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低侵襲治療応用にむけた微細皮膚感覚センサに関する研究-香川大学学術情報リポジトリ

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平成 28 年度 博士論文

低侵襲治療応用にむけた

微細皮膚感覚センサに関する研究

指導教員 知能機械システム工学科 教授 高尾 英邦

平成 29 年 1 月 5 日

香川大学大学院 工学研究科 知能機械システム工学専攻

前田 祐作

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要旨

本研究では,指先の皮膚が取得する複数の触覚情報をそれぞれ独立して取得するセン サを“集積化皮膚感覚センサ”と呼称し,その製作および評価を行った。また,先端治療分 野である内視鏡手術に対して,実現したセンサの医療応用の検討を行い,その有効性につい て検証を行った。 近年,人間の皮膚感覚に対応する入出力デバイスの開発が盛んに行われている。特に,こ れらの開発にはヒューマンインタフェースや,ロボットの入力デバイス,手触りなどの皮膚 感覚情報を付加価値とした製品開発,先端治療分野における安全な治療を実現するための 触覚情報伝達技術などの多くの新奇的な応用分野が想定され,大きな期待が寄せられてい る。上記の応用においては,人間の触覚を再現した情報を取得することが可能なセンサデバ イスが不可欠である。よって,本研究ではこの実現と,医療分野への応用を目指して,複数 触覚情報を同時取得する集積化皮膚感覚センサの提案から製作評価,内視鏡手術にむけた センサの実装技術を実現してきた。 第一章では,本論文の導入として,本研究の背景,目的について述べている。まず,ヒト の皮膚感覚と市販の荷重センサおよび既存の触覚センサの性能対比を行い,人触覚の機械 量センサとしての性能について定量的に議論した。続いて,これまでに開発されている多く の触覚センサについて,その構造や取得できる情報をまとめ,現在達成されている機能や期 待できる応用について述べた。その上で,取得が達成されていない,柔軟さ等の現在取得が 行われていない触覚情報をそれぞれ独立かつ同時に取得可能な“集積化皮膚感覚センサ”を 提案し,触感の評価や先端医療への応用など本研究で提案する皮膚感覚センサが実現され ることにより開ける分野についてまとめた。 第二章では,皮膚感覚に相当する情報を取得可能な,微細皮膚感覚センサアレイを試作し た。試作センサは,摩擦および硬さを取得するため,基準面構造を有したデバイス構造によ って,センサと対象物間の接触荷重に加えてそれぞれを抽出する原理を提案し,ヒトの触覚 受容器の密度程度の 820µm ピッチの 4×4 アレイとして設計した。集積化センサの製作プロ セスを確立し,デバイスを製作した。製作したセンサの評価においては,ヒト触覚に相当す る力覚検出能力と,提案した原理によって摩擦力及び硬さのそれぞれの検出について実証 した。 第三章では,集積化センサを先端医療分野へ応用するための,重要な検討として,軟性内 視鏡手術における圧力・温度モニタリングへの適用技術について述べている。センサデバイ スを体液や,強い照明,温度変動等多くのノイズ要因が存在する過酷な環境において,安定

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的な信号検出を行うための手法についての検討結果をまとめた。また,その有効性の検証実 験を行うと目,圧力と温度のモニタリングシステムを構築し,複数回の試作と香川大学医学 部との共同実験によって,実際の動物体内からの圧力・温度検出を実現した。 第四章では,センサの構造色を用いて電気的配線を必要とせず情報を取得可能なセンサ 構造を提案した。圧力に応答する 1µm 以下の可動ギャップを微細加工技術により実現し, 干渉により構造色が変化するセンサを実現した。また,内視鏡画像を処理することでセンサ の構造色変化を単一の評価値である色相変化として検出する手法を開発し,内視鏡治療に おいて配線不要なセンシングシステムを実現した。 第五章では,内視鏡治療への適用を目指した,臓器硬さ検出センサについて述べた。1cm 以下の治療器具に対して治療行為を阻害しない硬さ検出を実現するため,2mm 角の小型セ ンサによって脂肪や脱力状態の筋肉等を含む柔軟な体組織の硬さ検出を実現するため,最 適な感度設計や,製作プロセスの改善を行い,これまでに開発されてきた微小硬さセンサの 限界を超える硬さ感度をもったセンサを実現した。 第六章では,本研究の総括として,開発したセンサにより開ける応用事例についてまとめ た。小型アレイセンサを先端医療に応用することで実現が期待できる事例の基礎検討や,製 作を行った電気式および構造色式の各検出手法について,それぞれが適用可能な応用事例 についてまとめた。 以上の微細皮膚感覚センサの実現と先端治療への応用を目指した研究の結果,高精度, 高空間解像力を有するセンサを実現し,皮膚感覚に相当する情報を抽出した。また,先端治 療への本技術の適用に向けて,微小領域へセンサを集積化し,体内で安定動作させる実装技 術を確立した。これらの研究により,集積化皮膚感覚センサの実現により期待される多くの 応用分野に対する知見を得た。 以上の集積化皮膚感覚センサの実現と内視鏡治療技術への応用を目指した研究の結果, 複数触覚情報を同時取得することにより得られる新たな触覚評価法を確立した。また,内視 鏡治療への本技術の適用に向けて,微小領域へセンサを集積化し,体内で安定動作させる実 装技術を確立した。これらの研究により,集積化皮膚感覚センサの実現により期待される多 くの応用分野に対する知見を得た。

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目次

1 緒論 ··· 1 1.1 研究の背景 ··· 1 1.1.1 皮膚感覚とその機械的性質 ··· 1 1.1.2 触覚センサに期待される応用 ··· 4 1.1.3 既往の研究 ··· 5 1.2 研究の目的 ··· 8 1.2.1 機能集積型皮膚感覚センサの実現 ··· 8 1.2.2 集積化皮膚感覚センサの医療応用展開 ··· 9 1.3 論文の構成 ··· 2 2 集積化皮膚感覚センサアレイ ··· 5 2.1 デバイスの構成 ··· 5 2.2 動作原理 ··· 6 2.2.1 ピエゾ抵抗 ··· 6 2.2.2 荷重検出 ··· 9 2.3 新機能の集積 ··· 11 2.3.1 摩擦力検出 ··· 11 2.3.2 柔軟度検出 ··· 12 2.4 設計 ··· 13 2.4.1 機械特性 ··· 13 2.5 検出回路 ··· 17 2.6 製作 ··· 20 2.6.1 製作プロセスの概要 ··· 20 2.6.2 基板コンタクト領域の形成 ··· 21 2.6.3 多結晶シリコン抵抗の形成 ··· 23 2.6.4 拡散抵抗の形成 ··· 25 2.6.5 絶縁膜の形成 ··· 26 2.6.6 配線及び電極の形成 ··· 28 2.6.7 シリコンダイヤフラムアレイ ··· 29 2.6.8 センサ接触子 ··· 32 2.7 基礎特性評価 ··· 37 2.7.1 荷重検出および信号処理回路 ··· 37 2.7.2 拡散抵抗と多結晶シリコン抵抗 ··· 38 2.7.3 pn 接合 ··· 39 2.7.4 荷重検出用分圧回路 ··· 40

(7)

2.7.5 製作したデバイスの実装と機械特性 ··· 41 2.7.6 センサ特性 ··· 45 2.7.7 荷重検出回路の動作検証 ··· 46 2.8 新機能の原理検証 ··· 48 2.8.1 硬さ検出 ··· 48 2.8.2 摩擦力の検出実験 ··· 50 3 医療分野への集積化センサの応用手法の検討 ··· 52 3.1 緒論 ··· 52 3.2 センサの構成 ··· 53 3.3 センサ信号の温度補償回路の検討 ··· 54 3.4 製作 ··· 55 3.5 評価 ··· 57 3.6 動物実験 ··· 60 4 構造色による触覚検出センサ ··· 65 4.1 緒言 ··· 65 4.2 設計 ··· 68 4.2.1 光学設計 ··· 68 4.2.2 検出手法 ··· 74 4.2.3 機械設計 ··· 80 4.3 製作 ··· 87 4.3.1 初回試作と問題点の改善 ··· 87 4.3.2 改善した試作デバイス ··· 96 5 臓器硬さ検出 ··· 100 5.1 内視鏡手術への応用へ向けた硬さ検出センサの構造··· 101 5.2 デバイスの必要感度 ··· 102 5.3 回路保護膜が感度に与える影響 ··· 103 5.4 感度向上を実現するデバイスレイアウトの検討 ··· 105 5.5 高感度硬さ検出センサの製作 ··· 107 5.5.1 製作プロセス ··· 107 5.5.2 センサデバイスの一次試作 ··· 108 5.5.3 二次試作 ··· 109 5.5.4 三次試作 ··· 110 5.6 製作した高感度硬さセンサデバイスの評価 ··· 112 5.6.1 センサのパッケージング ··· 112 5.6.2 荷重検出回路の動作検証 ··· 113 5.6.3 柔軟対象物の硬さ検出 ··· 115

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5.7 考察 ··· 117 6 考察 ··· 126 6.1 センサアレイの優位性について ··· 126 6.2 電気式と構造色式触覚センサの比較 ··· 126 7 結論 ··· 127 謝辞 129 謝辞

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1

1 緒論

1.1 研究の背景

1.1.1

皮膚感覚とその機械的性質

ヒトは皮膚に触れた物体から様々な物理情報やその分布を取得する優れた感覚を有して いる。これは“皮膚感覚”あるいは“触覚”として称され,近年,既に広く活用されている 視覚や聴覚に相当する情報の取得・提示技術に加えて,味覚や嗅覚,そしてこの皮膚感覚に 相当する情報取得・提示技術の開発が期待されている。“触覚・皮膚感覚”の言葉の定義は 様々なものが存在するが,本研究においては,皮膚の受容器などから得られる情報を総括し て“触覚”,最終的に脳で知覚する柔らかいといった感性情報を“皮膚感覚”とする。しか しながら,ヒトの皮膚感覚は圧力や温度,電気など複数種類の刺激に対して感覚を生起する。 そのため,我々が日常的に行っている物体の手触りや風合い(テクスチャ)を実際に知覚す る過程も,図 1.1 に示すように非常に複雑であるとされる[1]。さらに,実際の“粗い”“柔 らかい”といった感性情報の知覚においては,力覚や温覚などの皮膚上の受容器から得られ る情報に加えて,自身の腕の動きなどを含む筋運動や,視覚や聴覚から得られた情報も含め て行われておりこれら認知プロセスに関する研究は現在も盛んに行われている[2] 図 1.1 触覚の認知プロセス([1]を基に編集)

知覚

テクスチャ

解析

粗い

柔らかい

滑る

筋運動

力覚

温覚

視覚

聴覚

(10)

2 機械的には,触覚の知覚は皮膚中に分布している複数の機械受容器が皮膚の変形(または 振動)を神経に伝達することで行われる。機械受容器は具体的には表皮に分布する自由神経 終末,表皮と真皮の境界に分布するマイスナー小体およびメルケル触盤,真皮に分布するパ チニ小体およびルフィニ終末が存在し,それぞれが異なった速度,大きさの変形に応答する [2]。皮膚感覚によって得られる手触りや風合いの定量的な評価は先述した通り非常に複雑で あり,未だ大きな課題であるが,これらの受容器単体での力覚センサとしての応答特性につ いては,これまでに数多くの調査が行われており,各機械受容器単体や複合的なものが明ら かになってきている[3]。例えば,ヒトは手掌部母指球において周波数では0.5~500Hz 程度, 変位においては0.1µm から 5.0mm 程度の範囲で取得することが可能である[4]。また,対象 物への接触面積に伴い検出感度が向上することも知られている[5]。この特性を荷重センサと してみる場合,性能を定量的に比較する必要がある。現在市販されている荷重センサは,ひ ずみゲージや容量式が存在しているが,これらは許容できるひずみや機械的なストローク の制限から,最小分解能を向上させると計測レンジが小さくなり,計測レンジを大きくする と最小分解能が低下するトレード・オフの関係となっている。そのため,荷重センサの性能 を評価する指標として,最小分解能に対する計測レンジの比であるダイナミックレンジを 使用する。 図 1.2 ヒト力覚の検出特性 1 10 100 1000 10000 100000 10 100 1000 10000 ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジ 空間解像度 [pixel/mm]

空間解像度 [/m]

10

1

10

2

10

3

10

5

10

4

10

3

10

2

10

1

10

0

10

4

ミッ

レン

ー小体

ルケ

ル触盤

パチ

小体

ルフ

終末

単一受容器が反応

各受容器の配置密度

(11)

3 図 1.2 はヒトの力覚特性を,空間解像度(対象物との接触面長さの逆数)に対するダイナ ミックレンジを示している。注釈では,各触覚受容器の配置密度を記載している。接触面が 大きくなる(空間解像度を落とす)と刺激に反応する受容器の数が増えダイナミックレンジ が向上し,非常に高い感度での検出と,細かいパターンの検出両方が行える特性となってい る。図 1.3 はこの特性と,現在市販されているロードセルやフォースゲージなどの荷重セ ンサの性能比較であり,単純に荷重センサとしての性能でも,ヒトの皮膚感覚は工業製品に 劣らない性能を有していることが認められる。また,ヒトは0.27mm 程度離れた点での刺 激を分別することが可能との計測結果[10]も得られており,皮膚感覚に相当する情報の取得 技術には,少なくともこれらの荷重センサとしての性能を十分に有している必要がある。さ らに実際の手触りを検出するセンサ実現に向けては,センサあるいは信号処理の技術開発 が必要である。 図 1.3 ヒト[3-5]と製品[6-9]における荷重検出範囲に対するダイナミックレンジの比較

[6] Unipalse, USB58

[7] Touchence, SP22-FFC15

[8] IMADA, ZTA-5N

[9] AND, LCC21N100

1 10 100 1000 10000 100000 10 100 1000 10000 ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジ 空間解像度 [pixel/mm]

空間解像度 [/m]

10

1

10

2

10

3

10

5

10

4

10

3

10

2

10

1

10

0

10

4

ミッ

レン

ヒト

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4

1.1.2 触覚センサに期待される応用

図 1.4 は触覚センサに期待される各応用である。ヒューマンインタフェースとしては, 電子デバイスへの入力が,ロボットインターフェースとしては,物体把持の分野で期待され ている。特に,電子デバイスへの入力に関しては,近年,スマートフォンの普及により,非 常に多くのデバイスが使用されている。物体把持を目指した触覚センサも,高速応答可能な ものが製品化されている。今後,実現が期待されている応用としては,ロボット等の表面を 覆う柔軟かつ大面積な人工皮膚や,医師の触診を簡易的に実現するヘルスケアデバイス,内 視鏡やカテーテルを用いた治療技術における情報の補完,工業製品の触感評価や設計のた めの計測,定量化などが挙げられる。これら新たに期待されている触覚センサ応用において は,デバイス開発のみならず,前節の認知プロセスも含めた信号の意味づけなど多くの課題 が残っている[11] 図 1.4 触覚センサに期待される応用

把持制御

BioTac

荷重

(触覚)

面積

指先

全身

入力

Apple

感性

(皮膚感覚)

人工皮膚

Tokyo Univ.

触感の評価

Olympus

先端医療

Google

ヘルスケア

(13)

5

1.1.3

既往の研究

前節のような多くの応用に向けて,非常に多くの触覚センサが様々な構造や材料で開発 されている。図 1.5 はこれまで開発されてきた触覚センサのいくつかの例を,それを構成 する材料で大別し示している。柔軟な感光性ポリイミド膜集積回路を用いたハードネスセ ンサ[12]や,ファイバブラッググレーティングセンサを用いた触覚センサ[14],フィルムコン デンサを利用した触覚センサ[16]等の柔軟な材料を用いた触覚センサ[12-25]では,許容される メカニカルストロークが大きく,測定可能である荷重のレンジが大きいことや,複雑な形状 をした表面にも追従できるという長所を持っている反面,荷重分解能が低い,画素増大に伴 い配線数が膨大になるため小型化が困難であるという短所が存在する。また,シリコンダイ ヤフラムを用いたハードネスセンサ[30]CMOS-3 軸触覚センサアレイ[26]のような半導体材 料を用いたもの[26-32]では信号処理がデバイスで行えるため高密度なアレイ化が可能である ことや,荷重分解能が高いという長所を持っている反面,材料特性上許容されるメカニカル ストロークが小さく,測定レンジが柔軟なものに比べて小さくなってしまうという欠点が ある。 図 1.5 構成材料別の触覚センサの開発事例 Liu, et.al, Sens. Act. A 117(2005) 50–61

K. N oda, et.al., Sens. Act. A, 215, (2014), 123-129

D. Alvares, et.al., Sens. Act. A, 196 (2013), 38–47

有機

M. Adam et al. / Sensors and Actuators A 142 (2008) 192–195 N. T. Vinh, Sens. Act. A,

231, 15 (2015), 35–43

H. Takao, et.al., Sens. Act. A, 160, (2010), 69-77

半導体

M. Sohgawa et al. / Sensors and Actuators A 186 (2012) 32–37 Sensors 2016, 16(5), 718

複合

大面積・柔軟

微細・高感度

(14)

6 このように,各触覚センサには長所,短所が存在しており,それぞれの特徴を生かした応用 分野が期待されている。有機物の柔軟さ,シリコンの高感度を同時に実現するためそれらの 材料を複合して実現した触覚センサも開発されている[33-36]が,図 1.6 に示すように高い空 間分解能とダイナミックレンジ,十分な面積を兼ね備えたセンサデバイスは実現されてい ない。加えて,人間の脳を超える情報処理システムが開発されていない現状では人間以上の 物体判別をもつために,高感度かつ多機能性を有する触覚センサの開発も必要である。 図 1.6 ヒト触覚と既存の触覚センサの性能比較 また,香川大学の高尾研究室においては人間と同等以上の触覚を得るためにシリコン MEMS 技術を用いることで素子の柔軟性と触感機能の集積化を可能とする新しい構造の触 覚イメージャーを実現してきた[32]。図 1.7 に柔軟型シリコン MEMS 触覚イメージャーの概 略図を示す。構造は空気圧で支持した一枚のシリコンダイヤフラム上に様々な機能のセン サをアレイ状に集積化したものとなっている。シリコン集積化技術により,容易に高性能な センサを高密度に集積化でき,力覚分布や温度分布の取得を可能とした。また,信号処理回 路との一体化が可能であるため,配線数を少なくすることが可能である。MEMS 技術を用 いることによりセンサ部分を薄化し,柔軟に変形可能な構造であるダイヤフラムを実現し ている。さらにセンサ部分となるダイヤフラムを空気圧により支持することで,接触に対し て反発力を実現している。この手法で開発されたセンサは,基板材料がシリコンであるため, 柔軟な変形が出来ず,大面積化は困難であるものの,寄生成分が少ないため低ノイズである こと,半導体ピエゾ抵抗を使用することで高感度であること,柔軟なダイヤフラム構造を実

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[14]

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[16]

[17]

[18]

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[21]

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[34]

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[29]

[31]

[32]

1

10

100

1000

10000

100000

10

100

1000

10000

空間解像度 [pixel/mm]

ヒト

有機

複合

シリコン

空間解像度 [pixel/m]

10

1

10

2

10

3

10

5

10

4

10

3

10

2

10

1

10

0

10

4

ミッ

レン

ヒト

超触覚領域

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7

現することで許容できるメカニカルストロークを大きくすることができる特徴を持ってい るため,ダイナミックレンジを大きくとること,空間解像度を高くする上では,非常に有利 な方式となっていると考えられる。

(16)

8

1.2 研究の目的

1.2.1

機能集積型皮膚感覚センサの実現

前節では,これまで開発されてきた既往の触覚センサについて,荷重センサとしてのヒト の触覚との比較を行った。本研究においては,ヒトの触覚に相当する触覚センサを実現する ため,高感度(大ダイナミックレンジ)かつ高ロバストなデバイス構造を有する触覚センサ を開発する。また,硬さや滑りといった荷重よりも高次な情報を直接取得し,図 1.8 に示す ような触覚情報を使用した,物体表面の評価を行うことが可能な皮膚感覚センサを実現す ることを第一の目的とする。デバイスを実現するにあたり,大面積の情報分布が取得可能な アレイ構造,小型なセンサが実現可能な単画素構造についてそれぞれ製作を行う。また,電 気配線が不可能な場所からも情報を取得可能な検出手法として,光学式センサについても 検討を行い,それぞれの構造もしくは検出方式それぞれが実現されることで可能となる応 用事例について,比較を行う。 図 1.8 皮膚感覚による表面評価イメージ

粗さ

温度

摩擦力

湿度

圧力

縦弾性係数

冷温感

凹凸

湿乾

硬さ

摩擦感

粗さ

温度

摩擦力

湿度

圧力

縦弾性係数

金属

植物

動物

(17)

9

1.2.2

集積化皮膚感覚センサの医療応用展開

近年,内視鏡やカテーテルを用いた,患者への術後負担が少ない低侵襲治療技術開発が 盛んに行われ,有効性が高まりつつある。しかし,これらの治療においては,医師が取得可 能な情報が大きく限定されるという問題が存在している。例えば,内視鏡治療時において は,体温や,触診により得られる情報など,本来の外科手術では容易に得ることができる 情報が得られない。このことは,病変部位や,治療の可否の判断を誤るリスクを抱えてお り,重要な研究課題となっている。本学においては,軟性内視鏡を用いて,従来の内視鏡 手術以上に侵襲性の低い治療手法の開発プロジェクト(Kagawa NOTES project)をはじ めとした,多くの先進的な医療技術開発が盛んに行われている。それらの開発に伴い,発 生した技術的な課題を解決するための工学的な技術開発を行うための,医工情報領域融合 による新産業創出拠点が設置されるなど,先端的な医療技術や,その実現に大きく貢献可 能な研究が迅速に行える環境ができてきている。本研究では,開発した微小皮膚感覚セン サを各種の先端治療へ応用し,その有用性について重要な知見を得ることを第二の目標と する。

図 1.9 Kagawa NOTES project 図 1.10 医工情報領域融合による新産業 創出拠点

(18)

2

1.3 論文の構成

本論文では,半導体微細加工技術と集積回路技術を用いて複数の触覚情報を同時取得可 能な“集積化皮膚感覚センサ”を実現し,そのセンサ技術を医療展開することを目的とし た,一連の研究成果をまとめたものである。全6章から構成される本論文の構成を図 1.11 に示す。 本章「緒論」では,研究の背景及び目的について述べ,論文の構成を示している。 第2章「集積化皮膚感覚センサアレイ」では,複数の触覚情報を同時かつ高い空間分解 能で取得可能なセンサアレイを提案し,その製作と評価結果について述べている。 第3章「医療分野への集積化センサの応用手法の検討」では,軟性内視鏡手術で実現さ れていない治療中の圧力モニタリングシステムを体内で安定動作可能な集積化センサを開 発して実した。 第4章「構造色による触覚検出センサ」では,3章で実現したセンサ完全無線化するた め,内視鏡付属のカメラのみで圧力を取得可能な光学式センサを実現し,電気式センサと の技術比較を行った。 第5章「臓器硬さ検出」では,具体的な皮膚感覚センサの医療展開検討として,内視鏡 治療中での臓器硬さ検出を行うためのセンサを2章で提案した原理と,3章で検討した体 内で安定動作可能なデバイス構造で実現した。 第6章「考察」では,以上の開発や検討を通して得た各検出方式の比較を行った。 第7章「結論」では,本論文の取り組みをまとめ,皮膚感覚センサによって実現可能な 応用事例にかんする知見をまとめた。 図 1.11 本論文の構成 センサ開発 第1章 緒 論 第5章 臓器硬さ検出 医療応用への展開 第3章 医療分野への集積化センサの応用手法 第4章 構造色を用いた情報検出 第2章 集積化皮膚感覚センサアレイ 第6章 考察

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3

参考文献

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(20)

4

[22] A. Shokuhfar, P. Heydari, M.R. Aliahmadi, M. Mohtashamifar, S. Ebrahimi-Nejad R., M. Zahedinejad, Microelectronic Engineering, Volume 98, October 2012, Pages 338-342.

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[24] Kentaro Noda, Kiyoshi Matsumoto, Isao Shimoyama, Sensors and Actuators A: Physical, Volume 215, 15 August 2014, Pages 123-129.

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[26] Ma´ria A´ da´m, Tibor Moh´acsy, P´eter J´on´as, Csaba D¨ucs˝o,´ Eva V´azsonyi, Istv´an B´arsony, Sensors and Actuators, A 142, 192–195, 2008.

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[28] Lihua Lei, Linjuan Deng, Guofang Fan, et al.,Measurement 48 (2014) 155–161,

[29] Nguyen Thanh-Vinh, Hidetoshi Takahashi, Kiyoshi Matsumoto, Isao Shimoyama, Sensors and Actuators A: Physical, Volume 231, 15 July 2015, Pages 35–43.

[30] Yoshihiro Hasegawa, Mitsuhiro Shikida, Takeshi Shimizu, Takaaki Miyaji, Hikaru Sasaki, Kazuo Sato, Koichi Itoigawa, Sensors and Actuators, A 114, 141–146, 2004.

[31] Mingxuan He, Rui Liu, Yuan Li, Hong Wang, Xin Lu, Guifu Ding, Junjie Wu, Ting Zhang, Xiaolin Zhao, Sensors and Actuators A: Physical, Volume 194, 1 May 2013, Pages 128–134. [32] Hidekuni Takao, Masaki Yawata, Kazuaki Sawada, Makoto Ishida, Sensors and Actuators A: Physical, Volume 160, Issues 1–2, May 2010, Pages 69–77.

[33] Sho Asano, Masanori Muroyama, Travis Bartley, Takahiro Kojima, Takahiro Nakayama, Ui Yamaguchi, Hitoshi Yamada, Yutaka Nonomura, Yoshiyuki Hata, Hirofumi Funabashi, Shuji Tanaka, Sensors and Actuators A: Physical, Volume 240, 1 April 2016, Pages 167-176.

[34] Nguyen Thanh-Vinh, Nguyen Binh-Khiem, Hidetoshi Takahashi, Kiyoshi Matsumoto, Isao Shimoyama, Sensors and Actuators A: Physical, Volume 215, 15 August 2014, Pages 167-175. [35] Chih-Chieh Wen, Weileun Fang, Sensors and Actuators A: Physical, Volumes 145–146, July– August 2008, Pages 14–22.

[36] Masayuki Sohgawa, Daiki Hirashima, Yusuke Moriguchi, Tatsuya Uematsu, Wataru Mito, Takeshi Kanashima, Masanori Okuyama, Haruo Noma, Sensors and Actuators A: Physical, Volume 186, October 2012, Pages 32–37.

(21)

5

2 集積化皮膚感覚センサアレイ

2.1 デバイスの構成

図 2.1 は機能集積化皮膚感覚センサアレイの構成図である。本センサは薄膜化すること で柔軟性を確保したシリコンダイヤフラム上に形成されたピエゾ抵抗型検出回路および人 間の指紋構造を模した微細な接触子構造,その周囲に配置される基準面構造によって構成 される。基準面は,センサのロバスト性を確保する上で非常に重要な,同一箇所の摩擦係数 および硬さ情報を同時に検出するうえで重要な働きを持っている。接触子はシリコンダイ ヤフラム中央に形成し,裏面より印加される空気圧により与えられる初期変位を持つ。この 接触子に対して接触する対象物からの垂直荷重および水平荷重を検出回路で検出する。 図 2.1 機能集積化皮膚感覚センサアレイ構成図

Friction

Sensing

Hardness

Sensing

Detection

Circuits

Air Pressure

Contact-tips

Sensor Pixel

Reference Plane

z

y

x

(22)

6

2.2 動作原理

2.2.1 ピエゾ抵抗

本デバイスの荷重計測は,応力に対し線形に応答するピエゾ抵抗を用いて行う。ひずみゲ ージにおける抵抗値変化の一般式を式(2.1)に示す。

L

L

R

R

)

2

1

(

(2.1) ここで

L

:長さ,

R

:抵抗,

:比抵抗,

:ポアソン比,

L

R

:それぞ れの変化量である。デバイスに用いる半導体結晶では金属結晶と異なり,抵抗率変化が主と なるために第一項は微小項と考えることができ,式(2.1)は以下のように抵抗率の変化のみで 表せる。

L

L

R

R

)

2

1

(

(2.2) 異方性結晶の場合,抵抗率の変化と応力の関係は面方向と力の向きの2階のテンソルとな るが,対象成分の関係から,

/

及び

は6つの成分で表わすことができる。このことか らピエゾ抵抗係数は6次の正方行列で示され,単結晶シリコンの場合結晶の対称性から独立 成分は3つとなり,

xyz

座標系の座標軸を結晶軸方向にとった場合これらの関係は式(2.3)で 表わすことができる。

zx yz xy zz yy xx zx yz xy zz yy xx

44 44 44 11 12 12 12 11 12 12 12 11

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

/

/

/

/

/

/

(2.3) ここで,図 2.2のような

lth

空間内の

lt

平面上に配置された薄板ひずみゲージのピエゾ抵 抗効果による抵抗率の変化を考える。図2-3のような厚みが十分に小さいピエゾ抵抗に荷重 が加えられる場合,厚さ方向の変形はほぼ一様である平面応力状態を考えることができる。 このとき,ひずみゲージに生ずる応力は図中に示したように面内の互いに垂直な引張り応 力 ll  および tt  とせん断応力 lt  または tl  からなる。せん断応力成分の大きさは応力の対称 性から等しいので独立成分は3つとなり,電流方向の抵抗率変化は式(2.4)で与えられる。

(23)

7 図 2.2 薄膜ひずみゲージに生ずる応力成分 lt lt tt tt ll ll ll

/

(2.4) ここで各係数は,それぞれの応力成分に対応するみかけのピエゾ抵抗係数である。いま単 結晶シリコンの結晶軸に対して

l

軸がl1,m1,n1,

t

軸がl2,m2,n2,

h

軸がl3,m3,n3,の, 方向余弦をもつとすれば,それぞれの応力は,xyz軸に対する座標変換で以下のように得る ことができる。                                          3 21 1 3 2 1 3 2 1 3 21 1 3 2 1 3 2 1 n n n m m m l l l n n n m m m l l l zz zy zx yz yy yx xz xy xx T hh ht hl th tt tl lh lt ll                   (2.5) 式(2.5)の右辺を展開し,整理することで式(2.6)が得られる。                                                                       zx yz xy zz yy xx hl th lt hh tt ll n l l n n l l n n l l n l n l n l n m n n m m n n m m n n m n m n m n m l m m l l m m l l m m l m l m l m l n n n n n n n n n m m m m m m m m m l l l l l l l l l             1 3 1 3 3 2 3 2 2 1 2 1 3 3 21 2 1 1 1 3 1 3 3 2 3 2 2 1 2 1 3 3 2 2 1 1 1 3 1 3 3 2 3 2 2 1 2 1 3 3 2 2 1 1 1 3 3 2 2 1 2 3 2 2 2 1 1 3 3 2 2 1 2 3 2 2 2 1 1 3 3 2 2 1 2 3 2 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 (2.6) 式(2.3)の係数マトリックスをπ,式(2.6)の係数マトリックスをTとおくと,抵抗率でも同様 の関係が得られ,lth空間内での抵抗率の変化は式(2.7)で表現できる,

      

T

T T   / (2.7) となり,式(2.7)を展開することで各軸方向のピエゾ抵抗係数を求めることができる。最終 的に,lt平面上のピエゾ抵抗係数はそれぞれ以下のようになる。

)

)(

(

2

11 12 44 12 12 12 12 12 12 11

l

m

m

n

n

l

ll

(2.8)

ll

tt

l

t

tl

tl

lt

lt

Electrode

Strain gauge

h

(24)

8

2

2 2 1 2 2 2 1 2 2 2 1 44 12 11 12

l

l

m

m

n

n

tt

(2.9)

11 12 44



1 2 1 2 1 2

2

l

l

m

m

n

n

lt

(2.10) 応力センサとしてピエゾ抵抗を用いる場合,ピエゾ抵抗を係数は可能な限り大きくする必 要があるため,結晶方向に対する依存性を検証する必要がある。式(2.4)における第二項およ び第三項は lt tt ll     , のとき無視することができるため,式(2.8)を用いることでその影 響を計算できる。図 2.3 に,

(

001

)

面上に配置されたピエゾ抵抗について,

[

100

]

方向から の角を

として,計算を行った ll  の値を示す。計算においては,表 2.1 のピエゾ抵抗係数 を用いた。 表 2.1 単結晶Siのピエゾ抵抗係数[1] 導電形 抵抗率 [Ωcm] ピエゾ抵抗係数[10-11Pa-1] π11 π12 π44 n 11.7 -102.2 53.4 -13.6 p 7.8 6.6 -1.1 138.1 (a)p型 (b)n型 図 2.3 単結晶 Si

(

001

)

面上におけるピエゾ抵抗係数 図 2.3 から,(001)面上ひずみゲージのピエゾ抵抗係数は 90[deg]の周期をもつ関数である ことがわかる。これは単結晶シリコンにおいて直行する方向の軸の性質が等しいことを意 味している。また,p 型ひずみゲージでは[110]・[l10]方向,n 型ひずみゲージでは[100]・[010] 方向に電流の進行方向および応力方向を取って配置した場合,単位応力あたりの抵抗率変 化が最も大きなピエゾ抵抗が形成可能である。 0 20 40 60 80 0 45 90 135 180 225 270 315 360 πl l[Pa × 10 -11] θ[degree] [100] [110] [010] [l10] [0l0] [ll0] [0l0] [1l0] [100] [Crystal orientation] -120 -100 -80 -60 -40 -20 0 0 45 90 135 180 225 270 315 360 πl l[Pa × 10 -11 ] θ[degree] [100] [110] [010] [l10] [0l0] [ll0] [0l0] [1l0] [100] [Crystal orientation]

(25)

9

2.2.2

荷重検出

計測対象物表面に接触する接触子は,紫外線硬化樹脂SU-8 で形成され,物体表面から加 わる荷重をダイヤフラムへ伝達する。また,ダイヤフラムは,SOI ウェハの支持基板と中間 酸化膜を選択的にエッチングすることによって形成する。センサの 3 軸荷重検出の原理図 を図 2.4 に示す。また,ピエゾ抵抗を用いた荷重検出回路について図 2.5 に示す。 図 2.4(a)はセンサの非接触状態を示している。非接触状態では,接触子およびダイヤフラ ムは,裏面から印加された空気圧により初期変位を有している。この状態から接触子に水平 荷重が加わるとダイヤフラムに荷重が伝わり,図 2.4(b)のように変形する。このとき,接触 子両端にはそれぞれ引張,圧縮応力が加わり,そこに配置したピエゾ抵抗の抵抗値も反対に 変化する。それぞれの抵抗を図 2.5(a)に示すようにハーフブリッジ回路として接続するこ とで,2 つのピエゾ抵抗の変化を電圧の変化として検出することができる。 また,接触子に垂直方向の荷重が加わった状態を図 2.4(c)に示す。このとき,接触子両端 の応力は引張もしくは圧縮の同方向になり,水平荷重検出回路の電圧は変化しない。垂直荷 重の検出は,接触子外周上の全方向に配置したピエゾ抵抗の変化を検出することで行う。検 出用回路の構成を図 2.5(b)に示す。検出回路には,結晶方向がなく,ピエゾ抵抗効果が無い 多結晶シリコンを基準抵抗として使用する。 図 2.4 3 軸荷重の検出原理

-

-

-

+ +

+ +

+ +

(b) Vertical load applied

(c) Horizontal load applied

(a)Steady state

(26)

10 (a)水平荷重検出回路 (b)垂直荷重検出回路 図 2.5 荷重検出回路の構成 図 2.6 に接触子構造に対する各ピエゾ抵抗の配置図を示す。接触子の外周部に対して垂 直になるように水平荷重検出用抵抗を配置している。その間に垂直荷重検出抵抗を 4 つ配 置し,金属配線で各抵抗を結ぶことで接触子周囲の抵抗値変化を平均化する。 図 2.6 機械構造に対するピエゾ抵抗の配置

Rdif

Rdif

VDD

V

OUT

GND

Rdif

Rref

VDD

V

OUT

GND

700µm y x x-direction y-direction z-direction Reference Plane Contact-tip

(27)

11

2.3 新機能の集積

2.3.1 摩擦力検出

ヒトが物体に触れ,表面を撫でたとき,滑りに対する応答はガラスや金属,ゴムなどの材 質感を感じるために重要な情報である。この,滑りに対する応答は垂直力に対する摩擦力と して計測することが可能である。一般に,摩擦力は,対象年が接触している場合と,滑って いる場合それぞれで,静止摩擦力または動摩擦力と分類することができる。皮膚感覚センサ においては,ヒトのようにセンサが対象物上を走査する場合の応答を動摩擦力として取得 する必要がある。また,垂直荷重の変化によらない材料自身の物性として,動摩擦係数とし え取得可能であることが望ましい。本研究においては,基準面を有したデバイス構造により, センサと対象物間の接触荷重に依存せず動摩擦係数を取得可能となる。動摩擦係数の取得 原理を図 2.7 に示す。デバイスを計測対象物に対して接触・走査させた際,摩擦力が接触子 に水平方向荷重として加わる。このとき,基準面によって一定値以上のダイヤフラム変位は 制限され,接触子に加わる垂直荷重(抗力)は一定値に固定される。動摩擦係数はこの垂直 荷重が一定であることから,水平荷重検出回路の出力信号は,動摩擦係数に比例した信号と なる。 図 2.7 摩擦力測定概念図

Measuring object

F

x

Scanning

z

F

Constant

(28)

12

2.3.2 柔軟度検出

ある物体の硬さ(柔らかさ)は,材質判別,さわり心地などの触感評価を行う上で摩擦と 並び非常に重要な要素である。この要素を,ヒトは物体を押し込んだ際の相手の変形として 感じることができる。工業的には,硬さは金属の熱処理結果の評価などに広く用いられてお り,ブリネル硬さやビッカース硬さなどの多くの試験方法で評価が行われているが,これら の評価方法は破壊検査であり,ヒトの感覚と一致する情報は得られない。一方で,ゴムなど の樹脂材料硬さの評価手法として用いられているデュロメータ硬さ(Shore A, D など)はヒ トと同じように対象の弾性変形を評価する方法である。皮膚感覚センサにおいて物体の硬 さもしくは柔らかさを評価するためには,この押し込み硬さを基準とした情報の取得が必 要となる。以降本論文においては,特に断りのない限り,デュロメータ硬さを硬さとして取 り扱う。皮膚感覚センサでの硬さの取得原理を図 2.8 に示す。接触対象物に対して,センサ を接触させた際,接触子は対象物から接触荷重を受ける。接触対象物と基準面構造が接触し ている状態では,接触荷重のほとんどが基準面で支持され,接触子に加わる荷重(変位)は, 接触子を支持するシリコンダイヤフラムと,対象物の機械特性(ヤング率,ポアソン比)の みで決定される。この接触子変位(対象物からの押し込み量)が,押し込み硬さに対して層 間のある情報となる。この原理によって,例えばカテーテルをはじめとする体内で使用され る治療器具のように対象物との接触荷重が不安定な状況下においても,安定して対象物の 硬さを検出することが可能となる。 図 2.8 柔軟度センシング概念図

Soft object

Hard object

Indentation Height

(29)

13

2.4 設計

2.4.1

機械特性

皮膚感覚センサの機械特性は,主にシリコンダイヤフラムによって決定される。皮膚感覚 センサアレイの設計において,接触子の初期変位は追従可能な対象物表面を考えるうえで 重要な指標である。この目標値をなめらかな表面に十分追従可能である,3µm と設定した。 式(2.11)および(2.12)に等方性材料の円板に圧力差が加わった場合の変形量および最大応力 の理論式を示す。 2 2 max

4

3

t

P

r

(2.11) 4 3 2 max

1

16

3

r

Et

P

(2.12) ここで,r:半径,t:板厚,P:圧力差,E:ヤング率,v:ポアソン比である。単結晶シリコ ンは結晶異方性材料であるが,本節においては,ダイヤフラムが円形であること,接触荷重 も中央に加わることから,ダイヤフラムを構成する平面上の各軸のヤング率およびポアソ ン比の平均値(150GPa と 0.28)を持つ等方性材料と近似して取り扱い計算を行った結果 を図 2.9 に示す。 図 2.9 ダイヤフラム最大変位及び最大応力と半径の関係 図 2.9 から,印加圧力 200kPa で目標変位を達成可能な半径 350µm をダイヤフラム寸法 とした。続いて,回路保護膜によるダイヤフラムの機械特性に対する影響の解析を行った。 シリコンダイヤフラム上にはピエゾ抵抗型荷重検出回路が形成されるため,物体との摩擦 などの刺激で簡単に断線などの故障を引き起こす。それを阻止するため,集積回路構造の段 差を覆う十分な厚さを持った,SU-8 薄膜を形成することで,回路面の保護を行う。この薄 膜はまた,微少な半径を持つ接触子とシリコンダイヤフラムの剥離を防止するための密着 Pressure : 100[kPa] Thickness : 10[um] 0 50 100 150 200 0 2 4 6 8 10 100 150 200 250 300 350 400 450 500 M axi m u m st re ss[M Pa] Am o u n t o f d e fl e ct io n [u m ] Radius[um] Wmax[um] Smax[MPa]

(30)

14 層としても機能する。しかしながら,ダイヤフラム上への薄膜形成は,ダイヤフラムの機械 的な変形を妨げるため,センサ感度に悪影響を与える。そこで,回路保護膜の有無によるセ ンサ感度への影響を考察した。今回は,図 2.10 に示すようにダイヤフラム中心に対して集 中荷重が加わる際,回路保護膜の膜厚変化による応力および機械的変位への影響を考察す る。 図 2.10 デバイス構造 一般的なMEMS マイクロセンサでは,物理量を電気信号に変換する際,構造の機械的な 変位を静電容量として検出する方式や,構造に加わる応力をひずみゲージなどの抵抗変化 によって検出する方法が行われている。本研究で製作する皮膚感覚センサにおいても,ピエ ゾ抵抗を用いて信号取得を行っており,これらセンサの持つ本質的な感度は,機械構造の変 位量または応力の変化によって支配される。今回の解析では,密着層の膜厚増加による感度 低下への影響を明らかにするため,シリコン表面の応力および,ダイヤフラムの変位量のそ れぞれに密着層の膜厚増加が与える影響を解析した。まず,皮膚感覚センサのデバイス構造 を,SU-8 密着層とシリコンの二層によって構成されるダイヤフラムとして図 2.10に示すよ うなモデルとした。ここでは,シリコンの膜厚をtSi,SU-8 密着層の膜厚を tSU-8,ダイヤフ ラムの半径をR とし,外力 F はダイヤフラム中央に加わるものとする。一般に,ヤング率 E,ポアソン比 ν の材料で構成された,半径 R のダイヤフラムに荷重 F が加わった場合の 中央からの位置r でのダイヤフラム変位量は,式(2.13)で表される。

Integrated Circuit

Silicon Substrate

SU-8 Adhesive layer

R

2

8  SU t Si t

F

r

z

t

Diaphragm

(31)

15

r

R

r

r

R

Et

F

r

d

ln

4

)

1

(

3

)

(

3 2 2 2 2

(2.13) このとき,多層膜ダイヤフラムの等価的なヤング率E は,各層のヤング率およびポアソン 比が等方性である場合,式(2.14)で表される[2]。また,シリコンのヤング率をESiSU-8 のヤ ング率をESU-8として,z 軸方向のヤング率分布を式(2.15)のように定義する。 8 8 8 2 1 2 1     

SU Si SU SU Si Si i i i i i

t

t

E

t

E

t

t

E

t

E

(2.14)

8

)

(

SU Si

E

E

z

E

8

0

SU Si Si Si

t

t

z

t

t

z

(2.15) これらの式を用いることで,ダイヤフラムの変位変化が明らかになる。また,円形ダイヤ フラム内の半径方向の位置r,円周方向の位置 z における,半径方向および円周方向の応力 は,ダイヤフラム内の中立面をλ とすると,それぞれ式(2.16),(2.17)で定義される。           ( ) 1 ( ) ) 1 ( ) )( ( ) , ( 2 2 2 d r dr d r r d dr d z z E z r r

(2.16)           1 ( ) ( ) ) 1 ( ) )( ( ) , ( 2 2 2 d r dr d r d dr d r z z E z r

 (2.17) また,微小体積内での応力の和はつりあっているため,式(2.18)が成り立つ。

(

,

)

(

,

)

0

V

r

r

z

r

z

dV

(2.18) 式(2.18)を λ について解くことで,ヤング率の異なるダイヤフラム内での中立面が式(2.19) のように求まる。

   

8 8 0 0

)

(

)

(

SU Si SU Si t t t t

dz

z

E

zdz

z

E

(2.19) ここまでの式を用いて,応力の変化を求めることができる。図 2.11 は,シリコンのヤング 率を150GPa,SU-8 のヤング率を 2GPa として,シリコンダイヤフラム上に形成した密着 層が変位および応力に与える影響について解析を行った結果である。変位,応力共に,密着 層の膜厚がシリコン膜に対して 40%のとき,センサの感度が本来の半分になることが分か る。また,密着層の膜厚がシリコン膜に対して10%以下であれば,感度低下を 20%以下に できることが分かる。検出回路は最大で2µm 程度の段差を有しているので,この段差を十 分にカバーできる3.5µm に膜厚を決定した。

(32)

16 図 2.11 SU-8 薄膜構造がダイヤフラム機械変位に与える影響

0.00

0.25

0.50

0.75

1.00

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

d

/

d

0

t

SU-8

/ t

Si

Thickness Ratio of SU-8 to Silicon

D

e

fl

e

c

ti

o

n

R

a

ti

o

0.00

0.25

0.50

0.75

1.00

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

d

/

d

0

t

SU-8

/ t

Si

t

si

= 10µm

0.00

0.25

0.50

0.75

1.00

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

σ

/

σ

0

t

SU-8

/ t

Si

Su

rfa

c

e

Str

e

s

s

R

a

ti

o

0.00

0.25

0.50

0.75

1.00

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

σ

/

σ

0

t

SU-8

/ t

Si

Thickness Ratio of SU-8 to Silicon

t

si

= 10µm

(33)

17

2.5 検出回路

各触覚情報の取得機能を有するセンサデバイスについて,回路設計および,図 2.12 に示 すデザインルールの下でCAD を用いた機械設計を行った。各寸法は,FROM 香川メカトロ 研究室内の設備で製作可能な条件となっている。尚以下で示す SPICE による各チップの回 路図内に示すd および p はそれぞれ拡散抵抗と多結晶シリコン抵抗のシート抵抗率である。 図 2.12 デザインルール P型拡散層 多結晶シリコン 最小線幅10µm 最小線幅10µm : : アルミ電極 : 最小線幅20µm コンタクトホール : 10µm×10µm 基板コンタクト領域 接触子

(34)

18 設計を行った1 画素のレイアウトを図 2.13 に,等価回路を図 2.14 に,チップ全体のレ イアウトを図 2.15 にそれぞれ示す。各寸法について,チップサイズは 5260×9905µm,接触 子径は200µm,画素数は 4×4,ダイヤフラム径は 700µm,画素ピッチは 820µm で設計を行 った。また,設計を行ったデバイスの三次元構造図を,図 2.16 に示す。 図 2.13 1 画素のレイアウト 図 2.14 1 画素の等価回路 図 2.15 チップ全体のレイアウト VDD GND Vx Vy Vz

(35)

19 図 2.16 設計した集積化皮膚感覚センサの断面図

Detection Circuit

Silicon Diaphragm

Reference Plane

Contact-tip

Air Pressure

Contact

Object

(36)

20

2.6 製作

2.6.1

製作プロセスの概要

図 2.17 に集積化皮膚感覚センサアレイの製作プロセスを示す。本デバイスの制作プロセ スは,その構成に対して(a)センサおよび信号処理回路,(b)シリコンダイヤフラムアレイ, (c)センサ接触子および基準面構造の 3 つの形成工程に分けられる。本節では,FROM 香川 メカトロ研究室にて本デバイスを製作するにあたり行った各検討について述べる。 (a) 荷重検出回路の形成 (b) シリコンダイヤフラムの形成 (c) 回路保護層および各接触構造の形成 図 2.17 集積化皮膚感覚センサアレイの製作プロセス概要 デバイス製作プロセスは,図 2.18 に示すような面方位(100),活性層 10µm,中間酸化膜 1µm,支持基板 475µm の n 型 SOI ウェハを用いて行った。

(37)

21 図 2.18 使用する SOI 基板

2.6.2

基板コンタクト領域の形成

図 2.19 のように基板コンタクト用の N+型不純物領域を形成する。形成工程は,熱拡散 レジストに用いる熱酸化膜の形成,フォトリソ加工による酸化膜のパターニング,不純物源 であるOCD を用いた熱拡散,熱酸化膜の除去を順に行うことで終了する。 図 2.19 n+拡散領域の形成 熱酸化膜を熱拡散レジストとして用いる場合,不純物が下部のシリコンまで拡散されな いよう十分な膜厚を確保する必要がある。基板コンタクト領域の抵抗率は,金属配線と電気 的に良好に接続するために,可能な限り低いほうが望ましい。本デバイスの製作においては, 熱拡散温度を1050℃,拡散時間を 2 時間とした。その際必要な熱酸化膜の膜厚は,拡散の 理論[3]により予想され,350nm 以上必要であることが分かる。この条件以上の膜厚を持つ熱 酸化膜を形成するため,生成膜厚と酸化時間の関係について,条件出しを行った結果を図 単結晶Si(n型) Si酸化物 レジスト n型拡散領域・PSG p型拡散領域・BSG 多結晶Si p型多結晶Si Al レジスト SU-8 n 10µm 1µm 475µm 単結晶Si(n型) Si酸化物 レジスト n型拡散領域・PSG p型拡散領域・BSG 多結晶Si p型多結晶Si Al レジスト SU-8 n 10µm

(38)

22 2.20 に示す。その結果,3 時間の熱酸化を行うことで拡散レジストとして十分な膜厚が確保 できることが分かる。続いて,不純物拡散による不純物濃度の変化を確認するため,単結晶 シリコン基板一面にリン拡散を行い,拡散工程前後の基板表面抵抗率を比較した。その結果, 基板抵抗率の降下が確認され,不純物拡散が過不足なく行えることを確認した。 図 2.20 時間による酸化膜厚の変化 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 T h ic k n e ss m ] Process time[hours]

Temperature:1000 C

O

2

flow rate :5.9SLM

H

2

flow rate :4.4SLM

(39)

23

2.6.3

多結晶シリコン抵抗の形成

荷重検出回路の基準抵抗及び多層配線に用いる多結晶シリコンを図 2.21 のように形成 する。絶縁用の熱酸化膜を形成し,CVD によって多結晶シリコンを成膜後,不純物源 PBF を用いた熱拡散,フォトリソ加工によるパターニングによって形成する。この工程において, 必要な多結晶シリコン膜厚およびその抵抗率を得るため条件出し実験を行った。その結果 を図 2.22 と表 2.2 に示す。 図 2.21 多結晶シリコン抵抗形成 図 2.22 時間による多結晶シリコン膜厚の変化 CVD によって生成された多結晶シリコン膜の膜厚は,時間に比例しており,その成膜レ ートは,約6。7nm となる。また測定された抵抗率は各種回路動作に利用可能なものが得ら れており,拡散抵抗の抵抗率との比を回路設計に合わせて製作を行う。 単結晶Si(n型) Si酸化物 レジスト n型拡散領域・PSG p型拡散領域・BSG 多結晶Si p型多結晶Si Al レジスト SU-8 n 10µm 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 30 60 90 Tt hi ck ne ss m ] Reaction time[min]

(40)

24

表 2.2 熱拡散による抵抗率の変化 Thickness [µm] Temperature [ C] Resistivity [Ω/□] 0.2 1050 450.2 0.4 1050 80.5 0.4 1100 42.6 多結晶シリコンに対して熱拡散を行い,抵抗率を取得すると,その標準偏差が平均値の 10%以上になるという問題が発生した。そのため,基板位置に対する分布を調査した。その 結果を図 2.23 に示す。抵抗率は局所的に大きく変化しているのではなく,ウェハ中央部に 近づくにしたがって段階的に大きくなっていることが分かった。段階的な変化であれば,チ ップ内の抵抗率のばらつきは小さくなるため,大きな問題にはならないと考えられる。抵抗 率がばらつく原因としては,多結晶シリコンの膜厚が図 2.24 に示すようにウェハ中央部に 近づくにしたがって薄くなっていることが考えられる。 図 2.23 多結晶シリコンの抵抗率分布 図 2.24 多結晶シリコンの膜厚分布 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 200 250 300 350 400 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 R e si sti vi ty[Ω /] Coordinate[mm] 350-400 300-350 250-300 200-250 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 0.20 中央部 中間部 外周部 膜厚 m ]

(41)

25

2.6.4

拡散抵抗の形成

応力検出に用いるピエゾ抵抗の形成を図 2.25 のように行う。フォトリソ加工により絶縁 用酸化膜をパターニングし,不純物源PBF を用いて P 型半導体領域を形成する。この拡散 領域の抵抗率は,デバイス全体の等価抵抗に大きな影響を与える。そのため温度条件を 850 C から 1100 C の間で条件出しを行った。 図 2.25 拡散抵抗の形成 条件出しの結果を図 2.26 に示す。実験結果から温度条件によって抵抗率をコントロール することが可能であることが確認された。 図 2.26 B 拡散による抵抗率の変化 単結晶Si(n型) Si酸化物 レジスト n型拡散領域・PSG p型拡散領域・BSG 多結晶Si p型多結晶Si Al レジスト SU-8 n 10µm 0 20 40 60 80 100 120 850 900 950 1000 1050 1100 R es is ti vi ty /□ ] Temperature[ C]

図  1.7  柔軟型シリコン MEMS 皮膚感覚センサの概略図
図  1.9  Kagawa NOTES project  図  1.10  医工情報領域融合による新産業 創出拠点
表  2.2  熱拡散による抵抗率の変化  Thickness [µm]  Temperature [ C]  Resistivity [Ω/□]
図  4.4  FBG(ファイバブラッググレーティング)センサ  [4]

参照

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