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K = 0,の特異性だけではN =±1,±2の解しか存在しないことが分かったので、ナ イーブには良く定義されていないK =a1, a2,· · · (ai 6= 0, a < )の特異性を使える枠組 みを提案し、|N | ≥3を与える古典解の構築を試みた。これはKBcの固有値空間をaiの 場所で分割し、有限な位置の特異性も固有値空間の端、即ちK = 0, K = に還元する というものである。そしてN は個々の固有値空間上で定義されたNiの和として定義する のである。この方法はこれまでのN の定義の自然な拡張になっており、任意のN を構成 できる。

さてここからはK = 0とK =だけに特異性がある解に限る。N は(静的)古典解の 作用から決められる正準エネルギーであるが、CSFTには重力結合から読み取るエネル ギーと目されているGravitational coupling GC =Wmidと呼ばれる量が考えられてきた。

開弦の中点にon-shellのgravitonが結合した相互作用を表す。この量が真に重力結合なら ば、正準エネルギーと同様inversion symmetry が存在すると期待される。しかしGCを N = 0,±1,±2に対応する多重ブレイン解に対して評価するとK = 0における特異性n0 しか感知せず、inversion symmetryを破ることが分かった。[25]によってN とGCの直接 的な関係が導かれており(但し[25]ではN =GCという結論に達している。) その関係式 を再考察するとこれまでに見落とされていた新しい項Wend(6.67)を発見した。この項は K =からの特異性を拾い、WmidWendの和(差)は明白なinversion symmetricな形 をしている。そして両方の項の和がN と等しいエネルギーを与える。

N

2 =Wmid− Wend (7.2)

n 6= 0の古典解のWmidには、sz-trick計算において不定性が存在する。しかし幸運なこ とにGCWendで不定性が丁度キャンセルするようになっており、両方の和には不定性 は無くwell-definedになっている。

多様体(S3) 群SU(2) g(x)

K = 0 K =

KBc空間

?

U

図 28: winding数は多様体から群への写像で、xが多様体を一度覆う間にg(x)が群の空間を何

度覆うのかを数えているという構造があるために、整数になることが保証されている()。本研 究の目的はCSFT側において上の図に対応する構造が何であるかを探求することである。多様体 に対応する構造、群に対応する構造は自明では無い。本論文で得られた結果から、多様体に対応 するものはKBc多様体と呼ばれるもので、この空間の原点と無限遠は等価な構造を持ってい ることが見えてきた()。第1章の図再掲。

チで特異性を拾うというものである。もしこの方法で全てが無矛盾に構成できれば、N は整数に量子化された量と言えることになる。

では次にN を調べることでCSFTにどのような構造が見えてきただろうか。まず(KBc で構成された解だけでなく)一般の解のクラスに対して、N を全微分の積分形に対応する 形に書き直すことに成功している。形式的には代数的にゼロとなる形に書き直せた事は、

N が何らかの特異性を拾う量であることが示唆している。これはwinding数と同じ構造 である。またGaussの定理を想像すればCSFTにおける表面項らしき概念が存在するこ とも示唆している。KBcで構成された解のクラスの解析によって、Nは実際にK = 0と K =の特異性のみで決定される量であることが分かった。つまりNKBc空間の特 異性を拾って、整数値を取っているのだ。更にこのKBc空間は原点と無限遠が等価な、

まるで球面のような構造をしているようだ。それはKBc代数で構成される任意の相関関 数におけるinversion symmetryが示している。おぼろげながら図.28のような“KBc多様 体”なる構造が見えてきていると考えて良いだろう。

またinversion symmetryの考察を重力結合にも適用することで、inversion symmetricな 重力結合を得ることができた。CSFTは開弦の場の理論ゆえ閉弦の自由度は陽には含まれ

ていないのだが、閉弦理論との関係も本研究の位相的な構造の観点から探っていける可能 性があるということである。

N はwinding数といくつかの類似性を持つことが明らかとなった。しかし保留にされた

点も多い。次に残された課題について検討しよう。

本論ではKBc代数で構成された古典解について調べたのでKBc多様体なるものが見 えてきた。しかしKBc代数で構成された解は限定されたクラスの弦の場しか扱っていな い。最近、[31]がKBcにBoundary condition changing operator (bcco) (Appendix.A参 照) を付加することで任意の多重ブレイン解、およびその他の広いクラスの古典解を構成 できると主張している。このような解の一般化を行った際にKBc多様体の描像がどのよ うに変化するのか、あるいは変化しない性質は何かを調べていく必要がある。N にとっ て何が重要な構造なのかを知るためには、解の形によらない普遍的な構造を見つけること が必要である。そのためにも“表面項”の考察が必要になってくる。N もwinding数と同 様に全微分の積分形に書き直せることが証明されたので、次に行うべきはCSFTにおけ るガウスの定理を見つけ表面項に書き直すことである。全微分の積分形は一般の解に対し て得ているので、解のクラスに限定されない議論である。表面項なるものが分かれば多様 体の構造の理解は深まり、コンパクトという概念が何に対応するのかも分かるかもしれな

い。またwinding数がそうであったようにN の値は表面項の値だけで決まっていると推

測される。表面項の理解ができれば一般の多重ブレイン解の構成が容易になるのではない かと考えられる。

N がΨのK = 0,における特異性から値を獲得する量であることから、特異性を適切 に正則化し扱う必要があった。正則化によりΨはピュアゲージ型ではなくなるため、正則 化されたΨεが運動方程式を満足するのか併せて確認しなければならない。その運動方程 式がどのようなクラスの変分に対して成り立っているべきか従来から議論されているが、

未だに意見の一致を見ない。任意の変分に対して消えるべきとの要請は、非自明な解を排 除してしまうのではないかという懸念がある。ここでは

δS =

φ∗(QBΨε+ ΨεΨε) = 0 (7.3) におけるφとして、解自身(φ = Ψε)を調べてきた。これはN とエネルギーを結びつける のに必要な量である。この結果はN と同様、Ψの詳細に依らずK = 0,の特異性だけ に依存するというものであった。我々はこの運動方程式が消えているもののみを多重ブレ イン解と呼んだ。反面φとしてFock状態を取ると、多重ブレイン解は運動方程式を満た さないことが分かる。しかし、Fock状態は摂動論的古典解(自明な古典解Ψ = 0)の周り では自然な状態であるが、非摂動論的古典解(Ψ 6= 0)から見れば、有限質量の励起状態空 間をはるかに超えた状態であると考えられる。従ってこの結果をもって上の多重ブレイン 解を棄却する必要は無いと考える。私はφのクラスとして解の周りの有限な質量励起状態 を要請するのが適当であると考えている。このために多重ブレイン解回りの物理的励起状 態を明らかにすることが大切である。解周りの展開は一見非常に複雑に見えるため、何か

上手い方法で調べる必要がある。解回りの物理的状態はブレインの枚数の自由度に対応し た縮退をスペクトラムに持つはずである。我々はFock状態は良く知っているので、これ らの状態から非摂動論的古典解周りの物理的状態にある写像を定義できれば良いと考え る。その写像にブレインの枚数に対応した縮退度が現れれば良い。解の特異性がこの縮退 度にどのように反映されているのかを理解することが重要である。

重力結合においてinversion symmetryを考えることで、これまで重力結号(Gravitational coupling)として考えてこられたWmidに新たな項Wendを付け加える必要性を見出した。

Wendはこれまで議論されてこなかった量である。一方でWmidには証明されていないが 広く信じられている予想[22]が存在し、世界面からの理解も成されている。これは場の古 典解が表す開弦背景中を飛ぶ閉弦の一点関数がGIOに等しいというもので、K = 0の特 異性を持つ解については実際に確かめられている。しかしこの予想には、K =につい ての議論は無い。K =の寄与がこの議論をどのように変更するのか調べることで、新 たな項の物理的理解が得られるはずである。

Kε-正則化はNの特異性を抽出するのに重要な正則化であった。またinversion symmetry は相関関数に成り立つ非常に強力な定理である。しかしこれらの世界面としての解釈は全 く明らかになっていない。Kε-正則化とは新たな場を付加しているのか、Q2B = 0を保ち ながら可能なのかといった疑問が湧く。inversion symmetryはVirasoro演算子の非線形な 変換である。既知の対称性なのか、未知の対称性なのか。これらは今後の課題である。