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版 職 歴 尭 症 の 且 例
金沢大学医学部放射線医学敬重(主任 平松教授)
助 手 張 本 金 治
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専攻生 坂 下 保 太
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(昭和29年4月27日 受附)
‡,緒
紋端肥大症は眈匿18世紀に報告され,i886年 P.も餌riel)が本症を詳細に研究し脳下垂体と
密接な関係のあることを報じている.我が国に ては明治29年柴田望)の報告を囁失とし,年1〜
Ⅰ軋 症
患 者:′T・ア・41炭 女 家宿 初 診:昭和28年12月1日 入 院:昭和28年12月14日
主 訴:頭痛,鎖(特に下顎角〕及び肢職の肥大,
限瞼の浮陸.
既往歴:出産正常,この度の発病まで発く健康で あった。月経は15炭に初潮あり以来38炭蓬咤モ順調 で,38炭の時第10子をノ分娩して以来本年8月迄月経が なかった.性欲は普通,性病は否定する.
家族茫:両親,父方組位及び母方蘭父は潤温血に て死亡,母方祖母は心臓病にて死亡した他特記するも のはない.
現病歴:約4年所持に昨年3月頃上り頭痛及び限 瞼における渾陸を訴え,昨年5月頃より窮(特に下顎 角)/及び肢端の肥大に気付いた.昨年3月より本年5 月蓬慢性腎炎といわれ治療を受けたが軽快せず当科外
来を訪れた.
規 症:身長153cm,体重 78・5kg,栄養良好に して骨格達しく筋肉の発育も良く,著明な皮下脂肪の 沈着を郊める.特異な顕現と共に一見男性の感があ
る.即ち眉間郡,敬骨特に下顎角突出し,口唇厚く,
鼻は丸妹を得びている.瞳孔の大きさ,対光反射共に
Eコ1
2例現在迄約80例発表3トヱ0)されている.著者
等も本症の1例に接したのでここに報肯するも のである.
例
正博,ロ脛弧びに鼠牙正常である.胸廊ほ頑填で両肩 幅広く鎮静は太い.胸郡打蕗診上著変を認めない.腹 部は皮下脂朋で膨隆するが,肝,脾共に触れない.四 肢は特にその末端部で太く,男性の手足を見る感を呈 する.運動礫能障碍や知覚範肺はない.右膝蓋腱反射 は減退している。血圧130−82mmHg,赤沈1時間値 45mm.
検査成績
1.尿 比重1030,ウロビリノ【ゲン陽性の 他iE常.尿排泄量500〜900cc/日.
乙 一大便 潜血反応陽性の他iE常.
3.血i夜像 血色素量(ザーリー民法)109%,
赤血球数570万,白血球数8300,色素係数1・09,
白血球百分率に異常はない.
4.梅毒血清反応(−)
5.脳脊髄液 初庄1001111−1,1・5cc採取して 経庄0.iE常である.
6.レ線検査
a)胸部 異常を認めない.
b)胃路 異常を認めない.
C)頭部(iE,側面,断暦撮影)下顎の肥
【l〕
258 張 木・坂 下
大を認める. トルコ鞍は:全体にわたり円味を 帯びて拡大し鞍背は不坦となる。又後去状突 起の萎縮を見る.bc=28。4, ce=24.2, t=
9.7,T=・11.5mm,(:F.P.D.:75crn)
d)手足全休として太く,掌骨,蹴骨は梢ぐ :互に離間し,一部に贅骨形成を認める,
7.基礎代謝率 18.4%
8. 血清蛋白 7.959/dL
9,肝機能検査 モイレングラハト5.高田 反応及びグロス反応共に陰性
10.心電図 垂直位,正常.
エ1.脳波 正常.
12.植物倒懸機能検査 アドレナリン反応
(一).ピ一升ルビン反応G紛.アトロピン反応
(紛.Aschner試験(一).
13,眼科診断近覗〔右0.6(0.8x−1・5D)左0・6(G・9x−1・OD)〕
及び軽度の覗野の狭窄を認める他眼底その他正
常.
14.婦人科診断 子宮膣部1嚢燗.
経:過: 12月22日より問脳内Bに:i連日レ線治 療を試み,15回計2800r(200r×1Lユ50r×4)
照射した.:放射条件は150KV,3.OmA,照射 野の大きさ8×8cm2である.頭痛及び眼瞼の 浮腫は大分浩失したが,患者の事情でレ線治療 を15回で中止せざるを得なかった.
H亙.考 本症は一見して肢端肥大症なることは明らか である.さて肢端肥大症は脳下垂鉢前葉のエオ ヂン嗜好性細胞の機能充進によって惹起される と考えられている.この細胞は門門発育ホルモ ンを分泌するものである.剖検的には脳下垂休 前葉の限局性叉は三二性の増殖が認められ,そ
の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減 退はエオヂン嗜好性細胞腺腫としてその増殖の ため塩基嗜好性細胞の萎縮を招来し,その結果 性腺機能促進ホルモン分泌を減退乃至消失せし めるか叉は性機能中枢の破壊によって性機能障 碍を起すのであると説明されている。以上の他 脳下垂体前葉は甲駄腺,副腎,上皮小体,膵臓 等の諸内分泌腺に対して促進ホルモンを分泌
し,これらを主宰調節すると信じられ,叉脂肪 新陳代謝,水代謝,及び含水代謝にも関与して
V・る.
遺伝的関係は認められなV・が,Borchardt 21)
のいえる如く体質的素因が考えられる,しかし 誘因としてシヨソク,外傷,申毒,梅毒等が挙
察
げられている.本症にては明らかではない,
年齢的には20〜3G歳が最も多V・とV・われてV・
る.(Mohr u. Staeheli1122),藤本3))性別に関 して本邦では藤本が男:女二2:1といってい
る.
主要症欺は
1)肢端の肥大及びその他の骨の肥大 2)内分泌障碍
3)覗力障碍
4)トルコ鞍の風船朕拡大
である.即ち肢端肥大,疹痛就中頭痛,覗力 障碍,糖尿病症歌,月経異常,性欲減退,感覚 異常,全身倦怠等を訴える.
合併症として糖尿病が最も多く,Hansemanl〕
23)1296,Borchardt 21)40%,Davidofl a. CushiD9 24)25%,Mohr u。 Staehelln 22)10〜20%,藤本 3)3096の報告がある。
治療として初期に胎V・てはエオヂン嗜好性細 胞腺腫がレ線感受性が大である故,レ線治療は 多くの症例に好結果を齎す.覗力障碍の進行が ある場合には手術の適応である.
IV.結 著者等は41歳家婦にて頭痛,顔(特に下顎
論
角)及び肢端の肥大,限瞼の浮腫を訴え,肢端
〔 2 】
張木・坂下論文附圖
Fig・ 1. U「Pper body of pa,tiellt. Fiα. 2. Hands.
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張木・坂下論文附圖
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肢端肥大症の1例 259
肥大症と診断し,
し:た.
レ線治療を試みた1例を報告 稿を終るに臨み御懇篤なる御指導と御校閲を賜わり ました恩師李松教授に対し衷心より謝意を表します.
主 要 文 献
1) Marie, P : Brain, 12 : 59, 1890
2)柴田:東京医学会雑誌,鱒:105,明29.
3)藤本: 日本内分泌学会雑誌,23:79,昭23・
4)片山:臨駄医学,28:241,昭15.
5)名尾:/内科及び小児科,2:62・昭17・
6)佐藤 : 皮膚科性病科雑誌,5玉:86,昭17.
7)勝木・望月=実地医家と臨床,2D:355,昭 18. 8)森沢:長崎医学会雑誌,22:782,
昭19. 9)宮田。森川: 病理学雑誌,3:
74,昭19. 10)佐々3最近医学,331,
昭23. 11)寺島・池加美:博愛医学,3:
54,昭25. 1勾河本。景井:臨黙眼科,
4:1402,昭25. 13)桂:診断と治療,
39:31,昭26. 14)高田:博愛医学,4:
72,昭26. 15)井上:眼科臨床医報,45:
707フ昭26. 16)岩谷・武重:信州医学 雑誌,玉:88,昭27. 17)癒山:扱済会 医学雑誌,2:20,昭27. 18)高橋・須藤i:
日本内科学会雑i誌,40:60,昭27. 19)松 尾。原:日本内科学会雑誌,40:130,昭27・
20)高洲・坂本:和歌山医学,1:54,昭25.
21)Borchardt, L.3Zeitschr. f. kliD. Med.
66 :332ン 1908. 22)M[ohr, L. u.
S伽hehn, R.311andb. d. inh. Med・(III)
IV AuHage21953.一@ 23)Hansemann, D・3 8erL klln. Wschr.34:417,1897. 24)
1)avido廷, L. M:. a. Cnshing, H・: Arch・
int. med.39=751,1927.
卿
【 3 】