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博士(農学)劉 安軍 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)劉   安軍 学位論文題名

鶏の成長および鶏肉の熟成に伴う 筋肉内結 合組織の変化に関する研究

学位論文内容の要旨

  本論文は総頁数102頁の和文論文で,図41,表1および弓|用文献82からなり,他に3 篇の参考論文が添えられている。

  食肉の品質を決める要因の中で軟らかさは人の嗜好性にとって最も重要である。食 肉の軟らかさは結合組織に起因する部分と筋原線維の性状に起因する部分からなって いる。結合組織に関しては,主成分であるコラーゲン細線維を形成するコラーゲン分 子間の架橋結合は動物の成長と共に安定な成熟架橋ヘ転換するのでコラーゲン細線維 は堅牢になる。この変イヒは筋肉内結合組織である筋内膜潟よび筋周膜の堅牢化を招く ことになり,老齢な家畜から生産される食肉は硬くて品質が劣る原因となっている。

一方,家畜の骨格筋を食肉として利用する場合には屠畜後に一定の熟成期間が必要で あり,鶏肉の場合は半日なぃし1日であるが,この問に食肉は軟化し風味も改善され て食昧が向上する。熟成に伴う筋肉内結合組織の変化については,これまでに多くの 研究が行われてきたが,熟成に伴うコラーゲンの分子レベルの変化についての明確な 結論が得られていなぃ。本研究は,鶏肉の軟らかさに密接に関連している筋内膜およ び筋周膜の生化学的特性翁よび構造が鶏の成長に伴ってどのように変化するかを詳細 に検討すると共に,鶏肉の熟成に伴うコラーゲンの性状変化および筋肉内結合組織を 構築しているコラーゲン細線維の構造変化の機構を解明することを目的としている。

(1)鶏の成長に伴う筋肉内結合組織の変化

  単位湿重量の骨格筋に含有される総タンパク質量は,鶏の成長に伴い増加し,孵化 後30週齢以後は一定値となった。成長に伴うコラーゲン含量に関しては30週齢まで変 化は見られず,ほば一定の値で推移したが,30週齢以降,やや増加する傾向を示した。

一方,骨格筋線維に対して垂直方向の剪断応カを測定した結果,成長の初期段階であ る12週齢までは剪断力価はほとんど変化しなかったが,12週齢以降は直線的に増加し た。これらの事実は鶏肉の軟らかさを決定するのは筋肉内結合組織あるいはコラーゲ ンの 含量ではな く,それら の性状変化 に大きく依存していることを示している。

  剪断力価が増加する原因を解明するために鶏の成長に伴うコラーゲンの性状変化を 追究 した。筋肉 内結合組織の1%SDS不溶性画分の含量は鶏の成長に伴い増加し,72 週齢の鶏における値は2週齢の鶏の値の約2倍となった。また,1a/o SDS不溶性画分 をSDSポリアク リルアミドゲル電気泳動に供試した結果,コラーゲンのai鎖および

(2)

a2鎖の割合は4週齢までに急激に減少し,その後30週齢まで徐々に減少した。30週齢 の鶏 の筋肉 内結 合組 織1%SDS不 溶性 画分 におけるal鎖およびa2鎖の割合は2週齢 の鶏の値に比べてそれぞれ11%,16%低下した。一方,ロ11鎖,序12鎖,y鎖および y鎖以上の高分子量成分は30週齢までにそれぞれ1%,10%,3%および4%増加した。

筋肉内結合組織を形成するコラーゲンの加熱溶解性は成長に伴い徐々に減少する傾向 が認められ,コラーゲンの加熱溶解性画分のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に よる分析では,低分子量成分であるai鎖韜よびa2鎖の割合は成長に伴って滅少し,

p鎖 以 上 の 高 分 子 量 成 分 の 占 め る 割 合 が 増 加 す る こ と を 確 認 し た 。   光学顕微鏡による観察の結果,孵化直後の鶏の骨格筋では筋内膜および筋周膜の区 別が不明瞭で,不連続的な構造が観察された。しかし,16週齢以降の骨格筋では,筋 内膜および筋周膜ともに連続性をもった緻密な構造が観察され,筋肉内結合組織の厚 さが成長に伴い顕著に増加することが明らかになった。

  従って,鶏の成長に伴う鶏肉の硬さの増加は,.コラーゲンの加熱溶解性が低下する ことと併せて,筋内膜および筋周膜が発達し,それらの構造が緻密化することによっ て引き起こされると結論している。

(2)鶏肉の熟成に伴う筋肉内結合組織の脆弱化機構

  鶏肉の熟成過程で筋内膜および筋周膜に由来する鶏肉の剪断力価が顕著に減少する ことを見いだし,熟成に伴い筋肉内結合組織が脆弱になることを明らかにした。筋肉 内結合組織の脆弱化の原因を解明するために熟成に伴う筋肉内結合組織の構造および 生化学的特性の変化を追究した。

  4℃で熟成した鶏肉の筋肉内結合組織について,走査電顕により経時的な構造変化 を追跡すると熟成6時間目までは変化が認められなかった。しかし,12時間目以降で は筋肉内結合組織に間隙が認められるようになり,緻密なシート状構造であった筋内 膜は薄いレース状に崩壊し,筋周膜を構築してるコラ―ゲン線維はコラーゲン細線維 あるいはコラーゲン細線維束にほぐれることが明らかになった。このような構造変化 の 過 程 で , コ ラ ー ゲ ン 細 線 維 自 体 の 構 造 変 化 は 全 く 認 め ら れ な か っ た 。   また,屠殺直後の鶏の骨格筋では筋内膜および筋周膜はコラーゲンの糖鎖を特異的 に染色するPAS試薬によって染色されなかったが,熟成に伴いPAS試薬に対する染色 性が増大し,熟成12時間目では筋内膜および筋周膜はともに強く染色されるようにな った。この染色性の変化は筋肉内結合組織の構造変化とよく一致している。これらの 事実は,筋肉内結合組織に存在する無定形基質が鶏肉の熟成に伴いコラーゲン細線維 から徐々に解離してコラーゲンの糖鎖が露出するために,PAS試薬が反応できるよう になったことを示しており,筋肉内結合組織構造の脆弱化と密接に関連していると考 えられる。他方,鶏肉を長時間熟成した場合でも,筋肉内結合組織を形成するコラー ゲンの加熱溶解性,中性塩および1c70 SDSに対する溶解性はいずれも変化しなかった こと ,およ び1%SDS可溶 性画 分に 存在す るコ ラ― ゲンのa鎖, ロ鎖,y鎖およびy 鎖以上の高分子量成分はいずれも変化しなかったことから,鶏肉の熟成中に起こる筋 肉内結合組織構造の脆弱化はコラーゲンの分子レベルにおける変化ではなく,コラー ゲン細線維間を接着する無定形基質の変化のよるものであることを明らかにした。

  以上の結果から,筋肉内結合組織の脆弱化は鶏肉の熟成後期に見られる軟化に寄与

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して翁り,熟成初期に起こる軟化は筋原線維構造の脆弱化によるものであると結論し ている。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

高橋興威 齋藤善一 近藤敬治 服部昭仁

学 位 論 文 題 名

鶏 の 成 長 お よ び 鶏 肉 の 熟 成 に 伴う 筋肉 内結合組織の変化に関する研究

  本 論 文 は 総 頁 数102頁 の 和 文 論 文 で , 図41, 表1お よ び 弓f用 文 献82か ら な り , 他 に 3篇 の 参 考 論 文 が 添 え ら れ て い る 。

  食 肉 の 品 質 を 決 め る 要 因 の 中 で 軟 ら か さ は 人 の 嗜 好 性 に と っ て 最 も 重 要 で あ る 。 食 肉 の 軟 ら か さ は 結 合 組 織 に 起 因 す る 部 分 と 筋 原 線 維 の 性 状 に 起 因 す る 部 分 か ら な っ て い る 。 食 肉 を 利 用 す る 場 合 に は 屠 畜 後 に 一 定 の 熟 成 期 間 が 必 要 で あ り , 鶏 肉 の 場 合 は 半 日 な ぃ し1日 で あ る 。 熟 成 期 間 に 食 肉 は 軟 化 し 風 味 も 改 善 さ れ て 食 味 が 向 上 す る 。 本 研 究 は , 鶏 肉 の 軟 ら か さ に 密 接 に 関 連 し て い る 筋 肉 内 結 合 組 織 で あ る 筋 内 膜 お よ び 筋 周 膜 の 生 化 学 的 特 性 お よ び 構 造 が 鶏 の 成 長 に 伴 っ て ど の よ う に 変 化 す る か を 詳 細 に 検 討 す る と 共 に , 鶏 肉 の 熟 成 に 伴 う コ ラ ー ゲ ン の 性 状 変 化 お よ び 筋 内 膜 お よ び 筋 周 膜 を 構 築 し て い る コ ラ ー ゲ ン 細 線 維 の 構 造 変 化 の 機 構 を 解 明 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 得 ら れ た 結 果 は 以 下 の 通 り で あ る 。

(1)鶏 の 成 長 に 伴 う 筋 肉 内 結 合 組 織 の 変 化

  成 長 に 伴 う 筋 肉 内 結 合 組 織 コ ラ ー ゲ ン の 含 量 は ほ と ん ど 変 化 し ぬ か っ た 。 一 方 , 剪 断 カ を 測 定 し た 結 果 , 成 長 の 初 期 段 階 で あ る12週 齢 ま で は 剪 断 力 価 は 変 化 し な か っ た が ,12週 齢 以 降 は 直 線 的 に 増 加 し た 。 こ れ ら の 事 実 は 鶏 肉 の 軟 ら か さ を 決 定 す る の は 筋 肉 内 結 合 組 織 コ ラ ― ゲ ン の 含 量 で は な く , そ れ ら の 性 状 変 化 に よ る こ と を 示 し て い る 。 剪 断 力 価 が 増 加 す る 原 因 を 解 明 す る た め に 鶏 の 成 長 に 伴 う コ ラ ー ゲ ン の 性 状 変 化 を 追 究 し た 。 筋 肉 内 結 合 組 織 の1SDS不 溶 性 画 分 の 含 量 は 鶏 の 成 長 に 伴 い 増 加 し ,72週 齢 の 鶏 に お け る 値 は2週 齢 の 鶏 の 値 の 約2倍 と な っ た 。 ま た ,1 SDS不 溶 性 画 分 を SDSPAGEに 供 試 し た 結 果 , コ ラ ー ゲ ン の 低 分 子 量 成 分 で あ る al鎖 お よ びa2鎖 は 成 長 に 伴 っ て 減 少 す る に 対 し ,y鎖 以 上 の 高 分 子 量 成 分 が 増 加 し た 。 筋 肉 内 結 合 組 織 を 形 成 す る コ ラ ー ゲ ン の 加 熱 溶 解 性 は 成 長 に 伴 い 徐 々 に 減 少

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する傾向が認められ,コラーゲンの加熱溶解性画分のSDSーPAGEによる分析では,

低分子量成分は成長に伴って減少し,高分子量成分が増加することを確認した。ま た,光顕による観察の結果,孵化直後の鶏の骨格筋では筋内膜紹よび筋周膜の区別 が不明瞭で,不連続な構造が観察されたが,16週齢以降の骨格筋では,筋内膜およ び筋周膜ともに連続性をもった緻密な構造が観察され,筋肉内結合組織の厚さが成 長に伴い顕著に増加することが明らかになった。従って,鶏の成長に伴う鶏肉の硬 さの増加は,コラーゲンの高分子量成分が増加して加熱溶解性が低下することと併 せて,筋内膜および筋周膜が発達し,それらの構造が緻密化することによって惹起 されると結論している。

(2)鶏肉の熟成に伴う筋肉内結合組織の脆弱化機構

  鶏肉の熟成過程で筋内膜紹よび筋周膜に由来する鶏肉の剪断力価が顕著に減少す ることを見いだし,熟成に伴いこれらの筋肉内結合組織が脆弱になることを明らか にした。筋肉内結合組織の脆弱化の原因を解明するために熟成に伴う筋肉内結合組 織の構造および生化学的特性の変化を追究した。4℃で熟成した鶏肉の筋肉内結合組 織について,走査電顕により経時的な構造変化を追跡すると熟成6時間目までは変 化が認められなかったが,12時間目以降では,緻密なシート状構造であった筋内膜 は薄いレース状に崩壊し,筋周膜を構築してるコラーゲン線維はコラーゲン細線維 あるいはコラーゲン細線維東にほぐれることが明らかになった。このような構造変 化の過程で,コラーゲン細線維自体の構造変化は全く認められなかった。また,光 顕下で,屠殺直後の鶏の骨格筋では筋内膜韜よび筋周膜はコラーゲンの糖鎖を特異 的に染色するPAS試薬によって染色されなかったが,熟成に伴いPAS試薬に対する 染色性が増大し,熟成12時間目では筋内膜翁よび筋周膜はともに強く染色されるよ うになった。この染色性の変化は上記の構造変化とよく一致している・。これらの事 実は,筋周膜および筋内膜に存在する無定形基質が鶏肉の熟成に伴いコラーゲン細 線維から徐々に解離してコラーゲンの糖鎖が露出するために,PAS試薬が反応でき るようになったことを示している。他方,鶏肉を長時間熟成した場合でも,筋肉内 結合組織を形成するコラーゲンの加熱溶解性,中性塩韜よび1%SDSに対する溶解性 はいずれも変化しなかったこと,および1%SDS可溶性画分に存在するコラーゲンの 低分子量成分および高分子量成分はいずれも変化しなかったことから,鶏肉の熟成 中に起こる筋肉内結合組織構造の脆弱化はコラーゲンの分子レベルにおける変化で はなく,コラーゲン細線維間を接着する無定形基質の変化のよるものであることを 明らかにした。従って,筋肉内結合組織の脆弱化は鶏肉の熟成後期に見られる軟化 に寄与しており,熟成初期に起こる軟化は筋原線維構造の脆弱化によるものである と結論している。

  以上の研究成果は鶏の成長および鶏肉の熟成に伴う筋肉内結合組織の変化を多面 的に追究して多くの新知見を見い出したものであり,学術上応用上貢献するところ が大きく,高く評価される。よって審査員一同は,最終試験の結果と合わせて,本 論文の提出者劉安軍は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと 認定した。

参照

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