博士(歯学)飯田俊二 学位論文題名
骨粗鬆症ラットにおける骨形成
一骨形成蛋白質(B)/IP)の作用低下の原因について―
学位論文内容の要旨
【目的】
高齢化に伴し、骨粗鬆症を|よじめとする骨疾患が社会問題になりつっある。骨 粗鬆 症は閉経後 の女性に多 く、これは 女性ホルモ ソの分泌不 全、ミネラル(特 にカ ルシウム)の摂取不足等との関係が考えられてし、る。骨粗鬆症の臨床的問 題と しては大腿 骨頚部骨折 や脊椎の圧 迫骨折があ り、 寝た きり の原因とし て第 二位に骨粗 鬆症による 上記の骨折 が挙げられ る。また歯 科の分野では骨粗 鬆症に伴う顎堤の吸収が義歯の不適合の原因となってし、る。補綴の分野におし、
て、 このような 患者に顎堤 挙上などの 骨再建が必 要となる場 合が増えており、
その治療法として自家骨、あるし、|よ人工材料を骨膜下に埋入する顎堤形成法が 現在 一般的に行なわれてし、る。自家骨を埋入する場合、他部位からの移植によ るた め手術侵襲が大きく患者への負担が大きしヽ。そのため、人工材料の中でも 生体 親和性が高く、骨と直接結合するハイドロキシア´ミタイトの応用が期待さ れてし、る。この生体材料とTGF‑Bのスー´ミーファミリーのーつである骨形成タ ソ´ ミク質(Bone Morphogenetic Protein:BMP)の複合体は骨形成を早期に誘導す るこ とが報告されてし、る。ただ現在までBMPはin vivoで骨形成を認めるのはホ スト の状態が正 常な場合に 限られてお り、骨粗鬆 症でどのよ うな反応が見られ るか|よほとんど知られてし、なしヽ。そこで今回卵巣を摘出(ovx)し、実験的に骨 粗鬆症としたラットを用し、BMPによる骨形成の変化を´ロレ´ゾD、inレitro両面 から検討した。
【材料及び方法】
BMPの部 分 精製 : 成牛 骨より 骨端部を除 去し、骨幹 部のみとし たものから 軟 組織 を可及的に 除去し、液 体窒素下で 冷却しながら粉砕し直径0. 8mm以下に調 整し たものを、 洗浄、脱脂 、脱灰を行 なった。脱 灰後の骨基 質を洗浄し、グア ニジソ塩酸にてタソ´ミク成分を可溶化し、この溶液を濃縮、遠心、濾過した後、
カラムクロマトグラフィーにて部分精製した。三段階のカラム|よ Hydroxyapa− tite column,Heparin−Sepharose CL−6B column, SephacrylS−300 HR columnで 活性画分を各々、次のカラムに添加した。S−300カラムの活性画分をBlviP部分精 製物として実験に用し、た。
骨粗鬆症(OVX)ラットは、4週齢のウィスター系ラットの卵巣を両側摘出し、
術後低カルシウム食を与えることで作製した。対照群として偽手術(SHAM)を行 なったラットを用し、た。術後3週日に背部皮下と頭部頭頂骨骨膜下にBMP複合 体を埋入した。担体としては背部皮下に骨不溶性基質(insoluble bone mat rix IBM)、頭部骨膜下にハイドロキシア´ミタイト(HAP)を用し、た。骨形成の評価|よ アルカリフォスファターゼ(ALP)活性、カルシウム(Ca)含有量、そして形態学 的観察により行なった。
OVXラッ ト大腿 骨より骨髄細胞を採取し初代培養にてコソフルエノトに到達 後、継代培養して8―グリセロリソ酸、デキサメサゾソ(DEX)存在下で培養し、
骨芽細胞へと分化誘導させ、その分化能を対照群(SHAM)と比較した。分化の指 標としてはALP.オステオカルシソ(Oc)産生量、および(3Hl一プロリソと〔3H)―グ ルコサミソによる蛋白質の生合成´ミターソを評価した。
【結果】
IBM/BMPを背部 皮下 に埋 入し た場合 (異 所性 骨形成)、軟X線分析ではSHAM ラ ットで は3週か ら6週にかけて著明な不透過像が認められたが、Ovxでは不透 過像|よ6週にかけても弱し、ものであった。生化学的分析でもALP値はOvXは観察 期 間を通 じ、SHAMよりも 低値 を示 し、Ca量はSHAMでは経時的に増加したが、
Ovxでは検出できなかった。組織学的には、Ovxにおし、て3週で軟骨形成が認め られたが、その後、骨形成は確認されなかった。一方、SHAMで|よ実験期間を通 じ、IBM周囲に旺盛な骨形成が見られた。
HAP/BMPを頭部骨膜下に埋入した場合(同所性骨形成)、ovxでは4週でHAPブ ロックの周囲から骨形成が確認され、中心部には軟骨性基質、肥大軟骨細胞が 確認された。8週でも4週後と同様の形態を示し、アルシアソブルー染色により 中心部に軟骨基質が確認された。SHAMでは4週から8週にかけて骨形成がブロッ ク周囲からおきており、骨基質|よ層板状を呈してし、て、改造線が確認された。
また骨髄形成も活発であった。
骨髄細胞の培養で|よマトリックス中のALP活性,培地中のOc量ともにOvxは SHAMに比べて、3、4週にかけて、有意に低し、値を示した。メタボリックラベリ ソグモはOvx.SHAMともに(3H)―プロリソでラベリソグした場合、骨芽細胞と同 様の´ミターソを示し、さらに骨芽細胞に特有の35kDaタソ´ミク質が認められ、
〔3H)―グルコサミソでラベリソグした場合も骨芽細胞に特有の60kDa付近に,ミソ ドが確認された。
【考察】
BVPを用し、て異所性に骨形成を誘導した場合、骨粗鬆症ラットでの骨形成の 低下が見られ、同所性では遅延が見られた。一方、大腿骨より採取した骨髄細 胞はOvx群、SHAM群し、ずれも骨芽細胞としての形質を発現してし、たが、Ovxラッ トでの骨芽細胞への分化能はSHAM群に比べて低下してし、ることがわかった。以 上 より骨 粗鬆 症ラ ットではBMPによる骨形成能は正常より低下しており、骨形 成の低下|よ骨芽細胞の分化新生が抑制されてし、ることに原因のーっがあると推 測された。
学 位 論 文 審査 の 要旨 主 査 教 授 川 崎 貴 生 副 査 教 授 久 保木 芳徳 副 査 教 授 松 本 章
学 位 論 文 題 名
骨 粗 鬆 症 ラ ッ ト に お け る 骨 形成
一 骨形 成蛋白 質(BMP) の作 用低下 の原 因に ついて ―
審 査は 久 保 木 , 松 本 お よ び 川 崎 審査 委員 全員 がf. );iii;の もと に学 位rli iiilf旨に対し,捉f,u論文の内容とそれに凶迎する学科I三lについ て口 頭試問 によ って 行っ た.
以 下に捉 出諭 文の 要旨 と審査 のI勺容 を述 べる .
人 口 の 中 に 占 め る 高 齢 者 の4flJ合 の 増 加 に 伴 い 骨 粗 鬆 症 を は じ め と す る 骨 疾 心 が 社 会I・ 嚠 題 に な り つ っ あ る . 骨 粗 鬆 症 は 剛 経 後 の 女 性 に 多 く , こ れ は 女 性 ホ ル モ ン の 分 泌 不 全 , ミ ネ ラ ル の 摂 取 不 足 等と の1瑚係 が考えられている.幽科の分型rでIIIj越となるのは´I・゛粗 鬆 症 に 伴 う 顎 堤 の 吸 収 が 義 幽 の 安 定 を 妨 げ る 因 子 と 関 係 し て い る こ と で あ る . こ の よ う な 心 者 に は 顎 堤 挙 上 な ど の 骨Tlj姓 が 必 要 と な る 場 合 が ょmえ て い る . そ の 治 療 法 と し てlヨ 家 付 . あ る い は 人 工 材 料 を骨 腆 下 にDli入 す る 顎 堤 形 成法 が 現 在 行 わ れ て し ヽ る が 、I三l家 骨 の 埋入は ,心 者へ の負 担が大 きい ため ,人工 材料 の応J:I・・Jが 試み ら れ て い る . そ の 中 で も 生 体 親 和 性 の 高 し ヽ ハ イ ド ロ キ シ ア ノ¥タ イ ト (IIAP) の 応J:fJはJ釧 待 さ て いれ ると ころ であ る・こ の生 体材 料と TGF‑pの ス ー ノ ヾ ー フ ァ ミ リ ー の ー っ で あ る 付 形 成 蛋 白 質 (BMP) の 複 合 体 は 骨 形 成 を 早 刈 に 誘 導 す る こ と が 報 告 さ れ て い る が ,BMPは in vivoで 骨 形 成 を 認 め る の は ホ ス ト の 状 態 が 正 常 な 場 合 に 限 ら れ
て お り , 骨 粗 鬆 症 で ど の よ う な 反 応 が 見 ら れ る か は ほ と ん ど 知 ら れていない.
以 上 の 状 況 を 踏 ま え , 本 論 文 捉 出 者 は 実 験 的 に 骨 粗 鬆 むtと し た ラ ッ ト を 用 い , こ の ラ ッ ト に お い てBMPが 骨 形 成 に ど の よ う にI刈 与 す る か を 検 討 し て い る . 実 験 的 骨 粗 鬆 症 ラ ッ ト は4遡 齢 の ラ ッ ト に 卵 巣hも ii‑l.ii手術 (ovx)を 行い、低カ ルシウム食 を与えるこ とによ っ て 作 成 し , 対J照7洋 と し て , 偽 手 術 (SlIAM) を 行 い , 通 常 食 を 与I え統けたラットを用いている・
木 り 『 究 は 犬 き く 分 け てin vivo in vitroの2っ か ら 成 る . ホ 尖 験 で 丿 三Hい た 部 分 精 製BMPは , 牛 骨 よ り3段 階 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ イーにより部分精製したものである.
in vivoでの 研 究の 内 容は , 興所 性 骨形 成 と剛 所 l− ! 骨形 成 の検 討 か ら 成 り , 興 所 性 骨 形 成 は 部 分 精 製BMPと 担 体 と し て の 骨 不 溶 性 あ ヒ 質 (IBM) の 複 合 体 をOvx,SHAM両 ラ ッ ト 背 部 皮 下 に 埋 入 し , 生 化 学 的,形態学的に:観察することによって行っている.l司所´凶ニ´IiJ゛形J戎 は 部 分 精 製 し たBMPとHAPの 複 合 体 をOvx,SHAM両 ラッ ト 頭翻5頭頂 乍j 骨 膜 下 に 埋 入 し , そ の 骨 形 成 を 形 態 学 的 観 察 に よ り 行 っ て い る , in vitroで はOvx,SHAM両 ラ ッ ト の 大腿 骨 より 骨 髄翁 ‖ 胞 を採 取 し|
初 代 培 養 で コ ン フ ル ェ ン ト に 述 し た 糸t‖ 胞 を さ ら に 継 代 培 養 し た , このようにしてj廿られた´fヨ゛t髄釧胞を月ーグリセロリン職(月ーGI亅)
デ キ サメ サ ゾン (DEX) 存在 下 で培 養 し. 骨 到ミ翁‖ 胞へと分化 誘導させ その分化能を生化学的に比較検討している・
以 上 の 方 法 に よ っ て 得 ら れ た 結 果 は 次 の と お り で あ る , 興 所 性 骨 形 成 を み る と ,OvxのALP値 はSIIAMのf血 に 比 べ て 低 い 価 と な り ,Ca量 は ほ と ん ど 検 出 さ れ な か っ た . j欧 X線 分 析 で は , Ovxの 不 透 過 像 は 観 察j剄1− ‖ を 通 じ て 弱 いも の であ り ,紐 織 学的 に は 骨 形 成 は .f離 認 さ れ な か っ た . 一 方 ,SlIAMで は3迎 か ら6遡 に か け て 軟X線 分 析 に お い て 著 叨 な 不 透 過 像 を 認 め て お り , 紅L織 学 「Yに も 活 発 な 骨 形 成 を 確 認 し て い る . 同 所 性 骨 形 成 を み る と ,Ovxで は 4週 で 骨 形 成 , そ れ に 軟 骨 形 成 を 確 認 し て い る . こ のlIAPブ 口 ソ ク
中心部に 11 火骨性基質,肥大jl 火骨細胞の存在を確認している. 8 週 で もこれ らの組 織学的 所見 に大き な差は見られていない.一力,
SYIAM では 4 週でHAP ブロック周囲からの活発な骨形成が確認され,
骨髄形成も見られた. 8 週になるとさらに成熟した骨の)畛成が確 認され.骨基質の層板状榊造も観察している. Ovx で認められた軟 骨 形 成 は SHAM で は 4 , 8 迎 と も に 碓 認 で き な か っ た ・ in vitro の 骨 髄 細 胞 培養 の 実 験 結 果 では , 3 , 4 遡に かけて の OVX の マトリ ックス 中の ALP 活性お よび培地中の Oc 量は SHAM に比べ て有意に低い値を示した.ロ―GP ,DEX 存在下で培養したovx ,SHAM の骨髄細胞のメタボリックラベリングは.骨芽細胞(MC3'I 丶3 ーEl ) と同様のノヾターンを示すことがフルオログラムにより雛認された.
こ れ ら の 結 果 か ら 本 論 文 提 出 者 は 次 の よ う に 考 察 し た . BMP を用いて異所性に骨形成を誘導することを試みても,骨粗鬆 症ラットではその骨形成能は低下しており,その効果は疑|翻であ る .しか し,同 所性に 骨形 成の誘 導を試みた場合.骨形成の遅延 が 認めら れたが ,骨形 成は 可能で あることが示唆され,骨粗鬆症 患 者に対 する臨 床応用 の可 能性が あると考えている.このような 結 果 の 原因を 骨髄細 胞の培 養実験 の結 果から 考察す ると. Ovx , SHAM いずれの骨識iirj 胞も骨芽糸nl 胞としての機能を発現していたが、
OVX の骨髄糸ul 胞の骨芽糸lIl 胞への分化能はSHAM に比べて低下している ことに起因しているのではないかと考えた,
以上をまとめると,骨粗鬆症ラットでは BMP による骨形成能は正 常より低下しており,骨形成の低下は骨芽糸l ‖胞の分化新生が挧J 制 さ れ て い る こ と に 原 因 の ー っ が あ る と 推 測 し て い る , 本論分 提出者 は実験 的に 骨粗鬆 症を作成する要素について,さ ら に糾分 化した 実験系 を考 えてお り、本研究の将来的展望も高〈
評価された.
次いで本論文の内容に関連のある質問が行われた,これらの試
・羽に関してそれぞれ適切な匝l 答が得られた.また,本研究は骨XLL
鬆 症 の病 態の 一 部を 明 らか に する も ので あり , かつ 臨 床に 応 用で きる匍Ii値のあるものであることが認められた.よって.学位I|1・Iiif 者 は 博 士 ( 幽 学 ) の 学 位 授 与 に ふ さ わ し い も の と 認 め た .