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製作した高感度硬さセンサデバイスの評価

5 臓器硬さ検出

5.6 製作した高感度硬さセンサデバイスの評価

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5.6.2 荷重検出回路の動作検証

SU-8 面にPDMS 充填したセンサチップの基本的な特性を取得するため,荷重検出評価を 行った。評価すべき項目として,前回製作したセンサに対する感度とPDMS 充填による影 響考察を行う。今回使用した実験系を図 5.14 に示す。3軸ステージ(50nm 単位で駆動)

上に配置した電子天秤FZ500i(最小検出単位0。001g)を垂直方向に駆動し,天秤上のプロ ーブからその上部に配置したデバイスに荷重を加えた。このときのステージ変位量,電子天 秤の出力値,センサの出力信号を取得した。

(c)評価用実験時の各パラメータ 図 5.14 評価実験系

Resolution : 50 nm

Sample Object Signal

Force Gauge

Pump Position Controller

Air Pressure Drive

Circuit

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図 6-9 にセンサ上の接触子構造に加わった荷重に対するセンサの出力信号の関係を示す。

出力信号が概ね線形に応答しており,基本動作については確認が終了した。また,今回の評 価結果から,デバイスのもつ感度を計算した結果,0。49 mV/mN/Vとなった,これは,前 回製作したデバイスの垂直荷重感度0。07mV/mN/Vに対して,膜厚200µm程度のPDMSを 充填しているにも関わらず,感度が7倍となっている。PDMSを充填しない場合の感度向上 効果は,活性層膜厚の影響,ダイヤフラム径,回路設計の効果を考慮するとおよそ16倍と

なり,1。12 mV/mN/Vとなるが,今回の測定結果はその計算結果の56%の値となっており,

計算した結果である 98%よりも低い値となっている。このことから,PDMS 充填による感 度への影響を計算結果より大幅に少ないと予想される。また,今回の実験結果から,本デバ イスで人体硬さを検出するのに必要な最少分解能である,0.5mN については十分分解する ことができており,設計時における要求仕様を満たしていることを,実験により確認し,柔 軟な生体組織硬さ検出の可能性を示した。

図 5.15 印加荷重と出力信号の関係(動作電圧:2。5V,増幅率100)

検証実験は,デバイスに対して接触させていた物体を離した際の信号変化にかかる時間 を取得して行った。その結果,応答時間は0。1秒以下であり,計測における深刻な遅れで はないことが分かった。図6-11 では,接触荷重は秒単位で変化しているため,デバイス固 定が不十分であったことが分かった。続いて,PDMSを充填していないデバイスの荷重検出 回路の動作検証実験を行った。しかし,接触した際の荷重(3。6mN)に対して,ダイヤフラム

0.0 0.5 1.0 1.5

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

Out p u t Signal [mV ]

Normal Force to the Contact-tip [mN]

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が破断した。(図1)さらに,他に実装を行った2つのチップに関しても,10mN以下の接触 荷重でダイヤフラムが破断したため,PDMS を充填しない場合のデバイスの使用は困難で あると判断した。その一方で,PDMSを充填したデバイスでは少なくとも700mNまではダ イヤフラムが破断せず,700mN~900mN の範囲で破断した。このことから,PDMS を充填 することで,シリコンダイヤフラムの荷重耐性が大きく向上することを確認した。

図 5.16 ダイヤフラムが破断したチップ

5.6.3 柔軟対象物の硬さ検出

続いて,物体硬さ検出の基礎実験を行った。図 5.17に示すように,実装基板面と回路表 面を同一面に配置して,実装を行った。

図 5.17 実装済みデバイス

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この状態で,デバイスパッケージに対して,硬さの異なる8つのサンプルを接触させ,そ の際のパッケージと接触サンプル間の接触力を横軸に,縦軸に加重検出回路からの出力信 号の取得を行った結果を図 5.18に示す。各サンプルにおいて接触荷重が増えると出力信号 もそれに伴って増大し,最終的に変化が飽和していることが分かる。

図 5.18 各サンプルを接触させた際の出力信号の変化

そこで,各サンプルにおける飽和信号値を縦軸に,各サンプルの硬さを横軸にとったプロ ットが図 5.19である。それぞれのプロットが線形部分からずれている要因としては,物体 との接触角や,荷重検出回路のノイズ,物体自身の熱伝導率特性の違いによるものが挙げら れる。今回検出した硬さの範囲は,胃や肝臓といった臓器の硬さ検出が可能な値であり,最 小値である1HS は,皮下脂肪などの柔軟な組織以下の硬さである。これは,柔軟組織の病 変部位特定が期待できる結果だと考えられる。ここまでの実験結果から,小型センサパッケ ージを,内視鏡や,カテーテルといった体内治療器具に対して実装し,体内の硬さ情報を取 得する技術へ向けた展望が得られた。

図 5.19 サンプル硬さごとの出力信号値の変化量比較 0

2 4 6 8 10

0 1 2 3 4 5

Output Signal[mV]

Contact Force to Overall of Chip [N]

A16 A10 A7 A3 A1

Saturation 0.2N

0 10 20 30

0 10 20 30 40 50 60

Output Signal [mV]

Hardness [Shore A]

Contact Force : 0.2 N

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