5.5 運動方程式の破れ
5.6.2 consistency check
前節の主張を一般的に書くと、Ψ[G(K)]で決定される量をG(K)を分割手術によって分 割したあとにΨで表される量Oを
O[Ψ] =
m+1∑
i=1
O[Mg(Ψ)] (5.39)
このように定義されたN[G(K)]がK = 0,∞にのみ特異性を持つ場合には、これまでの
N[G(K)]に帰着することを確認する。またKの固有値空間を特異点以外でカットしても
N[G(K)]が変わらないことを示そう。
始めにG(K)が0 < K < ∞にゼロ点/ポールも持っておらず、従ってK 空間の分割 手術が必要無い場合に(5.39)がどうなるか考えよう。この場合には(5.39)の左辺は既に
(5.15)で与えられている。この表式は任意のaiに対して右辺と等しい。これは線形分数変
換gi(K)がG(K)の新たなゼロ点/ポールを生まないという事実に基づく。次にO[Mgi(Ψ)]
はgi(K)の取り方に影響を受けないことについて言及する。gi(K)はaiを与えただけで は決まらない。例えば(5.33)のG(K)に対してg1(K) = a/(1 +αK)、g2(K) = a+βK (α, β >0)と取ることができる。しかしN やEOM-testはgi(K)の取り方変えても変わら ない。それはOが(ni−1, ni)だけで決まるからである。
ここまでの議論はG(K)は(非負の)実数軸上だけに特異点を持つと暗に仮定していた。
GがK =a+ib(a, b >0)にポールを持つ場合に、NやEOM-testをどのように構成すれ ば良いのか未だ分かっていない。[0, a]と[a,∞]に分割してもK =a上に特異点が無いた めにK =a+ibに存在する特異点はNやEOM-testに寄与できない。
6 重力結合における inversion symmetry
Inversion symmetryはKBcで構成された一般的の相関関数に成り立つ強力な対称性で
あり、その帰結として正準エネルギーN はK = 0とK =∞の入れ替えに対して不変で ある。さて局所場の理論では、エネルギーに二つの定義が存在したことを思い出そう。一 つは時間並進不変性から構成するネーターカレントとしての正準エネルギー、そしてもう 一つは重力結合から読み取るものである。CSFTでは、E =N/(2π2go2)は静的な古典解 に対する正準エネルギーに対応する29。
一方、重力結合として第2.5節で議論したWmidが考えられてきた。Wmidをsliver frame で表記すると
Wmid =
∫
c∂X(i∞)¯c∂X(¯ −i∞)Ψ (6.1) となる。これは開弦の場と閉弦のon-shell vertexとの結合である“Gauge Invariant Ob-servable (GIO)”(2.83)において、特にclosed vertexとしてV =c¯c∂X∂X¯ と取ったもので ある。Wmidは開弦とグラビトンの結合を測っているはずである。N とWmidは等しいと 考えるのは自然であり、従ってWmidはinversion symmetricな形をしていると予想され る。実際にタキオン凝縮解に対して[22, 37]、更にn∞ = 0の解に対してその等価性が確 かめられてきた[32, 33]。ここでWmidのinversion symmetryは自明ではないことを注意 しておく。なぜならWmidはclosed string vertex V =∂X∂X¯ を含み、KBcだけで構成さ れた相関関数ではないためinversion symmetry定理(第5.2節)の適用外であるからだ。そ こで実際に大川型のpure-gauge解(3.50)のWmid(6.1)を確かめてみると、予想に反して Wmidではinversion symmetryが破れているという結果を得る。WmidはK = 0の特異性 しか感知せず、K =∞の特異性を拾ってくれない。この事からn∞ = ±1の多重ブレイ ン解では正準エネルギーN と重力エネルギーWmidが一致しないのだ。本章ではこの問 題に対する解決を与える。
この問題を解く際に重要な鍵となるのが[25]による、任意の解に対してWmidとN の直 接的な関係を導いた研究である。そして彼らは
N
2π2 =Wmid+ (EOM-term) (6.2)
と結論づけた。EOM-termは運動方程式を含む項で多重ブレイン解に対して消えること が確かめられる(Appendix.D)。(6.2)の意味することは正準エネルギーと重力結合の等価 性であり、これはn∞ =±1の解には成り立たない。
そこで本章では[25]の議論を特に我々の多重ブレイン解に対して再検討し、この矛盾を 解く。その結果、Nと等号で繋がるのはWmidだけでは不十分で新たな項を必要とするこ
29 CSFTにおいて重心座標の時間方向への並進に対するNoether電荷を定義するのは実は難しい問題で ある。それはCubic termから時間の無限階微分が出て来るからである。ここでは静的な古典解を考えてお り、その場合には作用に負符号をつけたものをエネルギーと見なして良いであろう。
とが分かった。Wmidとこの新たな項の和は、明白なinversion symmetryを有しており、
更にK =∞の特異性を持つ解に対してwell-definedな量となっている。Wmidと新たな項 の和こそ真の重力結合だと考えるべきである。
まず初めにΨ(3.50)のWmid(6.1)を評価し、inversion symmetryが破れていることを確 認する。次に[25]の議論を紹介し、N とWmidの直接的関係を導く。その後で多重ブレイ ン解に対して[25]の議論を再検討し、inversion symmetricな重力結合の表式を得る。
6.1 inversion symmetry の破れ
ここでは重力結合Wmidに限らずに、一般のon-shell closed vertex に対するGIO(2.83) をΨ =cG(K)K Bc(1−G(K))に対して評価する。
∫
VmidΨ[G(K)] = lim
Λ→∞
∫ ∞
0
dα
∫ ∞
0
dβ f(α)fe(β)
∂X(iΛ) ¯∂X(−iΛ)
Cα+β
×
c(iΛ)c(−iΛ)c(0)e−αKBce−βK
Cα+β (6.3)
ここでf(α),f(β)e はそれぞれ K
G(K)と1−G(K)のラプラス逆変換である。sliver frameで は中点が無限遠になるためΛで正則化する。最後にΛ→ ∞へ持っていく。ゴーストの相 関関数だけを計算すると
hBc(0)c(β)c(`/2 +iΛ)c(`/2iΛ)iCα+β = i(α+β)2β 8π3ε4 +O
( 1 ε2
)
(6.4) となる。但しε=e−πΛ/(α+β)、` =α+βとおいた。matterの相関関数をw座標(2.84)で 評価する。幅`の円筒のsliver座標zとUHP座標ξの関係は
z(ξ) = 2`
π (
Arctanξ+ π 4
)
, ⇔ ξ= tan [π
2`
( z− `
2 )]
(6.5) なのでsliver座標zとw座標の関係は
w= 2ξ
1−ξ2 = tan [π
` (
z− ` 2
)]
(6.6) となる。matterのw座標への写像に伴う共形因子|(dw/dz)z=`/2+iΛ|2 とゴースト相関関数 を合わせると
hVmiw (dw
dz )
z=`/2+iΛ
2hBc(0)c(β)c(`/2 +iΛ)c(`/2−iΛ)iC`
=hVmiw
(4πε2
` )2
i`2(z2−z1) (2π)3ε4 +O(
ε2)
=hVmiw 2i
πβ+O(ε2) (6.7)
G(K) (n0, n∞) N =π2/3∫
Ψ3 ∫ VΨ
K/(1 +K) (1,0) −1 −1
1/(1 +K) (0,1) −1 0
1 + 1/K (−1,0) 1 1
1 +K (0,−1) 1 0
K/(1 +K)2 (1,1) −2 −1
(1 +K)2/K (−1,−1) 2 1
K (1,−1) 0 −1
1/K (−1,1) 0 1
(1 +K)/(2 +K) (0,0) 0 0
表 2: inversion symmetryの破れ よって
= 2π22i
π hVmiw
∫ ∞
0
dα
∫ ∞
0
dβ f(α)f(β)βe
=−2π2A(Vm) lim
z,w→0
z
G(z)∂wG(w)
=−n02π2A0(Vm) (6.8)
が得られる[32, 33]。A(Vm)はdisk上のclosed tadpoleである。二行目はLaplace逆変換 を行った。WmidもG(K)の詳細に依らずK = 0における特異性で決まっていることが分 かる。しかしK =∞の寄与を拾っていない。つまりWmidにはinversion symmetryが実 現していない。表.2は様々な多重ブレイン解に対して正準エネルギーN とWmidを評価 した結果である。