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博士(歯学)依本卓見 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)依本卓見 学位論文題名

光造形法の歯科領域への応用に関する研究 学位論文内容の要旨

【目的】  光造形法ば工業界で近年になって開発された「ラピッド・プロトタイピング&マニュ ファクチャリング」の一手法であり,デジタルの形状データから直接三次元の立体形状 を創成するというまったく新しい成型技術である.

  この技術の歯科領域への応用は現在,外科矯正などの手術におけるシミュレーション 用の骨格モデル作製などで行われており,今後も様々を分野で応用されるものと予想さ れるが,その場合に問題となるのはその寸法精度であり,特に補綴領域への応用を考え ると,高い寸法精度は必要不可欠であると考えられる.

  本研究の目的は,光造形法のモデル作製過程における寸法精度の点から検討を行い,

要素技術として光造形法の,特に補綴領域を想定した歯科領域への応用の可能性を示す こと,および実際の三次元形状データの取得から光造形装置による立体モデル作製まで の一連の手法を確立することである,

【材料と実験方法】

  本実験では,光造形装置としてシーメット社製「SOUP400GH」,三次元計測装置と し て は ニ コ ン 社 製 三次 元 座標 測定 機「ト ライ ステ ーシ ョン400H」 を使 用した ,   1.実験1歯冠を想定した小型モデルについて

  光造形法の歯冠補綴物などへの応用を想定し,寸法精度に及ぼす加工条件の影響につ いて検討した.

  大臼歯の歯冠を想定した一辺10.OOmmの立方体を原型とし,レーザのスキャンスピー ド3条件,積層ピッチ3条件,水平方向のスキャン方式3条件の各条件を組み合わせた 計27条 件 で モ デ ル 作 製 を 行 い , . 水 平 方 向 の 寸 法 精 度 に つ い て 検 討 し た .   さらに最も誤差の小さかったスキャンスピード,スキャン方式の組み合わせの下で,

積層ピッチのみを変化させて垂直方向の検討を行った.

  2.実験2歯列を想定した大型モデルについて

  実験1の結果をもとに,歯列模型などへの応用を想定した場合の寸法精度に及ぼす加 工条件の影響を検討した.

  歯列弓を想定した平面モデルを原型とし,実験1で最も誤差の小さかったスキャンス ピード,スキャン方式の組み合わせを採用し,積層ピッチが0.07mm,0.08mm,O.10mm の 3条 件 に つ い て モ デ ル 作 製 を 行 い , 寸 法 精 度 の 検 討 を 行 っ た .

.3.実験3全顎歯列モデルの作製

  実際の応用を考えた場合,実験1,2のような平面モデルを作製することは殆どなく,

自由曲面で構成されたモデルの作製が主になると思われる.そこで本実験では,得られ た最適加工条件により全顎歯列模型を作製し,主にその形態再現性の面からその評価を 行った.  また,実際の三次元データの取得から光造形法による立体モデル作製(再現)までの 一連の手法の確立について検討した.

(2)

【結果および考察】

  1.実験1

  いずれの条件でもX方向に比べY方向の誤差が有意に大きく,これはそれぞれの方向 のレーザ走査を制御するガルバノミラーの特性差が考えられ,本装置固有のものと考え られる.

  X,Y両方向において最も誤差が小さかったのは,スキャンスピード:500mm/s,ス キャン方式:Normalスキャン,積層ピッチ:O.lmmの場合であり,その際の誤差はX方 向:31ルm,Y方向:63ルmであった.

  積層ピッチが0.2mmの設定では,いずれも各積層間が分離しモデル作製は不可能であ ったが,これは樹脂中でのレーザの減衰率が大きく0.2mmの深さまで透過しなぃことが 考えられる.

  水平方向では,いずれもモデルは設定値よりも大きくなり,スキャンスピードと積層 ピッチによる比較からは,レーザ照射が短時間のものほど誤差が小さくなった.一方,

垂直方向では積層ピッチの大きさに反比例してモデルは小さくなり,モデル上面の形状 は凸面から凹面へと変化した,これは,水平方向では主にレーザの樹脂内部での拡散の 影響を受け,垂直方向では重合収縮と表面張カの影響を受けることを示唆しており,こ の理由として,水平方向ではレーザの照射範囲が局所的であること,さらに樹脂は硬化 した瞬間に,その下に存在する既に硬化した樹脂層と接合するため,その重合収縮が規 制されてしまうことが考えられる.一方,垂直方向では,硬化した樹脂の下面は同様に 下の樹脂層と接合するが,上面は自由液面であり,重合収縮は規制されなぃと考えられ る.

  上面形状の変化は,樹脂の表面張カと重合収縮の影響が考えられ,積層ピッチが小さ い場合,樹脂の表面張カにより液層の中央部が盛り上カミるのに対し,大きい場合,液層 は適正に平滑化されるものの重合収縮により中央部が陥凹してしまうと考えられる.

  2.実験2

  長径,幅径いずれにおいても積層ピッチが大きいものほどモデルは小きくなり,最も 誤差が小さかったのは長径では積層ピッチがO.lmmの場合で原型に比べて約555ルm拡 大し,同じく幅径では0.08mmの場合で約191ルm拡大した.

  これは樹脂の積層方向から考えると,長径方向では樹脂の表面張カと重合収縮の影響,

幅径方向ではレーザの樹脂内部での拡散の影響が考えられる.

  3.実験3

  今回使用した光造形装置の形態再現性は非常に優れており,肉眼による観察では小窩 裂 溝 や 副 隆 線 部 分 な ど 咬 合 面 の 形 態 的 特 徴 が 忠 実 に 再 現 さ れ た .   これは三次元計測の計測ピッチとモデル作製時の積層ピッチの影響が予想され,今回 は三次元計測を0.2mmピッチで,モデル作製を0.08mm積層で行ったことから,良好な 結果が得られたものと考えられる.っまり,細密な形状データを取得し,その計測ピッ チ以下の積層ピッチでモデル作製を行った場合には,光造形法は十分な形態再現性を持 っということが言える,

  表面性状については光造形法は積層加工法であるという性格上,積層ピッチの大小に よる影響を受けることは避けられたぃが,日常臨床で行っている歯冠補綴物などの場合 も,100ルm程度の最終調整は術者が行っていることを考えると,特に実用上問題とな るような表面性状ではなぃものと考えられる.

【結論】

  光造形法の歯科領域への応用に関して,補綴領域を想定した基礎的実験,および実際 の歯列模型の作製を行い,主に精度の点から実用化の可能性について検討を行った結果,

以下の結諭を得た.

  1.歯冠補綴物などへの応用を想定した場合の,本装置に限っての最適加工条件を求 めることができ,その際の誤差は水平方向で約30〜60ルm,垂直方向で約90ルmであっ た.これは十分実用可能な値であると考えられた.

(3)

  2.同様に歯列模型などへの応用を想定した場合の最適加工条件を求めることができ,

その際の誤差は幅径で約190ルm,長径で約660ルmであった.これは,現状の歯列模型 と比較して劣るものと考えられた.しかし,今後,基礎データを蓄積し,最適オフセッ ト量を設定することにより改善できるものと考える.

  3.歯列模型の三次元計測データをもとに,実物大の歯列模型を作製することができ,

その形態再現性はきわめて良好であり,表面性状も実用上特に問題とはならないものと 考えられた.

  4.形態情報のデジタルイヒ,パーソナルコンピュータによる三次元データ処理,光造 形装置による立体モデル化とぃう一連の手法を確立することができ,歯科領域における 今後の新しい立体モデル活用の方向を示し得た.

  5. 本研 究 の結 果か ら光造形法 を歯科領域 ヘ応用でき る可能性が 示唆された .

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

光造形法の歯科領域への応用に関する研究

  本 研 究 の 目 的 は , 光 造 形 法 の , 特 に 歯 科 の 補 綴 領 域 へ の 応 用 を 想 定 し て 寸 法 精 度 の 検 討 を 行 う こ と と , 実 際 の 三 次 元 形 状 デ ー タ の 取 得 か ら 光 造 形 装 置 に よ る 立 体 モ デ ル 作 製 ま で の 一 連 の 手 法 を 確 立 す る こ と で あ る .

【 材 料 と 実 験 方 法 】

  本 実 験 で は , 光 造 形 装 置 と し て シ ー メ ッ ト 社 製 「SOUP400GH」 , 三 次 元 計 測 装 置 と し て は ニ コ ン 社 製 三 次 元 座 標 測 定 機 「 ト ラ イ ス テ ー シ ョ ン400剛 を 使 用 し た .   実 験1歯 冠 を 想 定 し た 小 型 モ デ ル に つ い て

  大 臼 歯 の 歯 冠 を 想 定 し た 一 辺10.0 0mmの 立 方 体 を 原 型 と し , レ ー ザ の ス キ ャ ン ス ピ ー ド3条 件 , 積 層 ピ ッ チ3条 件 , 水 平 方 向 の ス キ ャ ン 方 式3条 件 の 各 条 件 を 組 み 合 わ せ た 計27条 件 で モ デ ル 作 製 を 行 い , 水 平 方 向 の 寸 法 精 度 に つ い て 検 討 し た .   さ ら に 最 も 誤 差 の 小 さ か っ た ス キ ャ ン ス ピ ー ド , ス キ ャ ン 方 式 の 組 み 合 わ せ の 下 で , 積 層 ピ ッ チ の み を 変 化 さ せ て 垂 直 方 向 の 検 討 を 行 っ た .   実 験2歯 列 を 想 定 し た 大 型 モ デ ル に つ い て

  実 験1の 結 果 を も と に 歯 列 弓 を 想 定 し た 平 面 モ デ ル を 原 型 と し , 実 験1で 最 も 誤 差 の 小 さ か っ た ス キ ャ ン ス ピ ー ド , ス キ ャ ン 方 式 の 組 み 合 わ せ を 採 用 し , 積 層 ピ ッ チ が0.0 7mm0.08mmO.10mm3条 件 に つ い て モ デ ル 作 製 を 行 い , 寸 法 精 度 の 検 討 を 行 っ た .

  実 験3全 顎 歯 列 モ デ ル の 作 製

  実 験12で , 得 ら れ た 最 適 加 工 条 件 に よ り 全 顎 歯 列 模 型 を 作 製 し , 主 に そ の 形 態 再 現 性 の 面 か ら そ の 評 価 を 行 っ た .

  ま た , 実 際 の 三 次 元 デ ー タ の 取 得 か ら 光 造 形 法 に よ ろ 立 体 モ デ 少 作 製 ( 再 現 ) ま で の 一 連 の 手 法 の 確 立 に つ い て 検 討 し た .

【 結 果 お よ び 考 察 】

実 験1で は , い ず れ の 条 件 で もX方 向 に 比 ペY方 向 の 誤 差 が 有 意 に 大 き く ,XY 両 方 向 に お い て 最 も 誤 差 が 小 さ か っ た の は , ス キ ャ ン ス ピ ー ド :500mm/s, ス キ ャ ン 方 式 :Normalス キ ャ ン , 積 層 ピ ッ チ :O.10mmの 場 合 で あ り , そ の 際 の 誤 差 はX 方 向 :31mY方 向 :63,umで あ っ た .

一 宏

洋  

  文

山  

  理

内 谷

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

  積層ピッチが0.2 0mmの設定では,いずれも各積層間が分離し,モデル作製は不 可能であった・

  水平方向では,いずれもモデルは設定値よりも大きくなり,スキャンスピードと 積層ピッチによる比較からは,レーザ照射が短時間のものほど誤差が小さくなった.

一方,垂直方向では積層ピッチの大きさに反比例してモデルは小さくなり,モデル 上面の形状は凸面から凹面へと変化した,これは,水平方向では主にレーザの樹脂 内部での拡散の影響を受け,垂直方向では重合収縮と表面張カの影響を受けること を示唆している.

  実験2では,長径,幅径いずれにおいても積層ビッチが大きいものほどモデルは 小さくなり,最も誤差が小さかったのは長径では積層ピッチが0ユOmmの場合で原 型に比べて約555Pm拡大し,同じく幅径では0.0 8mmの場合で約191pm拡大した.

  これは樹脂の積層方向から考えると,長径方向では樹脂の表面張カと重合収縮の 影 響 , 幅 径 方 向 で は レ ー ザ の 樹 脂 内 部 で の 拡 散 の 影 響 が 考 え ら れ る .   実験3では,今回使用した光造形装置の形態再現性は非常に優れており,肉眼に よる観察では小窩裂溝や副隆線部分など咬合面の形態的特徴が忠実に再現された.

  以上の結果から次の結論を得ている.

  1.歯冠補綴物などへの応用を想定した場合の,本装置に限っての最適加工条件 の 誤差は水平 方向で約30‑ 60,um,垂直方 向で約90pmで,十分実用可能な値で あると考えられた.

  2.同様に歯列模型などへの応用を想定した場合の最適加工条件の誤差は幅径で 約190メm,長径で 約660pmで, 現状の歯列 模型と比較して劣るものと考えられ た.しかし,今後,基礎データを蓄積し,最適オフセット量を設定することにより 改善できるものと考える.・

  3.歯列模型の三次元計測データをもとに,実物大の歯列模型を作製することが でき,その形態再現性はきわめて良好であり,表面性状も実用上特に問題とはなら ないものと考えられた・

  4.形態情報のデジタル化,パーソナルコンピュータによる三次元デー夕処理,

光造形装置による立体モデル化とぃう一連の手法を確立することができ,歯科領域 における今後の新しい立体モデル活用の方向を示し得た.

  5.本 研究の結果から光造形法を歯科領域ヘ応用できる可能性が示唆された.

  このような研究について主査および副査が一堂に会し,口頭により試問と審査を 行った,光造形装置の原理などを含め,種々質問を試みたがいずれも適切にして十 分な解答が得られた.本研究で光造形法の歯科領域への応用の道を開いたことは高 く評 価され,博士(歯学)の学位を授与するに値すると審査員一同が認めた.

参照

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