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博士(工学)平野 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)平野 学位論文題名

低温硬化 性ビニル系ポリマーコンクリートの      開発 に関す る研究

学位論文内容の要旨

1.研究の背景, 目的および必要性

  近年、寒冷地の使用に適し、低温作業性に 優れたポリマ―コンクリートの開発が求めら れている。本研究は、これらの要請に応える ためになされ、新しいポリマーコンクリート の 開 発 と そ の 実 用 化 お よ び 評 価 に 至 る ま で の 一 連 の 研 究 か ら な る 。   ボリマ―コンクリート(POC)は,樹脂を結合材とするコンクリ―トでセメントコンクリ ートに比ベ,強度,耐薬品性.耐水性,早強 性などに優れている。従来,結合材として,

不飽和ポリエステル樹脂(UP),エポキシ樹脂(EP)が主に使用されてきた。  こらの結合材 は,組成中にブレポリマーを含むので粘度が 高く,骨材と混合したPOCの施工作業に困難 をきたすことがあり,硬化には品温を常温ま たは加温保持する必要があるため,寒冷地に おける現場使用には適用できない現状にある 。

  本研究は,北国の寒冷な季節にぉいても容 易に使用可能なボリマ―コンクリ―トの開発 を目的として実施したもので,そのためビニ ルモノマ―の組成配合について検討し,低温 硬化性,早期強度発現性.低収縮性および現 場作業性に優れたピニル系のポリマーコンク リ―トの開発を行なった。北海道におけるセ メン卜コンクリー卜製造業は,冬期の稼動率 が低下することが大きな問題となっており, 寒冷期にも使用でき早期に高強度を発現する 材料の開発は,企業の通年活動.人員の定常 的確保の点からも意義あるものと思われる。

また.工事を短時間に完了できる利便性があ る。

2.研究内容

  本研究は,新しい 結合材の開発とそのボリマーコンクリートへの適用および実用化試験 から成っている。結 合材の開発では、多官能成分のグリセ口一ルメタクリレ―ト(GM)にエ チレン性単量体のスチレン(St)またはメタクリル酸メチル(刪A)を配合したビニルモノマ ー配合液の常温硬化 性,低温硬化性につて比較検討した。このなか,GM/St系は硬化収縮 の低減が可能であり 、コス卜的にも有利であることから,実用化の上で最も適当であると 判断され,以下この 系を中心に研究された。ボリマーコンクリートの開発では,Gb4/St系 POCの低温流動性,低温硬化性,収縮低減性,強 度、耐薬品性などの硬化前.硬化後の諸 性質の測定を行なっ た。さらに,いくっかの実用化のための施工試験を行なって,ビニル 系(Gld/St)ボリマーコンクリートの開発を行なった。  なお,本研究においてボリマーコ ン クリ ー卜(POC)はモル タルも含むものとするが,特に必要のあるときは骨材が5mm未満 の混練物をボリマ― モルタル(POM)と称した。

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3.研究の方法

  結合材の主成分モノマ―組成液の硬化特性を可使時間(ゲル化).硬化時間から検討し た。っぎに,収縮低滅剤.粘度調整剤を加えた配合樹脂液をっくり,結合材としての評価 を硬化試験,硬化体の物性試験によって行ない結合材の最適組成を決めた。っぎに,結合 材を配合骨材と混練して,POC供試体をっくり,強度発現性,到達強度,低温硬化性,熱 応力性状,耐薬品性,耐摩耗性その他の諸性質を測定し,ビニル系ポリマーコンクリート の総合的評価を行なった。さらに,現場施工試験を行なって実用化のための実証データを 得た。

  なお,本研究で使用された開始剤はべ)ゾイル′卜オキサイF (BPO),メチルエテルケトン´ト才キサイF (SIEKPO),メチA7 セトアセテー トJトオキサイ ド(MAAPO)で ある。促進剤はN,N´ジメチルアニリフ(DMA),N,N'ジメチMラトルイジン(Dhff お よ び ナ フ テ ン 酸 〕J伽 ト(CoN)で る 。GM/St系 の 重 合 に は , BPODHAMEKPO(CoN+DMA)の 二 元 系開始剤として使用された。硬化温度が0‑ー20℃の低温時には,BPO−Dh{T.t,lAAPO‐CoN

適用した。各添加量は使用時の温度と必要とする可使時間によって決められた。

4.研究の新規性および成果

  本研究の結果、新規なピニル系ポリマ―コンクリートが開発され、次のような成果が得 られた。

(1)結合材の主成分はビニル系モノマーのGM.Stなので,非常に低粘度であり,骨材との 混練 性 , 施工 の 作 業性 が 良 く ,POC中の 結 合 材使 用 量 は従 来 のPOC中で 最も少 ない。

(2)結合材中のGMは架橋剤としてはたらき系の硬化反応性を高めると共に,モノ,ジエス テル分子中に残存する水酸基は親水性無機表面をもった骨材との付着力増大に効果がある と 推 察 さ れ る 。 そ の た め 強 度 の 発 現 性 が 良 く 、 高 強 度 のPOCを 形 成 す る 。 (3) FdldAを主成分とするアクリル系は硬化収縮が大きいが,GM/St系はスチレン/酢酸ビニ ル共重合体及びスチレン/メタクリル酸メチル共重合体の添加により収縮を低減しうる。

このため 硬化収 縮によるクラックの発生が少なく、厚いPOCの現場打設が可能になった。

(4)低温 硬化性 に優れ−20℃においても短時間で実用強度に到達するので、寒冷地の冬期 に使用できる。

(5) 線膨張 係数が比 較的小さいため,硬化後の温度変化による熱応カの発生が少ない。

(6)低 温硬 化 したPOCは 応力緩和 を示す ので、温 度変化 に対し熱 応カの発 生が小 さい。

(7)従 来の ビ ニル 系モノ マー結合 材がMMAを主成 分とす る熱可塑 性樹脂で あるの に対し Gl1/St系結合材は熱硬化性樹脂を形成する。

(8)施工作業性、強度発現性、低収縮性に優れた低温硬化性ピニル系ポリマーコンクリ―

トをいくっかの現場に使用し、所期の目的が達成された。

5.今後の展望

  POCは ,土木建 設材料としてはまだコストが高いが.強度.耐食性,耐摩耗性,非透水 性など共通した優れた性質を持っているので,表層材料として有効に活用する用途は沢山 あると思われる。しかし,これまでは現場施工はなかなか用途が進展しなかったのが実状 である。本lifF究の結果,施工作業性,低収縮性,低温硬化性,強度発現性およぴ熱応力性 状に優 れたピニ ル系POCが開発されたのに伴い,従来のブレキャスト製品指向から,現場 打設指向へと用途開発が進むと期待される。北海道では,魚野菜市場,厨房の床,自動車 整備工場,印刷工場などの内装フ口アコーティング材として.あるいは道路,トンネル,

橘などの補修に野外使用される例がこの5.6年増加した。本州では主に内装用途に需要が 仲びている他、地下鉄工事などの際路面の仮設に用いられろ覆工板の滑り止め舗装にも多 量に使用されている。また,平成5年9月に本ビニル系ボリマ―コンクリートは,(財)土

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木研究センターより耐摩耗性 舗装材料ししての認定を受けた。これを契機に今後も本研究 の成果の―層の進展が期待さ れる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

低温硬化性ビニル系ポリマーコンクリートの 開発に関する研究

  ポ リ マ ― コ ン ク リ ー ト (POC) は 、 コ ンクリー トに比ベ 、強度、耐薬品性、

そ の 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ て い る 。

樹 脂 を 結合 材 と する コ ンク リ ー トで セ メント 耐 水 性 、早 強 性 など に 優れ て い るた め 、近年

  し か し 、 従 来 のPOC用 結 合 材 は 、 高 粘 度 の た め 骨 材 と 混 合 し たPOCの 施 工 作 業 が 困 難 であ り 、 低温 で は硬 化 が 不十 分 であ っ た 。ま た 施工 作 業 性と 低 温 硬化 性の良い 結 合 材 は収 縮 が 大き い とい う 欠 点が あ った た め 、寒 冷 地に お ぃ ても 現 場 で使 用できる POCの 開 発が 求 め られ て いた 。

  本 論 文 は 、 こ の よ う な 現 状 に あ るPOC用 の 結 合 材 に 対 す る 改 良 の 要 請 に 応 え る た め 、 結 合材 と し てピ ニ ル系 モ ノ マー の 配合 組 成 につ い て検 討 し 、低 温 硬 化性 、強度発 現 性 、 低収 縮 性 およ び 現場 作 業 性に 優 れた ビ ニ ル系 ポ リマ ー コ ンク リ ー トの 開発を目 的 と し た研 究 を 行な い 、寒 冷 地 仕様 の 新し い 建 設材 料 とし て の ポリ マ ー コン クリ―ト を 創 出 した も の であ る 。

  研 究の 主 要 な成 果 とそ の 評 価は 、 以下 に 要 約さ れ る 。

  1.  グ リ セ ロ ― ル メ タ ク リ レ ― ト (GM) と ス チ レ ン (st) を 主 成 分 と す る 低 温     硬 化 性 の 新 し い ピ ニ ル 系 (GM/st) ポ リ マ ー コ ン ク リ ー ト 用 結 合 材 を 開 発     し た 。

  2.  こ の 結 合材 は 、非 常 に 低粘 度 であ る 。 そのた め骨材と の混練り 性や施工の 作業     性 が 良 く 、 機 械 施 工 が 可 能 で あ り 、 従 来 の も の と 比 較 して 結 合材 の 使 用量 が 少     な く 、 線 膨 張 係 数 の 比 較 的 小 さ な ポ リ マ ー コ ン ク リ ー ト を 形 成 で き た 。   3.  ビ ニ ル 系 モ ノ マ ー は 硬 化 時 の 収 縮 が 大 き い か 、GM/st系 は ス チ レ ン / 酢 酸     ビ ニ ル 共 重 合 体 の 適 量 添 加 に よ り 収 縮 を 大 幅 に 低 減 す るこ と がで き た 。こ の た

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昭  

  英

吉 崎

伯 田

森 山

佐 鎌

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     め硬化収縮によるクラヅクの発生が少なく、厚打の現場施工が可能になった。

4 . 低 温硬 化 性に 優 れ ‑20 ℃に お いても短時 間で実用強 度に到達す る。そのた め      冬期工事やプレキャスト製品の製造など寒冷地における通年使用が可能となっ      た。

5 .強度 の発現が早 い。このため現場施工において工事期間を短縮でき、施工後短      時、間で供用を開始することができる。

6 .    低温 下で硬化し たPOC は若 干の応力緩 和性状を示し、温度変化に対し熱応カ      の発生が小さい。このため寒冷期の施工においては、残留応カの小さな硬化体      を形成すると推察される。

7 .   本研究のビニル系ポリマ―コンクリートをいくっかの現場に使用し、低温硬化      性、強度発現性、低収縮性およぴ施工作業性の点で、施工試験の目的が達成さ      れた。

    POC は 、 研 究 が 始 ま っ て か ら 約 30 年 の 歴 史 し か な い 若 い 材 料 で あ る 。 こ れ ま では 、 土木 ・ 建築 など使 用する側か ら既存の樹 脂を用いた POC の配合 設計や 物 性 の 評価 的 な研 究 が多 かった 。これに対 して、本論 文は新しい POC 用結合 材の開 発 という化学 分野から土木建設分野への応用という実用性に至るまでの一貫した一連 の研究に取組み所期の成果を上げたものである。

   こ れを要する に、著者は、寒冷地用の新しいビニル系ポリマ―コンクル―トの開発 し 、その実用 性についても実証したものであり、土木工学、特に建設材料学の発展に 対して貢献するところ大なるものがある。

   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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