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博 士 ( 医 学 ) 高 橋 秀 宗 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 医 学 ) 高 橋 秀 宗

学 位 論 文 題 名

ヒ ト T 細 胞 白 血 病 ウ イ ル ス II 型 の 分 子 特 性

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  HumanT−cell lymphotrophic virus,typeI、(HTLV―I) とtype矼 (HTLV ‑H) は類似した生物学的特性を有するレトロウイルスであり発生学的に関連していると考えられてい る。HTLV ‑Iの感染は特定 の地方に限局して認められ, 成人T細胞白血病や慢性進行性脊髄 症などの発症に関連していることが判明している。

  一方HTLV ‑Hの感染はア メリカのインデイアンに見られ,さらにアメリカやヨーロッパの 都市部の麻薬常習者intravenous drug abusers(IVDAs)の間では広く蔓延していることが 報告されてきている。病気としてはりンパ球増殖性疾患や慢性進行性脊髄疾患との関連が示唆さ れているが,未だ特定の疾患との明確な結び付きを示すものは知られていない。AIDS患者の多 いNew York市 に おい てはIVDAsの 少な くと も60% はHIVに 感染 して おり , その内の12.5

% が 血 清 学 的 にHTLV―Iま た はHTLV ‑ 1Iの 両方 に交 又す る 抗原 (HTLV−I/H) に陽 性で ある と予 想 され てい る。Polymerase chain reaction法(PCR法)を用いた検索では HTLV―Hによ る感 染の 方が 多 いと 指摘 され て いる 。HIV感 染の 流行 は一 方 でHTLV―1Iの 感染 状況 やヒ ト 疾患 にお ける役割 を調べるのに絶好の機会を 提供していると言えよう。

  本研究ではIVDS患者よりHTLV ‑皿を分離しそれらを 分子生物学的および血清学的に検討 することによりHTLV ‑Hの 分子特性を明確にし,さらにこのウイルスのヒト疾患に関する役 割を研究するための基盤の確立を目的とする。

研究方法

患者 と ウイ ルス 分離 :対 象 はNew Yorkに 在 住しIVDSないしその関 連疾患でNorth Shore University Hospitalを受診した患者よルウイルス分離が可能であった8名の患者で,そのうち 6名 はHIV及 びHTLVーI/Hに 陽 性 で ,2名 はHTLV・I/ 且 の み 陽 性 で あ っ た 。 患 者 末 梢血単核球をBJAB細胞と混合培養し,細胞変性効果を示したものにっいて電子顕微鏡観察お よ び 逆 転 写 酵 素 活 性 の 測 定 に よ っ て ウ イ ル ス の 分 離 状 況 を 判 定 し た 。

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Southern Hybridization: HTLV ‑u provirus DNAをBam HIによ り5′(4. 7kb),3′ (3. 5kb)にサブク口一二ングし,それぞれをプ口ーブとし,混合培養細胞よりphenol一chlo・ roformにより抽出したDNAとハイブリダイズさせた。

PCR法 に よ るDNAの 増 幅 :gag領域(bp756―1274)に っ いて プ ラ イ マー をHTLVーn(Mo 株)の塩基配列にしたがって作成し,denature94℃40秒,annealing56℃55秒,extension72℃ 2分の条件で30サイクル増幅した。

DNAの ク ロ ーニ ン グ と 塩基 配 列の 決定:PCR法にて 増幅し たDNAをagarose gelに電気 泳 動し,目的のバンドを切り取りpBluescript vectorのEcoRV切断部ヘ挿入し,E. coliヘトラ ン ス フ オ ー ム し た 。DNA塩基 配 列 はM13forward.reverse primersを 用 い てdideoxy chaln termination法にて決定した。

Gag蛋 白p19発現 プ ラ ス ミド の 構 築 :HTLV−HGag蛋 白 の う ち野 生 型 (IIp19)と 欠失 型

( 且dp19), さ ら にHTLV―Iのp19(Ip19)とをmaltose結合 蛋白と の融合 蛋白と して発 現 す る プ ラ ス ミ ド ベ ク タ ー を 作 成 し た 。HTLV ‑H p19,HTLV一udp19,HTLV―Ip19 領 域 を 増 幅 す る プ ラ イ マ ー を 設 定 しPCR産 物 をEcoRI,BamHI切 断 部 に 挿 入 し た。

融合蛋白の発現と精製:発現プラスミドを有するコ口ニーをLB培地で培養し0.5mM IPTGで 1時間蛋白発現を誘導した。細菌のぺレットを凍結融解,超音波破砕後amylose resinのカラ ム に吸着 させ,m altoseを含む 液にて 溶出し ,抗原 として 用いた 。Western blotおよび ELISAは常法にて行った。

結  果

  1.患者末梢血単核球とBJAB細胞とを混合培養すると合胞体の形成がみられ,培養上清に はMg2゛依存性の逆転写酵素活性が認められ,電子顕微鏡にてC型ウイルス粒子が認められた。

  2. 培 養 細 胞 か ら 抽 出し たDNAのSouthern hybridizationに てHTLV―Hprovirusの 存在が確認された。制限酵素による切断パターンをみると8っの分離株にうち4株はすでに報告 さ れ て い るHTLV ‑HのMo株 と ほ と ん ど 一 致 し , 他 の4株 憾HTLV ‑矼NRA株 と 極 めて 類似して いた。 このことからHTLV ‑Hには2種類のサブタイプが存在することが示唆され,

それぞれをHTLV−1Ia,HTLV ‑Hbと記載した。

  3. gag遺伝子 がコー ドするp19を含む518の塩基 配列を 調べる とHTLV ‑ IIaとHTLVー 皿bとの 聞に1ア ミノ酸の 変異を 含む14箇 所で単 一塩基 変化が 見られ,さらにHTLV ‑nbに は5′側に66bpの欠損が認められた。

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  4.HTLV ‑ IIa,HTLV ‑Hb,HTLV―Iの そ れ ぞ れ のGag蛋 白p19を 融 合 蛋 白 と し て作成し,それぞれを抗原として患者血清との免疫反応をWestern blotにて検討した。HTLV ‑ HaとHTLV ‑ IIbの抗原はどちらの タイプの患者血清とも反応し ,Gag p19を抗原とした血 清 学的 反 応で は両 者を 区別できな かった。しかしながらHTLVーIとHTLV ‑Hとの鑑別は可 能であった。

5. Gag蛋白における欠損部分を含む22アミノ酸と親水性C末端を含む15アミノ酸の合成ペプ チ ドを 抗 原と して 患者 血清との免 疫反応をELISAにて調べたと ころHTLV ‑皿b感染患者血 清はす べて陰性であったがHTLV ‑Ha感染患者で、は10名中6例 で強い反応が認められた。

考  察

  多数のHTLV ‑ II感染患者よルウイルスを分離して制限酵素地図を作成してみると2っのサ ブタ イ プが 存在 する こと が 判明 し, それ ぞれ をHTLV ‑ IIaとHTLV ‑ 1Ibと した。Gag領 域の塩基配列の違いに着目してそれぞれのGag p19の融合蛋白を作成して患者血清との免疫反 応を見たが両者に反応の差が見られなかった。このことは欠損部以外の残存する部位に感染者に 対するエピトープがあるものと考えられた。欠損部位を中心として作成した合成ペプチドでは HTLV一IIaとHTLV ‑ IIbとの鑑別に有用であるば かりでなくウイルスと細胞 との相互作用 を解析するうえで重要な知見を含んでいるものと考えられた。

結  語

  New York在 住AIDSお よ びその関連患者8名よりHTLV ‑ IIを分離解析し以下の結 果が得 られた。

  1. 制 限 酵 素 地 図 に よ りHTLV ‑Hのproviusを2っ のサ ブタ イプ に 分類 し, それ らを HTLVー 皿aとHTLV―Hbと し た 。HTLV ‑Haは す で に 報 告 さ れ て い るMo株 に 一 致 し ており,HTLV ‑HbはNRA株に類似していた。

  2. gag領域p19コード部 位の塩基配列を調べるとHTLV ‑ubでは66 bpの欠損を認 めた。

そこでp19蛋白をE.coliで融合蛋白として発現させて作成し,それを抗原として患者血清との 反 応を 調 べた がHTLV ‑ ILaとHTLV ‑矼bと の両 方とも に反応し差異がなかった。 しかし HTLV―Iと は 反 応 せ ずHTLV− Iと HTLV ‑Hと の 区 別 に 使 用 可 能 で あ っ た 。   3.  HTLV ‑Hbで欠 損し てい る部 位 を含 む合 成ペ プ チド によ るELISA測定ではHTLV― ILbは す べ て 陰 性(0/6)で あ っ た がHTLV ‑Haで は 半 数 以 上 (6/10)陽 性と なり ,両

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者の鑑別の指標となった。

  以 上の 結 果 はHTLVHの臨 床 病 理 学 的, ウ イ ル ス 学的 な ら び に 疫 学的 研 究 を 進 めてい くう え で 極 めて 重 要 な 情 報を 提 供 し て い るも の と 考 え られ た 。

主 副 副

学位論文審査の要旨

  HumanTcell leukemla vlrus typeHHTLV1I) はhairy cell leukemiaの 二 人 の 患者か ら分離 された ために りン パ球増 殖性疾 患に関 連し ている 可能性 が示唆されているが,未だ ヒト の 病 気 の 原因 と し て は 未知 の 状 態 に ある 。New York地方 に おい ては 麻薬常 習者の60%が HIVに 感 染 し て お り そ の う ち12.5% が 血 清 学的 にHTLVに 陽 性 で あ ると 報 告 さ れ てお り , こ のウ イ ル ス の 研究 に 重 要 な 機会 を 提 供 し てい る。我 々はHTLV ‑ 1Iの ヒ卜 疾患に 関する 役割を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て 分 子 生 物 学 的 並 び に 血 清 学 的 手 段 に よ り 検 索 し た 。

材 料 と 方 法 : New York市 に 在 住 しNorth Shore University Hospital (New York)に通 院 し た 患 者を 対 象 と し て検 索 し た 。 ウイ ル ス 分 離 を行 っ た 合 計8名 の 患 者 の う ち2名 はHIV及 び HTLVの 抗 体 陽 性 で , 残 る2名 はHTLVの 抗 体 の み が 陽 性 で あ っ た 。 患 者 末 梢 血 単 核 球 (PBMC)BJAB細 胞 と を 混 合 培 養 し ウ イ ル ス の 分 離 を 行 っ た 。 次 にHTLV ‑provirus の 制 限 酵素 地 図 を 作 製す る た め にSouthern blottingを 行 っ た 。ま たgag領 域の塩 基配列 を決 定し ,欠損 を見 っけた ため患 者血清 の反応 性の 違いを バクテ リアに よる 発現蛋白と合成ペプチド を用 いて調 べた 。

結 果 : 患 者PBMCBJABを 混 合 培 養 し た と こ ろ1時 間 で 合 胞 体 形 成 が 現 れ た 。 培 養 上 精 に はMg ゛ 依 存 生 の逆 転 写 酵 素 活性 が 認 め ら れ, 電子顕 微鏡に よる 検索で タイプC粒 子が認 めら れ た 。分 離 株8種 のprovlrusの 制 限酵 素 地 図 を 作製 し た と こ ろ四 っ の 分 離 株 はMo株 に 相似 で

郎 暹

和  

  和

嶋 巻

長 葛

授 授

教 教

査 査

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あ り 残 る四 っ の 分 離株 はNRA株 に 一致 し そ れ ぞれHTLVー皿a,HTLV ‑矼bと命名 した。

次 にHaとIIbのgagp19領域の 塩基配 列を決 定した ところ18bpの単一 の塩基 変化とHbには 66bpの欠損が認められた。p19または欠損したp19の融合蛋白をバクテリアにより作製したが Westem blottingで 両 者 を 区別 す る こ とは で き な かっ た 。 一 方HTLVーIとHTLV一 且の gag p19の抗原性には交差がないことが分かったニ欠損部分全てを含む22アミノ酸を合成し患 者血清に対する免疫反応をELISAにて調べたところ且bに感染している6名の患者血清はどれ も反応をしめさず,対照的にHaの10名の血清は陽性反応をしめし両者の鑑別のスクリーニング に使用可能と思われた。

考 案 :HTLV ‑uの8種 の分 離 株 の解析に よりHTLV ‑皿には ニっの サブタ イプが 存在する こきが判明したが,このサブタイプとHIV感染やりンパ球増殖性疾患との間に特定の関連は認 め ら れ な かっ た 。 し かしgag p19のE.coli発現 蛋白でHTLV―IとHTLV ‑ IIが容易 に鑑 別 で き る よう に な り ,ま たgag p19欠 損部合 成ペプ チドでHTLV―lIaとHTLV ‑ ILbとの 区別が可能になったことから今後さらに多数の分離株にて検索する基礎を確立することができ た。

結 語 :New York在 住HIV陽 性 患 者6名 と 非 陽 性 患 者2名 の 合 計8名 よ りHTLV・Hを 分 離解析し以下の結果が得られた。制限酵素地図によりHTLV ‑ IIのprovirusをニっのサブタ イ プ に 分 けら れ た こ とを 示 し , それ ぞ れHTLV ‑ 1Ia,HTLV ‑nbとし た 。HTLV―Haは 既 に 報 告 され た 分 離 株Moに 類 似しHTLV ‑Hbは 分 離 株NRAに 相似 する株 である ことが 判 明した。gag領域の塩基配列を決定してしらべた結果IIbのp19領域に66bpの欠損を認めた。

欠損のあったp19領域の抗原性の差異をE.coliで発現させて調べた所矼a,Hbと患者血清と の 反 応 に おい て 差 は 認め ら れ な かった がHTLV・I患 者とは 交差反 応を示 さずHTLV−Iと HTLV ‑Hのスク リーニ ングに使用可能と考えられた。欠損部位の合成ペプチドによるELISA で は1Ibは全て 陽性(0/6)で あった がHaは半 数以上 (6/10)強陽性 であり, この部 位 で ニっの サブタ イプの 区別が 可能と なった。

  口頭発表に当たり,生田教授よりHTLV ‑Hウイルス分離率に関する患者の免疫状態の影響 にっ いて,HTLV ‑Hのニっ のサブ タイプ とHIVとの関連にっいて,gag蛋白を用いた理由に っ い て , ま た 葛 巻 教 授 よ りHTLV−Hに お け るHTLV−Itax様 蛋 白 の 機 能 に っい て ,

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HTLV・uの感染状況 と腫瘍発生,あるいは免疫能との関連等に関して質問がなされたが,発 表者はおおむね適切な解答をした。また生田教授,葛巻教授より個別に審査を受け,それぞれ合 格とされた。

  以上,本研究はヒトT細胞白血病ウイルスH型にニっのサブタイプが存在することを見だし,

さ ら に そ れ ら の 診 断 法 を 確 立 し た も の で 学 位 論 文 に 値 す る も の と 判 断 さ れ た 。

参照

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