博 士 ( 医 学 ) 高 橋 雅 俊
学 位 論 文 題 名
胆 道 癌 の 進 展 様 式
一 微 小 脈 管 浸 潤 と 神 経 浸 潤 一
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
|.目的
胆道 癌の 局所進展は浸潤性進展とりンパ管、静脈、神 経などへの微小浸潤に分けられる。
手 術の 根治 性を得るには局所進展、とくに脈管、神経な どへの微小浸潤の進展様式の理解が 重 要で ある 。しかし、リンバ管浸潤、静脈浸潤、神経浸 潤の相互関係、臨床的意義について の基礎的検紂は十分に (まされていない。このような観点より、本研究では胆遭系の血管、リ ンパ管、神経構造を実 験的に検言寸し、これらと臨床における局所微小浸潤の形態と比較検肘 し 、 微 小 転 移 の 成 立 過 程 と 、 相 互 関 係 、 臨 床 的 意 義 に つ い て 検 言 寸 し た 。
|I. 対象と方法
1.臨床例 の検言寸:胆管癌84例、胆嚢癌86例の切除標本を用い、壁深達度と、リンパ管浸潤、
静脈浸潤、神経浸潤の出現頻度、相互 関係を検言寸した。また、神経分布、微小神経浸潤の形 態についてneurofilament protein、s‑100 protein、また、血管分布、血管と神経の関連性(よ l‑ac to「Wを、腫瘍細胞はPCNA抗体を 用いて行った。
2. 実験 的検舌寸:体重8〜llKgの雑種成犬を用い、静脈 内麻酔下で開腹し、以下の実験を 行っ た。 リン パ系は肝十ニ指腸間膜下部リンパ路を結紮切 離したりンパうっ滞群と正常群に つい て、 肝十 二指 腸 間膜 漿膜 下層 、胆 嚢漿膜下層にindia inkを注入し、観察した。血管構 築は 大勤 脈を 腹腔動脈前後で結紮し、これにcanulationを 行い、ヘパリン加生食潅流後、水 溶性 青色 樹脂 系色素を注入して検言寸した。100ルm切片を 作成し光学顕微鏡にて観察した。
さ らにImm切 片を 脱パ ラフ ィン 後、 実体 顕微 鏡に て りン パ系 、神 経構 造を 観察 した 。神 経 構 築 の 検 索 で ( ま 10ルm切 片 をllormes法 に よ る 鍍 銀 染 色 を 行 い 観 察 し た 。
川.結果
1.臨床例切除標本からみ た胆道系構築
1)神 経構 造: 肝十 二 指腸 間膜 漿膜 下層漿膜下層の神経基本構造は神経 周膜、周囲腔、神 経束からなり、神経周膜は、数層の膠原線維の膜で構 成されていた。総胆管で(才この神経の 基本構造【ま筋層の神経まで観察でき、それぞれに血 管が分布していたが、線維筋層の粘膜に 近い 部分 ではこの 構造は観察できず、神経束のみ観察された。また、この 部では線神経構造 内に 血管 は認めず 、血管が神経周膜周囲に隣接するのみであった。さらに 粘膜層に接する部 分 の 神 経 はSl00、Neuro亅Ifilament protein等 に よ る 神 経 染 色 で の み 観 察 さ れ た 。 2)リ ンパ 系: リン バ うっ 滞例 では りンパ管拡張が漿膜下層、筋層に観 察された。さらに 周膜 層の 離開、周 囲腔拡大を認め、この拡大した周囲腔内や離開した周膜 間にりソパ球充満 像や好中球が存在する像が観察された。
Z.実験でみられた胆道の血管、 リンバ管、神経構築
1)血 管系 :胆 管に は総 胆管 線雑 筋 層外 縁を 長軸方向に走行する血管があり、この血管と 肝 動脈 の 間に 粗な 血管網が存在した。この 血管は線維筋層を貫き、粘膜層の毛細血管網へと 移 行し て いた 。神 経内では、漿膜下層血管 網より神経周膜内を走行した後に周囲腔を量き神 経 束に 入 り、 他の 部位からの血管と合流し ていた。また、肝動脈や太い動脈では神経へ直接 血 管が 分 技し てい た。胆嚢では胆嚢動脈か らの血管は漿膜下層を走行した後に固有筋層外縁 を囲 むように分布した後に筋層をIき、粘膜血管網へと移行した。
2)神 経系 :イ ヌの 神経 は肝 動脈 周 囲よ り分 技した。胆嚢では胆嚢動脈とともに胆嚢技が 胆 嚢に 分 技し た。 胆嚢、胆管ともに漿腹下 層では周膜、周囲腔、神経束を認め、それぞれに 血管 が分布していた。線雑筋層内の神経は鍍銀染色により確 認できるが血管を綛めなかった。
粘膜 層では細い神経線維のみ観察された。さらにうっ滞群で 神経周囲腔拡弓長、周膜各層の離 開 が 観 察 で き た が 神 経 に り ン パ 管 と 同 定 で き る も の は 認 め な か っ た 。 3) リン パ系 :リ ンバ うっ 滞作 成犬 の 肝十 二指 腸闇膜を実体顕微鏡で観察すると胆道系のり ン バ讐 は 漿膜 下層 で発達し、リンパ管網を 形成していた。非リンパうっ滞群で胆嚢漿膜下層 にindia inkを注 入す ると 、局 所リ ン パ管 に入 り、漿膜下層のりンバ管に合流し胆嚢管へ流 れ た 後 、 門 脈 に沿 って 肝十 ニ指 腸下 部へ と流 れ た。 正常 群、 うっ 滞群 で神 経へ のinkの流 入 は な か っ た 。リ ンパ うっ 滞群 では 肝門 部リ ン パ管 へのinkの流 入を 認め た 。う っ滞 群で は 神 経 周 囲 の り ン パ 管 ( よ 拡 張 し 、 こ の 部 へ の inkの 流 入 を 認 め た 。 4.臨床における微小転移の特徴
a)壁深達度と微小転移:胆管 癌で、リンパ管浸潤はfm癌でも43%と高率に認められたが、
静 脈浸 潤 、神 経浸 潤は 深違 度が 外膜 以上 で発 生し た。 とく にss癌 以上 では微小転移の発生 は 高率 で あっ た。 胆嚢 癌で は深 達度pm以 内で は、3因子ともに認めず、.fmでもりンパ管浸 潤 を 認 め た 胆 管 癌 と は 異 な っ た が 、ss以 上 で は3因 子 と も に 高 率 で あ っ た 。 2)局 所微 小浸 潤の 相互 関連 :胆 管 癌で はり ンバ管浸潤と神経浸潤、リンパ管浸潤と静脈 浸潤 の間には有意に関連性が認められたが、神経浸潤と静脈 浸潤の間に関連は認めなかった。
胆嚢 癌では因子間の全てに有意に関連性を認めた。
5.臨 床例での神経浸潤の形態的特徴
s。100 protein抗体を用い、粘膜層直下結合織内で、神経末ギ肖での直接浸潤を認めた。線維 筋 層の 粘 膜層 に近 い部分では周膜内に腫瘍 が限局する浸潤形式が多く、この部分の神経内血 管 分布 と →致 した 。この他に神経内の血管 内に腫瘍細胞を認める例、拡張したりンパ管から 神 経内 へ 腫瘍 細胞 が進展する所見、周膜轟 外層に接するりンパ管内に腫瘍細胞を認める所見 など 認め、リンバ行性にも神経浸潤が形成されることが判明 した。
IV. 考察
胆 道癌 のり ンパ管浸潤 、静脈浸潤、神経浸潤の発現頻度は壁漂達度と関連し、 さらに相互 の 発 生頻 度に 関連 性が あっ た。 しか し、 胆管と胆嚢 ではこれら3因子の頻度が異 なることが 判 明 した 。こ の点から局 所進展因子発現には解剖学的なりンパ管、神経、血管な どの相互の 局 所 微細 構造 が関係する と考えた。実験的にはりンパ系と神経には直接の連絡は ないが、リ ソ パうっ滞でりンバ管拡弓長とともに周膜離開、周囲腔拡 大などが観察され、従来より報告さ れ て きた 周囲 の組織とり ンパ管との体液の交通(脈管外通液路)の概念が重要な 要素と考え る 。また、神経と血管では胆嚢、胆管漿膜下層の血管網と 神経内の血管の間に吻合が存在し、
臨 床 例で の神 経浸潤の腫 瘍局在が血管分布と近似していることから神経への血行 性転移によ っ て 発生 する 神経浸潤が 存在すると考える。リンパ管浸潤、静脈浸潤、神経浸潤 の出現頻度 の 関 連性 は胆 嚢と胆管で は異なる。っまり、胆嚢癌ではこれら因子相互の頻度に 関連性を認 め る のに 対し 、胆管癌で は静脈浸潤と神経浸潤の間は関連を認めなかった。この 理由として 胆 管 癌進 展の 主体はりン パ管浸潤であり、静脈浸潤、神経浸潤はりンパ管浸潤に 引き続き出
現するためと考えられた。神経浸潤にはその臨床形態から直接神経に浸潤したものと、リン パ管、静脈を介して発生したものがあり、その発生機序が多岐にわたるためであり、特に出 現頻度の低い静脈浸潤とは相関しないと考えられた。
V.
おわりに胆遭系手術の根治度を向上させるには局所因子の解析結果に基づいた手術をすることとと 考えられる。しかし、局所転移の成立、進展には不明な点がいまだ少なくなく、今後、さら なる基礎的検言寸が必要と考えられる。
学位論文審査の要旨
学位 ・ 論 文題 名 胆 道癌 の 進展 様 式
一 微小 脈 管浸 潤 と 神経浸 潤―
胆道癌の局所進展様式とレて胆道癌取り扱い規約で規定される微小浸潤にはりンパ管浸潤、
静脈浸 潤、神経浸 潤がある 。胆道癌 手術の根治性には、まず局所根治性、ついでりンパ節転 移など の遠隔転移 の根治性 を追求す ることが重要である。これら微小浸潤は胆道癌では主腫 瘍より離れた部に出現することがあり、これが腫瘍遺残となり、再発の、一因となる。このよ うな微 小浸潤は局 所の根治 性に重要 な要素である。本研究の目的は胆道癌の微小浸潤の成立 機序と微小浸潤相互の関連性を明らかにすることにある。
臨床例 の検討には 胆管癌84例 、胆嚢癌
86
例、計170例 の切除標 本を用い、腫瘍壁深達度と りンパ 管浸潤、静 脈浸潤、 神経浸潤 発現の関係、微小浸潤相互の関連性、神経浸潤の形態を 検 討し た 。実験形 態学的検 討には雑 種成犬8頭 を用いた。 リンパ系 の検討に はINDIA lNKを 胆嚢、 肝十二指腸 間膜の漿 膜下層に 注入する間接法を用い、正常群と肝十二指腸間膜下部を 結紮し たうっ滞群 を比較し た。血管 系は腹腔動脈前後で大動脈を結紮後、大動脈、門脈より 色 素 を 注 入 、 実 体 顕 微 鏡 に て 観 察 レ た 。 神 経 系 は 鍍 銀 染 色 に よ っ て 観 察 し た 。まず臨 床症例の検 討では1) 腫瘍壁深 達度と微 小浸潤出 現頻度: 胆嚢癌、胆管癌ともに壁 深達度 が深いほど微小浸潤の出現頻度は高かった。2)神経浸潤と微小脈管浸潤との関連性:
胆嚢癌 では神経浸 潤の発現 と静脈浸 潤、リンパ管浸潤ともにその発現に関連性を認めたが胆 管癌で はりンパ管 浸潤と神 経浸潤の 間に関連性を認めたが静脈浸潤と神経浸潤の間に有為な 関係は 認めなかった。3)リンパ系と神経との関連性:リンパうっ滞例での神経の形態変化に は周膜の離開、周囲腔拡大を認めた。さらに離開した周膜内にりンパ 球浸潤を伴う場合があ った。4)神経浸潤の基本形態: