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博士(薬学)辻 祥太郎 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(薬学)辻   祥太郎 学位論文題名

アポトーシス死細胞による自己補体活性化機構に関する研究

学位論文内容の要旨

  アポトーシスを起こした細胞は細胞内容物を閉じ込めたアポト―シス小体へと分断し、周囲 の食細胞などに速やかに取り込まれ処理される。一方,補体系は異物の除去に働く生体防御系 で、その働きのーつに異物をC3フラグメントで標識し、食細胞による貪食を増加させる作用が ある。

  筆者は、生体内でのアポトーシスを起こした細胞のクリアランス機構と補体系の関係につい て着目し、『もし補体系の異物除去作用がアポトーシス死細胞にも働くならば、その貪食除去 が促進されるのではないか』と考え解析を行った。その結果、本来同種細胞上では活性化をちI き起こさない補体系が、アポトーシスを起こした細胞上では活性化されることを見いだし、さ らにその活性化機構と貪食処理の促進効果についての解析を行った。以下に、研究結果につい てまとめる。

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  ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の生細胞および死細胞をヒト血清で処理し、解析を行 うと、死細胞にのみC3フラグメントの沈着が認められ,この沈着はアポトーシスの急速な進行 と平行して増加していた。また、C3フラグメントの沈着は血清の濃度と処理時間に依存してい た。従って、死細胞へのC3フラグメントの沈着は補体の活性化を介したものであることが示唆 された。

  補体の活性化経路には古典的経路と第二経路が存在する。そこで活性化経路について検討し たところ、死細胞へのC3フラグメントの沈着は第二経路を介したものであることカ咏唆された。

  死細胞に沈着したC3フラグメントは数種の受容分子にエステル結合で共有結合しており、ほ とんどがiC3bに変換されていることが明らかとなった。

  アポトーシス死細胞の補体制御膜蛋白質は生紐胞の半分程度に滅少していたが、補体活性化 の原因はこれらの滅少によるものではなく、新たな同種補体活性化因子の発現が原因であると 考えられた。

  以上の結果から、川アポト―シスを起こしたHUVECは補体活性化能を発現し、補体を活性化 してC3フラグメントを沈若させること、(2)アポトーシス死細胞へのC3フラグメントの沈若は 補体第二経路の活性化によるものと考えられること、(3)沈若したC3フラグメントは数種の受容 分子にエステル結合により共有結合しており,ほとんどが iC3bに変換されていること、(4)アポ トーシス死細胞による補体の活性化は、細胞死に伴い新たに発現してくる未知の自己補体活性 化因子によるものであると考えられること、などが示唆された。

… 《

… …

… …

… …

(2)

ラグメン トの沈若がおこることが示唆され,

な も の で は な い こ と が明 らか とな っ た。

  死細 胞の 同種補 体活性化因子がアポト―

成 阻害 剤を 用いて 解析したところ、阻害効 活 性化 因子 はアポ ト―シスに伴い生合成さ

死 細胞 によ る同 種 補体の 活性化tjtHUVECに特異的 シ ス に伴 い生 合成される蛋白 質であるかを蛋白質合 果 は 認め られ なかった。従っ て、死細胞の同種補体 れ て くる 蛋白 質ではなく、あ らかじめ細胞内にプー ルされている分子と考 えられた。

  ア ポト ― シス 死細 胞に 沈着 したC3フラグメントが死細胞 の貪食除去を促進するかに ついて解 析を 行っ た 。そ の結 果、 アポ トーシス死細胞に沈着したC3フラグメントは死細胞の貧 食除去を 促進させる効果がある ことが示唆された。

  以 上 の 結 果 か ら 、 川 ア ポ ト ― シ ス 死 細 胞 に よ る 同 種 補 体 の活 性化 はHUVECだけ でな く 、 Jurkatに お いて も認 めら れる こと、(2DE細胞の同種補体活 性化因子はアポ卜一シスに 伴い生合 成される蛋白質ではな く、あらかじめ細胞内にプ― ルされている分子と考えられること、(3)ア ポト ―シ ス 死細 胞に 沈着 したC3フラグメントは死細胞の貪 食除去を促進する効果を持 つこと、

などが示唆された。

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  死細 胞の 血清 処 理時 間を 変え 、 経時的にC3フラグメン トー受容分子複合体の形成 を解析した と ころ 、還 元条 件 下のSDS−PAGEで155 kDaを示 す受 容 分子 複合 体が 最初 に 形成 され ることが 明 らか とな った 。 補体 の活 性化 に 伴い 生成 するC3bは、 まず 最も近傍の活性化分子 自体に結合 す ると 考え られ る こと から 、こ の155 kDaの 複 合体 に同 種補 体活性化分子が含まれ ている可能 性が考えら れた。

  次 に 、C3フ ラ グ メ ン ト 一 受 容 分 子 複 合 体の 構 造を2次元SDS−PAGEによ り解 析し た。 そ の 結 果、C3フ ラグ メ ント ー受 容分 子 複合 体のC3フ ラグ メ ント はす べてiC3bに 変換 され ているこ と 、C3bを 安定 に保 持す る よう な複 合体 は形 成 され ない こと 、C3フラグメントと受 容分子間の 結合はエス テル結合であること、などが示唆された。[゜SSl‑Met,Cysを用いて細胞蛋白質の標竃 を 行い 、受 容蛋 白 質を 解析 する と [35SJにより標識され た48 kDa,85 kDa,87 kDaなどの受容 蛋 白質 が確 認された。なお、  85 kDaと87 kDaの蛋白質 は155 kDaの複合体に由来し ていた。こ れ ら のN末 端 ア ミ ノ酸 配列 を決 定 した とこ ろ、 す べてC4dのN末 端と 完 全に 一致 した 。ま た 、 そ れ以 外の 配列 は 同定 出来 なか っ た。C4dは 血 清に 由来 する と考えられたことから 、死細胞の 同 種 補 体 活 性 化 因 子 は 、N末 端 が ブ ロ ッ ク さ れ た40 kDa0蛋 白 質 と 考 え ら れ た 。   アポ ト― シス 死 細胞 によ る補 体 活性化機構について解 析したところ、正常血清中 では古典的 経 路と 第二 経路 が 同時 に活 性化 さ れていることが示唆さ れ、先に反応が進行する古 典的経路の 方/J{C3フラ グメントの沈着に対する寄 与が大きいと考えられた。

  アボ ト― シス 死 細胞 によ る古 典 的経路の活性化には血 清中の抗体は関与しておら ず、死細胞 にCl Sが直 接結 合 する こと によ り 始動するものと考えら れた。また、C4フラグメン トとC3フラ グ メン トの 両方 を 結合 した 受容 分 子は 橿め て限 定さ れ てお り、先の155 kDa複合体 に含まれる 40 kDaの細 胞蛋白質が、死細胞のCls結 合分子と考えられた。

  以 上 の 結 果 か ら 、(1)C3フ ラ グ メ ン ト ー 受 容 分 子 複 全 体 は 、 還 元 条 件 下 のSDS−PAGEで 155 kDaを 示す 複合 体が 最 初に 形成 され るこ と 、(2に の155 kDa複合体には、iC3bのQ.N鎖と C4d、 およ びN末端がブロック されている細胞由来の蛋白 質が含まれること、(3F31E細 胞へのC4d の沈着は古 典的経路の活性化によるもの であること、(4)正常血清中では、先に反応が進行する 古典的経路 の方tj{C3フラグメントの沈着に対する寄与が大きいと考えられること、(5拷琶細胞に よ る古 典的 経路の活性化は、 死細胞にClsが直接結合する ことにより起こると考えら れること、

(6)1 55 kDa複 合体 に含 ま れる 細胞 蛋白 質(40 kDaと 推 定さ れる)が、死細胞のCls結合分子と 考えられる こと、などカ緑唆された。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

アポトーシス死細胞による自己補体活性化機構に関する研究

   細 胞死 は形 態学 的に ニつ の様 式、 すなわ ちア ポ卜 ―シ スと ネク 口一 シス に分 けら れる 。ア ポト ーシ スは 器官 形成に おけ る不 要組 織の 脱落 や胸 腺で の自 己応 答性 リン/く球の細胞死の機構とレて注目されている。アポトーシ ス細 胞は 細胞 内容 物を 封入 した アポ トーシ ス小 体と なり 、周 囲の 食細 胞に より 貪食 処理 され るた め、 周辺 組織 に対し て炎 症を 惹起 する こと がな い静 かな 細胞 死と いえ る。

   ア ポト ―シ スに至る細胞内情報伝達機構に関する研究は花盛りであるが、

アポ トー シス 小体 が排 除さ れる 機構 に関し ては 殆ど 研究 が進 めら れて いな い。

   補 体は 約20 種類 の血 清蛋 白質 から なる酵 素系 で、 抗体 非依 存性 に感 染菌 など の異 物を 攻撃 する 生体 防御 機構 である 。補 体の 主な 防御 活性 は、 標的 異物 表面 に補 体フラグメント、 iC3b 、を標識レ、iC3b をりガンドとする食細 胞に よる 貪食 処理 を促 進す るこ とで ある。 補体 は自 己細 胞に 対し ては 攻撃 をし ない 自己 寛容 機構 を備 えて いる ため、 正常 細胞 表面 では 補体 活性 化は 進行 しな い。

   本 研究 は、 自己細胞がアポト―シスを起こすと、自己補体により異物とし て識 別さ れ、 iC3b で標識されることを発見し、その機構を詳細に解析したも ので ある 。

   本 論文 は、

  1 : ア ポ ト ー シ ス 死 細 胞 に よ る 同 種 補 体 の 活 性 化 機 構

治 良

彦 均

滋 英

澤 橋

長 横

高 澤

授 授

授 授

   

   

教 教

教 教

助 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

2 :アポ トーシス 死細胞の貪 食処理に おけるC3 フラグメントの沈着の影響 3 : ア ボ ト ー シ ス 死 細 胞 に お け る 同 種 補 体 活 性 化 分 子 の 探 索 の3 部か ら構成さ れている。

  1 : ア ボ ト ー シ ス 死 細 胞 に よ る 同 種 浦 体 の 活 性 化 機 構    ヒト血管 内皮細胞 を成長因 子を欠損 した培地 で培養す ると、細胞 が剥が れて浮遊 するが、 この死細胞はヒト補体を活性化し、iC3b で標識されること を発見し た っそ の活性化機構が抗体非依存的な第二経路と呼ばれる経路を 会して進 行するこ とを精製 した補体 成分を用 いた再構 成実験によ り証明し たっさら に、この 現象はり ンパ球で も観察さ れること を明らかに した 、

  2 :アポ トーシス 死細胞の 貪食処理 における C3 フラグメントの沈着の影響    アポ トーシス 死細胞は マクロフ ァージに よって貪食 処理され るといわ れ ている。アポ卜ーシス死細胞を補体処理したことによ‐り、マクロファージに よる貪 食処理が 2 倍以上促 進したっ この貪食 処理効果は、iC3b に対する抗体 やiC3b レ セブクー に対する 抗体によ り抑制さ れたことか ら、捕体 標識によ る貪食促進効果が確認された。

  3 : ア ポ ト ー シ ス 死 細 胞 に お け る 同 種 補 体 活 性 化 分 子 の 探 索   1C3b は活 性 化 分子 に共有結 合を介して 結合する 特性があ るっこの 共有結 合はエステル結合によるもので、ヒ卜.ロキシルアミン処理で開裂するっした が って、1 次元で電気泳動レた試料をヒ卜.ロキシルアミン処理すると、1C3b と 結合分子は 開裂して 2 バン卜l に 分かれるっこの原理に従いアポトーシス死 細胞を補体処理し、iC3b ―膜分子複合体を免疫沈殿で回収、し、2 次元電気泳動 で結合分子を解析したところ、iC3b 一活性化分子は分子量12 万であり、ヒト.

口 キシルアミ ン処理す ると、4 − 5 万の膜蛋白質が分離することを明らかにし た ー この 分 子 がア ポト ーシスに伴 って細胞 表面に発 現する活 性化分子 であ る可能性が高いと予想される。

   本 研究は、ア ポトーシ ス死細胞 が補体を 活性化す ることを初めて明らか

にした独創性の高いものである。これまで、補体は自己寛容性であり、自己

(5)

補体を活性化させる分子の報告はなく、本研究は国際的にも高く評価され

て お り 、 博 士 ( 薬 学 ) の 学 位を 受 け る に 値 す る 業 績 と評 価し た。

参照

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