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博 士 ( 工 学 ) 西 村 茂 樹 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 西 村 茂 樹

学 位 論 文 題 名

立 坑 及 び 斜 坑 掘 さ く に お け る 高 圧 地 下 水 の      止 水 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  日本の 石炭産 業は,1945年以 降戦後 復興 の原動 カとな り,目 ざま しく発 展した。しかし,1960 年 頃か らかげ りが見 えはじ め,一 般炭 の生産 縮小, 製鉄用 原料 炭の増 産が国家政策として計られ て きた 。この 間,原 料炭を 求めて 石狩 炭田の 深部開 発が進 めら れ,古 第三紀の軟弱岩盤に世界で も 類例 を見な い悪条 件下で 大深度 立坑 及び斜 坑が閉 さくさ れて きた。

  著者は ,1954年 から1975年まで 北海道炭鉱汽船株式会社において石狩炭田の深部開発に参画し,

立 坑9本 と 斜坑2本 の 開 さく 工事の 計画, 施工を 担当 した。 この間 ,何本 かの立 坑及 び斜坑 掘さ く で湧 水に悩 まされ ,高圧 地下水 に起 因する 「水突 出」現 象で 排水能 カを超える大量出水に何度 も 見舞 われた 。本論 文は, これら の立 坑及び 斜坑掘 さく工 法に 関する 研究成果,特に深刻な問題 と なっ た高圧 地下水 の止水 に関す る研 究成果 をまと めたも ので ,11章で 構成している。なお,論 文 作成 に当た ヮては ,炭鉱 で開発 され た貴重 な技術 の埋没 を防 ぎ,他 分野への応用促進を計る立 場 を貫 ぬいて いる。

  第1章は 諸論で ,炭鉱 開発 におけ る含水 層突破 の意 義に触 れ,本 論文の 目的と 立場 を述べ てい る 。

  第2章で は,わ が国に おけ る立坑 掘さく 史を概 説し ,従来 からの 立坑掘 さく工 法で あった 交互 法 の限 界から ,同時 法の開 発に至 る経 緯を施 工例を あげて 説明 してい る。特に,同時法における 掘 進 と 築 壁 の工 程 上 の 諸問 題を 明らか にし, 幌内炭 鉱の立 坑掘 さくに おいて 月進行130mの日 本 記 録達 成に至 る過程 での技 術開発 にっ いて詳 述して いる。 また ,真谷 地,平和,夕張新炭鉱にお け る 同時法 による4本 の立坑 掘さ くの工 事概況 を説明 し,巻 上設 備,ス カフオ ード, 移動 枠,穿 孔 機お よび積 込機等 の掘さ く機材 の改 良と掘 さく能 率の向 上に っいて 論述している。更に,深部 開 発に おける 斜坑掘 進法に っいて も略 述して いる。

  第3章で は,立 坑及び 斜坑 掘さく におい て湧水 の存 在がい かに多 くの問 題を提 起す るかに っい

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て 述ベ, 湧水に よる工 程の 遅延に っいて 施工例 をあ げて説 明して いる。 また,湧水が単に掘さく 能 率を低 下させ るだけ でな く,そ の炭鉱 の閉山 まで 排水費 の増加 にっな がることから,完全止水 の 重要性 をカ説 してい る。

  第4章で は,炭 鉱開 発の主 要フィ ールド となっ た夕 張炭田 南部の 地質に っい て述べ ている 。こ の 中で立 坑及び 斜坑の 掘さ く対象 となった幌内層群と石狩層群の岩質を説明し,上部から幌内層,

幾 春 別層及 び若鍋 層の 特定層 が含水 層であ るこ とを指 摘して いる。 第5章では ,夕張 新炭 鉱の開 発 計画で 新しく 試みた 地質 構造の 解析方 法と解 析結 果にっ いて論 述して いる。開発計画に当たっ て は,こ の解析 結果か ら断 層や背 斜軸な どの地 質構 造に関 する従 来の考 え方を修正し,立坑及び 斜 坑の位 置を断 層など の擾 乱地帯 を避け て決定 して いる。 なお, この数 理地質学的解析法の有効 性 は開さ く工事 の進捗 過程 で実証 されて いる。

  第6章で は,夕 張新 炭鉱に おける 湧水の 物理的 及び 化学的 性状に っいて 述べ ている 。湧水 の物 理 的性状 に関し ては, 水温 及び水 圧の計 測結果 を示 し,湧 水が浸 透では なくき裂を通して起こる こ とを指 摘して いる。 また ,化学 的性状 に関し ては ,溶存 イオン の濃度 分析結果を示し,塩素イ オ ン とカル シウム イオ ンの濃 度比に よって 湧水 を地表 水型, 混合水 型及び 化石 水型の3種 類に分 類 してい る。更 に,化 石水 の溶存 ガス量 にっい て検 討を加 え,メ タンの 溶解度係数から高圧地下 水 による 「水突 出」の 発生 を示唆 してい る。

  第7章で は,掘 進切 羽の事 前止水 工法を 提案し ,平 和炭鉱 第三立 坑,夕 張新 炭鉱第 一立坑 ,第 二 立坑, 材料斜 坑及び べル ト斜坑 におけ る止水 工事 の成功 例と失 敗例を 説明している。止水工法 の 実施に 当たっ ては, 切羽 面から 掘進方 向へ三 次に 分けて 放射状 に作孔 し,セメントミルクを注 入 してい る。こ れまで 例を 見ない50kgf /cnf以 上もの 高圧地 下水に 対し て成功と失敗を重ねなが ら 作孔, 注入及 び止水 残尺 等の規 格化と 機材の 改善 を計っ ている 。特に 注入用□元管の固定方法 に っいて は苦心 してお り,76¢のり ―マ付 きビ ットに よって 作孔し たボ ァホールにセメントコー キ ング方 式によ って固 定す ること に成功 してい る。

  第8章 でtま,「 水突出 」とい う高 圧水に 起因す る岩は ね現象 を多 数の事 例をあげて説明してい る 。また ,水突 出の際 生じ るクレ ー夕形 状に着 目し ,この 深さ及 び頂角 が砂岩及び頁岩等の岩種 に よって 異なる ことを 指摘 してい る。更 に,岩 種に よって クレ一 夕形状 が異なることを突出時の 破 壊現象 に対し て破壊 の確 率論を 適用す ること によ って検 討する ととも に,注入深さと残尺の規 格 に 理論的 根拠を 与え ている 。第9章で は,水 突出に おけ る大量 出水対 策とし て採用 した 湛水注 入 工法に っいて 述べて いる 。湛水 注入工 法は, 立坑 を水没 させる ことに よって湧水を止め,坑底 に コンク リート を打設 する ことに よって 止水す る工 法であ る。本 工法の 施工に当たっては,湧水

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圧の 計測結 果に 基づい てバル クヘッド厚さや養生日数を決定すると同時に,配管整備,湛水注入,

セメ ント注 入及 び揚水 等の工 事を進 める 必要が ある。 これら の工事 にお いては数百メートルの立 坑を 水没さ せて 行う大 規模工 事であ るた めさま ざまな 問題が 生じる 。特 に,緊急時においてはバ ルク ヘッド の温 度上昇 による 強度低 下な ど予想 外な問 題が生 起する 。本 章の後半では,これらの 諸問 題を明 らか にして 解決の 方策を 示し ている 。

  第10章では ,高水 圧に 対する 止水工 法の改 善作に っい て論述 し,完 全止水技術の確立を模索し てい る。こ こで は,止 水工事 の実態 を統 計的手 法を用 いて詳 細に分 析す ることにより作孔,注入 に 関 す る 成 功 と 失 敗 の 因 子 を 明 ら か に し , 完 全 止 水 の 施 策 を 提 示 し て い る 。   第11章は本 論文の 結論 で,各 章で述 べた研 究成果 を総 括する ととも に,炭鉱で開発された止水 技術 の他分 野へ の応用 を提言 してい る。

   学位論文審査の要旨 主査   教授   中島   巌 副査   教授   佐藤寿一 副査   教授   樋□澄志

  日 本の石 炭産業 は,1945年以 降戦後 復興の 原動カ となり ,目 ざまし く発展 した。しかし,1960 年 頃から かげり が見え はじ め,一 般炭の 生産縮 小,製 鉄用 原料炭 の増産 が国家政策として計られ て きた。 この間 ,原料 炭を 求めて 石狩炭 田の深 部開発 が進 められ ,古第 三紀の軟弱岩盤に世界で も 類例を 見ない 悪条件 下で 大深度 立坑及 び斜坑 が開さ くさ れてき た。本 論文は,これらの立坑及 び 斜坑掘 さく工 法に関 する 研究成 果,特 に,深 刻な問 題と なった 高圧地 下水の止水に関する研究 成 果をま とめた もので ,ll章 で構成 してい る。

  第1章は 緒諭で ,石炭 開発 におけ る含水 層突破 の意 義に触 れ,本 論文の 目的と 立場 を述べ てい る 。

  第2章で は,わ が国に おけ る立坑 掘さく 史を概 説し ,従来 からの 立坑掘 さく工 法で あった 交互 法 の限界 から, 同時法 の開 発に至 る経緯 を施工 例をあ げて 説明し ている 。特に,同時法における 掘 進 と 築 壁の 工 程 上 の 諸問 題を 明らか にし, 幌内炭 鉱の立 坑掘 さくに おいて 月進行130mの日 本 記 録 達成に 至る過 程で の技術 開発に っいて 論述し てい る。第3章 では, 立坑及 び斜坑 掘さ くにお

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いて 湧水の 存在が いかに 多く の問題 を提起 するか にっい て述 べ,湧 水によ る工程の遅延にっいて 施工 例をあ げて説 明して いる 。また ,湧水 が単に 掘さく 能率 を低下 させる だけでなく,その炭鉱 の 閉 山 ま で 排 水 費 の 増 加 に っ な が る こ と か ら , 完 全 止 水 の 重 要 性 を 提 言 し て い る 。   第4章で は, 炭鉱開 発の主 要フィ ール ドとな った夕 張炭鉱 南部の 地質 にっい て述べ ている 。第 5章では ,夕張 新炭 鉱の開 発計画 で新し く試み た地 質構造 の解析 方法と 解析 結果に っいて 論述し てい る。開 発計画 に当た って は,こ の解析 結果か ら断層 や背 斜軸な どの地 質構造に関する従来の 考え 方を修 正し, 立坑及 び斜 坑の位 置を断 層など の擾乱 地帯 を避け て決定 している。なお,この 数 理 地 質 学 的 解 析 法 の 有 効 性 は 開 さ く 工 事 の 進 捗 過 程 で 実 証 さ れ て い る 。   第6章で は, 夕張新 炭鉱に おける 湧水 の物理 的及び 化学的 性状に っい て述べ ている 。湧水 の物 理的 性状に 関して は,水 温及 び水圧 の計測 結果を 示し, 湧水 が浸透 ではな くき裂を通して起こる こと を指摘 してい る。ま た, 化学的 性状に 関して は,溶 存イ オンの 濃度分 析結果を示し,塩素イ オン とカ ルシウ ムイオ ンの濃 度比に よっ て湧水 を地表 水型, 混合 水型及 び化石 水型の3種 類に分 類し ている 。

  第7章で は, 掘進切 羽の事 前止水 工法 を提案 し,平 和炭鉱 第三立 坑, 夕張新 炭鉱第 一立坑 ,第 二立 坑,材 料斜坑 及びべ ルト 斜坑に おける 止水工 事の成 功例 と失敗 例を説 明している。止水工法 の実 施に当 たって は,切 羽面 から掘 進方向 へ三次 に分け て放 射状に 作孔し ,セメントミルクを注 入し ている 。これ まで例 を見 ない50kgf /cm2以上 もの高 圧地下 水に対 して 成功と失敗を重ねなが ら作 孔,注 入及び 止水残 尺等 の規格 化と機 材の改 善を計 って いる。

  第8章で は, 「水突 出」と いう高 圧水 に起因 する岩 はね現 象を多 数の 事例を あげて 説明し てい る。 また, 水突出 の際生 じる クレー 夕形状 に着目 し,こ の深 さ及び 頂角が 砂岩及び頁岩等の岩種 によ って異 なるこ とを指 摘し ている 。更に ,岩種 によっ てク レー夕 形状が 異なることを突出時の 破壊 現象に 対して 破壊の 確率 論を適 用する ことに よって 検討 すると ともに ,注入深さと残尺の規 格に 理論的 根拠を 与えて いる 。

  第9章で は, 水突出 におけ る大量 出水 対策と して採 用した 湛水注 入工 法にっ いて述 べてい る。

これ らの工 事にお いては 数百 メート ルの立 坑を水 没させ て行 う大規 模工事 であるためさまざまな 問 題 が 生 じ る 。 こ れ ら の 諸 問 題 を 明 ら か に し て 解 決 の 方 策 を 示 し て い る 。   第10章 では ,高水 圧に対 する止 水工法の改善作にっいて論述し,完全止水技術を確立している。

特に ,止水 工事の 実態を 統計 的手法 を用い て詳細 に分析 する ことに より作 孔,注入に関する成功 と失 敗の因 子を明 らかに し, 完全止 水の施 策を提 示して いる 。

  第11章 は本 論文の 結論で ,各章 で述べ た研 究成果 を総括 すると とも に,炭鉱で開発された止水

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技術の他分野への応用を提言している。

  これを要するに,著者は,立坑及び斜坑の掘さく工法と高圧地下水の止水法に関して多くの技 術改善を進め,理論的考察に基づいて新しい工法を確立している。この成果は,鉱山工学及び掘 さく工学の発展に対して貢献するところ大なるものがある。よって著者は,博士(工学)の学位 を授与される資格あるものと認める。

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参照

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