博士(歯学)松田康裕 学位論文題名
In vitro におけるう蝕実験系の構築とその応用 学位論文内容の要旨
【 目 的 】
口 腔 内 に お け る 齲 蝕 は プ ラ ー ク 中pHの 変 化 に 伴 う 歯 質 の 脱 灰 と 再 石 灰 化 の バ ラ ン ス が 崩 れ る こ と に よ っ て 生 じ る . 歯 の 表 面 に お け る プ ラ ー ク のpHは ス テ フ ァ ン の カ ー ブ で 代 表 さ れ る よ う な 連 続 的 な 変 化 を 示 す , し た が っ て ,in vitroに お い て う 蝕 実 験 を 行 う に は , こ の よ う な 口 腔 内 のpHの 変 化 を 再 現 し ,pHと 脱 灰 ・ 再 石 灰 化 の 関 係 を 観 察 で き るinvitro の 実 験 系 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ た . そ の た め , に 連 続 し たpH変 化 を 自 動 的 に 再 現 出 来 る シ ス テ ム ( 自 動pHサ イ ク ル 装 置 ) の 作 製 を 試 み た , 作 製 に あ た っ て , 既 存の 装置 を応 用し , 簡 便 で 広 く 利 用 さ れ る も の を 目 指 し た . 脱 灰 ・ 再 石 灰 化 の 評 価 方 法 に は 最 も 一 般 的 な 方 法 の ー つ で あ るTranserse MicroradiograpHy (TMR)に よ る 評 価 法 を 選 択 し た . し か し ,TMR 画 像 の 解 析 法 は こ れ ま で 特 殊 な 機 器 そ し て プ ロ グ ラ ム を 用 い ら れ て い た , 近 年 の 電 子 機 器 の 機 能 の 向 上 に よ り 一 般 的 な ハ ー ド ウ ェ ア お よ ぴ ソ フ ト ウ ェ ア を 用 い た 解 析 法 の 開 発 が 可 能 で あ る と 考 え ら れ た . し た が っ て , 一 般 的 な ハ ー ド ウ ェ ア そ し て ソ フ ト ウ ェ ア を 用 い た 多 く の 研 究 者 が 利 用 し や す い 解 析 法 の 開 発 を 試 み た ・
本 研 究 の 目 的 は こ れ ら の 実 験 環 境 ( 自 動pHサ イ ク ル 装 置 ) そ し て 解 析 法 か ら な るin vitro の う 蝕 実 験 系 を 構 築 す る こ と で あ る . ま た , こ の 実 験 系 を 応 用 し た 実 験 を 行 い , こ の 実 験 系 の 検 証 を 行 う こ と で あ る
第一部: 自動pHサイクル装置の構築と確認
【材料と 方法】
自 動pHサ イ ク ル 装 置 の 設 定 : 再 石 灰 化 溶 液 を 満 た し た10ccの 試 料 容 器 に 脱 灰 溶 液(0. 2M 乳 酸 ,3. OmM CaCl2,1.8rriM KH2P04,pH4.5) は流 量を1000ml/hourに設 定 した マイ クロ チ ユ ー ブ ポ ン プ(MP―3N, 東 理 化 器 械 社 製 ) を タ イ マ ー ( ラ ボ ク ロッ ク, アズ ワ ン社 製) によ り 2分間還流させた.3分問放置した後,再石灰化溶液(0. 02M HEPES,3.OmM CaCl2,1.8rriM KH2P04, pH6.8) は 同 様 の 方 法 で 流 量100ml/hourで60分 間 還 流 さ せ た . こ の 設 定 を も と に ,1日 の サイクル 回数や間隔をタイマーのon/offによって制御した・
エ ナ メ ル 質 脱 灰 評 価 : ヒ ト 抜 去 前 歯(n=ニ5) か ら 厚 さ が 約100ルmの 研 磨 試 料 を2枚 作 製 し た . 試 料 の 研 磨 面 は ス テ ィ キ ー ワ ッ ク ス で 被 覆 しSingle―section試 料 と し た . 対 応 し た2 枚 の 試 料 は そ れ ぞ れpHサ イ ク ル が 一 日 に3回 の 環 境 と ,9回 の 環 境 で7週 間 試 験 を 行 っ た , TMRは 実 験 開 始 前 , 及 び1週 間 毎 に 撮 影 を 行 っ た . 得 ら れ た 画 像 は フ ア ル ム ス キ ャ ナ(Dimage Scan Elite,MINOLTA社 製 ) を 用 い た 我 々 の 開 発 し た 解 析 法 に よ り 解 析 , 比 較 検 討 を 行 っ た,
【結果と 考察】
今 回 の 設 定 で はpH5.5以 下 で あ る 時 間 ( 脱 灰 時 間 ) は37.2土0.8分 で , 初 期 のpHに 戻 る
ま での時間 (回復時間 )は60.0土O.9分であっ た.本装 置では, タイマー の設定を変える こ とによっ て脱灰時間 ,回復時 間を任意 に変えら れ,また ,ポンプ の流量の設定を変える とpH一時間カ ーブの傾き を変える ことも可 能である .さらに ,溶液の 補充以外の管理を必 要 とせずに 簡便で安定 したpHサイ クルが得 られた.
本 装置 で の脱 灰 変 化の パ ター ン を 一日3回 の環境 と一日9回 の環境で 比較する とAZとLd の 経時的な 増加に有意差が認められ,脱灰変のパターンが有意に異なることが認められた.
第2部:面像解析方法の開発と検証
【材料と方法】
研究に はヒト抜 去臼歯を使 用した. ヒト抜去 歯に脱灰 処理を行 った後, 半分の領域の再石 灰化処 理を行い ,脱灰処理 と脱灰再 石灰化処 理の両方 のを行っ た試料を 作製した.作製し た 資 料 は 厚 さ 約100皿mの 研 磨切 片 とし , ト ラン ス ヴ ァー ス マイ ク ロ ラジ オ グラ フ イ ー (TMR)を 撮影 し た. 撮影した 画像は@ フィルム スキャナ, ◎光学顕 微鏡に接 続したデ ジタ ル カメ ラ 用い て デジタ ル化を行 った.得 られたデジ タル画像 はNIH imageを用い て解析し た .デ ジ タル 化 された フイルム の画像解 析では,1) アルミス テップの グレイ値 とアルミ ニ ウム 厚 さか ら グレイ 値からア ルミニウ ム厚さ当量 計算する 検量線を 作製した .2)得ら れた検 量線を用 いて試料に おけるグ レイ値か ら測定点 における アルミニ ウム厚さ当量の計 算 を行 っ た.3) ア ル ミニ ウ ム厚 さ 当 量か らAngmerの 式 に基 づ い てVol%お よび, ミネラ ノレプロファイノレを作製した.4)得られたプロファイノレからMineral Loss(△Z),Lesion Depth (Ld),R値 ( △Z/Ld)のパ ラ メー タ ー を計算 した.こ れらのパラ メーター の計算を 行 うプ ロ グラ ム はマイ クロソフ トエクセ ルのVBA(Visual Basic for Application)を用い て開発 を行った .同じ試料 はSSX―550(島 津製作所 )を用い てSEM観察お よびEDS分析を行 っ た.TMRから 得 られたミ ネラルプ ロファイ ルとSEM,EDSから 得られた マップラ イン分析 を比較し,検討した,
【結果と考察】
TMRから 得 られ る 脱灰再石 灰化の評 価パラメ ーターであ るVol%,ミネ ラルプロ ファイル , AZ,Ldをこ れ まで の 報 告に 基 づぃ た 方 法で マ イクロソフ トエクセ ルのVBA(Visual Basic for Application)を用い たプログ ラムで解析 する方法 を開発す ることが 出来た.また,こ のプロ グラムか ら得られた 脱灰再石 灰化のパ ラメータ ーはこれ までの報 告とほば一致しす る 物で あ った .TMR,SEMそ してEDSか ら得 ら れた結 果を比較す ると,3者 ともいず れも同 様な像 を示した .マップラ イン分析 から再石 化した部 分は健全 歯質と同 様の比率のりン,
カルシ ウムによ るものであ ることが 示唆され た.これ らの結果 から我カ が開発した解析法 が有用であることが確認された,
第3部 :う蝕実 験系の応 用
【材 料と方法 】
ヒ ト 抜去 臼 歯か ら厚さ100ルmのSingle−section試料 を作製し た.試料 の切断面は スティ キ ー ワ ッ ク ス で 被 覆 した . 歯 冠部 に 幅200 um(N群 )と400um (W群 )の 深 さ が約Immの 象牙 質まで達 する人工裂溝を形成し試料を作製した(n 6),各資料のワックス面はパラフ イ ル ムで 覆 い溶 液の進入 を防いだ .pHサイク ルは,脱 灰溶液と再 石灰化溶 液を用い て1サ イ ク ルでpH5.5以 下 であ る 時 間( 脱 灰時 間 ) が37分, 初 期 のpHに 戻る ま での時間 (回復 時 間 ) が60分 と な るよ う に 設定 し た .サ イ クル 数 は1日9回と し , 各サ イ ク ルの 間 隔は 60分で , この 期 間 およ ぴpHサ イ クル を 稼 動させ ない期間 は再石灰化 溶液に浸 漬した. 両 郡 に お け る う 蝕 観 察 は実 権 開 始前 と2週 日と4週 日 に おい てTMR撮 影 を 行い , △ZとLdの
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増加の比較検討を行った.
【結果と考察】
エナメル質においては2 週日,4 週目のいずれにおいても△Z と Ld に有意な増加が認めら れず,有意な脱灰変化認められなかった.象牙質の△Z についてはN 群とW 群の間で2 週目,
4 週日で有意差が認められた. Ld についてはN 群とW 群の間で2 週目においてのみ有意差 が認められ,4 週目では有意差は認められなかった.これらの結果から,裂溝において,
開放面の幅が広いほど脱灰の進行が速いことが示唆され,裂溝の幅がう蝕の進行に影響が 与えることが示唆された・
【まとめ】今回我々が構築した実験環境(自動pH サイクル装置)そして解析法からなる
in vitro におけるう蝕実験系によって,pH の変化と脱灰再石灰化の関係を経時的に比較検
討することが可能となった.また,これを応用した研究では,連続的なpH 変化の環境にお
いて脱灰変化のパターンがpH 変化の回数によって異なる事が示唆され,また歯質の形態に
よってpH の変化が異なる事も示唆され,この実験系の有用性が確認された.今後はう蝕リ
スクまたはフッ素たどの予防材の評価、予測に利用し検討を行っていく予定である.
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
In vitro におけるう蝕実験系の構築とその応用
審 査 は , 審 査 員 が 一 同 に 会 し , 申 請 者 に 対 し て 提 出 論 文 と そ れ に 関 連 し た 学 科 目 に つ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 以 下 に 提 出 論 文 の 要 旨 と 審 査 の 内 容 を 述 べ る .
【 目 的 】
In vitroに お い て う 蝕 実 験 を 行 う に は 口 腔 内 のpHの 変 化 を 再 現 し ,pHと 脱 灰 ・ 再 石 灰 化 の 関 係 を 観 察 で き るinvitroの 実 験 系 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ た , そ の た め に 連 続 し たpH変 化 を 自 動 的 に 再 現 で き る シ ス テ ム ( 自 動pHサ イ ク ル 装 置 ) の 作 製 を 試 み た . ま た 脱 灰 ・ 再 石 灰 化 の 評 価 の た めTransverse Microradiography (TMR)の 簡 便 な 解 析 法 の 開 発 を 試 み た . 本 研 究 の 目 的 は 作 製 し た 自 動pHサ イ ク ル 装 置 そ し て 開 発 し た 解 析 法 か ら な る in vitroの う 蝕 実 験 系 を 構 築 し 検 証 を 行 う こ と で あ る ・
第1部 : 自 動pHサ イ ク ル 装 置 の 構 築 と 確 認
【 材 料 と 方 法 】
自 動pHサ イ ク ル 装 置 の 設 定 : 再 石 灰 化 溶 液 を 満 た し た10mlの 試 料 容 器 に ポ ン プ を 用 い てpH4.5の 脱 灰 溶 液 を1000ml/hourの 流 量 で2分 間 還 流 さ せ た . そ の 後 , 同 様 にpH6.8の 再 石 灰 化 溶 液 を100ml/hourの 流 量 で60分 間 還 流 さ せ た . こ の 設 定 を も と に ,1日 の サ イ ク ル 回 数 や 間 隔 を タ イ マ ー のon/offに よ っ て 制 御 し た ,
エ ナ メ ル 質 脱 灰 評 価 : ヒ ト 抜 去 前 歯 か らsingle−section試 料 を 作 製 し ,pHサ イ ク ル が1 日 に3回 の 環 境 と ,9回 の 環 境 で7週 間 試 験 を 行 っ た ,TMRは 実 験 開 始 前 お よ ぴ1週 間 毎 に 撮 影 を 行 っ た . 得 ら れ た 画 像 は 本 研 究 で 開 発 し た 解 析 法 ( 第2部 に 後 述 ) に よ っ て 解 析 , 比 較 検 討 を 行 っ た .
【 結 果 と 考 察 】
本 装 置 で は , タ イ マ ー の 設 定 に よ っ て 脱 灰 時 間 , 回 復 時 間 を 任 意 に 変 え ら れ , ま た , ポ ン プ の 流 量 の 設 定 を 変 え る とpH― 時 間 カ ー ブ の 傾 き を 変 え る こ と も 可 能 な も の と な っ た . 本 装 置 で の 脱 灰 変 化 の パ タ ー ン を1日3回 の 環 境 と1日9回 の 環 境 で 比 較 す る とMineral Loss (AZ)お よ ぴLesion Depth (Ld)の 経 時 的 な 増 加 に 有 意 差 が 認 め ら れ , 脱 灰 変 化 の パ タ ー ン が 有 意 に 異 な る こ と が 認 め ら れ た ・
第2部 : 画 像 解 析 方 法 の 開 発 と 検 証
【 材 料 と 方 法 】