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タキオン凝縮解に対する前節の計算は、新たな解の発見への示唆を与えてくれる。N が 有限の値を持つためには、相関関数の中に1/Kの特異性があれば良かった。それでは1 以外の値をN に持たせることはできないだろうか。つまり一般の枚数のブレインを表す 解を構成できないだろうか。

一般的なG(K)に対する、Kε-正則化されたBε(τ)は(4.44)で与えられる。全体のεのた めに、相関関数のO(1/ε)の寄与のみが重要である。そこでG(K)K = 0近傍で展開し て計算をしよう24。今G(K)K = 0にm次のポールを持っているとする。

G(K)∼Km (K 0, m1). (4.54)

24ここではN K= 0近傍の振舞いだけで決まっている事を見るためにK= 0近傍で展開を行って計算 している。またこの計算は第5章で述べるinversion symmetryに気付くきっかけにもなる。しかしsz-trick を使えば計算労力は大して変わらないので、特に理由がなければexactに計算すれば良い。

m <0の場合も同じように計算できるので、今はm 1の場合を考える。Ψτは0≤τ < 1 で摂動論的真空を表し、τ = 1で非摂動論的真空Ψに跳び移るとする。この時Gτ(K)は、

τ <1でK = 0におけるポールもゼロ点も持ちえないはずである。よってGτ(K)のリー ディング項は一般性を失わずに

Gτ(K)(1−τ+K)−m. (4.55)

と書けるはずである25。(4.44)の第二項目のGτを(4.55)で置き換えると、Bε(τ)のK = 0 近傍でのリーディングの寄与が

Bε(τ) =−mε {

∆τ

c 1

(Kε+ ∆τ)mc 1

Kε+ ∆τcKε(Kε+ ∆τ)m +

c 1

(Kε+ ∆τ)mcKcKε(Kε+ ∆τ)m−1 }

(4.56) で与えられる。ここで∆τ = 1−τと置いた。この相関関数をsz-trick(第3.3.1節)を用い て計算すると次の結果を得る。尚z積分の留数はz =∆τ−εz =∆τ−ε±2πi/sに 位置する。

π2B(τ) = m 2

±

{

d1(τ) + 1 2d2(τ)

m−1

k=0

( m

m−k−1 )

p(k,1±)

+1 2d3(τ)

[m1

k=0

(( m m−k−1

)

( m−1 m−k−1

))

p(k,0±)

m k=0

(m+ 1 m−k

) p(k,0±)

]

+d4(τ) [ m

k=0

( m m−k

)

p(k,±)1

m1 k=0

( m−1 m−k−1

) p(k,±)1

]}

, (4.57)

ここでp(k,`±)d1,2,3,4(τ)は

p(k,`±) = (±2πi)k+`

k! , (4.58)

および

d1(τ) = 2

ε(w+ 1)3, d2(τ) = 1

ε(w+ 1)2, d3(τ) = 2w

ε(w+ 1)3, d4(τ) = 3w2 ε(w+ 1)4,

(4.59) で定義される。ww= ∆τ /εと置いた。

d1, d2, d3, d4(4.59)は四つともε→+0でδ(1−τ)になる。これはτ < 1ではδ(1−τ) = 0 となり、かつ∫1

0dτ δ(1−τ) = 1を満たすためである。この事実と超合流幾何関数

1F1(α, γ;z) =

k=0

α(α−1)· · ·−k+ 1) γ(γ−1)· · ·−k+ 1)

zk

k!, (4.60)

25(4.44)から分かるように、G(K)の定数倍は意味が無い。

の定義を用いると正則化されたB(τ)は結局 π2B(τ)

ε0

(m+A(−m))

δ(1−τ) (4.61)

を得る。ここでA(m)は整数値からのずれで A(m) = π2

3 m(m21)Re1F1(2 +m,4; 2πi) (4.62) と与えられる。タキオン凝縮解はG(K) = 1+KK ∼K (K 0)なので、(4.61)よりB(τ) =

−δ(1−τ)が分かる。これは前節の正確な計算と一致している。

以上から一般のG(K)に対して次の結果が得られた。

K = 0の特異性を持つN

G(K)K = 0近傍でG(K) Kn0 とふるまう時、NG(K)の詳細に依らず決 まり

N =−n0+A(n0) (4.63)

と与えられる。但しA(n)は(4.62)で定義される量である。

(4.62)よりn0 = 0,±1の時はN = 0,1は整数となる。N = 1は2-brane解を表す。例え ば2-brane解としてG= 1 + 1/Kと取れば良い。

n = 0,±1以外の場合にはA(n)がnon-zeroなのでN は整数値にはならない。K = 0の 特異性を利用した大川型のpure-gauge解ではN = 0,±1以外の多重ブレイン解は構成で きないようである。更に深刻なことは「N はCSFTにおけるwinding数か」という当初の 予想に対して、N は必ずしも整数に量子化されていないという反例を与えたことである。

しかしこの結果だけからN が整数に量子化されていないと結論付けるのは早計である。

実はKε-正則化を行うとpure-gaugeはO(ε) だけ破れる。従って運動方程式もKε-正則 化で評価し直さなくてはならない。pure-gaugeで無いものから定義されるN はwinding 数と見なさなくて良いからだ。そこで第4.4節において大川型のpure-gauge解の運動方 程式をKε-正則化を用いて評価する。しかしその前に、村田Schnablの多重ブレイン解 [32, 33]と本節の結果(4.63)の関係についてコメントしておく。更にwinding数の加法性 とA(n)(4.62)の関係についてもコメントする。

4.3.1 Murata and Schnablの多重ブレイン解へのコメント

一般のG(K)の大川型の古典解に対して、sz-trick(第3.3.1節)を使ってN を計算して も前節と同じ結果(4.63)が得られるはずである。計算は既に[32, 33]で与えられており確 かに結果は一致する。しかし[32, 33]は(4.63)のA(n)を落とすことが可能だと述べるの

だが、ここではそのような処置は矛盾があることを示そう。この議論を通してsz-trick

Kε-正則化の関係が良く理解できる。

Murata and Schnablによると、sz-trickでの結果は π2

3

ΨΨΨ =

0

ds I

Cs

dz

2πi eszsz2G0

G +α[G] (4.64)

となる。但しCsは図.15で与えられる経路であるが、後で述べるように虚軸を左に避ける 経路を取ることが彼らの特徴である。第一項目はs積分を先に実行することで(Re[z]<0 よりs積分可能)

I dz

2πi G0

G (4.65)

とできる。z積分路は原点を反時計周りに囲む閉回路とした。この留数計算はG(z)z = 0 での振る舞いで決まるので(4.63)の初項と同じである。さて(4.64)の第二項目は

α[G] =− 1 8πi

0

ds I

Cs

dz

2πi esz(z∂z−s∂s)zs2

G ∆(zG) (4.66)

で与えられる。(4.63)のアノマリー項に対応する部分である。アノマリー項はzの被積分 関数の虚軸上のポールがオリジンである。よって積分路Csを原点を左に避けるように取 ればα= 0となる。このことから[32, 33]ではCsを虚軸を左に避けるように定義した。

第3.3.1節のsz-trickの公式(3.46)において、左辺のFiKεの関数である場合を考え る。公式の導出を辿ればG(3.45)の中のzが全てz →zε=z+εで置き換えられることが 分かる。但しsszzは恒等式(3.42)で導入されたzなので置き換えは起こらない。ここ でzεを新たにzと置くと

hF1, F2, F3, F4iKKε =

0

ds

i

i

dz 2πi

s2

(2π)3ieszeεsG(F1, F2, F3, F4) (4.67) が得られる。即ちKε-正則化はsz-trickzの虚軸上の積分路の不定性を、虚軸を右へ避 けるように指定することに相当するのだ。よってアノマリーは避けられなかったのである。

この議論から分かる通り[32, 33]のアノマリーを落とす処方は許されないことが分かる。

虚軸を左に避けるということはK →K−εとしていることに対応する。Kが負の固有値 を持てばSchwinger parametrizationが定義できない。よってsz-trickそのものが成り立 たなくなるのである。任意の多重ブレイン解構成を阻むアノマリー項の処置については依 然問題として残っている。この問題への解決策については第5.6節で議論する。

4.3.2 N の加法性とAnomaly

Winding数の性質に “加法性(additivity)”がある。

NCS[g1g2] =NCS[g1] +NCS[g2] +

d(

(dg11)g1g2(dg21))

| {z }

0

(4.68)

N[U1U2]も同様の計算から

N[U1U2] =N[U1] +N[U2] + ∆N[U1U2] (4.69)

N[U1U2] =

QB

((QBU11)U1U2(QBU21))

(4.70) となる。もし∆N[U1U2] = 0となり加法性を持っていれば、N[Un] =n× N[U]が成り立 ち任意の多重ブレイン解が構成できることになる。これは(4.63)の主張に反することに なるので、N には加法性が成り立たない。U1、U2個々のG(K)K = 0でシングルゼロ 点/ポール(n0 =±1) であっても積U1U2は一般にシングルでは無くなってしまうためで ある。