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博士(歯学)大西康友 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)大西康友 学位論文題名

成長期ラット頭頂骨骨組織における 機 械的荷重 に対する 反応について

学位論文内容の要旨

【緒言】

  骨は生体において改造を繰り返し、生涯において新しく作りかえられている組織であり、

骨の構造は骨に加えられた様カな機械的刺激に適応するように適宜改造されているという 考えは一般的に受け入れられている。

  骨に加わった機械的刺激を感知し骨改造現象を引き起こす機構として、骨中に埋入して いる骨細胞が重要な役割を果たしていると思われるが、機械的刺激による骨細胞密度の変 化を観察した報告はない。本研究は、成長期にあるラット頭頂骨に機械的荷重を付与した 際と、この荷重を撤去した際に生じる骨組織と骨細胞密度の変化を形態学的に明らかにす ることを目的とした。

【材料と方法】

  実験動物として生後4週齢のWistar系雄ラット16匹を用いた。実験群ではラット頭頂部 の最大幅径線と顔面正中線との交点を中心とした頭部最大幅径の60%に相当する直径の円 を想定した鉛円柱を作製後、頭部に接着し、この範囲直下の骨組織を観察部位とした。実 験期間中、実験動物の体重と頭部最大幅径を4日毎に測定し機械的荷重が体重の1/25にな るように鉛円柱を調節し接着した。実験群では、荷重を4週聞付与し(以下、荷重十期)、

その後荷重を撤去し更に4週間経過させた(以下、荷重一期)。対照群では荷重を付与し なかった。また、荷重付与時と荷重撤去時を頭頂骨中にラベルするために、実験群、対照 群とも実験開始時と実験終了時1日前にテトラサイクリンを、実験開始後4週経過時にカル セインを背部皮下に投与した。

  頭頂骨は固定後、前頭縫合部にて正中矢状断で左右に二分し、左側はパラフイン切片用、

右側は樹脂包埋した研磨標本用の試料とした。脛骨はパラフアン切片用として用いた。

(2)

  パラフィン包埋用試料は、前頭断方向で厚さ5umの連続切片を作製後、光学顕微鏡下で、

頭頂骨前頭縫合部から側頭骨側Immの部位を観察し、頭頂骨の厚さ、骨面積から骨髄腔面 積を引いた値を骨面積で割ることで得られる骨形成率を測定した。また、頭頂骨の厚みの 中央部を基準として頭皮側(以下、外側)と脳側(以下、内側)に分け、それらをさらに 荷重十期と荷重一期の4区域に分け、単位面積当たりの骨細胞数(以下、骨細胞密度)を 計測した。また、得られた結果はStudent stーtestにて有意差検定を行った。脛骨は長軸 に対して平行に厚さ5ロmの縦断連続切片を作製し、頭頂骨と同様の方法で骨幹部の骨細胞 数の計測を行った。

  樹脂包埋用試料は厚さ約100ロmの研磨標本を作製後、落射螢光顕微鏡でテトラサイクリ ン線 とカルセイ ン線を確認 し、マイク ロラジオグ ラフイー(CMR)上で骨の石灰化度を 観察した。

【結果】

対照群の頭頂骨は実験開始時と比較すると骨膜の組織学的変化はみられなかったが、外側 と内側にみられる皮質骨の厚さが増加していた。実験群では、対照群と比較して骨髄腔の 範囲が狭くなっていた。頭頂骨の厚さは対照群と実験群間で統計学的な有意差は認められ な か っ た が 、 骨 形 成 率 は 、 実 験 群 が 対 照 群 よ り 有 意 に 大 き い 値 を 示 し た 。   荷重十期外側領域問における骨細胞密度及び、荷重十期と荷重一期の骨細胞密度の差 は実験群が対照群より有意に大きな値を示した。脛骨の骨細胞数は対照群、実験群の頭頂 骨のすべての領域の骨細胞数より有意に大きな値を示した。

  螢光線所見では対照群頭頂骨外側で、荷重十期の骨の厚さは荷重―期の骨の厚さよりも 大きい傾向が認められたが、内側ではほば同等であった。外側と内側において実験期間に 形成された骨の厚さはほば同等であった。実験群頭頂骨外側では、荷重十期の骨の厚さが 荷重―期の骨の厚さよりも小さい傾向が認められたが、内側では対照群と同様の結果が観 察された。実験期間中に形成された骨の厚さは外側の方が内側よりも大きい傾向を示した。

実験開始時にラベルされた2本のテトラサイクリン線の間隔は対照群よりも実験群で大き い傾向がみられた。

  対照 群、実験群 ともにCMR像では荷重十期、一期の骨において明瞭にX線透過像が異 なるような像は観察されなかった。

【考察】

(3)

  成長期ラット頭頂骨は骨細胞を含む骨層板が常に古い骨上に形成される骨形成を明瞭に 観察できる部位である。また、他の部位の骨と比較して比較的大きな範囲で扁平構造を呈 していることから、外科的浸襲や複雑な操作を施すことなく荷重を加えることが可能であ る た め 、 本 研 究 で は 成 長 期 ラ ッ ト 頭 頂 部 に 荷 重 を 加 え る 方 法 を 用 い た 。   体重の1/25の大きさの機械的荷重を頭頂骨に付与したことで、実験群では頭頂骨の厚さ、

骨の石灰化度において対照群とほば同様であり、大きな変化は認められなかった。この結 果は、本研究で用いた荷重が頭頂骨全体としての成長、骨質には大きな影響を与えていな いことを示唆するものと思われる。しかしながら、実験群の頭頂骨では対照群のそれと比 較して骨形成率の増加が示すように、骨髄腔の面積が小さくなっており、対照群で骨髄腔 が観察される領域の大部分は実験群ではセメントラインがみられる骨に置換されており、

実験開始時にラベルされた頭頂骨中央部の2本のテトラサイクリン線の間隔は対照群より 実験群で大きい傾向を示していた。これらの結果は、機械的荷重が頭頂骨の骨髄腔部分を 骨改造により新たに形成した骨に置換したことを示している。

  また、本研究では対照群脛骨の骨細胞密度は対照群、実験群頭頂骨のそれより有意に大 きな値を示した。この結果は運動による筋からの機械的刺激、体重の負荷による機械的荷 重が 骨 細胞 密 度に 大 きく 影 響 を与 え てい る こと を 示唆 し てい る 。こ れ を踏ま え、

荷重十期外側領域間における骨細胞密度及び、荷重十期と荷重←期の骨細胞密度の差は実 験群が対照群より有意に大きた値を示したことは、脛骨と類似した機械的荷重が実験群に 付与され、機械的荷重がその期間に形成される骨中の骨細胞密度に影響を与えていること を示唆している。

【結諭】

1、機械的荷重の変化が成長期ラット頭頂骨の骨細胞密度に影響を与え、荷重付与が骨細 胞密度の増加を引き起こすことが示唆された。

2、機械的荷重の有無に関わらず、成長期ラット頭頂骨では形成される骨の石灰化度はほ ぼ一定であることが示唆された。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

成長期ラット頭頂骨骨組織における 機械的荷重に対する反応について

  審 査 は 飯 田 、 脇 田 、 向 後 審 査 委 員 そ れ ぞ れ 個 別 に 、 口 頭 試 問 の 形 式 に よ っ て 行 わ れ た 。 ま ず 論 文 の 概 要 の 説 明 を 求 め る と と も に 適 宜 解 説 を 求 め 、 次 い で そ の 内 容 お よ び 関 連 分 野 に つ い て 試 問 し た 。

  申 請 者 か ら 、 ま ず 以 下 の よ う な 説 明 が な さ れ た 。

  本 研 究 は 骨 の 成 長 期 に 外 部 か ら 荷 重 を 加 え た 場 合 に 、 骨 組 織 は ど の よ う に 反 応 し て 成 長 す る か を 検 索 す る こ と を 目 的 と し た 。 そ の た め に 生 後4週 齢 のWistar系 雄 ラ ッ ト を 実 験 動 物 と し て 使 用 し 、 頭 頂 骨 に 機 械 的 荷 重 を 付 与 し た 際 と こ の 荷 重 を 撤 去 し た 際 に 生 じ る 骨 組 織 と 骨 細 胞 密 度 の 変 化 を 調 べ た も の で あ る 。

【 材 料 と 方 法 】 実 験 群 で ば 荷 重 が 体 重 の125に な る よ う に 調 節 し た 鉛 円 柱 を 頭 部 に 接 着 し た 。 実 験 期 間 中 、 実 験 動 物 の 体 重 を4日 毎 に 測 定 し 重 さ と 大 き さ を 調 整 し た 。 荷 重 は 4週 間 付 与 し ( 以 下 、 荷 重 十 期 ) 、 そ の 後 荷 重 を 撤 去 し 更 に4週 間 経 過 さ せ た ( 以 下 、 荷 重 ー 期 ) 。 対 照 群 で は 荷 重 を 付 与 し な か っ た 。 ま た 実 験 群 、 対 照 群 と も 実 験 開 始 時 と 実 験 終 了 時1日 前 に テ ト ラ サ イ ク リ ン を 、 実 験 開 始 後4週 経 過 時 に カ ル セ イ ン を 背 部 皮 下 に 注 射 し た 。 頭 頂 骨 は 固 定 後 、 前 頭 縫 合 部 で 左 右 に 二 分 し 、 左 側 は パ ラ フ イ ン 切 片 用 、 右 側 は 樹 脂 包 埋 し た 研 磨 標 本 用 の 試 料 と し 、 脛 骨 を パ ラ フ ィ ン 切 片 用 と し て 用 い た 。   パ ラ ブ ィ ン 包 埋 用 試 料 は 、 前 頭 断 方 向 で 連 続 切 片 を 作 製 後 、 光 学 顕 微 鏡 下 で 、 頭 頂 骨 の 厚 さ 、 骨 形 成 率 を 測 定 し た 。 ま た 頭 頂 骨 中 央 部 を 基 準 と し て 頭 皮 側 ( 以 下 、 外 側 ) と 脳 側

( 以 下 、 内 側 ) に 分 け 、 そ れ ら を さ ら に 荷 重 十 期 と 荷 重 ー 期 の4区 域 に 分 け 、 単 位 面 積 当 た り の 骨 細 胞 数 ( 以 下 、 骨 細 胞 密 度 ) を 計 測 し た 。 得 ら れ た 結 果 は 統 計 解 析 を 行 っ た 。 脛 骨 は 頭 頂 骨 と 同 様 の 方 法 で 骨 細 胞 数 の 計 測 を 行 っ た 。 ま た 樹 脂 包 埋 用 試 料 で は 研 磨 標 本 を 作 製 し て 落 射 螢 光 顕 微 鏡 で 螢 光 線 を 確 認 し 、 マ イ ク ロ ラ ジ オ グ ラ フ イ ー(CMR)上 で 骨 の 石 灰 化 度 を 観 察 し た 。

【 結 果1実 験 群 の 骨 髄 腔 の 範 囲 は 対 照 群 と 比 較 し て 狭 か っ た 。 頭 頂 骨 の 厚 さ は 対 照 群 と 実 験 群 間 で 統 計 学 的 な 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た が 、 骨 形 成 率 は 、 実 験 群 が 対 照 群 よ り 有

郎 稔

順  

  隆

田 田

飯 脇

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

意に 大き い値 を示した。荷重十期外側領域間における骨細胞密度及び、荷重十期と荷重―

期の 骨細 胞密 度の差は実験群が対照群より有意に大きな値を示した。脛骨の骨細胞数は対 照群、実験群のそれより有意に大きな値を示した。

  螢 光線 所見 では対照群頭頂骨外側で、荷重十期の骨の厚さは荷重一期よりも大きい傾向 が認 めら れた が、内側ではほば同等であった。実験群頭頂骨外側では、荷重十期の骨の厚 さが 荷重 ―期 よりも小さい傾向が認められたが、内側では対照群と同様の結果が観察され た。実験開始時に描記された2本のテトラサイクリン線の間隔は対照群よりも実験群で大き い傾 向が みら れた。 対照 群、 実験 群と もにCMR像では荷重十期、一期の骨において明瞭に X線透過像が異なるような像は観察されなかった。

【考察】頭頂骨の厚さ、骨の石灰化度は対照群と実験群でほぼ同様であり、.大きな変化は 認め られ なか った。この結果は、本研究で用いた荷重が頭頂骨全体としての成長、骨質に は大 きな 影響 を与えていないことを示唆するものと思われる。しかしながら、実験群の頭 頂骨 では 対照 群のそれと比較して骨形成率の増加、すなわち骨髄腔の面積が小さくなって おり、さらに実験開始時にラベルされた頭頂骨中央部の2本のテトラサイクリン線の間隔は 対照 群よ り実 験群で大きい傾向を示していた。この結果は、機械的荷重が刺激となって、

頭 頂 骨 の 骨 髄 腔 部 分 が 骨 改 造 に よ り 新 た な 骨 に 置 換 さ れ た こ と を 示 し て い る 。   ま た、 脛骨 の骨細胞密度は、対照群、実験群の頭頂骨より有意に大きな値を示した。ま た頭 頂骨 にお ける荷重十期外側領域問における骨細胞密度及び、荷重十期と荷重ー期の骨 細胞 密度 の差 は実験群が対照群より有意に大きな値を示した。この結果は、筋の機能ある いは 荷重 など の骨に対する機械的刺激が、形成される骨中の骨細胞密度に影響を与えてい ることを示唆している。

以上の 論述 に引 き続き以下の項目を中心に口頭試問を行っだ。

1.骨 密度 、骨 細胞 密度 を検 索する 意義

2.機 械 的 刺 激 と 骨 形 成 に 関 す る 研 究 の 歴 史 的 背 景 3.蛍 光 顕 微 鏡 像 で 検 索 す る 意 義 と 、 得 ら れ た 結 果 の 解 釈 4.頭 蓋 冠 の 発 達 と 本 研 究 で 見 ら れ た 現 象 の 差 の 理 論的 説 明 5.こ の研 究の 将来 展望

  こ れ ら の 試 問 に対し て申 請者 は明 快な 回答 、説 明を 行っ た

  本研 究は、機械的荷重の変化が成長期ラット頭頂骨の骨細胞密度に影響を与え、荷重付 与 が骨 細胞密度の増加を引き起こすことを初めて明らかにしたものである。得られた結果 の 価値 は、解剖学的観点から高く評価されるとともに、機械的刺激を加えて骨の改造現象 を 起こ している歯科矯正治療という臨床歯科医学的観点からも、重要な情報を与えたもの と 高く 評価できる。更に、試問の内容から、学位申請者は、関連分野にも幅広い学識を有 し てい ると認められた。また今後は更に詳細な解析の準備を進めており、将来の展望につ いても評価された。

  よって審査担当者全員は、申請者は博士(歯学).の学位を授与される資格を有するもの と認めた。

参照

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