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博士(工学)棄原浩平 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(工学)棄原浩平 学位論文題名

新クライモグラフによる気候要素の表示と 屋外熱環境の評価法に関する研究

学位論文内容の要旨

  地球環境時代と言われて久しいが,その一方で,人々は益々快適性・利便性を求めてい るように感じられる.特に人口の集中する都市域においては,ヒー卜アイランド現象や大 気汚染の影響により,空気調和設備による室内環境のコント口ールを積極的に行うように なってきた.しかし;空調設備の充実の結果,都市ではエネルギー消費が増大し,気温の 上昇や二酸化炭素排出の増加をきたす悪循環に陥っている.その一方で,資源の枯渇や地 球温暖化問題から,人々は省工ネルギーにも関心を向けざるを得ず,快適性を求めつっも 省エネルギーを追求しなければならないと言う難しい時代に入っている,現在,省エネル ギーを達成するために,太陽光や風カといった自然工ネルギーを利用する研究が数多くな されているが,これを快適性の追求に当てはめると,再生が不可能な方法で快適環境を作 り出すのではなく,自然工ネルギーを利用して快適環境を創出するという結論に至る.そ の地域の気象的およびェネルギー的特性を生かして都市環境設計・建築環境設計を行えば,

必要以上に無駄なェネルギーを使う事も少なくなり,省エネルギーに繋がる.その為には 都市気候の特性の把握と,環境の温熱性を正しく評価することが必要となる.都市気候に 関しては実測データなどが多く存在して,ある程度の特性把握はなされているが,屋外熱 環境の評価法は未だ確立されていないのが現状である.本研究の目的は,都市気候の特性 の表示法と,屋外熱環境の評価法の確立を第一とするが,本手法を逆順に用いれば,都市 や 地 域 の 環 境 計 画 や , 高 齢 者 ・ 身 障 者 に 特 定 し た 環 境 設 計 も 可 能 と な る .   本研究では,屋外熱環境の評価指標として,米国暖冷房空調学会ASHRAEで採用されて いる標準新有効温度SET*(Standard New Effective Temperature)を,日射の影響を組み込んで 拡張使用している.環境の主4要素(気温・湿度・風速・放射)および人体側の要素(代 謝量・着衣量)の計6要素を考慮しているェSET*は,室内熱環境の評価指標として広く用 いられているが,屋外環境で使用可能な平均放射温度や人体の対流熱伝達率の値まで想定 しておらず,直ちに屋外に適用するのは難しい.そこで本論文では,主に対流環境と放射 環境に着目して論を進めた,これらの問題を解決する基礎として,屋外のような風速の大 きい環境において適用可能な,人体に関する対流熱伝達率の実験式と,日射の影響を加味 した平均放射温度を導出した,このニっを含み,気温と湿度のみで表示している現行のク ライモグラフに代わる,気温・湿度・風速・日射を含む放射を考慮した,新クライモグラ

‑ 979

(2)

フによって屋外熱環境を表示し,さらに日射を勘案した有効放射温度で定義した拡張作用 温度を,Gaggeらの2‑node modelに組み込んで,SET*による屋外環境の評価法を提案する.

本研究において得られた成果を要約し,以下に記す,

  第1章では,研究の背景として,屋外熱環境の特性把握とその評価法の確立の必要性を 論じ,本研究の意義および目的について述べた.

  第2章では,屋外における温冷感評価のための指標に関する代表的な既往の研究を概説 し,本研究の位置づけについて述べた.

  第3章では,人の温冷感評価の基礎となる,人体と環境との熱平衡式について述べた.

  第4章では,平均皮膚温の算出式として皮膚面積比と総合熱伝達率比の積で表される加 重式を提案した,人体と環境間の熱平衡式を基に,部位毎に異なる皮膚表面温の平均化式 を導くと,皮膚の面積比のみならず,各部位と全身の総合熱伝達率の比をも含む形式とな った.本章では,サーマルマネキンを用いて,局所及び全身の総合熱伝達率を求める実験 を,立位及び椅座状態で行った結果から,面積比と総合熱伝達率比の積で表される加重係 数の実測値を求めた,

  第5章では,屋外のような中風速の環境で適用可能な,人体の対流熱伝達率を求めるた めに,サーマルマネキンを用いた実験を行った.また,屋外空間では衣服を着た状態が通 常であることから,着衣量を変化させ,裸体時の対流熱伝達率との比較実験も行った.実 験結果より,静穏状態から4.7m/sまで適用可能な人体対流熱伝達率の実験式を提案した,

さ らに ,着 衣量は人体の対流熱伝達率にほとんど影響を及ぼさないことを確認した.

  第6章では,屋外空間において適用可能な平均放射温度を導出するために,直達放射の みを考慮した有効放射温度と,多重放射を考慮した有効放射温度の二種類の式について述 べた.直達日射,天空拡散日射,地表面からの反射日射,大気放射,地表面・地物面から の長波長放射を考慮した平均放射温度を,有効放射温度として定義した.また,多重放射 を考慮する係数としてIncidence Factorを導入する方法について述ベ,多重放射を考慮した 場合の有効放射温度を導出した.

  第7章では,6章にて提案した有効放射温度を組み込んだ,拡張作用温度,標準作用温 度,SET*の妥当性を検証するために,オープンスペースと,四方を壁面で囲まれた屋外空 間にて被験者実験を行った.被験者は,20分間立位状態にて屋外環境に暴露され,温冷感 を申告すると同時に,温熱に対する生理値を測定し,評価指標との対応をみた.実験結果 より,日射を勘案した有効放射温度を含む作用温度では,統一性のとれた評価を得られな かったが,着衣と熱伝達率を標準化した標準作用温度を用いることで改善された.この結 果より,着衣量や風速が異なる環境では,直接比較できない一般表示の作用温度と同様の 傾向を,日射を考慮した作用温度も有していることを明らかにすると共に,日射を含む有 効放射温度の有効性を確認した.また,日射を考慮した有効放射温度を含むSET*を算出し たところ,温冷感と良い一致を示し,拡張作用温度を用いたSET*の有効性が確認された.

  第8章では,標準気象データを用いて,日本の諸都市の温熱気候図を作成し,その環境 における温熱性の評価を試みた.横軸に拡張作用温度,縦軸に水蒸気圧を配したグラフを 新クライモグラフと称し,都市の熱環境を顕熱,潜熱の両面について視覚的な考察を可能 にした.また,月毎のSET*変化を図示し,各都市の温熱性の評価を行った.新クライモグ

980

(3)

ラフは,気温と湿度のみで表される従来のクライモグラフに比し,気温と湿度はもちろん,

風速や日射を含む放射をも総合的に定量評価できる利点を有する.また,作用温度を横軸,

SET*を縦軸とする,温感気候図を作成し,各都市における温冷感や快適感を図示した.

  第9章では,本研究で得られた成果をまとめ,総括とした.

‑ 981

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    持 田    徹 副 査    教 授    繪 内 正 道 副 査    教 授    窪 田 英 樹 副査   助教授   横山真太郎 副 査    助教 授    長野 克 則

学 位 論 文 題 名

新 ク ラ イ モ グ ラ フ に よ る 気 候 要 素 の表 示と 屋 外 熱 環 境 の 評 価 法 に 関 す る 研 究

  人口 の集 中 する 都市 域におけるヒートアイ ランド現象や大気汚染の深 刻化に伴い,外気取り入れの 空 気調 和の 計 画や 設計 は,より高度化が進ん でいる.しかし,人々が快 適性を追求する事により,エ ネ ルギ ー消 費 の増 大を もたらし,それがさら にヒー卜アイランドや大気 汚染を悪化させるという悪循 環 に陥 って い る. 快適 性を求めつつ省エネル ギーを達成するには,資源 の再生が不可能な方法で快適 環 境を 作り 出 すの では なく,循環可能な自然 工ネルギーを利用して快適 環境を創出しなければならな い .そ の地 域 の気 象的 およびェネルギー的特 性を生かして都市環境設計 ・建築環境設計を行えば,必 要 以上 に無 駄 なェ ネル ギーを使う事も少なく なり,省エネルギーに繋が る.その為には都市気候の特 性 の把 握と , 環境 の温 熱性を正しく評価する ことが必要となる.都市気 候に関しては実測データなど が 多く 存在 し て, ある 程度の特性把握はなさ れているが,屋外熱環境の 総合的評価法は未だ確立され て いな いの が 現状 であ る.このような背景の もと,本論文は,都市気候 の特性の表示法と,屋外熱環 境の評価法の確立を目的としている.

  本 研 究 で は , 屋 外 熱環 境の 評 価指 標と して ,米 国 暖冷 房空 調学 会ASHRAE(American Society of Heating,Refrigerating,and Air‑Conditioning Engineers)で採用されている標準新有効温度SET゛(Standard New Effective Temperature)を,日射 の影響を組み込んで拡張使用している.SET゛は,室内熱環境の評 価 指標 とし て 広く 用い られているが,屋外環 境で使用可能な平均放射温 度や人体の対流熱伝達率の値 ま では 想定 し てお らず ,直ちに屋外に適用す るのは難しい.そこで本論 文では,これらの問題を解決 す る基 礎と し て, 屋外 のような風速の大きい 環境において適用可能な, 人体に関する対流熱伝達率の 実 験式 と, 日 射の 影響 を加味した平均放射温 度を導出した.このニっを 含み,気温と湿度のみで表示 し てい る現 行 のク ライ モグラフに代わる,気 温・湿度・風速および日射 を含む放射を考慮した,新ク ラ イモ グラ フ によ って 屋外熱環境の特性を表 示し,さらに日射を勘案し た有効放射温度で定義した拡 張作用温度 を,Gaggeらの2‑node modelに組み込んで,SET゛による 屋外環境の評価法を提案している.

    ―982

(5)

  本論文は9章より構成され,各章の概要は以下の通りである.

  第1章では,研究の背景として,屋外熱環境の特性把握とその評価法の確立の必要性を論じ,本研 究の意義および目的について述べている.

  第2章では,屋外における温冷感評価のための指標に関する代表的な既往の研究を概説し,本研究 の位置づけを示している,

  3章では ,人の温 冷感評 価の基礎となる,人体と環境との熱平衡式について述べている.

  第4章では,平均皮膚温の算出式として,皮膚面積比と総合熱伝達率比の積で表される加重式を提 案している.人体と環境間の熱平衡式を基に,部位毎に異なる皮膚表面温の平均化式を導くと,皮膚 の面積比のみならず,各部位と全身の総合熱伝達率の比をも含む形式が導かれ,実験より得られた熱 伝達率を代入することで,平均皮膚温算出の具体式を示している.

  第5章では,屋外のような中風速の環境で適用可能な,人体に関する対流熱伝達率を求めるために,

サーマルマネキンを用いた実験を行っている.また,屋外空間では衣服を着た状態が通常であること から,着衣量を変化させ,裸体時の対流熱伝達率との比較実験も行っており,その結果より,静穏状 態 か ら 4.7m/sま で 適 用 可 能 な 人 体 対 流 熱 伝 達 率 の 実 験 式 を 提 案 し て い る .   第6章では,屋外空間において適用可能な平均放射温度を導出するために,直達放射のみを考慮し た有効放射温度と,多重放射を考慮して得られる有効放射温度の二種類の式を比較検討している.直 達日射,天空拡散日射,地表面からの反射日射,大気放射,地表面・地物面からの長波長放射などを 考慮した平均放射温度を,有効放射温度として定義している.また,多重放射を考慮する係数として Incidence Factorを導入する方法について述べ,多重放射を考慮した場合の有効放射温度を導出してい る.

  第7章では,6章にて提案した有効放射温度を組み込んだ,拡張作用温度,標準作用温度,SET* 妥当性を検証するために,オープンスベースと,四方を壁面で囲まれた屋外空間にて被験者実験を行 っている.被験者を20分間立位状態で屋外環境に暴露し,温冷感を申告させると同時に,温熱刺激に 対する生理応答を測定し,評価指標との対応を取っている,実験結果より,日射を勘案した有効放射 温度を含む作用温度では,統一性のとれた評価を得られなかったが,着衣と熱伝達率を標準化した標 準作用温度を用いることで改善している,この結果より,着衣量や風速が異なる環境では,直接比較 できない一般表示の作用温度と同様の傾向を,日射を考慮した作用温度も有していることを明らかに すると共に,日射を含む有効放射温度の有効性を確認している.また,日射を考慮した有効放射温度 を含む標準作用温度,SET*を算出したところ,温冷感と良い一致を示し,拡張作用温度を用いた標準 作用温度,SET*の有効性を確認している.

  第8章では,標準気象データを用いて,日本の諸都市の温熱気候図を作成し,屋外環境における温 冷感の評価を試みている.横軸に拡張作用温度,縦軸に水蒸気圧を配したグラフを新クライモグラフ と称し,都市の熱環境を顕熱,潜熱の両面について視覚的な考察を可能にしている.また,月毎のSET*

変化を図示し,各都市の温熱性の定量評価を行っている,新クライモグラフは,気温と湿度のみで表 される従来のクライモグラフに比し,気温と湿度はもちろん,風速や日射を含む放射をも総合的に判 読できる利点を有する,また,作用温度を横軸,SET*を縦軸とする温感気候図を作成し,各都市にお ける温冷感や快適感を図示している.

   9章 で は , 総 括 と し て 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を ま と め て 述 べ て い る .     ー983

(6)

  これを要するに,著者は熱伝達論と温熱生理・心理特性を基礎にした,屋外熱環境の評価法を確立 し,それを用いて,気象データから各都市の熱環境を把握できる新クライモグラフ,および温感気候 図を作成した.この手法を用いることにより,その地域に適した環境設計を行うことが可能となり,

さらに高齢者や身障者が快適に過ごせるような都市空間の創出に寄与するものと期待され,都市環境 工 学 な ら び に 人 間 環 境 計 画 学 の 進 展 に 寄 与 す る と こ ろ , 大 な る も の が あ る .   よ って 著 者は ,北海 道大学博 士(工 学)の学 位を授与 される 資格があ るもの と認める .

984

参照

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