円筒上の相関関数
KBc代数だけで書かれた量であれば、相関関数は無限長の円筒にB とcが挿入された ものとなる事を説明しよう。e−rKは演算子の挿入の無い帯に読み替えればよく、Kの正 冪は(3.31)より微分−∂/∂x に直せば良い。またKの負冪は
1 a+K =
∫ ∞
0
dt e−t(a+K)=
∫ ∞
0
dt e−at|t+ 1i (3.38) とLaplace変換すれば、wedge state の重み積分となる。(3.38)のような変換をSchwinger parametrizationと呼ぶ。Schwinger parametrizationが well-definedなのはKが非負の固 有値を持つ場合である。
例えば ∫
Bc 1
1 +KcKc 1
1 +Kc 1 1 +K という相関関数を計算すると(3.38)を用いて
∫ ∫ ∫
dt1dt2dt3e−(t1+t2+t3)hBc(0)c∂c(t1)c(t1+t2)it1+t2+t3
という多重積分を計算することになる。ここでhBc(0)c∂c(t1)c(t1+t2)it1+t2+t3 は幅t1 + t2+t3の円筒上にB, cが挿入された相関関数である(図14)。[B, K] = 0から線積分Bは cにぶつからない限り挿入位置を動かすことができる。
c∂c(t
1) c(0)
c(t
1+ t
2) B
t
1+ t
2+ t
3図 14: 円筒状のゴースト相関関数hBc(0)c∂c(t1)c(t2)it1+t2+t3 の図。
3.3.1 sz-trick
しかし上記の相関関数の多重積分は、一般には解析的には実行できない。そこで[32, 33]
によって提案された “sz-trick”という計算法を紹介する。
Kの関数F1, F2, F3, F4に対してhF1, F2, F3, F4iを次の相関関数として定義する。
hF1, F2, F3, F4i=
∫
BcF1(K)cF2(K)cF3(K)cF4(K)
=
∫ ∞
0
∫ ∞
0
∫ ∞
0
∫ ∞
0
dt1dt2dt3dt4f1(t1)f2(t2)f3(t3)f4(t4)
×
Bce−t1Kce−t2Kce−t3Kce−t4K
s (3.39)
ここで各Bcccc相関関数の幅をs =t1+t2+t3+t4とした。fi(ti)はFi(K)のSchwinger parametrizationである。
Fi(K) =
∫ ∞
0
dt fi(t)e−tK (3.40)
Bcccc相関関数の公式(C.5)を、sin関数が線形になるように変形したもの Bce−t1Kce−t2Kce−t3Kce−t4K
s=− s2 4π3
[
(t1+t2+t3) sin2πt2
s −(t2+t3) sin2π(t1+t2) s
−(t1+t2) sin2π(t2+t3)
s +t2 sin2π(t1+t2+t3) s
+t3 sin2πt1
s +t1 sin2πt3 s
]
(3.41) を用いることにする。さてここで恒等式
1 =
∫ ∞
0
ds δ[s−(t1+t2+t3+t4)] =
∫ ∞
0
ds
∫ i∞
−i∞
dz
2πiez(s−t1+t2+t3+t4) (3.42) を(3.39)に挿入しti積分を先に実行する。例えば
∫ ∞
0
dt1 f1(t1)e−t1zt1 =−F10(z)
∫ ∞
0
dt2 f2(t2)e−t2zsin2πt2 s =F2
(
z−2πi s
)
−F2 (
z+ 2πi s
)
= (∆sF2) (z) となる。0はzでの微分を、∆sは
(∆sF) (z)≡F (
z− 2πi s
)
−F (
z+ 2πi s
)
(3.43) で定義する。tiの四重積分を全て実行し、sin関数は差分∆sに、tはz微分に変えていく と次の公式を得る。
hF1, F2, F3, F4i=
∫ ∞
0
ds
∫ i∞
−i∞
dz 2πi
s2
(2π)3ieszG(F1, F2, F3, F4) (3.44)
z
0
図 15: 青い線が積分路Cs。 但しGは
G(F1, F2, F3, F4) =[
(F1∆(F2)F3)0−∆(F1F20)F3
−∆(F1F2)F30 −F10∆(F2F3)−F1∆(F20F3)
+∆(F1F20F3) + ∆(F1)F2F30 +F10F2∆(F3)]F4 (3.45) である。(3.44)の左辺のFiの引数はKであるが、右辺では複素数zになっている。
さてeszを除くzの被積分関数がz ∼ ∞でO(1/z)で振る舞う時には、Rez < 0を取り 囲むように十分大きな半円を積分路に付け加えて良い(図15)。このようにして出来た閉 じた積分路をCsと書く。つまり
hF1, F2, F3, F4i=
∫ ∞
0
ds I
Cs
dz 2πi
s2
(2π)3ieszG(F1, F2, F3, F4) (3.46) (3.44)あるいは(3.46)をsz-trickと呼ぶことにする。hF1, F2, F3, F4iの計算は留数計算と 実数積分に直された。なお虚軸上にポールが存在するときにはCsの取り方には注意が必 要である。多重ブレイン解に関する第4.3.1節の議論も参照のこと。
コメント
sz-trickの計算法が必ずしも解析的に実行できるとは限らないが、積分の数が二つなので
実行しやすいという利点がある。またSchwinger parameterの多重積分の計算ではしばし ばKの関数の等式変形が異なった結果を与えるという不定性が存在するのだが、sz-trick はその中の一つに自動的に決まっているという特徴がある。この性質は、(3.42)を挿入す ることで、相関関数の全幅sと個々の演算子の挿入位置tiを分離した事が本質的である。
sz-trickはs積分を最後に実行するので、全幅を有限に保ったまま計算をしていることに
なる。すると例えばBcccc相関関数の中に現れるsin ( t1
t1+t2+t3
)という項の場合、sz-trick ではsin 0 = 0となる。一方多重積分計算では積分の順によってsin00になったり、sin01に なったりする。このような不定性はIdentity-likeな相関関数が特異的に効くような計算で 無い限り見えないので、通常の計算では前節の計算とsz-trick計算で同じ結果を出す。し かし第5章、第6章では実際にIdentity-likeな寄与が重要となるので注意が必要である。
不定性をどのように取るのが正しいのか未だ分かっていない点が多い。本来なら正則化を 指定することで、不定性も一意に決定できるべきである。
もう一つの注意点は(3.42)がどのようなデルタ関数か定義されていないということであ る。もともとs=t1+t2+t3+t4 ≥0として導入しているのだがz積分に直す所でs <0 でも定義されたデルタ関数になっている。この不定性は通常の計算では顔を出さないが、
s= 0の相関関数が特異的に効くような量では問題になる。第6章でこの問題に直面する ことになる。特に第6.5節で詳しく議論している。