博 士 ( 医 学 ) 石 村 美 樹
学 位 論 文 題 名
肝 細 胞 癌 の 制 癌 剤 感 受 性 試 験
一特 に 薬剤 耐 性 因子 と の関 連 に つい て―
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
|.目 的
有効な 抗癌剤の 選択のため、培養肝細胞株および、手術的に切除した肝細胞癌組織を用いて in vitro制癌剤 感受性試験を行い、その感受性と薬剤耐性遺伝子およびその産物の発現の関 連につ いて検討 した。また、肝非癌部のin vitro制癌剤感受性試験も合わせて行い、その知 見も述 べた。
II.対象と方法
1.対象:培養肝細胞癌株はPLC/PRF/5,HLE,HLF,HuH―7,当科で樹立したHC―1,HC←4,HC―28,H C−32.HC一44,HC−59の10株を用いた。切除肝細胞癌組織は清潔新鮮手術切除標本より癌部、非 癌 部の組織 を採取し て用いた。当科で1989年から1993年の4年間に行った肝切除症例のうち初 回 切 除 肝 細 胞 癌 122例 を 対 象 と し た ‐ 年 令 は30〜80歳 才 、 平 均57.5才 で あ っ た 。 2. 方法:制 癌剤感受 性試験と してSuccinic Dehydrogenase Inhibition Test(SDI Test) を用いた。48時間培養とし、対象の吸光度(O.D.値)が100以上を判定可能の基準とした。Inh ibition Index(1.I.値)50%以上を制癌剤に感受性ありとした。1)培養肝細胞癌株:3x 10 5 cell/mlに 調整した 。HC−32株はRPM11640培地では培養不良のため、MEM培地を使用した。
2)切除肝細胞癌、非癌部組織:制癌剤感受性試験としてMTT assayを行った。肉眼的に癌部、
非癌部(肝硬変部を含む)を採取し、検討した。3)制癌剤と濃度:MMC;10皿g/m|,ADM;5皿呂 /ml,5ーFU;1DO/i g/ml,CDDP:25u g/ml,IMF;150ug/rn|,VP一16;200u g/ml,を用いた。|FMは 活 性 型 を 使 用 し た 。 使 用 制 癌 剤 濃 度 は 常 用 量 の 最 高 血 中 濃 度 の ほ ぽ10倍 と し た ぃ 3.免疫染色方法:P―Glycoprotein(Pーgp),Glutathione―S―trasferase‑兀(GST‑兀),Metal lothionein(MT),およびCytochromeP―450(Pー450)の免疫染色をした。肝細ぬ癌株は培養後、
ア セ ト ン固 定 したぃ 切除組織 では、P‑gpは 凄部、非 癌部の新 鮮凍結標本 を用い、GST‑n丶M Tお よびP−450は ′ヾラフ ィン固定 の癌部、非 癌部標本を用いた。免疫組織染色の評価は3段 階 で行い、 培養肝細 胞癌株で は20%以上染 色されたもの(十)、染色されないもの(ー)、
と した。切 除例では 肝細胞、 肝細胞癌に おいて―部でも染まっているもの、また―見して染 ま っている と判定で きるものを(十)、Negative contro|と比較してかろうじて染まってい る ものを( 土)、染 まってい なぃものを (―)と判定したぃ4. MDR1…RNA解析:肝細胞癌 10株 ではMDR1…RNA解 析 を 行っ た 。5.組 織 学 的検 索 :切 除 標 本は す べ てホル マリン固 定 し 、バラフ ィン切片 を作製し、組織型と分化度を検索した。6.検定法:有意差検定はヱ 検 定によって行った。
. 結 語
1. 肝 臓 胞 癌 株 の 制 癌 剤 感 受 性 試 験 : 有 効 例 はMMC9株 (90X) 、ADM9株 (90X) 、5−FU1株 (10X) 、 CDDP 10株 (100X) 、 |FM 10株 (100?6) 、VP−169株 (90X)で あっ た 。2. 切 除肝 細胞 癌の 制癌 剤 感 受 性試 験: 有効 と判 断 され たも のはMMC 3/44(6.8ll;),ADM 2/25(8.OX),5−FU 0/58(O.Ox).CD DP 12/61(19.7X) ,|FM 21/57(36.8X) ,VP−16 17/42(40. 5ll;)であった。切除肝細胞 癌の感受性 に 個 体 差 を 認 め た 。3. 臨 床 例 に お け る 制 癌 剤 感 受 性 試 験 と 組 織 学 的 検 索 : 感 受 性 有 効 例 に お い て 組 織 型 と 感 受 性 の 間 に 関 連 を み と め な か っ た 。4. 非 癌 部 の 制 癌 剤 感 受 性 試 験 : 感 受 性 有効 例はMMC0/46,ADM 0/24,5FU 0/59,CDDP l/64(1.6Y6)、 ,|MF 33/60(55. 011;) ,VP―1640 /46(87.OX) で あ り 、IMF.VP−16が 非 癌 部 で の 有 効 率 す な わ ち 障 害 率 が5096以 上 で あ っ た 。 同 ― 症 例 で 、 癌 部 と 非 癌 部 を 同 時 に 測 定 し え た も の の 中 で 、 非 癌 部 よ り 癌 部 に 高 い 感 受 性 が あ っ たものはMMC 28/42(66. 7fl;),ADM1 5/23(65. 016),5―FU 33/53(62.3X),CDOP 33/58(56. 9Y6),I MF19/53(35.8X) ,VP−16 9/40(22.5X) で あ っ た 。5. 肝 細 胞 癌 株 の 免 疫 組 織 染 色 : 肝 細 胞 癌 株 の 免 疫 組 織 染 色 で はP‑ぶpの 発 現 ( 十 ) は20X、 丶 ( 土 ) は70f9、 ( − ) は10:Kで あ っ た 。GST‑兀 の 発 現 ( 十 ) は30X、MTの 発 現 ( 十 ) は80X、P−450の 発 現 ( 十 ) は3011;、MDR1″RNAの 発 現 ( 十 ) は50xで あ っ た 。6. 切 除 肝 細 胞 癌 、 非 癌 部 の 免 疫 組 織 染 色 : 切 除 標 本 に よ る 肝 細 胞 癌 のP−g pの 発 現 は 癌 部 で48/89(53. 9?6) 、 非 癌 部 で74/92(80.4X) に み ら れ 、 有 意 差 が み ら れた (p<0.00 02)。
IV. 考 察
制 癌 剤 感 受 性 試 験 の 方 法 は 種 々 あ る が 、 今 回 はSDI testを 選 択 し た 。 ま た 、 正 常 問 質 細 胞 の 混 入 を 取 り 除 い て 処 理 す る た め に 培 養 肝 細 胞 癌 も 用 い た 。 そ の 結 果 、 培 養 肝 細 胞 癌 株 で は 制 癌 剤 感 受 性 有 効 率 はCDOP、IMFが100Xで あ り 、 次 にMMC,ADM,VP―16が90Y6,5ーFUが10Xの低 値で あ っ た 。 し か し 、 切 除 肝 細 胞 癌 組 織 を 用 い た 試 験 で は 、 培 養 株 細 胞 で 感 受 性 の 多 い 薬 剤 は 切 除 組 織 で も 感 受 性 が 多 い 傾 向 は あ っ た が 、 正 常 問 質 細 胞 の た め か 有 効 率 が 著 し く 低 値 で あ っ た 。 自 験 例 で はVP−16つ い で 、 |MFが 最 も 高 か っ た 。 制 癌 剤 を 使 用 す る と 実 際 に は 癌 部 の み な ら ず 肝 非 癌 部 も 同 時 に 暴 露 さ れ る こ と に な る の で 、 そ の 制 癌 剤 感 受 性 を 検 討 し た 。 肝 非 癌 部 はMMC,ADM,5―FUに 対 し て 感 受 性 が 少 な く 、CDDPに 対 し て は1.6%と 低 値 で あ っ た が 、IMFで は5 5.Ox、VP―16で は87.0覧 と 高 値 で あ . り 、IMF,VP−16は残 存肝 に損 傷を 与 える 可能 性が 大 きい と考 え ら れ た 。 免 疫 組 織 染 色 に お い て 、 肝 細 胞 癌 株 で はP‑gpの 発 現 はADMに お い て 薬 剤 耐 性 に 関 与 し て い る こ と を 示 唆 し て い る と も 考 え ら れ た が 、VP−16に お い て は 相 違 が あ り 、 薬 剤 に よ っ て P−gpの 関 与 に 差 異 が あ る こ と を 示 し て い る と も 思 わ れ た 。MDR1″RNA発 現 はP―gp発 現 と の 関 連 性 は 認 め ら れ た が 、ADMお よ びVP―16で の 感 受 性 と の 相 関 を 認 め な か っ た ぃGST‑厄 の 発 現 とAD Mの 感 受 性 と の 相 関 が 示 唆 さ れ た 。CDDPとGSTー 兀 の 発 現 に 一 応 の 相 関 は 認 め ら れ た 。 ― 方 、 切 除 肝 細 胞 癌 の 制 癌 剤 感 受 性 と 免 疫 組 織 染 色 の 関 連 に お い てGSTー 厄 はCDDP、IMF、VPー16と 、MT はCDDP、IMFとP―450は |MF,VP−16と に お い て 有 意 差 を 認 め た (p<0.05) 。 し か し 、 こ の 結 果 はP
‑450以 外 、 こ れ ま で 報 告 さ れ た 結 果 と 異 な っ て い る が 、 こ れ は 正 常 問 質 細 胞 の 混 入 に よ る も の か も し れ な い 。
V.まとめ
肝 細 胞 癌 の 制 癌 剤 感 受 性 試 験 に よ る 薬 剤 耐 性 と 各 種 薬 剤 耐 性 遺 伝 子 お よ び 、 そ の 産 物 の 発 現 に つ い て 検 討 し 、 下 の 結 果 を 得 た 。1. 肝 細 胞 癌 株 に お い て :1) 制 癌 剤 感 受 性 試 験 に お い て 感 受 性 第1はCDDP,IMF, 次 にMMC,ADM,VP−16で あ っ た 。2)P‑gpとMDR1ーRNAの 発 現 に は 相 関 が 認 め ら れ た 。3)P‑gpとADMで の 制 癌 剤 感 受 性 に は 相 関 の 傾 向 が あ っ た ぃ4)GST‑兀 の 発 現 株 にA DM.CDDPの 制 癌 剤 体 制 を 認 め る 傾 向 が あ る 。2. 切 除 肝 細 胞 癌 に お い て :1) 制 癌 剤 感 受 性 有 効 例はMMC 3/44(6.8:C),ADM 2/25(8.Ofl;) ,5―FU 0/58(0.OfI;),CDDP 12/61(19.7%),IMF 21/57
(36. 8'X),VP−16 17/42(40.5%) であ った 。2)GST‑兀 ,MT,Pー450の 発現と制癌剤感受性有効例に
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は相関を認めた。3)VP―16,IMFでは非癌部肝細胞の感受性の高いものが多く、残存肝に損傷を 与える 可能性が ある。以上から、非癌部のダメージも考えると肝細胞癌の治療制癌剤として CDDPが一番 適していると考えられるが、抗癌剤の選択にあたっては、癌部非癌部の感受性試 験を行い、最も適合した抗癌剤を使用すべきと考えられた。
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 内 野 純 一 副 査 教 授 長 嶋 和 郎 副 査 教 授 細 川 眞 澄 男
学 位 論 文 題 名
肝細胞癌の制癌剤感受性試験
ー 特 に 薬剤 耐 性 因子 と の関 連 に ついて ―
有 効 な化 学 療法 を 行 うた め に抗 癌 荊 の選 択 が 重要 で ある か 、 培養 肝 細憶 癌 株お よび手術 的 に 切 除 し た 肝 細 胞 癌 組 織を 用 い てinvitro制 癌剤 感 受 性試 験 を行 い 、 その 感 受性 と 薬 剤 耐因 子 の 発現 の 関連 に つ いて 検 討し た 。 また 、 肝非 癌 部 のin vitro制 癌 荊感 受 性試験と も 合わせて 行った。 対象とし て培養肝細 胞癌株はPLC/PRF/5,HLE,HLF,HuH−7、当科で樹立し たHC−1,HC−4,HC−28,HC―32,HC―44,HC−59の10株を用いた。切除肝細胞.癌組織は清潔新鮮手 術 切 除 標 本 よ り 癌 部 、 非 癌部 の 組 織を 採 取し て 用 いた 。 当科 で1989年 から1993年 の4年間 に 行 な っ た 肝 切 除 症 例 の うち 初 回 切除 肝 細胞 癌122例を 対 象と し た 。年 令 は30才 〜80才 、 平均57.5才 であ っ た 。制 癌 荊 感受 性 試験 と し てSuccinic Dehydrogenase Inhibition Test (SDI test)を 用い た 。48時 間 培養 と し、 対 象 の吸 光度 (0.D.値) が100以上を 判定可能 の 基準 と し た。Inhibition Index(I‑I‑値 )50$以上 を 有 効と し た。 制 癌 荊と 濃 度はHHC;10 p g/ml、ADM;5pg/Il、5−FU;100p9/11、CDDP;25pg/il、IFH;150pg/一l、VP−16;200pg/
mlを用いた 。薬荊耐 性因子で あるP−Glycoprotein (P‑gp),Glutathione―Sーtransferase‑冗 (GST‑冗 ),Hetallothionein (HT), およ びCytochro=eP−450(P−450)の 免疫組織 染包を行 っ た 。 染 色 は ア ビ ジ ン ・ ビ オ チ ン(ABC)法 を 用 い た 。 肝 細 胞 癌10株 で はMDR| ‐RNA解 析 を行った。有意差検定は検定によって行なった。
その結果、肝細胞癌株の飼癌剤感受性試験での有効例はHHC9株(90名)、ADM9株(90靨)、5ーFU 1株(10$)、CDDP10株(100$)、IF}tl0株(100$)、VP−169株(90名)であり、感受性第1はCDDP, IFMで あ っ た。 切 除肝 細 胞 癌の 翻 癌荊 感 受 性試 験 で有 効 と 判定 さ れ たも の はPIHC 3/44(6.8 名),ADM2/25(8.0$),5−FU 0/58(0.0$),CDDP 12/61(19.7名),IFPI 21/57(36.8$),VP−16 17/42 (40. 5j9)で あり 、VP−16,IFHか 感受 性 第1、2位を 占 めた 。 ま た、 切 除 肝細 胞癌 の感受性 には 個 体 差を 認 めた 。非 癌部の制 癌荊感受 性有効例はMHC 0/46,ADH 0/24,5FU 0/59,CDDP 1/64(1.6名),IFM33/60 (55.0$),VP―16 40/46(87.0$)であり、IFM,VP−16が非癌部での有 効 率 す な わ ち 障 害 率 が50$以上 で あ った 。 同一 症 例 で、 癌 部と 非 癌 部を 同 時に 測 定 しえ た ものの中 で、非癌 部より癌 部に高い感 受性かあ ったもの はPIHC 28/42(66.7f9),ADH 15/23(6 5‑0$),5−FU 33/53(62.3$),CDDP 33/58(56.9$),IFlq 19/53(35.8$),VP−16 9/40(22.5靨)であ り、VP―16,IFMは 肝 非癌 部 の 方の 感 受性 が 高 いも のか多か った。肝 細胞癌株 の免疫組 織染 色ではP‑gPの発現(十)は20$、(土)は70$、(―)は10$であった。GST‑冗の発現(十)は30茎、
MTの発現( 十)は80$、P−450の発現 (十)は30$、HDRlーRNAの発現(十)は50$であった。切 除肝細胞 癌のP‑gpの発 現は癌部 で48/89 (53 .9fg),非癌部で74/92 (80.4$)にみられ、有意差 か あ っ た(P<O.0002)。P−gp発 現 株と14DRl・RNAの発 現 、 およ びADPIでの 翻 癌 荊感 受 性に
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