸減することを 目指す.副腎皮質ステロイドの治療効果がみら れない,あるいは副作用や合併症のために本治 療が選択できない場合には,セカンドライン治 療に移行する.近年,デキサメサゾン大量療法

(high-dose dexamethasone:HD-DEX)を初回治 療に用いた報告が増えているが,現時点では HD-DEXがより有用であるというエビデンスに 乏しく,PSL通常量投与が推奨される.ただし,

血小板減少が高度であり,早期の血小板増加が 必要な若年症例では,HD-DEXを選択することも 許容される.

2)セカンドライン治療

 セカンドライン治療は,TPO-R作動薬,リツ キシマブあるいは脾摘から選択する.

(1)TPO-R作動薬

 TPO-R作動薬は,巨核球及び造血幹細胞に発 現するTPO受容体(c-Mpl)に結合し,巨核球分 化・成熟を促進し,血小板産生を亢進する薬剤 である.現在,ITPに対しては,経口薬のエルト ロンボパグ及び皮下注製剤のロミプロスチムが 保険適用となっている.いずれの薬剤において も 80%以上の高い有効率が報告されているが,

一部を除いて継続的な治療が必要である.血栓 症を増加させる可能性があり,血栓症ハイリス クの患者(血栓症の既往,担癌患者ならびに抗 リン脂質抗体陽性等)においては,その使用を 慎重に判断する必要がある.また,TPO-R作動 薬は,その薬理上,骨髄の線維化が懸念される.

長期に亘る使用で骨髄線維化の進行を示した明 確な証拠はないが,TPO-R作動薬使用時には末 梢血所見に注意し,必要に応じて,骨髄検査を 行う必要がある.

(2)リツキシマブ

 リツキシマブは,B細胞に発現するCD20抗原 を認識するヒトマウスキメラモノクローナル抗 体であり,B細胞を減少させ,抗体産生を抑制 する.本邦では,2017 年 3 月よりITPに対して 適応拡大されている.375 mg/m2を週 1 回,4 週間の点滴静注により,短期的には50~60%の 効果が期待できる.しかし,長期的に寛解を維 図3 ITP治療の流れ(文献3より)

mPSL:methylprednisolone ITPの診断

血小板数<20×103/μl あるいは重篤な出血症状,

多発する紫斑,

点状出血,粘膜出血

ステロイド副腎皮質

アザチオプリン シクロスポリン シクロホスファミド ジアフェニルスルフォン ダナゾール

ビンカアルカロイド ミコフェノール酸モフェチル 緊急時あるいは 無効

術前IVIg,

血小板輸血,

mPSLパルス

血小板数≧30×103/μl 出血症状なし

20≦血小板数<30×103/μl 出血症状なし

無治療経過観察

注意深い経過観察 ピロリ菌除菌療法

TPO受容体作動薬 リツキシマブ

脾摘

無効 ピロリ菌(+) 除菌

無効 ピロリ菌(ー)

First Line Second Line

Third Line

(6)

持できる症例は20~30%に留まる.副作用は一 般に軽度であるが,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)再活性化のリスクがあるため,

HBVキャリアやHBV感染の既往のある患者で は,日本肝臓学会の「免疫抑制・化学療法によ り発症するB型肝炎対策ガイドライン」に則っ た対応をとる必要がある.

(3)脾摘

 脾臓は,血小板の貪食部位であるだけでな く,抗血小板自己抗体の主たる産生部位でもあ る.実際,脾摘は,約 2/3 の症例において長期 的寛解(治癒)が期待できることから,セカン ドライン治療として,現在においても重要な選 択肢の 1 つである.しかし,生涯に亘る肺炎球 菌・髄膜炎菌等に対する防御能の低下や静脈血 栓症リスクの増加が指摘されている.

(4)セカンドライン治療の選択方法

 TPO-R作動薬,リツキシマブならびに脾摘に はそれぞれの長所及び短所があり,一律にこれ らの優先順位を決定することはできない.一般 的には,高い有効率を求めるのであればTPO-R 作動薬あるいは脾摘,長期に及ぶ治療を避けた

い場合はリツキシマブあるいは脾摘,手術を避 けたいのであればTPO-R作動薬あるいはリツキ シマブから選択することになるが9),合併症,

年齢ならびにライフスタイル等個々の患者の状 況・状態を把握し,患者自身の希望を勘案した うえで選択する(表 2)3)

3)サードライン治療

 従来,副腎皮質ステロイド及び脾摘に反応し ない“難治性”ITP症例は5~30%程度存在する と考えられており,多くの治療が試みられてき た2,6).TPO-R作動薬及びリツキシマブが使用さ れるようになり,これらの治療にも反応しない 症例はかなり限定されるが,このような患者に は,アザチオプリン,シクロスポリン,シクロ ホスファミド,ジアフェニルスルホン(dapsone, 4,4-diaminodiphenylsulphone:DDS),ダナゾー ル,ビンカアルカロイドならびにミコフェノー ル酸モフェチル(mycophenolate mofetil:MMF)

等が治療選択肢となる.ただし,いずれも少数 例の報告に留まっており,エビデンスレベルは 低い.米国及び欧州においては,既存治療の効 表2 セカンドライン治療の比較(文献3より)

長所 短所

TPO-RA

・高い奏効率(>80%)

・多くの例で副作用は軽度

・免疫抑制作用がない

・一部(3~20%)で中止後も寛解を維持 できる可能性がある

・多くの例で継続的な治療が必要

・血小板数が大きく変動する症例がある

・食事や薬剤の影響を受ける(エルトロンボパグ)

・週1回の通院・注射が必要(ロミプロスチム)

・頭痛,肝障害(エルトロンボパグ),血栓症,

骨髄線維化を生じる可能性がある

・長期的(10年以上)な安全性が不明

・妊婦での安全性が確立されていない

・高価である リツキシマブ

・50~60%の奏効率

・4週間で治療を終了する

・多くの例で副作用は軽度

・若い女性では有効率が高い可能性がある

・長期的奏効率は低い(20~30%)

・重篤なinfusionreactionを生じる可能性がある

・免疫力低下/感染症増悪の可能性がある

[ワクチンに対する反応性低下,HBV再活性化,PML

(極めて稀)]

脾摘 ・高い奏効率(>80%,長期的には60~70%)

・即効性がある

・手術関連合併症の可能性がある

(イレウス,腹腔内出血,門脈血栓症,感染症など)

・生涯にわたる重篤な感染症発症増加の可能性がある

・生涯にわたる静脈血栓症増加の可能性がある TPO-RA:thrombopoietinreceptoragonists,,PML:進行性多巣性白質脳症(progressivemultifocalleukoencephalopathy)

(7)

果不十分なITP症例に対して,Syk(spleen tyro- sine kinase)阻害薬であるfostamatinibが最近承 認された10).Sykは,Fc受容体の下流に存在する 非受容体型チロシンキナーゼであり,fostamati- nibは,Fc受容体を介したマクロファージによる 血小板貪食作用を抑制する.また,補体系古典 経路の阻害薬(C1s阻害薬;sutimlimab)や胎児 性Fc受容体(neonatal Fc receptor:FcRn)阻害 薬(efgartigimod)が難治性ITPの治療薬として 有望視されている11)

4)緊急時あるいは外科的処置等に対する対応  血小板著減に伴い重篤な出血を生じている場 合,あるいはその危険性が高い場合や,観血的 処置を予定している患者では,速やかに血小板 数を増加させる必要がある.免疫グロブリン大 量 静 注 療 法(intravenous immunoglobulin:

IVIG),メチルプレドニゾロンパルス療法ならび に血小板輸血を単独あるいは併用することによ り対応する.

5)妊娠合併ITPに対する対応

 妊婦において,TPO-R作動薬やリツキシマブ の安全性は確立されておらず,副腎皮質ステロ イド及びIVIGが治療の中心となる.原則,妊娠 初期及び中期は,血小板数 3 万/

μ

l以上,分娩時 は経腟分娩では 5 万/

μ

l以上,区域麻酔下による 帝王切開であれば 8 万/

μ

l以上を目標とする.詳 細は「妊娠合併特発性血小板減少性紫斑病診療 の参照ガイド」を参照されたい12)

おわりに

 ITPの病態及び診断に関する最近の知見,最近 改訂された参照ガイドに基づく成人ITPの治療 戦略について紹介した.TPO-R作動薬の登場に より,ITP治療は格段の向上を認めた.しかし,

特異的診断法の開発,ファーストライン治療の 改善,セカンドライン治療選択法の確立ならび に現行治療不応例に対する新たな治療法の開発 等,ITP診療には多くの課題が残されており,今 後の研究の進展が待たれる.

著者のCOI(conflicts of interest)開示:柏木浩和;講演 料(ノバルティス ファーマ)

(8)

文 献

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3) 厚生労働省難治性疾患政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班「ITP治療の参照ガイド」作成委員会:成人 特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド 2019 改訂版.臨床血液 60 : 877―896, 2019.

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12) 宮川義隆,他:妊娠合併特発性血小板減少性紫斑病診療の参照ガイド.臨床血液 55 : 934―947, 2014.

 

参照

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