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4 構造色による触覚検出センサ

4.2 設計

4.2.2 検出手法

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実際のディスプレイなどの制御には,デバイスそれぞれのカラーフィルター特性の違い 等の理由から,この等色関数をさらに座標変換し,カメラ出力であるRGB値への換算が行 われる。続いて,入射光スペクトルに対するXYZ座標値を得る計算式を示す。入射光スペ クトルのそれぞれの波長と,先ほどの XYZ 等色関数の積をとり,それを積分することで,

XYZの値を得ることができる。また,各値の絶対値については,Yを100として基準にす ることで,明るさの要素を除いて色だけの情報を抽出することができる。

x d S

K

X ( ) ( )

780

380

(4.6)

y d S

K

Y ( ) ( )

780

380

(4.7)

z d S

K

Z ( ) ( )

780

380

(4.8)

y d S

K

780

380

) ( ) (

100

(4.9)

) (

S 入射スペクトル )

(

x y()z() : xyz等色関数

こうして得たXYZ値に対して,RGB値への変換マトリックスを用いることで,RGB値 が得られる。今回は代表的な規格である CIE(Commission Internationale de l'Éclairage:

国際照明委員会) RGBマトリックス[2]を用いた換算を行った。以上の手順を用いて,一つ のスペクトルに対して,一つのRGB値が得られるので,この手順を繰り返して,実際の構 造色変化を画像化した。

 

 

 

 

 

 

 

Z Y X

B G R

0089 . 1 0144 . 0 0052 . 0

0887 . 0 4264 . 1 5151 . 0

4683 . 0 8971 . 0 3655 . 2

(4.10)

図7は計算して得られた構造間ギャップ変化に対する各スペクトルの有する RGB 値と,

その色の変化である。図7構造間ギャップの変化に対するRGB値の変化をプロットした結 果である。この結果,構造間ギャップが200-400nm(1µm)前後において,もっとも鮮明 に色の変化があることが分かった。

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図 4.20 構造間ギャップ長に対する構造色とRGB値変化

続いて,入射光スペクトルが変化すると,構造色そのものも変化する。太陽光・蛍光灯・

白色LED(内視鏡光源と近いと思われる)の波長スペクトルを用いて,この変化を計算し

た。

図 4.21 各光源の波長スペクトル 0

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

380 430 480 530 580 630 680 730 780

相対照度[a.u.]

波長[nm]

蛍光灯(5000K) LED(4000K) 太陽光(5300K)

77 (a)均一光

(b)太陽光

(c)蛍光灯(TOSHIBA T8 FL40SN-EDL(5000K))

(d)LED 図 4.22 使用光源が構造色変化に与える影響

表 4.1 各光源に対する構造色変化のまとめ

今回計算に使用したLEDの波長スペクトルにおいては,緑部分の波長が他の色に比べて 低く,その影響か構造色変化の振幅が小さくなっている。LEDは使用している各色のLED のスペクトルの合計で特性が変化するため,この特性を校正用に用いる場合は使用する光 源に合わせた解析が必要となる。また,全体の構造色変化特性は均一であることから,使用 する環境において光源に対するキャリブレーションは必要であるものの,構造間ギャップ の変化レンジそのものはどの光源に対しても変更する必要がないと考えられる。干渉色は デバイスに対する光の入射角が変化した際には,光路差および,構造間反射率が変化する。

それぞれの変化による構造色変化への影響を計算した。

光源種 構造色変化

均一光 太陽光 蛍光灯 LED

0nm 1000nm

構造間ギャップ

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図 4.23 入射角変化に伴う構造色の変化

ここまででデバイスの構造色変化をRGB 色空間を用いて予想してきたが,RGB 色空間を 用いた評価では構造色の視覚化はできても,最終的な取得物理量である圧力との関係が明 確にできていなかった。この対策として,HSV色空間を用いた構造色・圧力の換算法(定 量的な設計)について検討を行った。HSV色空間は,色相(Hue)、彩度(Saturation・Chroma)、

明度(Value・Lightness・Brightness)の三つの成分からなる色空間であり,この色空間でセ ンサの構造色を評価すれば,光源照度が変化しても色相(H)は変化しないため,これらの量 を圧力へと換算できると考えられる。HSV とRGB の変換は以下の定義式によって行われ る。

(4.11)

(4.12)

(4.13)

図 4.24 HSV色空間の概念図

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図 4.25に,HSV表色系における,構造色の変化特性を示す。反射膜無し(シリコン面で 反射)の場合,500~700nm程度で最も大きな色相(H)の変化が確認できる。この範囲を検 出範囲として設計した。

図 4.25 構造間ギャップと入射角に対するデバイス構造色色相の変化

図 4.26 入射角10度における構造間ギャップに対するデバイス構造色色相の変化 次回目標 初回試作

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