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博 士 ( 農 学 ) 岡 田 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 農 学 ) 岡 田 学 位 論 文 題 名

平地農村景観における樹林の構成と評価に関する研究      ―屋敷林を中心として一

学位論文内容の要旨

  農 村地域 に多く 存在す る屋敷 林や防風林は、防災機能を目的のーっとして人為的に形成され、平野部で生活す る 人々に とって 最も生 活に密 着し、身近な林である。また、垂直的な構成要素が少ない平地農村景観において、

重 要な構 成要素 となっ ている 。しかし、これら樹林は近年の生活様式等の変化によって減少傾向にあり、平地農 村 地域に おける 従来の 樹林景 観は大きく変化し、農村景観にも大きな影響を与えていると考えられる。従って今 後 、望ま しい農 村景観 を形成 するにあたり、樹林の保全が重要な課題のひとつであると考えられ、各々の樹林が 持 つ固有 の価値 につい て評価 、検討を行い、樹林の保全と活用に向けた基礎情報の収集と整理を行うことが必要 で ある。

  本 研究で は、平 地農村 地域の 樹林、 特に屋 敷林を 中心として、北海道恵庭、山形県庄内の2ケ所を研究対象地 と し、I) 平地農村地域における樹林の珊吠と変遷の把握、II)屋敷林についての地域住民による評価の現状と、

今 後求め られて いる方 向性の 確認、m)微気 象および 景観特 性の向 上の検 証、1V)平地農村地域における樹林の 管 理と保 全の方 向性の 提案、 を行う ことを目 的とし た。

I.平地農村地域における樹林の現状と変遷の把握

  研究対象地域の概況について、地理的、気象的、村:会的特性を把握し、崖拊景観の基盤である土±也利用形態と 樹林の変イヒ傾向について把握した。その結果、両研究対象地趣とも強い季節風が吹き、それらに対応した屋敷林 や防風 林とい った樹 林が成 立して いた。また、恵庭は水田と畑地の混在した散村集落景観、庄内は水田を主体と した集 村集落 景観で 、集落 形態の 違いが両地域の景観特性を代表していた。樹林景観は、恵庭では樹林の種類が 多く、多様性に富んでいるのに対し、庄内は屋敷林を主体として、集落毎に樹林の成立する点的な景観であった。

また、 両地域 とも土 地利用 形態、 樹林の量はともに大きく変化しており、恵庭では、水田と畑地を主体とした景 観のバヅチ化が進行していたほか、都市化の影響もみられた。そして、恵庭は樹林の種類の割合が大きく変化し、

樹林景 観の構 造が変 化した 。ー方 、庄内は樹林が大幅に減少しており、樹林景観自体の消失の危険性をも含んで いた。 また、 屋敷林 につい て、両 地域ともに減少傾向にあり、特に庄内については当地における樹林の殆どを占

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めることから、屋欺沐の 保全が樹林景観、ひいては 農村景観の維持、改善に直接的な影響をもっと推察された。

II. 屋 敷 林 に つ い て の 地 域 住 民 に よ る 評 価 の 現 状 と 、 今 後 求 め ら れ て い る 方 向 性 の 確 認 地 域 住民 によ る屋 敷沐 の 機能評価につ いて把握し、今後の平地農村 地域において留意すべき屋 敷林機能を把握 した 。その結果、微気象改善機 能、景観機能、夏期微気象改善機能といった機能の評価が高いことカ確認された。

一方 、従来の屋敷林では重要な 機能であった、資材資源機能 や燃料機能の評価が低く、 屋敷林に求められる機能 が変 容した。また、落ち葉の処 理、管理人員の不足といった 維持管理上の問題が指摘さ れた。今後の屋敷林保全 につ いて、両地域とも屋敷林の 所有、非所有を間わずほとん どの被験者が保存に賛成し ていたが、機能保存派、

景観 保存派など、保存の方向性 は相違がみられ、機能評価に も影響していた。よって、 景観機能の向上を目的と した 景観的な役割の把握と今後 への提言、微気象改善機能の 向上を目的とした機能的な 役割の把握と今後への提 言の 両方が必要であると考えら れた。また、集落形態の差に よる機能評価の違いがみら れたことから、それぞれ の集 落形態に留意した方向性の 提案が必要である。

m.微気象および景 観特性の向上の検証

1.微気譲改善機能 の向上を目的とした機能的な 役割の把握

  屋敷林の機能のう ち、微気象改善機能を再検 証し、管理による効果の違い について枝打ち管理を行って検証し た。その結果、冬期 における防風、防雪効果お よび夏期における防風、気温 調節効果が確認され、屋敷林が通年 的、複合的に微気象 改善機能を持ち、かつ十分 有効であることが示された。 また、枝下高の調整を行うことによ り効果が改善され、 枝打ち管理による有効性が 実証された。

2.景観機能の向上 を目的とした屋敷林の景観的 な役割の把握

  屋敷林の機能にお いて、住民に高く評価され 、かつ今後も求められている 景観機能に着目し、住民のもつ農村 景観における樹林の 役割を把握するために、写 真を用いた景観評価実験を行 った。その結果、全般に防風林とい った樹林が大きく写 っている写真の評価が高く 、また、屋敷林の存在が景観 評価を高めることも明らかとなり、

平地農村地域での樹 林の重要性、および樹林の 導入による農村景観評価の向 上が確認された。また、人工的な景 観構成要素が評価を 低めており、樹林によるそ れらの遮蔽効果も確認された 。

W.平地農村地 域における樹林の管理と保 全の方向性の提案

  現在の樹林 の管理形態は主としてその所有者であることが多く、それを負担に感じている住民も多い。そこで、

今後は樹林の 所有者に加えて、地域住民や 行政が一体となって樹林管 理を行っていくことが望ましく、より効果 的な管理体制 が必要と考えられる。次に、 樹林の保全方針について、 屋敷林は、生活中の屋敷林と空き家化した 屋敷の屋敷林 に分類されるが、前者は屋敷 林の改善、主に微気像改善 機能の維持と向上のため、枝打ち等の簡単 な管理を行う こと、後者は、景観面から屋 敷林を存続させることが重 要で、エコツーリズム、環境教育の場等と     −1159―

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しての利用や共同作業空間として活用することを提案した。また、管理主体に関しても、生活屋敷林は所有者個 人を主体とした地域全体での管理、空き家の屋敷林は、散村では地域全体での管理、集村では集落単位を主体と した管理を提案した。また、防風林に関しても、以前よりいわれてきた微気象改善効果だけではなく、乱雑な人 工的景観要素の遮蔽および市街地との境界や緩衝帯としての利用といった、景観面での活用を提案した。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   淺川昭一郎 副査   教授   矢沢正士 副査   教授   笹   賀一郎 副査   助教授   近藤哲也

副査   教授   中島勇喜(岩手大学大学院連合農学研究科)

学 位 論 文 題 名

平地農村景観における樹林の構成と評価に関する研究

― 屋敷 林を 中心 とし て一

    本 研 究 は 、 図89、 表42を 含 み 、7章 か ら な る 総 頁 数143の 和 文 論 文 で あ り 、 別 に6篇 の参考論文が 添えられている。

  農村 地域 に存 在 する屋敷林や防 風林は、防災や微気象改善 機能等を目的として形成され 、平 野 部で 生活 する 人 々にとって最も 生活に密着した身近な樹林 であり、平地農村景観におい ても 重 要な 構成 要素 で ある。しかし、 生活様式等の変化によって 減少傾向にあり、農村景観に も影 響を与えてい る。今後の望ましい農村景観形成には、樹林の保全が重要ナょ課題のひとっであり、

各 々の 樹林 の評 価 と保全と活用に 向けた基礎情報の収集と整 理を行うことが求められてい る。

  本研 究で は、 平 地農 村地 域の 樹林 、 特に 屋敷林を中心とし て、北海道恵庭、山形県庄 内の2 ケ 所を 研究 対象 地 に、I)樹 林 の現 状と 変遷 の把握、II)屋 敷林にっいての地域住民によ る評 価 の現 状と 今後 求 めら れて いる 方向 性 の確 認、m)微気象改 善および景観機能の向上の検 証、

N)樹林の管理 と保全の方向性の提案を行っ ている。

  I. 樹林 の 現状 と変 遷の 把 握  

研究 対象 地域 の概 況にっいて、土 地利用形態と樹林の変化傾 向について調査した。その結 果、

両地 域と も強 い季 節風が吹き、そ れらに対応した屋敷林や防 風林が成立していること、恵 庭は 散村 景観 、庄 内は 集村景観といっ た集落形態の違いが両地域 の景観特性となり、樹林も恵 庭で はそ の種 類が 多く 多様性があるの に対し、庄内では屋敷林が 主体となっていることを示し た。

さら に、 両地 域と も土地利用形態 、樹林の量はともに大きく 変化したが、恵庭では、樹林 の種 類の 割合 が大 きく 変化し、都市化 の影響もみられること、庄 内では樹林が大幅に減少し、 ひい ては 、樹 林景 観自 体の消失の危険 性をも含んでいることを明 らかにした。また、屋敷林は 両地 域と もに 減少 傾向 にあり、特に庄 内は樹林の殆どが屋敷林で あることから、屋敷林の保全 が農

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村景観の 維持、改善に直接的な影響をもっと推察している。

  n.地 域 住 民 に よ る 屋 敷 林 に っ い て の 評 価 と 今 後 求 め ら れ て い る 方 向 性 の 確 認   地域 住民 によ る屋敷林の機能 評価について分析し、結果と して、微気象改善機能、景 観機能 の 評価 が高 く、 従来は重要な機 能であった資材資源機能や燃 料機能の評価が低く、屋敷 林に求 め られ る機 能が 変容しているこ とを明らかにした。一方、今 後の屋敷林にっいて、両地 域とも ほ とん どの 被験 者が保存に賛成 していたが、その方向性に関 しては微気象改善機能を重 視する 住 民と 景観 機能 向上を重視する 住民に大きく分かれた。また 、集落形態の差による機能 評価の 違 いが 明ら かで あることを示し 、今後の保全への提案にはこ れらの視点が必要であるこ とを指 摘 した 。、

  m.微気 象 改善 機能 およ ぴ 景観 機能 の向 上の 検 証

  屋 敷林 の 機能のうち、微気象 改善機能に関して樹林によ る効果の検証を行うと共に枝 打ち管 理に よる 機 能の向上を検証した 。その結果、冬期における 防風、防雪効果およぴ夏期に おける 防風 、気 温 調節効果が確認され 、屋敷林が通年的、複合的 に微気象改善機能を持ち、か つ十分 有 効 で あ る こ と を 示 し た 。 ま た 、 枝 打 ち 管 理 に よ る 効 果 の 改 善 の 有 効 性 を 実 証 し た 。   景 観機 能 については、住民の もつ農村景観における樹林 の役割を把握するために、写 真を用 いた 景観 評 価実験を行った。そ の結果、樹林が大きく写っ ている写真の評価が高く、ま た、屋 敷林 の存 在 が景観評価を高める ことを明らかにし、農村景 観の向上に樹林が重要である ことを 示し た。 一 方、人工的詮景観構 成要素が景観の評価を低め ることと、樹林によるそれら の遮蔽 が謌 価を 高 める こと を確 認 して いる 。

  N.樹林の管理と保全の方 向性の提案

今後 の屋 敷昧 の保 全 に関 して 、所 有 者の みに よる 管理 の 困難性 から、地域住民や行政が―体 とナょって樹林管理を行っ ていくことが望ましく、より 効果的な管理体制の必要性を指摘してい る。 特に 屋敷 林の保全方針について、 居住者中の屋敷では、主に 微気象改善機能の維持と向上 のた め、 枝打 ち等の簡単な管理を行う こと、空き家の屋敷では、 景観面から屋敷林を存続させ るこ とが 重要 で、エコツーリズム、環 境教育の場等としての利用 や共同作業空間として活用す るこ とを 提案 している。また、管理主 体に関しても、前者の屋鮴 木では居住者を主体としなが らも 地域 全体 での管理、後者の屋敷林 に関しては、散付では地域 全体での管理、集村では集落 単位を主体とした管理を提 案している。さらに、防屈, 林に関しても、防風機能だけではなく、

乱雑 な人 工的 景観要素の遮蔽およぴ市 街地との境界における緩衝 帯としての利用といった新た な活用策を提案している。

  以上 のように、本研究は、平地 農村景観における樹林の構成 と評価を、屋敷林を中心として集 村と散 付の事例を通して明らかに し、今後の保全の方向性を示 した。その成果は学術的・応用的 に高く 評価される。

  よっ て 審査 員一同は、岡田穣 が博士(農学)の学位を受 けるに十分な資格を有するも のと認 めた。

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