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博士(歯学)秦 浩信 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)秦   浩信 学位論文題名

悪性黒色腫における EIAF ,

IVIT1 − h/IMP 発現の浸潤能への関与

(Upregulation of Membrane‑typl Matrix Metalloproteinase correlate         with the expression of EIAF in Malignant Melanoma) .

学位論文内容の要旨

悪 性黒色腫はメラノサイ卜に由来する悪性腫瘍であり、リンパ行性または血行性に広範 な早期転移をきたし、極めて悪性度が高いことが知られている。しかし、悪性黒色腫の高

い 浸 潤 ・ 転 移 能 が ど の よ う な 機 構 に よ っ て 制 御 さ れ て ぃ る か に つ い て の 詳 細 は 明 か で は な     

がん細胞の浸潤におぃて細胞外基質(ext racellular mat rix ;ECM) の分解は重要なス テッ プで あり 、こ の過 程に はマ トリ ック スメ タロプ 口テアーゼ(MMP) を含む種々のブロ テア ーゼ が関 与し てぃ るこ とが 報告 され てぃ る。MMP は 現在までに20 種類以上発見され て おり、異なった基質特異性を示すことが報告されてぃる。MMP の中でもゼラチナーゼ群 に属 する

MMP

2

(ゼラチナーゼA )とMMP −9 (ゼラチナ―ゼB )は基底膜の主成分である

lV

型コ ラー ゲン を分 解す るた め、 がん の浸潤・転移に深く関わってぃる。一般にMMP は 潜 在 型

(proMMP)

と し て 細 胞 外 ヘ分 泌さ れ、 セリ ンプ ロテ アー ゼ等 の酵 素に よって

N

末 端が 切断され活性化型へと移行し、初めて酵素活性を発揮する。MMP‑2 の活性化機序は長

い間 不明 であ った が、

1994

年Sato ら によ ってproMMP ー2 の活 性化因子としてMT1 一MMP

(MMP

−14) がクロ―ニングされた。

MTl‑MMP

は腫瘍細胞が発現する膜型(membrane type; MT) MMP で、Tissue Inhibi tor of

731

(2)

Metalloproteases

−2(TIMP −2 )を介してproMMP −2 と結合し膜結合型の三分子複合体を形 成する 。ただし、この複合体に酵素活性はなく、proMMP 一2 を活性化しないが、この複合 体に近 接するfree のMT1 ーMMP がMT1 −MMP/TIMP 一2 に結合するproMMP 一2 を活性化すること が報告 され てぃ る。 また

MT1

−MMP 自体にも1 、II 、III 型コラーゲン、ファイブロネクチ ンを分 解す る機 能を もつ こと から 、最近では種々の腫瘍におぃてMT1 −MMP の発現が腫瘍 細胞の 浸潤 ・転 移能 に深 く関 わっ てぃると考えられてぃるが、その発現の転写調節機構 については未だ不明な点が多い。

  ets

が ん 遺伝 子群 の―つ であ るEIAF は

1993

年に

Higashino

らに よっ てア デノ ウイ ルス の初期 転写 因子 であ るEIA の エンハ ンサ 一領 域に 結合 する ヒ卜 細胞の転写因子としてク ロ ーニ ング され た。 これ まで に30 種類 以上 .ets がん 遺伝 子群が知られてぃるが、EIAF

    

´

etsl

.ets2 な どの 他の

ets

が ん遺 伝子 とほ とん ど相 同性 が認められない。しかし、先 に マウ スで 発見 され たPEA3 (Polyoma Enhancer Activator3 )とは90 %以上の相同性を 有しておりEIAF はmouse PEA3 のヒ卜相同遺伝子であることが明らかにな った。

Higashino

EIAF

がMMP −1 .−

3

、−

9

、の3 つの異なるMMP の転写を亢進することをCAT

assay

により示した。実際、EIAF は高い浸潤能を有する口腔扁平上皮がんHSC3 におぃて、

MMP

−1 .‑9 の転写を亢進し、浸潤能に関連してぃる可能性が示唆され、 さらに浸潤活性の 低 い乳 がん 細胞 株MCF ―7 ヘEIAF のプラスミドを遺伝導入するとMMP −9 を発現し浸潤能と 運 動能が 亢進した。逆に、HSC3 にanti −sense EIAF プラスミドを遺伝し導入すると、MMP の 発現 低下 を伴 うが ん細 胞の 浸潤抑 制が みら れ、

EIAF

によ るMMP の活性化が上皮系腫瘍 の 浸潤 増殖 に深 く関 わっ てぃ ることが明らかになった。悪性黒色腫ではその発がん機構 に

ras

が ん遺 伝子 の関 与な どが 報告 され てい るが 、浸 潤形 質の発現に関して遺伝しレベ ル の報告は少なく、ets がん遺伝子の発現、および浸潤能への関与についての検索はほと ん どな され てぃ なぃ 。

  MT1

MMP

の転 写調 節領 域の 塩基配列の検索によってMT1 −MMP 遺伝子のプ口モータ―領

732

(3)

域に もEIAFの結 合 モ チ― フ が認 め ら れた 。Taguchiら はN‑mycが 発現してぃ る神経線 維 腫細 胞 株5株を 用 い て検 索 を行 い 、 中で もN一mycが 強 発 現し て ぃる3株に ついては ノー ザン ブロッ ティング におぃてEIAF、MT1―MMPの発 現量が亢 進しており 、さらにinvasion assayの結 果 と も相 関 が認 め ら れた と報告 してぃる 。またHabelhahらは マウス線 維肉腫 細胞 株(OR−32)にEIAF cDNAを遺 伝 子 導入 し 、/−ザ ン ブ ロッ テ ィングによ って、E1AF とMT1−MMPの発現 量につい て検索を 行ったと ころ、両 者に有意な 相関が認 められ、 さら に親 株と比 較してE1AFを 遺伝子導 入したQR―32は強い浸 潤活性と転 移能を認 めたと報 告 して ぃる。 このよう な結果はE1AFがMT1−MMPの転 写を亢進 することに よって腫 瘍細胞の 浸潤性を増強することを強く示唆してぃる。

  そ こ で 、 転移 形 質が 強 く 悪性 度 の高 い 腫 瘍と し て 知ら れ てぃ る 悪 性黒 色 腫細 胞4株

(D洲18、UT、MEw0、96E)より抽 出したFtNAを用いてノーザンブロッティングならびに定 量RT−PCRに よ りE1AFと 、 が ん 細 胞 が 発 現 し 浸 潤 活 性 と 密 接 な 関 係 が 示 され て ぃる MT1―MMP´の発現について検索を行った。定量RT一PCRは、ライトサイクラ―(Roche)を用い てHybridizationprobe法 に より 計 測 を行 っ た。 内 部 標準 コ ン卜 口 ― ルと し て はGAPDH     ´

を、E1AFとMT1−MMPの 陽性コン 卜ロール として線 維肉腫細 胞株HT1080、陰性 コントロ ー ルと し て乳 が ん 細胞 株MCF7を用 い た 。悪 性 黒色 腫 の 全て の 細胞 株にお ぃてmRNAレベ ル でE1AFとMT1ーMMPの高 い発現が 認められ た。さら に、それ らの浸潤活 性につい てlV型コ ラ― ゲ ンを 主 成 分と す るマ ト リ ゲル を 用い たinvitroinvasionassayで検索を行 った。

Spearmanの 回帰分析 を用いて 統計学的 にこれら のデータ の比較検討 を行った ところE1AF とMT1−MMPの発現量に著明な相関が認められ(P〓0.0001)、E1AFおよびMT1一MMPの発現量 と浸潤能は明らかに相関してぃた。(P=O‐0006、P=0.0014)またゼラチンザイモグラフ イー を用い た検索で は、全て の悪性黒 色腫の無 血清培養上 清におぃ てMMP−2の発 現が認 めら れた。 以上の結 果から、 悪性黒色 腫細胞株 におぃて、E1AFの発現がMT1―MMPの転写 を亢進し、浸潤性を増強することが示唆された。

    ―733ー

(4)

  

このようなin ゾ

itro

での結果が実際の悪性黒色腫症例でも生じてぃるかどうかを明ら

かにするために、無色素性悪性黒色腫患者から採取した臨床サンプルを用いて検索を行

った。その結果、EIAF の強い発現とこれに相関したMT1 −MMP の発現が認められた。この

ような所見は、培養細胞系だけではなく、実際の悪性黒色腫の浸潤・転移形質の発現に

もEIAF による

MT1

MMP

の転写亢進が関与していることを示す新しぃ知見であった。

(5)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    福 田    博 副 査    教 授    向 後 隆 男 副 査    教 授    戸 塚 靖 則 副 査    助教 授   進藤 正信

学 位 論 文 題 名

悪 性 黒 色 腫 に お け る EIAF ,

IVIT1 ―:N/IR/IP 発現の浸潤能への関与

(Upregulation of Membrane‑typl Matrix Metalloproteinase correlate         with the expression of EIAF in Malignant Melanoma)

    I

審 査 は 向 後 、 戸 塚 、 進 藤 、 お よ び 福 田 審 査 員 全 員 が 出 席 の も と に 、 口 頭 で 行 わ れ た 。     

ま ず 申 請 者 か ら 提 出 論 文 の 内 容 の 説 明 を 受 け た 。 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。

論丈の概要

  悪性黒色腫は神経堤由来のメラノサイトもしくは母斑細胞が悪性化したもので,リンパ行性 あ るいは血 行性に広 範な早 期転移を きたし ,極めて 悪性度 が高いこ とが知ら れている,

  がん細胞の浸潤において細胞外基質(extracellular matrix;ECM>の分解は重要なステップ で,この過程にはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を含む種々のプロテアーゼが関与 していることが報告されている.現在20種類以上のMMPが発見され、異なった基質特異性を 示すことが報告されている. MMP‑21V型コラーゲンの分解活性を持っことから腫瘍細胞の 基底膜を破壊するメカニズムと深く関わっており,MMP‑2の発現とがん細胞の浸潤・転移と の 関 連 が 注 目 さ れ て い る ,MTl‑MMPは 腫 瘍 細胞 が 発 現す る 膜 型MMPで, 潜 在 型MMP‑2 の腫瘍細胞膜上での活性化因子であるとともにI,u,m型コラーゲン,フんイブロネクチンを 分 解する機 能をもっ ことか ら,がん 細胞で のMTl‑MMPの発現が浸潤・転移能と深く関わっ ていることが示唆されているが,MTl‑MMPの転写調節機構については未だ不明な点が多い.

  EIAFetsが ん 遺 伝 子群 転 写 因子 で , 我々 は こ れま で にEIAFが複 数 のMMPの 転 写を 活 性化し, 口腔扁平 上皮が ん細胞の 浸潤に 関わっていることを報告してきた,MTl‑MMP

735 ‑

(6)

、 転写 調節 領域 の塩基配列の検索によってMTl‑MMP遺伝子のプロモーター領域にもEIAFの 結 合モ チー フが 認め られ ,EIAFがMTl‑MMPの 転写 を亢 進す るこ とに よって腫瘍細胞の浸 潤性を増強することが示唆された。

  そこで,転移形質が 強く悪性度の高い腫瘍として知られている悪性黒色腫細胞4株およぴ1 例の口腔悪性黒色腫患 者からの新鮮材料より抽出したRNAを用いてNorthern blottingなら び に定 量RT‑PCRによ りEIAFと ,が ん細 胞が 発現し浸潤活性と密接な関係が示されている MTl‑MMPの発現について検索を行った.

  悪 性 黒 色 腫 の 全 て の 細 胞 株 に お い てmRNAレ ベ ル でEIAFMTl‑MMPの 相 関 す る 発 現 が認められた.さらに、ゼラチンザイモグラフイーを用いた検索では、全ての悪性黒色腫の無 血清培養上清においてMMP‑2の発現が十分に認めら れた。以上の結果から、血vitroでは悪 性 黒色 腫細 胞に おい て、EIAFの発 現がMTl‑MMPの 転写 を亢 進し 、浸 潤性を増強すること が示唆された。それらの発現量はin vitro invasion assayによる浸潤活性の検索結果ともー致 していた,悪性黒色腫 の臨床サンプ少を用いた検索においてもEIAFの強い発現とこれに相 関したMT1. MMPの発現が認められた,

  この よう な所 見は、悪性黒色腫においてもEIAFによるMTl‑MMPの転写亢進が生じ、´悪 性 黒色 腫の 悪性 形質 のー つで ある 高い 浸潤 活 性の 発現 にEIAFを 介したMTl‑MMPの転写亢 進が深く関わっていることを示唆するものであった.

    I     

  ついで各審査委員か ら申請者に対し、本論文の内容とそれに関連する項目について質問 が行われた。主な質問は以下の通りである。

1)悪 性黒 色腫 細胞 株に おけ るMTl‑MMPの発現量はノーザンブロッテイ ングおよび定量     PCRにおい てほぽ一致した結果とぃえるが、EIAFではずれが生じて いる。これは何     故生じたと考えられるか。

2)悪性黒色腫は扁平上皮癌に比しても明らかに生物学的悪性度が高いと考えられるが、そ     れに も関 わら ず、 悪 性黒 色腫 臨床 サン プル のEIAFMTl‑MMPの発現 量は、浸潤性増   殖をしめす扁平上皮癌よりも低い値となっているがそれについては、どのように考える     

    か。

3)悪性黒色 腫の生物学的悪性度が他のがんと比べても非常に高い原因としてどの様なこ

``とが考えられるか。

  これらの質問に対して申請者は明快に回答した。

  さらに、本実験に対する今後の展望について、 今回用いた悪性黒色腫の臨床サンプルは1 例のみであるが今後、さらにサンプル数を増やし、より厳密な結果を得たぃと考えている。

ま た 今 後 は 、MTl‑MMPの プ ロ モ ー タ ー領 域のdeletion mutantを 用い てMTl‑MMPに実 際 にEIAFが 結合し、転写活性を亢進するかCAT assayで検索を進めていく予定である。

736

(7)

同 時に 、悪 性黒 色腫 細胞 株にRNAiを 遺伝 子導 入し 、EIAFを不 活化した場合にMTl‑MMP の 発 現 量 が 減 少 す る か に つ い て も 現 在 追 加 実 験 中 で あ る 旨 の 説 明 が あ っ た 。

  本研究は、悪性 黒色腫の浸潤・転移機構の解明に大きく寄与するものである。また、今 後の研究結果が、 悪性度のスクリーニング、あるいは遺伝子治療による浸潤・転移抑制な ど に 役 立 つ 可 能 性 が あ り 、 医 歯 学 の 発 展 に 貢 献 す る 研 究 で あ る と 評 価 さ れ た 。   また申請者は本 研究を中心に関連領域に関して博い知識を有し、博士(歯学)の授与に 値すると判定され た。

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参照

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