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博士(薬学)ハ1上純司 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(薬学)ハ1 上純司 学位論文題名

ヒ卜 d 型 肝炎 ウイ ルスリボザイムの      構 造 活 性 相 関 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

序論

  ヒ トd型 肝 炎 ウ イ ル ス(HDV)は 一 本 鎖 環 状RNAを 遺 伝 子 に 持 ち 、 ロ ー リングサ ークル様 式での複 製の際、 ゲノム鎖お よびアンチゲノム鎖の双方に 存在 す る 自己 切 断活 性 に より1ユ ニ ット毎に 切り出さ れる。HDVは 天然にお いてヒト 細胞中で 働くりボ ザイムと して存在す るため、他の起源を有するり オさザイムと比較して人体での応用に有利なものである可能性が高い。しかし、

このHDVリ ボザ イ ムは 他 に 知ら れ てい る り ボザ イ ム とは 一 次あ る いは二 次 構造上に共通性が見出されていない。

  本 研 究で はHDVリ ボ ザ イム の 構 造と機 能の解明 を目的と し、(1) HDVリボ ザイ ム の活性 な二次構 造の確定と 、活性発 現に関与 すると考 えられる3箇所 の一 本 鎖 領域 に 存在 す る 塩基 の 重要 性 の 評価(2)分 子間 反 応を 触 媒する ト ラ ン ス 化HDVリ ボ ザ イ ム の 作 成(3)ト ラ ン ス 化HDVリ ボ ザイ ム を利 用 し た 切 断 に お け る 速 度 論 的 解 析(4)ト ラ ン ス 化HDVリ ボ ザ イ ム の 高 機 能 化 の 4項 目 を 中 心 に 、 ゲ ノ ム 鎖 由 来 リ ボ ザ イ ム 配 列 を 用 い て検 討 を行 っ た 。

HDVリボ ザイムの機 能性二次 構造の検 討

  HDVリ ボ ザイ ム の 二次 構 造に 関 し ては 、 複数 の グ ルー プ よ ルモ デルが 提 出さ れているも のの何れ も決定的 な情報を 欠いてい る。著者らのグループで は各 二次構造モ デルに特 有のステ ム領域に 変異を導 入し、二次構造を決定す る試 みを行なっ ているが 、著者は 逆に全て の二次構 造モデルにおいてほぽ同 一の 領域が一本 鎖として 存在することに着目し、それぞれをSingle Stranded Region、す なわちSSrA,BCと名付け 、塩基置 換が活性にどのような影響を 与え るかを調べ た。

  SSrA,Bに 関しては、site directed mutagenesisの手法を用いて変異型HDV リ ボザ イ ム を作 成 し た。 そ の結 果 、SsrAに 存在するG726とSsrBに存在す る C7632つの残基 に関して 重要性が 示された 。′共同 研究者によ る金属の 配 位 を調 べた 実験結果 と考え併 せ、これ ら2つの残 基は塩基対 形成以外 の相互

(2)

作用、恐らくは金属等との相互作用に関与し、反応のchemical stepに直接的 な影響を及,ぼす残基であるものと考えられた。

  またSSrCの必須残基探索に倣、jnvitro selection法を用いた。in vitro selection法は数多くの異なる分子の集合体より目的の分子のみを選択し、増 幅する手法であるが、著者は簡便な面vitro selection法を開発し、重要な残 基に変異が導入された不活化変異体を選択した。

  その結果、90%以上の活性を失った変異体HDVリボザイム21種が得られ た が、この内19種まではU708ま たはC709に対する変異を含んでおり、こ の2つの残基の重要性が示唆された。点変異の影響を調べた結果、特にC709 の重要性が確認された。

  SSrCの機能に関しては、SSrC領域への変異の導入によって分子の構造安 定性が変化する現象が観察されたことなどから、著者はSSrCが主に活性中 心の構造保持に寄与する領域であると結論した。

  著者は以上より得られた結果より各残基の水素結合に対する関与の有無を 検討し、二次構造としてBeen等の提出したpseudoknotモデルが妥当であるこ とを示した。

HDVリボザイムによるターゲットRNA鎖の切断

  リボザイムを「酵素」として利用するため、著者等はpseudoknotモデルを もとに、分子内反応性のゲノム鎖由来HDVリボザイムを様々な組み合わせ で基質鎖と酵素鎖に分割した。その結果、唯一つの分割パターンが有意な切 断活性を示すことを明らかにした。

  二次反応の条件下では、アンチゲノム鎖由来のトランス化HDVリボザイ ムによる基質切断の律速段階は、切断生成物のりボザイムからの解離である ことが報告されている。そこで、活性中心における切断速度を直接観測する ことが可能な擬一次反応の条件で実験を行なった。しかし著者の得たデータ は通常の擬一次反応の速度論に従わなかったため、活性複合体と不活性複合 体の存在を仮定した活性評価系を構築した。この活性評価系を用いることで HDVリボザイムによる基質鎖切断の速度論的解析を行なうことが可能となっ た。

HDVリボザイムによるRNA鎖切断反応様式の解析

  著者等の作成したゲノム鎖由来トランス化HDVリボザイムの切断反応機 構を解析する目的で、切断部位にチオリン酸結合を有する基質RNAを合成 した。基質切断反応の解析の結果、pro‑R酸素を硫黄原子に置き換えたチオ リン酸化基質は非常に切断を受けにくいとぃう結果を得たが、各基質につい て求められた速度定数を比較すると、全ての基質について切断の律速段階は 変化していないことが明らかとなった。すなわち、切断部位のチオリン酸化

(3)

で変化するのは活性複合体の量であり、速度ではないことが示された。この 反応の律速段階が求核反応に始まるりン酸ジエステル結合の開裂の段階であ るか否かについては、反応速度のpH依存性によって判断した。反応速度は pHに殆ど依存せず、従って律速段階は基質の切断に先立つ、恐らくは活性 中心の微細な構造変化であるものと考えられた。

  さらに、金属濃度の変化が活性複合体量と反応速度の双方に影響を及ぼす ことを確認した。これによって、反応開始時に速やかに起こる活性複合体の 形成と触媒反応の律速段階である構造変化とぃう、少なくとも2つの段階に 金属が関与していることが明らかとなった。活性複合体の形成には金属イオ ンとりン酸の酸素原子(特にpro‑R酸素)が共に関与していることが示され た が 、 直 接 の 配 位 で あ る か 否 か の 結 論 は 得 て い な い 。

分子間反応を触媒するHDVリボザイムの高機能化

  著者等の分割形式はBeen等が作成したアンチゲノム鎖由来のトランス型 HDVリボザイムと同じものであったが、切断速度は約10.。と遅かった。

  ゲノム鎖とアンチゲノム鎖のりボザイム活性に大きな差があるとは考えに くいため、活性への影響が考えられた末端配列を変更したゲノム鎖由来トラ ン ス 化 HDVリ ボ ザ イ ム を 作 成 し 、 切 断 反 応 速 度 を 解 析 し た 。   その結果、種々の変異体のうちステムIIの塩基対数を増加させたものにつ いて高い切断活性が観測され、アンチゲノム鎖由来のものと同等の値を得る ことができた。

  高活性化したゲノム鎖由来トランス化HDVリボザイムによる基質切断の 律速段階も切断反応に先立つ構造変化である可能性が高く、一層の高機能化 の余地を残していると考えられる。

結論

1. ヒトd, 型肝炎ウイルス(HDV)ゲノム鎖由来のりボザイムにおいて、

    pseudoknot型 の 二 次 構 造 が 活 性 構 造 で あ る こ と を 支持 し た 。 2.活性中心において切断反応に直接関与すると考えられる一本鎖領域の塩     基の重要性を評価し、G726,C763,C709が活性発現に中心的な役割を     有している可能性を示した。SSrA,Bは直接の触媒作用に、SSrCは構造     保持に関与することが示唆された。

3.HDVゲノム鎖由来のりボザイムを様々に分割し、唯一つの分割様式で     のみ有意な切断活性が発現することを示した。またHDVリボザイムに     よる基質切断反応の活性評価系を構築した。

4.HDVリボザイムによる基質切断には、切断されるりン酸ジエステル結     合のpro‑R酸素原子と、金属イオンが共に要求される。金属イオンは少

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    なくとも2つの段階で関与し、律速段階は求核攻撃に先立つ金属依存の     構造変化であると考えられた。

5.ステムII領域を安定化することで、ゲノム鎖由来トランス化HDVリボザ     イムの活性を2桁増強することに成功した。高活性化の理由はステムII     の安定化が基質切断の際の律速段階である構造変化を加速することであ     るが、高活性化した変異体においてもなお律速段階は構造変化である可   .能性が高く、さらなる高活性化の余地を残しているものと考えられた。

(5)

学 位 論 文 審査 の 要 旨

主査 副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

大塚栄子 松田   彰 井上英夫 周東   智

     学 位 論 文 題 名

ヒ ト 6 型 肝 炎 ウ イ ル ス リ ボ ザ イ ム の 構 造 活 性 相 関 に関 す る 研 究

   申請者はヒトざ型肝炎ウイルス(HDV )リボザイムの構 造活性相関の研究を行って来たが、今回以下のような結果 を得た。

  HDV は一本鎖環状RNA を遺伝子に持ち、ローリングサー クル様式での複製の際、ゲノム鎖およびァンチゲノム鎖の 双方に存在する自己切断活性により1 ユニット毎に切り出 される。HDV は天然においてヒト細胞中で働くりボザイム として存在するため、他の起源を有するりボザイムと比較 して人体での応用に有利なものである可能性が高い。しか し、このHDV リボザイムは他に知られているりボザイムと は一次あるいは二次構造上に共通性が見出されていない。

   申請者はまずHDV リボザイムの機能性二次構造について 検討した。

    11

  HDV リボザイムの二次構造に関しては、複数のグループ

よルモデルが提出されているものの何れも決定的な情報を

欠いている。申請者は全ての二次構造モデ渺においてほぼ

同一の領域が一本鎖として存在することに着目し、それぞ

れをSingle Stranded Region 、すなわちSSrA ,B ,C と名付

(6)

け、塩基置換が活性にどのような影響を与えるかを調べた。

SSrA ,B に関しては、 site directed mutagenesis の手法を用 い て 変 異 型 HDV リ ボ ザ イ ム を 作 成 し た 。 そ の 結 果 、 SsrA に 存 在 す る G726 と SsrB に 存 在 す る C763 の 2 つ の 残 基 に 関 しで重要性が示された。

   また SSrC の必須残基探索には、 j 刀レj とr 〇selection 法を用 いた。 j ロレ itro selection 法は数多くの異なる分子の集合体 より 目的の 分子の みを 選択し 、増幅 する手 法であ るが 、申 請者は簡便な jn レi とr 〇selection 法を開発し、重要な残基に 変 異 が 導 入 さ れ た 不 活 化 変 異体 を 選 択 し た。 そ の 結 果 、 90 %以 上 の 活 性 を失 っ た 変 異 体 HDV リ ボザ イム21 種が 得ら れ た が 、 こ の 内 19 種 ま で は U708 ま た は C709 に 対 す る 変 異 を 含ん で お り 、 この 2 つ の 残 基 の重 要 性が 示唆さ れた 。点 変 異 の 影 響 を 調 べ た 結 果 、 特に C709 の 重 要性 が 確 認 さ れ た。   ゛

   次 に 、 リ ボ ザ イ ム を 「 酵 素 」 と し て 利 用 す る た め 、 pseudoknot モデル をも とに、 分子内 反応性 のゲノ ム鎖 由来 HDV リボザ イム を様々 な組み.合わせで基質鎖と酵素鎖に分 割した 。その 結果 、唯一つの分割 / ヾ夕ーンが有意な切断活 性を示すことを明らかにした。

   さ ら に 、 HDV リ ボ ザ イ ム に よる RNA 鎖 切 断反 応 様 式 の 解 析 を行 っ た 。 切 断部 位 に チ オ リン 酸 結 合を有 する 基質 RNA を 合成 し 、 基 質 切断 反 応 の 解 析の 結 果 、 pro‑R 酸 素を 硫黄 原子 に置き 換えた チオ リン酸 化基質 は非常 に切断 を受 けに くい とぃう 結果を 得た が、各 基質に ついて 求めら れた 速度 定数 を比較 し、全 ての 基質に ついて 切断の 律速段 階は 変化 していないことを明らかとした。

  HDV リ ボ ザ イ ムに よ る 基 質 切 断に は 、切 断され るり ン酸

ジ エス テ ル 結 合 の pro‑R 酸 素 原 子と 、 金属 イオン が共 に要

求さオ′しることを示した。皿に、企|弼イオンが少なくとも2

つの 段階で 関与し 、律 速段階 は求核 攻撃に 先立つ 金属 依存

の構造変化であることを見出した。

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   また、ステムII 領域を安定化することで、ゲノム鎖由来 トランス化 HDV リボザイムの活性を2 桁増強することに成 功した。高活性化の理由はステムII の安定化が基質切断の 際の律速段階である構造変化を加速することであるが、高 活性化した変異体におぃてもなお律速段階は構造変化であ ることを明かにした。

   以上の研究は博士(薬学)の学位を受けるに充分値するも

のと認めた。

参照

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