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博士(薬学)境 雅寿 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(薬学)境   雅寿 学位論文題名

ヒト好中球の Fc ソ R 及び CR3 を介する細胞応答の解析 学位論文内容の要旨

【序論】

  生体 内に侵 入した 異物は ,lgG抗体 と結合し,免疫複合体(IC)を形成する.さらに,lCは補体 系を 活性化 し,補 体フラ グメン トiC3bと結 合したiC3b‑ICが生 成する. 一方, 好中球 などの食 細胞 の膜上 には,lgGのFc部分 に結合 するFcレ セプ夕 一(FcyR)やiC3bを りガン ドとする補体 レセ プター3型(CR3)な どのレセ プ夕一 群が存在しており,iC3b‑ICはこれらの貪食レセプ夕一を 介して貪食除去される.ヒト好中球には,二種類のFcyR(Fcy RIIA,Fcy RIIIB)とCR3の三種類の 貪食 レセプ ターが発現している,これら個々のレセプ夕一を介する細胞応答については,近年の 遺伝 子技術 を応用した研究から,その情報伝達機構が分子レベルで解明されつっある,しかしな がら ,一つ の食細 胞には 通常複 数のFcyRが 発現し ている .さらに,ICは生体内において速やか にiC3b‑ICに 変換 され るため ,炎症 部位での 食細胞 の細胞 応答は 複数のFcyRとCR3が 関与す る 複雑 なもの である と考え られる .そのた め,生 体内で の異物 処理応答を理解する上で,FcyR問 ま た はFo(RとCR3の 脇 同 作用 に よ る 細胞 応 答の解 析が不 可欠で あるが ,現在 までそ のような 視点 に立っ た研究 はほと んどな い.筆者 らは,IC (Fc(Rのみ を刺激),iC3b‑IC(FcyRとCR3の 両方を刺激),iC3b‑IC [F(ab )d(CR3のみを刺激)の三種類の刺激物に対する好中球の貪食応答の 解析 を行っ てきた ,これ までに ,好中球がiC3b‑ICに対し,他の刺激物よりも強い貪食活性を示 すこ と,ま た,ICが主にFcy RIIIBを介して貪食されるのに対し,iC3b‑ICはFcrr RIIAとCR3を介 して 取り込 まれることを明らかにしてきた.本研究では,生体内で実際に起こると考えられる好 中球のiC3b‑IC貪食応答のメカニズムについて解析を行った.

  また ,血流 中に存 在する 好中球 の異物 処理能 カは低い が,血管内皮を通り抜けて炎症部位ヘ 浸潤 する問 に様々な刺激を受けると異物処理能カが亢進することが知られている.このうち,好 中球 のL‑selectinと血管内皮細胞側の糖鎖リガンドとの結合は,炎症反応において好中球が最も 初期 に受け る活性 化ステ ップで あり,FcyRやCR3を介 する異 物処理 応答を 増強す ると考えられ る, そこで ,L‑selectinの りガン ドの一 種であ るsulf atideがFoRやCR3を介する細胞応答に及 ぽす影響についても解析した,

【結果及び考察】

1.ヒト好中球のiC3b‑IC貪食応答におけるFcy RIIAの役割

  FITC標識し た三種 類の刺 激物と 好中球を 反応し ,それぞれの貪食量をフローサイトメ一夕一 で 測定し た.貪 食量を 比較し た場合,iC3b‑ICが最も多く貪食された,好中球をチ口シンキナー ゼ 阻害剤herbimycinAで前 処理す ると, それぞ れの貪 食量は 約20%に まで減 少した,この結果 か ら,好 中球のFcyRやCR3を 介する 貪食応 答におけ るチロ シンキ ナーゼ の関与が示唆された,

次に,好中球の貪食応答におけるFcy RIIAの役割について検討するため,各刺激物によるFcy RIIA の チロシ ンリン 酸化を 比較し た.iC3b‑ICではFcy RIIAの 強いル ン酸化 が認められたが,ICや iC3b‑IC [F(ab )dではほとんど検出されなかった.Fcy RIIAの下流に位置するチロシンキナーゼ

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Sykは , そ れ 自 身 が チ ロ シ ン ル ン 酸 化 さ れ る と キ ナ ー ゼ 活 性 が 上 昇 す る .iC3b‑ICと 反 応 させ た 場 合 ,Sykの 強い ル ン 酸 化 が 認め ら れ る が ,ICやiC3b‑IC [F(ab )aでは ほとん ど見ら れなか った , さ ら に ,iC3b‑IC刺 激 に よ る 好 中 球 の 貪 食 応 答 とSykリ ン 酸 化 に 及 ぽ すherbimycinAの 影 響 に つ い て 調 ぺ た と こ ろ , 両 者 と も ほ ば 同 様 の 用 量 ・ 阻 害 曲 線 を 示 し た . 以 上 の 結 果か ら , 好 中 球の iC3b‑IC貪 食 に お け る Fcy RIIAを 介 レ た Syk活 性 化 の 重 要 性 が 示 唆 さ れ た .   好 中 球 のCR3を 介 す る 細 胞 応 答 に は , ホ ス ホ リ パ ー ゼD(PLD)の 関 与 が 示 唆 さ れ て い る .PLD は , ホス フ ァ チ ジ ルコ リ ン(PC)を ホ ス フ ァチ ジ ン 酸 (PA)に 分 解す る 酵 素 で あ り, エ タ ノ ー ル存 在 下 で はPLDに よ るPA産 生 は 抑 制 さ れ る . そ こ で , 次 に , 好 中 球 のiC3b‑IC貪 食 に 及 ば す 工 夕 ノ ー ル の 影 響 に つ い て 検 討 し た . エ タ ノ ー ル で 前 処 理 し て も , 好 中 球 のIC貪 食応 答 に は 変 化が 見 ら れ な か っ た . 一 方 ,iC3b‑ICは 工 夕 ノ ー ル 量 に 依 存 し て 貪 食 量 が 減 少 し ,0.7% でICとほ ぼ 同 じ レ ペ ル に な っ た . さ ら に ,PAを ジ ア シ ル グ リ セロ ー ル(DG) に 変 換 す るホ ス フ ん チ ジン 酸 ホ ス フ ァ 夕 一 ゼ の 活 性 を 抑 制す る プ ロ プ ラノ ロ ー ル で 細 胞を 前 処 理 レ ても , 同 様 の 結果 が 得 ら れ た.

以 上 の 結 果 か ら , 好 中 球 のiC3b‑IC貪 食 に お け るPLDを 介 し たDG産 生 の 重 要 性 が 示 唆 さ れ た ,

2. CR3レ ク チ ン 部 位 を 介 し た ヒ ト 好 中 球 の 貪 食 応 答 の 調 節

  mAbを 用 い た 阻 害 実 験 か ら , 好 中 球 のlC貪 食 応 答 は 主 にFcy RIIIBを 介 す る こと が 示 唆 さ れた Fc'y RIIIBは 細 胞 内 領 域 を 持 た な いGPIア ン カ 一 型 膜 蛋 白 質 で , 好 中球 の 細 胞 膜 上でCR3と 会合 し て い る , そ の た め ,Fcy RIIIBか ら の 情 報 はCR3を 経 由 し て 細 胞 内 へ伝 達 さ れ る と 考え ら れ て い る . し か し な が ら , 好 中 球 のFcy RIIIBを 介 す る 貪 食 応 答 にCR3が 関与 す る か は 明 らか で は な い .  Fcy RIIIBとCR3と の会 合 はCR3の レ ク チ ン 部位 とFcy RIIIBの 糖 鎖 問 の結 合 を 介 し て おり , mannoseに よ っ て 会 合 が 遮 断 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る , そ こ で , 好 中 球 のIC貪 食 応 答 に 及ぽ す 糖 質 の 影 響 に つ い て 解 析 し た ,mannoseで 前 処 理 す る と , 好 中 球 のIC貪 食 応 答 は25% に ま で 抑 制 さ れ た . 一 方 ,mannose以 外 の 糖 質 で 前 処 理 し た 場 合 に は こ の よ う な 抑 制 は 見 ら れ な か っ た . こ れ ま で , 好 中 球 で は ,CR3以 外 のmannoseレ セ プ タ ー の 存 在 は 報 告 さ れ て い な い . そ の た め , こ のFcyRを 介 す る 貪 食 応 答 の 抑 制 は ,CR3レ ク チ ン 部 位 にmannoseが 結 合 す る こ と に よ り 惹 起 さ れ る と 考え ら れ た , また ,mannoseはCR3自 身 を 介す るiC3b‑IC【F(ab )d貪 食 応 答 も 抑 制 し た . こ の 結 果 は ,CR3の レ ク チ ン 部 位 にmannoseが 結 合 す る と ,Fcy RIIIBだ けで な く CR3自 身 の 細 胞 応 答 も 低 下 す る こ と を 示 唆 し て い る ,

3.硫酸 化スフ ィン ゴ糖脂 質sulfatideによ るヒ卜 好中 球の細 胞応答 の調節

  好 中 球 を 可 変 量 のsultatideで 前 処 理 後, 三 種 類 の 刺激 物 に 対 す る貪 食 応 答 を 測定 し た . 好 中 球 の 貪 食応 答 は , 前 処理 に 用 い たsulfatide量 に 依存 し て 亢 進 し,sulfatide 250 yg/mlで は ,IC とiC3b‑ICでは 未 処 理 細 胞の 約3倍 に ,iC3b‑IC [F(ab )dで は 約7倍に 増 加 し た .こ の と き ,CR3 発 現 量 も未 処 理 細 胞 の約3倍 に 増 加し て お り ,iC3b‑ICやiC3b‑IC [F(ab )d貪 食応答 が亢進 する理 由の ひと っと考 えられ た.        sulf atideから硫酸基を除いたgalactocerebrosideでは貪食増強効果 は 認 め ら れ な い こ と か ら , 硫 酸 化 糖 の 部 分 が 重 要 だ と 考え ら れ た . 好中 球 上 で 発 現 が報 告 さ れ て い る 唯 一 のsulfatide結 合 分子 で あ るL‑selectinは ,chymotrypsinで 処 理 する と 膜 表 面 から 切 断 除 去 さ れ る こ と が 知 ら れ て いる . し か し ,好 中 球 をchymotrypsin処 理 し て も ,sulfatideによ る 貪 食 応答 の 亢 進 効 果に 変 化 は 認 め られ な か っ た .そ の た め ,sulfatideはL‑selectin以外の 膜分 子 と 結 合し て 細 胞 応 答を 亢 進 す る と 考え ら れ た . これ ら の 結 果 から , ヒ ト 好 中球 の 細 胞 膜 上 に,

新 規sulfatide結 合 分 子 の 存 在が 示 唆 さ れ た, そ こ で ,chymotrypsin処 理 し た ヒト 好 中 球 の 膜画 分 か らsulfatide結 合 分 子 の 単 離 を 試 み た 結 果 ,lactoferrinが 同定 さ れ た . 以上 の 結 果 か ら,

sulfatideが , 好 中 球の 膜 上 に 存 在 するlactoferrinと結合 して好 中球の 貪食応 答を 亢進す ること が 示唆 され た.

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(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

長澤 五十嵐 高橋 井 / □

学 位 論 文 題 名

滋治 靖之 和彦 仁一

ヒ ト 好 中 球 の Fc ソ R 及 び CR3 を 介す る細 胞応 答の 解析

   病 原 体 な ど の 異 物 ( 抗 原) か 生 体 内に 侵 入 する と , これ に 対 する IgG 抗 体 が 産 生 さ れ て 抗 原 と 結 合 し , 免 疫 複 合 体 (IC) を 形 成す る . さら に , IC は 古 典 的 経 路 を 介 し て 補 体 系 を 活 性 化 し , 補 体 フ ラ グ メ ン ト iC3b と 結 合 し た iC3b‑IC が 生 成 す る .ー ・ 方 , 好中 球 や マク 口 フ ァー ジ な どの 食 細 胞の 細 胞 膜 上 に は , IgG の Fc 部 分 に 結 合 す る Fc レ セ プ タ ー (FcyR) や iC3b を り ガ ン ド と す る 補 体 レ セ プ タ ー 3 型 (CR3) な ど の レ セ プタ ー 群 が存 在 し てお り , iC3b‑IC は これら のレセプ ターを介 して貪 食除去さ れる.

  FcyR は , 一 次 構 造 やIgG と の親 羽 1 性の 相 違 から 三 種 類の タ イ ブ( FcyRI , FcyRII , FcrrRIII) に 分 類 さ れ る . こ れ ら 佃 々 の FciR を 介 す る 細 胞 応 答 に つ い て は , 近 年 の 遺伝 予 技 術を 応 JlJ し た 研 究か ら , その 情 報 伝達 機 構 が分 子 レ ベ ル で 解 明 さ れ つ っ あ る . し か し な が ら ,生 体 内 での 主 要 な食 細 胞 で あ る 好 中 球 で は 二 二 種 類 の FcYR が 存 在 す る . さ ら に, IC は生 体 内 にお い て 速 や か に iC3b‑IC に 変 換 さ れ る た め , 炎 症 部 位 で の 食 細 胞 の 細 胞 応 答 は 複 数 の FcyR と CR3 が 関 与 す る 複 雑 な も 、 の で あ る . 本 論 文 の 前 半 部 で は , IC (FcyR の みを刺激 ),iC3b‑IC (Fc/R と CR3 の両方 を刺激 ),iC3b‑IC [F(ab )2]

(CR3 の み を 刺 激 ) の 三 種 類 の 刺 激 物 を 用 い て , 生 体内 で 実 際に 起 こ ると 考 え ら れ る 好 中 球 の 貪 食 応 答 の メ カ ニ ズ ム に つ いて 解 析 を行 い , 以下 の 成 果 を挙げ た.

   好 中 球 の 貪 食 応 答 に お け る FcyRIIA の 役 割 に つ い て 検 討 す る た め , 各 刺 激 物 に よ る FcyRIIA の チ ロ シ ン リ ン 酸 化 を 比 較 し た . iC3b‑IC で は FcyRIIA の 強 いり ン 酸 化が 認 め られ た が ,IC やiC3b‑IC [F(ab ) 2 ]で はほと ん ど 検 出 さ れ な か っ た . FcrrRIIA の ド 流 に 位 置 す る チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ Syk は , そ れ 自 身 が チ ロ シ ン リ ン 酸 化 さ れ る と キ ナ ー ゼ 活 性 が 上 昇 す る . iC3b‑IC と 反 応 さ せ た 場 合 , Syk の り ン 酸 化 が 認 め ら れ る が , IC や iC3b‑

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IC [F(ab )2 ]ではほとんど見られなかった.以上の結果から,好中球の iC3b‑IC 貪食 における FccRIIA を介した Syk 活性化の 重要性が示 唆された ,    更 に ヒ ト 好 中 球 の iC3b‑IC 貪食 応 答 にお け る CR3 の 役 割に つ いて 研 究 を 行 い ,ヒ ト 好中 球 の iC3b‑IC 貪 食応答 は,Fc rRIIA を介し Syk の活性化 を 経 て 情 報 伝 達 さ れ る 経 路だ け で なく , CR3 を 介 し PLD 活 性 化を 経 て 情 報 伝達され る経路も 重要であることを明らかにした.,更に,CR3 のレクチ ン 部 位 を介 し たFcYRIIIB‑CR3 問 の 結 合は , FcrrRIIIB を 介す るIC 貪 食応 答 と,CR3 を介 する iC3b‑IC [F(ab ,)2] 貪食応答の両方に必要であることを 明 らかにし た.

   これ らの知見 は,生体 内で実際 に起こると 考えられ る好中球 の iC3b‑IC 貪 食応答の メカニズ ムについ ての新た な知見であり,極めて独創性の高い 研 究成果と いえる. ・

本論文の 後半部で は,ヒト 好中球の sulfatide 結合因子について研究を行 った.血 流中に存 在する好中球の異物処理能カは低いが,炎症部位ヘ浸潤 する間に 様々な刺 激を受けると異物処理能カが亢進することが知られてい る.このうち,好匚I 亅球のL‑selectin と血管内皮細胞側の糖鎖リガンドとの 結合は, 炎症反応 において好中球が最も初期に受ける活性化ステッブであ る. そ こ で, L‑selectin の りガンド の‥種で あるsulfatide がFcyR やCR3 を介する細 1 胞応答に及ぼす影響について角e8Jr した.好中球上で発現が報告 されてい る唯一の sulfatide 結合分子 である L‑selectin は,chymotrypsin で処 理 す ると膜 表面から 切断除去 されること が知られ ている. しかし,

chymotrypsin 処理しても,sulf 、a tide による貪食応答の亢進効果に変化は 認め ら れ なかっ た.これ らの結果 から,ヒト 好中球の 細胞膜上 に,新規 sulfatide 結合分子 の存在が 示唆され た.そこ で,chymotrypsin 処理した ヒト好中 球の膜画 分からの suLfatide 結合分子 の単離を試みた.二種類の アフ イ ニ ティ ク 口 マト グ ラフ ィ ー によ り, suKande に特異的 に結合す る 分子 量 約 70K の 膜 蛋 ロ質 の 単離 に 成 功し た.構 造解析か ら,この 膜蛋白 質はラクトフェリンであることが明らかになった・

   以上 の研究成果は,炎症反応における好中球の過剰な応答を制御する医

薬品 の開発研究に有カな手がかりを与えるものであり.博士(薬学)の学

位に 値する業績 と評価し た.

参照

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