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博 士 ( 農 学 ) 田 崎 弘 之 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 田 崎 弘 之

学 位 論 文 題 名

ナ ス 科 植 物 に 含 ま れ る 生 理 活 性 物 質 と そ の 配 糖 体 成 分 の 化 学 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ナ ス 科 植 物(Solanaceae)は , ナ ス ,卜 マ ト , 夕 バコ , ペ チ ュ ニア な ど を 含み 全世 界に約90 属2000種 ある。 観賞 用とし てぺチ ュニア ,バ ンマツ リフュ サンゴ ,ルリ ヤナ ギ,ホ オズキなどが あり ,食用 として ナス, トマ卜 ,卜 ウガラ シ,ピ ーマン ,バ レイシ ョがあ る。ま たアルカ口イド 含有 植物が 多くヒ ヨス, ベラド ンナ ,チョ ウセン アサガ オ, ハシリ ドコ口 ,クコ ,イヌホオズキ 等は 薬用植 物とし て利用 され, 高等 植物の 中でも 大きな 比重 をしめ ている 。その 中でタバコ,バ レイ ショ, トマト ,ナス といっ たよ うな栽培作物は人類の生活に深くかかわっている植物である。

これ ら植物 の成分 の研究fま 古くか ら行わ れ数 多くの 化学物 質の単離同定が成されてきた。著者は 本研 究にお いてナ ス科植 物の配 糖体 成分に っいて その存 在と 生理活 性を明 らかに することを目的 とし て,代 表的な ナス科 植物で ある バレイ ショ, 夕バコ から 一連の イオノ ―ルお よびセスキテル ペン 配糖体 の単離 ,構造 決定を 行う ととも に,チ ュベロ ン酸 グルコ シドの 生理活 性にっいて検討 した 。すな わち, 第一部 におい てバ レイシ ョ葉か ら単離 構造 決定さ れた塊 茎形成 誘導物質チュベ 口ン 酸グル コシド の生理 活性に っい て構造 活性相 関の点 から その誘 導体に っいて 塊茎形成誘導活 性を 調べそ の活性 型の立 体構造 にっ いて検 討を加 えた。 また 塊茎形 成時の ポルア ミン量の変動,

塊 茎形 成 誘 導 活 性 を有 す る 物 質 の活 性 を 調 べ た。 塊 茎 形 成 誘導 物 質 の 利 用 法とし てマ イク口 チュ ーバ一 生産系 への適 用を試 みた 。第二 部では 代表的 なナ ス科植 物であ るタバ コ,バレイショ に っい て そ の 配 糖 体成 分 に っ い て存在 を調べ ,さら に根 から分 泌され る物質 の存在 を調 べた。

  ま ず , チ ュ ペロ ン 酸 グ ル コシ ド(TAG) の 構 造 確 認の た め,こ れを合 成し2種類 のジア ステ レ オ マ一 混 合 物 を 得 た。 こ れ を 高 速液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー(HPLC)に て 分 離 精製 後,合 成品 と 天 然 物 の'H一NMRの ス ペ ク ト ル デ ー タ を 比 較 検 討 し 天 然 物 の 側 鎖 の 立 体 化 学 を2S3Rと 決 定 し た 。 合 成 し た チ ュ ベ 口 ン 酸 グ ル コ シド の 塊 茎 形 成誘 導 活 性 はTAGの ほ う がイ ソ 一TAGよ り も強 か っ た。さ らに 合成し た類縁 体の塊 茎形 成誘導 活性を 比較し ,塊茎 形成 誘導は3力 所の必

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須部分構造と側鎖の立体化学により左右されることが明らかにした。そこで,3っの不斉中心に よって8っの光学 異性体が生ずるククルビン酸メチル(methyll―hydroxyー2‥ (2 ‑ (Z)

‑ pentenyl)cyclopentaneー3ーacetate)を ジャスモン酸メチルから調 製し,HPLCにて4 っのジアステレ オマーに分離精製し,各種NMRスペクトルの測定からそれぞれの相対配置を 决定した後,光学分割カラムを用いて8っの光学活性体に分離した。これらにっいてジャスモン 酸メチルヘの再変換物の比旋光度を測定し各絶対構造を決定した後,塊茎形成誘導活性を比較し た。その結果,2S1 3R体かもっとも活性が高かった。このことから,ジャスモン酸の立体化 学が塊茎形成誘導活性に関与することを明らかにした。

  新しい種いも生産系として期侍されるマイ夕口チュ―バ一大量培養系にジャスモン酸メチルを 利用する方法を 検討した。その結果,Lアスコルビン酸等強い還元性を有する物質をLS液f本 培地にジャスモン酸メチルと同時に添加することにより,継代培養したバレイショ無菌茎断片の 節部に塊茎形成を誘導することを見いだした。

  チュベ口ン酸グルコシドによる塊茎形成誘導の機作を調べるため,塊茎形成時に起こる現象に っいて観察,倹討した。塊茎形成が起こる初期の過程でスト口ン先端の細胞壁微小管がいヮたん 消失し塊茎形成が始まるのではないかという考えに基づきメイクイーンの培養細胞にジャスモン 酸 メ チ ル を 作 用 さ せ た 。 そ の 結 果 , 微 小 管 に 対 す る 消 失 効 果 が 確 認 さ れ た 。   また,無菌植物を用いて塊茎形成期における生体内のポリアミン量の変動を,プトレシン,ス ペルミジン,スペルミンにっいて調べたところ,塊茎形成初期にそれぞれいったんポルアミン量 が増加しその後減少し,器官分化の際にポリアミンの生成が一時的に増加することが明らかに なった。

  また,艇蘭植物を用いて塊茎形成期における生体内のポルアミン量の変動を,プトレシン,ス ペルミジン,スペルミンにっいて調べたところ,塊茎形成初期にそれぞれいったんポルアミン量 が増加しその後減少し,器官分化の際にポリアミンの生成が一時的に増加することが明らかに なった。

  バレイショ葉(男爵)中の配糖体成分の存在にっいて検討した。バレイショ葉のメタノ―ル抽 出物から凋製して得た不揮発性画分を声亠グルコシダーゼで処理して遊離したアグルコンをGC

‑MS分キ斤により 検索し,3−―オキソアクチニジオール,3―オキソ‑d−イオノール,3―ヒ ド口キシーロ― イオノール,3,6亠工ポキシ ー3,6亠ジヒド口‑5ーヒド 口キシー8ーイオ ノール,3‑ロ―ダマスコンの7っのイオノール配糖体,ルビミンの配糖体の存在を確認した。

これらは遊離のアグリコンとしては検出されなかヮた。イオノール配糖体がナス科でタバコ以外

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にも存 在す ること が明ら かにな った 。

  バレ イショ 葉中に 存在す るイ オノー ル配糖 体の種 類お よび存 在量を バレイショの成長過程に応 じた各 ステ ージご とに検 討した 。そ の結果 ,バレ イショ の成長 とと もに種 類および存在量がとも に増加 し, 最終ス テージ で急激 に増 大した 。この 結果は タバコ のイ オノー ル配糖体の経時変化と 種類は 異な るがよ く一致 してい た。

  黄 色 種 葉 た ぱこ 中 に 存 在 する 配 糖 体 成 分に っ いて調 ベ6っの新 規セス キテ ルペン 配糖体 を単 離,構 造決 定した 。うち4っ のアグ リコンfま ソラナ スコ ン骨格 を有す る新規化合物であった。こ れらの アグ リコン はすべ てタバ コの ファイ トアレ キシン として 知ら れるセ スキテルペンあるいは そのヒ ド口 誘導体 であっ た。

  タバ コにっ いてそ の根か ら分 泌され る物質 の検索 を水 耕,れ き耕, 根端培養により得た培養液 を 用い て 行 い , 抗菌 活 性 が知ら れてい る6っのセ スキテ ルペン を単 離,同 定した 。この うち1つ fま タバコ 葉から 初め て見い だされ たセス キテ ルペン であり,根には葉とは馴の生合成系でこれら がっく られ ること が示唆 された 。

  配糖 体成分 はその 分離精 製の 難しさ もあっ て比較 的最 近まで 未着手 であったが,本研究ではナ ス科の テル ペン配 糖体に 関する 知見を得ることができた。また,バレイショ塊茎形成誘導物質チュ ベロン 酸グ ルコシ ドに代 表され るジ ャスモ ン酸類 の生理 活性と 立体 化学の 関係を明らかにすると と も に , こ れ を マ イ ク ロ チ ュ ー バ 一 生 産 系 に 利 用 す る 技 術 を 開 発 し 確 立 さ せ た 。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    市 原 耿 民 副 査    教 授    水 谷 純 也 副査   助教授   吉原照彦

  本 論 文 は 第 一部7章 , 第二 部5章の180頁か らなり ,表18,図98, 引用 文献118を含 む。ほ かに 参考論 文8編が添 えら れてい る。

  ナス 科植物 は食用 ,薬用 ,観 賞用と して人 類の生 活と深 いか かわり がある が,それらの成分と して含 まれ る生理 活性物 質に関 しては 未解 明の部 分が少 なくな い。

  本論 文の第 一部で はバレ イシ ョ葉か ら単離 ・構造 決定さ れた 塊茎形 成誘導 物質,チュベ口ン酸

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グルコシド(TAG)にっき論述している。

  第一章では立体構造 の確定にっき述べており,TAGを合成し2種類のジアステレオマー混合 物を得ている。これを 高速液体ク口マトグラフィー (HPLC)にて分離精製後,合成品と天然 物の 高分 解 能核 磁気 共鳴 スペ ク トル(NMR)を比較 検討することにより,TAGの 立体化学を 2S,3Rと決定した。ま た,合成した標品を用いて塊 茎形成誘導活性を比較したところ,TAG のほうがイソTAGより高い活性を有することが明らかとなった。

  第二章〜第四章はTAGの生理活性に関連して,類縁体の構造―活性相関を詳細に検討し次の 結果を得ている。まず,ジャスモン酸類縁体を多数調製し,それらの塊茎形成誘導活性を比較す ることにより,塊茎形 成誘導は3ケ所の必須部分構 造とC―2,C―3位の立体化学により左右 されることを明らかにしている。さらにこの点を明確にするため,3っの不斉中心により8個の 光学異性体が可能なククルビン酸メチルを選び,ジャスモン酸メチルから,これらの光学異性体 の全てを調製した。即 ちジャスモン酸メチルを還元 して,HPLCによる精製を行い,4個のジ アステレオマーを分離 し,それぞれの相対配置をNMRで確定した。さらに光学分割用カラム を用いて,各ジアステレオマーの光学活性体を調製した。この際絶対配置はジャスモン酸メチル ヘ再変換したものの比施光度を測定することにより決定した。光学異性体のなかで,塊茎誘導活 性は2R,3S体が最も高 かヮたことから,ジャスモン酸の結果とも一致することを確認した。

  第五章は種いも生産系へのジャスモン酸メチルの利用にっいて述べたものである。ジャスモン 酸メチルとL―アスコルビン酸等高い還元性を有する物質を倍地に添加することにより,継代培 養 し た バ レ イ シ ョ 無 菌 茎 断 片 の 前 部 に 塊 茎 形 成 を 誘 導 す る こ と を 見 出 し て い る 。   第六章は塊茎形成誘導の機作にっいて述べられている。塊茎形成が起こる初期の過程でスト口 ン先端の細胞壁微小管がいったん消失し,塊茎形成が始まるのではないかとの推察に基づき,メ イクイーンの培養細胞にジャスモン酸メチルを作用させたところ,微小管の消失効果が確認され ている。また,無菌植物を用いて塊茎形成期における生体内ポリアミン量の変動を,プトレシン.

スペルミジン,スペルミンにっいて調ベ,塊茎形成初期に一時的にポリアミン量が増加し,その 後徐々に滅少することを立証している。

  第七章は第一部第一章〜六章の実験部である。

  第二部では代表的ナス科植物であるバレイショ,タバコにっいてその配糖体成分とこれらの根 から分泌される物質の存在を調べている。

  第一章―第二章はバレイショ葉中のTAG以外の配糖体成分とそれらの成長過程における存在 量を検討し,イオノール配糖体の変動はタバコの場合とよく一致することを明らかにしている。

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  第三章は黄色種葉タバコ中に含まれる配糖体成分にっいて精査し,6個の新規セスキテルペン 配糖体を単離し,構造を確定している。これらの配糖体のうち,4個のアグリコンはソラナスコ ン骨格を有する新規化合物で,全てタバコのファイ卜アレキシンとして知られているセスキテル ペンに近縁の化合物であることを確認している。

  第四章は第二部第一章〜第三章の実験部である。

  以上のように本研究はバレイショ塊茎形成誘導物質チュベ口ン酸グルコシドとジャスモン酸類 の立体化学と生理活性の関係を明らかにし,これをマイク口チューバ一生産系に利用する技術を 開発するとともにバレイショ,夕バコなどのナス科植物のテルペン配糖体にっき,貴重な知見を 提供したものである。これらの成果は生物有機化学のみならず,農業技術の面からも高く評価さ れる業績である。

  よって,審査員一同fま別に行った学力確認の結果とあわせて,本論文の提出者,田崎弘之は博 士(農学)の学位を受けるに十分な資格あるものと認定した。

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