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博 士 ( 医 学 ) 高 橋

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 高 橋    歩      学 位 論 文 題 名

気 管 支 喘 息 にお け る osteopontin ( OPN ) と 好 酸 球 性 気 道 炎 症 の 関 連

学 位 論 文 内 容 の 要旨

【背景】osteopontin(OPN,earlyTlymphocyte activation‑l (Eta‑l)としても知られている)

は骨蛋白基質として同定されたりン酸化糖蛋白である。その後、骨、免疫、炎症、癌など様々 な場面で機能する活性化物質 であることが示されてきた。インテグリン結合部位であるRGD 領 域、SWYGLR領 域な ど複 数の 機能 領域 を含 み、 多彩 な機 能 を持 っと 考えられて いる。

マク口ファージ、単球、リンパ球、好中球といった炎症細胞の接着や遊走に関連することも 報告されている。0PN(一/I)マウスやOPN抗体を用いた研究でOPNの炎症性疾患、特にThー1 関連疾患における重要性が示され、ヒト検体を用いた研究でサルコイドーシス、多発性硬化症、

肺結核といったThl関連疾患で高発現しているという報告が多くみられている。一方で、OPN とアレルギー性疾患の関連を示す報告は少ない。気管支喘息における、OPNと好酸球性気道炎 症との関連についてはこれまでに十分に明らかにされていない。

【 目 的 】 気 管 支 喘 息 に お け るOPNと 好 酸 球 性 気 道 炎 症 と の 関 連 を 明 ら か に す る 。

【方法】ヒト検体、Ovalubumin(OVA)感作曝露によるマウ ス喘息モデルの検体を用いて検 討を行った。

(1)ヒト検体を用いた検討

・研究は北海道大学倫理委員会の許可を得て行われ、検体を供与いただいたすぺての患者、

  健常者より文書にて同意を得た。

・ 当科 通院 中喘 息患 者25名、 喘息 の既 往が なく 、呼 吸器 症 状や 鼻症 状のない健 常者19   名よ り誘 発喀 痰を 得て 、OPN濃度 を測 定し 比較 した 。ま た、 喘息 患者 においてOPN濃   度と好酸球比率との相関を検討した。

・肺癌にて手術を施行された 喘息患者、非喘息患者より肺組織を得て、腫瘍のない部分に   OPN免疫染色を行い、OPN発現細胞の検討を行った。

・ヒト健常者3名、喘息患者3名の血液より好酸球を分離し、in vitroでMillicell Culture     Plate Insert (5pm孔,Millipore,Billerica,MA,USA)を用いてOPNの好酸球に対する   遊走 能を 検討 した 。ま た、 健常 者検 体に おいて、OPNのインテグリン結合部位 を認識   す る 2K1抗 体 、 抗 ぱ . 4イ ン テ グ リ ン 抗 体 (PIH4)の 効 果 も 検 討 し た 。

・ 好酸 球遊 走を 強カ に誘 導す るEotaxinとOPNの 好酸 球遊 走 能を 比較 するため、 健常者   2名 、喘 息患 者1名 の血 液よ り好 酸球 を分 離し 、in vitroにお いて 、Boyden chamber     (NeuroProbe Inc,Gaithersburg,MD)、5いm孔 の  polyvinylpyrrolidone‑free     polycarbonate膜(Nucleopore)を用いて、比較検討した。

(2)マウス検体を用いた検討

・研究は北海道大学の動物実 験に関する指針に基づき、北海道大学倫理委員会の許可を得   て行われた。

・6週 齢、 ヌス のBalb/cマウ スday0,7にOVA腹 腔内 注射 、day21〜23に0V.A経 鼻曝露     することによルマウス喘 息モデルを作成した。コントロールとしてPBSを投与した。

  最終 曝露 の24時間 後(day24)に 気管 支肺 胞洗浄(BAり及び肺組織の採取を行 った。

6−

(2)

・BAL液 中OPN濃 度をELISAにて 測定 し、 コン ト口 ー ル群 と比 較検 討を 行っ た。また、

  肺 組 織 よ りRNAを 単 離し 、逆 転写 酵素 ポリ ヌラ ーゼ 連鎖 反応(RT‑PCR)を 施行 、OPN   mRNAレベルの比較検討を行った。

・肺組織にOPN免疫染色を行い、OPN発現細胞を検討した。

・OPNの イ ン テ グ リ ン 結合 部位 を認 識す るM5抗体 もし くは コン トロ ー ル抗 体をOVA曝     露1時間前に腹腔内投与し、BAL液中の好酸球数やサイトカイン (インター口イキン     (IL) ‑4、IL‑5、IL‑13、インターフェ口ン(IFN)‑め濃度を測定し比較、及ぽす影響を検討     した。

【結果】

(1)ヒト検体を用しゝた検討

・誘発喀痰 中OPN濃度は喘息患者群で有 意に高値であり(pく0.005)、喘息患者で好酸球   割合と有意な正の相関が認められた(r=0.530,pく0.01)。

・ 喘 息 患 者 肺 組 織 で 、 気 道 周 囲 炎 症 細 胞 に お い てOPNの 発 現 が 認 め ら れ た 。

・OPNに 対す る好 酸球 遊走 は有 意に 亢進 して おり (pく0.01)、2K1及びPIH4によりその   効果は抑制された(pく0.01)。

・OPNに 対 す る 好 酸 球 遊 走 はEotaxinと 比 較 す る と 弱 い も の で あ っ た (pく0.05)。 (2)マウス検体を用いた検討

・OVA感 作 曝 露 群 でBAL液 中OPN濃 度 は 高 値 で あ り (pく0.05)、 肺 組 織OPN mRNAは     高発現していたQく0.05)。

・ OVA感 作 曝 露 群 で 気 道 周 囲 炎 症 細 胞 に お い てOPNの 発 現 が み と め ら れ た 。

・M5抗 体投 与群 でBAL液中 好酸 球数 の有 意な 低下 が認められた(pく0.05)が、BAL液中     IL‑4、IL‑5、IL‑13、IFN‑‑y濃度は差を認めなかった。

【 考案 】ヒ ト喘 息患 者 検体 、マ ウス 喘息 モデ ル検 体でOPNが高発現しており、OPNは気 管支喘息と 関連していると考えられた。ヒト喀痰中OPN濃度と好酸球比率に正の相関が認 められ、血vitroにおける検討でOPNに対して好酸球の遊走が亢進し ていたことから、好 酸球遊走に 関連している可能性が考えられた。さらに、2K1抗体にて好酸球遊走が抑制さ れ 、 マ ウ ス モ デ ル に おい てM5抗体 を投 与 にてBAL中好 酸球 数が 減少 し たこ とか らOPN のインテグ ルン結合部位が関与している可能性が考えられた。in vitroにおいてPIH4抗体 によっても 好酸球遊走が抑制されたことから、OPNはインテグリン結合部位と好酸球表面 に発現.しているoc4インテグリンとの間の作用を介して好酸球遊走に関連していると考えら れ た。 マウ スモ デル でM5抗体がBAL液中IL‑4、IL‑5、IL‑13、IFN‑y濃度に影響を与えな か っ た こ と か ら 、Thl/Th2バ ラ ン ス と は 独 立 し た 機序 であ る可 能性 が考 えら れた 。

【結論】気 管支喘息において、OPNは好 酸球遊走に関連し、病態に関与している可能性が 考えられた。

−  っ  

(3)

学位論文審査の要旨

主 査   教 授   西 村 正 治 副 査   教 授   上 出 利 光 副 査   教 授   有 賀   正 副 査   教 授   西 村 孝 司

学 位 論 文 題 名

気管支喘息におけるosteopontin (OPN) と 好酸球性気道炎症の関連

  OPNは様々 な機能を もつ細 胞外基質蛋白である。複数の機能領域を含み、多彩な機能を 持っと考えられている。免疫においてはTh‑l関連疾患との関連の報告が多く、様々な炎症 細胞の遊走に関与していることも報告されている。しかし、Th‑2関連疾患についての報告 は少なく、好酸球遊走との関連についてはこれまで報告されていない。気管支喘息における 好 酸 球 性 気 道 炎 症 とOPNの 関 連 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に 研 究 を 行 っ た 。   喘息 におけ るOPNの 発現を ヒト誘発喀痰、肺組織、マウス喘息モデルの気管支肺胞洗浄 液(BALF)、肺組織 におい て検討し た。誘発 喀痰中 のOPN濃 度は喘 息患者で 高値で あり、

好 酸 球 割 合 と 正 の 相 関 が み と め ら れ た 。 マ ウ ス 喘 息 モ デ ル のBALF中 のOPN濃 度 は Ovalbumin (OVA)腹 注 ・ 経 鼻曝 露 群 (喘 息 群 ) で高 値 で あり 、 肺 組織OPN mRNAレ ベ ルの亢進もみとめられた。ヒト、マウスの喘息群の肺組織免疫染色にて気道周囲炎症細胞に おい てOPNの発現亢 進がみ とめられた。さらに、マウス喘息モデルにインテグリン結合部 位 を 認 識 す る 抗OPN抗 体(M5)を 投 与 し 、 喘 息 に お け るOPNの 役割 を 検 討し た 。M5投 与群 でBALF中総 細胞数、 好酸球 の低下が みとめ られ、OPNはイ ンテグリ ン結合部 位を介 して 関与し ているこ とが示 唆された。また、BALF中のIL‑4、IL‑5、IL‑13、IFN‑lr濃度に 差を 認めな かったこ とからThl/Th2反応とは異なった機序で関与している可能性も考えら れた 。さら にヒト好 酸球を 用いて面vitroに てOPNと 好酸球遊走に関する検討を行った。

OPNに対し 好酸球遊 走は亢 進して茄 り、マウ スのM5抗 体と同じ くイン テグリン 結合部位 を認 識する 抗体(2K1)にて抑 制された 。また 、好酸球 表面に発 現して いるa4イン テグリ ン抗 体であ るPIH4にても 抑制さ れた。以 上より 、OPNは インテ グリン結 合部位と 好酸球 表面に発現しているa4インテグリンの間の作用を介して好酸球遊走に関連し、喘息の病態 に関与していることが示唆された。

  最後 に2007年に 発表さ れたOPNと気管支 喘息の 関連についての論文(XanthouG,et al.

Nat Med 2007;13:570‑8)と本研究の結果の不一致に関する考察を行った。同論文において 主に マウス 喘息モデ ルを用 いた検討が行われていた。喘息でOPNが高発現していたという 点 は 本研 究 と 同じ 結 果 で あっ た が 、OPN抗体(AF‑808)投与 によりBALF好 酸球の 増加、

気道 過敏性 の亢進が みとめ られていた点は逆の結果であった。OPNは複数の機能領域をも ち、機能が異なることも報告されている。AF‑808抗体の認識部位は明らかにされていない が、認識部位の機能がM5抗体と異なっていることが、不一致の要因ではなぃかと推測され た。

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(4)

  審査にあたり、副査上出教授から1)喘息患者の気道上皮細胞におけるOPNの発現の有無 および その意義 、2) 好酸球 遊走にお けるeotaxinとOPNの関連、3)OPNヘ遊走する好酸球 の特徴についての質問があった。次いで副査有賀教授から1)マウス喘息モデルと実際のヒ トの喘 息との整 合性、2)喘 息におけ るOPNの主な産生細胞、3)喘息に関連しているOPN の遺伝 子多型の 有無についての質問があった。さらに主査西村正治教授より1)OPN発現に 及ばす喘息治療の影響、2)喘息のコントロール状態によるOPN発現の差異、3)OPN(./:)マ ウスにおける検討の有無についての質問があった。

  申請者はこれらの質問にっいて、自験データと文献を引用して概ね適切な回答を行った。

  公開 発表とは 別に平 成21年5月1日16時00分よ り先端科 学研究 所遺伝子 制御研 究所免 疫制御学分野研究室にて副査西村孝司教授による個別審査が行われた。申請者はスライドを 用 いながら 約20分にわたって学位論文内容の発表を行い、発表後、西村孝司教授より1) 作 用部位毎 のOPNの 機能の 多様性の 意義、2)健常肺におけるOPN発現細胞、3)喘息気道 粘 膜下にお けるOPN高発現の意義についての質問があった。いずれの質問に対しても、申 請者は概ね適切に回答した。質疑応答の時間は約10分であった。出席者は西村孝司教授、

同教室大学院生2名の計3名であった。

  本研究 はOPNの インテグリン結合部位を介した好酸球性気道炎症、喘息との関連を明ら かにし 、気管支 喘息に おけるOPNの多 彩な機能を示した点が高く評価される。今後、OPN の喘息 に対する 役割、2K1の喘 息にお ける効果 について 更に解 明されると期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ 申請 者 が 博士 ( 医 学) の 学 位を 受 け るの に 充 分な 資 格 を 有する ものと判 定した 。

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