Title 弦の場の理論における位相的構造と反転対称性(Dissertation_全文 ) Author(s) 小路田, 俊子 Citation 京都大学 Issue Date 2015-03-23 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k18788 Right
Type Thesis or Dissertation
弦の場の理論における
位相的構造と反転対称性
京都大学 大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻
物理学第二分野 素粒子論研究室
小路田 俊子
2015
年
1
月
5
日
概要
ボゾニックな開弦の場の理論である Cubic String Field Theory (CSFT) の作用の代数的構 造が、三次元コンパクト多様体上のトポロジカルなゲージ理論である Chern-Simons(CS) 理論と似ている事に注目し、その類似性を CSFT において追求することで CSFT におけ る位相的構造について探った。CS 理論を特徴付ける winding 数は作用の有限ゲージ変換 で得られるが、同様にして CSFT の作用において有限ゲージ変換 Ψ→ U(QB+ Ψ)U−1 で 得られる量N N = π2 3 ∫ (U ∗ QBU−1)3 (0.1) が同じく位相的量と見なせるのか、そしてその性質を支える背後の構造は何かを明らかに するというのが本研究の目的である。 N は Winding 数と同じように全微分の積分形に表され、解 Ψ = UQBU−1の特異性だ けに依存した整数値を獲得することが分かった。近年活発に議論されている KBc 代数と いうある種の代数を満たす三つの量 K, B, c で構成される解のクラスについて調べた所、 N は解の詳細に依らず K = 0 と K = ∞ の特異性だけで決まることが分かった。また この KBc 代数で構成された任意の相関関数が、K → 1/K で不変であるという inversion symmetry の性質を持つことを証明した。この定理の帰結としてN は K = 0 における特 異性と K = ∞ における特異性を対称的に拾う。これらの結果から Winding 数と N の対 応が少しずつ見えてきた。Winding 数の値はゲージ場の多様体上の特異性が種であった が、N は解の KBc 固有値空間上の特異性が起源となっているという対応関係が見える。 更に KBc 固有値空間は原点 K = 0 と無限遠 K =∞ が等価な構造をした空間である。 また inversion symmetry の考察を重力結合へ適用することで、これまで重力結合として 議論されてきた量だけでは、エネルギーと見なすのに不十分であることが分かった。開弦 場と重力子の新たな結合を発見し inversion symmetric な重力結合の表式を得ることに成 功した。
目 次
1 序論 7
2 Cubic String Field Theory 13
2.1 弦の場 . . . 13
2.2 弦の相互作用 . . . 17
2.2.1 BV formalism . . . . 17
2.3 Cubic String Field Theory . . . . 22
2.4 古典解周りの物理 . . . 26
2.4.1 タキオン凝縮解 . . . 27
2.5 開弦と閉弦の相互作用 . . . 28
2.5.1 Gauge Invariant Observable . . . . 29
2.5.2 Ellwood の予想 . . . . 30 3 KBc 代数と解析解 33 3.1 Sliver 座標 . . . . 33 3.2 wedge state . . . . 37 3.3 KBc 代数 . . . . 41 3.3.1 sz-trick . . . . 43 3.4 ピュアゲージ型解 . . . 45 3.5 タキオン凝縮解 . . . 46 4 Winding number と多重ブレイン解 48 4.1 Chern-Simons 理論との類似性 . . . . 48 4.1.1 winding 数 . . . . 50 4.1.2 CSFT における Winding 数 . . . . 51 4.2 N =∫ QBA . . . 52 4.2.1 証明 . . . 52 4.2.2 タキオン凝縮解は∫ QBA = 0 . . . 55
4.2.3 K = 0 の特異性と正則化 . . . . 56
4.2.4 タキオン凝縮解の∫ QBA 再び . . . 57
4.3 多重ブレイン解 . . . 58
4.3.1 Murata and Schnabl の多重ブレイン解へのコメント . . . . 60
4.3.2 N の加法性と Anomaly 項 . . . 61 4.4 運動方程式の破れ . . . 62 5 Inversion symmetry 64 5.1 Inversion map . . . . 64 5.2 相関関数の Inversion symmetry . . . 65 5.3 K =∞ の寄与も含めた多重ブレイン解 . . . 66 5.4 K = 0 と K =∞ の正則化 . . . 67 5.4.1 正則化された inversion symmetry . . . 69 5.5 運動方程式の破れ . . . 69 5.6 |N | ≥ 3 の構成へ向けて . . . 70 5.6.1 K 空間の分割 . . . . 71 5.6.2 consistency check . . . . 73 6 重力結合における inversion symmetry 74 6.1 inversion symmetry の破れ . . . . 75 6.2 N と Wmidの関係 . . . 76 6.2.1 コメントと注意点 . . . 82 6.3 inversion symmetric な重力結合 . . . . 82 6.3.1 ∫ Ψ [QB,G] Ψ の評価の概略 . . . 83 6.3.2 [QB,G] と B の可換性について . . . 84 6.3.3 [QB,G] の計算 . . . 84 6.3.4 TI term . . . . 85 6.3.5 TII term . . . . 88 6.3.6 The total of ∫ Ψ∗ [QB,G] Ψ . . . 89
6.4 新しい項 . . . 90 6.5 Wendに関する議論 . . . 93 6.5.1 [25] との相違点 . . . . 94 6.5.2 sz-trick の不定性 . . . . 94 6.5.3 本当に端点で結合しているのか . . . 95 6.5.4 Wendのゲージ対称性 . . . 95 7 結論 97 7.1 結果 . . . 97 7.2 結論と残された問題 . . . . 98 7.3 展望 . . . 101 7.4 本研究の意義 . . . 103 A Reference 弦理論のヒルベルト空間 105 B sliver 座標における代数 109 B.1 (3.13) の証明 . . . 109 B.2 (3.27) 導出に必要な公式 . . . 110 C 相関関数の公式 110 D 第 6 章における EOM-terms の評価 112 D.1 ∫ γLΓ . . . 112 D.2 ∫(GΨ) ∗ Γ . . . 113 E BRST Ward-Takahashi identity 114
1
序論
弦理論は物質と力と時空を統一する。弦の力学が時空の次元や背景の場の運動方程式を 決定するなど、時空という入れ物とその中を運動する物質という描像が乗り越えられてい る。弦のスケールではどのように幾何学的あるいは位相的な構造が成立しているのであろ うか。本研究は「弦の場の理論」における位相的構造の解明を目標とするものである。弦 の場の理論とは、弦理論の off-shell かつ非摂動論的定式化を目指して構成された理論であ り、弦理論の原理を与える。弦の場の理論の持つ構造とは我々の直感的に理解できる幾何 学の起源となる。 「場」というものはもともと「点」と密接に関わった概念であった。相対性原理に依れ ば、空間的に離れた二地点の同時刻の判断が観測者に依存するため、相互作用は時空の一 点で行われる、接触相互作用に成らざるを得ない。点というのはどの観測者から見ても点 だからである。しかし実際には離れた二粒子間の相互作用を考えなければならず、ここに 場というものを設ける理由がある。粒子はその位置にある場と接触相互作用し、場は順次 接触相互作用を繰り返すことで力を伝播し、他方の粒子に影響を与える。これが場の理論 の本質的な描像である。 しかし場の理論を量子化すると、点に起因する発散の問題に付きまとわれる。重力以外 の相互作用では発散を系統的に繰り込むことが可能であるが、重力理論を量子化した理論 では上手くいかない。この事実から重力理論を点粒子の理論として取り扱うことの妥当性 が問題視されてきた。この問題に対して、粒子の代わりに空間の中に一次元的に拡がった 弦をを考えるというのが弦理論である。弦理論はそのシンプルな拡張にも関わらず、粒子 描像では得られない新しい物理概念を次々と生んできた。冒頭でも述べたように弦の無矛 盾な運動を要請することで、時空の次元やダイナミクスが決まってしまうという現象は点 粒子には見られなかったことである。現在の実験では素粒子の内部構造は見えていない。 弦のスケールはプランクスケールになって初めて見えるもので、逆に言えば我々に見えて いる点 (時空の点、点粒子) は弦の力学の帰結なのである。 さて場の理論と弦理論とは一見相容れないように思える。接触相互作用の要請が場の 枠組みを必要としたからだ。しかし点粒子の場の理論の構成を次のように見直せば、拡 がりを持つオブジェクトへの拡張は自動的である。点粒子の場 φ(x) は、ある時刻に粒子 の生成消滅を行うために、ある瞬間の粒子の位置 x の関数 φ(x) なのだと見なすのだ。そ して場の揺らぎが十分に小さく相互作用項を無視できる時、場の古典解として一粒子の 物理的状態空間を再現するように構成する。つまり場の作用の運動項は一粒子の量子化 の際に現れる BRST 電荷を用いて 1 2 ∫ dx φQBφ と書けるとする。この時場の運動方程式 (QBφ = 0) として一粒子の物理的条件式QB|Physi = 0 を再現する。自由な一粒子の作用 におけるゲージ対称性は世界線の固有時の付け替えによる Diffeo なので、BRST 電荷は QB= cH = c(p2+ m2) となる。よって場の運動項として12 ∫ dx φ( + m2)φ が得られた。 同様にして、ある瞬間の弦の配位 Xµ(σ) を引数に持つ汎関数 Ψ[Xµ(σ)] を導入すれば、弦の生成消滅を行えるのではないだろうか。この汎関数を “弦の場” と呼ぶことにする。作 用の運動項の決定など詳細は第 2 章で説明するが、このような構成法は拡がったオブジェ クト全てに適用できるものである。 さてこのように導入した弦の場は無限個の場の重ねあわせとなる。それは弦の運動は重 心運動に加えその周りの無限個の振動モードから成るからである。弦の振動モードには ゲージ粒子や重力子が含まれるので、弦の場の理論は Yang-Mills 理論や一般相対性理論 を含んでいる。そして更に高階の足を持つ場が無限個含まれるのである。しかも単なる 場の寄せ集めではなく、Yang-Mills 理論や一般相対性理論のゲージ対称性を含む一般化し た対称性で互いに混ざり合う。弦の場の理論は従来のゲージ場の理論を、より高度な体系 に拡張した理論となっている。余談だが、斉次ローレンツ群の既約表現で無限次元ユニタ リー表現を考える、無限成分場の理論というのが、点粒子の困難を乗り越えるための一つ の試みとしてあった。この場はあらゆるスピンを持つ無限個の場の重ねあわせとして書か れ、弦の場と似ている。重要なことは、無限成分場が無限階の微分を含むという非局所性 を内在した場であるという点である。異なるアプローチが似たような結果を生むことか ら、無限個の場の理論という形式は何か本質を表しているのではないだろうか。 さてこの弦の場の理論の背後に隠された構造を探るのに足掛かりとなると思われる事実 が存在する。開弦の場の理論である Cubic String Field Theory (CSFT)[1] の作用の構造 は三次元のコンパクトな多様体上のゲージ理論である Chern-Simons(CS) 理論によく似て いる。両理論の作用はそれぞれ SCSFT= 1 g2 o ( 1 2 ∫ Ψ∗ QBΨ + 1 3 ∫ Ψ∗ Ψ ∗ Ψ ) , SCS = k 2π ∫ M tr ( 1 2A∧ dA + 1 3A∧ A ∧ A ) (1.1) と与えられる。SCSFTの中の∗ と ∫ は弦座標の貼り合わせ方を指定する特殊な演算であ る。一瞥しただけで Ψ[X(σ)]↔ A(x), QB ↔ d, ∗ ↔ ∧, ∫ ↔ ∫ M dx (1.2) の対応が見て取れる。両理論の類似性は作用の外見だけに留まらず演算子の性質にも 及ぶ。作用の構造が等しいことから、運動方程式やゲージ変換性などが全く同じであ る。さてここで CS 理論のピュアゲージ型解1A(x) = g(x)dg(x)−1 は winding 数 N CS = k 24π ∫ (g(x)dg−1(x))3 と呼ばれる整数に量子化された量で特徴付けられるという事に注目 する。NCSは x が多様体を一回覆う時、g(x) が群の空間を覆う回数を数えていると解釈 される。このことと作用の構造の類似性 (1.1) 及び (1.2) から、CSFT にも背後に位相的 構造が存在し、その構造を反映する位相不変量が実現できると予想立ててはいけないだろ うか。 1本論では A(x) = g(x)dg−1(x) の形で書けるものを、A = 0 とゲージ同値かどうかに関わらずピュア ゲージと呼ぶ。g(x) が特異的な場合には gdg−1は非自明な古典解を表す。CSFT でも Ψ = UQBU−1とい う解を考えるが、これも同様である。
多様体 (S3) 群 SU (2) g(x) K = 0 K =∞ KBc 空間
?
U 図 1: winding数は多様体から群への写像で、xが多様体を一度覆う間にg(x)が群の空間を何度 覆うのかを数えているという構造があるために、整数になることが保証されている(上)。本研究 の目的はCSFT側において上の図に対応する構造が何であるかを探求することである。多様体に 対応する構造、群に対応する構造は自明では無い。本論文で得られた結果から、多様体に対応す るものはKBc “多様体”と呼ばれるもので、この空間の原点と無限遠は等価な構造を持っている ことが見えてきた(下)。 winding 数 NCSは、CS 理論において有限ゲージ変換による作用の変化分として現れる。 そこで CSFT の作用において有限ゲージ変換を行った際に出て来る N [U] = π2/3 ∫ (U ∗ QBU−1)3 (1.3) という量を定義し、N [U] が CSFT における winding 数か、ということを問うことにする。 つまりN は整数に量子化されているのか、winding 数が多様体から群への巻き付きを数 えているという構造 (図.1(上)) に対応するものは何か、という事を解明する事を研究目的 とする。winding 数 NCSにおいて重要なコンパクトな多様体、微分、ゲージ群といった概 念が、CSFT の何に相当するのか明らかではない。多様体以外で位相的および幾何学的構 造が実現されていれば、それは我々が直感的に持つ幾何学の起源であるはずだ。 本研究の目的は理論の構造を探るという基礎的なものであるが、理論の解析にも役立つ と思われる。弦の場の理論は無限の自由度のために解析は非常に困難で、その非摂動論的 解析の威力を十分に発揮しているとは言い難い。無限個の場に対する莫大なゲージ対称性 は物理を隠してしまう。CSFT が生まれてから実に 25 年も経って漸く解析解が発見され たぐらいである [4]。弦の場の理論が真に弦理論の非摂動論的定式化を与え、素粒子標準模型を再現し得るかと言った問に答えるためには、本研究のように、理論の隠された構造 を理解し、この複雑な理論の見通しの良いイメージを持つことが重要ではないだろうか。 またN (1.3) が整数に量子化された量であるかという問題は古典解の探索にも重要な役割 を果たす。ピュアゲージ型解 Ψ = U ∗ QBU−1のエネルギー密度 E は、作用の逆符号で与 えられる。N を用いて書くと2E =N /(2π2g2 o) である。ここで 1/(2π2g2o) は一枚のブレイ ンのエネルギー密度であることから、多重ブレイン解に対してN はブレインの枚数を表 すことが分かる。即ちN が整数に量子化されているかという問題と、多重ブレイン解の 探索は双方向からのアプローチが可能なのである。 以上に述べた問題への理解に向けて、始めに winding 数 NCSが全微分の積分形 ∫ Md(· · · ) に書くことができることに注目した。この表式はN の特異的性質が見えやすい形であ る。全微分の積分形は Gauss の定理より表面積分に書き直されるが、多様体はコンパク トゆえ表面項は一見ゼロになる量である。しかしゲージ場が多様体上に特異点を持つと、 多様体上を一枚の座標で覆えず NCSが非自明な値を獲得する。そこでこの性質をN [U] も持っているのかを調べた。そして任意の古典解に対してN もまた全微分の積分形に 対応する形∫ QBA[U] (対応 (4.13) 参照) に書き直すことに成功した [16]。この表式もま たQB,∗,∫ の諸性質より代数的にゼロになる量である。ここで近年よく研究されている “KBc 代数” と呼ばれるある代数を満たす三つの量 K, B, c で書かれたピュアゲージ型解 Ψ = U ∗ QBU−1, (U = U (K, B, c)) に対して、 ∫ QBA[U] を具体的に評価することにした。 K は世界面のある種のハミルトニアンであり、c、B はそれぞれゴーストと反ゴーストで ある。調べた結果、古典解が K の固有値空間の K = 0 と K =∞ に特異性を持つ時、N は解の詳細に依存せず、K = 0 と K =∞ における特異性だけに依存した値を持つことが 分かった。 得られた結果はN の興味深い性質を表していた。それは K = 0 と K = ∞ を入れ替えて もN が不変であるというものである。この事実は相関関数の驚くべき性質の帰結である ことが分かった。その性質とは KBc 代数で書かれた任意の相関関数が、変換 K → 1/K の下で不変であるという性質 (inversion symmetry) を持つというものである [17]。N に限 らず KBc で構成された全ての量がこの対称性を持つのである。 以上の結果からN は解の持つ K の固有値空間上の特異性を拾っていることが分かって きた。更に K の固有値空間の原点 K = 0 と無限遠 K =∞ は等価である事も証明された。 ここで winding 数の位相的構造 (図.1(上)) に対応して CSFT 側でのイメージがおぼろげな がら見えてきたのではないだろうか。多様体に対応するのは K の固有値空間である。そ こで winding 数のアナロジーから K の固有値空間と B, c を合わせて (詳しい議論では B, c も重要なので) KBc “多様体” と呼ぶことにしよう。この KBc 多様体は原点 K = 0 と無 限遠 K =∞ が等しい構造を持っている。これはまるで球面のような幾何学を連想させる (図.1(下))。 2時空体積を 1 と置く。
さて inversion symmetry は相関関数に成り立つ強い対称性なので、K, B, c で構成された 様々な量に適用可能である。更に K, B, c だけでは構成されていない量にまで考察を広げ ることができる。その一つが開弦の場と on-shell graviton vertex V との結合として従来 から考えられてきた Gravitational coupling GC =∫ VΨ に関する考察である。graviton V は開弦の中点と結合し、この性質のためにゲージ不変量となっている。この GC は開弦場 の古典解 Ψ が示す Disk 上の graviton vertex の一点関数に等しいという予想が成されてい る [26]3。つまり GC は重力結合と見なしてよく、Ψ が表す D ブレインのエネルギーを与 えているという主張が成されているのである。K =∞ の特異性を扱っていない多くの解 によってこの予想は裏付けられてきた。ところが GC は K = 0 の特異性は感知するのだ が、K =∞ の特異性を感知できないことが分かった。これは矛盾である。なぜなら多重 ブレイン解の正準エネルギーはN で与えられるのだから (∵ E = N /(2π2g2 o))、GC がエ ネルギーを測っているのなら、GC にもN の持つ対称性、inversion symmetry が当然実現 しているべきだからである。ところが GC では inversion symmetry は破れているのであ る。この矛盾を解く鍵はN と GC の直接的な関係式 [25] にあった。[25] の議論を再考察 した所、見落とされていた新たな寄与を発見した [28]。この新たな項が K =∞ の特異性 を感知し、GC とこの新たな項は明白な inversion symmetry を持つ。更に GC には単独で は相関関数の計算に不定性が存在するのだが、両方の和を考えると不定性がキャンセルし well-defined であることが判明した。この意味でも inversion symmetric な二つの項の和を 真の重力結合と見なすべきである。
本論文の構成
本論文はボゾニックな開弦の場の理論である Cubic String Field Theory (CSFT) と、ト ポロジカルなゲージ理論である Chern-Simons 理論との類似性を推し進めて、CSFT の位 相的構造を探求するものである。特に CS 理論を特徴づける winding 数の類似物N [U](1.3) を CSFT において構成し、N が winding 数と同じ特徴を持つかどうか調べた。また N [U] はピュアゲージ型の多重ブレイン解 UQBU−1 のブレインの枚数を数えるため、N [U] の 位相的構造の理解は多重ブレイン解の構成にもつながる。得られた結果は次の三点にまと められる。 • N が winding 数と同じように全微分の積分形∫ QBA に書き直せることを証明。さ らに∫ QBA は代数的にゼロになる量であるが、U が特異性を持つ時、その特異性 で決まる有限な値を獲得する。 • KBc 代数と呼ばれるある代数を満たす三つの量 K, B, c から構成された、任意の幅の 相関関数は、KBc 代数を保ちながら K = 0 と K =∞ を入れ替える変換 “inversion map” のもとで不変であることを証明した (inversion symmetry)。K は世界面のあ
3[26] では任意の on-shell closed vertexV に対して∫ VΨ が開弦場の古典解 Ψ が示す Disk 上の V の一
る種のハミルトニアン、B, c はゴーストである。inversion symmetry を軸にした多 重ブレイン解の構成を行い、N = ±1, ±2 に対応する解を得た。 • 従来から重力結合として考えられてきたゲージ不変な量だけでは inversion symmetry を破り、一般的に正準エネルギーN と異なる。これまで議論されてこなかった新た 項を発見し、inversion symmetric な重力結合を構成できた。 本論文は 7 章構成となっている。第 2 章と第 3 章では研究の理解に必要な知識をまとめ た。第 2 章では弦の場の理論、特に本研究で扱う CSFT について説明する。また開弦と on-shell closed vertex の結合である “Gauge invariant observable” という量の紹介を行い 第 6 章へつなげる。第 3 章では KBc 代数についての説明である。CSFT の重要な成果で あるタキオン凝縮解はこの KBc で書かれるタイプの解であり、本研究でも KBc で書か れるクラスの解について考察を行っている。第 2 章と第 3 章は主に [2, 3] を参考にしてい る。第 4 章、第 5 章および第 6 章が研究内容であり、それぞれの章の内容はおよそ上記の 三点に対応している。最後に第 7 章で研究結果のまとめと議論を行い、将来への展望を述 べる。
2
Cubic String Field Theory
この章では弦理論の off-shell かつ非摂動論的定式化の一つの候補である、弦の場の理論 の構成法について説明する。その後で弦の場の理論の持つ拡張されたゲージ対称性を見る ことにする。特に本章では第 4 章、第 5 章、第 6 章の研究内容で扱うボゾニックな開弦の 場の理論である、“Cubic String Field Theory(CSFT)” を例にとって説明することにする。
弦の場の理論の構成は次の二段階に分けられる4。 1. 弦の場を導入する ⇐ Reference の (B)CFT の決定 2. 弦の相互作用 (世界面の切り分け方) を指定 第 2.1 節で弦の場を導入し、相互作用の決定法については第 2.2 節で、CSFT の相互作 用については第 2.3 節で説明する。第 2.4 節では非自明な真空期待値周りの場の理論を説 明し、その後で不安定 D ブレインの崩壊を記述するタキオン凝縮解を紹介する。第 2.5 節 では、第 6 章で登場する開弦の場と on-shell closed vertex の結合である “Gauge invariant observable (GIO)” を説明する。GIO に関して一般に信じられている Ellwood の予想につ いても簡単にレビューする。尚、世界面の理論については Appendix.A に記号の定義も兼 ねてまとめてあるので参照して欲しい。
2.1
弦の場
先ず始めに、弦の場の理論の力学変数である “弦の場” を導入する。そのためには理論を 記述する reference の第一量子化された弦理論を選んでくる必要がある。reference の弦理 論は、開弦、閉弦、超弦、コンパクト化された空間に巻きついた閉弦など様々な可能性が ある。ここではボゾニックな開弦の理論を選ぶ。その際に閉弦背景は固定する。今回は簡 単のために時空は 26 次元 (ボゾニック開弦が無矛盾に構成できる臨界次元) の Minkowski 時空を考え、その他の閉弦背景場は期待値を持たないとする。また開弦の境界条件は全て Neumann 境界条件を課す。つまり全時空に D ブレインが広がっている状況を reference に 選ぶ事にする。更に明白に共変な弦の場の理論を構成したいので、世界面の Fadeev Popov ghost も用 意する。X0と Xi, (i = 1∼ 25) を区別せず等しく扱うことにする。 さて点粒子の場は、ある時刻の点粒子 (0 次元) を生成消滅させるために時空座標 x の関 数 φ = φ(x) であった。これと同様にして弦の場はある時刻の弦の配位を生成消滅させる 4どのような弦理論を reference に持ってくるか、そしてどのような相互作用を考えるかによって様々な 弦の場の理論が存在する。同じボゾニックな開弦を扱っていても、CSFT と異なる相互作用を採用したもの に HIKKO 型の開弦の場の理論などがある。
ものとして導入したいので、世界面の固有時 τ = 0 での弦の配位を引数に持つ汎関数とな る。τ = 0 の reference の開弦を総合して “弦座標”Z と呼ぶことにする。 Z ={Xµ(τ = 0, σ), c(τ = 0, σ), b(σ)} (2.1) ここで c はゴースト、b は反ゴーストで µ = 0,· · · , 26 である。また σ ∈ [0, π] は弦上の位 置を指定するパラメーターである。この時弦の場は Ψ = Ψ[Z(σ)] と書ける。 さて reference の弦理論のヒルベルト空間は、重心座標とその周りの振動モードでラベル される (Appendix.A 参照)。 H ={b−n1· · · b−npc−m1· · · c−mqαµ1 −l1· · · α µi −lr|ki|ni ≥ 2, mi ≥ −1, li ≥ 0 } (2.2) ここで|ki = eikX(0)|0i と置いた。H を理論の matter 部分の詳細に依らない universal な表
式で書くこともできる。即ちH を Virasoro を用いて展開することができる [29]。 H = {b−n1· · · b−npc−m1· · · c−mqL m −j1· · · L m −jr|ni ≥ 2, mi ≥ −1, jr≥ 2} (2.3) と表される。但し Lm −jiは matter の Virasoro を表す。世界面の BRST 演算子はH から H への写像となっている。H は ghost 数 g の部分空間 H(g)の直和に分解できる。 H = ⊕n∈ZH(g) (2.4) ここで弦の場 Ψ[Z] の Hilbert 空間の元での Fock 状態展開の表示を見ておこう。弦の場を Ψ[Xµ(σ), c(σ), b(σ)] = ∫ d26x∑ s |s, xiψs(x) = ∫ d26p (2π)26 ∑ s |s, pi eψs(p) (2.5) と展開し、各モードの展開係数を ψs(x)、 eψsと置く。これらは時空の場であり、後で見る ようにタキオン場やゲージ場が含まれている。さてここで展開の基底|s, pi は H(1) の状態 に限ることにする。量子場を扱う際には作用のゲージを固定するために、全てのゴースト 数の場を考慮しなければならないが、今は古典場を扱うので世界面の物理的状態を再現す るようにゴースト数 1 の場だけ扱えば良いのである。 |s, xi ∈ H(1) ={Lm −j1· · · L m −jpL gh −`1· · · L`pc1|0i | ji ≥ 2, `i ≥ 1} (2.6) (2.5) をもう少し具体的に表しておく。ここで “レベル ` ” の状態|`i を次で定義する。 (L0+ 1)|`i = `|`i (2.7)
Fock vacuum|Ωi = c1|0i はレベル 0 に設定されている。このレベルの小さい状態から弦の
場|Ψi を展開することを考える。レベル 2 まで展開は以下で与えられる。 |Ψi =[t(x) + Aµ(x)α µ −1+ B(x)c0b−1+ Bµν(x)α µ −1αν−1+ Aµ(x)α µ −2
+b(x)c0b−2+ C(x)b−1c−1+ M (x)α−1c0b−1+· · · ] |Ωi = c0[B(x)b−1+ b(x)b−2+ M (x)α−1b−1+· · · ] |Ωi +[t(x) + Aµ(x)αµ−1+ Bµν(x)αµ−1αν−1+ Aµ(x)αµ−2+ C(x)b−1c−1+· · · ] |Ωi (2.8) 弦の場の理論は場の振動が非常に弱い時には相互作用項を無視することができる。場の 振動が小さい時、場の運動方程式として第一量子化された弦理論の on-shell 状態を再現す るように構成する。世界面の on-shell 状態は BRST 演算子を用いて QB|physi = 0 (2.9) で与えられる [7, 8, 9, 10]。最少作用の原理から (2.9) において|physi を弦の場に置き換え たものを得るためには、作用の運動項は形式的に 1 2 ∫ DX(σ)Ψ[X(σ)] ∗ QBΨ[X(σ)] (2.10) と書けるだろう。ここで∗,∫ は弦座標の特殊な貼り合わせ方を指定する演算で、第 2.3 節 で詳しく解説する。弦の場を (2.8) のように弦理論の状態空間で表した時には運動項は 1 2hΨ|QBΨi (2.11) で定義される。但しhΨ| は BPZ 共役である。 Q2
B = 0 からこの作用には|Ψi → |Ψi + QB|Λi の変換の下での不変性があることが分か
る。ここで|Λi は H(0)の元であり、|Ψi と同じように成分場展開できる。 |Λi = |λi + c0|σi ⇒ |λi =
iχ(x) √
2α0b−1|Ωi , |σi = 0
QB|Λi = eQ|λi + c0L|λi
e Q|Λi = c1Lm−1 iχ(x) √ 2α0b−1|Ωi = ∂µχ(x)α µ −1|Ωi L|Λi = − iα 0 √ 2α0∂ 2 χ(x)b−1|Ωi (2.12)
よって変換|Ψi → |Ψi + QB|Λi を成分場毎に調べてみると
t(x)→ t(x) (2.13) Aµ(x)→ Aµ(x) + ∂µχ(x) (2.14)
B(x)→ B(x) − α0∂2χ(x) (2.15) が得られる。t(x) はスカラー場、Aµはゲージ場のゲージ変換の線形部分を再現している。 よって変換|Ψi → |Ψi + QB|Λi を “ゲージ変換” と呼ぶことにしよう。
次に作用 (2.10) を成分場で表してみる。弦の場を|Ψi = |φi + c0|ψi と書き、BRST 電荷 をゴーストのゼロモードを分離して QB = c0L + b0M + eQ (2.16) と書いておく。L, M, Q の定義は (A.33)、(A.34)、(A.35) に与えてある。場の展開とQB の具体形を作用 (2.10) に代入すると 1 2 ∫ ΨQBΨ = 1 2 ∫ d26x ∫ dc0(hφ| + c0hψ|) ( c0L + b0M + eQ ) (|φi + c0|ψi) = 1 2 ∫ d26x (
hψ|M|ψi + hψ| eQ|φi + hφ| eQ|ψi − hφ|L|φi) (2.17) となり展開 (2.8) をこれに代入すると各項は hφ|L|φi = α0{t(x)(− − 1 α0 ) t(x)− Aµ(x)Aµ(x) } + (higer level) (2.18) hψ| eQ|φi = B(x)∂µA µ(x) + (higer level) (2.19) hψ|M|ψi = − 1 α0B 2(x) + (higher level) (2.20) と計算されるので、 S = −α 0 2 ∫ d26x t(x) ( + 1 α0 ) t(x) + α0 ∫ d26x 1 4F µνF µν− 1 2α0 ∫ d26x (B− ∂µAµ)2 (2.21) ここで −2 α0B(x)∂ µA µ(x) + 1 α02B 2(x) = 1 α02 (B− α 0∂ µAµ) 2− (∂ µAµ) 2 (2.22) を使った。Fµν(x) = ∂µAν(x)− ∂νAµ(x) は U (1) 場の Field strength である。B− ∂µAµを 新たに B 場として定義しても他の項への影響はない。(2.21) より展開 (2.8) に現れる係数 t(x), Aµ(x), B(x) はそれぞれスカラー場 (タキオン場)、U (1) ゲージ場であることが分か る。また補助場 B(x) に物理的自由度はない。 ゲージとして “Siegel gauge” 条件 b0|Ψi = 0 (2.23) を取ると、{b0, c0} = 1, b0|Ωi = 0 より、|ψi = 0 と置けるので、作用は12 ∫ d26xhφ|L|φi と なるので、(2.18) よりこれは U 場に対する Feynman ゲージになっていることが分かる。 Level 展開の高次の項を含めていけば、無限個の場が非常に複雑なゲージ変換性を持っ た理論になっていることが分かる。
Reality condition 展開係数 ψs(p) は一般に複素数ゆえ自由度が大きい。そこで弦の場に対して”Reality con-dition” bpz (|Ψi) = (|Ψi)† ≡ hΨ| (2.24) を課す。エルミート共役と BPZ 共役は Appendix.A に与えてある。モードに依る展開係 数である時空の場 ψs(x)(2.5) の BPZ 共役とエルミート共役はどちらも複素共役で与えら れる。 (ψs(x)) bpz = (ψs(x))† = (ψs(x))∗ (2.25)
弦の場を|Ψi = |φi + c0|ψi と書くと、bpz(c0) = −c0より Reality condition(2.24) は
bpz(|φi) = hφ| , bpz(|ψi) = −hψ| となる。よって (2.21) に現れる場 t(x), Aµ(x), B(x),· · · は実となる。
2.2
弦の相互作用
次に弦の相互作用を決定する。第一量子化された弦理論の経路積分では、世界面上の計 量に関する足しあげも行う。つまり種数でラベルされる 2 次元リーマン面の上の (B)CFT を全て足しあげるのである。弦の場の理論の観点では、この様々な世界面をプロパゲー ターとバーテックスで表す。相互作用項の導入とはつまり世界面をどう切り分けるのかを 決めることである。 さて前節で見たように弦の場の作用は無限個の場から成り、運動項は Yang-Mills 場の ゲージ対称性を含むより一般的な対称性を有していた。低エネルギーで局所場の理論を再 現するべきであることを考えると、相互作用項を含む作用全体も Yang-Mills 場のゲージ 対称性を無限個の場へ一般化した、より大きなゲージ対称性を持つように構成するべき である。点粒子の場合と異なり、弦の相互作用には様々な貼り合わせ方が考えらえる (図 2)。一般化されたゲージ対称性を持つようにするためには、どのような弦の貼り合わせ方 が許されるのか。この問題には BRST 形式を一般化した Batalin Vilkovisky (BV) 形式と いう方法が役に立つ。ここでは BV 形式に乗っ取って弦の場の理論を構成する。 2.2.1 BV formalism fieldφiと anti-fieldφ∗i はゴースト数を g [φi] + g [φ∗i] =−1 (2.26)1 2 3 1 2 3 1 2 3 δ(x1− x2)(x2 − x3)(x3− x1)
?
?
図 2: 局所相互作用は粒子の数を指定すれば相互作用の型が決まるが、拡がりを持つ弦の 張り合わせ方は指定する必要がある。 という条件が着いた場として導入する。添字 i とは場の種類 Aµ, c, ¯c· · · やまたその場の引 数である x も識別するラベルである。一般的には i 毎にゴースト数が違ってもよいが、以 後の議論では本質的ではないので φiのゴースト数は全ての i に対して同じとする。以後 φ がグラスマン偶、φ∗がグラスマン奇として進めよう。逆でも同様の結果を得ることがで きる。 φ と φ∗の関数 S = S [φ, φ∗] が、 ∑ i ∂S ∂φi ∂S ∂φ∗i = 0 (2.27) を満足する。5。この時グラスマン偶の場、奇の場 λ, σ による変換 δgφi = ( λj ∂ ∂φ∗j + σj ∂ ∂φj ) ∂ ∂φ∗iS , δgφ ∗ i = ( λj ∂ ∂φ∗j + σj ∂ ∂φj ) ( − ∂ ∂φi ) S (2.28) は S[φ, φ∗] を不変に保つ。 δgS = [( λj ∂ ∂φ∗j + σj ∂ ∂φj ) ∂S ∂φ∗i ] ∂S ∂φi − [( λj ∂ ∂φ∗j + σj ∂ ∂φj ) ∂S ∂φi ] ∂S ∂φ∗i = λj ( ∂S ∂φi ∂2S ∂φ∗j∂φ∗i − ∂S ∂φ∗i ∂2S φ∗j∂φi ) (2.29) 作用は不変である。(2.28) をゲージ変換と名付けよう。次に SGF と変換 ˆδBφiを次のよう に定義する。 SGF = S [ φi, φ∗i = ∂F[φ] ∂φi ] (2.30) bδBφi = ∂S ∂φ∗i φ∗i=∂F[φ] ∂φi (2.31) F(φ) 及び bδBはグラスマン奇の量である。この時 (2.26) から bδBはゴースト数を一つ上げ ることが分かる。よって φiにはあらゆるゴースト数を持つ場が含まれていなければなら 5微分はすべて左微分で統一する。ないことが分かる。この時 SGF が bδB で不変であることが言える。 bδBSGF = bδBφi dSGF dφi = [ ∂S ∂φ∗i ( ∂S ∂φi + ∂ 2F ∂φi∂φj ∂S ∂φ∗j )] φ∗i=∂F[φ] ∂φi = 0 (2.32) 第二項目は対称な足と反対称な足が和をとっていることから0になる。また on-shell で bδ2 B = 0 が示せる。 bδ2 Bφi = bδBφj ∂ ∂φj ( ∂S ∂φ∗i φ∗i=∂F[φ]∂φi ) = [ ∂S ∂φ∗j ( ∂2S ∂φj∂φ∗i + ∂ 2F ∂φj∂φk ∂2S ∂φ∗k∂φ∗i )] φ∗i=∂F[φ] ∂φi = [ − ∂ ∂φ∗i ( ∂S ∂φ∗j ∂S ∂φj ) + ∂ 2S ∂φ∗i∂φ∗j ∂S ∂φj + ∂ 2S ∂φ∗i∂φ∗j ∂2F ∂φj∂φk ∂S ∂φ∗k ] φ∗i=∂F[φ] ∂φi = ∂ 2S ∂φ∗i∂φ∗j dSGF dφj ∝ EOM (2.33) よって (2.27) を満たす作用が存在すればゲージ固定された作用及び BRST 変換を (2.30) で定義すれば BRST 電荷Q? B bδBφ = i [Q?B, φ] (2.34) のコホモロジーが物理的状態を決める6 以上の議論をを弦の場の理論に適用する7。作用を形式的に S = 1 2ΨIQIJΨJ + 1 3V (3) IJ KΨIΨJΨK +· · · 1 nV (n) I1I2···InΨI1ΨI2· · · ΨIn (2.35) とかく。I の添字は弦座標 (2.1) を離散的なラベルで表したものである。 I ↔ {Xµ(σ), c(σ), b(σ)} 添え字 I で (Xµ, c, b) でラベルし、i はこのうち b 0以外をラベルするものとする。そして Φ[Xµ, c, b] = Φ Iと書く。ghΦI = 1 を割り当てると、gh∂Φ∂I = 0 となる。なぜならば δIJ ∑ ∏ µ (Xµ− X0µ)∏ n6=0 δ(cn− c0n) ∏ n6=0 δ(bn− b0n)δ(b0 − b00) (2.36) と b0だけが残るので ghδIJ =−1 となるからだ。 6Q? Bは第 2.1 節に出てきた世界面のゲージ固定に伴って定義される BRST 演算子QBとは異なるので注 意すること。Q? Bは場の作用のゲージ固定に伴って現れる BRST 電荷であり場の生成消滅演算子が作用す る空間に働く。 7これより (2.44) までゴースト数の定義を第 2.1 節から−1 だけ変更する。即ち Fock 真空 |Ωi のゴース ト数をゼロ、SL(2R) 真空|0i のゴースト数を −1 に取る。弦の場 Ψ のゴースト数はゼロとする。この節で の重要な点は弦の場の理論の演算が満たすべき性質 (2.42)∼(2.44)(後述) の導出にあるので、コンベンショ ンは重要ではない。
さて今弦の場をゴーストの0モードで展開し、添字 I を c0とそれ以外のラベル i に分離 する。 ΨI = φi+ c0ψi ⇒ ∂ ∂ΨI = ∂ ∂ψi − c 0 ∂ ∂φi ΣI = ∫ dc0Σi (2.37) さて ∑ I ∂S ∂ΨI ∂S ∂ΨI = 0 (2.38) であるならば ∑ i ∂S ∂φi ∂S ∂ψi = 0 (2.39) であることが示される。これは BV 形式において field を φi、anti-field を ψiに置き換えた ものに等しい。よってもし (2.35) が (2.38) を満たすならば、作用は δgΨI = ∂S ∂ΨI∂ΨJ ΛJ (2.40) というゲージ対称性を持つ。 δgS = δgΨI ∂S ∂ΨI = 1 2 ∂ ∂ΨJ ( ∂S ∂ΨI ∂S ∂ΨI ) ΛJ = 0 (2.41) ΛJ = λj+ c0σjもまた弦の場であるため無限の成分場の重ね合わせである。つまり ΛJが 引き起こすゲージ変換は無限個の場の変換である。 以上から (2.38) を満たす作用を見つけることができれば、その作用は莫大なゲージ対称 性を持ち、そのゲージ固定に伴う BRST 不変性も自動的である。今や我々の目的は (2.38) を満たすように (2.35) の中のQIJ 及び V(n)を決めることである。例えば 3 点相互作用の 理論を考える。 S = 1 2ΨIQIJΨJ+ 1 3V (3) IJ KΨIΨJΨK を考えよう。尚 ΨIがグラスマン偶の convention ではQIJ は対称行列、V (3) IJ K は3階対称 行列である。(2.38) に代入すると、 QJ IQIJ0 = 0 (2.42)
QKIVILM +QLIVKIM +QM IVKLI = 0 (2.43)
VJ KIVILM + VJ LIVKM I = 0 (2.44)
が得られる。上記の性質を満たす vertex を取ることができたならば、3 点相互作用の理論 は書けることになる。これは非自明なことで一般的には 3 点だけでは理論が閉じず、4 点、 5 点と高次の相互作用が必要になることもある。
ここまでは BV 形式に合わせるように離散座標 I を用いたが、実際には弦座標は連続的 な変数なので、もう一度弦座標に戻して上の条件を書き直す8。作用を S = 1 2 ∫ Ψ∗ QΨ + 1 3 ∫ Ψ∗ Ψ ∗ Ψ と書いた時、演算子及び作用のゴースト数はそれぞれ |Q| = 1, | ∗ | = 0, ∫ = −3, |S| = 0 (2.45) となる。(2.42)、(2.43)、(2.44) をQ, ∗,∫ で表すと Q2 = 0 (2.46) Q (Ψ ∗ Φ) = (QΨ) + (−1)ΦQΦ (2.47) (Ψ∗ Φ) ∗ Σ = Ψ ∗ (Φ ∗ Σ) (2.48) ∫ Ψ∗ Φ = (−1)ΨΦ ∫ Φ∗ Ψ (2.49) ∫ QΨ = 0 (2.50) 時空の次元をボソン弦の臨界次元である 26 次元に取れば (2.46) は BRST 演算子の冪例性 で保証される。また最後の性質 (2.50) は、積分にあたる概念が BV 形式にないために BV 形式からは出てこないが作用のゲージ不変性のために必要なのでここに付け足しておい た。3 点相互作用の作用のゲージ変換は δΨ =QΛ + Ψ ∗ Λ − Λ ∗ Ψ (2.51) である。第 2.1 節で議論した線形なゲージ変換 δΨ =QBΛ に非線形な部分を足したものと なっている。 この節の最後に BRST 変換 (2.31) を成分場で見ておこう。簡単のために自由場の作用 (2.10) で確かめる。BRST 変換はゴースト数をあげるので、弦の場のゴースト数ゼロの成 分場しか許さない展開 (2.8) ではもはや表す事ができない。弦の場をゴースト数−2, −1, 0, 1 の成分場まで許してレベル 1 まで展開すると |Ψi =[ξ(x)c0c−1+ et(x)c0+ eAµ(x)c0α µ −1+ γ(x)c−1 +t(x) + Aµ(x)αµ−1+ iB(x) √ 2α0c0b−1+ S(x)b−1 ] |Ωi (2.52) となる9。ここで Siegel ゲージ (b 0Ψ = 0⇔ ψ = 0) を取ると、|φi は |φi = [ 2i√2α0γ(x)c−1+ t(x) + Aµ(x)α µ −1− iS(x) √ 2α0b−1 ] |Ωi (2.53) 8これより Ψ の ghost 数を再び 1 に戻す。以後変わらない。 9Reality condition より γ(x) は純虚数場 S(x) は実場である。また|γ(x)| = −1、|S(x)| = 1 である。
となる。よって BRST 変換 δBφ = [ e Qφ + Mψ + φ ∗ φ] ψ=∂F(φ)∂φ = eQφ (2.54) を成分場で表すと e Qt(x)|Ωi = eQγ(x)c−1|Ωi = 0 e QAµ(x)α µ −1|Ωi = −2i √ 2α0∂µAµ(x)c−1|Ωi e QS(x)b−1|Ωi = i √ 2α0∂µS(x)αµ−1|Ωi (2.55) つまり γ → γ − ∂µAµ(x) t → t Aµ → Aµ+ ∂µS gh[S] = 1 S → S (2.56) が得られる。t(x) と Aµ(x) に対する変換はタキオン場と U (1) 場の BRST 変換となって いる。
2.3
Cubic String Field Theory
ボゾニックな開弦理論の場の理論である、Cubic String Field Theory(CSFT) は BV 方 程式の解の一つである。理論の名前の由来となる cubic 型の相互作用を持ち、相互作用は それだけというシンプルな理論である。CSFT の作用は次で与えられる。 S = 1 2 ∫ Ψ∗ QBΨ + 1 3Ψ∗ Ψ ∗ Ψ (2.57) 10Ψ はゴースト数 1 の弦の場である。演算子Q Bは reference の世界面の BRST 電荷、∗ は 二つの弦の場から新たな弦の場を生成する、弦の場の積である。∫ は弦の場から c 数を生 成する演算である。具体的にどのように弦の貼り合わせを行うのか説明しよう。 ∗ : A ⊗ A → A
弦座標がそれぞれ X,Y である2つの弦の場 A[X], B[Y ] から新しい弦の場 A∗ B[Z] を作る とする。 A∗ B[Z(σ), c(σ), b(σ)] = ∫ Π 0≤σ0≤π/2dY (σ 0)dX(π− σ0) Π π/2≤σ00≤πδ [X(σ 00)− Y (π − σ00)]
10over all にかかる coupling 1/g2
oは省略した。作用の全体にマイナスを付けて定義する流派もあるが、
L R L L R R R L
X
Y
Z
L R σ = 0 π 2 π 図 3: 方向付けされた弦座標の中点より前半を”L”、後半を”R”名付ける。2つの弦の場 の弦座標 X と Y の右側と左側をぴったり合わせて積分し、残った L と R が新たな弦の場 の弦座標である。 Π 0≤σ0≤π/2dγ(σ 0)dec(π − σ0) Π π/2≤σ00≤πδ [ec(σ 00)− γ(π − σ00)] Π 0≤σ0≤π/2dβ(σ 0)deb(π− σ0) Π π/2≤σ00≤πδ [ eb(σ00)− β(π − σ00)] × A [X(σ00)c(σ00), b(σ00)] B[Y (σ00)ec(σ00), eb(σ00)] (2.58) with Z(σ), c(σ), b(σ) = { X(σ),ec(σ),eb(σ) 0 ≤ σ ≤ π/2 Y (σ), γ(σ), β(σ) π/2≤ σ ≤ π (2.59) これは弦座標の σ パラメーターが 0 ≤ σ ≤ π/2 の部分を左(L)、π/2 ≤ σ ≤ π を右(R) と呼ぶことにすれば、X 座標の R と Y 座標の L を端点と中点がぴったり合うように貼り あわせて弦座標について積分する。残った X の L と Y の R が残る弦座標なのでそれを新 しい弦の場 A∗ B の弦座標の L と R とする。 ∫ :A → C-number 次に内積に対応する演算を定義しよう。これはV から C 数への写像である。C 数という 意味は引数として弦座標を持たないという意味である。 ∫ A[X(σ)] = ∫ Π 0≤σπdX(σ)0≤σΠ0π/2δ [X(σ 0)− X(π − σ0)]Π 0≤σπdc(σ)0≤σΠ0π/2δ [c(σ 0)− c(π − σ0)] Π 0≤σπdb(σ)0≤σΠ0π/2δ [b(σ 0)− b(π − σ0)] × A [X(σ0), c(σ0), b(σ0)] (2.60) これは弦座標を半分におって L と R がぴったり合うように貼り合わせることである (図 3(右下))。 satisfy property QB を世界面の BRST 演算子に取り、∗ と ∫ をそれぞれ (2.59)、(2.60) と定義すると (2.46)∼(2.50) が成り立つことが確かめられる。但し性質 (2.46) および性質 (2.47) は開 弦の臨界次元である 26 次元の時にしか成り立たないことも示される。性質 (2.48)、(2.49) は描いてみれば成り立つことが分かるが、実際に演算子表示でも示すことができる。 演算子形式での∫ と∗ 積の表示を与えておこう [11][12][13] [14][15]。2つの弦を反対向 きに重ねて貼り合わせる vertex をhR| と書く。つまり、 ∫ A∗ B = hA|Bi = ∫ ∫ dX(1)dX(2)hR(1, 2)||A(1)i|B(2)i (2.61) また2つの弦の L と R を貼り合わせる vertex を|V3i と書く。 |(A ∗ B)(3)i = ∫ d26X(1) ∫ d26X(2) ∫ dc(1)0 ∫ dc(2)0 hA(1)|hB(2)||V3(1, 2, 3)i (2.62) 但し|Ψ(r)i =: |Ψ(X(r), c(r) 0 )i (r = 1, 2, 3) と書いた。この時 hR(1, 2)| =1h0|2h0|exp { −∑∞ n=1 (−1)n [ 1 nα (1) n α (2) n + c (1) n b (2) n + c (2) n b (1) n ]} × (2π)26 δ26(p(1)+ p(2))δc(1)0 − c(2)0 (2.63) である。また hr(r = 1, 2, 3) hr(z) = g(z) exp [ i2π(r− 1) 3 ] , g(z) = ( 1 + iz 1− iz )2/3 (2.64) という写像を使って|V3i が以下のように与えられることが分かっている。hrは3つの世 界面を (図 4) のように中点が一致するようにぴったり貼り合わせる写像である。 |V3i = exp [ 3 ∑ r,s=1 ( 1 2 ∞ ∑ n,m=0 Nnmrs α(r)−nα(s)−m− ∞ ∑ n=1 ∞ ∑ m=0 Xnmrs c(r)−nb(s)−m )]
|0i1⊗ |0i2⊗ |0i3 × (26π)26
Nnmrs = 1 nm I 0 dz 2πi h0r(z) zn I 0 dw 2πi h0s(w) wn 1 (hr(z)− hs(w))2 (n, m > 1) N0mrs = Nm0sr = 1 m I 0 dw 2πi h0s(w) wm 1 (hr(0)− hs(w))2 (m≥ 1) N00rs = { ln|h0r(0)| (r = s) ln|hr(0)− hs(0)| (r6= s) (2.66) Nrs nm, Xnmrs はノイマン係数と呼ばれる。このhR|, |V3i に対して以下が成り立つが、これが (2.47)、(2.48)、(2.49) の性質を表している。 Q(1) B +Q (1) B +Q (1) B |V3i = 0 ⇒ (2.47) (2.67) ∫
dXdYhR(X, Y )||V3(1, X, 4)i|V3(Y, 2, 3)i −
∫
dXdYhR(X, Y )||V3(1, 2, X)i|V3(Y, 3, 4)i
+ ∫ dXdYhR(X, Y )||V3(1, 3, X)i|V3(2, Y, 4)i = 0 ⇒ (2.48) (2.68) hR(1, 2)||A(1)i|B(2)i = (−1)ABhR(1, 2)||B(1)i|A(2)i ⇒ (2.49) (2.69) が成り立つ。
L
R
R
L
L R
R L
L
R
g(z)
O
O
O
2O
1O
3 図 4: hr(z):上半面を g(z) で中心角 120◦の扇形に移す。原点に挿入された演算子は円弧 上に、中心が原点に来る。3つの弦座標を扇形にしておき、3つの中心が丁度一点で重 なるように並べ、さらにそれぞれの L と R をぴったり貼る。挿入された3つの演算子は Disk の境界に来る。これは世界面の単なる貼り合わせなので時空の次元に依らず成立す る表式である。2.4
古典解周りの物理
古典解 Ψc`の周りでの弦の場のゆらぎを Φ とする。Ψ = Ψc`+ Φ を作用 (4.1) に代入す ると S[Ψ] = S[Ψ| {z }c`] const +1 2 ∫ Φ∗ eQΦ + 1 3 ∫ Φ∗ Φ ∗ Φ (2.70) ここで e QA =QBA + Ψc`∗ A − (−1)|A|A∗ Ψc` (2.71) Ψc`が古典解であること及びQBの冪例性や Leibniz 則をを使うと、 eQ もQBと同じ性質を 満たすことが示される。 e Q2Σ = eQ(QBΣ + Ψc`∗ Σ − (−1)ΣΣ∗ Ψc` ) =QB ( QBΣ + Ψc`∗ Σ − (−1)ΣΣ∗ Ψc` ) + Ψc`∗ ( QBΣ + Ψc`∗ Σ − (−1)ΣΣ∗ Ψc` ) − (−1)Σ+1(Q BΣ + Ψc`∗ Σ − (−1)ΣΣ∗ Ψc` ) ∗ Ψc` = (EOM of Ψc`)∗ Σ − Σ ∗ (EOM of Ψc`) = 0 (2.72) e Q (Σ∗ Λ) − {( e QΣ ) ∗ Λ + (−1)ΣΣ∗ eQΛ} = Ψc`∗ (Σ ∗ Λ) − (−1)Σ+Λ(Σ∗ Λ) ∗ Ψc` −(Ψc`∗ Σ − (−1)ΣΣ∗ Ψc` ) ∗ Λ − (−1)Σ Σ(Ψc`∗ Λ − (−1)ΛΛ∗ Ψc` ) = 0 (2.73) 更に ∫ e QΣ = ∫ QBΣ + ∫ Ψc`∗ Σ − (−1)Σ ∫ Σ∗ Ψc`= ∫ QBΣ (2.74) これらの性質から、古典解周りの揺らぎの作用 e S[Φ] = 1 2 ∫ Φ∗ eQΦ + 1 3 ∫ Φ∗ Φ ∗ Φ (2.75) がゲージ対称性 δΦ = eQΛ + Φ∗ Λ − Λ ∗ Φ (2.76) を持つことは自明である。2.4.1 タキオン凝縮解 現在弦の場の理論の古典解として非常に重要なものは “タキオン凝縮解” と呼ばれる解 である。第 2.1 節で見たように、ボゾニックな開弦の理論にはタキオンモードが存在し、 摂動論的真空は不安定である。開弦のモード不安定性は D ブレインの不安定性を意味す る。そこで A.Sen は次のように予想を立てた。 Sen の予想 [19] タキオンポテンシャルにはタキオンの真空期待値が non-zero の所に極小値が存在し、 D-brane の崩壊によってその安定な真空に落ち着く。そこで、 • タキオン真空のポテンシャルエネルギーは摂導論的真空よりも崩壊した D-brane の 張力エネルギーの分だけ低いはずである。 • タキオン真空には D-brane が存在しないので、開弦の物理的自由度は存在しない。 • 不安定 D-brane 上のタキオン場のキンク解はそれより低次元の D-brane を記述する。 Sen の予想は解析解の発見 [4] によって裏付けられた。今日では [4] のゲージ同値解である [6] の解が扱い易い解として受け入れられている。この解は第 3 章で説明する KBc 代数と 呼ばれるある種の代数構造を満たす三つの量 K, B, c で書かれている。この解が実際に D ブレイン一枚分低いエネルギーを持つのかどうかは第 3.5 節で確認する。 さてタキオン凝縮解の周りに開弦の物理的状態が存在しないということは、ホモトピー 演算子 A が存在するということに等しいということを説明しよう。古典解 Ψc`周りのホモ トピー演算子とは eQ(2.71) に対して e QA = 1 (2.77) を満たすゴースト数−1 の弦の場である。ホモトピー演算子が存在すれば、BRST closed の状態は Φ = ( eQA)∗ Φ = eQ(A∗ Φ) (2.78) のように必ず eQ exact にかけ、また BRST closed の状態が必ず eQ exact に書けるならば、 I もまた eQ closed 状態に書けるはずなので、I = eQA なる A が存在する。よって eQ のコ ホモロジーが trivial なことはホモトピー演算子の存在と同値である。[6] ではタキオン凝 縮解周りのホモトピー演算子を構成し、タキオン凝縮解には開弦の物理的励起が無いこと を証明した。ホモトピー演算子の具体的な表式は第 3.5 節で議論する。
2.5
開弦と閉弦の相互作用
この節では on shell closed state と開弦の場の相互作用を表す Gauge Invariant Observable (GIO)[34, 35] について説明する。 さて局所場の理論においてエネルギーには二通りの定義があったことを思い出そう。一 つはネーター定理から定義される正準エネルギーで、他方は重力結合から読み取るエネル ギーである。ピュアゲージ型解に対して E =N /(2π2) で与えられるエネルギーはネーター 電荷に対応する11。弦の場の理論において重力から読み取るエネルギーはどのように定義 されるだろうか。局所場の理論に習い、作用を背景計量で変分したものを考える。CSFT の作用 (4.1) には計量はQBの中にしか陽に含まれていない。BRST 演算子は Q(g) B ∼ ∫ dσ{c(gµνPµPν+ gµν(dXµ/dσ)(dXν/dσ)) +· · · } , (2.79) と書けるので、計量で変分を取ると δQB = 1 4[QB,D] (2.80) となる。ここで Dilatation 演算子D を導入した。 D = XP → [D, X] = −X, [D, P ] = P (2.81) よって Tµν ? = 1 2 δSCSFT δgµν = 1 8 ∫ Ψ [QB,D] Ψ (2.82) となる。この量は Ψ が運動方程式の解の時ゲージ不変であることが示せる (第 2.5.1 章)。 実はこの定義には不満足な点が存在する。局所場の理論の場合は、背景時空計量の変分は 任意の方向に取れたが、弦の場の理論の場合、世界面の共形対称性を保つために、計量は on-shell 条件を保ったまま変分を取らねばならない。このような問題があるためにδgδSµν を エネルギー運動量テンソルと見なしてよいか分からないのである。 ここで弦理論では重力子は閉弦の一つのモードであることを思い出す。そこで開弦と閉 弦の相互作用を考えて重力結合を定義する。開弦と閉弦の相互作用には次に二つの場合が 考えられる。 1. 開弦が閉弦を放出 2. 開弦が閉弦へ転化 GIO は 2 の相互作用を表すと考えられている。以下では先ず GIO の定義を与え、この量 のゲージ不変性を議論する。そして GIO が開弦場の古典解が表す境界条件を持った Disk 上の on-shell closed state の tadpole に等しいとする Ellwood の予想 [26] を紹介する。
i
L
R
L R
z
w
OΨ w◦ OΨ i図 5: 開弦の右半分と左半分がぴったりと合わさって、中点に closed string vertex が挿入 される。
2.5.1 Gauge Invariant Observable
開弦の状態|Ψi を真空に演算子が作用した形に書けるとする (|Ψi = OΨ|0i)。|ξ| = 1 に Ψ の波動関数が住んでいる。GIO W(Ψ, Vα) は次の相関関数として与えられる。
W(Ψ, Vα) =hI|Vα(i)|Ψi = hVα(i)(w◦ OΨ)(0)iU HP (2.83)
ここでVα ≡ c¯cVm
α は conformal weight (0, 0) の on-shell closed string vertex operator で
ある (i.e.[QB,Vα] = 0)。w(ξ) は UHP から UHP への写像である (図.5)。
w(ξ) = 2ξ
1− ξ2 (2.84)
この写像で原点と中点は不動であり、弦の右半分と左半分が同一直線に写像される。よっ てこの量は開弦が閉弦へと転化するプロセスを表している (図.22)。そして閉弦は開弦の 中点に結合している。on-shell closed vertex は中点という特異的な場所に挿入されている が、conformal weight が (0, 0) なので問題無い。逆に言えば closed state の on-shell 条件を 外したければそれなりの工夫が必要である [18]。 GIOW(Ψ, Vα) は場のゲージ変換 δΛΨ = QBΛ + [Ψ, Λ] の下で不変である。QBΛ の項は Vαの on-shell 条件から消える。残りの部分は、Vαが中点に挿入されているという事実が 効いて二つの項でキャンセルする。このようにW(Ψ, Vα) のゲージ不変性はあらゆる弦の 場に対して成り立ち、運動方程式の解であるかどうかに関わらない。非常に強い対称性を 持つのである。 弦の場の理論は莫大なゲージ対称性を含んだ理論ゆえ、ゲージ対称性が物理的に重要な 中身を隠してしまう。よってゲージ不変な量は古典解を特徴づける量として、必ず評価さ れる量である。
T
π
V1 V2 図 6: 二つの on-shell 閉弦頂点の挿入された幅 T のツリー振幅。 2.5.2 Ellwood の予想 [26] は W(Ψ, Vα) が、開弦場の古典解が表す非自明な境界条件を持つ Disk 上の closed state Vα の一点関数に関係づくことを形式的に示した。ここではその議論を説明する。QB-exact state と on-shell の二点関数が on-shell 一点関数になること
Disk 上の closed string の二点関数を考える (図.6)。弦の場の理論の文脈では Identity state を用いて次のように表される。
A(V1,V2) = hI|V1(i)b0
∫ ∞
ε/2
dT e−L0TV
2(i)|Ii (2.85)
Identity を使っているので、中点での conical singularity を排除するため、V1,V2は weight
(0, 0) プライマリーでなければならない。ε は world sheet の UV cut-off である。ここで V1 = QBO と書ける場合を考える。この時、{QB, L0} = b0、QB|Ii = 0、そして V2が on-shell{QB,V2} = 0 であることを使うと、二点関数は T 積分の表面項に書き直せる。 hI| [QB,O(i)] b0 ∫ ∞ ε/2 dT e−L0TV 2(i)|Ii =−hI|O(i) { QB, b0 ∫ ∞ ε/2 dT e−L0T }
V2(i)|Ii = −hI|O(i)e−L0T
∞ T =ε/2V2(i)|Ii (2.86) T → ∞ は落ちるので、結局 hI|O(i)e−L0ε/2V 2(i)|Ii (2.87) となる。ε→ 0 の極限を取るので O と V2は OPE を取られてそれを Ω としよう (図.7(上))。
振幅 (2.87) の時間と空間座標を入れ替えると、始状態|Ωi の closed string が伝播し、境界 で終わると解釈できる (図.7)。ここで注意すべきことは OPE は特異性を持つ。なぜなら
QB周りの真空にはタキオンモードが存在するからである。このような項は無限時間のプ
ロパゲートによって発散するので、解析接続か差っ引いてしまわなければいけない。特 異性がなくなれば|Ωi は無限時間の伝播の後も生き残れるのは (L0+ ¯L0)|Ωi しかいない。
よって我々は|Ωi の physical state だけを取り出して {QB,|Ωi} = 0 とする。よってこれは on-shell の closed string 一点関数である。
ε
ε
π
2 O V2 hΩ| 1/ε |Bi |Bi図 7: QB-exactなclosed vertexが挿入されたamplitudeは、無限小のプロパゲート時間のグラ
フのみ効く(上)。二つの演算子は非常に近いのでOPEが取りon-shell閉弦のツリーと見なせる
(下)。|Biはboundary state.
open string back ground の中の closed string 一点関数
以上の議論を open string が VEV を持つ場合にも拡張する。第 2.4 節で見たように、真 空のシフト Ψ→ Ψcl+ Ψ は BRST 演算子のシフト QB → QB+ [Ψcl, ] (2.88) で実現できる。これに伴って新しいプロパゲーターは旧プロパゲーター (QB周りのプロ パゲーター) にあらゆる場所に Ψclを挿入したものを、Ψcl数で足しあげたものとなる。代 数的にこのプロパゲーターを書き下すために adΨclを定義しよう。 adΨclΦ≡ Ψcl ∗ Φ − (−1) |Φ|Φ∗ Ψ (2.89) そして旧プロパゲーターを D = ∫ ∞ 0 dT e−L0T (2.90) と書くと、状態 A と B の間を結ぶ新しいプロパゲーターは ∞ ∑ n=0 hA|b0D(adΨclb0D) n|Bi (2.91)
となる。よって open string 背景における cosed string の二点関数は、(2.85) の旧プロパ ゲーターをこの新プロパゲーターに置き換えればよく、
A(V1,V2) =
∞
∑
n=0
hI|V1(i)b0D(adΨclb0D)
nV 2(i)|Ii (2.92) を考える。再びV1 ={QB,O} として、更に Ψclが運動方程式の解であることを用いると − ∫ ∞ ε/2 dT ∂ ∂T ∞ ∑ n=0 (∞ ∏ i=0 ∫ ∞ 0 dTn ) δ ( T − n ∑ i Ti ) hI|O(i)DT0 ( n ∏ i=1 {b0, adΨclDTi} ) V2(i)|Ii (2.93)